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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】傾斜磁場コイル
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220627BHJP
   G01R 33/385 20060101ALI20220627BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
A61B5/055 340
A61B5/055 360
G01R33/385
G01N24/00 600A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018026899
(22)【出願日】2018-02-19
(65)【公開番号】P2019141226
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀和
(72)【発明者】
【氏名】河合 択真
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 良知
(72)【発明者】
【氏名】横井 基尚
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-089835(JP,A)
【文献】特開2011-010760(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0139219(US,A1)
【文献】特開平11-076198(JP,A)
【文献】特開2011-146237(JP,A)
【文献】特開2011-124129(JP,A)
【文献】特開平08-126628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/385
H01B 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を撮像する撮像空間に複数の軸方向に沿って傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイルであって、
前記複数の軸方向のそれぞれに沿って前記傾斜磁場を発生させる複数のコイルパターンを有し、
前記複数のコイルパターンのうちの少なくとも1つのコイルパターンは、複数の絶縁性の層によって厚み方向に区切られるように形成された導体を含み、
前記少なくとも1つのコイルパターンに含まれる前記導体は、同じ軸方向の傾斜磁場を発生させる、
傾斜磁場コイル。
【請求項2】
複数の絶縁性の層は、それぞれ絶縁体で形成されており、
前記少なくとも1つのコイルパターンは、少なくとも一部において、導体の層と絶縁体の層とが厚み方向に交互に積層されている、
請求項1に記載の傾斜磁場コイル。
【請求項3】
少なくとも1つのコイルパターンは、少なくとも一部において、複数の導体の層が厚み方向に間隙を空けて配置されており、当該間隙によって前記絶縁性の層が形成されている、
請求項1に記載の傾斜磁場コイル。
【請求項4】
前記少なくとも1つのコイルパターンは、前記複数の導体の層の端部を連結することで、前記間隙を空洞とするように形成されている、
請求項3に記載の傾斜磁場コイル。
【請求項5】
被検体を撮像する撮像空間に複数の軸方向に沿って傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイルであって、
前記軸方向ごとにコイルパターンを有し、
前記コイルパターンは、内部に空洞が形成されており、前記空洞の表面に凹凸面が設けられている、
傾斜磁場コイル。
【請求項6】
前記空洞は、前記コイルパターンの内部を通る管状に形成されており、
前記コイルパターンは、前記空洞に冷媒を流通させる、
請求項4又は5に記載の傾斜磁場コイル。
【請求項7】
被検体を撮像する撮像空間に複数の軸方向に沿って傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイルであって、
前記複数の軸方向のそれぞれに沿って前記傾斜磁場を発生させる複数のコイルパターンを有し、
前記複数のコイルパターンのうちの少なくとも1つのコイルパターンは、複数の絶縁性の層のそれぞれが間に配置された複数の導体の層を含み、
前記少なくとも1つのコイルパターンに含まれる前記複数の導体の層は、同じ軸方向の傾斜磁場を発生させる、
傾斜磁場コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、傾斜磁場コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置に備えられる傾斜磁場コイルには、撮像が行われる際に、数百~1kHz程度の交流電流が流れることがある。一般的に、このような高周波域の交流電流が流れる場合には、傾斜磁場コイルにおいて、表皮効果によって、電流が流れる領域がコイルパターンの表面付近に偏るようになり、その結果、傾斜磁場コイルの抵抗が増加することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-353136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、傾斜磁場コイルにおける表皮効果による抵抗の増加を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る傾斜磁場コイルは、被検体を撮像する撮像空間に複数の軸方向に沿って傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイルであって、前記軸方向ごとにコイルパターンを有する。前記コイルパターンは、少なくとも一部が、導電性の第1の層と絶縁性の第2の層とが厚み方向に繰り返し現れるように形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る傾斜磁場コイルの構成を示す斜視図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るXコイルを示す斜視図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るYコイルを示す斜視図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るZコイルを示す斜視図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る傾斜磁場コイルにおける積層の様子を示す図である。
