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  • 特許-振動素子用の台座、振動子及び発振器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】振動素子用の台座、振動子及び発振器
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/05 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
H03H9/05
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018101612
(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公開番号】P2019208104
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆司
(72)【発明者】
【氏名】生駒 和将
【審査官】橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-253883(JP,A)
【文献】特開2012-090202(JP,A)
【文献】特開2010-135890(JP,A)
【文献】特開2015-039162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動素子が搭載され、パッケージの基板に設置される振動素子用の台座であって、
本体が、
当該本体の長辺に沿って形成され、前記基板と接触する2つの接続部と、
前記接続部より前記本体の内側で前記長辺に沿って形成される2つの隙間部と、
前記2つの隙間部で挟まれ、前記振動素子が搭載される搭載部と、
前記搭載部の短辺から前記本体の短辺側に延びる延設部と、
前記本体の四隅に形成され、前記延設部と前記接続部とを接続する連結部とを有し、
前記接続部は、前記基板側に突出しており、
前記連結部は、前記搭載部より厚みを薄く、前記接続部より幅を狭くしたことを特徴とする台座。
【請求項2】
連結部は、円弧形状に湾曲した形状としたことを特徴とする請求項1記載の台座。
【請求項3】
延設部が、搭載部の短辺の幅より狭い形状で本体の短辺側に延びて形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の台座。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載の台座に振動素子を搭載し、パッケージの表面凹部の底面の基板に設置したことを特徴とする振動子。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか記載の台座に振動素子を搭載し、パッケージの表面凹部の底面の基板に設置し、前記パッケージの裏面凹部に発振回路を搭載したことを特徴とする発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動素子を搭載する台座に係り、特に、外部からの振動への耐性を向上させ、位相雑音特性を良好にできる振動素子用の台座、振動子及び発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来の水晶振動子では、パッケージ及びパッケージ外部からの水晶片に与える影響を抑制する構成として、主に水晶から成る台座(水晶台座)を用いる構成が知られている。
また、パッケージを表裏に凹部が形成されたH構造とし、表側に水晶片と水晶台座を搭載し、裏面に発振回路のIC(Integrated Circuit)を搭載した水晶発振器がある。
パッケージの表面又は裏面に温度補償回路を設けた温度補償型水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)がある。
【0003】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特許第3017750号公報「水晶振動子」(特許文献1)、特許第4715252号公報「圧電振動子」(特許文献2)、特開2013-098678号公報「水晶振動子」(特許文献3)がある。
【0004】
特許文献1には、保持用水晶板に振動用水晶片を搭載する位置に凹部を形成し、その凹部によって形成される隙間で振動用水晶片を確実に励振させ、励振用水晶片の長手方向での熱によるストレスを発生させない水晶振動子が示されている。
【0005】
特許文献2には、基板における熱膨張の影響を小さくするために、隙間を有するスプリング部を備える圧電振動子が示されている。
特許文献3には、温度変化に伴う水晶片の変形を防ぎ、良好な周波数温度特性が得られる構成の水晶振動子が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3017750号公報
【文献】特許第4715252号公報
【文献】特開2013-098678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の水晶振動子又は水晶発振器における水晶台座では、外部からの振動が水晶片に影響してしまい、その振動によって位相雑音特性が劣化するという問題点があった。
【0008】
