(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】旋盤のツールホルダのブロッキング装置
(51)【国際特許分類】
B23B 29/04 20060101AFI20220627BHJP
B23B 31/107 20060101ALI20220627BHJP
B23Q 3/12 20060101ALI20220627BHJP
B23B 21/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
B23B29/04 A
B23B31/107 A
B23Q3/12 C
B23B21/00 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018019925
(22)【出願日】2018-02-07
【審査請求日】2020-09-30
(31)【優先権主張番号】102017000013072
(32)【優先日】2017-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518045476
【氏名又は名称】アルグラ ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】ALGRA S.P.A.
【住所又は居所原語表記】VIA MAGNAVACCHE 4,FRAZIONE LOCALITA BREMBILLA,24012 VAL BREMBILLA(BG),ITLIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ ヴェッツォーリ
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-260706(JP,A)
【文献】実開昭60-036133(JP,U)
【文献】特開平02-009506(JP,A)
【文献】特表2003-508233(JP,A)
【文献】米国特許第04919574(US,A)
【文献】特開昭60-034238(JP,A)
【文献】特開昭61-188002(JP,A)
【文献】特開平07-096408(JP,A)
【文献】特開2000-190110(JP,A)
【文献】特開2001-018134(JP,A)
【文献】特表2008-501542(JP,A)
【文献】特表2008-540152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-25/06
B23B 27/00-29/34
B23B 31/00-33/00
B23Q 3/00-3/154
B23Q 3/16-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋盤にツールホルダをブロッキングするための装置(10)、特にトランスファーマシン、あらゆる種類のフライス加工センター、及び、一般にチップの取外しを備え機械加工を行う工作機械と同様に、CNC(コンピュータ・ニューメリカル・コントロール)、シングルスピンドル又はマルチスピンドル旋盤におけるツールホルダの迅速かつ正確なブロッキングのための装置であって、前記旋盤上に存在する支持体(14)に連結されるモータ駆動又は非モータ駆動のツールホルダ(12)と組み合わされる装置において、めす型切頭円錐形凹部(22)を備えた係留爪(16)を包含し、前記係留爪が、機械的又は液圧的手段によって前記ツールホルダ(12)の長手方向軸線に対して垂直に動かされて、前記ツールホルダ(12)に形成された傾斜したおす型切頭円錐形付属物(38)に前記めす型切頭円錐形凹部(22)を係合させるように駆動され
、
前記係留爪(16)が、略半円形の平面(18)と、前記平面(18)に対して直交する垂直壁(20)とを含み、前記垂直壁に前記凹部(22)が形成されることを特徴とする、ツールホルダをブロッキングするための装置。
【請求項2】
前記傾斜したおす型切頭円錐形付属物(38)が、前記ツールホルダ(12)のアタッチメント(12’)に形成された切頭円錐形凹部(40)に形成され、前記切頭円錐形凹部(40)の基部から突出することを特徴とする、請求項1に記載のツールホルダをブロッキングするための装置。
【請求項3】
前記係留爪(16)を垂直に動かすのに適した前記機械的手段が、内側てい形ねじを備えた不規則なプリズム形の要素(28)又は親ねじを含み、前記要素が、より大きな直径の部分(36)に沿って外側てい形ねじを有するナットねじ(34)と協働することを特徴とする、請求項
2に記載のツールホルダをブロッキングするための装置。
【請求項4】
前記係留爪(16)は、ねじ(26)が挿入される横断貫通孔(24)を有し、前記ねじが、前記不規則なプリズム形の要素(28)に前記
係留爪
(16)を連結することを特徴とする、請求項
