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  • 特許-小屋裏空間通気制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】小屋裏空間通気制御装置
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/16 20060101AFI20220627BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20220627BHJP
   F16K 31/70 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
E04D13/16 M
E04B1/70 E
F16K31/70 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020178817
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022069884
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】397054901
【氏名又は名称】株式会社ウッドビルド
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺島 聡剛
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3074111(JP,U)
【文献】実開昭59-86527(JP,U)
【文献】実開昭59-36434(JP,U)
【文献】特開平8-128148(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第306109(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/16、13/17
E04B 1/70
F16K 31/70
F24F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の棟に形成された屋根裏空間と外部空間との連通孔に配設され、前記屋根裏空間と前記外部空間とを、連通状態と遮断状態とに切り替えるための小屋裏空間通気制御装置であって、
一方の端部に弁座が形成された筒状をなし、棟木に形成された貫通孔に挿通される流路筒と、
前記流路筒の内部空間から前記弁座より外方位置に向けて延在し、前記内部空間を往復動可能に設けられた弁保持体と、
前記弁保持体の先端部に取り付けられ、前記弁座に接離する弁板と、
一端が前記流路筒の一端側に係合され、他端が前記弁保持体に係合された第1ばねと、
一端が前記流路筒の他端側に係合され、他端が前記弁保持体に係合された第2ばねと、を具備し、
前記第1ばねおよび前記第2ばねは少なくとも一方が熱感知式合金により形成されており、前記外部空間の気温変化に伴って生じる前記第1ばねと前記第2ばねの付勢力の差によって前記弁板が前記弁座に接離動することを特徴とする小屋裏空間通気制御装置。
【請求項2】
前記弁座は、前記流路筒の端部に形成されたフランジ部であることを特徴とする請求項1記載の小屋裏空間通気制御装置。
【請求項3】
前記流路筒と前記連通孔との間には連通筒が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の小屋裏空間通気制御装置。
【請求項4】
前記弁座および前記弁板の少なくとも一方にはシール部材が設けられていることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の小屋裏空間通気制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小屋裏空間通気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、特許文献1(特開2007-303220号公報)に開示されているように、建築物の小屋裏空間と外部空間の連通状態および遮断状態を外気温に応じて自動的に切替制御するための通気制御装置を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-303220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている通気制御装置は、屋根裏空間と外部空間の連通路と小屋裏空間と外部空間との連通路が二層構造で形成されているため、棟からの突出高さが高くなり、強風時における破損のおそれがあるという課題や、建物の外観において通気制御装置が目立ってしまうといった課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは次のとおりである。すなわち本発明は、棟からの突出量を削減し、強風時における破損の可能性を低下させると共に建物の外観において装置の存在を目立たなくした小屋裏空間通気制御装置を提供することにある。