尚、特許文献1~3には、セラミック等の基板と接触する電極部分の厚みを厚くし、水晶片を搭載する搭載部を薄くして基板から浮かせ、電極部分と搭載部を接続する部分を更に薄くして、外部からの振動への耐振動特性(耐振性)を向上させる構成の記載がない。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、外部からの振動の影響を抑えて耐振性を向上させ、位相雑音特性を良好にできる振動素子用の台座、振動子及び発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、振動素子が搭載され、パッケージの基板に設置される振動素子用の台座であって、本体が、当該本体の長辺に沿って形成され、基板と接触する2つの接続部と、接続部より本体の内側で長辺に沿って形成される2つの隙間部と、2つの隙間部で挟まれ、振動素子が搭載される搭載部と、搭載部の短辺から本体の短辺側に延びる延設部と、本体の四隅に形成され、延設部と接続部とを接続する連結部とを有し、接続部が、基板側に突出しており、連結部が、搭載部より厚みを薄く、接続部より幅を狭くしたことを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記台座において、連結部が、円弧形状に湾曲した形状としたことを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記台座において、搭載部が、当該搭載部の短辺の幅より狭い形状で本体の短辺側に延びて形成される2つの延設部を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明は、振動子であって、上記台座に振動素子を搭載し、パッケージの表面凹部の底面の基板に設置したことを特徴とする。
【0016】
本発明は、発振器であって、上記台座に振動素子を搭載し、パッケージの表面凹部の底面の基板に設置し、パッケージの裏面凹部に発振回路を搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、本体の長辺に沿って形成され、基板と接触する2つの接続部と、接続部より本体の内側で長辺に沿って形成される2つの隙間部と、2つの隙間部で挟まれ、振動素子が搭載される搭載部と、搭載部の短辺から本体の短辺側に延びる延設部と、本体の四隅に形成され、延設部と接続部とを接続する連結部とを有し、接続部が、基板側に突出しており、連結部が、搭載部より厚みを薄く、接続部より幅を狭くした台座としているので、外部からの振動が接続部に伝達したとしても、連結部によって吸収して延設部を介して搭載部への伝達を防止でき、位相雑音特性を良好にできる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発振器の概略図である。
図2】本台座の表面説明図である。
図3】本台座の長辺側面説明図である。
図4】本台座の短辺側面説明図である。
図5】本台座の裏面説明図である。
図6】本台座の表面斜視図である。
図7】本台座の裏面斜視図である。
図8】本台座の応用例の表面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る振動素子用の台座(本台座)は、長辺に沿ってパッケージの基板に接続する接続部と、当該接続部の内側に長辺に沿って形成された隙間部と、隙間部で挟まれた、振動素子の搭載部と、搭載部を短辺方向に延設した延設部と、延設部と接続部を連結する連結部とを有するものであり、外部からの振動が接続部に伝達したとしても、連結部によって吸収して搭載部への伝達を防止でき、位相雑音特性を良好にできるものである。
【0020】
また、本発明の実施の形態に係る振動子は(本振動子)は、本台座に振動素子を搭載し、凹部を有するパッケージに台座を設置したものである。
また、本発明の実施の形態に係る発振器(本発振器)は、本振動子のパッケージの裏面凹部に発振回路を搭載したものである。
【0021】
[本発振器:図1
本発振器について図1を参照しながら説明する。図1は、本発振器の概略図である。
本発振器は、図1に示すように、水晶片2と、水晶片2を搭載する台座1と、台座1を表面凹部に収容して当該凹部の底面(基板)に搭載するパッケージ3と、パッケージ3の裏面凹部に搭載される発振回路(IC)4と、パッケージ3の表面周囲に形成されるシームリング5と、蓋となるリッド6とを基本的に備えている。
例えば、水晶片2は、厚みすべり振動が奨励されるATカットが用いられる。
【0022】
[本発振器の各部]
本発振器の各部について具体的に説明する。
台座1は、例えば、耐熱プラスチック等の樹脂、ガラス、絶縁膜が表面にコーティングされた金属等の絶縁材料で形成される。
また、台座1は、水晶片2と同様の水晶(水晶片2と同じATカットやZ板)により形成してもよい。その場合、台座1と水晶片2の熱膨張係数は略等しく、温度変化に伴う応力は発生しない。台座1の詳細は後述する。
【0023】
水晶片2は、台座1に導電性接着剤で固定されて搭載される。
水晶片2の表面及び裏面には、励振電極が形成され、台座1の電極パターンに導電性接着剤で接続される。
尚、台座1に搭載される振動素子として、ATカットの水晶片2からなる水晶共振子を用いたが、例えば、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振子、その他の圧電振動子や微小電子機械システム(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)振動子等の振動子の発振素子(振動素子)を用いてもよい。
【0024】
パッケージ3は、セラミック等で形成され、表面及び裏面の両面に凹部が形成された断面H型の形状となっており、表面凹部に台座1及び水晶片2を収納し、当該凹部の底面(基板)に台座1を搭載し、裏面凹部に発振回路4を収容して搭載している。
パッケージ3への台座1と発振回路4の搭載は、半田等で固定されるようになっている。
【0025】
発振回路(IC)4は、パッケージ3の裏面凹部に収納され、その凹部の底面(基板)に搭載される。尚、当該IC4以外の温度補償回路をパッケージ3の表面基板又は裏面基板に設けてもよい。温度補償回路を備えると、温度補償型水晶発振器(TCXO)となる。
【0026】
シームリング5は、シーム封止を行うためにパッケージ3の表面周囲に銀(Ag)ロウ等で形成される。
リッド6は、蓋となるもので、コバールをニッケルメッキしたもの等が用いられ、シームリング5に接着するよう形成される。
【0027】
[本台座:図2~7]