図7図7は、本実施形態の比較例に係る傾斜磁場コイルのコイルパターンを示す図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る傾斜磁場コイルのコイルパターンの一例を示す図である。
図9図9は、第2の実施形態に係る傾斜磁場コイルのコイルパターンの一例を示す図である。
図10図10は、第3の実施形態に係る傾斜磁場コイルのコイルパターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、傾斜磁場コイルの実施形態について詳細に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
【0009】
例えば、図1に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、全身(Whole Body:WB)コイル4、送信回路5、局所コイル6、受信回路7、RFシールド8、架台9、寝台10、インタフェース11、ディスプレイ12、記憶回路13、及び、処理回路14~17を備える。
【0010】
静磁場磁石1は、被検体Sを撮像する撮像空間に静磁場を発生させる。具体的には、静磁場磁石1は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、円筒内に配置された撮像空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成された冷却容器と、当該冷却容器内に充填された冷却材(例えば、液体ヘリウム等)に浸漬された超伝導磁石等の磁石とを有する。ここで、例えば、静磁場磁石1は、永久磁石を用いて静磁場を発生させるものであってもよい。
【0011】
傾斜磁場コイル2は、静磁場磁石1の内側に配置されており、被検体Sを撮像する撮像空間に複数の軸方向に沿って傾斜磁場を発生させる。具体的には、傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、円筒内に配置された撮像空間に、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を発生させる。ここで、X軸、Y軸、及びZ軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、Z軸は、傾斜磁場コイル2の円筒の軸に一致し、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束に沿って設定される。また、X軸は、Z軸に直交する水平方向に沿って設定され、Y軸は、Z軸に直交する鉛直方向に沿って設定される。なお、傾斜磁場コイル2の構成については、後に詳細に説明する。
【0012】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給することで、傾斜磁場コイル2の内側の空間に、X軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を発生させる。なお、X軸方向に沿った傾斜磁場を発生させるための電流の経路はXチャンネルとも呼ばれ、Y軸方向に沿った傾斜磁場を発生させるための電流の経路はYチャンネルとも呼ばれ、Z軸方向に沿った傾斜磁場を発生させるための電流の経路はZチャンネルとも呼ばれる。
【0013】
このように、傾斜磁場電源3がX軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を発生させることで、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させることができる。リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
【0014】
そして、各傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳され、被検体Sから発生する磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号に空間的な位置情報を付与する。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、MR信号にリードアウト方向に沿った位置情報を付与する。また、位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、MR信号に位相エンコード方向の位置情報を付与する。また、スライス傾斜磁場は、MR信号にスライス方向に沿った位置情報を付与する。例えば、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させるために用いられる。
【0015】
