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  • 特許-シール部材および防水コネクタ 図1
  • 特許-シール部材および防水コネクタ 図2
  • 特許-シール部材および防水コネクタ 図3
  • 特許-シール部材および防水コネクタ 図4
  • 特許-シール部材および防水コネクタ 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】シール部材および防水コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
H01R13/52 301E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017196692
(22)【出願日】2017-10-10
(65)【公開番号】P2019071213
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】實藤 雄介
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-319723(JP,A)
【文献】特開2005-228575(JP,A)
【文献】特開2015-099719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方に延びる複数本の電線の前端部が挿し込まれる挿通口を有するコネクタハウジングの該挿通口を防水するシール部材であって、
前記複数本の電線が1本ずつ挿通される複数の挿通孔が前後方向と交わる1つの横断面を貫く位置に配列され隣接する電線どうしの間には前記コネクタハウジングの壁存在させずに該複数本の電線からなる電線束の外周における前記横断面を貫く位置において該シール部材を介して前記挿通口の内壁面に接する防水部と、
前記防水部よりも前記複数本の電線が延びる後方に、隣接する電線どうしの間に当該シール部材を除く他の部材の配置を許すことなく設けられた、電線と干渉して該電線を折り曲げる向きの力が該電線に作用したときに、該電線の、前記コネクタハウジングから突き出た部分の、該コネクタハウジングへの接触を防止する、該防水部と同一材料で該防水部と一体に形成された干渉部とを有することを特徴とするシール部材。
【請求項2】
前記干渉部の後端面が、前記コネクタハウジングの後端面の、前記電線の延びる向きに対し交わる向きについて隣接する領域よりも後方に突き出た位置にあることを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
後方に延びる複数本の電線の前端部が挿し込まれる挿通口を有するコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングの前記挿通口を防水するシール部材とを備え、
前記シール部材が、
前記複数本の電線が1本ずつ挿通される複数の挿通孔が前後方向と交わる1つの横断面を貫く位置に配列され隣接する電線どうしの間には前記コネクタハウジングの壁存在させずに該複数本の電線からなる電線束の外周における前記横断面を貫く位置において該シール部材を介して前記挿通口の内壁面に接する防水部と、
前記防水部よりも前記複数本の電線が延びる後方に、隣接する電線どうしの間に当該シール部材を除く他の部材の配置を許すことなく設けられた、該電線と干渉して、該電線を折り曲げる向きの力が該電線に作用したときに、該電線の、前記コネクタハウジングから突き出た部分の、該コネクタハウジングへの接触を防止する干渉部とを有することを特徴とする防水コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水型のコネクタおよびそのコネクタに用いるシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な防水コネクタの場合、その防水コネクタに前端部が支持されている電線に、その電線を折り曲げる向きの力が加わると、その電線が硬いコネクタハウジングに直接に接触する。そして、その接触が繰り返されると電線の断線等の事故が発生するおそれがある。
【0003】
ここで、特許文献1には、コネクタハウジングに挿入された電線の前端部の延びる向きに対し電線を少し斜めに屈曲させるテーパ部を有するゴム栓を備えた防水コネクタが開示されている。
【0004】
この特許文献1の防水コネクタによれば、電線に折れ曲がる向きの力が作用しても電線がコネクタハウジングに直接に接触することが防止され、断線が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-92626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上掲の特許文献1に開示された防水コネクタを、複数本の電線の端部を支持するタイプのコネクタに適用することを考える。その場合、ゴム栓どうしの間、すなわち隣り合う電線どうしの間にコネクタハウジングの壁が存在することになる。その壁には所定の強度が必要なため、その壁をむやみに薄くすることはできない。そのため、電線間のピッチが広がり、コネクタ全体が大型化するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、小型化と電線の断線防止とを両立させた防水コネクタ、およびその防水コネクタに用いられるシール部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明のシール部材は、後方に延びる複数本の電線の前端部が挿し込まれる挿通孔を有するコネクタハウジングの、その挿通孔を防水するシール部材であって、