3に記載のツールホルダをブロッキングするための装置。
【請求項5】
前記係留爪(16)が、凹んだ刻印(32)を形成された平坦部(30)を有し、前記刻印が、前記要素(28)の形状に相補的な輪郭及び延長部を有することを特徴とする、請求項
4に記載のツールホルダをブロッキングするための装置。
【請求項6】
前記支持体(14)が、前記係留爪(16)及びそれに隣接して前記ナットねじ(34)を収容し、その上面(14’)に沿って適合する開口部(42)を設けられ、前記係留爪(16)及び前記ナットねじ(34)が前記支持体(14)内で所定の高さに配置されて、前記係留爪(16)の前記めす型切頭円錐形凹部(22)と前記アタッチメント(12’)の前記切頭円錐形凹部(40)の前記おす型切頭円錐形付属物(38)とが、前記
係留爪
(16)の垂直移動に伴って互いに係合することを特徴とする、請求項
3に記載のツールホルダをブロッキングするための装置。
【請求項7】
前記ナットねじ(34)の上端が前記支持体(14)の上面(14’)から突出し、前記上面がカバー(48)で覆われることを特徴とする、請求項
3に記載のツールホルダをブロッキングするための装置。
【請求項8】
前記係留爪(16)を垂直に動かすのに適した前記液圧的手段が、液圧アクチュエータ(64)を組み込んだスリーブ(62)と、アクチュエータノブ(76)を備えた流れ切換液圧弁(66)とを含み、前記スリーブ及び前記流れ切換液圧弁が、旋盤上に存在する前記支持体(14)内に、前記支持体の上面(14’)に沿って形成された2つの適合する開口部(58,60)で配置されることを特徴とする、請求項
3に記載のツールホルダをブロッキングするための装置。
【請求項9】
前記液圧アクチュエータ(64)が溝(72)を設けられ、前記溝内には、前記要素(28)の形状に相補的な輪郭及び延長部を有するプレート(52)を含むフォーク(56)の対向するアーム(54)が挿入されることを特徴とする、請求項
8に記載のツールホルダをブロッキングするための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋盤のツールホルダのブロッキング装置に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、トランスファーマシン、あらゆる種類のフライス加工センター、及び、一般にチップの取外しを備え機械加工を行う工作機械と同様に、CNC(コンピュータ・ニューメリカル・コントロール)、シングルスピンドル又はマルチスピンドル旋盤におけるツールホルダの迅速かつ正確なブロッキングのための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
知られているように、数値制御旋盤を用いて行われる機械加工の分野では、機械加工の過程で様々なモジュールを頻繁に交換する必要がある。このような装備品の交換作業を実行するには、休止時間が生じ、その間、機械の作動を必然的に一定期間停止しなければならない。これに加え、各工具交換のための設定時間を考慮する必要がある。複数のツールホルダを使用できる機械の場合、ブロッキングと心出し位置決めのために複数のねじを介在する必要がある。このような繰り返しの手動操作は、全体的に生産コストの大幅な増加をもたらす。
【0004】
国際公開第01/15841号公報は、旋盤のツールホルダをブロックするのに適した装置を開示しており、この装置には、ブロッキングを行うために、前記ツールホルダの長手方向軸線に対して垂直に移動する係留爪を備えた切頭円錐形要素がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述した欠点を克服することである。
【0006】
より詳細には、本発明の目的は、ツールホルダの交換を極めて迅速かつ容易にする、旋盤、特にマルチスピンドル又はシングルスピンドルCNC旋盤にツールホルダをブロッキングするための装置を提供することである。
【0007】
本発明の更なる目的は、ツールホルダの自動的な目標のセンタリングを行うことができ、その交換後の方向決めに関する面倒な調整の必要性を回避することを可能にする、上述のような装置を提供することである。
【0008】
本発明の更なる目的は、長期にわたり高レベルの抵抗及び信頼性を保証するのに適するとともに、容易かつ経済的に製造することができるようにした、旋盤へのツールホルダをブロッキングするための装置をユーザに利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これら及び他の目的は、特許請求の範囲による本発明の旋盤へのツールホルダをブロッキングするための装置によって達成される。
【0010】