WBコイル4は、傾斜磁場コイル2の内側に配置されており、被検体Sを撮像する撮像空間にRF磁場を印加する送信コイルの機能と、当該RF磁場の影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信する受信コイルの機能とを有するRFコイルである。具体的には、WBコイル4は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、送信回路5から供給されるRFパルス信号に基づいて、円筒内に配置された撮像空間にRF磁場を印加する。また、WBコイル4は、RF磁場の影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。
【0016】
送信回路5は、ラーモア周波数に対応するRF波信号をWBコイル4に出力する。具体的には、送信回路5は、発振器、位相選択器、周波数変換器、振幅変調器、及び、RFアンプを備える。発振器は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数(ラーモア周波数)のRF波(高周波)信号を発生する。位相選択器は、当該RF波信号の位相を選択する。周波数変換器は、位相選択器から出力されたRF波信号の周波数を変換する。振幅変調器は、周波数変換器から出力されたRF波信号の振幅を例えばsinc関数の波形で変調することでRFパルス信号を生成する。RFアンプは、振幅変調器から出力されるRFパルス信号を電力増幅してWBコイル4に出力する。
【0017】
局所コイル6は、被検体Sから発生するMR信号を受信する受信コイルの機能を有するRFコイルである。具体的には、局所コイル6は、WBコイル4の内側に配置された被検体Sに装着され、WBコイル4によって印加されるRF磁場の影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。例えば、局所コイル6は、撮像対象の部位ごとに用意された受信コイルであり、頭部用の受信コイルや、頚部用の受信コイル、肩用の受信コイル、胸部用の受信コイル、腹部用の受信コイル、下肢用の受信コイル、脊椎用の受信コイル等である。なお、局所コイル6は、被検体SにRF磁場を印加する送信コイルの機能をさらに有していてもよい。その場合には、局所コイル6は、送信回路5に接続され、送信回路5から供給されるRFパルス信号に基づいて、被検体SにRF磁場を印加する。
【0018】
受信回路7は、WBコイル4又は局所コイル6から出力されるMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路15に出力する。例えば、受信回路7は、選択器、前段増幅器、位相検波器、及び、A/D(Analog/Digital)変換器を備える。選択器は、WBコイル4又は局所コイル6から出力されるMR信号を選択的に入力する。前段増幅器は、選択器から出力されるMR信号を電力増幅する。位相検波器は、前段増幅器から出力されるMR信号の位相を検波する。A/D変換器は、位相検波器から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換することでMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路15に出力する。
【0019】
RFシールド8は、傾斜磁場コイル2とWBコイル4との間に配置されており、WBコイル4によって発生するRF磁場から傾斜磁場コイル2を遮蔽する。具体的には、RFシールド8は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、傾斜磁場コイル2の内周側の空間に、WBコイル4の外周面を覆うように配置されている。
【0020】
架台9は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、WBコイル4及びRFシールド8を収容している。具体的には、架台9は、円筒状に形成された中空のボアBを有しており、ボアBを囲むように静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、WBコイル4及びRFシールド8を配置した状態で、それぞれを収容している。ここで、架台9が有するボアBの内側の空間が、被検体Sの撮像が行われる際に被検体Sが配置される撮像空間となる。
【0021】
なお、ここでは、MRI装置100が、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及びWBコイル4がそれぞれ略円筒状に形成された、いわゆるトンネル型の構成を有する場合の例を説明するが、実施形態はこれに限られない。例えば、MRI装置100は、被検体Sが配置される撮像空間を挟んで対向するように一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイル及び一対のRFコイルを配置した、いわゆるオープン型の構成を有していてもよい。
【0022】
寝台10は、被検体Sが載置される天板10aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、架台9におけるボアBの内側へ天板10aを挿入する。例えば、寝台10は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置されている。
【0023】
インタフェース11は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、インタフェース11は、処理回路17に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路17に出力する。例えば、インタフェース11は、撮像条件や関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、インタフェース11は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路もインタフェース11の例に含まれる。
【0024】
