(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】眩しさ抑制効果の指標化方法、評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20220627BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20220627BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
G01N21/59 M
G02B5/02 B
G02B5/00 Z
(21)【出願番号】P 2018168526
(22)【出願日】2018-09-10
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000148151
【氏名又は名称】株式会社川島織物セルコン
(74)【代理人】
【識別番号】100081891
【氏名又は名称】千葉 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150153
【氏名又は名称】堀家 和博
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 重喜
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/054804(WO,A1)
【文献】特開2011-047080(JP,A)
【文献】特開2017-155533(JP,A)
【文献】特開2018-035459(JP,A)
【文献】特開2016-042065(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0157427(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01M 11/00 - G01M 11/08
G02B 1/00 - G02B 1/18
G02B 5/00 - G02B 5/136
G09G 5/00 - G09G 5/40
H04N 1/46 - H04N 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状物における眩しさ抑制効果の指標化方法であって、
前記シート状物に略正対する方向から光が当該シート状物の一方の面に入射し当該シート状物の他方の面から透過した際、前記他方の面における輝度である正透過輝度と、
前記シート状物に略正対しない方向から光が当該シート状物の一方の面に入射し当該シート状物の他方の面から透過した際、前記他方の面における輝度である拡散透過輝度に基づいて、
グレア指数を算出
していて、
前記正透過輝度の1/3乗と、前記拡散透過輝度の1/3乗それぞれに所定の係数をかけた値の和を、
前記グレア指数として算出することを特徴とする眩しさ抑制効果の指標化方法。
【請求項2】
前記正透過輝度の1/3乗にかける正係数を、1.00とし、
前記拡散透過輝度の1/3乗にかける拡散係数を、1.00以上10.00以下として、
前記グレア指数を算出することを特徴とする請求項
1に記載の眩しさ抑制効果の指標化方法。
【請求項3】
前記拡散係数を、5.31として、
前記グレア指数を算出することを特徴とする請求項
2に記載の眩しさ抑制効果の指標化方法。
【請求項4】
シート状物における眩しさ抑制効果の評価方法であって、
請求項
3に記載の眩しさ抑制効果の指標化方法によって算出されたグレア指数が、120以下である場合に、前記シート状物には眩しさ抑制効果があるとすることを特徴とする眩しさ抑制効果の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛、カーテン等のシート状物の眩しさ抑制効果を、指標化する方法や評価方法、そして、この評価方法による所定のグレア指数を有したシート状物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、好適な採光性能を確保しつつ、ぎらつき感や眩しさを抑制でき、且つ意匠の自由度を高く確保できるカーテン、光制御シート及び光制御法が知られている(特許文献1)。
このうち、カーテンは、光制御シートを備えたカーテンであって、前記光制御シートは、入射面及び前記入射面に対向する出射面を有し、前記入射面から入射した光を偏向して前記出射面から出射する偏向層と、前記偏向層の前記出射面側に前記偏向層に対向して位置するように構成され、色を発現する第1の色層と、前記偏向層及び前記第1の色層に対向して位置するように構成され、光を拡散し且つ透過する第1の光拡散層と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたカーテン等について、ぎらつき感や眩しさを抑制できているか否かの指標には、ヘーズが用いられ、そのヘーズは「JIS-K-7136:2000」に準拠して測定される(特許文献1の段落0071参照)。
この「JIS-K-7136:2000」は、あくまで、プラスチック透明材料のヘーズの求め方であるため、透明ではない糸や繊維などから構成されたカーテン等については、ぎらつき感や眩しさの抑制を、的確に指標化・評価しているとは言い難い。
【0005】
そこで、本発明は、正透過輝度と拡散透過輝度に基づいてグレア指数を算出したり、算出されたグレア指数が120以下である場合に眩しさ抑制効果があると評価したり、シート状物のグレア指数が120以下であることにより、「眩しさ抑制効果の指標化・評価の的確化」や、「的確に評価された眩しさ抑制効果を有するシート状物」を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る眩しさ抑制効果の指標化方法は、シート状物における眩しさ抑制効果の指標化方法であって、前記シート状物に略正対する方向から光が当該シート状物の一方の面に入射し当該シート状物の他方の面から透過した際、前記他方の面における輝度である正透過輝度と、前記シート状物に略正対しない方向から光が当該シート状物の一方の面に入射し当該シート状物の他方の面から透過した際、前記他方の面における輝度である拡散透過輝度に基づいて、グレア指数を算出していて、前記正透過輝度の1/3乗と、前記拡散透過輝度の1/3乗それぞれに所定の係数をかけた値の和を、前記グレア指数として算出することを第1の特徴とする。
尚、本発明における「シート状物に略正対する方向」とは、シート状物1の一方の面1a(及び/又は他方の面1bなど)との成す角が90°である方向(法線方向)だけでなく、シート状物1の一方の面1a(及び/又は他方の面1bなど)との成す角が87.5°以上90°未満である方向も含まれる。
又、本発明における「シート状物に略正対しない方向」とは、シート状物1の一方の面1a(及び/又は他方の面1bなど)との成す角が0°以上87.5°未満である方向である。
【0008】
本発明に係る眩しさ抑制効果の指標化方法の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記正透過輝度の1/3乗にかける正係数を、1.00とし、前記拡散透過輝度の1/3乗にかける拡散係数を、1.00以上10.00以下として、前記グレア指数を算出する点にある。
【0009】
本発明に係る眩しさ抑制効果の指標化方法の第3の特徴は、上記第2の特徴に加えて、前記拡散係数を、5.31として、前記グレア指数を算出する点にある。
【0010】
これらの特徴により、シート状物1に略正対する方向から光が当該シート状物1の一方の面1aに入射し当該シート状物1の他方の面1bから透過した際、他方の面1bにおける輝度である正透過輝度Sと、シート状物1に略正対しない方向から光が当該シート状物1の一方の面1aに入射し当該シート状物1の他方の面1bから透過した際、他方の面1bにおける輝度である拡散透過輝度Kに基づいて、グレア指数Gを算出することによって、例えば、透明ではない糸等から構成される布帛1’やカーテン1”などのシート状物1に対しても、特許文献1のように、プラスチック透明材料のヘーズの求め方である「JIS-K-7136:2000」を用いる場合より、的確に眩しさ抑制効果を指標化することが可能となる(「眩しさ抑制効果の指標化の的確化」)。