本発明のツールホルダを旋盤にブロッキングするための装置の構成及び機能的特徴は、好適かつ非限定的な実施例を示す添付の図面を参照する以下の詳細な説明からより明確に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】旋盤の既存の支持体及びツールホルダと組み合わせた本発明による装置の分解図を概略的に示す。
【
図2】
図1の実例に対し異なる角度によるツールホルダの斜視図を概略的に示す。
【
図3】本発明による装置の前記ツールホルダと協働する構成部品の異なる角度からの拡大斜視図を示す。
【
図4】
図3の構成部品の凹陥部の正面図を概略的に示す。
【
図5】
図1の旋盤に配置された本発明のブロッキング装置を強調するために、旋盤の支持体の垂直断面を概略的に示す。
【
図6】
図2のツールホルダの縦断面を概略的に示す。
【
図7】旋盤の既存の支持体及びツールホルダと組み合わせた、別の実施例による本発明の装置の分解図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に
図1-3を参照すると、
図1に総括的に参照番号10で示される、マルチスピンドル又はシングルスピンドルCNC旋盤に特に適した本発明のツールホルダのブロッキング装置は、旋盤(図示せず)上に存在する支持体14に連結されることを意図した、モータ駆動又は非モータ駆動のツールホルダ12と組み合わされる。前記ブロッキング装置は、実質的に円筒形の本体によって画成された係留爪16を含み、その表面は直径方向半部分を欠き、実質的に半円形の平面18を形成する。参照番号16’で示す爪16の残りの直径方向半部分は、前記平面18に対して直交する垂直壁20を含み、その上にめす型切頭円錐形凹部22が形成され、凹部22は、垂直壁20の頂部から該壁の高さのほぼ半分に等しい高さにわたって延びている。係留爪16は、ねじ26が挿入される横断貫通孔24を有し、このねじは、内側てい形ねじを備えた不規則なプリズム形の要素28又は親ねじに前記爪を連結する。係留爪16の一部には、
図4に詳細に示すように、凹んだ刻印32又は凹陥部を収容する平坦部30が形成され、前記刻印は、前記ねじ26によって爪16に対して角運動できないよう堅固に連結されるように、刻印に正確に位置する要素28の形状に相補的な輪郭及び延長部を画定する。
【0013】
本発明のブロッキング装置は、より大きな直径の部分36に沿って外側てい形ねじが設けられたナットねじ34をさらに含んでおり、要素28の内側てい形ねじ又は親ねじは、ナットねじ34の部分36に形成された外側てい形ねじに面し、前記装置の動作に関してさらに特定されるようにこの外側てい形ねじに係合する。本発明の装置の一部を形成するツールホルダ12は、
図1及び2に参照番号12’で示され旋盤に固定されるアタッチメントを構成するその後方部分に、前記部分12’の垂直方向に異なる直径の二重穿孔によって有益的に作られる切頭円錐形凹部40を一様に設けられる。凹部40の基部には、特に
図2に見られるように、切頭円錐形状のカラー状付属物38が形成され、係留爪16の切頭円錐形凹部22に係合しそれにより囲まれるようになっている。
【0014】
旋盤上に存在する支持体14において、ツールホルダ12は、横方向開口部15を介して既知の方法で挿入され、前記支持体14は、係留爪16及びそれに隣接してナットねじ34を収容し、そのために、
図1に14’で示される上面に沿って適合する開口部42を設けられており、支持体14に形成された空洞内には、爪16及びナットねじ34が垂直に挿入され、既知の手段で所定の高さに固定され、その結果、係留爪16のめす型切頭円錐形凹部22とアタッチメント12’の切頭円錐形凹部40のおす型切頭円錐形付属物38とは、重なり合って互いに係合し得る。これは、爪16を押し下げた瞬間に起こる。係留爪16の下方又は上方への動きは、支持体14の上面14’から突き出た上端から、一般的なレンチ又はトルクレンチでナットねじ34を回転させることによって行われる。前記ねじ34の一方向の回転は、係合する要素28又は親ねじを介して係留爪16を下方又は上方に動かすようにねじ部分36を駆動する。
図5に示されるように、係留爪16が降下すると、ツールホルダのおす型切頭円錐形付属物38自体が係留爪16のめす型切頭円錐形凹部22に隣接して位置して、この爪によってねじ34の同方向の回転を制限しブロッキングにつながるため、前記爪はツールホルダ12をロックすることとなる。前記回転は好ましくは1~2回転に制限され、爪16が達成しなければならない垂直偏位は、数ミリメートルに等しいものであり、ツールホルダ12のブロッキング及びブロッキング解除とその方向決めとの両方は、非常に速くなる。ナットねじ34は、好ましくは、
