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特許7094725電気コネクタの製造方法、及び、電気コネクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】電気コネクタの製造方法、及び、電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/24 20060101AFI20220627BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20220627BHJP
   H01R 13/6586 20110101ALI20220627BHJP
【FI】
H01R43/24
H01R43/00 B
H01R13/6586
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018037694
(22)【出願日】2018-03-02
(65)【公開番号】P2019153454
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】迫田 有祐
(72)【発明者】
【氏名】長沼 健一
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0364883(US,A1)
【文献】特開2001-217052(JP,A)
【文献】特開2002-334752(JP,A)
【文献】特開2003-022877(JP,A)
【文献】特開平09-069378(JP,A)
【文献】米国特許第06093061(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0133795(US,A1)
【文献】米国特許第09653850(US,B1)
【文献】特許第6217876(JP,B1)
【文献】特開2015-170528(JP,A)
【文献】特開2017-059457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/514
H01R 13/6586
H01R 43/24
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コネクタと嵌合する板状の嵌合部を備えるハウジングと、
前記嵌合部の一方の面に配置され前記相手コネクタとの嵌合時に前記相手コネクタと接触し得る第1接触部と、前記ハウジングから露出した第1接続部とを各々有する、複数の第1端子と、
前記嵌合部の前記一方の面とは反対側の他方の面に配置され前記相手コネクタとの嵌合時に前記相手コネクタと接触し得る第2接触部と、前記ハウジングから露出した第2接続部とを各々有する、複数の第2端子と、
前記第1接触部と前記第2接触部との間に配置される遮蔽板と、
を備え、前記第1接続部の配列方向と前記第2接続部の配列方向が、前記嵌合部の厚み方向と直交する電気コネクタの製造方法であって、
複数の前記第1接触部がインサート成型により一体に設けられる一次成型部を形成する工程と、
複数の前記第2接触部がインサート成型により一体に設けられる二次成型部を形成する工程と、
前記一次成型部と前記二次成型部がインサート成型により一体に設けられる三次成型部を形成して前記ハウジングを生成する工程と、
を備え、
前記遮蔽板は、前記一次成型部及び前記二次成型部とともにインサート成型により前記三次成型部の一部として一体に設けられることを特徴とする電気コネクタの製造方法。
【請求項2】
前記一次成型部を形成する工程において、前記一次成型部の一部として第1係合部を一体に形成し、
前記二次成型部を形成する工程において、前記二次成型部の一部として第2係合部を一体に形成し、
前記三次成型部を形成して前記ハウジングを生成する工程において、前記第1係合部と前記第2係合部を係合させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1係合部は凸部又は凹部であり、これに対応する前記第2係合部は凹部又は凸部である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記三次成型部を形成して前記ハウジングを生成する工程は、前記嵌合部の前記一方の面と前記他方の面の周縁において前記一次成型部と前記二次成型部の間に生じた隙間を樹脂で充填することを含む、請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記周縁は平面視略U字形状である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記一次成型部を形成する工程は、相隣り合う前記第1接触部同士の間の隙間を樹脂で充填することを含む、
及び/又は、
前記二次成型部を形成する工程は、相隣り合う前記第2接触部同士の間の隙間を樹脂で充填することを含む、
請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記相隣り合う前記第1接触部同士の間の隙間に充填された樹脂部は、前記第1接触部よりも、前記嵌合部の厚み方向において前記二次成型部とは反対側に突出している、
及び/又は、
前記相隣り合う前記第2接触部同士の間の隙間に充填された樹脂部は、前記第2接触部よりも、前記嵌合部の厚み方向において前記一次成型部とは反対側に突出している、
請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記一次成型部を形成する工程は、前記第1端子の、前記相手コネクタとの嵌合側の端部を、前記相手コネクタとの嵌合側において樹脂で覆うことを含む、
及び/又は、
前記二次成型部を形成する工程は、前記第2端子の、前記相手コネクタとの嵌合側の端部を、前記相手コネクタとの嵌合側において樹脂で覆うことを含む、