【0006】
上記課題を解決するため発明者が鋭意研究した結果、以下の構成に想到した。すなわち、本発明は、建物の棟に形成された屋根裏空間と外部空間との連通孔に配設され、前記屋根裏空間と前記外部空間とを、連通状態と遮断状態とに切り替えるための小屋裏空間通気制御装置であって、一方の端部に弁座が形成された筒状をなし、棟木に形成された貫通孔に挿通される流路筒と、前記流路筒の内部空間から前記弁座より外方位置に向けて延在し、前記内部空間を往復動可能に設けられた弁保持体と、前記弁保持体の先端部に取り付けられ、前記弁座に接離する弁板と、一端が前記流路筒の一端側に係合され、他端が前記弁保持体に係合された第1ばねと、一端が前記流路筒の他端側に係合され、他端が前記弁保持体に係合された第2ばねと、を具備し、前記第1ばねおよび前記第2ばねは少なくとも一方が熱感知式合金により形成されており、前記外部空間の気温変化に伴って生じる前記第1ばねと前記第2ばねの付勢力の差によって前記弁板が前記弁座に接離動することを特徴とする小屋裏空間通気制御装置である。
【0007】
これにより、棟からの突出量を少なくすることができ、強風時における破損の可能性を低下させると共に建物の外観において小屋裏空間通気制御装置の存在を目立たなくすることができる。
【0008】
また、前記弁座は、前記流路筒の端部に形成されたフランジ部であることが好ましい。
【0009】
これにより、弁体との当接面積が増加し、流路筒の閉塞を確実に行うことができると共に、棟木への流路筒の挿入位置を位置決めすることができる。
【0010】
また、前記流路筒と前記連通孔との間には連通筒が設けられていることが好ましい。
【0011】
これにより、屋根裏空間における空気の流通状態にかかわらず、小屋裏空間の熱気を外部空間に確実に排出させることができる。
【0012】
また、前記弁座および前記弁板の少なくとも一方にはシール部材が設けられていることが好ましい。
【0013】
これにより、棟木に形成した貫通孔と流路筒との間、および、弁座と弁板との気密性が向上し、小屋裏空間から外部空間への意図しない空気の流通が防止され、小屋裏空間と外部空間との連通状態と遮断状態の切り替えを確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示における小屋裏空間通気制御装置の構成を採用することにより、棟からの突出量を少なくし、強風時における破損の可能性を低下させると共に建物の外観において存在を分かり難くし、建物の外観を向上させながらも、屋根裏空間と外部空間との間の通気状態と遮断状態を外気温に応じた確実な切り替えが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態における小屋裏空間通気制御装置の斜視図である。
図2図1に示す屋根裏空間通気装置を建物の棟に装着した状態を示す説明断面図である。
図3図2に示す小屋裏空間通気制御装置が小屋裏空間と外部空間とを遮断している状態を示す説明断面図である。
図4】建物の棟部分における小屋裏空間通気制御装置の未配設部分の状態を示す説明断面図である。
図5】弁保持体の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明にかかる小屋裏空間通気制御装置100の実施形態について説明を行う。図1図3に示すように、本実施形態における小屋裏空間通気制御装置100は、流路筒10、流路筒10の内部を往復動可能な弁保持体20、弁保持体20の先端に取り付けられた弁板26、第1ばね30および第2ばね40を具備している。本実施形態においては、第1ばね30が熱感知式合金(形状記憶合金)で形成され、第2ばね40がステンレス鋼で形成されている。
【0017】
図1に示すように流路筒10は、一方の端部にフランジ部からなる弁座12を有する円筒状に形成されている。本実施形態における弁座12の上側面には、貫通孔KAに流路筒10を挿通させた後の棟木MKとの密着度を高めるための弁座シール部材12Aが配設されている。また、流路筒10の一端側である上端側には後述する第1ばね30の一端が係合される第1係合体14が配設され、流路筒10の他端側である下端側には、後述する第2ばね40の一端が係合される第2係合体16が配設されている。本実施形態のように、弁座12が棟木MKの小屋裏空間KKの側になるようにして貫通孔KAに装着させた小屋裏空間通気制御装置100を、弁座12部分と棟木MKとをねじ留め等により固定することが好ましい。また、貫通孔KAと流路筒10とに隙間がある場合には、シーラントや発泡ウレタンを注入してもよい。