【0011】
又、正透過輝度Sの1/3乗(3分の1乗)と拡散透過輝度Kの1/3乗(3分の1乗)それぞれに所定の係数をかけた値の和に基づいて、グレア指数Gを算出したり、正透過輝度Sの1/3乗にかける正係数Wsを1.00とし、拡散透過輝度Kの1/3乗にかける拡散係数Wkを1.00以上10.00以下や5.31とすることによって、シート状物1における眩しさ抑制効果を、より的確に指標化できる(更なる「眩しさ抑制効果の指標化の的確化」)。
【0012】
本発明に係る眩しさ抑制効果の評価方法は、シート状物における眩しさ抑制効果の評価方法であって、上述した第3の特徴を有した眩しさ抑制効果の指標化方法によって算出されたグレア指数が、120以下である場合に、前記シート状物には眩しさ抑制効果があるとすることを第1の特徴とする。
【0013】
この特徴により、正透過輝度Sの1/3乗に1.00をかけた値と、拡散透過輝度Kの1/3乗に5.31をかけた値の和であるグレア指数Gが120以下である場合に、シート状物1には眩しさ抑制効果があるとすることによって、例えば、透明ではない糸等から構成された布帛1’やカーテン1”などのシート状物1に対しても、シート状物1における眩しさ抑制効果の有無について、的確に評価(判断)できる(「眩しさ抑制効果の評価の的確化」)。
【0014】
その他、シート状物1は、所定のグレア指数を有したシート状物であって、このシート状物に略正対する方向から光が当該シート状物の一方の面に入射し当該シート状物の他方の面から透過した際、前記他方の面における輝度である正透過輝度の1/3乗に1.00をかけた値と、前記シート状物に略正対しない方向から光が当該シート状物の一方の面に入射し当該シート状物の他方の面から透過した際、前記他方の面における輝度である拡散透過輝度の1/3乗に5.31をかけた値の和であるグレア指数が、120以下であっても良い。
【0015】
この場合、正透過輝度Sの1/3乗に1.00をかけた値と、拡散透過輝度Kの1/3乗に5.31をかけた値の和であるグレア指数Gを120以下とすることによって、例えば、透明ではない糸等から構成された布帛1’やカーテン1”などのシート状物1に対しても、的確に評価(判断)された眩しさ抑制効果を有したシート状物1が実現できるとも言える。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る抑制効果の指標化方法、評価方法、及び、シート状物によると、正透過輝度と拡散透過輝度に基づいてグレア指数を算出したり、算出されたグレア指数が120以下である場合に眩しさ抑制効果があると評価したり、シート状物のグレア指数が120以下であることにより、「眩しさ抑制効果の指標化・評価の的確化」や、「的確に評価された眩しさ抑制効果を有するシート状物」を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る眩しさ抑制効果の指標化方法における各正透過輝度と拡散透過輝度に関する概要図であって、(a)が正透過輝度を測定する条件を示し、(b)が拡散透過輝度を測定する条件を示す。
【
図2】眩しさ抑制効果の指標化方法において、シート状物の等級を分類した官能評価場所を示す図面代用写真である。
【
図3】眩しさ抑制効果の指標化方法において、正係数を1.00とし且つ拡散係数を0.0010から1000.0000の範囲で変化させた場合のグレア指数と、官能評価の等級との相関を表すグラフであって、(a)は拡散係数を0.0010とした場合のグラフを示し、(b)は拡散係数を0.0032とした場合のグラフを示し、(c)は拡散係数を0.0100とした場合のグラフを示し、(d)は拡散係数を0.0316とした場合のグラフを示し、(e)は拡散係数を0.1000とした場合のグラフを示し、(f)は拡散係数を0.3162とした場合のグラフを示し、(g)は拡散係数を1.0000とした場合のグラフを示し、(h)は拡散係数を3.1623とした場合のグラフを示し、(i)は拡散係数を10.0000とした場合のグラフを示し、(j)は拡散係数を31.6230とした場合のグラフを示し、(k)は拡散係数を100.0000とした場合のグラフを示し、(l)は拡散係数を316.3200とした場合のグラフを示し、(m)は拡散係数を1000.0000とした場合のグラフを示す。
【
図4】眩しさ抑制効果の指標化方法において、拡散係数と、グレア指数と官能評価の相関係数との関係を示すグラフである。
【
図5】眩しさ抑制効果の指標化方法において、正係数を1.00とし且つ拡散係数を5.31とした場合のグレア指数と、官能評価の等級との相関を表すグラフである。
【
図6】眩しさ抑制効果の指標化方法において、正係数を1.00とし且つ拡散係数を5.31とした場合のグレア指数と、可視光透過率との関係を表すグラフである。
【
図7】本発明に係るシート状物(布帛、カーテン)を例示する図面代用写真であって、(a)はあるシート状物(具体例1-2)を示し、(b)は別のシート状物(具体例1-25)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<眩しさ抑制効果の指標化方法>
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1~6には、本発明に係る眩しさ抑制効果の指標化方法が示されている。
この指標化方法は、シート状物1における眩しさ抑制効果を指標化する方法である。
【0019】
眩しさ抑制効果の指標化方法は、後述する正透過輝度Sと、後述する拡散透過輝度Kに基づいて、後述するグレア指数Gを算出することをもって、シート状物1における眩しさ抑制効果を指標化する。
眩しさ抑制効果の指標化方法は、正透過輝度Sと拡散透過輝度Kに基づいてグレア指数Gを算出するのであれば、何れの方法であっても良いが、例えば、正透過輝度Sの1/3乗(3分の1乗)と、拡散透過輝度Kの1/3乗(3分の1乗)それぞれに所定の係数(正係数Ws、拡散係数Wk)をかけた(重み付けをした)値の和を、グレア指数Gとして算出しても良く、この場合、正係数Ws、拡散係数Wkは、後述する所定の値や、所定の範囲であっても構わない。
【0020】
その他、眩しさ抑制効果の指標化方法は、後述する正透過輝度Sと拡散透過輝度Kに基づいてグレア指数Gを算出する方法として、正透過輝度Sの3/10乗(10分の3乗)と、拡散透過輝度Kの3/10乗(10分の3乗)それぞれに所定の係数をかけた値の和をグレア指数Gとして算出したり、正透過輝度Sの33/100乗(100分の33乗)と、拡散透過輝度Kの33/100乗(100分の33乗)それぞれに所定の係数をかけた値の和をグレア指数Gとして算出する等であっても良く、この場合も、それら所定の係数について、何れの値や範囲であっても構わない。
以下は主に、眩しさ抑制効果の指標化方法は、正透過輝度Sの1/3乗と、拡散透過輝度Kの1/3乗それぞれに所定の係数(正係数Ws、拡散係数Wk)をかけた値の和をグレア指数Gとする以下の式(1)を用いて算出するとして、主に述べる。
【0021】
【0022】
次に、指標化する対象であるシート状物1について、以下に述べる。
【0023】
<シート状物1>
図1、2、7に示されたように、本発明に係るシート状物1は、一方の面1aと他方の面1bを有したシート状の物である。
シート状物1は、一方の面1aと他方の面1bを有し且つシート状であれば、何れの構成でも良いが、例えば、後述する布帛1’や、カーテン1”を構成する生地、カーテン1”の1つであるレースカーテンなどの他、縫製等によりヒダが形成されたカーテン1”、柄等として部分的に厚みが異なる布帛1’など、表面(一方の面1a及び/または他方の面1b)において凹凸を有したシート状物等を含んでも良い。
【0024】
つまり、シート状物1における一方の面1aや他方の面1bとは、略平面だけでなく、凹凸を有していたり、連続する複数のヒダを有する波状曲面であっても良い。