請求項1乃至7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記三次成型部を形成して前記ハウジングを生成する工程は、前記第1端子の前記相手コネクタとの嵌合側の端部において、前記嵌合部の厚み方向において前記端部よりも前記二次成型部の側に形成された窪みを樹脂で充填することを含む、
及び/又は、
前記三次成型部を形成して前記ハウジングを生成する工程は、前記第2端子の前記相手コネクタとの嵌合側の端部において、前記嵌合部の厚み方向において前記端部よりも前記一次成型部の側に形成された窪みを樹脂で充填することを含む、
請求項1乃至8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記一次成型部を形成する工程は、複数の前記第1接触部の配列方向と複数の前記第1接続部の配列方向を互いに実質的に平行に保ったまま、複数の前記第1接続部を一体として複数の前記第1接触部に対して折り曲げる工程を含む、
及び/又は、
前記二次成型部を形成する工程は、複数の前記第2接触部の配列方向と複数の前記第2接続部の配列方向を互いに実質的に平行に保ったまま、複数の前記第2接続部を一体として複数の前記第2接触部に対して折り曲げる工程を含む、
請求項1乃至9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記遮蔽板を前記一次成型部及び前記二次成型部とともにインサート成型により前記三次成型部の一部として一体に設けるに際し、前記遮蔽板が載置される第一載置面を前記一次成型部を形成する工程において前記一次成型部に形成する、
及び/又は、
前記遮蔽板を前記一次成型部及び前記二次成型部とともにインサート成型により前記三次成型部の一部として一体に設けるに際し、前記遮蔽板が載置される第二載置面を前記二次成型部を形成する工程において前記二次成型部に形成する、
請求項1乃至10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記第一載置面において、前記相手コネクタとの嵌合方向、複数の前記第1接触部の配列方向、及び、前記嵌合部の厚み方向の少なくともいずれかの方向において、前記第一載置面における前記遮蔽板の位置を規定する突起を設ける、
及び/又は、
前記第二載置面において、前記相手コネクタとの嵌合方向、複数の前記第2接触部の配列方向、及び、前記嵌合部の厚み方向の少なくともいずれかの方向において、前記第二載置面における前記遮蔽板の位置を規定する突起を設ける、
請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記第1端子は、前記第1接触部と前記第1接続部との間に位置する第1連結部を有し、前記第一載置面は、少なくとも、複数の前記第1接触部を一体に保持する第1樹脂部分と、複数の前記第1連結部を一体に保持する第2樹脂部分とによって形成され、これらの樹脂部分は互いに離間されている、
及び/又は、
前記第2端子は、前記第2接触部と前記第2接続部との間に位置する第2連結部を有し、前記第二載置面は、少なくとも、複数の前記第2接触部を一体に保持する第1樹脂部分と、複数の前記第2連結部を一体に保持する第2樹脂部分とによって形成され、これらの樹脂部分は互いに離間されている、請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
相手コネクタと嵌合する板状の嵌合部を備えるハウジングと、
前記嵌合部の一方の面に前記相手コネクタとの嵌合方向及び前記嵌合部の厚み方向の双方と直交する配列方向に沿って配列され前記相手コネクタとの嵌合時に前記嵌合方向における前記ハウジングの一端側において前記相手コネクタと接触し得る複数の第1接触部と、
前記嵌合方向における前記ハウジングの他端側において前記ハウジングから露出し、前記配列方向及び前記嵌合方向と直交する方向から見たときに前記配列方向における前記ハウジングの中央に対して一方の側にのみ前記配列方向に沿って配列された複数の第1接続部とを各々有する、
複数の第1端子と、
前記嵌合部の前記一方の面とは反対側の他方の面に前記配列方向に沿って配列され前記相手コネクタとの嵌合時に前記嵌合方向における前記ハウジングの前記一端側において前記相手コネクタと接触し得る複数の第2接触部と、
前記嵌合方向における前記ハウジングの前記他端側において前記ハウジングから露出し、前記配列方向及び前記嵌合方向と直交する方向から見たときに前記配列方向における前記ハウジングの中央に対して前記一方の側とは反対の他方の側にのみ前記配列方向に沿って配列された複数の第2接続部とを各々有する、
複数の第2端子と、
前記第1接触部と前記第2接触部との間に配置される遮蔽板と、
を備え、
前記遮蔽板の一部が、前記嵌合方向における前記ハウジングの前記他端側において前記ハウジングから露出し、前記配列方向及び前記嵌合方向と直交する方向から見たときに前記第1接続部と前記第2接続部の間に位置していることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項15】
前記遮蔽板の一部は、前記第1接触部と前記第2接触部との間に配置されている遮蔽板の遮蔽部分と、同一面上に存在する、請求項14に記載の電気コネクタ。
【請求項16】
前記遮蔽板の一部は、前記ハウジングの、前記遮蔽板の板厚を取り巻く周縁の中、前記嵌合部、及び、前記第1接続部及び前記第2接続部の露出部以外の部分から露出している、請求項14又は15に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタの製造方法、及び、電気コネクタ、更に言えば、相手コネクタと嵌合する板状の嵌合部の一方の面とこれとは反対側の他方の面の双方に接触部を有する電気コネクタの製造方法、及び、電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2017-37851に、上記の形状を有した電気コネクタの製造方法の一例が示されている。
【0003】
