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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】基板実装端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/58 20110101AFI20220627BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20220627BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
H01R12/58
H01R4/02 Z
H05K1/18 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017178050
(22)【出願日】2017-09-15
(65)【公開番号】P2019053921
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】林 利秋
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-151035(JP,A)
【文献】特開2011-054528(JP,A)
【文献】特開2016-092233(JP,A)
【文献】特開2003-101094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 3/00- 4/22
12/00-12/91
24/00-24/86
43/02
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状に延び、回路基板に設けられているスルーホールに挿し込まれて該回路基板に半田付けされる基板実装端子であって、
当該基板実装端子の延びる向きに延びた凹溝を有し、
前記凹溝が、当該基板実装端子の延びる向きに順次につながった複数の溝部分であって、当該基板実装端子の延びる向きに交わる向きに広がる横断面上の該凹溝の窪みの面積が各溝部分内では溝部分ごとに一定であって当該基板実装端子挿し込みの向きの先端部から離れるにしたがって該窪みの面積が順次に窄まった複数の溝部分からなることを特徴とする基板実装端子。
【請求項2】
当該基板実装端子の、前記凹溝を埋めた時の前記横断面上の形状が略矩形形状を有し、前記凹溝が、該基板実装端子の対向する2面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板実装端子。
【請求項3】
前記凹溝が、前記回路基板の厚み寸法よりも長く延びた溝であることを特徴とする請求項1または2に記載の基板実装端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状に延び、回路基板に設けられているスルーホールに挿し込まれて回路基板に半田付けされるタイプの基板実装端子に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板の必要箇所にペースト状の半田を予め塗布あるいは印刷し、その後半田を加熱するリフロー半田付けが広く行われている。このリフロー半田付けでは、回路基板の、半田ペーストが塗布あるいは印刷された箇所に電子部品等を配置してリフロー炉により加熱する。これにより、その電子部品等が回路基板に半田付けされる。
【0003】
ここで、回路基板のスルーホールに半田ペーストを予め埋め込んでおき、そこに棒状の端子を挿し込んでリフロー半田付けをすることを考える。この場合、端子をスルーホールに挿し込むことによってスルーホール内の半田ペーストの一部が押し出される。このため、何か対策を講じておかないと、その押し出されて端子の先端に付着していた半田ペーストがリフロー炉で加熱したときに溶けて滴下してしまいがちとなる。半田が滴下すると、半田付けのための半田が不足し、半田付け不良となるおそれがある。
【0004】
