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特許7094621貨物列車の貨車情報通信システム及び機関車ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】貨物列車の貨車情報通信システム及び機関車ユニット
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/02 20060101AFI20220627BHJP
   B61K 13/00 20060101ALI20220627BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20220627BHJP
   B60L 15/40 20060101ALI20220627BHJP
   B60L 15/42 20060101ALI20220627BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20220627BHJP
【FI】
B61L25/02 C
B61K13/00 A
B61D37/00 G
B60L15/40 Z
B60L15/42
B60L3/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018056105
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019166963
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 與志
(72)【発明者】
【氏名】関谷 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】桑代 慎吾
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-154642(JP,A)
【文献】特表2009-521902(JP,A)
【文献】特開2016-132422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 25/02
B61K 13/00
B61D 37/00
B60L 15/40
B60L 15/42
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関車に複数の貨車が連結された貨物列車の貨車情報の通信システムであって、
前記機関車に搭載される機関車ユニットと、
前記機関車ユニットと通信するサーバと、を備え、
前記サーバ又は前記機関車ユニットは、
運行管理システムから、前記複数の貨車の連結位置と貨車番号との対応関係を含む編成情報を受信する編成情報受信器と、
前記運行管理システムとは異なる装置から、前記貨車番号と貨車IDとの対応関係を含むID対応関係情報を受信するID対応関係受信器と、
前記編成情報受信器及びID対応関係受信器で受信した情報に基づいて前記貨車IDと前記連結位置との対応関係を求め、前記機関車に連結された貨車の前記貨車IDを認識するID編成認識器と、を有し、
前記機関車ユニットは、前記ID編成認識器で認識された前記貨車IDを宛先として自己の機関車IDを無線送信する機関車無線通信器を有する、貨物列車の貨車情報通信システム。
【請求項2】
前記機関車無線通信器は、前記貨車IDに対応する前記貨車の異常又は正常に関する状態情報を受信する、請求項1に記載の貨物列車の貨車情報通信システム。
【請求項3】
前記状態情報は、前記貨車の手ブレーキの不緩解又は緩解に関する情報を含む、請求項2に記載の貨物列車の貨車情報通信システム。
【請求項4】
前記状態情報は、前記貨車の脱線の有無に関する情報を含む、請求項2又は3に記載の貨物列車の貨車情報通信システム。
【請求項5】
前記貨車に搭載され、前記貨車IDを有する貨車無線通信器を更に備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の貨物列車の貨車情報通信システム。
【請求項6】
前記貨車無線通信器は、それに対応する前記貨車の手ブレーキ状態検出器が手ブレーキの不緩解を検出すると、前記機関車IDを宛先として不緩解信号を送信する、請求項5に記載の貨物列車の貨車情報通信システム。
【請求項7】
前記貨車無線通信器は、それに対応する前記貨車の脱線検出器が脱線を検出すると、脱線検知信号をブロードキャスト送信し、
前記機関車ユニットは、前記脱線検知信号を受信したとき、前記脱線検知信号に含まれる発信元の貨車IDを、前記ID編成認識器により認識された前記貨車IDと前記連結位置との前記対応関係に照合することで、自列車の貨車の脱線であるか否かを判定する、請求項5又は6に記載の貨物列車の貨車情報通信システム。
