(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】現在位置管理システム
(51)【国際特許分類】
B65G 61/00 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
B65G61/00 526
(21)【出願番号】P 2018110172
(22)【出願日】2018-06-08
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】507212768
【氏名又は名称】株式会社三菱ケミカルホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】般谷 徹
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0246091(US,A1)
【文献】特開2007-334901(JP,A)
【文献】特開2014-015295(JP,A)
【文献】特開2003-081440(JP,A)
【文献】特開2004-231402(JP,A)
【文献】特開2018-070334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 61/00
B65G 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物の現在位置管理システムであって、
前記貨物に備えられる貨物位置通報装置と所定領域に設置される貨物位置管理装置とを含み、
前記貨物位置通報装置は、前記貨物に関する情報である貨物情報を記憶する貨物情報記憶手段と、前記所定領域の位置情報を記憶している領域情報記憶手段と、前記貨物の現在位置を測定して位置情報を出力する測位手段と、前記貨物が前記所定領域に接近したか否かを判定する判定手段と、前記貨物が前記所定領域に接近したと判定手段が判定したときに、前記貨物が前記所定領域に接近したことを前記貨物位置管理装置に通知する
接近通知信号を出力する接近通知手段と
、貨物情報、位置情報、接近通知信号を前記貨物位置管理装置に
通信網を介して送信する送信手段と、それぞれ予め設定されたタイミングで前記貨物情報記憶手段に記憶されている貨物情報、前記測位手段が出力している前記貨物の現在の位置情報、前記接近通知手段が出力する接近通知信号
を前記送信手段に与える通信制御手段と、を有し、
前記貨物位置管理装置は、前記貨物位置通報装置から送信される接近通知信号と貨物情報を受信する受信手段と、受信した貨物情報を表示する表示手段とを有し、
前記貨物位置管理装置は、出発空港の荷捌き場および到着空港の荷捌き場の貨物位置管理装置である、
ことを特徴とする現在位置管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の現在位置管理システムにおいて、
前記貨物位置通報装置は、出発空港の荷捌き場の所定距離手前に接近したときに、前記接近通知信号を送信し、
前記出発空港の荷捌き場の貨物位置管理装置は、前記貨物位置通報装置からの前記接近通知信号を受信すると、荷捌きの準備作業を開始し、
前記貨物位置通報装置は、貨物が航空機に搭載されると通信禁止の状態になり、
前記貨物位置通報装置は、到着空港に着陸して到着空港の前記荷捌き場の手前まで移動したときに、通信禁止の状態が解除され、前記接近通知信号を送信し、
前記到着空港の荷捌き場の貨物位置管理装置は、前記貨物位置通報装置からの前記接近通知信号信号を受信すると、荷捌きの準備作業を開始する、
ことを特徴とする現在位置管理システム。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の現在位置管理システムにおいて、
前記貨物位置管理装置は、受信した貨物情報と位置情報を表示する表示手段を有することを特徴とする現在位置管理システム。
【請求項4】
請求項
1から3のいずれか1項に記載の現在位置管理システムにおいて、
前記貨物位置管理装置は、受信した貨物情報に基づいて前記貨物の予約受付処理を行う予約受付処理手段をも有することを特徴とする現在位置管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在位置管理システム、すなわち、輸送される貨物の現在位置を管理するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