ディスプレイ12は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ12は、処理回路17に接続されており、処理回路17から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ12は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0025】
記憶回路13は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路13は、MR信号データや画像データを記憶する。例えば、記憶回路13は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0026】
処理回路14は、寝台制御機能14aを有する。寝台制御機能14aは、寝台10に接続され、制御用の電気信号を寝台10へ出力することで、寝台10の動作を制御する。例えば、寝台制御機能14aは、インタフェース11を介して、天板10aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板10aを移動するように、寝台10が有する天板10aの駆動機構を動作させる。
【0027】
処理回路15は、データ収集機能15aを有する。データ収集機能15aは、傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7を駆動することで、被検体SのMR信号データを収集する。
【0028】
具体的には、データ収集機能15aは、処理回路17から出力されるシーケンス実行データに基づいて各種のパルスシーケンスを実行することで、MR信号データを収集する。ここで、シーケンス実行データは、MR信号データを収集するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。具体的には、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給する電流の強さ、送信回路5がWBコイル4に供給するRFパルス信号の強さや供給タイミング、受信回路7がMR信号を検出する検出タイミング等を定義した情報である。
【0029】
そして、データ収集機能15aは、各種パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路7からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路13に記憶させる。なお、データ収集機能15aによって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路13に記憶される。
【0030】
処理回路16は、画像生成機能16aを有する。画像生成機能16aは、記憶回路13に記憶されたMR信号データに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能16aは、データ収集機能15aによって記憶回路13に記憶されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理、即ち、フーリエ変換等の再構成処理を施すことで画像を生成する。また、画像生成機能16aは、生成した画像の画像データを記憶回路13に記憶させる。
【0031】
処理回路17は、主制御機能17aを有する。主制御機能17aは、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、主制御機能17aは、インタフェース11を介して操作者から撮像条件の入力を受け付ける。そして、主制御機能17aは、受け付けた撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成し、当該シーケンス実行データを処理回路15に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。また、例えば、主制御機能17aは、操作者からの要求に応じて、記憶回路13から画像データを読み出してディスプレイ12に出力する。
【0032】
例えば、上述した処理回路14~17は、それぞれプロセッサによって実現される。この場合に、例えば、処理回路14~17それぞれが有する処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路13に記憶される。各処理回路は、記憶回路13から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各処理回路は、図1の各処理回路内に示された各機能を有することとなる。なお、ここでは、複数のプロセッサによって各処理機能が実現されるものとして説明したが、単一のプロセッサで処理回路を構成し、当該プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、各処理回路が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、ここでは、単一の記憶回路13が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路が個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0033】
図2は、第1の実施形態に係る傾斜磁場コイル2の構成を示す斜視図である。
【0034】
本実施形態では、傾斜磁場コイル2が、ASGC(Actively Shielded Gradient Coil)である場合の例を説明する。例えば、図2に示すように、傾斜磁場コイル2は、傾斜磁場を発生するメインコイル2aと、漏洩磁場を打ち消すシールド用の磁場を発生するシールドコイル2bと、シムトレイが配置されるシム層2cと、冷却管が配置される第1の冷却層2d及び第2の冷却層2eとを有する。
【0035】
ここで、本実施形態に係る傾斜磁場コイル2では、当該傾斜磁場コイル2が有する略円筒形状の中心軸から径方向に離れる向きに、メインコイル2a、第1の冷却層2d、シム層2c、第2の冷却層2e、シールドコイル2bが順に積層されている。