【請求項8】
機関車に複数の貨車が連結された貨物列車の貨車情報の通信システムに用いられ、前記機関車に搭載される機関車ユニットであって、
運行管理システムから、前記複数の貨車の連結位置と貨車番号との対応関係を含む編成情報を受信する編成情報受信器と、
前記運行管理システムとは異なる装置から、前記貨車番号と貨車IDとの対応関係を含むID対応関係情報を受信するID対応関係受信器と、
前記編成情報受信器及びID対応関係受信器で受信した情報に基づいて前記貨車IDと前記連結位置との対応関係を求め、前記機関車に連結された貨車の前記貨車IDを認識するID編成認識器と、
前記ID編成認識器で認識された前記貨車IDを宛先として自己の機関車IDを無線送信する機関車無線通信器を有する、機関車ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機関車に複数の貨車が連結された貨物列車の貨車情報の通信システム及び機関車ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の車両が互いに連結された列車の車両間ネットワークとして、各車両で収集したデータを無線通信によりホスト装置に集約する通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の列車監視システムでは、各車両の台車に設置された各センサで検知した情報から台車又は軌道の異常を検知する従局が各車両に搭載され、各従局と無線マルチホップネットワークで接続される主局が先頭車に搭載される。従局で検知された異常情報は、複数の従局を順番に経由して主局に集約される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-154642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、行先の異なる貨車が混在して連結される貨物列車のように運行路線上の途中の中間駅で編成を頻繁に入れ替える列車の場合、車両編成の変更ごとに無線マルチホップネットワークを更新する必要が生じ、主局及び従局の通信アドレスを把握し直す必要があるため、適切なネットワークを再構築するための作業が煩雑になる。また、マルチホップ通信では、例えば最後尾の車両の従局で異常が検知されたとき、その異常情報は途中の全従局を順番に経由して先頭車の主局に送信されるため、主局が異常情報を受信するまで時間が掛かる。特に、貨物列車のように列車の連結車両数(貨車数)が多い場合には、従局の数も増えるため、通信の遅延が顕著になる。
【0005】
そこで本発明は、頻繁に編成を入れ換える貨物列車において、自車に連結された貨車と他の機関車に連結された貨車とを簡単に区別して迅速に無線通信できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る貨物列車の貨車情報通信システムは、機関車に複数の貨車が連結された貨物列車の貨車情報の通信システムであって、前記機関車に搭載される機関車ユニットと、前記機関車ユニットと通信するサーバと、を備え、前記サーバ又は前記機関車ユニットは、前記複数の貨車の連結位置と貨車番号との対応関係を含む編成情報を受信する編成情報受信器と、前記貨車番号と貨車IDとの対応関係を含むID対応関係情報を受信するID対応関係受信器と、前記編成情報受信器及びID対応関係受信器で受信した情報に基づいて前記貨車IDと前記連結位置との対応関係を求め、前記機関車に連結された貨車の前記貨車IDを認識するID編成認識器と、を有し、前記機関車ユニットは、前記ID編成認識器で認識された前記貨車IDを宛先として自己の機関車IDを無線送信する機関車無線通信器を有する。
【0007】
本発明の一態様に係る機関車ユニットは、機関車に複数の貨車が連結された貨物列車の貨車情報の通信システムに用いられ、前記機関車に搭載される機関車ユニットであって、前記複数の貨車の連結位置と貨車番号との対応関係を含む編成情報を受信する編成情報受信器と、前記貨車番号と貨車IDとの対応関係を含むID対応関係情報を受信するID対応関係受信器と、前記編成情報受信器及びID対応関係受信器で受信した情報に基づいて前記貨車IDと前記連結位置との対応関係を求め、前記機関車に連結された貨車の前記貨車IDを認識するID編成認識器と、前記ID編成認識器で認識された前記貨車IDを宛先として自己の機関車IDを無線送信する機関車無線通信器を有する。
【0008】