【0018】
流路筒10には、流路筒10の内部空間から弁座12より外方位置に向けて延在し、流路筒10の内部空間を往復動可能な弁保持体20が配設されている。本実施形態における弁保持体20は、流路筒10の内部空間に挿入され流路筒10よりも短い内筒22と内筒22に取り付けられ、流路筒10の弁座12よりも外方まで延設された保持板24を有している。内筒22は、流路筒10の内部空間を往復動させることができれば径寸法は特に限定されるものではないと共に、第2係合体16と干渉しなければ長さについても特に限定されるものではない。本実施形態における保持板24は、内筒22の内周面において内筒22の直径線上の2箇所に配設されている。保持板24は流路筒10の下端部に配設された第2係合体16と平面位置が重複しないように配設されているので、弁保持体20が流路筒10の内部空間を往復動する際に、保持板24と第2係合体16が干渉することはない。
【0019】
本実施形態における保持板24の先端部(下端部)には弁板26が取り付けられている。本実施形態における弁板26は、流路筒10の開口部が閉塞可能な弁座12の外径寸歩よりも小径寸法に形成されているが、流路筒10の開口面を閉塞することができれば弁板26の径寸法は特に限定されるものではない。また、本実施形態における弁板26のように弁座12との当接面に弁板シール部材26Aを配設することもできる。これにより、弁座12とのシール性を高めることができると共に、弁板26の弁座12への当接圧を緩衝させることもできる。
【0020】
内筒22の高さ方向における中間位置には、後述する第1ばね30の他端である下端34と第2ばね40の一端である上端42が係合される第3係合体28が配設されている。本実施形態においては、第3係合体28に第1ばね30の下端34と第2ばね40の上端42が係合されているが、第1ばね30の下端34と第2ばね40の上端42を内筒22の異なる位置に係合させることもできる。第1ばね30の上端32は流路筒10の第1係合体14に係合され、第2ばね40の下端44は流路筒10の第2係合体16に係合されているので、第1ばね30と第2ばね40は、弁保持体20を介して流路筒10の内部空間において直列配置で張設されている。
【0021】
本実施形態のように第1ばね30のみを熱感知式合金で形成すると、外部空間GKの気温変化に応じてばね定数に変化が生じる第1ばね30の付勢力と、外部空間GKの気温変化に伴うばね定数の変化が殆ど生じない第2ばね40の付勢力とに差が生じることになる。本発明における小屋裏空間通気制御装置100は、この付勢力の差を駆動源として弁保持体20に取り付けた弁板26を弁座12に接離動させている。本実施形態における第1ばね30は、低温時におけるばね定数が高温時におけるばね定数よりも高くなると共に、高温時におけるばね定数が同じ温度における第2ばね40のばね定数よりも低くなるプロファイルを有する熱感知式合金を採用している。
【0022】
これにより夏季は、第2ばね40の付勢力が第1ばね30の付勢力を上回るため、図2に示すように、弁座12から弁板26を離反させて小屋裏空間KKと外部空間GKとを連通し、小屋裏空間KKの熱気を外部空間GKに排出している。反対に冬季は、第1ばね30の付勢力が第2ばね40の付勢力を上回るため、図3に示すように、弁座12に弁板26を当接させて小屋裏空間KKと外部空間GKとを遮断し、小屋裏空間KKの空気を断熱材DNの内側空間に留まらせている。
【0023】
小屋裏空間通気制御装置100において、小屋裏空間KKと外部空間GKとの連通状態と遮断状態の切り替え動作は、予め設定した所定温度を基準にすることができる。本実施形態では、外部空間GKの気温が摂氏10度以下になると小屋裏空間通気制御装置100が冬季状態になるように設定しているが、この設定温度は適宜調整することができる。また、第1ばね30における熱感知式合金のばね定数を外部空間GKの気温変化に伴って徐々に増減させる設定を採用することもできる。これにより、外部空間GKの気温が高くなるほど弁座12と弁板26の離間距離が増加し、小屋裏空間KKから外部空間GKへの空気の排出量を増大させることができる。これとは反対に、外部空間GKの気温が低くなるほど、弁板26による弁座12への押圧力を強くすることができる。
【0024】