貨物には、集荷されてから配達されるまで可及的短時間で輸送されることが求められるものがある。たとえば、医療分野では、移植用臓器、検体、輸血用血液や血液製剤などがあり、食料分野では、肉や魚介類などの生鮮食料品がある。これらはいずれも品質維持を必要とするものである。しかし、短時間輸送が望まれる貨物には、これら以外に、たとえば緊急配達を必要とする重要書類等が含まれる場合もある。本明細書では、これらの短時間輸送が望まれる貨物を緊急貨物という場合がある。
【0003】
このような緊急貨物は、重要性のゆえに、貨物が荷主(または荷主側集配所。以下、同じ。)を出発してから配達先に到着するまで、今どこに在るか(時刻と所在位置)および貨物の状況を管理することが望まれる。
【0004】
本出願人は、特許文献1において、貨物に相当する通箱に収容された物品に付されているその物品に関する情報(物品情報)を読取装置により読取って荷主および/または受取人の物品管理装置に送信することにより、輸送中の物品の所在位置、安全性および保全性の確認ならびに輸送中に事故が発生した場合の迅速な対応を可能にする、次のような物品輸送管理方法を提案した。
【0005】
その物品輸送管理方法は、次のような通箱を用いる。通箱は、読取装置として、内部通信用アンテナと外部通信用アンテナと電源とを含むRFIDリーダライタを備える。また、通箱は、通箱の現在位置を測定して位置情報を出力する測位手段と、通箱の受ける衝撃、通箱内の温度または湿度の少なくとも一つを検出して環境情報を出力する環境センサとを有するとともに、位置情報と環境情報を物品管理装置に送信する送信手段を有する。また、その物品輸送管理方法は、RFIDタグが取り付けられた物品を通箱の中に収容し、RFIDリーダライタと内部通信用アンテナとRFIDタグのアンテナとの間で通信をさせ、RFIDタグに記録されている物品情報をRFIDリーダライタで読み取って記憶する。通箱はこの状態で輸送される。輸送者(運転手)が携帯端末を操作するたびに、携帯端末はRFIDリーダライタの外部通信用アンテナとの間で通信して、受信した物品情報、位置情報および環境情報を、インターネットなどの電気通信回線を介して荷主および/または受取人の物品管理装置に伝送する。
【0006】
特許文献1の物品輸送管理方法は、陸上を輸送される物品を適用対象としたものである。同方法を空輸される貨物に適用すれば、貨物が荷主を出発してから出発空港に到着するまでの陸上輸送区間、および到着空港から受取人(または受取人側集配所。以下、同じ。)に到着するまでの陸上輸送区間は、輸送者(運転手)の携帯端末から送られる貨物情報に基づいて荷主および/または受取人の物品管理装置において貨物の現在位置および状況を追跡的に知ることができる。
【0007】
ところが、空港には、航空機の運航安全確保のため通信禁止エリアが設定されている。通信禁止エリア内では、作動時に通信用電波を発射する電子機器で、航空機外の設備と無線通信を行うもの、すなわち、航空機の運航の安全に支障を及ぼすおそれがある電子機器は、離陸する航空機の全ての乗降口が閉ざされた時から航空機が到着空港での着陸後の滑走が終了するまでは、使用が禁止されている(航空法施行規則第164条の15四)。
【0008】
特許文献1の物品輸送管理方法を使用する物品輸送管理装置の送信手段として、航空機外の設備と無線通信を行う通信機を使用する場合は、この通信機は、上記航空機の運航の安全に支障を及ぼすおそれがある電子機器に該当する。したがって、特許文献1の物品輸送管理方法を空輸貨物に適用することができない。
【0009】
貨物が空輸される場合、貨物が出発空港に到着してから空路を経て到着空港において客(輸送業者または受取人)に引き渡されるまでの流れ、すなわち貨物輸送の流れは、出発空港の荷捌き場での(a)予約受付、(b)貨物の受託(トラックからの貨物の取り降ろし、貨物の状態・個数・仕向地および搭載予定便の確認)、(c)ULD(Unit Load Device)への積み付け、(d)貨物の搭載、(e)運航乗務員への情報伝達の終了後、その貨物を搭載した航空機が出発空港を離陸し、到着空港に着陸すると、機体が滑走路から所定のスポットへ誘導された後、到着空港の荷捌き場での(f)ULD取り降ろし(荷役車両による貨物の取り降ろし)、(g)ULD解体(個々の貨物の書類判定・貨物の状態確認・上屋内保管)、(h)貨物の客による引き取り、となる。(非特許文献1)
【0010】