【0036】
シム層2cには、シムトレイが配置される複数本分のシムトレイ挿入ガイド2fが形成されている。例えば、シムトレイ挿入ガイド2fは、傾斜磁場コイル2の長軸方向の全長に亘って貫通する穴であり、周方向に沿って等間隔に設けられている。ここで、各シムトレイ挿入ガイド2fに挿入されるシムトレイ(図2では図示を省略)は、例えば、当該シムトレイの長手方向に沿って並べて配置された複数のポケットを有する。そして、各ポケットには、静磁場の不均一性を補正するために、適宜に調整された枚数の鉄シムが収納されている。
【0037】
第1の冷却層2d及び第2の冷却層2eには、それぞれ、傾斜磁場コイル2を冷却するための冷却管(図2では図示を省略)が配設されている。例えば、冷却管は、傾斜磁場コイル2の略円筒形状に沿って螺旋状に配設されている。そして、冷却管は、熱交換器や循環ポンプを有する冷却装置から供給される冷媒を管内に流通させることで、傾斜磁場コイル2内で冷媒を循環させる。
【0038】
メインコイル2aは、X軸、Y軸、及びZ軸の軸方向ごとにコイルパターンを有する。例えば、メインコイル2aは、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に対応する3つのコイルパターンが積層されて形成されている。なお、以下では、X軸方向に対応するコイルパターンをXコイルと呼び、Y軸方向に対応するコイルパターンをYコイルと呼び、Z軸方向に対応するコイルパターンをZコイルと呼ぶ。
【0039】
図3は、第1の実施形態に係るXコイルを示す斜視図である。また、図4は、第1の実施形態に係るYコイルを示す斜視図である。また、図5は、第1の実施形態に係るZコイルを示す斜視図である。
【0040】
例えば、図3に示すように、Xコイルは、サドル形状に形成されており、X軸、即ち、傾斜磁場コイル2の略円筒の水平軸に沿って、傾斜磁場を発生する。また、例えば、図4に示すように、Yコイルは、Xコイルと同様に、サドル形状に形成されているが、Y軸、即ち、傾斜磁場コイル2の略円筒の垂直軸に沿って、傾斜磁場を発生する。また、例えば、図5に示すように、Zコイルは、螺旋状に形成されており、Z軸、即ち、傾斜磁場コイル2の略円筒の長軸に沿って、傾斜磁場を発生させる。これらXコイル、Yコイル、及びZコイルは、傾斜磁場電源3から個別に電流の供給を受け、X軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。
【0041】
なお、ここでは詳細な説明を省略するが、シールドコイル2bもメインコイル2aと同様に、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸の各軸に対応する3つのコイル、即ち、Xコイル、Yコイル、及びZコイルが積層されて形成されている。
【0042】
図6は、第1の実施形態に係る傾斜磁場コイル2における積層の様子を示す図である。
【0043】
なお、図6は、図2に示した傾斜磁場コイル2のうちの一点鎖線で示す部分2gの様子を示している。ここで、図6における上下方向は、傾斜磁場コイル2の径方向に対応しており、図6における上側は、傾斜磁場コイル2における外周側に対応し、図6における下側は、傾斜磁場コイル2における内周側に対応している。
【0044】
例えば、図6に示すように、メインコイル2a及びシールドコイル2bは、それぞれ、Xコイル(X)、Yコイル(Y)、及びZコイル(Z)を有する。
【0045】
ここで、例えば、メインコイル2aでは、傾斜磁場コイル2の内周側から外周側に向けて、Yコイル、Xコイル、Zコイルの順で各コイルパターンが積層されている。一方、例えば、シールドコイル2bでは、傾斜磁場コイル2の内周側から外周側に向けて、Zコイル、Yコイル、Xコイルの順で各コイルパターンが積層されている。即ち、この例では、メインコイル2a及びシールドコイル2bが有するコイルパターンのうち、それぞれに含まれるZコイルが、冷却層(第1の冷却層2d及び第2の冷却層2e)に最も近い位置に配置されることになる。また、メインコイル2aに含まれるYコイル及びシールドコイル2bに含まれるXコイルが、冷却層から最も離れた位置に配置されることになる。
【0046】
なお、傾斜磁場コイル2のメインコイル2a及びシールドコイル2bにおける各コイルパターンの積層順は、図6に例示したものに限られず、傾斜磁場コイル2を設計する際の要件に応じて、適宜に変更されてもよい。
【0047】
以上、本実施形態に係るMRI装置100の全体構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係るMRI装置100では、被検体Sの撮像が行われる際に、傾斜磁場コイル2に数百~1kHz程度の交流電流が流れることがある。
【0048】
一般的に、このような高周波域の交流電流が流れる場合には、傾斜磁場コイルにおいて、表皮効果によって、電流が流れる領域がコイルパターンの表面付近に偏るようになり、その結果、傾斜磁場コイルの抵抗が増加することが知られている。
【0049】
図7は、本実施形態の比較例に係る傾斜磁場コイルのコイルパターンを示す図である。
【0050】
なお、図7は、傾斜磁場コイルが有する複数のコイルパターンのうちの1つのコイルパターンPについて、例えば、傾斜磁場コイルの径方向及び周方向に沿った断面を示している。ここで、図7における上下方向は、傾斜磁場コイルの径方向に対応し、図7における左右方向は、傾斜磁場コイルの周方向に対応している。また、傾斜磁場コイルの径方向は、コイルパターンPの厚み方向に一致し、傾斜磁場コイルの周方向は、コイルパターンPの幅方向に一致している。
【0051】
例えば、図7に示すように、傾斜磁場コイルに高周波域の交流電流が流れた場合には、電流が流れる領域(図7に破線で示す)が、コイルパターンPにおける表面に近い位置に偏ることになり、この結果、傾斜磁場コイルの抵抗が増加することになる。