前記各構成によれば、無線通信の宛先として利用される貨車IDと貨車の固有情報である貨車番号との対応関係の情報を予め用意しておき、既に存在する貨物列車の編成情報を利用して互いの情報を突き合わせることで、頻繁に編成を入れ換える貨物列車において、自車(機関車)に連結された貨車の貨車IDを簡単かつ迅速に認識できる。そのため、機関車無線通信器は、それが搭載された機関車(自車)に連結された貨車のみに自車の機関車IDを通知しておくことができる。よって、自車に連結された貨車と他の機関車に連結された貨車とを簡単に区別して迅速に無線通信することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、頻繁に編成を入れ換える貨物列車において、自車に連結された貨車と他の機関車に連結された貨車とを簡単に区別して迅速に無線通信できる構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る貨車情報通信システムの模式図である。
図2図1に示す貨車情報通信システムのブロック図である。
図3図1に示す貨車情報通信システムの脱線検知時の模式図である。
図4図1に示す貨車情報通信システムの機関車ユニットにおける処理を説明するフローチャートである。
図5図1に示す貨車情報通信システムの機関車ユニットにおける脱線検知時の処理を説明するフローチャートである。
図6図1に示す貨車情報通信システムの貨車無線通信機における処理を説明するフローチャートである。
図7】変形例の貨車情報通信システムの模式図である。
図8図7に示す貨車情報通信システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係る貨車情報通信システム10の模式図である。図1に示すように、貨物列車1は、機関車2と、機関車2に直列に連結された複数の貨車3A~Cとを備える。図1では簡略化のため貨車3A~Cを3つだけ図示しているが、一般的には、貨物列車1の機関車2には多数(例えば、20両以上)の貨車が連結される。そして、貨物列車1が長距離運行する際には、物流コストが最小になるように効率良く貨車を組み合せるため、途中駅で目的地の異なる貨車を分離したり、途中駅で新たな貨車を合流させて連結したりして貨車の繋ぎ替えを行っている。そのため、途中駅で列車編成が頻繁に入れ替わることになる。
【0013】
図2は、図1に示す貨車情報通信システム10のブロック図である。図1及び2に示すように、貨車情報通信システム10は、サーバ11、機関車ユニット12、及び貨車無線通信器13A~Cを備える。サーバ11は、ネットワークN(例えば、インターネット)を介して機関車ユニット12と通信可能に接続されている。サーバ11は、各車両に固有の番号である車両番号と各車両の通信上のID情報である車両IDとの間の対応関係を有するID対応関係情報を予め記憶している。なお、サーバ11は、貨物列車1のID対応関係情報だけでなく、他の貨物列車のID対応関係情報も予め記憶している。
【0014】
車両番号は、機関車2の固有の番号である機関車番号と、貨車3A~Cの固有の番号である貨車番号とを含む。車両IDは、機関車2に搭載された機関車ユニット12の通信上のID情報である機関車ID(図1の「M0」)と、各貨車3A~Cに搭載された貨車無線通信器13A~Cの通信上のID情報である貨車ID(図1の「M1~Mn」)とを含む。サーバ11は、このID対応関係情報を機関車ユニット12にネットワークNを介して送信する。
【0015】
ネットワークNには、貨物列車1を含む各貨物列車の運行管理を行う指令所14に設けられた既存の運行管理システムが通信可能に接続されている。当該運行管理システムは、各貨車の出発駅/目的駅や配達納期等の要件を達成し且つ物流効率が最大化されるように貨車の組合せを最適化するプログラムに基づいて各貨物列車の編成計画を作成している。
【0016】
即ち、指令所14の運行管理システムは、各車両(機関車2及び貨車3A~Cを含む)の夫々の編成上の連結位置と、各車両の車両番号(機関車番号及び貨車番号)との対応関係を含む夫々の編成情報を有する。指令所14は、この夫々の編成情報から貨物列車1としての編成情報を抽出して機関車ユニット12にネットワークNを介して送信する。なお、連結位置は、1つの列車における先頭車両からの連結順番を意味し、例えば、機関車2の連結位置が「0」とすると、機関車2に直接連結された第1貨車の連結位置を「1」とし、第1貨車に連結された第2貨車の連結位置を「2」とする。
【0017】
機関車ユニット12は、貨車無線通信器13A~Cに対する通信とネットワークNを介した通信との間のゲートウェイである。機関車ユニット12は、編成情報受信部21、ID対応関係受信部22、ID編成認識部23、演算部24、機関車無線通信部25、及び状態出力部26を備える。編成情報受信部21は、指令所14の運行管理システムから貨物列車1の編成情報(連結位置及び車両番号の対応関係)を受信する。ID対応関係受信部22は、サーバ11からID対応関係情報(車両番号及び車両IDの対応関係)を受信する。
【0018】