この電気コネクタは、嵌合部の一方の面の接触部を形成する複数の第1の端子(ターミナル)と、嵌合部の他方の面の接触部を形成する複数の第2の端子を含む。これら第1の端子と第2の端子の間には、ノイズの影響を低減するとともに、端子の塑性変形又は破損を防ぐために、ハウジングとともに一体成型された遮蔽板が設けられている。
【0004】
この従来の製造方法には、概ね、2つの工程が含まれる。複数の第1の端子及び遮蔽板がインサート成型により一体に設けられる一次成型部を形成する工程と、一次成型部及び複数の第2の端子がインサート成型により一体に設けられる二次成型部を形成して前記ハウジングを生成する工程である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-37851
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子機器の多機能化や高機能化に伴って、更なる伝送レートの向上が求められている。伝送レートを向上させるにはノイズを低減させることが有効である。遮蔽板を設けることもノイズを低減させる一つの方法であるが、この場合には、遮蔽板を設けつつ、第1の端子と第2の端子を正確に位置決めすることが重要となる。それらを正確に位置決めすることにより、遮蔽板から磁束が漏れた場合にも、クロストークを相殺し、ノイズをより効果的に低減させることができる。
【0007】
しかしながら、上に例示した従来の電気コネクタの製造方法は、一次成型部と複数の第2の端子をインサート成型する際に、複数の第2の端子をそれらの端子部分を露出させたまま一次成型部に対して位置決めするものであることから、複数の第2の端子を一次成型部に対して正確に位置決めすることができないという問題を有していた。更に詳細には、複数の第2の端子を一次成型部に対して正確に位置決めするには、射出成型時の圧力にも耐え得るように端子を金型によって確実に抑えることが重要であるが、装置の小型化に伴って、端子も小型化しており(例えば、端子長が数ミリ程度のものもある)、今日の技術では、端子を確実に抑えることが不可能、又は、困難なものとなっており、この結果、金型に流し込まれた樹脂によって端子が振れる危険が大きく、端子部分を露出させたままでは、第2の端子を、一次成型部に設けた複数の第1の端子や遮蔽板に対して正確に位置決めすることが困難となっている。
【0008】
本願発明は上記の従来技術における問題点を解決するためになされたものであり、相手コネクタと嵌合する板状の嵌合部の一方の面とこれとは反対側の他方の面の双方に接触部を有する電気コネクタにおいて、嵌合部の一方の面の接触部を形成する複数の第1の端子と、嵌合部の他方の面の接触部を形成する複数の第2の端子とを、遮蔽板を介して正確に位置決めすることができる電気コネクタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様による電気コネクタの製造方法は、相手コネクタと嵌合する板状の嵌合部を備えるハウジングと、前記嵌合部の一方の面に配置され前記相手コネクタとの嵌合時に前記相手コネクタと接触し得る第1接触部と、前記ハウジングから露出した第1接続部とを各々有する、複数の第1端子と、前記嵌合部の前記一方の面とは反対側の他方の面に配置され前記相手コネクタとの嵌合時に前記相手コネクタと接触し得る第2接触部と、前記ハウジングから露出した第2接続部とを各々有する、複数の第2端子と、前記第1接触部と前記第2接触部との間に配置される遮蔽板と、を備え、前記第1接続部の配列方向と前記第2接続部の配列方向が、前記嵌合部の厚み方向と直交する電気コネクタの製造方法であって、複数の前記第1接触部がインサート成型により一体に設けられる一次成型部を形成する工程と、複数の前記第2接触部がインサート成型により一体に設けられる二次成型部を形成する工程と、前記一次成型部と前記二次成型部がインサート成型により一体に設けられる三次成型部を形成して前記ハウジングを生成する工程と、を備え、前記遮蔽板は、前記一次成型部及び前記二次成型部とともにインサート成型により前記三次成型部の一部として一体に設けられることを特徴として有する。
この態様の製造方法によれば、複数の第1端子の第1接触部を一体に設けた一次成型部と、複数の第2端子の第2接触部を一体に設けた二次成型部とが、それぞれ、予め形成されるため、三次成型部を形成する際に、これら一次成型部と二次成型部とを組み合わせるだけで、複数の第1端子と複数の第2端子、特に、それらの第1接触部と第2接触部を、遮蔽板を介して正確に位置決めすることができる。
【0010】
上記態様の製造方法において、前記一次成型部を形成する工程で、前記一次成型部の一部として第1係合部を一体に形成し、前記二次成型部を形成する工程で、前記二次成型部の一部として第2係合部を一体に形成し、前記三次成型部を形成して前記ハウジングを生成する工程で、前記第1係合部と前記第2係合部を係合させるのが好ましい。ここで、前記係合部は、凸部又は凹部であってもよい。
係合部を利用することによって、複数の第1端子と複数の第2端子、特に、それらの第1接触部と第2接触部を、より正確に且つ容易に位置決めすることができる。
【0011】
また、上記態様の製造方法において、前記三次成型部を形成してハウジングを生成する工程は、前記嵌合部の前記一方の面と前記他方の面の周縁において前記一次成型部と前記二次成型部の間に生じた隙間を樹脂で充填することを含むのが好ましい。前記周縁は平面視略U字形状であってもよい。
一次成型部と二次成型部を組み合わせた際に生じる周縁の隙間を樹脂で充填することにより、一次成型部と二次成型部をより強固に固定することができる。
【0012】
また、上記態様の製造方法において、前記一次成型部を形成する工程は、相隣り合う前記第1接触部同士の間の隙間を樹脂で充填することを含む、及び/又は、前記二次成型部を形成する工程は、相隣り合う前記第2接触部同士の間の隙間を樹脂で充填することを含むものであってもよい。この場合、前記相隣り合う前記第1接触部同士の間の隙間に充填された樹脂部は、前記第1接触部よりも、前記嵌合部の厚み方向において前記二次成型部とは反対側に突出している、及び/又は、前記相隣り合う前記第2接触部同士の間の隙間に充填された樹脂部は、前記第2接触部よりも、前記嵌合部の厚み方向において前記一次成型部とは反対側に突出していてもよい。