【0052】
このように、表皮効果によって傾斜磁場コイルの抵抗が増加した場合には、傾斜磁場コイルの発熱が増加することになり、その結果、コイル自体の品質が低下したり、温度制限によって撮像条件が制限されたりすることがあり得る。また、傾斜磁場コイルにおける抵抗の増加は、傾斜磁場電源のパワー不足につながり、その結果として、撮像条件の制限が必要になることもあり得る。
【0053】
ここで、例えば、このような表皮効果による抵抗の増加を抑制するための方法として、1本の銅線ではなく、複数の細い銅線を撚り線にしたリッツ線を用いて、傾斜磁場コイルのコイルパターンを構成することも考えられる。リッツ線では、銅線の断面が複数に分離されるため、表皮効果が発生しても、各銅線のそれぞれの断面境界線上に電流が流れるようになり、表皮効果による抵抗増加を抑制することができる。しかし、一般的に、リッツ線は高価であり、また、図3及び4に示したコイルパターンのようにサドル形状に加工することが難しい。
【0054】
このようなことから、本実施形態に係るMRI装置100では、傾斜磁場コイル2において、リッツ線を用いるのではなく、コイルパターンの表面積を増やすことによって、表皮効果が発生しても、電流が流れる領域が大きくなるようにしている。これにより、傾斜磁場コイル2における表皮効果による抵抗の増加を抑制することができるようになる。
【0055】
ここで、本実施形態では、傾斜磁場コイル2が有するメインコイル2a及びシールドコイル2bに含まれる全てのコイルパターン(Xコイル、Yコイル、及びZコイル)が、以下で説明するように構成されている。
【0056】
具体的には、傾斜磁場コイル2が有するコイルパターンは、少なくとも一部が、導電性の第1の層と絶縁性の第2の層とが厚み方向に繰り返し現れるように形成されている。
【0057】
図8は、第1の実施形態に係る傾斜磁場コイル2のコイルパターンの一例を示す図である。
【0058】
なお、図8は、傾斜磁場コイル2が有する複数のコイルパターンのうちの1つのコイルパターンP1について、例えば、傾斜磁場コイル2の径方向及び周方向に沿った断面を示している。ここで、図8における上下方向は、傾斜磁場コイル2の径方向に対応し、図8における左右方向は、傾斜磁場コイル2の周方向に対応している。また、傾斜磁場コイル2の径方向は、コイルパターンP1の厚み方向に一致し、傾斜磁場コイル2の周方向は、コイルパターンP1の幅方向に一致している。
【0059】
例えば、図8に示すように、本実施形態に係るコイルパターンP1は、当該コイルパターンP1の幅方向における一部A1において、第1の層L1と第2の層L2とが厚み方向に交互に積層されている。ここで、第1の層L1は、導体C1で形成されており、第2の層L2は、絶縁体I1で形成されている。
【0060】
例えば、コイルパターンP1は、エッチング等によって、第1の層L1となる薄い銅線と、第2の層L2となる絶縁性の樹脂とを交互に積層させることによって作製される。または、例えば、コイルパターンP1は、3Dプリンタによって作製されてもよい。
【0061】
そして、コイルパターンP1に含まれる複数の第1の層L1は、互いに電気的に接続されており、全体として、同じ軸方向の傾斜磁場を発生させる。例えば、第1の層L1は、傾斜磁場コイル2の軸方向における端部において、それぞれが直接的に、又は、導線等を介して間接的に接続されている。
【0062】
即ち、本実施形態では、コイルパターンP1は、第1の層L1として、第1の導体と、第1の導体と絶縁層(第2の層L2)を介して積層された第2の導体とを有し、第1の導体と第2の導体とが同じ軸方向の傾斜磁場を発生させる。
【0063】
このように、第1の実施形態では、コイルパターンP1の少なくとも一部において、導電性の第1の層L1と絶縁性の第2の層L2とが厚み方向に積層されることによって、電流が流れる導体部分が厚み方向に構造的に分離されることになる。この結果、分離された部分の表面によってコイルパターンP1の表面積を増やすことができ、表皮効果が発生した場合でも、図7に示したような導体部分が分離されていないコイルパターンと比べて、電流が流れる領域(図8に破線で示す)が大きくなる。
【0064】
これにより、第1の実施形態では、傾斜磁場コイル2における表皮効果による抵抗の増加を抑制することができる。また、傾斜磁場コイル2の抵抗が増加することによって生じる傾斜磁場コイル2の発熱の増加を抑えることができる。また、リッツ線を用いてコイルパターンを構成する場合と比べて、低コストで作製が可能な、製造性の高い傾斜磁場コイル2を実現することができる。
【0065】
なお、上述した第1の実施形態において、第1の層L1及び第2の層L2の数は、必ずしも、図8に例示したものに限られない。第1の層L1の数を多くするほど、結果として、コイルパターンの表面積が増えることになり、抵抗の増加を抑制する効果が高くなる。そのため、第1の層L1の数は、例えば、製造コストや製造方法等に応じた制限の範囲内で、できるだけ多くするのが望ましい。
【0066】
(第2の実施形態)
また、上述した第1の実施形態では、傾斜磁場コイル2が有するコイルパターンの少なくとも一部において、導体で形成された第1の層L1と絶縁体で形成された第2の層L2とが厚み方向に交互に積層される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、第2の層が、複数の第1の層の間隙によって形成されてもよい。以下では、このような例を第2の実施形態として説明する。なお、第2の実施形態では、上述した実施形態と異なる点を中心に説明することとし、既に説明した構成要素と同じ役割を果たす構成要素については、同一の符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
【0067】
