(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】喀痰試料中のバイオマーカーとしての細胞外遊離ヌクレオソームの使用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20220627BHJP
C12Q 1/6804 20180101ALI20220627BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
G01N33/53 M
C12Q1/6804 Z
G01N33/574 A
(21)【出願番号】P 2017568274
(86)(22)【出願日】2016-07-01
(86)【国際出願番号】 GB2016051994
(87)【国際公開番号】W WO2017001863
(87)【国際公開日】2017-01-05
【審査請求日】2019-06-24
(32)【優先日】2015-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517151969
【氏名又は名称】ベルジアン ボリション エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ジャコブ ミカレフ
(72)【発明者】
【氏名】マリエレ ヘルゾグ
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-529405(JP,A)
【文献】特表2014-531573(JP,A)
【文献】国際公開第2014/131841(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/013955(WO,A1)
【文献】Lung Cancer Epigenetics: Emerging Biomarkers,Biomarkers in Medicine,2013年,Vol.7, No.1,49-58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非小細胞肺癌(NSCLC)の診断又は検出のための、喀痰試料中のバイオマーカーであって、該バイオマーカーは、細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物であり、該エピジェネティック特徴物は、翻訳後ヒストン修飾、ヒストンバリアント若しくはアイソフォーム、
又はDNA修飾
から選択され、
ここで、前記DNA修飾は5-メチルシトシンであり、前記ヒストンバリアント若しくはアイソフォームはγ-H2AXであり、前記翻訳後ヒストン修飾は、H3K9Me3、H3K9Ac、H3K27Me3、H4K16Ac、H4K20Me3、及びH4PanAc(汎アセチル化H4)から選択される、前記バイオマーカー。
【請求項2】
前記細胞外遊離ヌクレオソームが、モノヌクレオソーム、オリゴヌクレオソーム、又は他の染色体断片である、請求項1記載のバイオマーカー。
【請求項3】
動物又はヒト対象における非小細胞肺癌(NSCLC)を診断又は検出するためのデータを取得する方法であって:
該対象から得られた喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は測定することを含み、
前記エピジェネティック特徴物が、H3K9Me3、H3K9Ac、H3K27Me3、H4K16Ac、H4K20Me3及びH4PanAc(汎アセチル化H4)から選択される翻訳後ヒストン修飾、γ-H2AXヒストンバリアント若しくはアイソフォーム、
又は5-メチルシトシンDNA修飾
から選択され、
前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの測定されたレベルが、該対象における前記疾患の存在を示すものとして機能し得る、前記方法。
【請求項4】
動物又はヒト対象における喀痰の細胞外遊離ヌクレオソームの細胞起源を決定するための方法であって:
(i)該対象から得られた喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は測定するステップであって、前記エピジェネティック特徴物が、H3K9Me3、H3K9Ac、H3K27Me3、H4K16Ac、H4K20Me3及びH4PanAc(汎アセチル化H4)から選択される翻訳後ヒストン修飾、γ-H2AXヒストンバリアント若しくはアイソフォーム、
又は5-メチルシトシンDNA修飾
から選択される前記ステップと;
(ii)前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの測定されたレベルを、該細胞外遊離ヌクレオソームが、健康な肺細胞に由来するか又は非小細胞肺癌(NSCLC)細胞に由来するかの指標として使用するステップと
を含む、前記方法。
【請求項5】
前記検出又は測定が、イムノアッセイ、免疫化学的方法、質量分析法、クロマトグラフ法、クロマチン免疫沈降法、又はバイオセンサー法を含む、請求項3から
4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
細胞外遊離ヌクレオソームそれ自体及び/又は細胞外遊離ヌクレオソームエピジェネティック特徴物の2以上の測定が、ヌクレオソーム特徴物のパネルとして実施される、請求項3から
5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
非小細胞肺癌(NSCLC)の診断又は検出のためのキットであって、喀痰の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出及び/又は定量化することが可能な1以上の結合剤を含み、
前記エピジェネティック特徴物が、H3K9Me3、H3K9Ac、H3K27Me3、H4K16Ac、H4K20Me3及びH4PanAc(汎アセチル化H4)から選択される翻訳後ヒストン修飾、γ-H2AXヒストンバリアント若しくはアイソフォーム、
又は5-メチルシトシンDNA修飾
から選択される、前記キット。
【請求項8】
動物又はヒト対象から得られた喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は
測定する
ことが、
(i)該対象から得られた喀痰試料を、細胞外遊離ヌクレオソーム又はその構成成分と結合する第1の結合剤と接触させるステップと;
(ii)該喀痰試料又は細胞外遊離ヌクレオソームを、前記細胞外遊離ヌクレオソーム内のエピジェネティック特徴物と結合する第2の結合剤と接触させるステップと;
(iii)該喀痰試料中の前記細胞外遊離ヌクレオソーム内のエピジェネティック特徴物に対する前記第2の結合剤の結合を検出又は
測定するステップと;
(iv)該喀痰試料中の前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの存在の尺度として、こうした結合の存在、程度、又は量を使用するステップと
を含む、
請求項3記載の方法。
【請求項9】
動物又はヒト対象から得られた喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は
測定する
ことが、
(i)該対象から得られた喀痰試料を、前記細胞外遊離ヌクレオソーム内のエピジェネティック特徴物と結合する第1の結合剤と接触させるステップと;
(ii)該喀痰試料又は細胞外遊離ヌクレオソームを、細胞外遊離ヌクレオソーム又はその構成成分と結合する第2の結合剤と接触させるステップと;
(iii)該喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソーム又はその構成成分に対する前記第2の結合剤の結合を検出又は
測定するステップと;
(iv)該喀痰試料中の前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの存在の尺度として、こうした結合の存在、程度、又は量を使用するステップと
を含む、
請求項3記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、疾患に対するバイオマーカーとしての、細胞外遊離(cell-free)ヌクレオソーム、詳細には細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物(feature)の使用に関する。本発明はまた、喀痰試料中のヌクレオソーム及び後成的に変化したヌクレオソームの存在を検出及び測定することによる、肺癌及び前癌の検出のための方法を提供する。具体的には、該方法は、喀痰試料中のヌクレオソームクロマチン断片の検出及びエピジェネティックプロファイリング、及び、健康な肺細胞のクロマチンにおける又は肺癌細胞のクロマチンにおけるその細胞的起点を確かめるために、このエピジェネティック情報を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
肺癌は、よく見られる疾患であり、2012年には、全世界で、新たな症例が180万件、死亡が160万人と推定されている。大多数の肺癌症例は、喫煙と関連性がある。死亡率は、有効な治療選択肢が利用可能である場合に疾患が初期の限局段階で検出されるか、疾患が肺内部に広がっている可能性がある場合に末期段階で検出されるか、それを超えて、治療がより困難な時に検出されるかによって大きく異なる。5年生存率は、疾患がステージIAで検出された人については80%に達する可能性があるが、末期段階の疾患が検出された人についてはわずか約4%である。残念ながら、ほとんどの癌は、現在、末期段階で検出される。
【0003】
肺癌の検出のための、安全かつ非侵襲性の方法は、初期段階の癌検出を可能にし、より早期の治療及び長年にわたる救命をもたらすであろう。より早期の癌検出はまた、費用のかかる末期段階癌の薬物療法及び入院の必要性を低下させることによって、ヘルスケア提供者にとっての金銭及び資源を節約するであろう。理想的には、肺癌試験はまた、治療されないままである場合に癌へと進行する可能性があるが、特定されれば除去又はモニタリングすることができる、肺の潜在的に悪性の又は前癌性の結節を特定するであろう。
【0004】
肺癌検出のための現在の方法としては、胸部X線及びCTスキャンが挙げられるが、これらの方法は、臨床的精度が不十分であり、対象患者は、潜在的に危険な線量のX線を受ける。研究では、低線量CTスキャニングでのスクリーニングは、ハイリスク集団における潜在的に癌性の結節を検出し、死亡率を低下させることが実証されている。しかし、低線量CTスキャニングは、その主観的解釈、高い偽陽性率をもたらす肺癌に対する低い臨床的特異度、及び低線量とはいえX線の繰り返しの使用に起因する安全性の問題の可能性を含めた欠点も有する。X線及びCTスキャニング方法の、低い臨床的特異度は、これらが、悪性又は非悪性と特定することがまったくできず、かつオンコロジストにとっての別の診断的課題をもたらしてきた、多くの対象の肺における病因不明の結節を検出することを意味する。したがって、肺の非悪性の結節からの悪性の結節の区別的診断のための、非侵襲性試験の臨床的必要性が存在する。
【0005】
研究中の他の肺癌試験方法としては、DNA配列変異試験及び特異的遺伝子配列メチル化試験が挙げられる。DNA異常は、すべての癌疾患の特性である。癌細胞のDNAは、限定はされないが、点変異、転座、遺伝子コピー数、マイクロサテライト異常、DNA鎖完全性、及びヌクレオチド修飾(例えば、第5位でのシトシンのメチル化)を含めた多くの点で、健康な細胞のDNAと異なる。DNA構造又は配列のこれらの腫瘍関連の変化は、臨床診断、予後及び個別化治療選択目的のために、生検又は手術で除去された癌細胞又は組織において、慣行的に研究されている。しかし、組織DNA試験は、広く普及した試験又はスクリーニングの目的では侵襲的過ぎる。
【0006】
癌患者の血液は、死にかけている又は死んだ癌細胞に由来すると考えられる循環腫瘍DNA(ctDNA)を含有している。癌患者からの適合させた血液と組織の試料の調査は、患者の腫瘍に存在する(彼/彼女の健康な細胞には存在しない)癌関連の変異が、同じ患者から採取された血液試料中のctDNAにも存在することを示す(Newmanらの文献、2014)。同様に、癌細胞中の差次的にメチル化された(シトシン残基のメチル化によって後成的に変化した)DNA配列、特に遺伝子プロモーター配列も、循環血液中のctDNAにおいて、メチル化配列として検出することができる。
【0007】
ctDNA配列変異試験にとっての1つの課題は、いずれかの特定の配列変異が、少数(通常、ごく少数)の癌にのみ生じるであろうことである。したがって、配列変異の検出に頼るいずれかの癌検出方法は、たとえ完璧な分析性能を有し、かつ変異を存在する場合には必ず検出するとしても、低い臨床的感度を有し、ごく一部の癌のみを検出することとなる。例えば、ある特定の変異が、5%の癌にのみ生じる場合、いずれかのこうした試験は、たとえこの方法自体が、100%の分析感度を有するとしても、5%の臨床的感度を有することができるに過ぎない。しかし、すべての癌のDNAは、配列変異を確実に含有するので;癌検出に対する臨床的感度は、癌において一般的に変異する複数のDNA配列についての試験によって増大させることができる。最近の肺癌研究では、肺癌患者から採取された血液試料が、ディープ(deep)配列決定方法を使用して、139の公知の癌遺伝子からの534の頻繁に変異する遺伝子配列について試験された。変異は、ステージII、III、及びIVの癌を有するすべての患者の試料において、また、ステージIの癌を有する患者の50%において見られた(Newmanらの文献、2014)。何百もの変異に対するディープ配列決定の費用は、この技術を、慣行的な臨床使用には適さないものとするが、この方法は、将来の臨床試験の基盤を形成することができる。