このような充填部を設けることにより、剥離し易い第1接触部や第2接触部の部分を、より確実に固定することができる。
【0013】
更に、上記態様の製造方法において、前記一次成型部を形成する工程は、前記第1端子の、前記相手コネクタとの嵌合側の端部を、前記相手コネクタとの嵌合側において樹脂で覆うことを含む、及び/又は、前記二次成型部を形成する工程は、前記第2端子の、前記相手コネクタとの嵌合側の端部を、前記相手コネクタとの嵌合側において樹脂で覆うことを含むのが好ましい。
第1端子や第2端子は、相手コネクタとの嵌合側の端部において剥がれることが多いことから、これらの部分を樹脂で確実に覆うことにより、剥離し易い第1端子や第2端子をより確実に固定することができる。
【0014】
上記態様の製造方法において、前記三次成型部を形成して前記ハウジングを生成する工程は、前記第1端子の前記相手コネクタとの嵌合側の端部において、前記嵌合部の厚み方向において前記端部よりも前記二次成型部の側に形成された窪みを樹脂で充填することを含む、及び/又は、前記三次成型部を形成して前記ハウジングを生成する工程は、前記第2端子の前記相手コネクタとの嵌合側の端部において、前記嵌合部の厚み方向において前記端部よりも前記一次成型部の側に形成された窪みを樹脂で充填することを含むのが好ましい。
これらの窪みは、一次成型部や二次成型部をインサート成型する際に、金型によって端子を抑えたことによって生じ得るが、三次成型部を生成する際に、これらの窪みを樹脂で充填することにより、剥離し易い第1端子や第2端子をより確実に固定することができる。
上記態様の製造方法において、前記一次成型部を形成する工程は、複数の前記第1接触部の配列方向と複数の前記第1接続部の配列方向を互いに実質的に平行に保ったまま、複数の前記第1接続部を一体として複数の前記第1接触部に対して折り曲げる工程を含む、及び/又は、前記二次成型部を形成する工程は、複数の前記第2接触部の配列方向と複数の前記第2接続部の配列方向を互いに実質的に平行に保ったまま、複数の前記第2接続部を一体として複数の前記第2接触部に対して折り曲げる工程を含んでもよい。
【0015】
上記態様の製造方法において、前記遮蔽板を前記一次成型部及び前記二次成型部とともにインサート成型により前記三次成型部の一部として一体に設けるに際し、前記遮蔽板が載置される第一載置面を前記一次成型部を形成する工程において前記一次成型部に形成する、及び/又は、前記遮蔽板を前記一次成型部及び前記二次成型部とともにインサート成型により前記三次成型部の一部として一体に設けるに際し、前記遮蔽板が載置される第二載置面を前記二次成型部を形成する工程において前記二次成型部に形成するのが好ましい。
載置面を設けることにより、第1端子と第2端子との間の所定位置に、例えば、それらのちょうど中間位置に、遮蔽板を容易に且つ確実に位置決めすることができる。
【0016】
上記態様の製造方法において、前記第一載置面において、前記相手コネクタとの嵌合方向、複数の前記第1接触部の配列方向、及び、前記嵌合部の厚み方向の少なくともいずれかの方向において、前記第一載置面における前記遮蔽板の位置を規定する突起を設ける、及び/又は、前記第二載置面において、前記相手コネクタとの嵌合方向、複数の前記第2接触部の配列方向、及び、前記嵌合部の厚み方向の少なくともいずれかの方向において、前記第二載置面における前記遮蔽板の位置を規定する突起を設けるのが好ましい。
突起を設けることにより、突起との衝突を通じて、載置面における遮蔽板の位置を容易に規定することができる。
【0017】
上記態様の製造方法において、前記第1端子は、前記第1接触部と前記第1接続部との間に位置する第1連結部を有し、前記第一載置面は、少なくとも、複数の前記第1接触部を一体に保持する第1樹脂部分と、複数の前記第1連結部を一体に保持する第2樹脂部分とによって形成され、これらの樹脂部分は互いに離間されている、及び/又は、前記第2端子は、前記第2接触部と前記第2接続部との間に位置する第2連結部を有し、前記第二載置面は、少なくとも、複数の前記第2接触部を一体に保持する第1樹脂部分と、複数の前記第2連結部を一体に保持する第2樹脂部分とによって形成され、これらの樹脂部分は互いに離間されていてもよい。
このような構成とすることにより、樹脂部分を設けた後であっても、端子を形成するための金属板を自由に切断等することができる。
【0018】
本発明の一態様による電気コネクタは、相手コネクタと嵌合する板状の嵌合部を備えるハウジングと、前記嵌合部の一方の面に配置され前記相手コネクタとの嵌合時に前記相手コネクタと接触し得る第1接触部と、前記ハウジングから露出した第1接続部とを各々有する、複数の第1端子と、前記嵌合部の前記一方の面とは反対側の他方の面に配置され前記相手コネクタとの嵌合時に前記相手コネクタと接触し得る第2接触部と、前記ハウジングから露出した第2接続部とを各々有する、複数の第2端子と、前記第1接触部と前記第2接触部との間に配置される遮蔽板と、を備え、前記ハウジングから前記遮蔽板の一部が板状に露出していることを特徴として有する。
【0019】
上記態様の電気コネクタにおいて、前記遮蔽板の一部は、前記第1接触部と前記第2接触部との間に配置されている遮蔽板の遮蔽部分と、同一面上に存在してもよい。
【0020】
また、上記態様の電気コネクタにおいて、前記遮蔽板の一部は、前記ハウジングの、前記遮蔽板の板厚を取り巻く周縁の中、前記嵌合部、及び、前記第1接続部及び前記第2接続部の露出部以外の部分から露出していてもよい。
【0021】