ここで、本実施形態では、傾斜磁場コイル2が有するメインコイル2a及びシールドコイル2bに含まれる全てのコイルパターン(Xコイル、Yコイル、及びZコイル)が、以下で説明するように構成されている。
【0068】
具体的には、傾斜磁場コイル2が有するコイルパターンは、少なくとも一部において、複数の第1の層が厚み方向に間隙を空けて配置されており、当該間隙によって第2の層が形成されている。
【0069】
図9は、第2の実施形態に係る傾斜磁場コイル2のコイルパターンの一例を示す図である。
【0070】
なお、図9は、傾斜磁場コイル2が有する複数のコイルパターンのうちの1つのコイルパターンP2について、例えば、傾斜磁場コイル2の径方向及び周方向に沿った断面を示している。ここで、図9における上下方向は、傾斜磁場コイル2の径方向に対応し、図9における左右方向は、傾斜磁場コイル2の周方向に対応している。また、傾斜磁場コイル2の径方向は、コイルパターンP2の厚み方向に一致し、傾斜磁場コイル2の周方向は、コイルパターンP2の幅方向に一致している。
【0071】
例えば、図9に示すように、本実施形態に係るコイルパターンP2は、当該コイルパターンP2の幅方向における一部A2において、複数の第1の層L1が厚み方向に間隙を空けて配置されており、当該間隙によって第2の層L2が形成されている。ここで、第1の層L1は、導体C2で形成されている。
【0072】
そして、本実施形態では、コイルパターンP2は、複数の第1の層L1の幅方向における端部を連結することで、各第1の層L1の間隙を空洞H2とするように形成されている。ここで、第1の層L1を連結する部分は、第1の層L1と同様に導体C2で形成されている。これにより、コイルパターンP2の内部に複数の中空の空洞H2が形成されるとともに、空洞H2によって、第1の層L1の間が部分的に絶縁されることになる。
【0073】
例えば、コイルパターンP2は、3Dプリンタ等によって一体成型品として作製される。これにより、コイルパターンP2に含まれる複数の第1の層L1は、全体として、同じ軸方向の傾斜磁場を発生させる。
【0074】
なお、空洞H2の形状は、必ずしも断面が矩形状となるものに限られず、例えば、断面が円状となるものでもよい。また、空洞H2は、コイルパターンP2の幅方向における複数の部分に形成されていてもよい。この場合には、1組の第1の層L1の間で、コイルパターンP2の幅方向に並んで複数の空洞H2が形成されることになる。
【0075】
このように、第2の実施形態では、コイルパターンP2の少なくとも一部において、コイルパターンP2の内部に複数の中空の空洞H2が形成されることによって、電流が流れる導体部分が厚み方向に不連続に配置されることになる。この結果、不連続となった部分の表面によってコイルパターンP2の表面積を増やすことができ、表皮効果が発生した場合でも、図7に示したような導体部分が連続しているコイルパターンと比べて、電流が流れる領域(図9に破線で示す)が大きくなる。
【0076】
これにより、第2の実施形態でも、傾斜磁場コイル2における表皮効果による抵抗の増加を抑制することができる。また、傾斜磁場コイル2の抵抗が増加することによって生じる傾斜磁場コイル2の発熱の増加を抑えることができる。また、リッツ線を用いてコイルパターンを構成する場合と比べて、低コストで作製が可能な、製造性の高い傾斜磁場コイル2を実現することができる。
【0077】
なお、上述した第2の実施形態において、例えば、コイルパターンP2の内部に形成された空洞H2を、傾斜磁場コイル2を冷却するための冷却管として用いるようにしてもよい。この場合には、例えば、空洞H2は、コイルパターンP2の内部を通る管状に形成されており、コイルパターンP2は、冷却装置から供給される冷媒を空洞H2に流通させることで、傾斜磁場コイル2内で冷媒を循環させる。なお、この場合には、例えば、傾斜磁場コイル2から、第1の冷却層2d及び第2の冷却層2eが除かれてもよい。
【0078】
また、上述した第2の実施形態において、第1の層L1及び第2の層L2の数は、必ずしも、図9に例示したものに限られない。第1の実施形態と同様に、第1の層L1の数を多くするほど、結果として、コイルパターンの表面積が増えることになり、抵抗の増加を抑制する効果が高くなる。そのため、第2の実施形態でも、第1の層L1の数は、例えば、製造コストや製造方法等に応じた制限の範囲内で、できるだけ多くするのが望ましい。
【0079】
(第3の実施形態)
また、上述した第1及び第2の実施形態では、傾斜磁場コイル2が有するコイルパターンの少なくとも一部が、導電性の第1の層と絶縁性の第2の層とが厚み方向に繰り返し現れるように形成されている場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、コイルパターンが、表面に凹凸面が設けられた空洞を有するように構成されてもよい。以下では、このような例を第3の実施形態として説明する。なお、第3の実施形態では、上述した実施形態と異なる点を中心に説明することとし、既に説明した構成要素と同じ役割を果たす構成要素については、同一の符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
【0080】
ここで、本実施形態では、傾斜磁場コイル2が有するメインコイル2a及びシールドコイル2bに含まれる全てのコイルパターン(Xコイル、Yコイル、及びZコイル)が、以下で説明するように構成されている。
【0081】
図10は、第3の実施形態に係る傾斜磁場コイル2のコイルパターンの一例を示す図である。
【0082】
なお、図10は、傾斜磁場コイル2が有する複数のコイルパターンのうちの1つのコイルパターンP3について、例えば、傾斜磁場コイル2の径方向及び周方向に沿った断面を示している。ここで、図10における上下方向は、傾斜磁場コイル2の径方向に対応し、図10における左右方向は、傾斜磁場コイル2の周方向に対応している。また、傾斜磁場コイル2の径方向は、コイルパターンP3の厚み方向に一致し、傾斜磁場コイル2の周方向は、コイルパターンP3の幅方向に一致している。