その他、シート状物1は、ブラインド、ロールスクリーン、プリーツスクリーン、ローマンシェード等における生地などや、間仕切り、壁装、緞子張り、床、天井、タペストリー、舞台幕及び額装品などの内装材におけるシート状物の他、照明カバーなど様々なインテリア部材におけるシート状物であっても良い。
【0025】
シート状物1の色彩についても、赤色系、橙色系、黄色系、緑色系、青色系、紫色系、黒色系、白色系など何れの色調でも良く、彩度や明度についても何れの値でも構わず、透明な素材で構成されているか否かも問わない。
その他、シート状物1は、フィルムなどで構成されていても良く、フィルムを構成する素材としては、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリアミド(PA)樹脂などの合成樹脂などや、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
このようなシート状物1の1つである布帛1’について、以下に述べる。
【0026】
<布帛1’>
図1、2、7に示されたように、布帛1’も、上述したシート状物1と同様に、一方の面1a’と他方の面1b’を有したシート状の物である。
又、布帛1’は、経糸及び緯糸で織成される織物や、経糸又は緯糸で編成される編物の他、不織布や、それらを組み合わせたものである。
【0027】
布帛1’が織物の場合、何れの織組織でも構わないが、例えば、平織や綾織、朱子織、二重織、二重織以上の多重織などであっても良い。
布帛1’が編物の場合、デンビー編(トリコット編)や、ラッシェル編、ダブルラッシェル編、バンダイク編(アトラス編)、コード編などの経糸で編成される経編や、平編(天竺編)、ゴム編(リブ編)、パール編などの緯糸で編成される緯編など、それぞれ何れの組織であっても構わない。
【0028】
布帛1’が不織布である場合には、例えば、往復するニードルに繊維を引っ掛けて繊維相互間を交絡したニードルパンチ不織布であっても良く、その他、熱融着性繊維を含有し加熱により成形されたサーマルボンド不織布、ノズルから紡糸された長繊維(フィラメント)を動くスクリーン上に積層して結合させたスパンボンド不織布、ステッチボンド不織布等をニードルパンチ法などによって結合させたものであっても構わない。
布帛1’は、それを構成(織成、編成)する繊維としては、特に限定されないが、熱可塑性の素材であるポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)、ポリウレタン(PU)繊維などの合成繊維でも良く、その他、ガラス繊維、羊毛、絹などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
【0029】
布帛1’を構成する繊維の繊度も、何れの値でも良いが、例えば、総繊度で、20dtex以上3000dtex以下であっても構わない。又、布帛1’を構成する繊維は、上述したように、透明であるか否かを問わず、その断面形状も、扁平断面(扁平断面糸)や、丸断面(丸断面糸)など何れでも良い。
布帛1’は、所望により、酸化チタン、炭酸カルシウム等の体質顔料やフィラー(充填材)を任意に添加したり、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤、撥水剤、防汚剤、着色剤、香料、発泡剤等を添加した素材を用いても良い。
【0030】
このような布帛1’は、後述するカーテン1”の生地などに用いられたり、ブラインドや、ロールスクリーン、プリーツスクリーン、ローマンシェードにおける生地、間仕切り、壁装、緞子張り、床、天井、タペストリー、舞台幕及び額装品などの内装材の素材として用いられたり、その他、照明カバーなど様々なインテリア部材の素材などに、利用されていても構わない。
このような布帛1’などを生地として用いたカーテン1”について、以下に述べる。
【0031】
<カーテン1”>
図1、2、7に示したように、カーテン1”も、上述したシート状物1と同様に、一方の面1a”と他方の面1b”を有したシート状の物である。
カーテン1”も、一方の面1a”と他方の面1b”を有し且つシート状であれば、何れの構成でも良いが、例えば、レースカーテンなどの他に、縫製等によりヒダが形成されたカーテン1”など、表面(一方の面1a”及び/または他方の面1b”)において凹凸を有していても構わない。
【0032】
ここで、カーテン1”が表面において凹凸を有している場合のうち、例えば、カーテン1”に縫製等により複数のヒダが形成されている場合において、「カーテン1”に略正対する方向」とは、カーテン1”の各ヒダにおける山それぞれを含む面(山面や、平面視で山を結ぶ直線、一方の面1a”とも言える)との成す角が90°である方向だけでなく、カーテン1”の山面との成す角が87.5°以上90°未満である方向も含まれる。
尚、この場合、「カーテン1”に略正対する方向」とは、カーテン1”の各ヒダにおける谷それぞれを含む面(谷面や、平面視で谷を結ぶ直線、他方の面1b”とも言える)との成す角が90°である方向だけでなく、カーテン1”の谷面との成す角が87.5°以上90°未満である方向も含まれるとも言える。
【0033】
又、この場合、「カーテン1”に略正対する方向」とは、カーテン1”の各ヒダにおける山と谷の中間点それぞれを含む面(中面や、平面視で中間点を結ぶ直線とも言える)との成す角が90°である方向だけでなく、カーテン1”の中面との成す角が87.5°以上90°未満である方向も含まれるとも言える。
更に、この場合、「カーテン1”に略正対しない方向」とは、カーテン1”の各ヒダにおける山面、谷面、又は、中面との成す角が0°以上87.5°未満である方向である。
【0034】
その他、柄等として部分的に厚みが異なるなど、カーテン1”が表面において凹凸を有している場合においては、「カーテン1”に略正対する方向」とは、カーテン1”の各凹凸における凸の頂点、凹の底点、又は、頂点と底点の中間点それぞれを含む面(頂面、底面、又は、中面や、平面視で頂点、底点、又は、中間点を結ぶ直線とも言える)との成す角が90°である方向だけでなく、カーテン1”の頂面、底面、又は、中面との成す角が87.5°以上90°未満である方向も含まれるとも言える(これは、柄等として部分的に厚みが異なる布帛1’などのシート状物1でも同様である)。
又、この場合、「カーテン1”に略正対しない方向」とは、カーテン1”の各凹凸における頂面、底面、又は、中面との成す角が0°以上87.5°未満である方向である(これは、柄等として部分的に厚みが異なる布帛1’などのシート状物1でも同様である)。
【0035】
カーテン1”を構成する素材は、上述した布帛1’であっても良いが、その他、フィルムなどであっても良い。
尚、カーテン1”を窓や部屋の開口部等に設けた場合は、カーテン1”において、窓等に近い側の面(窓等側の面)が、上述した一方の面1a”となり、カーテン1”においては裏面であるとも言え、カーテン1”において、窓等から遠い側の面(屋内側の面)が、上述した他方の面1b”となり、カーテン1”においては表面であるとも言える。
ここまで述べたカーテン1”や布帛1’などを含むシート状物1における眩しさ抑制効果の指標化方法で用いる正透過輝度Sや拡散透過輝度Kについて、以下に述べる。
【0036】
<正透過輝度S>
図1(a)に示したように、正透過輝度Sとは、上述したシート状物1に略正対する方向から、光が、当該シート状物1の一方の面1aに入射し、当該シート状物1の他方の面1bから透過した(通り抜けた)際、他方の面1bにおける輝度である。
尚、シート状物1に「略正対する方向から」、光が、当該シート状物1の一方の面1aに入射し、当該シート状物1の他方の面1bから透過することを、光が「正透過する」とも言う。
【0037】
正透過輝度Sにおいて上述した光とは、シート状物1に対して入射・正透過できるのであれば、何れの光源Hから照射された光でも良いが、例えば、LED(LED電球、株式会社ヤザワコーポレーション製のLDR5NNE11など))や、蛍光灯、白熱灯、HIDランプなどの室内照明であっても良い。