【0008】
ある種の特定のctDNA遺伝子配列の過剰メチル化も、肺癌における潜在的なバイオマーカー有用性について研究されている。例えば、血漿から抽出されたDNAの増幅による、過剰メチル化されたSeptin-9遺伝子配列の検出は、肺癌の44%を検出することが報告された(Powrozekらの文献、2014)。特定の遺伝子又は遺伝子座のDNAメチル化状態は、通常、配列決定又は他の手段によって検出することができる一次DNA配列変化をもたらす、(5-メチルシトシン(5mc)ではない)シトシンの、ウラシルへの、亜硫酸水素塩による選択的脱アミノ化によって検出される(Allenらの文献、2004)。
【0009】
初期段階の肺癌を有する個体を特定するための、特に喫煙者における、正確で安全で非侵襲性の低費用の試験の臨床的必要性が存在する。残念ながら、こうした試験は現在、利用可能ではなく、わずか約20%の肺癌が早期に検出されるに過ぎない。
【0010】
本発明は、喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソーム、及び細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物の検出に関する。細胞外遊離ヌクレオソームは、以前に血液中に報告されており、ここでは、これらは死んだ又は死にかけている細胞に由来すると考えられる。死んだ細胞から循環への放出の機構は、公知ではないが、食作用によって死んだ細胞を除去する、循環するマクロファージを伴うと考えられる(Jiangらの文献、2003)。健康な対象の血液中に見られる循環ヌクレオソームのレベルは低いが、肺癌を含めた様々な疾患状態を有する対象の血液中では、レベルの上昇がしばしば見られる(Holdenriederの文献、2001)。しかし、血液ヌクレオソームレベルの上昇は、細胞死のレベルの上昇の非特異的なマーカーであり、肺癌を、他の癌と、又は他の疾患と、又は損傷若しくは外傷と区別しない。喀痰中のヌクレオソームの報告は存在しない。
【0011】
ヌクレオソームは、遺伝子発現のエピジェネティック調節におけるその役割のおかげで、化学構造の計り知れない多様性を有する。ヒトの体は、すべてが同じゲノムを含有するにもかかわらず、体内における多様な表現型及び機能の多くの異なる細胞型を含む。この表現型多様性は、異なる細胞型におけるゲノムの差次的発現が原因である。差次的遺伝子発現の制御は、完全には理解されていないが、基本機構には、その遺伝子に関連するいくつかの相互連係されるエピジェネティックシグナルによる遺伝子調節があり、該エピジェネティックシグナルには、ノンコーディング核酸配列並びに(例えば、ユークロマチン又はヘテロクロマチンとしての)クロマチン充填の制御を含むクロマチンの構造的特徴、ヌクレオソームの配置及びヌクレアーゼ到達可能部位の制御、DNAの化学的修飾(例えば、シトシン残基のメチル化)、並びにDNAがその周囲に巻き付いているヒストン複合体の組成及び構造の変化(例えば、ヒストンタンパク質の翻訳後修飾又は別のヒストンアイソフォームの包含による変化)がある。したがって、細胞性クロマチン及びその構成ヌクレオソームの化学構造は、多種多様なエピジェネティック変化を受けて、共に複合遺伝子調節システムを形成する。この調節システムは、癌において損なわれ、染色体構造の全体的なエピゲノム的変化がもたらされる。変化したクロマチン特徴物は、遺伝子の誤調節をもたらし、これは、癌の発生及び進行と関連する。さらに、エピジェネティック薬物を使用する、クロマチン及びヌクレオソームに対するこれらのエピジェネティック特徴物の変化の抑制、予防、又は逆転は、癌疾患の治療において有効である。こうしたエピジェネティック薬物としては、例えば、ヒストン脱アセチル化酵素複合体阻害剤(HDACi)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(HMTi)、及びDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(DNMTi)薬物が挙げられる。
【0012】
ヌクレオソームは、クロマチン構造の基本の繰り返し単位であり、8つの高度に保存されたコアヒストンのタンパク質複合体からなる(ヒストンH2A、H2B、H3、及びH4のそれぞれの対から構成される)。この複合体の周囲には、およそ146塩基対のDNAが巻き付けられている。別のヒストン、H1又はH5は、リンカーとして働き、クロマチン凝縮に関与する。DNAは、しばしば「糸でつながれたビーズ」に似ていると言われる構造で、連続したヌクレオソームの周囲に巻き付けられており、オープン又はユークロマチンという基本構造をなす。凝縮されたクロマチン又はヘテロクロマチンでは、この糸は、コイル化及びスーパーコイル化されて、閉じられた複合体構造となる(Herranz及びEstellerの文献、2007)。
【0013】
細胞性クロマチンにおけるヌクレオソームの構造は、ヒストンタンパク質の翻訳後修飾(PTM)によって、また、バリアントヒストンタンパク質の包含によって変わり得る。ヒストンタンパク質のPTMは、8つのコアヒストンの尾部で最も一般的に起こるが、それらのみではなく、一般的な修飾としては、リジン残基のアセチル化、メチル化、又はユビキチン化、並びにアルギニン残基のメチル化、及びセリン残基のリン酸化が挙げられる。ヒストン修飾は、遺伝子発現のエピジェネティック調節に関与することが公知である(Herranz及びEstellerの文献、2007)。ヌクレオソームの構造はまた、異なる遺伝子又はスプライス産物であり、かつ異なるアミノ酸配列を有する、代替ヒストンアイソフォーム又はバリアントの包含によって変わり得る。ヒストンバリアントは、いくつかのファミリー(これは、個々の型に細分類される)に分類することができる。多くのヒストンバリアントのヌクレオチド配列は、公知であり、例えば、米国立ヒトゲノム研究所(National Human Genome Research Institute)NHGRIヒストンデータベース(http://genome.nhgri.nih.gov/histones/complete.shtml)、GenBank (NIH遺伝子配列)データベース、EMBLヌクレオチド配列データベース、及び日本DNAデータバンク(DNA Data Bank of Japan)(DDBJ)において、公的に利用可能である。
【0014】
健康な細胞と病気の細胞に存在するヒストンバリアント及びヒストン修飾パターンは異なることが、多数の(大部分は免疫組織化学的)研究において示されている(Herranz及びEstellerの文献、2007)。肺癌検出における臨床使用のための免疫組織化学的方法の1つの欠点は、手術又は生検を伴う組織試料採取が、侵襲的であることである。
【0015】
ヌクレオソーム構造はまた、DNAメチル化を含めた、そのDNA構成成分の化学修飾によって変わる(Herranz及びEstellerの文献、2007)。DNAが、シトシンヌクレオチドの第5位でメチル化されて、5-メチルシトシンが形成される可能性があることが、当技術分野で以前から公知であり、また、DNAメチル化の癌における関与が、早くも1983年には報告された(Feinberg及びVogelsteinの文献、1983)。癌細胞において観察されるDNAメチル化パターンは、健康な細胞のDNAメチル化パターンとは異なる。特に動原体周囲領域周辺の反復エレメントが、健康な細胞と比較して、癌において低メチル化されることが報告されているが、特定の遺伝子のプロモーターは、癌において過剰メチル化されることが報告されている。これらの2つの効果の収支が、癌における全体的なDNAの低メチル化をもたらすことが報告されており、このパターンは、癌細胞の特徴である(Estellerの文献、2007、Hervouetらの文献、2010、Rodriguez-Paredes及びEstellerの文献、2011)
【0016】
ヌクレオソーム構造はまた、クロマチンに存在する多数の他のタンパク質のいずれかへのヌクレオソーム結合によって変わり、ヌクレオソーム付加物が形成される。クロマチンは、転写制御因子、転写増強因子、転写抑制因子、ヒストン修飾酵素、DNA損傷修復タンパク質、核内ホルモン受容体、及びその構成DNA及び/又はヒストンに結合するさらに多くのものを含めた様々な機能を有する、非常に様々な種類の多くの非ヒストンタンパク質を含む(Yoshida及びShimuraの文献、1972)。クロマチン結合タンパク質の研究は、主にクロマチン免疫沈降(ChIP)方法によって行われている。これらの方法は、当技術分野で周知であるが、複雑、かつ労力を要し、かつ費用がかかる。
【0017】
細胞外遊離ヌクレオソームそれ自体は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって検出することができ、いくつかの方法が報告されている(Salgameらの文献、1997; Holdenriederらの文献、2001; van Nieuwenhuijzeらの文献、2003)。これらの分析は、概して、捕捉抗体として、抗ヒストン抗体(例えば、抗H2B、抗H3、又は抗H1、H2A、H2B、H3、及びH4)、また、検出抗体として、抗DNA又は抗H2A-H2B-DNA複合体抗体を用いる。
【0018】
本発明者らは、特定のヒストン修飾、特定のヒストンバリアント、及び特定のDNA修飾、並びに特定のヌクレオソーム付加物を含有するヌクレオソームを含めた、特定のエピジェネティックシグナルを含有するヌクレオソームについてのELISA分析を、以前に報告している(WO 2005/019826、WO 2013/030579、WO 2013/030577、WO 2013/084002)。本発明者らは、以前に、これらの分析を使用して、後成的に変化した循環細胞外遊離ヌクレオソームを、疾患のある患者の血液中に検出することができることを示している。
【0019】
驚いたことに、本発明者らは、現在、患者から得られた喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームクロマチン断片の検出を実証し、また、これらのヌクレオソームのエピジェネティック性質又は構造的プロファイルを使用して、その源を決定できることを示している。クロマチン断片は、健康な細胞由来又は病気の細胞由来(肺癌細胞由来を含む)又は細胞の混合物由来と特定された。本発明は、特定の遺伝子のDNA配列決定は伴わないが、喀痰ヌクレオソームレベルそれ自体の測定、並びに喀痰中のヌクレオソーム又は他のクロマチン断片のゲノム全体のエピジェネティック変化の調査を頼りにする。本発明者らは、これから、喀痰試料中のヌクレオソーム及び後成的に変化した細胞外遊離ヌクレオソーム及びヌクレオソーム付加物の直接的推定、及び健康な細胞又は癌細胞クロマチン起源を有するものとしてのその決定のための、簡単な免疫測定方法を報告する。
【発明の概要】
【0020】
(発明の概要)
本発明の第1の態様によれば、癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の診断又は検出のための、喀痰試料中のバイオマーカーとしての細胞外遊離 ヌクレオソームの使用が提供される。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、
動物又はヒト対象における癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を診断又は検出するための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)対象の喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は測定するステップと;
(iii)前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの測定されたレベルを、対象における前記疾患の存在を示すものとして使用するステップと
を含む前記方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
(図面の簡単な説明)
【
図1】肺癌、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する対象、及び年齢がほぼ適合する健康な対照被験者から得られた喀痰試料に対して実施された、ヌクレオソーム関連H3K9AcのELISAの光学密度結果のドットプロットである。
【
図2】肺癌を有する対象を、年齢がほぼ適合する健康な対照被験者と、また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する対象と区別するための、ヌクレオソーム関連喀痰H3K9AcのELISAの臨床的精度について得られた結果を示すROC曲線である。
【
図3】肺癌、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する対象、及び年齢がほぼ適合する健康な対照被験者から得られた喀痰試料に対して実施された、ヌクレオソーム関連H3K9Ac、H4K16Ac、及びH4K20Me3を含めた、本発明のパネル試験方法の結果のドットプロットである。試験値は、演算モデル;試験値=1.94[H3K9Ac]-1.24[H4K16Ac]-0.55[H4K20Me3]を使用する個々の分析のOD結果から算出した。