また、本発明の他の態様による電気コネクタは、相手コネクタと嵌合する板状の嵌合部を備えるハウジングと、第1接触部と、第1接続部と、前記第1接触部と前記第1接続部とを連結する第1連結部とを各々有する、複数の第1端子と、第2接触部と、第2接続部と、前記第2接触部と前記第2接続部とを連結する第2連結部とを各々有する、複数の第2端子と、前記第1接触部と前記第2接触部との間に配置される遮蔽板と、を備え、前記第1接続部の配列方向と前記第2接続部の配列方向が、前記嵌合部の厚み方向と直交する電気コネクタであって、前記ハウジングは、前記複数の第1接触部を一体に保持する樹脂から成る第1保持部と、前記複数の第2接触部を一体に保持する樹脂から成る第2保持部と、前記2つの保持部と、前記第1連結部と、前記第2連結部と、前記遮蔽版とを一体に保持する樹脂から成る第3保持部と、を含むことを特徴として有する。
【発明の効果】
【0022】
本願発明によれば、相手コネクタと嵌合する板状の嵌合部の一方の面とこれとは反対側の他方の面の双方に接触部を有する電気コネクタにおいて、嵌合部の一方の面の接触部を形成する複数の第1の端子と、嵌合部の他方の面の接触部を形成する複数の第2の端子とを、遮蔽板を介して正確に位置決めすることができる電気コネクタの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の製造方法によって製造することができる電気コネクタの一例を示す斜視図である。
図2図1の電気コネクタの内部構造を示す概略斜視図である。
図3図1の電気コネクタの内部構造を示す概略斜視図である。
図4】一次成型部の製造工程を示す図である。
図5】一次成型部の製造工程を示す図である。
図6】一次成型部の製造工程を示す図である。
図7】二次成型部の製造工程を示す図であって、図4に対応する図である。
図8】二次成型部の製造工程を示す図であって、図5に対応する図である。
図9】二次成型部の製造工程を示す図である。
図10】三次成型部を形成してハウジングを生成する工程を示す図であって、一次成型部と二次成型部を組み合わせる前の状態を示す斜視図である。
図11】三次成型部を形成してハウジングを生成する工程を示す図であって、一次成型部と二次成型部を組み合わせる前の状態を示す正面図である。
図12】三次成型部を形成してハウジングを生成する工程を示す図であって、一次成型部と二次成型部を組み合わせた後の状態を示す斜視図である。
図13】三次成型部を形成してハウジングを生成する工程を示す図であって、一次成型部と二次成型部を組み合わせた後の状態を示す斜視図である。
図14】三次成型部を形成してハウジングを生成する工程を示す図であって、三次成型部を形成してハウジングを生成した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。説明の便宜のため好適な実施形態のみを示すが、勿論、これによって本発明を限定しようとするものではない。
【0025】
図1は、本発明の製造方法によって製造することができる電気コネクタ1の一例を示す斜視図、図2図3は、その内部構造を示す概略斜視図である。
【0026】
電気コネクタ1は、略左右対称形状を成し、主に、樹脂製のハウジング20と、ハウジング20と一体成型される複数の端子60及び遮蔽板70、更に、ハウジング20の外部に取り付けられる金属製のシェル50を含む。図2は、ハウジング20とシェル50を分解した状態をそれらの斜視図で示したもの、図3は、ハウジング20と一体成型される端子60と遮蔽板70の斜視図である。
【0027】
電気コネクタ1は、シェル50と端子60を、例えば、半田によって基板(図示されていない)に固定した状態で使用する。電気コネクタ1の前面に嵌合口25が設けられており、嵌合口25に相手コネクタ(図示されていない)の一部を挿入して、相手コネクタと接続させることができるようになっている。
【0028】
シェル50は、嵌合口25側を除く略全ての面において、ハウジング20の外部を覆う。シェル50の頂面には、相手コネクタの一部が嵌合口25に挿入されたときに相手コネクタの係止突部が着脱自在に係止され得る孔51が設けられている。係止突部を孔51に係止させることにより、電気コネクタ1からの相手コネクタの抜けが防止される。また、シェル50の底面には、相手コネクタの一部が嵌合口25に挿入されたときに相手コネクタのシェルと接触し得る舌片27が設けられている。舌片27を設けることにより、グランド接続のために、シェル50を相手コネクタのシェルと確実に電気的に接続させることができる。
【0029】
シェル50の嵌合口25の上部及び左右側縁には折返部52が設けられており、シェル50の強度が確保されている。折返部52の下方に設けた脚52aは、基板の貫通穴に貫通させた状態で半田付けされる。シェル50の背面側において下方に突出した脚54aも、基板の貫通穴に貫通させた状態で半田付けされる。これらの半田付けを通じて、シェル50は、ハウジング20とともに基板に固定されるとともに、基板にグランド接続される。
【0030】
ハウジング20は、シェル50の背面側からその内部に内挿される。ハウジング20の背面側は、ハウジング20が挿入された状態でシェル50の閉蓋53を折曲部53aにおいて下方に向かって折り曲げることによって閉塞される。閉蓋53にも折返部53bが設けられており、シェル本体の側面と係合することによってシェル50の強度が確保されている。
【0031】
ハウジング20は、略直方形状を成す本体部22と、本体部22よりも前側、即ち、相手コネクタとの嵌合側に向かって嵌合方向「α」に沿って突出した嵌合部21を含む。嵌合部21は、本体部22の前側に設けた厚肉の板状部材である。嵌合部21の一方の板面21a(基板側に位置する面。下面。)と、この一方の面とは反対側の他方の板面21b(基板と反対側の面。上面。)のそれぞれに、複数の、ここでは5本の端子60が、それぞれの一部(接触部62)を露出させた状態で設けられている。相手コネクタ(図示されていない)との嵌合時には、これらの接触部62が相手コネクタに設けた対応端子の所定部分と接触してそれらは電気的に接続される。
【0032】
端子60は、嵌合部21の一方の板面21aの側に配置される複数の第1端子61Aの組と、嵌合部21の他方の板面21bの側に配置される複数の第2端子61Bの組を含む。各組はそれぞれ、一枚の金属板を打ち抜き、折り曲げることによって形成される。複数の第1端子61Aには、隣り合う2本の端子からなるペア端子を2組含むことができ、同様に、複数の第2端子61Bには、隣り合う2本の端子からなるペア端子を2組含むことができる。