ID編成認識部23は、編成情報受信部21で受信した貨物列車1の編成情報とID対応関係受信部22で受信したID対応関係情報とに基づいて、自列車の貨物列車1における貨車IDと、当該貨車IDに対応する貨車の連結位置と、当該貨車IDに対応する貨車の貨車番号との間の対応関係表Xを求め、当該貨物列車1の機関車2に連結された貨車3A~Cの貨車IDを認識する。
【0019】
演算部24は、ID編成認識部23で認識された列車編成の貨車IDを用いた無線通信を機関車無線通信部25に指令することや、機関車無線通信部25が受信した状態情報を状態出力部26に出力指令することなどを行う。機関車無線通信部25は、自己の通信上のID情報である機関車IDを記憶しており、その機関車IDを含む要求信号をID編成認識部23で認識された貨車ID(即ち、貨車3A~Cの貨車無線通信器13A~Cの貨車ID)を宛先として無線送信する。また、機関車無線通信部25は、貨車無線通信器13A~Cから各貨車3A~Cの異常又は正常に関する状態情報を含む信号を受信する。
【0020】
貨車無線通信器13A~Cは、貨車3A~Cにそれぞれ搭載されている。貨車無線通信器13A~Cには、それが搭載された貨車3A~Cが正常であるか異常であるかの状態を検出可能な検出器が接続されている。本実施形態では一例として、貨車無線通信器13A~Cには、手ブレーキ状態検出器28A~C及び脱線検出器29A~Cが接続されている。
【0021】
手ブレーキ状態検出器28A~Cは、それが搭載された貨車3A~Cの手ブレーキ(図示せず)が緩解であるか又は不緩解であるかを検出するものである。例えば、手ブレーキ状態検出器28A~Cは、手ブレーキが緩解位置にあるときにONとなり且つ手ブレーキが不緩解位置にあるときにOFFとなる近接スイッチを用いることができる。
【0022】
脱線検出器29A~Cは、それが搭載された貨車が脱線したことを検知するものである。例えば、脱線検出器29A~Cは、例えば、通常走行時とは異なる貨車3A~Cの上下振動加速度パターンを検知すると脱線が発生したと判断する方式を用いることができる。
貨車無線通信器13A~Cは、機関車無線通信部25からの要求信号に対する応答信号として、手ブレーキ状態検出器28A~Cで検出された手ブレーキ状態(緩解又は不緩解)と、貨車無線通信器13A~C自身の状態(正常又は異常)とを含む状態情報を、機関車無線通信部25の機関車IDを宛先として無線送信する。機関車無線通信部25及び貨車無線通信器13A~Cの無線方式としては、例えば、双方向通信が可能なLPWA(Low Power Wide Area)を用いることができる。
【0023】
図3は、図1に示す貨車情報通信システム10の脱線検知時の模式図である。図3に示すように、貨車無線通信器13A~Cは、脱線検出器29A~Cで脱線が検知されると、脱線検知信号をブロードキャスト送信する。当該脱線検知信号は、その発信元の貨車IDと脱線発生情報とを含む。例えば、貨物列車1の貨車3Bで脱線が発生すると、その貨車3Bに搭載された脱線検出器29Bによる脱線検出をトリガーとして貨車無線通信器13Bが脱線検知信号をブロードキャストする。そうすると、その貨車3Bが連結された機関車2の機関車ユニット12が当該脱線検知信号を受信すると共に、貨車無線通信器13Bの無線通信エリア内を走行中の近隣の他の貨物列車5の機関車6に搭載された機関車ユニット16も当該脱線検知信号を受信する。なお、貨物列車5は貨物列車1と同様の貨車情報通信システムを備える。
【0024】
機関車ユニット12は、受信した脱線検知信号に含まれる発信元の貨車ID(図3の「M2」)をID編成認識部23で認識された対応関係表Xと照合することで、自列車の貨車3Bの脱線であることを把握することができる。他方、機関車ユニット16は、受信した脱線検知信号に含まれる発信元の貨車ID(図3の「M2」)を自列車の対応関係表Yと照合することで、自列車5の貨車の脱線ではなく近隣他列車1の脱線であることを把握することができる。
【0025】
図4は、図1に示す貨車情報通信システム10の機関車ユニット12における処理を説明するフローチャートである。図4のシーケンスは、運行路線上の各駅の発車前に実施される。以下、図4の流れに沿って適宜図1及び2を参照しながら説明する。まず、機関車ユニット12は、発車しようとする現在駅が、運行路線上の最初の出発駅であるか又は出発駅と終着駅との間の中間駅であるかを判定する(ステップS1)。機関車ユニット12は、現在駅が出発駅又は中間駅ではない(即ち、終着駅である)と判定すると(ステップS1:N)、当該シーケンスを終了する。現在駅が出発駅又は中間駅であると判定されると(ステップS1:Y)、機関車ユニット12は指令所14に貨物列車1の編成情報(連結位置及び車両番号)を送信するように要求する(ステップS2)。
【0026】