上述した光源Hの位置も、シート状物1の略正対する方向から、その一方の面1aに光を入射させられるのであれば、特に限定はないが、例えば、シート状物1の一方の面1a側で、且つ、当該シート状物1の略正対する方向上において、略2mの位置等であっても良い。
【0038】
上述した光の輝度も、シート状物1に対して入射・正透過できるのであれば、特に限定はないが、例えば、53万(530000)cd/m2 等に調整されていても良い。
又、正透過輝度Sそのものの測定は、シート状物1に略正対する方向から光が当該シート状物1の一方の面1aに入射し当該シート状物1の他方の面1bから透過した際の他方の面1bにおける輝度を測定できるのであれば、その条件等は特に限定されないが、例えば、シート状物1の他方の面1bで、且つ、当該シート状物1の略正対する方向上で、シート状物1の他方の面1bから略1mの位置に設置した輝度計Mによって測定しても良い。
【0039】
この輝度計Mは、正透過輝度Sを測定できるのであれば、特に限定はないが、例えば、コニカミノルタジャパン株式会社製のLS-150であっても良い。
正透過輝度Sは、測定できるのであれば、何れの場所での測定でも良いが、例えば、暗室内で測定しても良く、上述した光源H以外の照明は、全て消灯した状態で測定することとしても構わない。
ここまで述べた正透過輝度Sそのものの値も、特に限定はないが、直射光等をふまえ、7万(70000)cd/m2 以下等であっても良い。
【0040】
<拡散透過輝度K>
図1(b)に示したように、拡散透過輝度Kとは、上述したシート状物1に略正対しない方向から、光が、当該シート状物1の一方の面1aに入射し、当該シート状物1の他方の面1bから透過した(通り抜けた)際、他方の面1bにおける輝度である。
尚、シート状物1に「略正対しない方向から」、光が、当該シート状物1の一方の面1aに入射し、当該シート状物1の他方の面1bから透過することを、光が「拡散透過する」とも言う。
【0041】
拡散透過輝度Kにおいて上述した光も、シート状物1に対して入射・拡散透過できるのであれば、何れの光源Hから照射された光でも良いが、例えば、LED(LED電球、株式会社ヤザワコーポレーション製のLDR5NNE11など))や、蛍光灯、白熱灯、HIDランプなどの室内照明であっても良い。
上述した光源Hの位置も、シート状物1の略正対しない方向から、その一方の面1aに光を入射させられるのであれば、特に限定はないが、例えば、シート状物1の一方の面1a側で、且つ、当該シート状物1に対して上方斜め略45°から光を照射できる位置等であっても良い。尚、光源Hにおけるシート状物1からの距離も、特に限定はない。
【0042】
上述した光源Hの数も、特に限定はないが、例えば、4つであったり、1つや2つ、3つ、5つ以上であっても良い。
このような拡散透過輝度Kにおける光について更に詳解すれば、シート状物1に対して入射・拡散透過できるのであれば、シート状物1の一方の面1aにおける照度が40000lx(ルクス)等となるように調整されていても良い。尚、シート状物1の一方の面1aにおける照度は、何れの方法で測定されていても良い。
【0043】
又、拡散透過輝度Kそのものの測定は、シート状物1に略正対しない方向から光が当該シート状物1の一方の面1aに入射し当該シート状物1の他方の面1bから透過した際の他方の面1bにおける輝度を測定できるのであれば、その条件等は特に限定されないが、例えば、上述した正透過輝度Sと同様に、シート状物1の他方の面1bで、且つ、当該シート状物1の略正対する方向上で、シート状物1の他方の面1bから略1mの位置に設置した輝度計Mによって測定しても良い。
この輝度計Mも、拡散透過輝度Kを測定できるのであれば、特に限定はないが、例えば、上述した正透過輝度Sと同様で、コニカミノルタジャパン株式会社製のLS-150であっても良い。
【0044】
拡散透過輝度Kも、測定できるのであれば、何れの場所での測定でも良いが、例えば、上述した正透過輝度Sと同様で、暗室内で測定しても良く、上述した光源H以外の照明は、全て消灯した状態で測定することとしても構わない。
ここまで述べた正透過輝度Sや拡散透過輝度Kにかける正係数Wsや拡散係数Wkについて、以下に述べる。
【0045】
<正係数Wsと拡散係数Wk>
正係数Wsと拡散係数Wkは、上述したシート状物1における眩しさ抑制効果の指標化方法において用いる係数であって、このうち、正係数Wsは、上述した正透過輝度Sの1/3乗(3分の1乗、3乗根とも言える)にかける係数であり、拡散係数Wkは、拡散透過輝度Kの1/3乗(3分の1乗、3乗根とも言える)にかける係数である。
正係数Wsと拡散係数Wkは、正透過輝度Sの1/3乗と、拡散透過輝度Kの1/3乗それぞれにかけて重み付けをすることから、重み付けをする係数(加重係数)であるとも言える。
【0046】
正係数Wsは正透過輝度Sの1/3乗にかけ、拡散係数Wkは拡散透過輝度Kの1/3乗にかけるのであれば、それらの値は特に限定されないが、例えば、正係数Wsが1.00である場合に、拡散係数Wkは1.00以上10.00以下の範囲における何れかの値や5.31であっても(後述するように、正係数Wsを1.00と置いた場合の拡散係数Wkの値を導出すると、拡散係数Wkは1.00以上10.00以下の範囲における何れかの値や5.31となっても)良い。
その他、正係数Wsと拡散係数Wkは、正係数Wsが2.00である場合に拡散係数Wkは2.00以上20.00以下の範囲における何れかの値や10.62であったり、正係数Wsが3.00である場合に拡散係数Wkは3.00以上30.00以下の範囲における何れかの値や15.93であったり、正係数Wsが0.50である場合に拡散係数Wkは0.50以上5.00以下の範囲における何れかの値や2.655であったり、逆に、拡散係数Wkが5.00である場合に正係数Wsが0.10以上2.00以下の範囲における何れかの値であっても構わない。
【0047】
<グレア指数G>
グレア(glare )指数Gは、上述したシート状物1における眩しさ抑制効果を指標化した指数(指標)であって、上述した正透過輝度Sと拡散透過輝度Kに基づいて算出する値である。
グレア指数Gは、正透過輝度Sと拡散透過輝度Kに基づいて算出されるのであれば、何れの算出方法であっても良いが、主に、上述した正透過輝度Sの1/3乗に正係数Wsをかけた値と、拡散透過輝度Kの1/3乗に拡散係数Wkをかけた値の和を、グレア指数Gとして算出しても良い。
【0048】
尚、グレア指数Gは、当然、正透過輝度Sの3/10乗と、拡散透過輝度Kの3/10乗それぞれに所定の正係数Wsや拡散係数Wkをかけた値の和をグレア指数Gとして算出したり、正透過輝度Sの33/100乗と、拡散透過輝度Kの33/100乗それぞれに所定の正係数Wsや拡散係数Wkをかけた値の和をグレア指数Gとして算出する等であっても良い。
以下、グレア指数Gは、正透過輝度Sの1/3乗に正係数Wsとして1をかけた値(つまり、正透過輝度Sの1/3乗の値そのもの)と、拡散透過輝度Kの1/3乗に拡散係数Wkとして5.31をかけた値の和をグレア指数Gとする以下の式(2)を用いて算出するとして、主に述べる。
【0049】
【0050】
<眩しさ抑制効果の評価方法>
眩しさ抑制効果の評価方法は、本発明に係る眩しさ抑制効果を評価する方法であって、ここまで述べたシート状物1における眩しさ抑制効果の指標化方法によるグレア指数Gを用いて、シート状物1における眩しさ抑制効果の有無について、的確に評価(判断)できる。
眩しさ抑制効果の評価方法は、グレア指数Gを用いて、シート状物1における眩しさ抑制効果の有無を評価できれば、特に限定はないが、例えば、グレア指数Gのうち、上述した式(2)によって算出されたグレア指数Gを用いて、シート状物1における眩しさ抑制効果の有無を評価(判断)しても良い。
【0051】
具体的には、眩しさ抑制効果の評価方法は、上述した式(2)によって算出されたグレア指数Gが、120以下である場合に、シート状物1には眩しさ抑制効果がある(ローグレア(グレアが低い、眩しさが低い)仕様である)と評価しても良く、好ましくは110以下である場合に、シート状物1には眩しさ抑制効果が更にあると、より好ましくは100以下である場合に、シート状物1には眩しさ抑制効果が更に多くあると評価(判断)しても構わない。