なお、出発空港で航空機の全ての乗降口が閉ざされた時は、機体曳行前に客に対して予め電子機器の使用禁止を求める機内アナウンスがされ、また、到着空港での着陸滑走終了後に、貨物の引き取りの前に客に対して予め到着を知らせる機内アナウンスがされる。そして、引き取りの際に貨物の状態確認がされて引き渡される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【文献】日本貨物航空株式会社ホームページ2017.10.06
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、出発空港の荷捌き場での予約受付、貨物の受託、ULD(Unit Load Device)への積み付けおよび貨物の搭載には、それなりの時間がかかる。とりわけ予約受付作業は、貨物が荷捌き場に到着した後に、順番を待って開始されるので時間がかかる。また、到着空港の荷捌き場でのULD取り降ろしおよびULD解体にも、それなりの時間がかかる。したがって、緊急貨物を通常貨物と同様の要領で荷捌きをすれば、緊急貨物に対する短時間輸送の要請に応えることは困難である。よって、緊急貨物に対する短時間輸送の要請に応えるためには、何らかの工夫・改善が必要である。
【0014】
本発明者らは、特許文献1の物品輸送管理方法を空輸貨物に適用するに当たり、緊急貨物に対する短時間輸送の要請に応えるために改善策を追求した。その改善策は、出発空港および到着空港での荷捌きに要する時間を短縮することである。
【0015】
荷捌き時間を短縮するには、緊急貨物が出発空港に到着する前に予約受付および貨物の受託の準備が開始され、出発空港に到着した時は、予約受付、貨物の受託、ULDへの積み付けおよび貨物の搭載が速やかに行われることが望ましい。また、到着空港では、航空機が到着空港に着陸後、速やかに、ULD取り降ろしおよびULD解体後の客による貨物の引き取りのための準備が開始されることが望ましい。
しかし、特許文献1の物品輸送管理方法を空輸貨物に適用しても、空港の荷捌き場では貨物の現在位置を事前に知ることができない。したがって、現状では荷捌きの準備行為を事前に行うことができない。
【0016】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、第1の目的は、航空機外の設備と無線通信を行う通信機を備えた空輸貨物の輸送管理を、荷主側集配所から空路を経て受取人側集配所に届くまでの全経路を通して行うことができる現在位置管理システムを提供することにある。第2の目的は、出発空港および到着空港での荷捌きの所要時間の短縮を可能にする現在位置管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一側面は、上記第1の目的を達成するため、貨物の現在位置管理システムであって、その現在位置管理システムは、貨物位置通報装置を含む。
前記貨物位置通報装置は、貨物に備えられ、その貨物に関する情報である貨物情報を記憶する貨物情報記憶手段と、所定領域の位置情報を記憶している領域情報記憶手段と、貨物の現在位置を測定して位置情報を出力する測位手段と、貨物情報記憶手段から出力される貨物情報と測位手段が出力する位置情報を送信する送信手段と、測位手段が出力する位置情報を領域情報記憶手段の領域情報と比較して貨物が所定領域に到達したか否かを判定する判定手段と、貨物が第1の所定領域に到達したと判定手段が判定した時は送信手段の送信を禁止し、第2の所定領域に到達したと判定した時は送信手段の送信の禁止を解除する通信制御手段とを有することを特徴とする。
【0018】
本発明の他側面は、上記第2の目的を達成するため、貨物の現在位置管理システムであって、その現在位置管理システムは、貨物位置通報装置と貨物位置管理装置とを含む。
前記貨物位置通報装置は、貨物に備えられ、その貨物に関する情報である貨物情報を記憶する貨物情報記憶手段と、所定領域の位置情報を記憶している領域情報記憶手段と、貨物の現在位置を測定して位置情報を出力する測位手段と、貨物が所定領域に接近したか否かを判定する判定手段と、貨物が所定領域に接近したと判定手段が判定したときに、貨物が所定領域に接近したことを貨物位置管理装置に通知する接近通知手段と、通信制御手段と、送信手段とを有する。
【0019】
通信制御手段は、それぞれ予め設定されたタイミングで貨物情報記憶手段に記憶されている貨物情報、測位手段が出力している貨物の現在の位置情報、接近通知手段が出力する接近通知信号を送信手段に与える。送信手段はSIM付き通信機で構成され、貨物情報、位置情報、接近通知信号を貨物位置管理装置に送信する。貨物位置管理装置は、貨物位置通報装置から送信される接近通知信号と貨物情報を受信する受信手段と、受信した貨物情報を表示する表示手段とを有する。