【
図4】肺癌を有する対象を、年齢がほぼ適合する健康な対照被験者と、また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する対象と区別するための、ヌクレオソーム関連H3K9Ac、H4K16Ac、及びH4K20Me3を含めた、本発明のパネル試験方法の臨床的精度について得られた結果を示すROC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
本発明は、疾患のバイオマーカーとしての、細胞外遊離ヌクレオソーム、具体的には細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物の使用に関する。本発明はまた、喀痰試料中のヌクレオソーム及び後成的に変化したヌクレオソームの存在を検出及び測定することによる、肺癌及び前癌の検出のための方法を提供する。具体的には、該方法は、健康な肺細胞のクロマチンにおける又は肺癌細胞のクロマチンにおけるその細胞的起点を確かめるために、喀痰試料中のヌクレオソームクロマチン断片の検出及びエピジェネティックプロファイリング、及びこのエピジェネティック情報を使用することに関する。本発明者らは、以前に、血液試料中のヌクレオソームクロマチン断片の検出及びエピジェネティックプロファイリングを報告している(WO 2005/019826、WO 2013/030579、WO 2013/030577、WO 2013/084002)。対象から採取された血液試料中の変化したエピジェネティッククロマチン断片の存在は、その対象における癌の存在を示すために使用することができるが、血液はすべての組織を潅流しているので、その癌に罹患している特定の器官の情報は乏しい可能性がある。喀痰試料の使用の特別な利点は、試料それ自体が、変化したエピジェネティッククロマチン断片の起源を呼吸器に限定することである。対象から採取された喀痰試料中の変化したエピジェネティッククロマチン断片の存在を使用して、その対象における癌の存在を示す、また、その癌を肺又は呼吸器の癌と特定することができる。
【0024】
本発明の第1の態様によれば、癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の診断又は検出のための、喀痰試料中のバイオマーカーとしての細胞外遊離ヌクレオソームの使用が提供される。
【0025】
一実施態様では、癌には、前癌状態及び上皮内癌が含まれる。本発明者らは、ヌクレオソーム(それ自体)のレベルが、疾患のある患者の喀痰試料では、健康な対象の喀痰試料のレベルと比較して変化すること、また、これらのヌクレオソームは、異なる絶対的及び相対的レベルの様々なエピジェネティック構造を含むことを示した。患者試料としての喀痰の1つの利点は、その使用がバイオマーカー試験に対して与える器官特異性の程度である。
【0026】
一実施態様では、該バイオマーカーは、癌、肺癌、特に非小細胞肺癌(NSCLC)などの診断又は検出のために使用される。
【0027】
一実施態様では、細胞外遊離ヌクレオソームは、モノヌクレオソーム、オリゴヌクレオソーム、又は他の染色体断片である。
【0028】
一実施態様では、喀痰バイオマーカーは、ヌクレオソームそれ自体のレベルを含む。喀痰ヌクレオソームそれ自体のレベルは、例えば当技術分野で公知のものと類似のヌクレオソームに対する免疫測定方法を使用して推定することができることを理解されたい(Salgameらの文献、1997;Holdenriederらの文献、2001;van Nieuwenhuijzeらの文献、2003)。
【0029】
一実施態様では、喀痰バイオマーカーは、後成的に変化した又は他の方法で修飾された細胞外遊離ヌクレオソームを含む。したがって、例えば、バイオマーカーは、細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物である。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、動物又はヒト対象における癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を診断又は検出するための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該対象の喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は測定するステップと;
(iii)前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの測定されたレベルを、対象における前記疾患の存在を示すものとして使用するステップと
を含む前記方法が提供される。
【0031】
一実施態様では、エピジェネティック特徴物は、翻訳後ヒストン修飾、ヒストンバリアント若しくはアイソフォーム、DNA修飾、又はヌクレオソームに付加されるタンパク質から選択される。
【0032】
一実施態様では、細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物は、1以上のヒストン翻訳後修飾を含む。多くのこうしたヒストン修飾が、当技術分野で公知であり、この数は、新たに特定される修飾と共に増加している。例えば、限定はされないが、ヒストンは、ヒストンH2、H3、及びH4におけるリジン、セリン、アルギニン、及びトレオニン残基、並びにそのアイソフォーム又は配列バリアントを含めて、複数の位置に様々なアミノ酸残基を含有する。アミノ酸残基は、複数の様式で修飾される可能性があり、例えば、限定はされないが、リジン残基は、アセチル化、ユビキチン化、ビオチン化、又はモノ、ジ、又はトリ-メチル化される可能性がある。いかなるヒストン修飾も、例えばクロマトグラフ法、質量分光光度、バイオセンサー、クロマチン免疫沈降(ChIP)、イムノアッセイ、又は他の検出の方法を使用して、個々の修飾されたヒストン部分として検出又は測定されるのであろうとなかろうと、又は、細胞外遊離モノヌクレオソーム、オリゴヌクレオソーム、又は他のクロマチン断片の修飾されたヒストン成分として検出又は測定されるのであろうとなかろうと、本発明における使用に適したエピジェネティック特徴物であり得る。好ましい実施態様では、ヌクレオソーム関連の修飾されたヒストンは、ヌクレオソームエピトープに対するある抗体又は他の選択的結合剤と、対象となる特定のヒストン修飾に対する別の抗体又は他の選択的結合剤とを利用する2部位(2-site)イムノアッセイ(免疫測定)法を用いて測定される。本発明者らは、ヌクレオソーム関連ヒストンの翻訳後修飾レベルの相対的レベルが、疾患のある患者の喀痰試料では、健康な対象の喀痰試料のレベルと比較して変化することを示した。
【0033】
本発明の一実施態様では、喀痰試料における(単一の修飾ではなく)あるグループ又はクラスの関連するヒストン修飾が調べられる。この実施態様の典型的な例は、限定はされないが、ヌクレオソームに結合するように誘導されるある抗体又は他の選択的結合剤と、対象となるそのグループのヒストン修飾と結合するように誘導される、ある抗体又は他の選択的結合剤とを用いる2部位イムノアッセイを伴うであろう。あるグループのヒストン修飾に結合するように誘導されるこうした抗体の例としては、限定はされないが例示目的として、抗汎アセチル化抗体(例えば;汎アセチルH4抗体)、抗シトルリン化抗体、又は抗ユビキチン化抗体が挙げられるであろう。
【0034】
代替実施態様では、細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物は、1以上のヒストンバリアント又はアイソフォームを含む。多くのヒストンバリアントが、当技術分野で公知であり(例えば、限定はされないが;ヒストンH2のバリアントとしては、H2A1、H2A2、mH2A1、mH2A2、H2AX、及びH2AZが挙げられる)、この数は、新たに特定されるアイソフォームと共に増加している。ヒストンアイソフォーム又はバリアントのタンパク質構造はまた、翻訳後修飾を受けやすい。例えば;H2AバリアントH2AXは、セリン139が翻訳後にリン酸化される可能性があり、この部分はしばしば、γ-H2AXと呼ばれる。翻訳後に修飾されたあらゆるバリアントを含めたいかなるヒストンバリアントも、例えばイムノアッセイ、クロマトグラフ法、質量分光光度、ChIP、バイオセンサー、又はヒストンアイソフォーム部分の検出のための他の方法を使用して、個々のヒストンバリアント部分として検出又は測定されるのであろうとなかろうと、又は、ヒストンバリアントが組み込まれた細胞外遊離モノヌクレオソーム、オリゴヌクレオソーム、又は他のクロマチン断片のヒストン成分として検出又は測定されるのであろうとなかろうと、本発明における使用に適したエピジェネティック特徴物であり得る。好ましい実施態様では、ヌクレオソーム関連ヒストンバリアントは、ヌクレオソームエピトープに対するある抗体又は他の選択的結合剤と、対象となる特定のヒストンバリアント又はアイソフォームに対する別の抗体又は他の選択的結合剤とを利用する2部位イムノアッセイを用いて測定される。本発明者らは、ヌクレオソーム関連ヒストンバリアントレベルの相対的レベルが、疾患のある患者の喀痰試料では、健康な対象の喀痰試料のレベルと比較して変化することを示した。
【0035】
代替実施態様では、細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物は、1以上のDNA修飾を含む。いくつかの特定のDNA修飾が、当技術分野で公知であり(例えば;シトシンのメチル化、ヒドロキシメチル化、及びカルボキシメチル化)、この数は、新たに特定される修飾と共に増加している。いかなる修飾されたヌクレオチドも、例えばイムノアッセイ、クロマトグラフ法、質量分光光度、ChIP、バイオセンサー、又は修飾された核酸部分の検出のための他の方法を使用して、単離されたDNA、核酸、ヌクレオチド、又はヌクレオシド部分内に検出又は測定されるのであろうとなかろうと、又は、ある特定の修飾されたヌクレオチド若しくはDNA修飾が組み込まれた細胞外遊離モノヌクレオソーム、オリゴヌクレオソーム、又は他のクロマチン断片のためのいずれかの方法によって検出又は測定されるのであろうとなかろうと、本発明における使用に適したエピジェネティック特徴物であり得る。好ましい実施態様では、ヌクレオソーム関連DNA修飾は、ヌクレオソームエピトープに対するある抗体又は他の選択的結合剤と、対象となる特定のDNA修飾に対する別の抗体又は他の選択的結合剤とを利用する2部位イムノアッセイを用いて測定される。本発明者らは、ヌクレオソーム関連5-メチルシトシンレベルの相対的レベルが、疾患のある患者の喀痰試料では、健康な対象の喀痰試料のレベルと比較して変化することを示した。明確にするために記すと、本発明の方法は、いずれかの特定のDNA配列又は遺伝子のメチル化(又は他のDNA修飾)状態の評価とは関連しないが、喀痰試験試料中に存在するヌクレオソーム又はクロマチン断片の全体的なDNA修飾状態と関連する。
【0036】
代替実施態様では、細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物は、1以上のタンパク質-ヌクレオソーム付加物又は複合体を含む。多くのタンパク質-ヌクレオソーム付加物又は複合体が、クロマチン内に存在することが公知であり(例えば;HMGB、EZH2、及び核内ホルモン受容体-ヌクレオソーム付加物)、この数は、クロマチン内で活性である新たに特定されるタンパク質と共に増加している。いかなるタンパク質-ヌクレオソーム付加物も、ある特定のタンパク質が組み込まれた細胞外遊離モノヌクレオソーム付加物、オリゴヌクレオソーム付加物、又は他のクロマチン断片付加物のためのいずれかの方法、例えば、ヌクレオソームエピトープに対するある抗体又は他の選択的結合剤と、該付加物に含まれる特定のタンパク質に対する別の抗体又は他の選択的結合剤とを利用する2部位イムノアッセイによって検出又は測定されるのであろうとなかろうと、本発明における使用に適したエピジェネティック特徴物であり得る。本発明者らは、ヌクレオソーム関連ヌクレオソーム付加物レベルの相対的レベルが、疾患のある患者の喀痰試料では、健康な対象の喀痰試料のレベルと比較して変化することを示した。
【0037】
一実施態様では、細胞外遊離ヌクレオソームそれ自体及び/又は細胞外遊離ヌクレオソームエピジェネティック特徴物の2以上の測定が、ヌクレオソーム特徴物のパネルとして実施される。
【0038】
