(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】電子機器、イベント検知方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G07C 5/00 20060101AFI20220627BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
G08G1/00 D
(21)【出願番号】P 2018041149
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】398058588
【氏名又は名称】Dynabook株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 純
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-328580(JP,A)
【文献】特開2014-137733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00- 5/12
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられる電子機器において、
前記車両に対して生じる
加速度を含む第1物理量を計測する第1センサと、
前記車両に対して生じる
角速度又は前記加速度を生じる第1方向と異なる第2方向に対して生じる加速度を含む第2物理量を計測する第2センサと、
前記第1センサによって一定時間計測された第1物理量から第1最大値を抽出し、前記第2センサによって一定時間計測された第2物理量から第2最大値を抽出し、前記第1最大値、前記第2最大値、並びに前記第1センサによって前記第1最大値が計測された第1時刻及び前記第2センサによって前記第2最大値が計測された第2時刻の関係に基づいて、前記車両に発生したイベントを検知する検知手段と
を具備する電子機器。
【請求項2】
前記検知手段は、
前記第1最大値が第1条件を満たし、
前記第2最大値が第2条件を満たし、かつ、前記第1時刻及び前記第2時刻の関係が第3条件を満たす場合に前記イベントを検知する請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1条件は、前記第1最大値が第1閾値以上であることであり、前記第2条件は、前記第2最大値が第2閾値以上であることであり、前記第3条件は、前記第1時刻が前記第2時刻よりも前であることである請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記検知手段は、前記第1物理量と第1閾値との関係、前記第2物理量と第2閾値との関係、及び前記第1時刻と前記第2時刻との関係の組み合わせに応じて前記イベントを検知する請求項1記載の電子機器。
【請求項5】
前記第1物理量及び前記第2物理量の不要成分を除去するための前処理を実行する処理手段を更に具備する請求項1記載の電子機器。
【請求項6】
車両に取り付けられる電子機器が実行するイベント検知方法であって、
第1センサによって計測された前記車両に対して生じる
加速度を含む第1物理量を取得するステップと、
第2センサによって計測された前記車両に対して生じる
角速度又は前記加速度を生じる第1方向と異なる第2方向に対して生じる加速度を含む第2物理量を取得するステップと、
前記第1センサによって一定時間計測された第1物理量から第1最大値を抽出し、前記第2センサによって一定時間計測された第2物理量から第2最大値を抽出し、前記第1最大値、前記第2最大値、並びに前記第1センサによって前記第1最大値が計測された第1時刻及び前記第2センサによって前記第2最大値が計測された第2時刻の関係に基づいて、前記車両に発生したイベントを検知するステップと
を具備するイベント検知方法。
【請求項7】
車両に取り付けられる電子機器のコンピュータによって実行されるプログラムであって、
前記コンピュータに、
第1センサによって計測された前記車両に対して生じる
加速度を含む第1物理量を取得するステップと、
第2センサによって計測された前記車両に対して生じる
角速度又は前記加速度を生じる第1方向と異なる第2方向に対して生じる加速度を含む第2物理量を取得するステップと、