【0083】
例えば、図10に示すように、本実施形態に係るコイルパターンP3は、内部に空洞H3が形成されており、当該空洞H3の表面に凹凸面が設けられている。ここで、コイルパターンP3における空洞H3以外の部分は、導体C3で形成されている。
【0084】
例えば、コイルパターンP3は、3Dプリンタによって一体成型品として作製される。これにより、コイルパターンP3は、全体として、同じ軸方向の傾斜磁場を発生させる。
【0085】
なお、空洞H3の表面に設けられる凹凸面は、凹部及び凸部の断面が矩形状となるものに限られず、例えば、凹部及び凸部の断面が円弧状となるものでもよい。また、空洞H3に設けられる凹凸面は、必ずしも空洞H3の表面全体に設けられていなくてもよく、表面全体の少なくとも一部に設けられていればよい。
【0086】
このように、第3の実施形態では、コイルパターンP3の内部に、表面に凹凸面が設けられた空洞H3が形成されることによって、断面が矩形や円形となる単純な形状の空洞がコイルパターンの内部に形成される場合と比べて、空洞の周長を長くすることができる。この結果、空洞の表面によってコイルパターンP3の表面積を増やすことができ、表皮効果が発生した場合でも、図7に示したような空洞のないコイルパターンや、断面が矩形や円形となる単純な形状の空洞が内部に形成されているコイルパターンと比べて、電流が流れる領域(図10に破線で示す)が大きくなる。
【0087】
これにより、第3の実施形態でも、傾斜磁場コイル2における表皮効果による抵抗の増加を抑制することができる。また、傾斜磁場コイル2の抵抗が増加することによって生じる傾斜磁場コイル2の発熱の増加を抑えることができる。また、リッツ線を用いてコイルパターンを構成する場合と比べて、低コストで作製が可能な、製造性の高い傾斜磁場コイル2を実現することができる。
【0088】
なお、上述した第3の実施形態においても、例えば、コイルパターンP3の内部に形成された空洞H3を、傾斜磁場コイル2を冷却するための冷却管として用いるようにしてもよい。この場合には、例えば、空洞H3は、コイルパターンP3の内部を通る管状に形成されており、コイルパターンP3は、冷却装置から供給される冷媒を空洞H3に流通させることで、傾斜磁場コイル2内で冷媒を循環させる。なお、この場合には、例えば、傾斜磁場コイル2から、第1の冷却層2d及び第2の冷却層2eが除かれてもよい。
【0089】
以上、第1~第3の実施形態について説明したが、各実施形態はその一部を適宜に変更して実施することも可能である。
【0090】
例えば、上述した各実施形態では、傾斜磁場コイル2のメインコイル2a及びシールドコイル2bに含まれる全てのコイルパターンが、各実施形態で説明したように形成されていることとしたが、実施形態はこれに限られない。
【0091】
例えば、傾斜磁場コイル2のメインコイル2a及びシールドコイル2bに含まれるコイルパターンの一部のみが、いずれか一つの実施形態で説明したように形成されていてもよい。この場合には、例えば、Xコイル、Yコイル、及びZコイルのうち、冷却層(第1の冷却層2d及び第2の冷却層2e)から最も離れたコイルパターン、又は、冷却層に最も近いコイルパターン以外の2つのコイルパターンが、いずれか一つの実施形態で説明したように形成される。
【0092】
例えば、図6に示した例において、メインコイル2aに含まれるYコイル及びシールドコイル2bに含まれるXコイルの一方又は両方、或いは、メインコイル2a及びシールドコイル2bそれぞれに含まれるXコイル及びYコイルが、いずれか一つの実施形態で説明したように形成される。この場合に、残りのコイルパターンは、例えば、図7に示したように形成されてもよいし、リッツ線を用いて構成されてもよい。
【0093】
また、例えば、Xコイル、Yコイル、及びZコイルが、それぞれ別の実施形態で説明したように形成されてもよい。
【0094】
例えば、図6に示した例において、メインコイル2a及びシールドコイル2bそれぞれにおいて、Zコイルが、第2及び第3の実施形態で説明したように形成され、空洞に冷媒を流通させることで、冷却層の代わりとなり、Xコイル及びYコイルが、それぞれ第1の実施形態で説明したように形成されてもよい。
【0095】
また、上述した実施形態では、傾斜磁場コイル2が、メインコイル2a及びシールドコイル2bを有するASGCである場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、傾斜磁場コイル2は、シールドコイルを有さないNSGC(Non-Shieled Gradient Coil)であってもよい。その場合には、NSGCが有するメインコイルに含まれるコイルパターンが、上述した各実施形態で説明したように形成される。
【0096】
なお、上述した説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0097】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、例えば、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0098】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、傾斜磁場コイルにおける表皮効果による抵抗の増加を抑制することができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
100 磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置
2 傾斜磁場コイル
P1、P2、P3 コイルパターン
L1 第1の層
L2 第2の層
C1、C2、C3 導体
I1 絶縁体
H2、H3 空洞
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10