特許文献1には、端子先端部分を、プレス加工によってスルーホールの内周面形状に相似しない形状とすることが提案されている。そして、この特許文献1には、さらに、その端子先端部分に、スルーホールへの挿し込みの向きに延びる凹溝を形成することが提案されている。この特許文献1には、凹溝により毛細管現象が積極的に惹起され凹溝に沿って半田上がりが促進される旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-54528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上掲の特許文献1に開示されている凹溝は、長手方向に同一断面か、あるいは先端から離れるにしたがって拡大する断面を有する溝である。このため、毛細管現象が十分には惹起されずに溶けた半田の滴下が防ぎきれず、半田付けのための半田が不足するおそれが残る。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、回路基板のスルーホールに挿し込むタイプであって、信頼性の高いリフロー半田付けが可能な基板実装端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の基板実装端子は、棒状に延び、回路基板に設けられているスルーホールに挿し込まれて回路基板に半田付けされる基板実装端子であって、
この基板実装端子の延びる向きに延びた凹溝を有し、
上記凹溝が、この基板実装端子の延びる向きに順次につながった複数の溝部分であって、この基板実装端子の延びる向きに交わる向きに広がる横断面上の凹溝の窪みの面積が各溝部分内では溝部分ごとに一定であってこの基板実装端子挿し込みの向きの先端部から離れるにしたがって窪みの面積が順次に窄まった複数の溝部分からなることを特徴とする。
【0009】
本発明の基板実装端子は、先端部から離れるにしたがって窪みの面積が窄まった形状の凹溝を有する。ここで、毛細管現象は、より狭いところを目指して液体が浸入する現象である。このため、本発明の基板実装端子によれば、毛細管現象が強力に惹起され、半田不足のない信頼性の高い半田付けが実現する。
【0013】
ここで、段階的に順次に窄まった形状の凹溝の場合であっても、同一断面あるいは先端から離れるにしたがって拡大する断面を有する凹溝と比べ、毛細管現象が強く惹起される。
【0020】
さらに、本発明の基板実装端子において、上記凹溝が、回路基板の厚み寸法よりも長く延びた溝であることが好ましい。
【0021】
回路基板の厚み寸法よりも長く延びた凹溝とすることで、回路基板の厚み寸法未満の長さの溝と比べ、毛細管現象が強く惹起される。
【発明の効果】
【0022】
以上の本発明によれば、回路基板のスルーホールに挿し込むタイプの、信頼性の高いリフロー半田付けが可能な基板実装端子が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態としての基板実装端子の先端部分を示す斜視図である。
図2】回路基板のスルーホールに挿し込まれた状態の、本実施形態の基板実装端子を示した斜視図である。
図3】本実施形態の基板実装端子を示した図である。
図4】凹溝が存在しない基板実装端子の半田付け時に生じる現象を示した模式図である。
図5】本実施形態の基板実装端子の半田付け時に生じる現象を示した模式図である。
図6】第1変形例の基板実装端子を示した図である。
図7】第2変形例の基板実装端子を示した図である。
図8】第3変形例の基板実装端子を示した図である。
図9】凹溝の各種の断面形状を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態としての基板実装端子の先端部分を示す斜視図である。
【0026】
この基板実装端子10は、棒状に延びている。そして、回路基板20(図2参照)に設けられているスルーホール21に挿し込まれて、その回路基板20に半田付けされる。
【0027】
この基板実装端子10には、凹溝11が形成されている。この凹溝11は、挿し込みの向きの基板実装端子10の先端部10aに先端11aを有し、基板実装端子10の延びる向きに後端11bにまで延びている。本実施形態の基板実装端子10は、この基板実装端子10の延びる向きとは交わる向きに広がる横断面上の、この凹溝11を埋めたときの形状が、略矩形形状を有する。そして、本実施形態の基板実装端子10には、凹溝11が、スタンピング加工により、基板実装端子10の対向する2面に形成されている。そして、この凹溝11は、横断面上の凹溝11の窪みの面積が先端部10aから離れるにしたがって連続的に窄まった形状の溝である。この凹溝11の形状の詳細については、後述する。
【0028】
図2は、回路基板のスルーホールに挿し込まれた状態の、本実施形態の基板実装端子を示した斜視図である。
【0029】