前記第1センサによって一定時間計測された第1物理量から第1最大値を抽出し、前記第2センサによって一定時間計測された第2物理量から第2最大値を抽出し、前記第1最大値、前記第2最大値、並びに前記第1センサによって前記第1最大値が計測された第1時刻及び前記第2センサによって前記第2最大値が計測された第2時刻の関係に基づいて、前記車両に発生したイベントを検知するステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器、イベント検知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、例えばドライブレコーダーのような車両に取り付けられる電子機器が開発されている。
【0003】
このような電子機器においては、例えばセンサによって計測された物理量(センサデータ)に基づいて車両に発生したイベント(例えば、事故等)を検知するようなことが行われているが、当該イベントの誤検知を抑制する仕組みが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、車両に発生するイベントの誤検知を抑制することが可能な電子機器、イベント検知方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、車両に取り付けられる電子機器が提供される。前記電子機器は、第1センサと、第2センサと、検知手段とを具備する。前記第1センサは、前記車両に対して生じる加速度を含む第1物理量を計測する。前記第2センサは、前記車両に対して生じる角速度又は前記加速度を生じる第1方向と異なる第2方向に対して生じる加速度を含む第2物理量を計測する。前記検知手段は、前記第1センサによって一定時間計測された第1物理量から第1最大値を抽出し、前記第2センサによって一定時間計測された第2物理量から第2最大値を抽出し、前記第1最大値、前記第2最大値、並びに前記第1センサによって前記第1最大値が計測された第1時刻及び前記第2センサによって前記第2最大値が計測された第2時刻の関係に基づいて、前記車両に発生したイベントを検知する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る電子機器の使用態様の一例を示す図。
【
図3】電子機器の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図4】電子機器の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図5】センサデータ処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図6】イベント検知処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図7】イベント検知処理の処理手順の別の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る電子機器の使用態様の一例を示す図である。
図1に示すように、電子機器10は、例えば自動車のような車両1に取り付けられて使用されるドライブレコーダー等として実現され得る。
【0010】
本実施形態においては電子機器10がドライブレコーダーであるものとして説明するが、当該電子機器10は、車両1に取り付けられる機器であればよく、例えば、カーナビゲーションシステムに組み込まれた機器、自動車のシガーソケットに挿入されて動作する機器またはその他の車載機器等として実現されても構わない。更に、電子機器10は、車両に取り付けられたホルダーに固定されるスマートフォンまたはタブレット端末等であってもよい。
【0011】
本実施形態に係る電子機器10は、通常のドライブレコーダーの機能に加えて、当該電子機器10が取り付けられた車両1に発生する各種イベント(事象)を検知する機能を有する。なお、本実施形態において、電子機器10は、車両1が、例えば、事故を起こしたこと等をイベントとして検知する。
【0012】
図2は、
図1に示す電子機器10のシステム構成の一例を示す。
図2においては、電子機器10がドライブレコーダーである場合を想定している。
【0013】
図2に示すように、電子機器10は、CPU11、不揮発性メモリ12、主メモリ13、カメラ14、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)15、第1センサ16、第2センサ17及び無線通信デバイス18等を備える。
【0014】
CPU11は、電子機器10の各コンポーネントの動作を制御するように構成されたプロセッサである。このCPU11は、例えば不揮発性メモリ12から主メモリ13にロードされる各種プログラムを実行する。CPU11によって実行されるプログラムには、例えばオペレーティングシステム及び上記したイベントを検知するためのプログラム(以下、イベント検知プログラムと表記)等が含まれる。