【0020】
前記所定領域は、たとえば出発空港および到着空港であり、貨物位置管理装置は、出発空港および到着空港の荷捌き場に設けられる。貨物位置管理装置は、受信した貨物情報に基づいてその貨物の予約受付処理を行う予約受付処理手段を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によれば、貨物が第1の所定領域、たとえば出発空港に到達したときは、通信機は通信を禁止され、貨物が第2の所定領域、たとえば到着空港に到達したときは、通信機は通信の禁止を解除される。したがって、貨物は第1の所定領域から第2の所定領域までの間が通信禁止エリアであっても、現在位置管理システムを通信禁止エリアで通信障害を来すことなく、そのまま使用することができる。
【0022】
請求項2に係る発明によれば、貨物が所定領域に接近すると、貨物位置通報装置からその接近した貨物の貨物情報と接近通知信号が貨物位置管理装置に送信され、貨物情報と接近の事実が表示される。したがって、所定領域においては貨物が接近した段階で、すなわち到着する前に貨物情報に基づいてその貨物に対応する作業の準備を行うことができるから、作業時間の短縮が可能である。
【0023】
前記貨物位置管理装置が、出発空港および到着空港の荷捌き場の貨物位置管理装置である場合は、貨物が出発空港に接近した時に荷捌きの準備の開始が可能であるから、貨物が出発空港の荷捌き場に到着した時は、荷捌き(とくに予約受付、貨物の受託、ULDへの積み付けおよび貨物の搭載)が速やかに行われることが期待される。また、航空機が到着空港に着陸後の滑走を終了した時に荷捌きの準備開始が可能であるから、貨物が到着空港の荷捌き場に到着した時は、ULD取り降ろしおよびULD解体後の客による貨物の引き取りが速やかに行われることが期待される。よって、出発空港および到着空港での荷捌き所要時間の短縮、すなわち、貨物の空港滞在時間の短縮が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る現在位置管理システムの基本的構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の発明に係る現在位置管理システムの貨物位置通報装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】第1の発明に係る現在位置管理システムの適用例を説明する図である。
【
図4】第2の発明に係る現在位置管理システムの貨物位置通報装置に備えられる手段を例示するブロック図である。
【
図5】貨物位置通報装置の具体例を示すブロック図である。
【
図6】
図3の貨物位置管理装置に備えられる手段を例示するブロック図である。
【
図7】貨物の移動経路と貨物位置管理装置の設置位置および現在位置管理システムの作用を説明する図である。
【
図8】貨物が
図7における出発空港に接近する場合の作用を説明する図である。
【
図9】貨物が
図7における到着空港に接近する場合の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
≪第1の発明≫
以下に、第1の発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
本発明に係る現在位置管理システムは、基本的構成として、
図1に示すように、貨物位置通報装置10と貨物位置管理装置20とを有する。
【0027】
図2は、第1の発明の一実施の形態に係る現在位置管理システムの貨物位置通報装置10の構成の一例を示す。貨物位置通報装置10は、コンピュータで構成され、輸送対象となる貨物に備えられる。貨物位置管理装置20は、同一の構成を有するものが、荷主側集配所と受取人側集配所にそれぞれ設置される。そして、貨物位置通報装置10は、インターネット等を介して各貨物位置管理装置20との間で無線通信が可能である。
【0028】