複数本の電線が1本ずつ挿通される複数の挿通孔が前後方向と交わる1つの横断面を貫く位置に配列され隣接する電線どうしの間にはコネクタハウジングの壁存在させずにそれら複数本の電線からなる電線束の外周における上記横断面を貫く位置においてシール部材を介して上記挿通口の内壁面に接する防水部と、
上記防水部よりも複数本の電線が延びる後方に、隣接する電線どうしの間に当該シール部材を除く他の部材の配置を許すことなく設けられた、電線と干渉して、電線を折り曲げる向きの力が電線に作用したときに、電線の、コネクタハウジングから突き出た部分の、コネクタハウジングへの接触を防止する、防水部と同一材料で防水部と一体に形成された干渉部とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明のシール部材は、いわゆるファミリーシール型の防水部を備えている。このため、前掲の引用文献1に開示された技術をそのまま踏襲した場合と比べコネクタの小型化が図られる。
【0010】
また、本発明のシール部材は、上記の干渉部を有する。このため、電線のコネクタハウジングから突き出た部分の、コネクタハウジングへの直接の接触が防止されて、電線の断線が回避される。
【0011】
ここで、上記干渉部の後端面が、コネクタハウジングの後端面の、電線の延びる向きに対し交わる向きについて隣接する領域よりも後方に突き出た位置にあることが好ましい。
【0012】
このように、後方に突き出た干渉部を設けることで、電線とコネクタハウジングとの接触を避ける構造としてもよい。
【0013】
また、上記目的を達成する本発明の防水コネクタは、
後方に延びる複数本の電線の前端部が挿し込まれる挿通孔を有するコネクタハウジングと、
コネクタハウジングの挿通孔を防水するシール部材とを備え、
上記シール部材が、
複数本の電線が1本ずつ挿通される複数の挿通孔が前後方向と交わる1つの横断面を貫く位置に配列され隣接する電線どうしの間にはコネクタハウジングの壁存在させずにそれら複数本の電線からなる電線束の外周における上記横断面を貫く位置においてシール部材を介して上記挿通口の内壁面に接する防水部と、
上記防水部よりも複数本の電線が延びる後方に、隣接する電線どうしの間に当該シール部材を除く他の部材の配置を許すことなく設けられた、電線と干渉して、電線を折り曲げる向きの力が電線に作用したときに、電線の、コネクタハウジングから突き出た部分の、コネクタハウジングへの接触を防止する、防水部と同一材料で防水部と一体に形成された干渉部とを有することを特徴とする。

【発明の効果】
【0014】
以上の本発明によれば、小型化と電線の保護とを両立させたシール部材および防水コネクタが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態としての防水コネクタの外観を示した斜視図である。
図2図1に示す防水コネクタの平面図である。
図3図1に外観を示した防水コネクタの、図2に示す矢印X-Xに沿う断面図である。
図4図4は、図1に外観を示した防水コネクタの、図2に示す矢印Y-Yに沿う断面図である。
図5図1図4に示した防水コネクタと相手コネクタとが嵌合した状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態としての防水コネクタの外観を示した斜視図である。ここで、図1(A)と図1(B)は、描く向きを変えて示した、同一の防水コネクタである。
【0018】
ここに示す防水コネクタ10は、図1に現れている要素として、コネクタハウジング11と、シール部材12と、スライダ13とを備えている。ここで、シール部材12は、本発明のシール部材の一例に相当する。
【0019】
スライダ13は、この図1には、そのスライダ13に設けられているラック131の一部のみが現れている。このスライダ13は、ピニオンギアを備えた不図示のレバーの操作によりスライドする。そして、そのスライドに伴って、不図示のカムの作用により、この防水コネクタ10への相手コネクタ40(図5参照)の嵌合および離脱が行われる。
【0020】
また、シール部材12には、配列された複数の挿通孔121が設けられている。これらの挿通孔121には、不図示の複数本の電線が1本ずつ挿し込まれる。ここで、このシール部材12には、隣接する電線どうしの間、すなわち隣接する挿通孔121どうしの間にコネクタハウジング11の壁が存在しない。すなわち、このシール部材12は、いわゆるファミリーシール型のシール部材である。それら複数本の電線からなる電線束の外周は、シール部材12を介在させてコネクタハウジング11に隣接している。すなわち、シール部材12の外周面は、コネクタハウジング11の壁に接している。
【0021】
図2は、図1に示す防水コネクタの平面図である。この図2は、図3および図4に示す断面図の断面箇所を示すための図である。
【0022】
図3は、図1に外観を示した防水コネクタの、図2に示す矢印X-Xに沿う断面図である。
【0023】
また、図4は、図1に外観を示した防水コネクタの、図2に示す矢印Y-Yに沿う断面図である。
【0024】
この防水コネクタ10には、図1を参照して説明した要素であるコネクタハウジング11、シール部材12、およびスライダ13に加え、さらにもう1つのシール部材14およびリテーナ15を備えている。