【0015】
カメラ14は、例えば車両1の運転席前方の画像を撮影するCCD型またはMOS型等のイメージセンサを含む。カメラ14は、電子機器10の電源がオンされている間、常時画像を撮影する。カメラ14によって撮影された画像は、例えば不揮発性メモリ12等に格納される。なお、カメラ14は、動画に限らず、静止画も撮影可能である。
【0016】
LCD15は、例えばカメラ14によって撮影された画像等を表示可能なディスプレイデバイスである。
【0017】
第1センサ16及び第2センサ17は、上記した車両1に発生するイベントを検知するために用いられる。第1センサ16は、車両1に対して生じる第1物理量を計測し、当該第1物理量を表すセンサデータを出力する。第2センサ17は、車両1に対して生じる第2物理量を計測し、当該第2物理量を表すセンサデータを出力する。なお、第1センサ16によって計測される第1物理量及び第2センサ17によって計測される第2物理量は異なる物理量であるものとする。
【0018】
第1センサ16及び第2センサ17としては、例えば車両1に対して生じる加速度を計測可能な加速度センサ、当該車両1に対して生じる角速度を計測可能なジャイロセンサ、及び車両1の位置を計測するGNSS(Global Navigation Satellite System)センサまたはGPS(Global Positioning System)センサ等を用いることができる。
【0019】
無線通信デバイス18は、ネットワークを介して、外部装置(例えば、サーバ装置等)と無線通信を実行するように構成されたデバイスである。
【0020】
なお、本実施形態に係る電子機器10は、メモリーカードインタフェース(I/F)19を備えており、メモリーカード20を挿入可能に構成されている。メモリーカードインタフェース19を介して挿入されたメモリーカード20には、例えば不揮発性メモリ12に格納された画像(カメラ14によって撮影された画像)等を保存することができる。このメモリーカード20を他の電子機器に挿入すれば、カメラ14によって撮影された画像を当該他の電子機器等で表示することができる。
【0021】
図3は、本実施形態に係る電子機器10の機能構成の一例を示すブロック図である。ここでは、上記した車両1に発生したイベントを検知するための機能構成について主に説明する。
【0022】
図3に示すように、電子機器10は、データ取得部101、データ処理部102、イベント検知部103及びイベント処理部104を含む。
【0023】
本実施形態において、各部101~104の一部または全ては、上記したCPU11にイベント検知プログラムを実行させること、すなわちソフトウェアによって実現されるものとする。なお、各部101~104の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
【0024】
データ取得部101は、第1センサ16から出力されたセンサデータ(以下、第1センサデータと表記)を取得する。同様に、データ取得部101は、第2センサ17から出力されたセンサデータ(以下、第2センサデータと表記)を取得する。
【0025】
なお、データ取得部101は、第1センサデータ及び第2センサデータを取得する際に、当該センサデータの各々に対して発生時刻を付与する。このセンサデータに付与される発生時刻は、当該センサデータによって表される物理量が車両1に対して生じた時刻、すなわち、当該物理量が計測された時刻に相当する。
【0026】
データ処理部102は、データ取得部101によって取得された第1センサデータ及び第2センサデータを処理し、当該第1センサデータによって表される第1物理量及び当該第2センサデータによって表される第2物理量を取得する。
【0027】
イベント検知部103は、データ処理部102によって取得された第1及び第2物理量と、第1及び第2センサデータに付与されている発生時刻とに基づいて、車両1に発生したイベントを検知する。
【0028】
すなわち、本実施形態においては、第1センサ16によって計測された第1物理量及び第2センサ17によって計測された第2物理量に加えて、当該第1物理量及び第2物理量が計測された時間関係を考慮してイベントを検知する。
【0029】
イベント処理部104は、イベントが検知された場合に、当該イベントに応じた処理を実行する。
【0030】
以下、
図4のフローチャートを参照して、本実施形態に係る電子機器10の処理手順について説明する。
【0031】