次いで、機関車ユニット12は、サーバ11にID対応関係情報(車両ID及び車両番号)を送信するように要求する(ステップS3)。編成情報及びID対応関係情報を受信した機関車ユニット12は、前述した編成情報に関するID対応関係表Xを作成する(ステップS4)。次いで、機関車ユニット12は、発車準備完了が入力されたか否かを判定する(ステップS5)。運転士等から発車準備完了が入力されると(ステップS5:Y)、機関車ユニット12は、貨物列車1の先頭の貨車3Aの貨車ID(=M1)宛てに機関車IDを通知し、当該貨車ID(=M1)宛てに貨車3Aの状態(正常動作及び手ブレーキ緩解)を問い合わせる要求信号を送信する(ステップS6,7)。
【0027】
機関車ユニット12は、当該要求信号を受信した貨車無線通信器13Aから応答信号を受信し、その応答信号に含まれる貨車無線通信器13Aの動作状態の情報が正常を示しているか異常を示しているかを判定する(ステップS8)。貨車無線通信器13Aが異常であると判定されると(ステップS8:N)、その異常の貨車番号を記録する(ステップS9)。他方、貨車無線通信器13Aが正常であると判定されると(ステップS8:Y)、前記応答信号に含まれる貨車3Aの手ブレーキの状態の情報が緩解を示しているか不緩解を示しているかを判定する(ステップS10)。
【0028】
貨車3Aの手ブレーキが不緩解であると判定されると(ステップS10:N)、手ブレーキ不緩解の貨車番号を記録する(ステップS11)。他方、貨車3Aの手ブレーキが緩解であると判定されると(ステップS10:Y)、貨車IDを次の連結の貨車3Bの貨車ID(=M2)に更新し(ステップS12)、貨物列車1における全ての貨車の貨車IDとの通信が済んだか否かを判定する(ステップS13)。貨物列車1における全ての貨車の貨車IDとの通信が未だ済んでいないと判定されると(ステップS13:N)、ステップS7に戻る。貨物列車1における全ての貨車の貨車IDとの通信が済んだと判定されると(ステップS13:Y)、全ての貨車の貨車無線通信器13A~Cが正常かつ手ブレーキが緩解であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0029】
少なくとも1つの貨車無線通信器が異常であると判定されると(ステップS14:N)、指令所14に貨車交換を指示し(ステップS15)、少なくとも1つの手ブレーキが不緩解であると判定されると(ステップS14:N)、手ブレーキが不緩解である貨車の手ブレーキを緩解にするように指示し(ステップS15)、ステップS5に戻る。なお、指令所14への指示(ステップS15)は、ステップS8において貨車無線通信器13Aが異常であると判定されたとき、及び、ステップS10において貨車3Aの手ブレーキが不緩解であると判定されたときに、直ぐに実行されるようにしてもよい。
【0030】
図5は、図1に示す貨車情報通信システム10の機関車ユニット12における脱線検知時の処理を説明するフローチャートである。図5のシーケンスは、貨物列車1が運行路線上の最初の出発駅を発車してから終着駅に到達するまで継続実施される。以下、図5の流れに沿って適宜図1及び2を参照しながら説明する。機関車ユニット12は、脱線検知信号を受信したか否かを判定する(ステップS21)。機関車ユニット12が脱線検知信号を受信したと判定されると(ステップS21:Y)、その脱線検知信号に含まれる貨車IDを対応関係表Xと照合し、当該貨車IDが自列車(貨物列車1)の貨車IDであるか否かを判定する(ステップS22)。
【0031】
当該貨車IDが自列車のものであると判定されると(ステップS22:Y)、機関車ユニット12は、貨物列車1の至急停止を促す緊急停止発報を行う(ステップS23)。他方、当該貨車IDが自列車のものではない、即ち、近接他列車のものであると判定されると(ステップS22:N)、機関車ユニット12は、緊急停止発報よりも緊急度の低い非常停止発報を行う(ステップS24)。次いで、貨物列車1が終着駅に到達したか否かを判定する(ステップS25)。終着駅に到達していないと判定されると(ステップS25:N)、ステップS21に戻り、終着駅に到達したと判定されると(ステップS25:Y)、処理を終了する。
【0032】
図6は、図1に示す貨車情報通信システム10の貨車無線通信器13A~Cにおける処理を説明するフローチャートである。図6のシーケンスは、貨物列車1が運行路線上の最初の出発駅を発車してから終着駅に到達するまで継続実施される。以下、図6の流れに沿って適宜図1及び2を参照しながら説明する。貨車無線通信器13A~Cは、機関車ユニット12から機関車IDの通知及び状況問合せの要求信号を受信したか否かを判定する(ステップS31)。機関車IDの通知があり状況問合せの要求信号を受信したと判定されると(ステップS31:Y)、貨車無線通信器13A~Cは機関車IDを記録し(ステップS32)、貨車無線通信器13A~Cの状態を診断し(ステップS33)、手ブレーキ状態検出器28A~Cを用いて手ブレーキ状態を確認する(ステップS34)。