【0033】
複数の第1端子61Aはそれぞれ、相手コネクタとの嵌合時に相手コネクタの対応コネクタの所定部分と接触する第1接触部62Aと、基板に接続される第1接続部63Aと、これらを連結する第1連結部64Aを含む。第2端子61Bも同様に、第2接触部62Bと、第2接続部63Bと、第2連結部64Bを含む。
【0034】
第1接触部62Aや第2接触部62Bは、嵌合部21に配置される。相手コネクタと接触させるため、第1接触部62Aは各々、板面21aの側を嵌合部21の外部に露出させた状態で、また、第2接触部62Bは各々、板面21bの側を嵌合部21の外部に露出させた状態で設ける。相手コネクタとの有効嵌合長を大きくするため、第1接触部62Aと第2接触部62Bは各々、相手コネクタとの嵌合方向「α」に沿って実質的に真っ直ぐ延びている。但し、相手コネクタとの接触を円滑にするため、相手コネクタとの嵌合側の端部65A、65Bは、遮蔽板70の側に向かって多少折り曲げられている。
【0035】
嵌合部21において、第1端子61Aの組に含まれる複数の第1接触部62Aは、配列方向「β」において互いに等ピッチずつ離間された状態で配列され、同様に、第2端子61Bの組に含まれる複数の第2接触部62Bは、配列方向「β」において互いに等ピッチずつ離間された状態で配列されている。クロストークを防止するため、それらを組み合わせるときは、互いに千鳥状に配列する。
【0036】
第1接続部63Aや第2接続部63Bは基板と接続させるため、ハウジング20から露出させた状態で設ける。これらは各々、半田接続される基板の面に対して水平に実質的に真っ直ぐ延びている。第1端子61Aの組に含まれる複数の第1接続部63Aは、配列方向「β」において互いに等ピッチずつ離間された状態で配列され、同様に、第2端子61Bの組に含まれる複数の第2接続部63Bは、配列方向「β」において互いに等ピッチずつ離間された状態で配列されている。これら第1接続部63Aの配列方向「β」と第2接続部63Bの配列方向「β」は、嵌合部21の厚み方向「γ」と直交する。
【0037】
第1連結部64Aと第2連結部64Bは、第1接続部63Aや第2接続部63Bの境目付近を除き、それらの略全ての部分をハウジング20の内部に埋め込まれる。第1連結部64Aは、曲部64Afと、折曲部64Ab、64Aa、64Ad、64Aeを含み、第2連結部64Bは、曲部64Bfと、折曲部64Bb、64Ba、64Bd、64Beを含む。曲部は、金属板の打ち抜き時に形成され、折曲部は、その後に折り曲げることによって形成される。これら複数の曲部と折曲部を有するにもかかわらず、複数の第1接触部62Aの配列方向「β」と複数の第1接続部63Aの配列方向「β」は互いに実質的に平行状態を保っている。同様に、複数の第2接触部62Bの配列方向「β」と複数の第接続部63Bの配列方向「β」は互いに実質的に平行状態を保っている。
【0038】
遮蔽板70は、第1端子61Aと第2端子61Bを遮蔽するために使用する。遮蔽板70は、主に、第1接触部62Aと第2接触部62Bの間に配置されてそれらを遮蔽する略矩形の第一遮蔽部分71と、嵌合部21の厚み方向「γ」において第1連結部64Aの特に第1接触部62Aと同一面に位置する部分と、嵌合部21の厚み方向「γ」において第2連結部64Bの特に第2接触部62Bと同一面に位置する部分との間に配置されてそれらを遮蔽する略矩形の第二遮蔽部分72を含む。第1端子61Aと第2端子61Bは、それらの略全ての部分において、遮蔽板70によって効果的に遮蔽される。
【0039】
図4乃至図14を参照して、本発明による電気コネクタの製造方法の一例を説明する。一例として、図1等に示した電気コネクタ1の製造方法を説明するが、本発明によれば、電気コネクタ1に限らず、様々な形状の電気コネクタを製造することができる。
【0040】
図4乃至図6は、電気コネクタ1のハウジング20の一部を構成する一次成型部30の製造工程を示す図、図7乃至図9は、電気コネクタ1のハウジング20の一部を構成する二次成型部40の製造工程を示す図であって、図4乃至図6にそれぞれ対応する図、図10乃至図14は、図4乃至図6の工程を経て製造された一次成型部30と、図7乃至図9の工程を経て製造された二次成型部40が、遮蔽板70とともにインサート成型により一体に設けられる三次成型部80を形成して、ハウジング20を生成する工程を示す図である。
【0041】
先ず、図4乃至図6を参照して、電気コネクタ1のハウジング20の一部を構成する一次成型部30の製造方法を説明する。
図4は、金属板を打ち抜いた後に所定の処理を施した後の状態を示したものであって、これを嵌合部21に対する固定側から見た斜視図である。一次成型部30を製造するにあたり、先ず、連結部67Aを通じてキャリア(図示されていない)に接続させたまま、一枚の金属板を所定の形状に打ち抜き、続いて、相手コネクタとの嵌合側の第1接触部62Aの端部65Aを折り曲げるとともに、第1連結部64Aを折曲部64Ad、64Aeにてそれぞれ略直角に折り曲げて、第1接触部62Aとの間に段を設けた第1接続部63Aを形成する。このとき、折曲部64Ad、64Aeは、複数の第1接触部62Aの配列方向「β」と複数の第1接続部63Aの配列方向「β」を互いに実質的に平行に保ったまま折り曲げられる。尚、これらの処理を施した段階では、未だ、複数の第1端子61Aは、金属板の中間連結部分64Acと端部連結部分63Aaによって互いに連結された状態にある。
【0042】
図5図6は、実質的に一次成型部30を完成した状態を示す。更に詳細には、図4の金属板において、第1連結部64Aを折曲部64Abにて略直角に折り曲げ、また、中間連結部分64Acを取り除いた後、複数の樹脂部分を形成した状態を示す。