このような小屋裏空間通気制御装置100は、棟部分に形成された連通孔RAの位置に位置合わせして棟の延長方向に所要間隔をあけて配設されている。連通孔RAは、棟部分の所要範囲の屋根材YZを剥がし、野地板NJから屋根裏空間YKに貫通させて形成されている。また、連通孔RAの屋根材YZの傾斜方向にはスペーサSPが配設され、外部空間GKと棟木MKの上面との間には連通筒50が配設されている。連通筒50は、棟木MKの貫通孔KAの上面開口部の位置に位置合わせされており、連通筒50の内径寸法は貫通孔KAの径寸法よりも大径に形成されている。連通筒50の上面開口部は、屋根材YZの勾配と同じ勾配で配設されたラビリンス構造の棟板金MBの流通経路に連通している。棟木MKの貫通孔KAに挿通された流路筒10は、貫通孔KAの上面開口部から突出し、上端部の所要長さ部分が連通筒50の内部に挿入されている。このようにして小屋裏空間通気制御装置100を介して小屋裏空間KKと外部空間GKが連通された状態になっている。
【0025】
図4は、小屋裏空間通気制御装置100の未配設部分における建物の棟部分の断面図である。棟部分には断熱材DN、垂木TKおよび野地板NJにより区切られた空間である屋根裏空間YKの通気をするための連通孔RAが形成されている。図示しない軒先に設けた通気孔等から取り込んだ外部空間GKの空気が屋根裏空間YKを流通した後外部空間GKに排出されることで、垂木TKや野地板NJの腐食を防止している。当然ながら、図4で示されている部分においては、小屋裏空間KKの空気は外部空間GKに排出されることはない。
【0026】
以上に本発明にかかる小屋裏空間通気制御装置100について実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、棟木MKに挿入した流路筒10の上端側の所要長さ部分を連通筒50に挿入し、連通孔RAと流路筒10との間に連通筒50が設けられた形態について説明しているが、連通筒50の配設を省略することもできる。この場合、流路筒10の上端が連通孔RAに至る長さにすることが好ましい。
【0027】
また、以上の実施形態においては、弁座12と弁板26にはそれぞれ弁座シール部材12Aと弁板シール部材26Aが配設されているが、いずれか一方のみに配設した形態にすることもできる。さらには、弁座シール部材12Aと弁板シール部材26Aの両方の配設を省略することもできる。さらにまた、貫通孔KAに流路筒10を挿入した際にシーラントや発泡ウレタンを充填して、貫通孔KAと流路筒10との密着によって両者を固定させた場合には、弁座12をフランジ部で形成せず、流路筒10の下端の開口端面を弁座12にすることもできる。
【0028】
また、以上の実施形態においては、棟木MKの貫通孔KAに流路筒10を小屋裏空間KKから屋根裏空間YKに向けて挿通させているが、流路筒10は棟木MKの屋根裏空間YKから小屋裏空間KKに向けて挿通されてもよい。この場合、弁板26が屋根裏空間YKで弁座12に接離動するが、夏季における小屋裏空間KKの熱気は屋根裏空間YKに排出すれば、連通孔RAから外部空間GKに排出することは可能である。
【0029】
また、以上の実施形態においては、弁保持体20を内筒22と保持板24により形成された形態について説明しているが、弁保持体20はこの形態に限定されるものではない。例えば、図5に示すように、内筒22の下端部方所要高さ範囲に第2係合体16との干渉を回避するための切欠部22Aを形成すれば、保持板24の配設を省略し、内筒22のみで弁保持体20とすることができる。この場合、内筒22は内筒22の下端位置を弁座12よりも外方位置まで延設し、内筒22の下端に弁板26を取り付ければよい。なお、図5は表示を簡略化するため、流路筒10における一部の構成の表示を省略している。
【0030】
また、本実施形態においては、第1ばね30のみを熱感知式合金により形成した形態について説明しているが、第1ばね30と第2ばね40の両方を熱感知式合金により形成することもできる。この場合、外部気温が予め設定した第1所定気温よりも高い状態においては、弁座12から弁板26を離反させ、外部気温が予め設定した第2所定気温よりも低い状態においては、弁座12に弁板26を当接させるようなプロファイルを有する熱感知式合金の組み合わせを採用する必要がある。
【0031】
そして以上に説明した変形例の他、実施形態において説明した変形例等を適宜組み合わせた形態を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 流路筒,
12 弁座,12A 弁座シール部材,14 第1係合体,16 第2係合体,
20 弁保持体,
22 内筒,24 保持板,26 弁板,26A 弁板シール部材,28 第3係合体,
30 第1ばね,
32 第1ばねの上端,34 第1ばねの下端,
40 第2ばね,
42 第2ばねの上端,44 第2ばねの下端,
50 連通筒,
100 小屋裏空間通気制御装置,
DN 断熱材
GK 外部空間
KA 貫通孔
KK 小屋裏空間
MB 棟板金
MK 棟木
NJ 野地板
RA 連通孔
SP スペーサ
TK 垂木
YK 屋根裏空間
YZ 屋根材
図1
図2
図3
図4
図5