図1に示される対向する上方ブッシュ44及び下方ブッシュ46と組み合わされている。好ましくは、カバー48が、適合する開口部42で支持体14の上面を閉鎖するように設けられて、本発明の装置の適正な機能を阻害し得る切屑や鉱油の痕跡などの異物が前記支持体に侵入することを防止する。ナットねじ34の端部がその移動を可能にするように突出する前記カバーは、ねじ50又は同等の保持手段によって支持体14に固定される。
【0015】
図7及び8は、本発明による旋盤へのツールホルダのブロッキング装置の別の実施例を示す。この前提において、共通の構成部品を示すために前述の解決策と同一番号が使用され、前記ブロッキング装置は機械的ではなく液圧的に作動される。係留爪16は不変のままであるが、平坦部30に沿って設けられた凹陥部32は、水平方向に対をなす2つのアーム54が取り付けられたプレート52を収容し、プレート52及びアーム54は全体としてフォーク56を画成する。この場合、ねじ26は爪16をフォーク56に連結する。旋盤上に存在する支持体14の上面14’には、この別の実施例によれば、それぞれ58及び60として示される2つの適合する開口部が設けられ、この開口部には、係留爪16を垂直方向に動かす手段が配置される。そのような手段は、自体公知の液圧アクチュエータ64を組み込んだスリーブ62と、適切に動力供給される流れ切換液圧弁66とを含む。2つ以上のねじ68がスリーブ62を支持体14の上面14’に固定し、アクチュエータノブ76を設けた液圧弁66が、前記支持体に同様に固定される。スリーブ62は定位置に保持され、液圧アクチュエータ64をその直進運動中に案内し、弁66を通って導かれる制御流体の通路を調整して、流体の切換えを可能にしアクチュエータを両作動方向に動かす。ツールホルダ12を交換する操作者が弁66のノブ76を90°回転させると、以下に詳述するように、爪16を急速に上下動させる結果となる。
図8に示される好適な実施例の液圧アクチュエータ64は、前記アクチュエータを作動させる流体の漏れを防止する多数のOリング70を収容するために2つの座が好適に設けられた円筒状本体から構成される。アクチュエータ64の前記円筒状本体には、実質的に中央の位置に、フォーク56のアーム54が当接する座を画定する溝72が形成される。実際には、フォーク56は、前記アームで液圧アクチュエータ64にしっかりと係合する一方、ツールホルダ12は、公知の方法で前述した解決策と同様に、支持体14の開口部15を介して旋盤の支持体14内に係合する。アクチュエータ64の下部に配置されたブッシング74は、アクチュエータが終端ストロークに達すると前記アクチュエータのダンパとして作用する。係留爪16のめす型切頭円錐形凹部22及びツールホルダ12の部分12’に形成された相補的なおす型切頭円錐形付属物38は、前述した解決策に関して詳述したと同様に、この実施例でも存在する。
【0016】
作動過程において、前述のノブ76を時計回り又は反時計回りに90°回転させることで、液圧アクチュエータ64を上下動させ、その結果、前記アクチュエータの溝72に係合したフォーク56のアーム54によって、係留爪16が上昇又は下降するように交互に駆動される。第1の場合では、前記爪は切頭円錐形凹部22を駆動して、ツールホルダ12の部分12’に形成された凹部40の傾斜したおす型切頭円錐形付属物38と結合し、前記ツールホルダのブロッキングと方向決めとの両方を同時に実現する。第2の場合では、液圧アクチュエータ64が係留爪16をフォーク56のアーム54によって上昇させると、切頭円錐形凹部22がツールホルダ12の部分12’に形成された凹部40の傾斜したおす型切頭円錐形付属物38から離れて、ツールホルダ12を解放し、その後、ツールホルダ12はその迅速な交換のために支持体14から引き出すことができる。
【0017】
上記から分かるように、本発明が達成する利点は明らかである。
【0018】
上述した第1の実施例による係留爪16の機械的な動きの場合と、上述した別の実施例による前記爪の液圧的な動きの場合との両方において、あらゆる種類の旋盤、特にCNC旋盤のツールホルダ12の交換及び自動的な目標のセンタリングを非常に短時間で達成できるとともに、交換後の方向決めに関する面倒な調整の必要性を回避することができる。実際、切頭円錐形部分に沿った結合を設けることにより、モータ駆動であろうと非モータ駆動であろうとも、交換用ツールホルダ12の交換、その後の方向決め、ブロッキング、並びに、ツールホルダの「X」、「Y」、「Z」及び回転軸の移動の4つの角度における正確な位置決めが、迅速かつ極めて容易に達成され、処理の休止時間及び結果として生産コストの大幅な削減の利益をもたらす。
【0019】
本発明について非限定的な例のみによって与えられる可能な実施例のうちの1つを参照して上述したが、幾多の修正及び変形が上記の説明に照らして当業者には明らかであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての修正及び変形を包含するものである。