まず、電子機器10の電源がオンされて当該電子機器10が起動された場合、当該電子機器10に備えられる第1センサ16及び第2センサ17は計測を開始する。
【0032】
第1センサ16及び第2センサ17による計測が開始された場合、データ取得部101は、第1センサ16から出力された第1センサデータ及び第2センサ17から出力された第2センサデータを取得する(ステップS1)。なお、第1センサ16は、計測の開始後、例えば予め定められた時間毎に第1センサデータを出力するように構成されている。第2センサ17についても同様である。
【0033】
次に、データ処理部102は、ステップS1において取得された第1センサデータ及び第2センサデータに対してセンサデータ処理を実行する(ステップS2)。なお、センサデータ処理は、第1センサデータ及び第2センサデータからイベント検知処理に必要な情報(データ)を抽出するための処理である。このセンサデータ処理の詳細については後述する。
【0034】
イベント検知部103は、センサデータ処理の結果を用いて、イベント検知処理を実行する(ステップS3)。なお、イベント検知処理は、車両1に発生したイベントを検知するための処理である。このイベント検知処理の詳細については後述する。
【0035】
イベント処理部104は、イベント検知処理の結果、イベント検知部103によってイベントが検知されたか否かを判定する(ステップS4)。
【0036】
イベントが検知されたと判定された場合(ステップS4のYES)、イベント処理部104は、当該検知されたイベントに応じた処理(以下、イベント処理と表記)を実行する。このイベント処理の具体例については後述する。
【0037】
一方、イベントが検知されていないと判定された場合(ステップS4のNO)、ステップS5の処理は実行されない。
【0038】
次に、電子機器10の電源がオフされたか否かが判定される(ステップS6)。電子機器10の電源がオフされていないと判定された場合(ステップS6のNO)、上記したステップS1に戻って処理が繰り返される。一方、電子機器10の電源がオフされたと判定された場合(ステップS6のYES)、
図4に示す処理は終了される。
【0039】
上記したように
図4に示す処理によれば、電子機器10の電源がオンしている間に車両1に発生したイベントを検出することが可能となる。
【0040】
次に、上記した
図4に示すセンサデータ処理(ステップS2の処理)及びイベント検知処理(ステップS3の処理)について詳細に説明する。
【0041】
まず、
図5のフローチャートを参照して、センサデータ処理の処理手順の一例について説明する。このセンサデータ処理は、上記したようにデータ取得部101によって第1及び第2センサデータが取得された後に、データ処理部102によって実行される。
【0042】
データ処理部102は、データ取得部101によって取得された第1センサデータ及び第2センサデータをリングバッファ(図示せず)に追加する(ステップS11)。このステップS11においてリングバッファに追加される第1及び第2センサデータは、当該第1及び第2センサデータによって表される第1及び第2物理量の生データである。なお、センサデータ(第1及び第2センサデータ)を物理量(第1及び第2物理量)に変換するための処理が必要である場合には、このステップS11の処理の前に実行される。
【0043】
ここで、リングバッファは、一時的にデータを貯めておくバッファ(領域)の一種であり、先端と終端とを連結させることにより循環的に利用されるようになっている。このようなリングバッファによれば、上記したステップS11において新たなセンサデータ(第1及び第2センサデータ)が追加される際に、当該リングバッファに格納されているセンサデータのうち最も古いセンサデータが当該新たなセンサデータによって上書きされる(つまり、最も古いセンサデータが破棄される)。これにより、リングバッファは、当該リングバッファの容量に応じた一定時間分のセンサデータを保持することができる。なお、リングバッファの容量は予め定められているものとする。
【0044】
次に、データ処理部102は、予め定められている条件を満たすか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12における条件は、ステップS13以降の処理を実行するか否かを判定するための条件であり、例えば前回のセンサデータ処理の実行から予め定められた時間が経過したこと、前回のセンサデータ処理が実行された後に予め定められた数のセンサデータがリングバッファに追加されたこと等を含む。
【0045】