さらなる実施態様では、バイオマーカーは、ヌクレオソームそれ自体、1以上の特定のヒストン修飾、若しくはある特定のヒストン修飾を含む細胞外遊離ヌクレオソーム、ヒストンバリアント、若しくはある特定のヒストンバリアントを含む細胞外遊離ヌクレオソーム、DNA修飾、若しくはある特定のDNA修飾を含む細胞外遊離ヌクレオソーム、又はヌクレオソーム付加物のレベルから選択されるバイオマーカーのパネルを含む。異なる集団は、後成的に同一又は類似のではない可能性があるので、異なる動物又は異なる集団から選択される最適パネルは、異なる可能性がある。したがって、ヒトにおける(例えば)肺癌を検出するための使用のために選択される、こうしたバイオマーカーのパネルは、別の種(例えばネコ又はイヌ)における使用のために選択されるパネルと同じではない可能性がある。同様に、男性及び女性のヒト(又はあらゆる他の動物)における肺癌を検出するための使用のための最適なパネルは、異なり得る。同様に、異なるヒト亜集団又は人種における肺癌を検出するための使用のための最適なパネルは、異なり得る。或いは、同じパネルを、異なる集団において(例えば男性及び女性において)使用することができるが、パネル分析メンバーに対して、異なる重み付けが使用される。例えば;分析「A」、「B」、及び「C」を含む3つの分析パネルの試験値は、男性では陽性又は陰性の結果を決定するための「X」というカットオフ値を用いて「試験値=A+2B+3C」などの数式から、また、女性では「Y」という別のカットオフ値を用いて「試験値=3A+2B+C」などの別の数式から算出することができる。
【0039】
本発明のさらなる態様によれば、動物又はヒト対象から得られる喀痰試料における細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は定量化するための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該喀痰試料を、細胞外遊離ヌクレオソーム又はその構成成分と結合する第1の結合剤と接触させるステップと;
(iii)該喀痰試料又は細胞外遊離ヌクレオソームを、前記細胞外遊離ヌクレオソーム内のエピジェネティック特徴物と結合する第2の結合剤と接触させるステップと;
(iv)該喀痰試料中の前記細胞外遊離ヌクレオソーム内のエピジェネティック特徴物に対する前記第2の結合剤の結合を検出又は定量化するステップと;
(v)該喀痰試料中の前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの存在の尺度として、こうした結合の存在、程度、又は量を使用するステップと
を含む前記方法が提供される。
【0040】
言及されるエピジェネティック特徴物は、ある特定の翻訳後ヒストン修飾、ある特定のヒストンバリアント若しくはアイソフォーム、ある特定のDNA修飾、又は前記ヌクレオソームに付加されるある特定のタンパク質であり得る。
【0041】
本発明のさらなる態様によれば、動物又はヒト対象から得られる喀痰試料における細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は定量化するための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該喀痰試料を、前記細胞外遊離ヌクレオソーム内のエピジェネティック特徴物と結合する第1の結合剤と接触させるステップと;
(iii)該喀痰試料又は細胞外遊離ヌクレオソームを、細胞外遊離ヌクレオソーム又はその構成成分と結合する第2の結合剤と接触させるステップと;
(iv)該喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソーム又はその構成成分に対する前記第2の結合剤の結合を検出又は定量化するステップと;
(v)該喀痰試料中の前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの存在の尺度として、こうした結合の存在、程度、又は量を使用するステップと
を含む前記方法が提供される。
【0042】
言及されるエピジェネティック特徴物は、ある特定の翻訳後ヒストン修飾、ある特定のヒストンバリアント若しくはアイソフォーム、ある特定のDNA修飾、又は前記ヌクレオソームに付加されるある特定のタンパク質であり得る。
【0043】
本発明のさらなる態様では、喀痰試料中に存在するヌクレオソームの細胞的起源を決定するために、ある特定のエピジェネティック構造を含有する測定されたレベルのヌクレオソームが使用される。例えば、喀痰ヌクレオソームが、健康な細胞、肺癌細胞、若しくは他の損傷を有する細胞、又はこうした細胞のいずれかの混合物のクロマチンに由来するかどうか。その肺に癌細胞が含有される対象が、健康な細胞も含有するであろうこと、また、こうした対象から得られた喀痰試料が、癌細胞由来のヌクレオソームだけでなく健康な細胞由来のヌクレオソームも含有する可能性があることは、当業者には明らかであろう。同様に、別の医学的状態を有する対象において、健康な細胞由来のヌクレオソーム、ならびに1種又は様々な損傷を伴う1以上の型の病気の細胞由来のヌクレオソームを含めた、他の起源の組み合わせを有するヌクレオソームが生じる可能性がある。好ましい実施態様では、あるパネルの喀痰ヌクレオソームエピジェネティック構造レベルが測定され、その結果を使用して、試料中に存在するヌクレオソームの細胞的起源(1つ又は複数)が決定される。
【0044】
本発明のさらなる態様によれば、動物又はヒト対象における、喀痰の細胞外遊離ヌクレオソームの細胞起源を決定するための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該対象の喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は測定するステップと;
(iii)前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの測定されたレベルを、該細胞外遊離ヌクレオソームが、健康な肺細胞、肺癌細胞、若しくは他の損傷を有する細胞、又はこうした細胞のいずれかの混合物に由来するかどうかの指標として使用するステップと
を含む前記方法が提供される。
【0045】
本発明の好ましい実施態様では、複数のエピジェネティックヌクレオソーム特徴物からなるエピジェネティックプロファイルをもたらすために、2以上のエピジェネティック特徴物についての喀痰分析が実施される。このエピジェネティックプロファイルを使用して、試料中に存在するヌクレオソームの起源(健康な細胞、肺癌細胞、若しくは他の損傷を有する細胞、又はこうした細胞のいずれかの混合物のクロマチンに由来するかどうか)を決定することができる。このエピジェネティックプロファイルを使用して、喀痰試料が採取された対象における肺癌又は他の損傷の存在又はそれ以外のものを決定することもできる。
【0046】
本発明のさらなる態様によれば、先の方法のいずれかに従って対象から得られた喀痰試料における、ヌクレオソーム付加物、及びヌクレオソーム関連ヒストン修飾、DNA修飾、並びにヒストンバリアントを含めたエピジェネティック特徴物を用いて、喀痰の細胞外遊離ヌクレオソームを検出するための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該喀痰試料を、第1及び第2の結合剤(ここでは、前記結合剤の一方は、細胞外遊離ヌクレオソーム又はその構成成分と結合し、前記結合剤の他方は、前記細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物と結合する)と接触させるステップと;
(iii)喀痰試料における前記結合剤の一方又は両方の結合を検出又は定量化するステップと;
(iv)喀痰試料中の前記エピジェネティック特徴物を有する細胞外遊離ヌクレオソームの存在の尺度として、こうした結合の存在、程度、又は量を使用するステップと
を含む前記方法が提供される。
【0047】
本明細書に記載するエピジェネティック特徴物はまた、ヌクレオソーム内のその包含物、又はそれ以外のものとは独立して分析することもできることを理解されたい。したがって、本発明のさらなる態様によれば、動物又はヒト対象における癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を診断又は検出するための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該喀痰試料におけるある特定の翻訳後修飾又はヌクレオソーム付加物を含有するある特定のヒストンバリアント、ヒストンアイソフォーム、又はヒストンのレベルを検出又は測定するステップと;
(iii)該喀痰試料における該特定のヒストンバリアント、アイソフォーム、又は修飾の測定されたレベルを、該対象における前記疾患の存在の指標として使用するステップと
を含む前記方法が提供される。
【0048】
本発明の一実施態様では、前記試料のヒストンバリアント、アイソフォーム、又はヒストン修飾組成を決定するために、喀痰試料中のヒストンが分析される。一実施態様では、喀痰試料中のヒストンは、例えば、限定はされないが、該試料の酸抽出によって、こうした分析のために単離することができる。別の実施態様では、第1の抗ヒストン結合剤を、同じヒストン部分のヒストン修飾と結合するように誘導される別の結合剤と組み合わせて用いる、ヒストン修飾のためのイムノアッセイが提供される。別の実施態様では、同じヒストン部分の異なるエピトープと結合するように誘導される2種の抗ヒストン結合剤(そのうちの少なくとも1つは、対象となるアイソフォームに特異的である)を用いる、ヒストンバリアント又はアイソフォームイムノアッセイが提供される。
【0049】
本発明のさらなる態様によれば、動物又はヒト対象における癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を診断又は検出するための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該喀痰試料中の後成的に修飾されたヌクレオチドのレベルを検出又は測定するステップと;
(iii)該喀痰試料中の後成的に修飾されたヌクレオチドの測定されたレベルを、該対象における前記疾患の存在の指標として使用するステップと
を含む前記方法が提供される。
【0050】
この態様の好ましい実施態様では、喀痰クロマチン断片において測定される、後成的に修飾されたヌクレオチドは、5-メチルシトシン又はメチル化DNAである。明確にするために記すと、本発明のこの態様は、例えばPowrozekらの文献(2014)によって記載されている通りの、ある特定の遺伝子又はDNA配列のシトシンメチル化状態の調査を含む遺伝子メチル化試験のための方法と混同されるべきではない。対照的に、本発明は、遺伝子配列に無関係の、5-メチルシトシンの全体的レベルの決定を含む。
【0051】
本発明の一実施態様では、喀痰試料中の修飾されたヌクレオチドが、前記試料の修飾されたヌクレオチド組成を決定するために分析される。一実施態様では、喀痰試料中のヌクレオチド及び/又はDNAを、こうした分析のために、例えば、限定はされないが、該試料の有機溶媒又はクロマトグラフィーによるDNA抽出によって単離することができる。別の実施態様では、修飾されたヌクレオチドのためのイムノアッセイが提供される。これは、抗ヌクレオチド結合剤、例えば抗5メチルシトシン結合剤を用いる単一抗体イムノアッセイ、又は、第1の抗一本鎖又は二本鎖DNA結合剤を、ある修飾されたヌクレオチドと結合するように誘導される別の結合剤と組み合わせて用いる2部位イムノアッセイであり得る。
【0052】
本発明の好ましい実施態様では、固定化された抗ヌクレオソーム結合剤を、抗ヒストン修飾又は抗ヒストンバリアント又は抗DNA修飾又は抗タンパク質付加物の検出結合剤と組み合わせてインサイチュで用いる、ヌクレオソームに組み込まれたエピジェネティック特徴物の測定のための、2部位イムノアッセイ方法が提供される。本発明の別の実施態様では、抗ヌクレオソーム検出結合剤を、固定化された抗ヒストン修飾又は抗ヒストンバリアント又は抗DNA修飾又は抗タンパク質付加物の結合剤と組み合わせて用いる、2部位イムノアッセイが提供される。一実施態様では、ヌクレオソーム付加物には、高移動度タンパク質、ポリコームタンパク質、クロマチン修飾酵素 、又は核内ホルモン受容体が含まれる。
【0053】
好ましい実施態様では、対象における肺癌の存在を検出するために、複数のエピジェネティックヌクレオソーム特徴物のパネルが使用される。その臨床的精度を高めるために、こうしたパネル内には、例えばヘモグロビン及び/又は他の腫瘍マーカー(例えば;癌胎児性抗原(CEA)、CA125及びCA19.9)、及び/又は特定の変異した若しくはメチル化された遺伝子配列に関する試験を含めた、さらなる試験が含まれ得る。追加のパラメータとしては、あらゆる関連する臨床情報、例えば、限定はされないが、年齢、性別、肥満度指数(Body Mass Index)、喫煙状況、及び食習慣が含まれ得る。
【0054】
本発明の一実施態様では、こうした治療の必要がある対象のための最適な薬物治療又は他の治療計画を決定するために、喀痰試料中のヌクレオソームのある特定の構造的エピジェネティック特徴物のレベル、又はあるパネルの2以上のこうしたエピジェネティック特徴物のレベルが使用される。
【0055】
本発明のさらなる態様によれば、医学的処置に対する適合性についての動物又はヒト対象の評価のための方法であって:
(i)対象から得られた喀痰試料におけるエピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームを検出又は測定するステップと;
(ii)対象についての好適な治療の選択のためのパラメータとして検出される、前記特徴物を有する細胞外遊離ヌクレオソームの測定されたレベルを使用するステップと
を含む前記方法が提供される。
【0056】
本発明のさらなる態様によれば、癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を有する、又は有する疑いがある、又は素因を有する、動物又はヒト対象における治療法の有効性をモニタリングするための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該対象の喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を測定するステップと;