図5の(a)は、これを嵌合部21に対する固定側から見た斜視図であって、図4に対応し、(b)は、これを相手コネクタとの接触側から見た斜視図である。図6は、実質的に完成した一次成型部30の平面図を、(b)は、(a)におけるA-A線断面図を、それぞれ示す。一次成型部30を完成するには、端部連結部分63Aaを切断すればよいが、この切断はどの時点で行ってもよい。尚、折曲部64Abは、折曲部64Ad、64Aeと同様に、複数の第1接触部62Aの配列方向「β」と複数の第1接続部63Aの配列方向「β」を互いに実質的に平行に保ったまま折り曲げられる。
【0043】
これら図5図6の工程を経ることにより、相隣り合う複数の第1接触部62Aを一体に保持するに第1樹脂部分(第1保持部)31が形成され、また、相隣り合う複数の第1連結部64A、例えば、それらのうちの3本の中間付近を一体に保持する第2樹脂部分32が形成され、更に、相隣り合う複数の第1連結部64A、例えば、それらのうちの3本の中間付近を一体に保持する樹脂部分33が形成される。これら複数の第1接触部62A及び第1連結部64Aは、インサート成型により一体に設けられる。樹脂部分が形成されるため、インサート成型の後は、金属板の中間連結部分64Acや端部連結部分63Aaによる連結が解かれている場合であっても、各第1端子61A同士がばらけることはない。尚、図6の(b)によく示されているように、図5の工程を経たとき、第1端子61Aの、相手コネクタとの嵌合側の端部65A、更に言えば、遮蔽板70の側に多少折り曲げられた部分65Aは、相手コネクタとの嵌合側を樹脂で覆われる。この結果、樹脂からの第1端子61Aの剥離が効果的に防止される。
【0044】
インサート成型では更に、相隣り合う第1接触部62A同士の間の隙間36(図4参照)を樹脂で充填するのが好ましい。これにより、相隣り合う第1接触部62Aをより安定した状態で固定することができる。また、このとき、隙間36に充填された樹脂部37は、嵌合部21の厚み方向「γ」において、二次成型部40とは反対側に突出させるのが好ましい。突出させることにより、第1接触部62Aを、より確実に嵌合部21に固定することができる。尚、嵌合部21の厚み方向「γ」は、第1接続部63Aや第2接続部63Bの配列方向「β」と直交関係にある。
【0045】
第1樹脂部分31、第2樹脂部分32、及び第3樹脂部分33には、遮蔽板70を載置させる載置面31a、32a、33aを設けてもよい。載置面31a、32a、33aを設けることにより、第1端子61Aと第2端子61Bとの間の所定位置に、それらの端子から所定の距離を保った状態で、遮蔽板70を容易に位置決めすることができる。また、これらの載置面31a、32aから遮蔽板70の載置側に突出する突起31b、32bを設けてもよい。突起31b、32bを設けることにより、遮蔽板70は、突起31b、32bとの衝突を通じて、載置面31a、32aにおける位置を規定される、更に言えば、突起31b、32bと衝突させることにより、載置面31a、32aにおける遮蔽板70の位置を、相手コネクタとの嵌合方向「α」、複数の第1接触部62Aの配列方向「β」、及び、嵌合部21の厚み方向「γ」の少なくともいずれかの方向において規定することができる。
【0046】
三次成型部80を形成してハウジング20を生成するにあたり、一次成型部30と二次成型部40を組み合わせる際、一次成型部30と二次成型部40の位置関係を決定するため、第1樹脂部分31に、二次成型部40の所定部分と係合させることができる第1係合部31cを一次成型部30の一部として一体に設けてもよい。第1係合部31cは、例えば、凹部312cと凸部311cであってもよく、これらの凹凸は、上方から下方に向かって複数の第1接触部62Aの配列方向「β」に沿って設けられている。凹部312cは配列方向「β」において第1接触部62Aの位置に、凸部311cは配列方向「β」において樹脂部37の位置に設けることができる。
【0047】
二次成型部40は一次成型部30と略同じ構造を有し、また、図7乃至図9から明らかなように、二成型部40の製造工程は一次成型部30と実質的に同じものである。従って、二次成型部40の製造方法に関する詳細な説明は省略し、ここでは一次成型部30と二次成型部40の主な相違、及び、一次成型部30と二次成型部40の関係についてのみ説明する。尚、図7は、図4に、図8の(a)、(b)は、図5の(a)、(b)に、図9の(a)は、図6の(a)に、それぞれ対応する。図9の(b)は、図9の(a)におけるA-A線断面図である。二次成型部40を表す図7等において、一次成型部30の部材に対応する部材には、一次成型部30の部材と同様の番号を付す。但し、二次成型部40においては、一次成型部30における「A」の文字の代わりに「B」を用いる。
【0048】
一次成型部30の第1樹脂部分31と同様に、二次成型部40の第1樹脂部分41には、載置面41aが、また、第2樹脂部分42には、載置面42aが、更に、第3樹脂部分43には、載置面43aが、それぞれ設けられており、相隣り合う第2接触部62B同士の間の隙間46には樹脂部47が充填されており、また、載置面41a、42aには、それぞれ、遮蔽板70の位置を規定するための突起41b、42bが設けられている。載置面43aには、突起は設けられていないが、後述するように、遮蔽板70は、一次成型部30の載置面31a、32a、33aと、二次成型部40の載置面41a、42a、43aとの間に配した状態で組み立てられるため、いずれかの部分に突起が設けられていれば、遮蔽板70の位置を容易に定めることができる。
【0049】
図10図11は、図4乃至図6の工程を経て製造された一次成型部30と、図7乃至図9の工程を経て製造された二次成型部40を、それらの間に遮蔽板70を介して組み合わせる前の状態を示す図であって、図10は、この状態を斜視図で示したもの、図11は、その正面図である。図12図13は、それらを組み合わせた後の状態を示す図であって、図12は、上側から見た斜視図、図13は、底側から見た斜視図である。図14は、組み合わされた一次成型部30と二次成型部40がインサート成型により一体に設けられることにより三次成型部80を形成してハウジング20を生成した後の状態を示す図である。
【0050】