【0025】
もう1つのシール部材14は、相手コネクタが嵌合した際にその相手コネクタのハウジングに接して、この防水コネクタ10と相手コネクタとの嵌合部を防水するシール部材である。
【0026】
また、リテーナ15は、不図示の電線の延びる方向に対する横方向からコネクタハウジング11内に挿し込まれる。そして、このリテーナ15は、コネクタハウジング11内に挿し込まれた電線の前端に接続されているコンタクトと係合して、コネクタハウジング11からのコンタクトの抜けを防止する部材である。
【0027】
ここで、ファミリーシール型のシール部材12には、防水部12Aと干渉部12Bとが設けられている。防水部12Aは、挿通孔121に挿通された1本1本の電線に一周に亘って接してその部分を防水する。また、この防水部12Aは、さらに、その外周面がコネクタハウジング11に接してその部分を防水する。これにより、このシール部材12の防水部12Aは、コネクタハウジング11が挿し込まれる挿通口111の全体を防水する。
【0028】
また、干渉部12Bは、防水部12Aよりも電線が延びる後方(図3および図4における上方)に設けられている。この干渉部12Bの後端面122、すなわち、シール部材12の後端面122は、コネクタハウジング11の後端面112の、シール部材12の周囲の部分よりも後方に突き出た位置にある。すなわち、このシール部材12の後端面122は、コネクタハウジング11の後端面112の、電線の延びる向きに対し交わる向きについての隣接する領域よりも後方(図3および図4における上方)に突き出た位置にある。そして、この干渉部12Bは、前端部がコネクタハウジング11内に挿し込まれた状態にある電線と干渉して、その電線に、その電線を折り曲げる向きの力が作用したときに、電線の、コネクタハウジングから突き出た部分の、コネクタハウジング11への接触を防止する役割りを担っている。
【0029】
この干渉部12Bの作用について、さらに詳細に説明する。
【0030】
図5は、図1図4に示した防水コネクタと相手コネクタとが嵌合した状態を示した模式図である。この図5は、シール部材12の干渉部12Bの作用を説明するための模式図であって、図1図4に示した防水コネクタ10とは形状等が異なっている。ただし、ここでは、分かり易さのため、図1図4に示した防水コネクタの各要素に対応する要素には、図1図4において付した符号と同じ符号を付して示してある。
【0031】
この図5において、防水コネクタ10は相手コネクタ40と嵌合している。この防水コネクタ10には、ファミリーシール型のシール部材12が組み込まれている。このシール部材12には、複数の挿通孔121が設けられていて、各挿通孔121には電線30が1本ずつ挿し込まれている。ただし、この図5では、1つの挿通孔121にのみ、電線30が挿し込まれている状態が示され、他の挿通孔121に対応する電線30は図示が省略されている。
【0032】
各電線30の前端には、雌型コンタクト31が取り付けられている。そして、この雌型コンタクト31には、防水コネクタ10と相手コネクタ40との嵌合により、相手コネクタ40に備えられている雄型コンタクト41が挿し込まれる。これにより、雌型コンタクト31と雄型コンタクト41が導通する。なお、この図5では、雌型コンタクト31および雄型コンタクト41についても、この図5に示す1本の電線30に対応するもの以外は、図示が省略されている。
【0033】
前述の通り、シール部材12は、防水部12Aと干渉部12Bを有する。そして、このシール部材12の後端面122、すなわち防水部12Aの後端面122は、コネクタハウジング11の後端面112よりも後方(この図5では右側)に突き出た位置にある。
【0034】
ここで、この図5に実線と一点鎖線で示すように、電線30に、矢印R-Rの向き、すなわち電線30を折り曲げる向きに力が加えられたものとする。
【0035】
この防水コネクタ10の場合、シール部材12の干渉部12Bがコネクタハウジング11よりも突き出ている。このため、電線30に矢印R-Rの向きの力が加わっても、電線30の、コネクタハウジングから突き出た部分が、コネクタハウジング11に直接に接触することが防止される。したがって、電線30がコネクタハウジング11に接触することによる断線が回避される。
【0036】
なお、ここに示した実施形態の防水コネクタ10は、シール部材12の干渉部12Bをコネクタハウジング11から突き出た配置とすることによって電線30のコネクタハウジング11への接触を回避している。ただし、干渉部12Bは、コネクタハウジング11から突き出ていることは必ずしも必要ではない。例えば、干渉部12Bの後端面122が、コネクタハウジング11の後端面112よりもコネクタハウジング11内に若干引っ込んだ位置にあるとする。その場合であっても、電線とコネクタハウジング11の壁面との間の距離や電線の剛性等から、電線に折り曲げる向きの力が加わってもコネクタハウジング11に接しない距離や剛性等であれば、それでも構わない。
【符号の説明】
【0037】
10 防水コネクタ
11 コネクタハウジング
111 挿通口
112 後端面
12 シール部材
12A 防水部
12B 干渉部
121 挿通孔
122 後端面
13 スライダ
131 ラック
14 シール部材
15 リテーナ
30 電線
31 雌型コンタクト
40 相手コネクタ
41 雄型コンタクト
図1
図2
図3
図4
図5