【0033】
次いで、貨車無線通信器13A~Cは、貨車無線通信器13A~Cの状態(正常/異常)と手ブレーキの状態とを、自列車の機関車ユニット12の機関車ID宛てに送信する(ステップS35)。例えば、貨車無線通信器13A~Cは、それに対応する貨車3A~Cの手ブレーキ状態検出器28A~Cが手ブレーキの不緩解を検出すると、自列車の機関車ユニット12の機関車IDを宛先として不緩解信号を送信する。
【0034】
次いで、走行速度がゼロでないか否か、即ち、走行中か否かを判定し(ステップS36)、走行速度がゼロであると判定されると(ステップS36:N)、ステップS31に戻り、走行速度がゼロでないと判定されると(ステップS36:Y)、脱線検出器29A~Cを用いて脱線監視を行う(ステップS38)。脱線が発生していないと判定されると(ステップS39:Y)、ステップS31に戻る。脱線が発生したと判定されると(ステップS39:N)、その脱線した貨車の貨車無線通信器13A~Cは、ブロードキャストで脱線検知信号を発報する(ステップS40)。
【0035】
以上に説明した構成によれば、無線通信の宛先として利用される貨車IDと貨車3A~Cの固有情報である貨車番号との対応関係の情報を予め用意しておき、貨物列車の既に存在する編成情報を利用して互いの情報を突き合わせることで、頻繁に編成を入れ換える貨物列車1において、自車(機関車2)に連結された貨車3A~Cの貨車IDを簡単かつ迅速に認識できる。そのため、機関車ユニット12は、それが搭載された機関車2(自車)に連結された貨車3A~Cのみに自車の機関車IDを通知しておくことができる。よって、自車に連結された貨車3A~Cと他の機関車に連結された貨車とを簡単に区別して迅速に無線通信することができる。
【0036】
また、貨車3A~Cの手ブレーキの不緩解情報を当該貨車3A~Cが連結された機関車2の機関車ユニット12だけに送信することができ、無線通信エリア内にいる他の機関車に誤って送信せずに済むため、手ブレーキの不緩解状態を解消する作業を的確に行うことができる。また、貨車3A~Cの脱線情報を当該貨車3A~Cが連結された機関車2以外の無線通信エリア内にいる他の機関車6の機関車ユニット16にも送信することができ、脱線に対する適切な処置を行うことができる。
【0037】
図7は、変形例の貨車情報通信システム110の模式図である。図8は、図7に示す貨車情報通信システム110のブロック図である。なお、前述の実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図7及び8に示すように、本変形例の貨車情報通信システム110では、ID編成認識部23が機関車ユニット112ではなくサーバ111にある。サーバ111は、指令所14から編成情報(連結位置及び車両番号の対応関係)を受信し、データベース119(例えば、クラウド)からID対応関係情報(車両番号及び車両IDの対応関係)を受信する。
【0038】
サーバ111は、機関車ユニット112の代わりに、編成情報受信部21、ID対応関係受信部22及びID編成認識部23を備える。サーバ111のID編成認識部23が、貨車IDと、当該貨車IDに対応する貨車の連結位置と、当該貨車IDに対応する貨車の貨車番号との間の対応関係表Xを求める演算を行い、その対応関係表Xを機関車ユニット112に送信する。このような構成によれば、前述の実施形態と同様の効果を得られると共に、機関車ユニット112の演算負担を減らすことが可能となる。他の構成は前述の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0039】
なお、機関車無線通信器及び貨車無線通信器の通信エリアを超えるほどに貨物列車の全長が長い場合には、列車中間位置に中間機関車を配置し、先頭機関車は先頭機関車から中間機関車までの貨車を管理し、中間機関車は中間機関車以降の貨車を管理して且つ先頭機関車にデータ転送するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1,5 貨物列車
2,6 機関車
3A~C,7A~C 貨車
10,110 貨車情報通信システム
11,111 サーバ
12,16,112 機関車ユニット
13A~C,17A~C 貨車無線通信器
21 編成情報受信部(編成情報受信器)
22 ID対応関係受信部(ID対応関係受信器)
23 ID編成認識部(ID編成認識器)
25 機関車無線通信部(機関車無線通信器)
28A~C 手ブレーキ状態検出器
29A~C 脱線検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8