条件を満たさないと判定された場合(ステップS12のNO)、上記したステップS11に戻って処理が繰り返される。この場合、例えばデータ取得部101によって新たに取得されたセンサデータ(第1センサデータ及び第2センサデータ)がリングバッファに追加される。
【0046】
一方、条件を満たすと判定された場合(ステップS12のYES)、データ処理部102は、リングバッファからセンサデータを取得する(ステップS13)。このステップS13において、データ処理部102は、リングバッファに格納されている全ての(つまり、一定時間分の)センサデータを取得する。なお、ステップS13において取得されるセンサデータには、上記した第1及び第2センサデータが含まれる。
【0047】
データ処理部102は、ステップS13において取得されたセンサデータ(第1及び第2センサデータ)に対して前処理を実行する(ステップS14)。センサデータに対して実行される前処理には、オフセット処理または平準化処理等が含まれる。
【0048】
ここで、上記した第1センサ16が例えば直交3軸(x軸、y軸及びz軸)の各軸方向の加速度を計測可能な加速度センサ(3軸加速度センサ)である場合を想定する。このような加速度センサの場合、z軸方向については重力加速度が計測されるが、当該重力加速度は本実施形態におけるイベントの検知には不要である場合がある。この場合には、加速度センサによって計測される重力加速度(オフセット)を除去するためのオフセット処理が前処理として実行されてもよい。
【0049】
また、ステップS13において取得されたセンサデータは時系列データであるが、この時系列データを平準化(平滑化)するための平準化処理(例えば、移動平均等)が前処理として実行されてもよい。
【0050】
なお、ステップS14において実行される前処理は、センサデータから不要成分(ノイズ)を除去するための処理であれば、他の処理であっても構わない。また、ステップS14における前処理は、必要に応じて実行されればよく、省略されても構わない。
【0051】
次に、データ処理部102は、ステップS14において前処理が実行されたセンサデータのうちの第1センサデータ(第1物理量)から第1特徴量を抽出する(ステップS15)。
【0052】
上記したように第1センサ16が3軸加速度センサである場合には、ステップS15において第1センサデータから抽出される第1特徴量は、当該3軸加速度センサによって一定時間計測された加速度のうちの最大値(最大加速度)とすることができる。この場合、第1特徴量は、例えば3軸加速度センサによって計測された各軸の加速度(絶対値)のうちの最大値であってもよいし、当該3軸加速度センサによって計測された各軸の加速度によって算出される加速度(車両1に対して生じた加速度)の向きを表す加速度ベクトルの絶対値の最大値(つまり、ベクトル合成値の最大値)であってもよい。
【0053】
ここで、上記したように第1センサ16から出力される第1センサデータには、当該第1センサデータによって表される第1物理量が計測された時刻(発生時刻)が付与されている。
【0054】
このため、データ処理部102は、第1特徴量が抽出された第1センサデータに付与されている発生時刻(以下、第1発生時刻と表記)を取得する(ステップS16)。なお、上記したように第1特徴量が加速度センサによって計測された最大加速度である場合、第1発生時刻は、当該最大加速度が計測された時刻である。
【0055】
また、データ処理部102は、ステップS14において前処理が実行されたセンサデータのうちの第2センサデータ(第2物理量)から第2特徴量を抽出する(ステップS17)。
【0056】
第2センサ17が例えばジャイロセンサである場合には、ステップS16において第2センサデータから抽出される第2特徴量は、当該ジャイロセンサによって一定時間計測された角速度(絶対値)のうちの最大値(最大角速度)等とすることができる。
【0057】
ここで、上記したように第2センサ17から出力される第2センサデータには、当該第2センサデータによって表される第2物理量が計測された時刻(発生時刻)が付与されている。
【0058】
このため、データ処理部102は、第2特徴量が抽出された第2センサデータに付与されている発生時刻(以下、第2発生時刻と表記)を取得する(ステップS18)。なお、上記したように第2特徴量がジャイロセンサによって計測された最大角速度である場合、第2発生時刻は、当該最大角速度が計測された時刻である。
【0059】
上記した
図5に示すセンサデータ処理によれば、第1センサデータから抽出された第1特徴量、当該第1センサデータに付与されている第1発生時刻、第2センサデータから抽出された第2特徴量及び当該第2センサデータに付与されている第2発生時刻を取得することができる。