【0052】
<可視光透過率T>
その他、シート状物1における可視光透過率Tは、上述した眩しさ抑制効果の評価方法に併用して、シート状物1における「屋外から室内の見え難さ(又は、室内から屋外の見え難さ)」を評価するための指標となると言える。
尚、本発明における「可視光」とは、JIS-Z-8120:2001に準じる可視光(可視放射)であって、詳解すれば、「目に入って視感覚を起こすことができ、一般に可視放射の波長範囲の短波長限界は360~400nm、長波長限界は760~830nmである放射」を言う。
【0053】
又、本発明における「シート状物1における可視光透過率T」とは、JIS-Z-8120:2001に準じる可視光の透過率であって、詳解すれば、「透過光の放射束又は光束Φt と入射光の放射束又は光束Φi の比Φt /Φi 」を言い、一般に百分率(%)で表す。
ここで、放射束又は光束Φt やΦi の単位は「ルーメン(lm)」であり、照度の単位「ルクス(lx)」は「ルーメン毎平方メートル(lm/m2 )」でもあることから、本発明における「可視光透過率T」は、シート状物1において、(他方の面1bの照度)÷(一方の面1aの照度)であっても良い。
【0054】
シート状物1における可視光透過率Tの具体的な値は、特に限定はないが、例えば、当該可視光透過率Tは、30%以下、好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下であっても良い。
【0055】
これは、シート状物1における可視光透過率Tが20%より大きく30%以下であれば、「屋外から室内の見え難さ」の評価方法としては、当該シート状物1には「屋外から室内の見え難さ(又は、室内から屋外の見え難さ)」の効果があると評価できるとも言え、シート状物1における可視光透過率Tが20%以下であれば、「屋外から室内の見え難さ」の評価方法としては、当該シート状物1には「屋外から室内の見え難さ」の効果が更にあると評価できるとも言える。
又、シート状物1における可視光透過率Tが30%より大きければ、「屋外から室内の見え難さ」の評価方法としては、当該シート状物1には「屋外から室内の見え難さ」の効果がないと評価できるとも言える。
【0056】
ここまで述べた可視光透過率Tに、上述した式(2)により算出したグレア指数Gを用いた眩しさ抑制効果の評価方法を併用して、シート状物1に対するより的確な評価(判断)を行うことも出来る。
例えば、
図6は、縦軸は、可視光透過率Tであり、横軸は、上述した式(2)により算出したグレア指数Gであり、各種のシート状物1(カーテン1”の1つであるレースカーテンなど)における可視光透過率Tと上述したグレア指数Gとの関係を表すグラフである。
【0057】
この
図6中、(1) の○で囲まれたシート状物1は、上述した式(2)により算出したグレア指数Gが120以下で且つ可視光透過率Tが20%より大きく30%以下であるため、眩しさを抑制しながら、室内から屋外も見え易いシート状物1であるとも言える。
又、
図6中、(2) の○で囲まれたシート状物1は、上述した式(2)により算出したグレア指数Gが120以下で且つ可視光透過率Tが20%より大きく30%以下であるため、眩しさを抑制しながら、屋外から室内の見え難い(プライバシーが守れる)シート状物1であるとも言える。
更に、
図6中、(3) の○で囲まれたシート状物1は、上述した式(2)により算出したグレア指数Gが120以下で且つ可視光透過率Tが20%より大きく30%以下であるため、眩しさを十分に抑制できる(例えば、西日を遮る)シート状物1であるとも言える。
【0058】
<カバーファクターCF>
その他、シート状物1が布帛1’の1種である織物である場合、そのカバーファクターCFは、上述した眩しさ抑制効果の評価方法に関わるとも言える。
ここで、カバーファクターCFとは、織物を構成する糸の繊度と密度により、以下の式(3)より求められる。
【0059】
【0060】
この式(3)により算出したカバーファクターCFは、何れの値であっても良いが、例えば、1300以上5000以下であっても良く、好ましくは1500以上5000以下、更に好ましくは2200以上5000以下であっても構わない。
ここで、織物であるシート状物1におけるカバーファクターCFが2200以上5000以下であれば、眩しさ抑制効果の評価方法としては、当該織物であるシート状物1には眩しさ抑制効果があると評価できるとも言え、織物であるシート状物1におけるカバーファクターCFが1300未満であれば、眩しさ抑制効果の評価方法としては、当該織物であるシート状物1には眩しさ抑制効果がないと評価できるとも言える。
【0061】
又、織物であるシート状物1におけるカバーファクターCFが1300以上1500未満で且つ当該織物であるシート状物1に捲縮加工糸が50%以上含まれ、50g/m2 以上の目付であり且つ扁平断面糸が含まれないのであれば、眩しさ抑制効果の評価方法としては、当該シート状物1には眩しさ抑制効果があると評価できるとも言える。尚、捲縮加工糸としては、ウーリー加工をした糸(ウーリー加工糸)、タスラン加工糸や、捲縮させたポリエステル糸などがある。
更に、織物であるシート状物1におけるカバーファクターCFが1500以上2200未満で且つ当該織物であるシート状物1に扁平断面の糸が含まれていないのであれば、眩しさ抑制効果の評価方法としては、当該シート状物1には眩しさ抑制効果があると評価できるとも言える。
【0062】
<試験1(正係数Wsと拡散係数Wkの導出)>
ここまで述べた眩しさ抑制効果の評価方法や指標化方法において、的確な正係数Wsと拡散係数Wkを、シート状物1の具体例1-1~1-29を用いて導出する試験1を行った。
尚、シート状物1の具体例1-1~1-29は、布帛1’の1つである織物であって、これらのうち、具体例1-2を
図7(a)に示し、具体例1-25を
図7(b)に示す。
【0063】
このような具体例1-1~1-29について、それぞれの正透過輝度S、正透過輝度Sの1/3乗の値、拡散透過輝度K、拡散透過輝度Kの1/3乗の値、及び、眩しさ抑制効果の官能評価における等級Lを表1に示す。
この官能評価では、6つの等級Lに分類されており、その基準は、「6:全く眩しくない」、「5:眩しくない」、「4:あまり眩しくない」、「3:少し眩しい」、「2:眩しい」、「1:著しく眩しい」とした。
又、この等級Lの分類は、
図2に示す官能評価場所にて、α「シート状物1(織物やレースカーテン)越しの太陽光が直接目に入る場合に感じる眩しさ」と、β「拡散透過光によるシート状物1(織物やレースカーテン)の他方の面1bそのものによる眩しさ」を意識して目視により判断した。
【0064】
【0065】
試験1では、上述した表1で示した正透過輝度S、拡散透過輝度K及び官能評価の等級Lを持つ具体例1-1~1-29を用いて、上述した式(1)における正係数Wsを1.00と置いた場合の拡散係数Wkの値を、0.0010から1000.0000までの範囲で変化させた(具体的には、13個の0.0010、0.0032、0.0100、0.0316、0.1000、0.3162、1.0000、3.1623、10.0000、31.6230、100.0000、316.2300、1000.0000とした)際、グレア指数Gと、官能評価の等級Lとの相関が最も高くなる拡散係数Wkを導出するため、13個の拡散係数Wkにおける相関結果を、
図3の(a)~(m)のグラフに示す。
尚、
図3の(a)~(m)の13個のグラフにおいて、縦軸は、グレア指数G(より詳しくは、各拡散係数Wkにおいて算出した具体例1-1~1-29(29個の具体例)それぞれのグレア指数Gを、当該29個のグレア指数G全てから算出した平均値で割った値)であり、横軸は、官能評価の等級Lであり、13個のグラフ中央下部における「R
2 =」右に記載された数値が、各拡散係数Wkにおける相関係数R
2 を示す。