(iii)前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの測定されたレベルを、前記対象から採取された以前の試料と比較して、前記治療法の有効性を示すものとして使用するステップと
を含む前記方法が提供される。
【0057】
本発明のさらなる態様によれば、癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を有する動物又はヒト対象の予後を決定するための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該対象の喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を測定するステップと;
(iii)前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームのレベルを、癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の予後を示すものとして使用するステップと
を含む前記方法が提供される。
【0058】
本発明のさらなる態様によれば、実際の癌又は癌の疑い、良性腫瘍、炎症性疾患、又は自己免疫疾患を有する対象における使用のための、疾患状態を検出又は診断する目的で、又は医学的処置に対する適合性についての動物又はヒト対象の評価のために、又は動物又はヒト対象の治療をモニタリングするために、エピジェネティック特徴物を含む喀痰の細胞外遊離ヌクレオソームを、単独で、若しくはあるパネルの測定の一部として検出又は測定するための方法が提供される。
【0059】
本発明のさらなる態様によれば、動物又はヒト対象における疾患状態を検出又は診断するための、喀痰の細胞外遊離ヌクレオソーム関連エピジェネティックバイオマーカーを特定するための方法であって:
(i)疾患のある対象の喀痰試料中のエピジェネティック特徴物を含む喀痰の細胞外遊離ヌクレオソームを検出又は測定するステップと;
(ii)健康な対象又は対照被験者の喀痰試料中の同じエピジェネティック特徴物を含む細胞外遊離ヌクレオソームを検出又は測定するステップと;
(iii)疾患のある対象と対照被験者との検出された測定されたレベル間の差を使用して、該エピジェネティック特徴物を含むヌクレオソームが、独立型のバイオマーカーとして、又は、他のバイオマーカーと組み合わせて、疾患状態に対するバイオマーカーとして有用であるかどうかを特定するステップと
を含む前記方法が提供される。
【0060】
本発明のさらなる態様によれば、癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の診断又は検出のための、喀痰の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出及び/又は定量化することが可能な1以上の結合剤を含むキットの使用が提供される。
【0061】
本発明のさらなる態様によれば、複数のエピジェネティックヌクレオソーム特徴物に関する喀痰ヌクレオソームのエピジェネティックプロファイルを得るために、試験のパネルが提供される。こうした試験パネルは、例えば、異なるヌクレオソームエピトープ(限定はされないが、異なる付加物及び/又はヒストンバリアント及び/又はヒストン修飾及び/又はDNA修飾、及び/又はヌクレオソームそれ自体の測定、又はこれらのヌクレオソームエピトープのいずれか及びあらゆる他のヌクレオソームエピトープのあらゆる組み合わせ又は比が含まれる)を含有するヌクレオソームの2以上の測定からなり得る。これらのパネルのいずれかに、ヘモグロビン及びあらゆる他の公知の腫瘍マーカーを含めた他の(非エピジェネティック及び/又は非ヌクレオソーム)マーカーも含まれ得ることが、当業者に明らかであろう。
【0062】
前述の方法のいずれかを、独立型の試験として、又は既存の試験と組み合わせて使用することができることを理解されたい。
【0063】
得られたエピジェネティックヌクレオソームプロファイルを使用して、そのヌクレオソームが産生されたクロマチン断片の起源の細胞を決定することができる。おそらく、細胞的起源には、例えば、健康な細胞、肺癌細胞、炎症細胞、COPD細胞、喘息細胞、及びあらゆる他の胸部損傷の細胞が含まれ得る。喀痰クロマチン断片には、2以上の異なる細胞型の混合物由来の、例えば、限定はされないが、健康な細胞と肺癌細胞由来の断片が含まれ得る。喀痰試料中に存在するヌクレオソームクロマチン断片のいずれか(仮に少数でも)が、病気の細胞、例えば肺癌細胞に由来する場合、これは、その喀痰が得られた対象における疾患状態、例えば肺癌の存在を示す。
【0064】
使用される2種の抗体又は他の結合剤を、変化していないヌクレオソームに、又はヌクレオソームのいずれかの構成成分の一部(限定はされないが、ヒストン、ヒストンバリアント、ヒストン修飾、若しくはあらゆるヌクレオチド(又は他の方法で修飾された)、又はヌクレオソームのDNA構成成分の他の部分が含まれる)に結合するように誘導できることは、当業者には明らかであろう。これは、古典的な2部位イムノアッセイにおいて使用される、固定化された抗体と検出抗体(又は他の結合剤)との両方に対するあらゆる組み合わせに当てはまる。したがって、本発明のさらなる態様では、これらの結合剤が誘導されるどちらの特徴物も含有するヌクレオソーム(のみ)を検出するための方法が提供される。この設計の利点は、喀痰ヌクレオソームエピトープを、喀痰ヌクレオソームにおけるその同時発生が健康な細胞又は肺癌細胞又はその他の病気の細胞と関連するエピトープであるように選択できることである。疾患(例えば;癌)起源のヌクレオソームの多く又はほとんど又はすべてに共通するが、健康な細胞起源のヌクレオソームに存在しない又は稀であるエピトープに対して選択的なこうした抗体又は結合剤の、免疫吸着剤(通常、固相抗体)としての使用が、病気の細胞起源のこうしたヌクレオソームのために選択されることとなる。これは、この分析に、腫瘍ヌクレオソームの選択性又は濃縮態様を提供する。
【0065】
本発明の一実施態様では、抗ヌクレオソーム結合剤として選択された抗体又は他の選択的結合剤は、腫瘍起源のヌクレオソームの濃縮に対して選択的である。好ましい実施態様では、使用される抗体又は他の抗ヌクレオソーム選択的結合剤は、ヒストンH3.1及び/又はH3.2及び/又はH3tに結合するように誘導される。腫瘍起源のヌクレオソームに対して選択的な結合剤は、(腫瘍起源の)ヌクレオソームそれ自体、いずれかの特定のヒストン修飾、又はある特定のヒストン修飾を含む細胞外遊離ヌクレオソーム、ヒストンバリアント、又はある特定のヒストンバリアントを含む細胞外遊離ヌクレオソーム、DNA修飾、又はある特定のDNA修飾を含む細胞外遊離ヌクレオソーム、又はヌクレオソーム付加物のレベルに関する分析、を含めた、あらゆる分析において使用することができる。
【0066】
喀痰試料の採取のための方法は、長年にわたって使用されており、当技術分野で周知である。本研究で使用される喀痰採取方法は、対象に、喀痰形成を誘発するために、5分間、NaCl溶液を含有するネブライザーを通して呼吸し、続いて容器に喀出するように求めることを含んでいた。喀痰が生じなかった場合には、このプロセスを、さらに最大3回繰り返した(すなわち、最大で合計20分、ネブライザー上で呼吸を行う)。試料体積を測定し、試料をリン酸緩衝生理食塩水で希釈した。希釈した試料を、遠心分離して細胞性物質を除去し、ガーゼを通して濾過し、分析のために使用するまで凍結した。
【0067】
喀痰試料材料の採取のための装置は、市販品として入手可能であり、例えば、肺の気道内に音波及び振動を発生させることによって喀痰を誘発する小さな電源内蔵型低周波装置であるLungFluteが挙げられる(Anjumanらの文献、2013)。あらゆる喀痰試料採取方法を、本発明のために使用できることは、当業者には明らかであろう。同様に、希釈、濾過、分離、精製、又はそうでなくとも分析のために調製された、あらゆる喀痰由来の試料を、本発明のために使用することができる。
【0068】
喀痰試料中のバイオマーカーとして、ヒストン修飾、及び/又はある特定のヒストン修飾を含む細胞外遊離ヌクレオソーム、及び/又はヒストンバリアント、及び/又はある特定のヒストンバリアントを含む細胞外遊離ヌクレオソーム、及び/又はDNA修飾、及び/又はある特定のDNA修飾を含む細胞外遊離ヌクレオソーム、及び/又はヌクレオソーム付加物、及び/又はヌクレオソームそれ自体を単離する、及び/又は検出する、又はこれらのレベルを測定するためのあらゆる方法を、本発明のために使用することができる。これらの分析物の検出又は測定のための方法の例としては、クロマトグラフ法、分光法(特に質量分析法)、バイオセンサー、ChIP、及び免疫化学的方法が挙げられる。いくつかの検出又は測定方法は、例えば、(例えば核酸を抽出するための)溶媒抽出、(例えばヒストンタンパク質を抽出するための)酸抽出、選択的な抗体結合剤又は他の特異的な分析物結合剤を使用するクロマトグラフィー又はアフィニティ精製/単離を含めた方法による、喀痰試料からのこれらの分析物の事前の濃縮又は単離を伴うことができる。
【0069】
本発明者らは、本発明の方法を喀痰試料において使用して、初期段階の肺癌を含めた非小細胞肺癌(NSCLC)を検出できることを実証している。喀痰物質が、肺癌を通過する又は通り過ぎる可能性があることは、当業者には明らかであろう。呼気濃縮物、気管支肺胞洗浄(BAL)液、及び胸膜液は、胸部の癌、特に肺癌及び前癌が形成する可能性がある、胸部をやはり通過する又は通り過ぎる流体である。本発明の方法を、呼気濃縮物、BAL、及び胸膜液にも適用できることは、明らかである。
【0070】
記載した本発明の方法が、バイオセンサー型の分析、及び例えば米国ForteBio社によって販売されている型のラベルフリー分析を含めた、様々な実施態様を含むことは、当業者には明らかであろう。
【0071】
本発明のあらゆる態様に関する用語「抗体」、「結合剤」、又は「リガンド」が、限定的ではなく、特定の分子又は実態と結合することが可能なあらゆる結合剤を含むことが意図されること、また、本発明の方法において、あらゆる好適な結合剤を使用できることは、当業者には明らかであろう。用語「ヌクレオソーム」が、細胞外遊離モノヌクレオソーム及びオリゴヌクレオソーム、並びに流体媒質中の分析することができるあらゆるこうしたクロマチン断片を含むことが意図されることも明らかであろう。
【0072】
本発明のさらなる態様は、バイオマーカーに特異的に結合することが可能な、天然に存在する又は化学的に合成された化合物などの、リガンド又は結合剤を提供する。本発明によるリガンド又は結合剤は、バイオマーカーに特異的に結合することが可能な、ペプチド、抗体若しくはその断片、又はプラスチック抗体などの合成のリガンド、又はアプタマー、又はオリゴヌクレオチドを含むことができる。抗体は、バイオマーカーに特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体又はその断片であり得る。本発明によるリガンドは、発光、蛍光、酵素、又は放射性マーカーなどの検出可能なマーカーで標識することができる;或いは又はさらに、本発明によるリガンドは、アフィニティタグ、例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、又はHis (例えばヘキサ-His)タグで標識することができる。或いは、リガンド結合は、ラベルフリー技術、例えばForteBio社の技術を使用して決定することができる。
【0073】
本発明によるバイオセンサーは、バイオマーカーに対する抗体と特異的に結合することが可能な、バイオマーカー又はその構造的/形状的模倣体を含むことができる。提供されるのはまた、本明細書に記載する通りのリガンド又は模倣体を含むアレイである。
【0074】
本発明によって提供されるのはまた、天然に存在する又は化学的に合成することができ、かつ適切にはペプチド、抗体若しくはその断片、アプタマー、又はオリゴヌクレオチドである、本明細書に記載する通りの1以上のリガンドの使用、又は本発明のバイオセンサー、又は本発明のアレイ、又はバイオマーカーを検出及び/又は定量化するための本発明のキットの使用である。これらの使用においては、検出及び/又は定量化は、本明細書に定義する通りの生体試料に対して実施することができる。
【0075】
本発明の方法を実施するために、診断又はモニタリングキットが提供される。こうしたキットは、適切には、任意にキットの使用のための説明書と共に、本明細書に記載する通りのバイオマーカー、及び/又はバイオセンサー、及び/又はアレイの検出及び/又は定量化のための、本発明によるリガンドを含むこととなる。
【0076】
本発明のさらなる態様は、本明細書に定義する通りの1以上のバイオマーカーを検出及び/又は定量化することが可能なバイオセンサーを含む、疾患状態の存在を検出するためのキットである。
【0077】
疾患の存在を検出するためのバイオマーカーは、障害の進行を遅延又は停止させる新規の標的及び薬物分子の発見のための、本質的な標的である。バイオマーカーのレベルは、障害の及び薬物応答を示すものであるので、バイオマーカーは、インビトロ及び/又はインビボ分析における新規の治療用化合物の特定のために有用である。本発明のバイオマーカーは、バイオマーカーの活性を調節する化合物のスクリーニングのための方法において用いることができる。