次に、本台座について図2~7を参照しながら説明する。図2は、本台座の表面説明図であり、図3は、本台座の長辺側面説明図であり、図4は、本台座の短辺側面説明図であり、図5は、本台座の裏面説明図であり、図6は、本台座の表面斜視図であり、図7は、本台座の裏面斜視図である。
本台座1は、図2に示すように、本体の2つの長辺に沿って内側に形成された隙間部10c,10dと、隙間部10c,10dによって挟まれ、水晶片2が搭載される中央の搭載部11と、搭載部11の短辺から本体短辺側に延びる延設部12と、4つの角部で円弧形状に湾曲する連結部13と、搭載部11の長辺に並行に設けられ、パッケージ3の基板(底面)に形成された電極に接続する接続部14とを備えている。
連結部13は、湾曲して腕のような構造となっているため、アーム部と呼ぶことがある。
【0028】
つまり、本台座1は、長方形状の搭載部11を囲むように、連結部13と接続部14が形成され、搭載部11と連結部13とが延設部12で接続された構成である。
そして、搭載部11の長辺に沿って2つのコの字状の隙間部10c,10dが形成されている。当該隙間部10c,10dは本台座1の表裏を貫通している。
【0029】
ここで、搭載部11の短辺の幅に比べて延設部12の幅(図2の延設部12における縦方向の長さ)が狭くなっている。それによって、隙間部10c,10dが上下に向けて開く、コの字状となっている。延設部12を搭載部11の長辺側ではなく短辺側に設けて、更に搭載部11の幅よりも狭くすることで、より大きな柔軟性(弾性)を備えるものである。
【0030】
また、接続部14は、他の構成部に比べてパッケージ3の下側(基板側)に突出している。つまり、パッケージ3の基板に接触するのは、接続部14だけとなる。
また、接続部14は、図2,5~7に示すように、連結部13の幅に比べて広い幅となっている。パッケージ3の基板との接合面積を増やすことができる一方、連結部13を狭い幅とすることで、連結部13がたわんで柔軟性(弾性)を備えるものとなる。
【0031】
そして、本台座1の表面には、図2に示すように、電極パターン10a,10bが形成されている。電極パターン10a,10bは、金等の金属の薄膜で形成される。
具体的には、水晶片2と重なる部分に導電性接着剤が塗布される方形のパターンがあり、そこから近い延設部12側に引き出されて、連結部13を介して接続部14の右側の端部までパターンが形成される。
【0032】
更に、電極パターン10a,10bは、図3,4,6に示すように、連結部13の側面と接続部14の側面にも形成されている。
また、図5,7に示すように、本台座1の裏面において、連結部13と接続部14の裏側にも電極パターン10a,10bが形成されている。
また、導電性接着剤は、水晶片2の四隅近傍に形成されて、水晶片2を固定するものである。
【0033】
まず、搭載部11の部分の厚みをa、連結部13の厚みbとすると、関係は、a>bとなる。そして、接続部14の厚みcは、c>a>bの関係となる。
つまり、パッケージ3の基板に接触する接続部14の厚みcが最も厚く、厚みbが最も薄い厚みとなっている。
【0034】
これは、接続部14の厚みを最も厚くすることで、接続部14の底面だけをパッケージ3の基板に接続して、連結部13、延設部12及び搭載部11を基板から浮かせる構成とするものである。
これにより、外部から振動が接続部14に加わったとしても、その振動を連結部13と延設部12が吸収して緩和できる構成である。そのため、基板で発生した振動の影響が搭載部11に搭載された水晶片2に及ぶものとはならない。
【0035】
また、連結部13の厚みを最も薄くしたことにより、連結部13が応力に対する柔軟性を備える構成となり、振動の影響を吸収しやすくするものである。更に、搭載部11の厚みを連結部13の厚みより厚くし、剛性を高めることにより、複数の連結部13からの応力による搭載部11自体の変形を防ぐことができる。これにより、搭載部11と水晶片2との間の応力の発生を抑え、耐振性と耐衝撃性を向上させることができる。
【0036】
[本台座の応用例:図8
本台座の応用例について図8を参照しながら説明する。図8は、本台座の応用例の表面説明図である。
応用例の本台座1は、図8に示すように、電極パターンの形状が対角に形成されるもので、搭載部11の中心点を点対称に形成されている。
この場合も、水晶片2の四隅近傍で導電性接着剤により本台座1に固定される。
応用例では、電極パターンのバリエーションを示したものである。
【0037】
また、本台座1では、搭載部11、延設部12、連結部13及び接続部14の各表面の平面を同じ高さの平面(面一)として、裏面に搭載部11、延設部12及び接続部14を突出させた構成としているが、本台座1の別の応用例として、搭載部11、延設部12及び連結部13の裏面の平面を面一として、表面に搭載部11と延設部12が突出する構成であってもよい。
【0038】
[実施の形態の効果]
本台座1及び応用例の本台座1によれば、接続部14の裏側の電極パターンがパッケージ3の基板に形成された電極パターンと半田により固定され、隙間部10c,10dで囲まれた搭載部11には、連結部13と延設部12で接続する構成としているので、外部からの振動が接続部14に伝達したとしても、連結部13によって吸収して搭載部11への伝達を防止でき、位相雑音特性を良好にできる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、外部からの振動の影響を抑えて耐振性を向上させ、位相雑音特性を良好にできる水晶片用の台座、水晶振動子及び水晶発振器に好適である。
【符号の説明】
【0040】
1…台座、 2…水晶片、 3…パッケージ、 4…発振回路(IC)、 5…シームリング、 6…リッド、 10a,10b…電極パターン、 10c,10d…隙間部、 11…搭載部、 12…延設部、 13…連結部、 14…接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8