ここで、13個の拡散係数Wkと、これらに対応する13個の相関係数R
2 は、改めて表2に示しておく。
【0066】
【0067】
<正係数Ws=1.00、拡散係数Wk=1.00以上10.00以下の導出>
試験1における表2や
図3の(a)~(m)に示されたように、上述した式(1)における正係数Wsが1.00である場合の拡散係数Wkの値が1.0000、3.1623、10.000の時に、それらに対応する相関係数R
2 が、0.7343、0.8543、0.8395であって、相関が強いとされる0.7000を何れも超えている。
特に、拡散係数Wkが3.1623や10.0000である際に、相関係数R
2 が他よりも高くなっていることから、拡散係数Wkが4.7以上6.0の間に絞った拡散係数Wkと、各拡散係数Wkにおける相関係数R
2 との更なる相関結果を、
図4のグラフに示す。
【0068】
尚、
図4のグラフにおいて、縦軸は、相関係数R
2 であり、横軸は、拡散係数Wkであり、この
図4のグラフ中央下部の上段における「y=-0.0037x
2 +0.0393x+0.07745」が便宜的に縦軸をy、横軸をxと置いた際における拡散係数Wkと上述した相関係数R
2 との相関を表す上に凸の2次関数の式を示し、
図4のグラフ中央下部の下段における「R
2 =」右に記載された数値が、拡散係数Wkと上述した相関係数R
2 の更なる相関係数R
2 を示す。
この
図4中の2次関数の式(x=5.31で頂点となる上に凸の上述した2次関数の式「y=-0.0037x
2 +0.0393x+0.07745」)において、xが1.0000以上10.000以下の範囲のうち、その範囲の一端(拡散係数Wk=1.0000)から頂点(拡散係数Wk=5.3100)までの左半分は、一様に増加しているため、当然に、拡散係数Wkが1.0000の時の相関係数R
2 の値「0.7343」が最小値となり、拡散係数Wkが1.0000より大きく、5.3100より小さい範囲における何れの値も、最小値の「0.7343」よりは大きくなり、相関が強いとされる0.7000を超えている。
【0069】
一方、xが1.0000以上10.000以下の範囲のうち、その範囲の他端(拡散係数Wk=10.0000)から頂点(拡散係数Wk=5.3100)までの右半分は、一様に減少しているため、当然に、拡散係数Wkが10.0000の時の相関係数R2 の値「0.8395」が最小値となり、拡散係数Wkが5.3100より大きく、10.0000より小さい範囲における何れの値も、最小値の「0.8395」よりは大きくなり、相関が強いとされる0.7000を超えている。
従って、上述した式(1)における正係数Wsが1.00である場合に拡散係数Wkの値が、1.00以上10.00以下であれば、シート状物1における眩しさ抑制効果を、的確に指標化していることがわかる。
そして、この的確な眩しさ抑制効果の指標化方法よって算出されたグレア指数Gをふまえた眩しさ抑制効果の評価方法も、シート状物1における眩しさ抑制効果の有無を、的確に評価(判断)できる。
【0070】
<正係数Ws=1.00、拡散係数Wk=5.31の導出>
試験1における
図4に示されたように、上述した上に凸の2次関数の式「y=-0.0037x
2 +0.0393x+0.07745」における頂点でのxの値が、相関係数R
2 との相関が最も高い時の拡散係数Wkであり、このxの値は、この2次関数の式を微分した1次関数の式「y’=-0.0074x+0.0393」にy’=0を代入することで導出できることから、x=0.0393÷0.0074=5.3108108・・・≒5.31が求められる。
つまり、この5.31が、相関係数R
2 との相関が最も高い時の拡散係数Wkである。
【0071】
この確認として、上述した式(1)における正係数Wsが1.00である場合に拡散係数Wkの値を5.31とした際のグレア指数Gと、官能評価の等級Lとの相関結果も、念のために、
図5のグラフに示す。
尚、
図5のグラフにおいて、縦軸は、グレア指数Gそのものであり、横軸は、官能評価の等級Lであり、この
図5のグラフ上部右寄りにおける「R
2 =」右に記載された数値が、拡散係数Wkを5.31とした際の相関係数R
2 を示す。
【0072】
この
図5より、拡散係数Wkを5.31とした際の相関係数R
2 が0.8794であることがわかるが、この0.8794は、上述した表2や
図3の(a)~(m)中で最も高かった拡散係数Wkが3.1623や10.0000である際の相関係数R
2 の値(0.8543や0.8395)より高くなっていることからも、この5.31が、相関係数R
2 との相関が最も高い時の拡散係数Wkであると言える。
【0073】
従って、上述した式(1)における正係数Wsが1.00である場合に拡散係数Wkの値が5.31(つまり、上述した式(2))であれば、シート状物1における眩しさ抑制効果を、更に的確に指標化していることがわかる。
そして、この更に的確な眩しさ抑制効果の指標化方法よって算出されたグレア指数Gをふまえた眩しさ抑制効果の評価方法も、シート状物1における眩しさ抑制効果の有無を、更に的確に評価(判断)できる。
【0074】
<具体例2-1~2-12の詳細>
ここからは、シート状物1の具体例2-1~2-12について、以下に詳解する。
尚、シート状物1の具体例2-1~2-12も、布帛1’の1つである織物である。
又、具体例2-1~2-12の織物におけるグレア指数Gは、上述の式(2)により算出した値を用い、具体例2-1~2-12の織物におけるカバーファクターCFは、上述の式(3)により算出した値を用いた。
【0075】
<具体例2-1>
具体例2-1は、経糸をポリエステルマルチフィラメント糸(100dtex、72フィラメント、フルダル、加工後の密度188本/インチ)とし、緯糸をポリエステルマルチフィラメント糸(110dtex、72フィラメント、フルダル、生機の密度110本/インチ、加工後の密度110本/インチ)として、平織組織で織成した。
尚、具体例2-1は、グレア指数Gが90.21であり、カバーファクターCFは3034であり、目付は151.2g/m2 であり、フルダル糸は重量比で100.0%含まれ、扁平断面糸は含まれておらず、捲縮加工糸(ウーリー加工糸など)は含まれていない。
【0076】
<具体例2-2>
具体例2-2は、経糸をポリエステルウーリー加工糸(84dtex、36フィラメント、セミダル、加工後の密度70本/インチ)とし、緯糸をポリエステルウーリー加工糸(167dtex、72フィラメント、フルダル、生機の密度71本/インチ、加工後の密度73本/インチ)とポリエステルウーリー加工糸(84dtex、36フィラメント、ブライト、生機の密度17本/インチ、加工後の密度17本/インチ)とポリエステルウーリー加工糸(334dtex、48フィラメント、ブライト、生機の密度3本/インチ、加工後の密度3本/インチ)として、平織組織で織成した。
尚、具体例2-2は、グレア指数Gが96.42であり、カバーファクターCFは1796であり、目付は93.0g/m2 であり、フルダル糸は重量比で58.2%含まれ、セミダル糸は重量比で30.2%含まれ、ブライト糸は重量比で11.6%含まれ、扁平断面糸は含まれておらず、捲縮加工糸であるウーリー加工糸は重量比で100.0%含まれている。
【0077】
<具体例2-3>
具体例2-3は、経糸をポリエステルウーリー加工糸(30dtex、36フィラメント、セミダル、加工後の密度100本/インチ)とし、緯糸をポリエステル紡績糸(綿番手で24番手(246dtex)、単糸、セミダル、生機の密度13本/インチ、加工後の密度14本/インチ)とポリエステルウーリー加工糸(167dtex、144フィラメント、フルダル、生機の密度38本/インチ、加工後の密度40本/インチ)とポリエステルマルチフィラメント糸(110dtex、48フィラメント、ブライト、生機の密度51本/インチ、加工後の密度53本/インチ)とポリエステルマルチフィラメント糸(334dtex、72フィラメント、ブライト、生機の密度3本/インチ、加工後の密度3本/インチ)として、平織組織で織成した。