【0078】
したがって、本発明のさらなる態様では、バイオマーカーの産生を促進及び/又は抑制することが可能な物質を特定するために、記載した通りの結合剤又はリガンド(これは、本発明によるペプチド、抗体若しくはその断片、又はアプタマー、又はオリゴヌクレオチドであり得る)の使用;又は本発明によるバイオセンサー、若しくは本発明によるアレイの使用;又は本発明によるキットが提供される。
【0079】
対象におけるバイオマーカーの産生を促進及び/又は抑制することが可能な物質を特定する方法であって、試験物質を対象動物に投与することと、対象からの試験試料中に存在するバイオマーカーのレベルを検出及び/又は定量化することとを含む前記方法も提供される。
【0080】
用語「バイオマーカー」は、経過、事象、又は状態の、特徴的な生物学的指標又は生物学的に得られた指標を意味する。バイオマーカーは、診断の方法、例えば臨床スクリーニング、及び予後評価において、また、治療法の結果をモニタリングすること、ある特定の治療的処置に応答する可能性が最も高い対象を特定すること、及び薬物スクリーニング及び開発において使用することができる。バイオマーカー及びその使用は、新規薬物治療の特定にとって、また、薬物治療のための新規標的の発見にとって有益である。
【0081】
本明細書で使用する場合の用語「検出すること」及び「診断すること」は、疾患状態の特定、確認、及び/又は特徴づけを包含する。本発明による検出、モニタリング、及び診断の方法は、疾患の存在を確認するために、又は発症及び進行を評価することによって疾患の発生をモニタリングするために、又は疾患の改善若しくは退縮を評価するために有用である。検出、モニタリング、及び診断の方法はまた、臨床スクリーニング、予後の評価、治療法の選択、治療的利益の評価のための、すなわち、薬物スクリーニング及び薬物開発のための方法において有用である。
【0082】
効率的な診断及びモニタリング方法は、正確な診断を確立すること、最も適切な治療の迅速な特定を可能にすること(したがって、有害な薬物副作用への不必要な曝露を減らすこと)、及び再発率を低下させることによって、予後の向上の可能性を伴う、非常に強力な「問題解決」を提供する。
【0083】
一実施態様では、前記バイオマーカーは、腫瘍の細胞から放出される。したがって、本発明のさらなる態様によれば、腫瘍成長の検出のための方法であって、(i)腫瘍の細胞に関連する又は腫瘍の細胞から放出される生体試料中のバイオマーカーを測定するステップと、(ii)前記バイオマーカーのレベルが、腫瘍のサイズ、段階、攻撃性、又は転移と関係があることを実証するステップとを含む前記方法が提供される。
【0084】
本発明のイムノアッセイには、ヌクレオソームに、又はヌクレオソーム成分に、又はヌクレオソームのエピジェネティック特徴物に結合するように誘導される1以上の抗体又は他の特異的な結合剤を用いる、あらゆる方法が含まれる。イムノアッセイとしては、2部位イムノアッセイ又は免疫測定分析(これらは、標識のない分析であり得る、又は(限定はされないが)放射性、酵素、蛍光、時間分解蛍光、化学発光、比濁、又は粒子による検出方法を用いる)が挙げられる。分析はまた、放射性、酵素、蛍光、時間分解蛍光、化学発光、比濁、及び粒子による標識を含めた様々な標識型を用いる、単一部位イムノアッセイ、試薬限定イムノアッセイ、又は競合的イムノアッセイ方法(標識された抗原及び標識された抗体を含む)、単一抗体イムノアッセイ方法であり得る。前記イムノアッセイ方法はすべて、当技術分野で周知である。
【0085】
一実施態様では、本発明の方法は、複数回繰り返される。この実施態様は、ある期間にわたって検出結果をモニタリングできるようにするという利点を提供する。こうした仕組みは、疾患状態の治療の有効性をモニタリングする又は評価することの利点を提供することとなる。本発明のこうしたモニタリング方法を使用して、発症、進行、安定化、改善、再発、及び/又は寛解をモニタリングすることができる。
【0086】
したがって、本発明はまた、こうした疾患を有する疑いがある対象における疾患状態に対する治療法の有効性をモニタリングする方法であって、前記対象からの生体試料中に存在するバイオマーカーを検出及び/又は定量化することを含む前記方法を提供する。モニタリング方法では、試験試料は、2回以上採取することができる。該方法は、試験試料中に存在するバイオマーカー(1又は複数)のレベルを、1以上の対照と、及び/又は、例えば治療法の開始前に同じ試験対象から、及び/又は治療法の、より早期の段階で同じ試験対象から、以前に採取した1以上の以前の試験試料と比較することをさらに含むことができる。該方法は、別の機会に採取した試験試料中のバイオマーカー(1又は複数)の性質又は量の変化を検出することを含むことができる。
【0087】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、ヒト又は動物対象における疾患状態に対する治療法の有効性をモニタリングするための方法であって:
(i)本明細書に定義する通りのバイオマーカーの量を定量化することと;
(ii)試験試料中の前記バイオマーカーの量を、同じ試験対象から、より早期の段階に採取された、1以上の対照及び/又は1以上の以前の試験試料中に存在する量と比較することと
を含む前記方法が提供される。
【0088】
同じ試験対象から以前に採取した以前の試験試料中のレベルに対する試験試料中のバイオマーカーのレベルの変化は、障害又は障害の疑いに対する前記治療法の有益な効果、例えば安定化又は改善を示すものであり得る。さらに、いったん治療が完了した後、疾患の再発についてモニタリングするために、本発明の方法を、周期的に繰り返すことができる。
【0089】
治療法の有効性をモニタリングするための方法を使用して、ヒト対象における及び非ヒト動物における(例えば動物モデルにおける)既存の治療法及び新規の治療法の治療的有効性をモニタリングすることができる。これらのモニタリング方法は、新規の原薬及び原薬の組み合わせのためのスクリーニングに組み込むことができる。
【0090】
さらなる実施態様では、即効性の治療法のおかげで、より速い変化のモニタリングを、数時間から数日というより短い間隔で実施することができる。
【0091】
本発明のさらなる態様によれば、疾患状態の存在を検出するためのバイオマーカーを特定するための方法が提供される。本明細書で使用する場合の用語「特定」は、生体試料中に存在するバイオマーカーの存在を確認することを意味する。試料中に存在するバイオマーカーの量を定量化することは、試料中に存在するバイオマーカーの濃度を決定することを含むことができる。特定及び/又は定量化は、試料に対して直接に、又はそこからの抽出物に対して間接的に、又はその希釈物に対して、実施することができる。
【0092】
本発明の代替態様では、バイオマーカーの存在は、バイオマーカーに応答して対象の身体によって産生され、その結果として疾患状態を有する対象からの生体試料中に存在するバイオマーカーと特異的に結合することが可能な抗体又はその断片を検出及び/又は定量化することによって評価される。
【0093】
特定及び/又は定量化は、対象からの生体試料中の特定のタンパク質の存在及び/又は量を特定するのに適したあらゆる方法、又は生体試料の精製若しくは抽出、又はその希釈によって実施することができる。本発明の方法では、定量化は、試料(単数)又は試料(複数)中のバイオマーカーの濃度を測定することによって実施することができる。本発明の方法で試験することができる生体試料としては、先に定義した通りのものが挙げられる。これらの試料は、調製し、例えば適切な場合には希釈又は濃縮し、通常の方式で保管することができる。
【0094】
バイオマーカーの特定及び/又は定量化は、バイオマーカーの、又はその断片、例えば、C末端切断を有する又はN-末端切断を有する断片の検出によって実施することができる。断片は、適切には、長さが4アミノ酸超、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20アミノ酸の長さである。ヒストンテールの配列と同じ又は関連する配列のペプチドが、ヒストンタンパク質の特に有用な断片であることに特に留意されたい。
【0095】
バイオマーカーは、例えばSELDI又はMALDI-TOFによって、直接的に検出することができる。或いは、バイオマーカーは、バイオマーカーと特異的に結合することが可能な、抗体又はそのバイオマーカー結合断片、又は他のペプチド、又はリガンド、例えばアプタマー、又はオリゴヌクレオチドなどの、リガンド(単数)又はリガンド(複数)との相互作用を介して、直接的又は間接的に検出することができる。リガンド又は結合剤は、発光、蛍光、又は放射性標識、及び/又はアフィニティタグなどの、検出可能な標識を有することができる。
【0096】
例えば、検出及び/又は定量化は、SELDI(-TOF)、MALDI(-TOF)、1-Dゲルに基づく解析、2-Dゲルに基づく解析、質量分析(MS)、逆相(RP)LC、サイズ浸透(ゲル濾過)、イオン交換、親和性、HPLC、UPLC、及び他のLC又はLC MSに基づく技術からなる群から選択される1以上の方法によって実施することができる。適切なLC MS技術としては、ICAT(登録商標)(Applied Biosystems社、CA, USA)、又はiTRAQ(登録商標)(Applied Biosystems社、CA, USA)が挙げられる。液体クロマトグラフィー(例えば高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)又は低圧液体クロマトグラフィー(LPLC))、薄層クロマトグラフィー、NMR(核磁気共鳴)分光法も、使用できるであろう。
【0097】
本発明による診断又はモニタリングの方法は、試料をSELDI TOF又はMALDI TOFによって分析して、バイオマーカーの存在又はレベルを検出することを含むことができる。これらの方法はまた、臨床スクリーニング、予後、治療法の結果をモニタリングすること、薬物スクリーニング及び開発のために、ある特定の治療的処置に応答する可能性が最も高い対象を特定すること、及び薬物治療のための新規標的の特定に適している。
【0098】
分析物バイオマーカーを特定及び/又は定量化することは、該バイオマーカーと特異的に結合することが可能な抗体又はその断片を伴う、免疫学的方法を使用して実施することができる。好適な免疫学的方法としては、2部位イムノアッセイ(免疫測定分析又はサンドイッチイムノアッセイ)、例えばサンドイッチELISA(ここでは、分析物バイオマーカー上の異なるエピトープを認識する2種の抗体を使用して、分析物バイオマーカーの検出が実施される);ラジオイムノアッセイ(RIA)、直接、間接、又は競合的な酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、及びあらゆる粒子に基づくイムノアッセイ(例えば、金、銀、若しくはラテックス粒子、磁気粒子、又はQ-dotを使用する)が挙げられる。免疫学的方法は、例えば、マイクロタイタープレート又はストリップ形式で実施することができる。
【0099】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に定義する通りの方法によって特定されるバイオマーカーが提供される。
【0100】
一実施態様では、1以上のバイオマーカーを、生物学的経路におけるバイオマーカーの上流又は下流に見られる分子、又は該分子の測定可能な断片によって置き換えることができる。
【0101】
本発明のさらなる態様によれば、癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の診断又は検出のための、喀痰試料中のバイオマーカーとしての、翻訳後ヒストン修飾、ヒストンバリアント若しくはアイソフォーム、又は修飾されたヌクレオチドの使用が提供される。
【0102】
疾患に特異的な鍵となるバイオマーカーの特定は、診断手順及び治療計画の統合の中核をなす。予測的なバイオマーカーを使用して、バイオセンサーなどの適切な診断ツールを開発することができ;したがって、本発明の方法及び使用では、特定及び定量化は、バイオセンサー、微量分析システム、微細加工(microengineered)システム、マイクロ分離システム、イムノクロマトグラフィーシステム、又は他の好適な分析装置を使用して実施することができる。バイオセンサーは、バイオマーカー(1又は複数)、電気、熱、磁気、光学的(例えばホログラム)、又は音響(acoustic)技術の検出のための免疫学的方法を組み込むことができる。こうしたバイオセンサーを使用して、生体試料中に見られる予測される濃度の標的バイオマーカー(1又は複数)を検出することが可能である。
【0103】
本明細書で使用する場合、用語「バイオセンサー」は、バイオマーカーの存在を検出することが可能なあらゆるものを意味する。バイオセンサーの例は、本明細書に記載する。
【0104】
本発明によるバイオセンサーは、バイオマーカーと特異的に結合することが可能な、本明細書に記載する通りのリガンド結合剤又はリガンドを含むことができる。こうしたバイオセンサーは、本発明のバイオマーカーを検出及び/又は定量化するのに有用である。
【0105】