この基板実装端子10は、その先端部10aを先頭にして回路基板20のスルーホール21に挿し込まれる。このスルーホール21の内壁面には、金属めっきが施されている。また、回路基板20の表裏両面の、スルーホール21の周りには、金属膜からなるランド22が広がっている。基板実装端子10は、回路基板20のスルーホール21に、この図2に示すように挿し込まれて、リフロー半田付けにより、スルーホール21の内壁面のめっき、および回路基板20の表裏両面のランド22に半田付けされる。この半田付けにより、回路基板20の表裏両面の、基板実装端子10の周りには半田フィレット(不図示)が形成される。
【0030】
ここで、この基板実装端子10に形成されている凹溝11は、回路基板20の厚み寸法よりも長く延びている。そして、半田付けにあたっては、先端部10aから離れた側について、その凹溝11の終端11bまで覆うように半田フィレットが形成される。すなわち、この凹溝11は、毛細管現象を惹起させる役割りのほか、その終端11bを半田フィレットが覆っているか否かを観察することで、半田付けの良否判定の指標としても用いることができる。
【0031】
図3は、本実施形態の基板実装端子を示した図である。ここで、図3(X)は平面図、図3(Y)は、図3(X)の右側からみた側面図、図3(A),(B),(C)は、図3(X)に示す各矢印A-A,B-B,C-Cに沿う各断面図である。ここで、この図3において、図3(Y)の側面図、および図3(A)~(C)の各断面図は、図3(X)の平面図よりも拡大された図となっている。
【0032】
この図3に示すように、本実施形態の基板実装端子10の凹溝11は、先端部10aから離れるにしたがって、横断面上にあらわれる凹溝11の幅および凹溝11の深さが連続的に寸法を減じている形状の溝である。さらに具体的には、ここに示す本実施形態の基板実装端子10の凹溝11は、横断面上の窪みの形状が三角形である。そして、その凹溝11は、先端部10aから離れるにしたがって、その三角形の底辺の長さ(溝の幅)およびその三角形の高さ(溝の深さ)の双方が連続的に寸法を減じる形状の溝である。
【0033】
本実施形態の基板実装端子10は、このように、横断面上の凹溝11の窪みの面積が連続的に窄まっているため、後述する半田リフロー時において、毛細管現象が強く惹起される。本実施形態の基板実装端子10は、この毛細管現象を利用することにより、半田不足のない信頼性の高い半田付けを実現している。
【0034】
この凹溝11の毛細管現象に関する作用を説明するにあたり、先ずは比較例として、凹溝11のない基板実装端子10について説明する。
【0035】
図4は、凹溝が存在しない基板実装端子の半田付け時に生じる現象を示した模式図である。
【0036】
回路基板20のスルーホール21には半田ペースト30が予め埋め込まれている。そして、図4の(A)→(B)→(C)→(D)のように、基板実装端子10をその先端部10aからスルーホール21に挿し込んでいく。すると、スルーホール21内の半田ペースト30のうちの一部の半田ペースト31がスルーホール21から押し出されて、図4(D)に示すように、基板実装端子10の先端部10aに付着した状態となる。この状態で、回路基板20を不図示のリフロー炉に投入して加熱する。すると、半田ペースト30,31が溶融して粘度が下がり、基板実装端子10の先端部10aに付着していた半田ペースト31が滴下してしまうことがある。この滴下が生じると、スルーホール21内の半田32が不足し、半田付け不良となるおそれがある。
【0037】
図5は、本実施形態の基板実装端子の半田付け時に生じる現象を示した模式図である。
【0038】
本実施形態の基板実装端子10の場合も、図5(A)~(D)は、図4(A)~(D)とそれぞれ同一である。そして、基板実装端子10の先端部10aにスルーホール21から押し出された半田ペースト31が付着した状態となる。この状態で、回路基板20を不図示のリフロー炉に投入して加熱する。すると、半田ペースト31,32が溶融して粘度が下がり、基板実装端子10の先端部10aに付着していた半田ペースト31は、溶融して毛細管現象により凹溝11を伝って上昇する。そして、その上昇した溶融半田はスルーホール21内に残っていた溶融半田32と一体となって基板実装端子10の半田付けに寄与する。これにより、半田付けのための半田の不足が抑えられ、信頼性の高い半田付けが可能となる。
【0039】
以下、基板実装端子10の各種変形例について説明する。
【0040】