尚、具体例2-3は、グレア指数Gが100.39であり、カバーファクターCFは1895であり、目付は80.7g/m2 であり、フルダル糸は重量比で34.6%含まれ、セミダル糸は重量比で29.3%含まれ、ブライト糸は重量比で36.1%含まれ、扁平断面糸は含まれておらず、捲縮加工糸であるウーリー加工糸は重量比で47.1%含まれている。
【0078】
<具体例2-4>
具体例2-4は、経糸をポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex、72フィラメント、フルダル、加工後の密度141本/インチ)とし、緯糸をポリエステルウーリー加工糸(334dtex、72フィラメント、スーパーブライト、生機の密度0.4本/インチ、加工後の密度1本/インチ)とポリエステル紡績糸(綿番手で30番手(197dtex)、単糸、フルダル、生機の密度42本/インチ、加工後の密度44本/インチ)とポリエステルウーリー加工糸(84dtex、30フィラメント、セミダル、生機の密度42本/インチ、加工後の密度44本/インチ)として、平織組織で織成した。
尚、具体例2-4は、グレア指数Gが102.88であり、カバーファクターCFは2331であり、目付は135.8g/m2 であり、フルダル糸は重量比で85.0%含まれ、セミダル糸は重量比で14.6%含まれ、ブライト糸は重量比で0.4%含まれ、扁平断面糸は含まれており、捲縮加工糸であるウーリー加工糸は重量比で15.0%含まれている。
【0079】
<具体例2-5>
具体例2-5は、経糸をポリエステルウーリー加工糸(50dtex、144フィラメント、フルダル、加工後の密度89本/インチ)とし、緯糸をポリエステルタスラン加工糸(110dtex、48フィラメント、ブライト、生機の密度76本/インチ、加工後の密度76本/インチ)として、平織組織で織成した。
尚、具体例2-5は、グレア指数Gが115.89であり、カバーファクターCFは1426であり、目付は59.1g/m2 であり、フルダル糸は重量比で35.2%含まれ、セミダル糸は含まれておらず、ブライト糸は重量比で64.8%含まれ、扁平断面糸は含まれておらず、捲縮加工糸であるウーリー加工糸及びタスラン加工糸は重量比で100.0%含まれている。
【0080】
<具体例2-6>
具体例2-6は、経糸をポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex、36フィラメント、セミダル、加工後の密度135本/インチ)とし、緯糸をポリエステルマルチフィラメント糸(195dtex、84フィラメント、セミダル、生機の密度35本/インチ、加工後の密度39本/インチ)とポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex、36フィラメント、セミダル、生機の密度70本/インチ、加工後の密度77本/インチ)として、平織組織で織成した。
尚、具体例2-6は、グレア指数Gが117.48であり、カバーファクターCFは2488であり、目付は143.8g/m2 であり、フルダル糸は含まれておらず、セミダル糸は重量比で100.0%含まれ、ブライト糸は含まれておらず、扁平断面糸は含まれておらず、捲縮加工糸(ウーリー加工糸など)は含まれていない。
【0081】
<具体例2-7>
具体例2-7は、経糸をポリエステルウーリー加工糸(175dtex、36フィラメント、セミダル、加工後の密度50本/インチ)とし、緯糸をポリエステル紡績糸(綿番手で10番手(591dtex)、単糸、セミダル、生機の密度26本/インチ、加工後の密度27本/インチ)とポリエステル紡績糸(綿番手で30番手(197dtex)、単糸、セミダル、生機の密度26本/インチ、加工後の密度27本/インチ)として、平織組織で織成した。
尚、具体例2-7は、グレア指数Gが119.76であり、カバーファクターCFは1697であり、目付は120.9g/m2 であり、フルダル糸は含まれておらず、セミダル糸は重量比で100.0%含まれ、ブライト糸は含まれておらず、扁平断面糸は含まれておらず、捲縮加工糸であるウーリー加工糸は重量比で32.8%含まれている。
【0082】
<具体例2-8>
具体例2-8は、経糸をポリエステルマルチフィラメント糸(110dtex、48フィラメント、フルダル、加工後の密度78本/インチ)とし、緯糸をポリエステルマルチフィラメント糸(110dtex、48フィラメント、フルダル、生機の密度68本/インチ、加工後の密度69本/インチ)として、平織組織で織成した。
尚、具体例2-8は、グレア指数Gが120.62であり、カバーファクターCFは1542であり、目付は66.7g/m2 であり、フルダル糸は重量比で100.0%含まれ、セミダル糸は含まれておらず、ブライト糸は含まれておらず、扁平断面糸は含まれておらず、捲縮加工糸(ウーリー加工糸など)は含まれていない。
【0083】
<具体例2-9>
具体例2-9は、経糸をポリエステルウーリー加工糸(84dtex、36フィラメント、セミダル、加工後の密度71本/インチ)とし、緯糸をポリエステルウーリー加工糸(66dtex、4フィラメント、スーパーブライト、生機の密度27本/インチ、加工後の密度29本/インチ)とポリエステルウーリー加工糸(67dtex、48フィラメント、セミダル、生機の密度27本/インチ、加工後の密度29本/インチ)とポリエステルウーリー加工糸(44dtex、2フィラメント、セミダル、生機の密度27本/インチ、加工後の密度29本/インチ)として、平織組織で織成した。
尚、具体例2-9は、グレア指数Gが130.36であり、カバーファクターCFは1316であり、目付は48.7g/m2 であり、フルダル糸は含まれておらず、セミダル糸は重量比で83.8%含まれ、ブライト糸は重量比で16.2%含まれ、扁平断面糸は含まれておらず、捲縮加工糸であるウーリー加工糸は重量比で100.0%含まれている。
【0084】
<具体例2-10>
具体例2-10は、経糸をポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex、36フィラメント、セミダル、加工後の密度39本/インチ)とポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex、24フィラメント、セミダル、加工後の密度39本/インチ)とし、緯糸をポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex、30フィラメント、スーパーブライト、生機の密度60本/インチ、加工後の密度60本/インチ)とポリエステル紡績糸(綿番手で30番手(197dtex)、単糸、セミダル、生機の密度30本/インチ、加工後の密度30本/インチ)として、平織組織で織成した。
尚、具体例2-10は、グレア指数Gが131.50であり、カバーファクターCFは1677であり、目付は71.1g/m2 であり、フルダル糸は含まれておらず、セミダル糸は重量比で71.7%含まれ、ブライト糸は重量比で28.3%含まれ、扁平断面糸は含まれ、捲縮加工糸(ウーリー加工糸など)は含まれていない。
【0085】
<具体例2-11>
具体例2-11は、経糸をポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex、36フィラメント、セミダル、加工後の密度97本/インチ)とし、緯糸をポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex、30フィラメント、セミダル、生機の密度116本/インチ、加工後の密度117本/インチ)として、平織組織で織成した。
尚、具体例2-11は、グレア指数Gが154.33であり、カバーファクターCFは1961であり、目付は79.1g/m2 であり、フルダル糸は含まれておらず、セミダル糸は重量比で100.0%含まれ、ブライト糸は含まれておらず、扁平断面糸は含まれ、捲縮加工糸(ウーリー加工糸など)は含まれていない。
【0086】
<具体例2-12>