本発明のバイオマーカー(1又は複数)は、「スマート(smart)」ホログラム、又は高周波音響システムに基づくバイオセンサー導入技術を使用して検出することができ、こうしたシステムは、「バーコード」又はアレイ構成に特に適している。
【0106】
スマートホログラムセンサー(Smart Holograms社、Cambridge,UK)では、バイオマーカーとの特異的反応に対して感光性が与えられた薄いポリマーフィルムにホログラフィー像が記録される。露出させると、バイオマーカーは、ポリマーと反応し、ホログラムによって示される画像の変化がもたらされる。試験結果の読み出しは、光学的輝度、画像、色、及び/又は画像の位置の変化であり得る。定性的及び半定量的用途については、センサーホログラムは、目で読み取ることができるので、検出装置の必要性が除外される。定量的測定が必要とされる場合、単純なカラーセンサーを使用して、シグナルを読み取ることができる。試料の不透明度又は色は、センサーの動作を邪魔しない。センサーのフォーマットにより、いくつかの物質の同時検出のための多重化が可能になる。様々な必要条件を満たすために、可逆的及び不可逆的センサーを設計することができ、対象となるある特定の バイオマーカーの連続的モニタリングが実現可能である。
【0107】
適切には、本発明の1以上のバイオマーカーの検出のためのバイオセンサーは、生体分子認識を、適切な手段と組み合わせて、試料中のバイオマーカーの存在の検出又は定量化をシグナルに変換する。バイオセンサーは、例えば、病室、外来診療部門、手術室、家庭、屋外、及び仕事場における、「代替場所」診断試験のために適合させることができる。
【0108】
本発明の1以上のバイオマーカーを検出するためのバイオセンサーとしては、音響、プラズモン共鳴、ホログラフィー、バイオレイヤー干渉法(Bio-Layer Interferometry)(BLI)、及び微細加工(microengineered)センサーが挙げられる。本発明の1以上のバイオマーカーの検出のためのバイオセンサーには、インプリント認識要素、薄膜トランジスタ技術、磁気音響共鳴装置、及び他の新規の音響-電気システムを用いることができる。
【0109】
本発明の1以上のバイオマーカーの特定及び/又は定量化を含む方法は、卓上機器で実施することもできるし、非実験室環境において、例えば診療所で、又は対象のベッドサイドで使用することができる、使い捨ての、診断用、又はモニタリング用プラットフォームに組み込むこともできる。本発明の方法を実施するのに適したバイオセンサーとしては、光学式又は音波(acoustic)リーダーを用いる「クレジット」カードが挙げられる。バイオセンサーは、収集されたデータが判定のために医師に電子的に送信されるように設定することができ、したがって、電子医療(e-medicine)の基盤を形成することができる。
【0110】
疾患状態の診断及び存在のモニタリングのための診断キットは、本明細書に記載している。一実施態様では、このキットは、バイオマーカーを特定及び/又は定量化することが可能なバイオセンサーをさらに含有する。適切には、本発明によるキットは、任意に本明細書に定義した方法のいずれかに従うキットの使用のための説明書と共に、以下の群:バイオマーカー又はバイオマーカーの構造的/形状的模倣体に対して特異的なリガンド結合剤又はリガンド、1種以上の対照、1種以上の試薬、及び1種以上の消耗品;から選択される1以上の構成成分を含有することができる。
【0111】
疾患状態に対するバイオマーカーの特定によって、診断手順及び治療計画の統合が可能になる。本発明のバイオマーカーの検出を使用して、対象を、臨床試験への参加の前にスクリーニングすることができる。該バイオマーカーは、治療応答、応答しないこと、好ましくない副作用プロファイル、服薬遵守の程度、及び適切な血清薬物レベルの達成を示すための手段を提供する。該バイオマーカーを使用して、薬物有害反応の警告を提供することができる。バイオマーカーは、応答の評価を使用して、投薬量を微調整する、処方される医薬品の数を最小にする、有効な治療法の達成の遅れを減らす、また、薬物有害反応を避けることができるので、個別化治療法の開発において有用である。したがって、本発明のバイオマーカーをモニタリングすることによって、対象の管理を、対象の障害及び薬理ゲノミクスプロファイルによって決定される必要性に正確に適合するように合わせることができ、したがって、該バイオマーカーを使用して、最適な用量を設定する、有益な治療応答を予測する、また、重篤な副作用のハイリスクの対象を特定することができる。
【0112】
バイオマーカーに基づく試験は、「新規」対象の第一選択評価を提供し、また、現在の尺度を使用して達成できない、正確かつ迅速な診断のための客観的尺度を提供する。
【0113】
さらに、診断的バイオマーカー試験は、軽度又は症候性の疾患を有する、又は症候性の疾患を発症するリスクが高い可能性がある、ファミリーメンバー又は対象を特定するために有用である。これによって、適切な治療法の開始、又は予防措置、例えば危険因子の管理が可能になる。これらの手法は、結果を改善するものと認識されており、障害の顕性の発症を予防することができる。
【0114】
バイオマーカーモニタリング方法、バイオセンサー、及びキットはまた、医師が、再発がその障害の悪化によるものであるかどうかを決定することを可能にする、対象モニタリングツールとして不可欠である。薬理学的治療が、不適切であると評価されるならば、治療法を、元に戻す又は増強することができ;適切な場合、治療法の変更を施すことができる。バイオマーカーは、障害の状態に対して感受性があるので、薬物療法の影響の指標を提供する。
【0115】
本発明のさらなる態様によれば、動物又はヒト対象において、癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を治療する方法であって:
(i)対象の喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は測定するステップと;
(ii)前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの測定されたレベルを、対象における前記疾患の存在を示すものとして使用するステップと;
(iii)ステップ(ii)で癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を有する患者と診断された対象に、治療薬を投与するステップと
を含む前記方法が提供される。
【0116】
本発明のさらなる態様によれば、それを必要とする個体において、癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を治療する方法であって、喀痰試料において、対照被験者由来の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物のレベルと比較した場合に異なるレベルの細胞外遊離ヌクレオソームの前記エピジェネティック特徴物を有すると特定された患者に、治療薬を投与するステップを含む前記方法が提供される。
【0117】
一実施態様では、治療の方法は、癌、肺癌、特に非小細胞肺癌(NSCLC)などの治療を含む。
【0118】
本発明を、これから、次の非限定的な実施例に関して説明することとする。
【実施例】
【0119】
(実施例1)
喀痰試料を、非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された17人の治療を受けたことがない対象(ステージT1疾患を有する2対象、ステージT2疾患を有する2対象、ステージT3疾患を有する5対象、ステージT4疾患を有する4対象、及び不確定のステージTxの疾患を有する4対象が含まれる)から採取した。喀痰試料を、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断された10人の対象と、12人の年齢がほぼ一致する健康な対照被験者からも採取した。採取については、対象は、喀痰形成を誘発するために、5分間、NaCl溶液を含有するネブライザーを通して呼吸し、続いて容器に喀出するように求められた。喀痰が生じなかった場合には、これを、さらに最大3回繰り返した(すなわち、最大で合計20分、ネブライザー上で呼吸を行う)。試料体積を測定し、試料をリン酸緩衝生理食塩水で1+3希釈した。希釈した試料を、遠心分離して細胞性物質を除去し、ガーゼを通して濾過し、分析のために使用するまで凍結した。
【0120】
希釈した喀痰試料を、9つの異なるヌクレオソーム分析(ヌクレオソーム濃度それ自体、並びに次のヌクレオソーム関連のエピジェネティック特徴物;DNA修飾:5-メチルシトシン、ヒストンバリアント:γ-H2AX、ヒストン修飾:H3K9Me3、H3K9Ac、H3K27Me3、H4K16Ac、H4K20Me3、H4PanAc(汎アセチル化H4)が含まれる)について、本発明のELISA方法を使用して試験した。それぞれの分析のために、10μlの希釈した喀痰を、抗ヌクレオソーム抗体で予備コーティングしたマイクロタイターウェルに、2連で添加し、4℃で一晩インキュベートした。ウェルを洗浄緩衝液(200μL/ウェル、0.05M Tris/HCl緩衝液、pH 7.5、1% Tween 20を含有)で3回洗浄し、50μlのビオチン化抗体の溶液(0.9% NaCl、0.05%デオキシコール酸ナトリウム、及び1% Nonidet P40代替品を含有する0.05M Tris/HCl(pH 7.5)で希釈したもの)を、対象となるエピジェネティック特徴物に結合するように誘導した(すなわち、ヌクレオソームそれ自体、又は5-メチルシトシン、又はγ-H2AX、又はH3K9Me3、又はH3K9Ac、又はH3K27Me3、又はH4K16Ac、又はH4K20Me3、又はH4PanAcにそれぞれ結合するように誘導した)。ウェルを、さらに90分間、室温でインキュベートし、先述と同様に再び洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素標識ストレプトアビジン溶液を添加し、さらに30分間インキュベートした。ウェルを再び洗浄し、発色基質溶液(100μL/ウェル、2,2′-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸]-ジアンモニウム塩)を添加し、室温で20分間インキュベートした。ウェルの光学密度(OD)を、標準のマイクロタイタープレートリーダーを使用して、405nmの波長で測定した。ヌクレオソーム関連のエピジェネティック構造の濃度の増大に伴って発色が増大する用量反応曲線が認められ、ヌクレオソームを含有しない陰性対照では、低いバックグラウンドシグナルが認められた。
【0121】
9つの個々のエピジェネティックヌクレオソーム分析のそれぞれのOD結果を、ドットプロットとして、また、受信者動作特性(Receiver Operator Characteristic)(ROC)曲線としてプロットした。曲線下面積(area under the curve)(AUC)の結果を、9つの分析すべてについて、表1に示す。
【0122】
表1
健康な対象と肺癌を有する対象との、また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する対象と肺癌を有する対象との、本発明の単一のELISA方法の識別。結果は、受信者動作特性(ROC)分析によって算出された曲線下面積(AUC)(%)として表す。
【表1】
【0123】
表1は、NSCLCでは、試験されたエピジェネティック特徴物のいくつかが、他のものよりも大きく変化したことを示す。最も大きく変化したもの(最も高いAUC値)は、H3K9Ac、H4K16Ac、ヌクレオソームレベルそれ自体、及び5-メチルシトシンであった。これらの分析はまた、概して、癌患者において、COPD患者と最も異なる分析であった。喀痰H3K9Acの個々の分析についてのドットプロット及びROC曲線を、それぞれ、
図1及び2に示す。喀痰染色体断片の、この単一のエピジェネティック特徴物の使用は、健康な対象に対する偽陽性の結果を伴わずに、肺癌を有する対象の82%を検出し、また、驚いたことに、COPDを有する対象に対する偽陽性の結果を伴わずに、肺癌を有する対象の78%を検出した。これは、本発明の方法が、肺癌を検出することができ、かつ、肺癌を他の肺状態と区別することができることを実証する。悪性の肺状態と非悪性の肺状態とを区別する能力は、肺癌外科医にとって重要な、まだ対処されていない臨床的必要性である。
【0124】
(実施例2)
先に実施例1で生じた種々の単一のエピジェネティック特徴物測定の光学密度(OD)結果を、様々な組み合わせで集計して、試験パネル結果を得た。肺癌を有する対象を健康な対象から、また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する対象から識別するための、本発明の複数パネルELISA方法の識別を、個々のELISA方法に対するOD結果のフィッシャーの線形判別分析を使用して算出される、簡単な演算数理モデルを使用して決定した。結果を、いくつかのパネル方法について、100%及び90%の臨床的特異度での、それぞれのモデルのROC分析及び算出された臨床的感度を使用して評価した。これを表2に示す。
【0125】
表2