【0060】
なお、ステップS15において抽出される第1特徴量及びステップS17において抽出される第2特徴量は、車両1に発生したイベントを検知するための指針となるものであれば、上記した以外の特徴量(値)が抽出されてもよい。
【0061】
次に、
図6のフローチャートを参照して、イベント検知処理の処理手順の一例について説明する。このイベント検知処理は、上記したようにデータ処理部102によってセンサデータ処理が実行された後に、イベント検知部103によって実行される。
【0062】
ここでは、第1センサ16が加速度センサであり、第2センサ17がジャイロセンサであり、電子機器10が取り付けられている車両1が事故を起こしたことをイベントとして検知する場合について主に説明する。
【0063】
イベント検知部103は、上記したセンサデータ処理が実行されることによって第1センサデータから抽出された第1特徴量が予め定められている条件(以下、第1条件と表記)を満たすか否かを判定する(ステップS21)。
【0064】
上記したように第1特徴量が例えば加速度センサによって一定時間計測された加速度のうちの最大値である場合には、第1条件は、当該第1特徴量が予め定められた値(閾値)以上であることを含む。
【0065】
なお、ここで説明した第1条件は一例であり、第1特徴量を用いてイベントを検知するための条件であれば、第1条件として他の条件が定められていてもよい。
2)。 第1特徴量が第1条件を満たすと判定された場合(ステップS21のYES)、センサデータ処理が実行されることによって第2センサデータから抽出された第2特徴量が予め定められている条件(以下、第2条件と表記)を満たすか否かを判定する(ステップS2
上記したように第2特徴量が例えばジャイロセンサによって一定時間計測された角速度のうちの最大値である場合には、第2条件は、当該第2特徴量が予め定められた値(閾値)以上であることを含む。
【0066】
なお、ここで説明した第2条件は一例であり、第2特徴量を用いてイベントを検知するための条件であれば、第2条件として他の条件が定められていてもよい。
【0067】
ここで、第2特徴量が第2条件を満たすと判定された場合には、例えば車両1に対して一定以上の加速度及び角速度が生じているため、車両1に衝撃が加えられたと推定し、車両1が事故を起こしたというイベントを検知することが考えられる。
【0068】
しかしながら、例えば車両1のドアを比較的強い力で閉めたような場合には、第1特徴量(加速度センサによって計測された最大加速度)が閾値を超えるような場合がある。
【0069】
また、電子機器10(例えば、ドライブレコーダー)は人手によって車両1に取り付けられるが、この取り付け作業が正常に行われておらず不備がある場合には、事故等による衝撃が発生していないような場合であっても、電子機器10が回転してしまい、第2特徴量(ジャイロセンサによって計測された最大角速度)が閾値を超える場合がある。
【0070】
このため、本実施形態においては、ステップS21において第1特徴量が第1条件を満たすと判定し、かつ、ステップS22において第2特徴量が第2条件を満たすと判定された場合(ステップS22のYES)、更にステップS23の処理を実行する。具体的には、イベント検知部103は、
図5に示すステップS16において取得された第1発生時刻及びステップS18において取得された第2発生時刻が予め定められている条件(以下、第3条件と表記)を満たすか否かを判定する(ステップS23)。
【0071】
ここで、一般的に、車両1が他の車両等に衝突するような事故が発生した場合、当該車両1に衝撃が加えられた後に当該車両1が回転するような事態となる場合がある。このような事態を想定した場合、車両1に取り付けられている電子機器10においては車両1に加えられた衝撃として最大加速度が計測され、その直後に車両1の回転に応じた最大角速度が計測されることが想定される。
【0072】
この場合、上記した第3条件を例えば第1発生時刻が第2発生時刻よりも前である(つまり、第2発生時刻-第1発生時刻>0である)こととすることができる。
【0073】
第1発生時刻及び第2発生時刻(の時間関係)がこのような第3条件を満たす、つまり、最大加速度が計測された後に最大角速度が計測されていると判定された場合(ステップS23のYES)、イベント検知部103は、車両1が事故を起こしたというイベントを検知する(ステップS24)。
【0074】