具体例2-12は、経糸をポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex、36フィラメント、セミダル、加工後の密度70本/インチ)とし、緯糸をポリエステルマルチフィラメント糸(60dtex、4フィラメント、ブライト、生機の密度45本/インチ、加工後の密度45本/インチ)とポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex、30フィラメント、スーパーブライト、生機の密度45本/インチ、加工後の密度46本/インチ)として、平織組織で織成した。
尚、具体例2-12は、グレア指数Gが161.44であり、カバーファクターCFは1412であり、目付は53.9g/m2 であり、フルダル糸は含まれておらず、セミダル糸は重量比で45.3%含まれ、ブライト糸は重量比で54.7%含まれ、扁平断面糸は含まれ、捲縮加工糸(ウーリー加工糸など)は含まれていない。
【0087】
ここで、上述した具体例2-1~2-12におけるグレア指数G、カバーファクターCF、目付、フルダル糸・セミダル糸・ブライト糸の重量比、扁平断面糸・捲縮加工糸(ウーリー加工糸やタスラン加工糸など)の有無について、改めて表3に示す。
【0088】
【0089】
この表3より、上述した式(3)により算出されたカバーファクターCFが2200以上である具体例2-1、2-4、2-6は、扁平断面糸の有無や、捲縮加工糸(ウーリー加工糸など)の有無・含有量によらず、上述した式(2)により算出されたグレア指数Gが120以下となっている。
又、上述した式(3)により算出されたカバーファクターCFが1500以上2200未満である具体例2-2、2-3、2-7、2-8、2-10、2-11のうち、扁平断面糸が含まれていない具体例2-2、2-3、2-7については、上述した式(2)により算出されたグレア指数Gが120以下となっている。尚、扁平断面糸が含まれていない具体例2-8については、上述した式(2)により算出されたグレア指数Gがほぼ120となっていることから、グレア指数Gは125以下であり、布帛1’である織物における眩しさ抑制効果は、ある程度あると評価(判断)できるとも言える。
更に、上述した式(3)により算出されたカバーファクターCFが1300以上1500未満である具体例2-5、2-9、2-12のうち、捲縮加工糸が重量比で50%以上含まれ、50g/m2 以上の目付であり且つ扁平断面糸が含まれない具体例2-5については、上述した式(2)により算出されたグレア指数Gが120以下となっている。
従って、シート状物1である織物におけるカバーファクターCFが2200以上5000以下であるか、シート状物1である織物におけるカバーファクターCFが1500以上2200未満で且つ扁平断面糸が含まれないか、又は、シート状物1である織物におけるカバーファクターCFが1300以上1500未満で且つ捲縮加工糸(ウーリー加工糸やタスラン加工糸など)が50%以上含まれ、50g/m2 以上の目付であり且つ扁平断面糸が含まれないのであれば、上述した式(2)により算出されたグレア指数Gが120以下であるとも言える。
尚、グレア指数Gが120以下であるか否かによって、具体例2-1~2-7は実施例で、具体例2-8~2-12は比較例であるとも言える。
【0090】
<その他>
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。眩しさ抑制効果の指標化方法、眩しさ抑制効果の評価方法、及び、シート状物1(布帛1’、カーテン1”)等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
眩しさ抑制効果の指標化方法は、上述した式(1)や(2)などを用いて算出するなど、正透過輝度Sと拡散透過輝度Kに基づいてグレア指数Gを算出するのであれば、何れの方法でも良いが、正透過輝度Sの1/3乗に正係数Wsをかけた値と、拡散透過輝度Kの1/3乗に拡散係数Wkをかけた値の和をグレア指数Gとして算出する以外にも、例えば、正透過輝度Sの1/3乗に正係数Wsをかけた値と、拡散透過輝度Kの1/3乗に拡散係数Wkをかけた値の積や差、除をグレア指数Gとして算出しても良い。
【0091】
又、眩しさ抑制効果の指標化方法においては、上述した正係数Wsや拡散係数Wkをかけたのは、正透過輝度Sや拡散係数Wkの1/3乗であったが、正透過輝度Sや拡散係数Wkの3/10乗や、33/100乗、333/1000乗、3333/10000乗等それぞれに、所定の正係数Wsや拡散係数Wkをかけた値の和や積、差、除などであっても良い。
更に、眩しさ抑制効果の指標化方法における上述した式(1)の代わりに、以下の式(4)で示される加重平均に基づいて、グレア指数Gを算出しても良い。
【0092】
【0093】
眩しさ抑制効果の評価方法は、上述した式(2)を用いて算出したグレア指数Gが120以下である場合に、シート状物1には眩しさ抑制効果があると評価(判断)する以外に、上述した式(1)や式(4)を用いて算出したグレア指数Gに基づいて、シート状物1に眩しさ抑制効果があるか否かを評価(判断)したり、正透過輝度Sの1/3乗に正係数Wsをかけた値と、拡散透過輝度Kの1/3乗に拡散係数Wkをかけた値の積や差、除であるグレア指数Gに基づいて、シート状物1に眩しさ抑制効果があるか否かを評価(判断)しても構わない。
その他、眩しさ抑制効果の評価方法は、正透過輝度Sや拡散係数Wkの3/10乗や、33/100乗、333/1000乗、3333/10000乗等それぞれに、所定の正係数Wsや拡散係数Wkをかけた値の和や積、差、除などであるグレア指数Gに基づいて、シート状物1に眩しさ抑制効果があるか否かを評価(判断)しても良い。
【0094】
その他、眩しさ抑制効果の評価方法は、上述した式(2)を用いて算出したグレア指数Gが125以下である場合に、シート状物1には眩しさ抑制効果があると評価(判断)しても良い。
その他、眩しさ抑制効果の評価方法は、上述した式(1)における正係数Wsと拡散係数Wkを、正係数Wsが2.00である際に拡散係数Wkは2.00以上20.00以下の範囲における何れかの値や10.62として算出したグレア指数Gが240以下である場合にシート状物1には眩しさ抑制効果があると評価(判断)しても良く、正係数Wsが3.00である際に拡散係数Wkは3.00以上30.00以下の範囲における何れかの値や15.93として算出したグレア指数Gが360以下である場合にシート状物1には眩しさ抑制効果があると評価(判断)したり、正係数Wsが0.50である際に拡散係数Wkは0.50以上5.00以下の範囲における何れかの値や2.655である場合にシート状物1には眩しさ抑制効果があると評価(判断)したり、逆に、拡散係数Wkが5.00である際に正係数Wsが0.10以上2.00以下の範囲における何れかの値である場合にシート状物1には眩しさ抑制効果があると評価(判断)しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の眩しさ抑制効果の指標化方法や評価方法は、布帛やカーテン生地、カーテンそのものなどのシート状物における眩しさ抑制効果の指標化や評価に利用でき、ここで、シート状物とは、布帛やカーテン生地の他、ブラインド、ロールスクリーン、プリーツスクリーン、ローマンシェード等における生地などや、間仕切り、壁装、緞子張り、床、天井、タペストリー、舞台幕及び額装品などの内装材におけるシート状物、照明カバーなどの他、様々なインテリア部材におけるシート状物も含む。
又、本発明のシート状物とは、織物、編物、不織布などの布帛や、カーテン、ブラインド、ロールスクリーン、プリーツスクリーン、ローマンシェード等における生地など、間仕切り、壁装、緞子張り、床、天井、タペストリー、舞台幕及び額装品などの内装材におけるシート状物や、照明カバーなどの他、様々なインテリア部材におけるシート状物などに幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 シート状物
S 正透過輝度
K 拡散透過輝度
G グレア指数
Ws 正係数
Wk 拡散係数