貨物位置通報装置10は、貨物に関する情報である貨物情報を記憶する貨物情報記憶手段である貨物情報メモリ1と、所定領域の位置情報を記憶する領域情報記憶手段である領域情報メモリ2と、貨物の現在位置を測定して位置情報を出力する測位手段であるGPS(Global Positioning System)3と、貨物が所定領域内に存在するか否かを判定する判定部4と、貨物情報メモリ1の出力する貨物情報を貨物位置管理装置20に無線通信により送信する送信部5と、判定部4が貨物は所定領域内に存在すると判定したとき送信部5の送信を禁止し、所定領域内に存在しなくなったと判定したとき送信部5の送信禁止を解除する通信制御部6とを有する。通信制御部6は、貨物位置通報装置10に電源を供給するバッテリー(図示せず)の出力線に設けたON/OFFスイッチ(図示せず)で構成することができる。
【0029】
貨物情報メモリ1に記憶される貨物情報は、たとえば、荷主名、貨物名(または物品名)、貨物の特質などの注意事項、受取人名などを含む。領域情報メモリ2は、所定領域、たとえば出発空港および到着空港の通信禁止エリアをその経度・緯度データで記憶している。
【0030】
貨物位置管理装置20は、貨物位置通報装置10から送信される位置情報と貨物情報を受信する受信部7と、受信した位置情報と貨物情報を表示する表示部8とを有する。
【0031】
上記構成により、貨物位置通報装置10を備えた貨物を搭載した輸送車が荷主側集配所から
図3に例示するように出発空港AP1に到着する直前までは、判定部4は貨物が所定領域内に存在すると判定しないので、送信部5は貨物情報を貨物位置管理装置20に送信する。したがって、貨物位置管理装置20は、特定の貨物が出発空港至近位置まで到着したことを知ることができる。
【0032】
しかし、その輸送車が出発空港AP1の通信禁止エリアcpa1に進入すると、すなわち、GPS3の位置情報が通信禁止エリアcpa1の進入地点p1以内の領域データと一致すると、判定部4は貨物が所定領域に到達したと判定するので、通信制御部6が送信部5の無線通信を禁止する。すなわち、以後、貨物位置通報装置10は出発空港AP1の通信禁止エリアcpa1内での航空機の運航安全に支障を及ぼすおそれがある無線通信を行わない。
通信制御部6が送信部5の無線通信を禁止したときは、貨物位置通報装置10の表示部(図示せず)に無線通信が禁止されたことを表示することが望ましい。
【0033】
そして、出発空港AP1に到着した貨物は、荷捌き場で外部との通信ができないULDに収容される。したがって、そのULDを搭載した航空機が出発空港AP1を離陸し、空路を航行中は、貨物位置通報装置10は航空機の運航安全に支障を及ぼすおそれがある無線通信を行わない。
【0034】
航空機が到着空港AP2に着陸し、滑走を終了した後、航空機から引き下ろされた貨物が再び輸送車に搭載されて到着空港A2の通信禁止エリアcpa2から進出した時は、判定部4は貨物が所定領域内に存在しないと判定するので、通信制御部6が送信部5の無線通信の禁止を解除する。したがって、その後は、貨物位置通報装置10は貨物の位置情報と貨物情報を貨物位置管理装置20に送信することができる。
【0035】
≪第2の発明≫
以下に、第2の発明の実施の形態について、
図4以下の図面を参照しつつ説明する。
【0036】
[構成]
第2の発明の一実施の形態に係る現在位置管理システムは、
図1の現在位置管理システムと同様に、貨物位置通報装置10’と貨物位置管理装置20’を有する。
図4は、貨物位置通報装置10’の一例を示す。
【0037】
貨物位置通報装置10’は、コンピュータで構成され、輸送対象となる貨物に備えられる。そして、貨物位置通報装置10’は、貨物位置管理装置20’との間でインターネット等を介して無線通信が可能である。貨物位置管理装置20’は、空港の荷捌き場、荷主および/または受取人に設置される。貨物は、それ単独で現在位置の把握が要求されるものであるが、複数の物品を収容して搬送する通箱もこの貨物に含まれる。
【0038】
貨物位置通報装置10’は、貨物位置管理装置20’との間で直接に送信することに代えて、貨物位置通報装置10’からインターネット等を介してクラウド(図示せず)に送信し、そのクラウドから貨物位置管理装置20’に転送するようにしてもよい。
【0039】
<貨物位置通報装置>
貨物位置通報装置10’は、各貨物に備えられる。貨物位置通報装置10’は、
図4に示すように、貨物に関する情報である貨物情報を記憶する貨物情報メモリ11と、所定領域の位置情報を記憶している領域情報メモリ12と、貨物の現在位置を測定して位置情報を出力するGPS13と、貨物が所定領域に接近したか否かを判定する接近判定部14と、接近判定部14が貨物が所定領域に接近したと判定したときに、貨物が所定領域に接近したことを貨物位置管理装置20’に通知する接近通知部15と、各手段の送信タイミングを制御する通信制御部16と、送信部17とを有する。