図6は、第1変形例の基板実装端子を示した図である。ここで、図6(X),(Y)および図6(A)~(C)は、図3(X),(Y)および図3(A)~(C)の各々に対応している。後述する図7および図8についても、同様である。
【0041】
また、この図6に示す基板実装端子10は、凹溝11の形状が、これまで説明してきた基板実装端子10の凹溝11とは異なっている。ただし、分かり易さのため、この図6以降の各図に示す各種変形例においても、基板実装端子を符号‘10’で表わし、先端部を符号‘10a’で表わし、凹溝を符号‘11’で表わしている。
【0042】
この図6に示す第1変形例の基板実装端子10の凹溝11は、基板実装端子10の先端部10aから離れるにしたがって横断面上に現れる凹溝11の深さd(三角形の高さ)が連続的にその寸法を減じている溝である。一方、この第1変形例の凹溝11の幅w(三角形の底辺)は、先端部10aからの距離とは無関係に一定の幅となっている。
【0043】
この第1変形例の凹溝11の場合、凹溝11の深さを減じることにより、横断面上の凹溝11の窪みの面積が先端部10aから離れるにしたがって連続的に窄まった溝となっている。
【0044】
図7は、第2変形例の基板実装端子を示した図である。
【0045】
この図7に示す第2変形例の基板実装端子10の凹溝11は、基板実装端子10の先端部10aから離れるにしたがって横断面上に現れる凹溝11の幅w(三角形の底辺)が連続的にその寸法を減じている溝である。一方、この第2変形例の凹溝11の深さd(三角形の高さ)は、先端部10aからの距離とは無関係に一定の深さとなっている。
【0046】
この第2変形例の凹溝11の場合、凹溝11の幅を減じることにより、横断面上の凹溝11の窪みの面積が先端部10aから離れるにしたがって連続的に窄まった溝となっている。
【0047】
図8は、第3変形例の基板実装端子を示した図である。
【0048】
これまで説明してきた実施形態、および第1~第2変形例は、いずれも、横断面上の凹溝11の窪みの面積が先端部10aから離れるにしたがって連続的に窄まった溝である。これに対し、この図8に示す第3変形例の基板実装端子10は、横断面上の凹溝11の窪みの面積が先端部10aから離れるにしたがって段階的に順次に窄まった溝となっている。
【0049】
このように、段階的に順次に窄まった凹溝11の場合も、毛細管現象が十分に惹起される。
【0050】
図9は、凹溝の各種の断面形状を示した図である。
【0051】
これまで説明してきた実施形態および各種変形例は、いずれも、横断面上に現れれる窪みの形状が三角形の溝である。しかしながら、横断面上に現れる窪みの形状は三角形である必要はない。例えば、図8(A),(B),(C)に示すような、矩形形状、U字形状、あるいは半円形状等であってもよい。すなわち、本発明にいう凹溝11は、横断面上の凹溝11の窪みの面積が先端部10aから離れるにしたがって連続的ないし段階的に順次に窄まった溝であれば、どのような断面形状の溝であってもよい。
【0052】
また、これまで説明してきた実施形態および各種変形例の場合、この図9(A)~(C)にも示すように、基板実装端子10の、互いに対向する2面に凹溝11が形成されている。これに対し、この図9(D)~(F)には、凹溝11が4面に形成されている。このように、この図9には、凹溝11が対向する2面に形成された例と、4面の全てに形成された例とが示されている。ただし、凹溝11を形成する面の数は、2面と4面に限られるものではなく、1本の基板実装端子10に1つ以上の任意の数の凹溝11が形成されていればよい。
【0053】
さらに、これまで説明してきた実施形態および各種変形例の基板実装端子10は、凹溝11を埋めた時の横断面上の断面形状が略矩形形状を有している。しかしながら、基板実装端子10の断面形状は略矩形形状である必要はなく、円形であってもよい。あるいは、基板実装端子10が棒状に延びる形状でさえあれば、断面形状は任意の形状であってもよい。
【0054】
以上説明してきた実施形態あるいは各種変形例によれば、回路基板20のスルーホール21に挿し込むタイプの、信頼性の高いリフロー半田付けが可能な基板実装端子10が実現する。
【符号の説明】
【0055】
10 基板実装端子
10a 先端部
11 凹溝
20 回路基板
21 スルーホール
22 ランド
30,31,32 半田(半田ペースト)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9