一方、ステップS21において第1特徴量が第1条件を満たさないと判定された場合、ステップS22において第2特徴量が第2条件を満たさないと判定された場合、またはステップS23において第1発生時刻及び第2発生時刻が第3条件を満たさないと判定された場合、上記したイベントは検知されない(ステップS25)。
【0075】
上記した
図6に示すイベント検知処理においてイベントが検知された場合、
図4に示すステップS5においてイベント処理が実行される。
【0076】
ここで、電子機器10が例えばドライブレコーダーであるような場合には、当該電子機器10に備えられる不揮発性メモリ12にはカメラ14によって常時撮影された車両1の運転席前方の画像が格納されている。
【0077】
上記したように車両1が事故を起こしたというイベントが検知された場合、イベント処理としては、例えば第1及び第2発生時刻を含む予め定められた期間に撮影された画像を電子機器10に挿入されているメモリーカード20に保存するような処理が実行されることができる。この場合、第1及び第2発生時刻を含む所定時間に計測されたセンサデータ(例えば、イベントが検知された際にリングバッファに格納されていたセンサデータ)についてもメモリーカード20に保存されるようにしてもよい。また、イベント処理としては、これらの画像及びセンサデータを電子機器10の外部のサーバ装置に送信する処理が実行されてもよい。このようなイベント処理によれば、上記した車両1に発生した事故を後で検証するための画像及びセンサデータを適切に保存しておくことが可能となる。
【0078】
更に、イベント処理としては、サーバ装置にイベントの発生を通知する(イベント発生通知を送信する)ような処理が実行されてもよい。このようなイベント処理によれば、上記した車両1に発生した事故の通報や当該事故現場への駆けつけサービス等を迅速に行うことが可能となる。
【0079】
なお、ここで説明したイベント処理は一例であり、イベント処理として他の処理が実行されても構わない。
【0080】
上記したように本実施形態においては、車両1に対して生じる第1物理量を計測する第1センサ16及び車両1に対して生じる第2物理量を計測する第2センサ17を備え、当該第1物理量(第1特徴量)、当該第1物理量が計測された時刻(第1発生時刻)、第2物理量及び当該第2物理量計測された時刻(第2発生時刻)に基づいて、車両1に発生したイベントを検知する。
【0081】
具体的には、第1物理量(例えば、加速度)が第1条件を満たし、第2物理量(例えば、角速度)が第2条件を満たし、かつ、第1発生時刻及び第2発生時刻の関係が第3条件を満たす場合にイベントが検知される。
【0082】
本実施形態においては、このような構成により、例えば第1物理量及び第2物理量のみからイベントを検知する場合と比較して、当該第1物理量及び第2物理量の発生時刻(つまり、第1条件を満たす第1物理量と第2条件を満たす第2物理量との時間的な前後関係)をも考慮してイベントを検知するため、イベントの誤検知を抑制することが可能となる。
【0083】
また、本実施形態においては、第1物理量(第1センサデータ)及び第2物理量(第2センサデータ)の不要成分を除去するための前処理を実行することによって、イベントの検知精度を更に向上させることが可能となる。
【0084】
ここで、本実施形態においては、例えば第1センサ16が加速度センサであり、第2センサ17がジャイロセンサであり、車両1が事故を起こしたというイベントを検知する場合について主に説明したが、上記したように第1センサ16及び第2センサ17は加速度及び角速度以外の物理量を計測する他のセンサであってもよい。第1センサ16または第2センサ17としては、加速度センサ及びジャイロセンサ以外に例えばGNSSセンサ等を用いることができるが、このようなセンサを用いた場合には、当該センサによって計測された車両1の位置や速度等の変化量を上記した特徴量として抽出して利用することが可能である。
【0085】
また、本実施形態において、第1センサ16によって計測される第1物理量及び第2センサ17によって計測される第2物理量は異なる物理量であるが、当該異なる物理量とは、例えば3軸加速度によって計測されるX軸方向の加速度及びY軸方向の加速度等であっても構わない。この場合には、第1センサ16及び第2センサ17としてそれぞれ異なる加速度センサを備える構成としてもよいし、当該第1センサ16及び第2センサ17を一体とし、1つの3軸加速度センサを備える構成としてもよい。
【0086】