肺癌を有する対象についての、健康な対象からの、また、癌を有する対象についての、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する対象からの、本発明のいくつかの複数パネルELISA方法の識別。これらのパネルについての数理モデルを、個々のELISA方法に対するOD結果のフィッシャーの線形判別分析を使用して算出した。結果を、健康に対するNSCLCについて、又はCOPDに対するNSCLCについて、100%又は90%の特異度での、観察された臨床的感度(%)として表す。
【表2】
【0126】
表2に示した通り、H3K9Acと5-メチルシトシンを含めた、いくつかの分析パネル組み合わせについて、このコホート内の健康な患者からの癌患者の完璧な識別を示す、100%という臨床的感度値が100%の特異度で得られた。驚いたことに、H3K9AcとH4K20Me3との組み合わせも、完璧な識別を与えた。これは、単独ではNSCLCの不十分な識別因子であり得るエピジェネティック特徴物(例えばH4K20Me3)が、他の分析を含めてパネルの一部として使用される場合に、それでもやはり識別因子として有用であり得ることを示す。
【0127】
驚いたことに、パネル試験結果は、いくつかの異なるパネル試験について、このコホート内の健康な対象からのNSCLCを有する対象の識別についての、100%の臨床的精度(100%の臨床的特異度を伴う100%の臨床的感度)、並びに、COPD患者からの癌患者の優れた識別を示す(表2)。これは、本発明の精度及び頑健性を実証する。H3K9Ac、H4K16Ac、及びH4K20Me3を含めたパネル試験について得られたドットプロット及びROC曲線を、
図3及び4に示す。このパネルの使用は、健康な対象からの癌患者の完璧な識別、及びCOPDを有する対象からのNSCLCを有する対象の識別について、90%特異度での82%という臨床的感度を与えた。他の肺状態からの肺癌の区別的診断は、臨床的に特に難しい問題であるので、これは、驚くべきことである。本発明者らは、これらの試験が、X線を伴う癌検出のための走査方法よりも安全であり、また、この小さい対象コホートにおいて実現する臨床的精度が、現在利用可能なNSCLCに対するいかなる非侵襲性試験の臨床的精度も超えることを結論付ける。
【0128】
(実施例3)
薬物又は他の治療法(例えば、HDACi、HMTi、DNMTi、若しくは他のエピジェネティック薬物)を用いる、予想される治療計画の前に、肺癌患者から喀痰試料を得、本発明の方法(例えば、ある特定のエピジェネティック特徴物を含有するヌクレオソームに対する2部位イムノアッセイ、又はあるパネルのこうした2部位イムノアッセイ)を使用して、腫瘍のエピジェネティック状態を評価する。喀痰ヌクレオソームのエピジェネティック状態を使用して、どの治療法が、患者にとって有効又は最適な治療である可能性が高いかを決定する。
【0129】
(実施例4)
(例えば、HDACi、HMTi、DNMTiを含めたエピジェネティック薬物を用いる)治療計画の前に、肺癌患者から喀痰試料を得、本発明の方法(例えば、ある特定のエピジェネティック特徴物を含有するヌクレオソームに対する2部位イムノアッセイ、又はあるパネルのこうした2部位イムノアッセイ)を使用して、腫瘍のエピジェネティック状態を評価する。治療後の患者から、さらなる喀痰試料を得、喀痰ヌクレオソームのエピジェネティック状態を、いずれかの変化について再び評価して、患者を薬物有効性について確認又はモニタリングする。
【0130】
(実施例5)
肺癌患者から喀痰試料を得、本発明の方法(例えば、ある特定のエピジェネティック特徴物を含有するヌクレオソームに対する2部位イムノアッセイ、又はあるパネルのこうした2部位イムノアッセイ)を使用して、腫瘍のエピジェネティック状態を評価する。喀痰ヌクレオソームのエピジェネティック状態を使用して、患者の予後を評価する。
【0131】
(参考文献)
【化1】
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の診断又は検出のための、喀痰試料中のバイオマーカーとしての細胞外遊離ヌクレオソームの使用。
(構成2)
前記バイオマーカーが、細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物である、構成1に定義した通りの使用。
(構成3)
前記細胞外遊離ヌクレオソームが、モノヌクレオソーム、オリゴヌクレオソーム、又は他の染色体断片である、構成1又は構成2に定義した通りの使用。
(構成4)
動物又はヒト対象における癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を診断又は検出するための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該対象の喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は測定するステップと;
(iii)前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの測定されたレベルを、該対象における前記疾患の存在を示すものとして使用するステップと
を含む前記方法。
(構成5)
前記エピジェネティック特徴物が、翻訳後ヒストン修飾、ヒストンバリアント若しくはアイソフォーム、DNA修飾、又は前記ヌクレオソームに付加されるタンパク質(5-メチルシトシンから選択されるDNA修飾、γ-H2AX及びH2AZから選択される1以上のヒストンバリアント、又はH3K9Me3、H3K9Ac、H3K27Me3、H4K16Ac、H4K20Me3、ユビキチル-H2A、及びH4PanAc(汎アセチル化H4)から選択される1以上のヒストン修飾など)から選択される、構成1から4のいずれか1項に定義した通りの使用又は方法。
(構成6)
癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を有する、又は有する疑いがある、又は素因を有する、動物又はヒト対象における治療法の有効性をモニタリングするための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該対象の喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を測定するステップと;
(iii)前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの測定されたレベルを、前記対象から採取された以前の試料と比較して、前記治療法の有効性を示すものとして使用するステップと
を含む前記方法。
(構成7)
癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を有する動物又はヒト対象の予後を決定するための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該対象の喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を測定するステップと;
(iii)前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームのレベルを、癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の予後を示すものとして使用するステップと
を含む前記方法。
(構成8)
癌、肺癌、特に非小細胞肺癌(NSCLC)などの診断又は検出のためのものである、構成1から7のいずれか1項に定義した通りの使用又は方法。
(構成9)
動物又はヒト対象における喀痰の細胞外遊離ヌクレオソームの細胞起源を決定するための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該対象の喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は測定するステップと;
(iii)前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの測定されたレベルを、該細胞外遊離ヌクレオソームが、健康な肺細胞、肺癌細胞、若しくは他の損傷を有する細胞、又はこうした細胞のいずれかの混合物に由来するかどうかの指標として使用するステップと
を含む前記方法。
(構成10)
前記検出又は測定が、イムノアッセイ、免疫化学的方法、質量分析法、クロマトグラフ法、クロマチン免疫沈降法、又はバイオセンサー法を含む、構成1から9のいずれか1項に定義した通りの使用又は方法。
(構成11)
細胞外遊離ヌクレオソームそれ自体及び/又は細胞外遊離ヌクレオソームエピジェネティック特徴物の2以上の測定が、ヌクレオソーム特徴物のパネルとして実施される、構成1から10のいずれか1項に定義した通りの使用又は方法。
(構成12)
癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の診断又は検出のための、喀痰の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出及び/又は定量化することが可能な1以上の結合剤を含むキットの使用。
(構成13)
動物又はヒト対象から得られた喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は定量化するための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該喀痰試料を、細胞外遊離ヌクレオソーム又はその構成成分と結合する第1の結合剤と接触させるステップと;
(iii)該喀痰試料又は細胞外遊離ヌクレオソームを、前記細胞外遊離ヌクレオソーム内のエピジェネティック特徴物と結合する第2の結合剤と接触させるステップと;
(iv)該喀痰試料中の前記細胞外遊離ヌクレオソーム内のエピジェネティック特徴物に対する前記第2の結合剤の結合を検出又は定量化するステップと;
(v)該喀痰試料中の前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの存在の尺度として、こうした結合の存在、程度、又は量を使用するステップと
を含む前記方法。
(構成14)
動物又はヒト対象から得られた喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は定量化するための方法であって:
(i)該対象から喀痰試料を得るステップと;
(ii)該喀痰試料を、前記細胞外遊離ヌクレオソーム内のエピジェネティック特徴物と結合する第1の結合剤と接触させるステップと;
(iii)該喀痰試料又は細胞外遊離ヌクレオソームを、細胞外遊離ヌクレオソーム又はその構成成分と結合する第2の結合剤と接触させるステップと;
(iv)該喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソーム又はその構成成分に対する前記第2の結合剤の結合を検出又は定量化するステップと;
(v)該喀痰試料中の前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの存在の尺度として、こうした結合の存在、程度、又は量を使用するステップと
を含む前記方法。
(構成15)
前記エピジェネティック特徴物が、翻訳後ヒストン修飾、ヒストンバリアント若しくはアイソフォーム、DNA修飾、又は前記ヌクレオソームに付加されるタンパク質(5-メチルシトシンから選択されるDNA修飾、γ-H2AX及びH2AZから選択される1以上のヒストンバリアント、又はH3K9Me3、H3K9Ac、H3K27Me3、H4K16Ac、H4K20Me3、ユビキチル-H2A、及びH4PanAc(汎アセチル化H4)から選択される1以上のヒストン修飾など)から選択される、構成13又は構成14に定義した通りの使用。
(構成16)
動物又はヒト対象における癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を治療するための方法であって:
(i)対象の喀痰試料中の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物を検出又は測定するステップと;
(ii)前記エピジェネティック特徴物を含有する細胞外遊離ヌクレオソームの測定されたレベルを、対象における前記疾患の存在を示すものとして使用するステップと;
(iii)ステップ(ii)で癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を有する患者と診断された対象に、治療薬を投与するステップと
を含む前記方法。
(構成17)
それを必要とする個体において、癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を治療する方法であって、喀痰試料において、対照被験者由来の細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティック特徴物のレベルと比較した場合に異なるレベルの細胞外遊離ヌクレオソームの前記エピジェネティック特徴物を有すると特定された患者に、治療薬を投与するステップを含む前記方法。
(構成18)
癌、肺癌、特に非小細胞肺癌(NSCLC)などの治療のためのものである、構成16又は構成17に定義した通りの方法。
(構成19)
癌、腺腫、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の診断又は検出のための、喀痰試料中のバイオマーカーとしての、翻訳後ヒストン修飾、ヒストンバリアント若しくはアイソフォーム、又は修飾されたヌクレオチドの使用。