図10乃至図14から明らかなように、一次成型部30と二次成型部40を組み合わせる際、キャリア75によって運搬された遮蔽板70は、一次成型部30に設けた載置面31a等に載置され、且つ、二次成型部40に設けた載置面41a等に載置され、更に、載置面から突出した突起31b等によってその位置を規定される。
遮蔽板70は、載置面41a等に載置され、また、突起31等によって位置を規定される際、連結部73を通じてキャリア75に連結されたままである。従って、遮蔽板70の載置、及び、位置決めは、容易に行うことができる。また、これら遮蔽板70、連結部73、及びキャリア75は、一枚の金属板を打ち抜くことによって一体に形成され、また、その後に互いに折り曲げられることもない。従って、それらの製造も容易である。折り曲げられることはないため、遮蔽板70、特に、その第一遮蔽部分71及び第二遮蔽部分72、連結部73、及びキャリア75は、常に同一面上に存在することになる。これらを同一面上に位置させることにより、その後の処理が容易となる。
【0051】
また、このとき、二次成型部40の第樹脂部分41に設けた第2係合部41cには、例えば、凸部411cと凹部412cが、これらの順に、左から右に向かって複数の第2接触部62Bの配列方向「β」に沿って含まれ、これに対応して、一次成型部30の第1樹脂部分31に設けた第1係合部31cには、例えば、凹部312cと凸部311cが、これらの順に、左から右に向かって複数の第1接触部62Aの配列方向「β」に沿って含まれる。これら第2係合部41cと第1係合部31cは、互いに相補形状の関係にあるため、三次成型部80を形成してハウジング20を生成するにあたり、一次成型部30と二次成型部40を組み合わせた際、一次成型部30の第1係合部31cと二次成型部40の第2係合部41cは、千鳥状に噛み合うことになる。この結果、遮蔽板70は一次成型部30と二次成型部40の所定位置に確実に配置され、且つ、一次成型部30と二次成型部40の位置関係は容易に且つ確実に決定される。
【0052】
最後に、図14に示すように、一次成型部30と二次成型部40が遮蔽板70とともにインサート成型により一体に設けられる三次成型部80を形成して、ハウジング20が生成される。三次成型部80は、少なくとも、第1接触部62Aを一体に保持する第1樹脂部分(第1保持部)31と、第1接触部62Aと第1接続部63Aを連結する第1連結部64A、第2接触部62Bを一体に保持する第樹脂部分(第2保持部)41、第2接触部62Bと第2接続部63Bを連結する第2連結部64B、及び、遮蔽版70を一体に保持する保持部(第3保持部)として機能する。このとき、キャリア75と遮蔽板70を連結している連結部73は、ハウジング20の、遮蔽板70の板厚を取り巻く周縁74(図12図13)の中、嵌合部21、及び、第1接触部62Aと第2接触部62Bの露出部以外の部分から露出する。その後、端子連結部分63Aa、63Baが切断されるともに、連結部73においてハウジング20がキャリア75から切り離された後、必要に応じて、ハウジング20にシェル50が取り付けられる。この結果、ハウジング20から露出した連結部73も、ハウジング20とともにシェル50によって覆われ、外部から遮蔽される。三次成型部80を形成する際、ハウジング20の本体部22の側が樹脂で充填されるとともに、少なくとも、嵌合部21の一方の面21aと他方の面21bの間に生じている隙間51が樹脂で充填される。隙間51には、例えば、嵌合部21の一方の面21aと他方の面21bの周縁、更に言えば、嵌合部21の前側55aと側面55bによって形成されている平面視略U字形状の、嵌合部21の周縁部分の隙間が含まれる。特に前側55aの隙間には、第1端子61Aの相手コネクタとの嵌合側の端部65Aにおける隙間、更に詳細には、嵌合部21の厚み方向「γ」において端部65Aよりも二次成型部40の側に形成された窪み65Aaや、第2端子61Bの相手コネクタとの嵌合側の端部65Bにおける隙間、更に詳細には、嵌合部21の厚み方向「γ」において端部65Bよりも一次成型部30の側に形成された窪み65Baが含まれる。これらの窪み65Aa、65Baは、それぞれ、一次成型部30や二次成型部40をインサート成型する際に、金型によって端子を抑えたことによって生じたものであるが、三次成型部80を生成する際には、これらの窪み65Aa、65Baも樹脂で充填される。
【0053】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
例えば、上に説明した実施形態では、相隣り合う第1接触部62A同士の間の隙間36(図4参照)を、一次成型部30を形成するためのインサート成型時に、同様に、相隣り合う第2接触部62B同士の間の隙間46(図参照)を、二次成型部40を形成するためのインサート成型時に、樹脂で充填することとしていたが、これらを三次成型部80を形成する際に充填してもよい。
【0054】
更に、上に説明した実施形態では、折り曲げる工程は、他の工程が妨げられないのであれば、いつの時点で行ってもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1 電気コネクタ
20 ハウジング
21 嵌合部
21a 一方の面
21b 他方の面
22 本体部
25 嵌合口
30 一次成型部
31 第1樹脂部分
31a 載置面
31c 第1係合部(311c 凸部 312c 凹部)
32 第2樹脂部分
32a 載置面
32b 突起
33 樹脂部分
36 隙間
40 二次成型部
41 第1樹脂部分
41a 載置面
41c 第2係合部(411c 凸部 412c 凹部)
42 第2樹脂部分
42a 載置面
43 樹脂部分
80 三次成型部
51 隙間
50 シェル
60 端子
61A 第1端子
62A 第1接触部
63A 第1接続部
65A 端部
61B 第2端子
62B 第2接触部
63B 第2接続部
64B 第2連結部
65B 端部
70 遮蔽板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14