また、本実施形態においては、上記したように例えば車両1が他の車両等に衝突するような事故が発生した場合には当該車両1に衝撃が加えられた後に当該車両1が回転するという事態を想定し、第1発生時刻(最大加速度が計測された時刻)が第2発生時刻(最大角速度が計測された時刻)よりも前であることが第3条件であるものとして説明したが、電子機器10において検知されるイベントは車両1が事故を起こしたというイベントに限られない。
【0087】
すなわち、上記した第3条件は、第1センサ16によって計測される第1物理量及び第2センサ17によって計測される第2物理量の組み合わせや検知されるイベントの内容(種類)等に応じて、例えば第1発生時刻が第2発生時刻よりも後であることであってもよい。
【0088】
また、本実施形態においては、主に第1特徴量の発生(例えば、最大加速度の計測)と第2特徴量の発生(例えば、最大角速度の計測)の順序に基づいて第3条件を満たすか否かが判定されるものとして説明したが、当該順序に加えて、第1発生時刻と第2発生時刻との差分(つまり、最大加速度の計測と最大角速度の計測との間隔)が予め定められた値(閾値)以下であること等を第3条件としてもよい。
【0089】
更に、第1特徴量の発生と第2特徴量の発生との順序は関係なく、第1発生時刻と第2発生時刻との差分が予め定められた値以下であることのみを第3条件としてもよい。
【0090】
また、本実施形態においては、上記した
図6に示すイベント検知処理が実行されるものとして説明したが、第1物理量、第1発生時刻、第2物理量及び第2発生時刻に基づいてイベントを検知するのであれば、
図6に示すイベント検知処理とは異なる処理が実行されてもよい。
【0091】
具体的には、
図6に示すイベント検知処理に代えて、例えば
図7に示すようなイベント検知処理が実行されてもよい。なお、
図7に示すイベント検知処理は、例えば第1特徴量が第1条件を満たし、かつ、第2特徴量が第2条件を満たさない場合にイベントが検知される点が
図6に示すイベント検知処理と異なっている。本実施形態においては、
図7に示すイベント検知処理以外であっても、例えば第1物理量と第1閾値との関係、第2物理量と第2閾値との関係、及び第1発生時刻と第2発生時刻との関係の様々な組み合わせに応じてイベントを検知することができる。
【0092】
すなわち、誤検知を抑制しつつ、適切にイベントを検知することが可能であれば、上記したイベント検知処理は、第1物理量(第1特徴量)及び第2物理量(第2特徴量)の組み合わせや検知されるイベントの内容に応じて適宜変更されても構わない。
【0093】
なお、本実施形態においては電子機器10において
図4に示す処理が実行されるものとして説明したが、当該処理の一部が例えば外部のサーバ装置等で実行される構成としても構わない。
【0094】
また、本実施形態においては上記したようにリングバッファにセンサデータを格納しておくものとして説明したが、電子機器10によって実行されるセンサデータ処理及びイベント検知処理は、当該リングバッファに格納された一定時間分のセンサデータに基づいて実行される。この場合、リングバッファの容量が過度に大きいと、リングバッファにセンサデータが格納される一定時間のうちに複数のイベントが発生するような場合には、適切にイベントを検知することができない可能性がある。一方、リングバッファの容量が過度に小さいと、効率的な処理の妨げとなる可能性がある。このため、本実施形態においては、例えば電子機器10のユーザまたは外部のサーバ装置の管理者等によってリングバッファの容量(サイズ)を変更可能な構成としてもよい。
【0095】
更に、上記したイベント検知処理における第1~第3条件等において設定される各種閾値等についても、イベントの検知精度に影響を与えるものであるため、電子機器10のユーザまたはサーバ装置の管理者等によって変更可能としてもよい。
【0096】
なお、上記したリングバッファの容量及び各種閾値については、自動的に更新されるようにしてもよい。具体的には、例えば上記したイベント検知処理の結果(イベントの検知またはイベントの非検知)に対する正誤を示す情報をユーザ等の指示あるいは他のデータベースの参照等に基づいてサーバ装置に登録(蓄積)しておくことによって、誤りであったイベント検知処理の結果が正しくなるようにリングバッファの容量及び各種閾値を自動的に更新することができる。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
10…電子機器、11…CPU、12…不揮発性メモリ、13…主メモリ、14…カメラ、15…LCD、16…第1センサ、17…第2センサ、18…無線通信デバイス、19…メモリーカードインタフェース、20…メモリーカード、101…データ取得部、102…データ処理部、103…イベント検知部、104…イベント処理部。