【0040】
貨物情報メモリ11には、貨物位置通報装置10’が取付けられている貨物についての情報である貨物情報が記憶されている。貨物情報には、たとえば、荷主名、貨物名(または物品名)、貨物の特質などの注意事項、受取人名などが含まれる。貨物情報メモリ11には、輸送される貨物が特定されるたびに、その貨物に対応する貨物情報が記憶される。貨物が通箱である場合は、その通箱に収容されている物品についての物品情報が記憶される。
【0041】
領域情報メモリ12に記憶される位置情報は、予め設定する多数の所定地点の経度・緯度のデータである。所定地点は、文字通り1点ではなく、その周辺の一定範囲の領域を含む。したがって、位置情報は、各領域の一群の経度・緯度データを含む。
【0042】
GPS13が出力する位置情報は、貨物位置管理装置20’にも送信される。
【0043】
接近判定部14は、GPS13が出力する位置情報を領域情報メモリ12に記憶されている領域情報と照合して、位置情報が領域情報に近似のときは、貨物が所定領域に接近したと判定して接近判定信号を出力する。接近通知部15は、接近判定信号を入力すると、貨物が所定領域に接近したことを意味する接近通知信号を出力する。
【0044】
通信制御部16は、それぞれ予め設定されたタイミングで貨物情報メモリ11に記憶されている貨物情報、GPS13が出力している貨物の現在位置を示す位置情報、接近通知手段15が出力する接近通知信号を送信部17に与える。送信部17はSIM付き通信機で構成され、貨物情報、位置情報および接近通知信号を暗号化して貨物位置管理装置20’に送信する。暗号化するのは貨物情報のみでもよい。
【0045】
図5は、貨物位置通報装置10’の具体例を示す。RFIDタグ31は、上記貨物情報メモリ11に相当するものであり、既知の記録装置によりこのタグが取付けられる貨物の貨物情報が記録されている。32は、
図4の貨物情報メモリ11以外の手段12~17をモジュール化したものであり、このモジュール32は、RFIDタグ31から近距離無線通信により貨物情報を読み取るRFID R/W(リーダライタ)33、その読み取った貨物情報を記憶する貨物情報メモリ34、GPS35、領域情報メモリ36、接近判定部37および送信機38を有している。そして、接近判定部37が接近判定信号を出力すると、送信機38がその時の位置情報と貨物情報を暗号化して貨物位置管理装置20’に送信する。暗号化するのは貨物情報のみでもよい。
【0046】
<貨物位置管理装置>
貨物位置管理装置20’は、
図6に示すように、貨物位置通報装置10’から送信される貨物情報、位置情報および接近通知信号を受信する受信部21と、その受信した内容を表示する表示部22と、現在時刻を出力する時計部23と、受信した内容を貨物別に区分し、その貨物についての貨物情報と、その貨物情報と位置情報を受信した時刻および位置とを表示部22に見やすく表示する処理部24と、それらの貨物情報、受信時刻および受信位置を貨物ごとに記録する記録部25とを有する。
【0047】
[作用]
次に、現在位置管理システムXの作用について
図7,8,9を参照しながら説明する。
荷主側の集配センターA1において運送車に載せられた貨物からは、貨物位置通報装置10’により位置情報と貨物情報とが送信されている。これらの情報は、インターネットCを介してして荷主側の集配センターA1、出発空港の荷捌き場B1、目的空港の荷捌き場B2、および受取人側の集配センターA2の貨物位置管理装置20’A1,20’B1, 20’B2, 20’A2に送信され、表示パネルに表示される。
【0048】
一例として、領域情報メモリ36には、出発空港B1の荷捌き場から所定距離手前の領域と貨物(ULD)の機体への搭載位置の領域情報および到着空港B2の荷捌き場から所定距離手前の領域と貨物(ULD)の機体からの取り降ろし位置の領域情報が記録されているとする。
この例の場合は、集配センターA1を出発した貨物が、
図8に示すように、出発空港B1から所定距離手前の領域に進入した時に、GPS13が出力する位置情報が領域情報メモリに記憶されている所定距離手前の領域の領域情報と一致するため、その貨物は出発空港B1に接近したと判定され、接近通知信号と貨物情報が出発空港の荷捌き場B1の貨物位置管理装置20’B1に送信される。
【0049】
したがって、貨物位置管理装置20’B1の表示部22にその貨物が出発空港B1に接近したことと、貨物情報が表示される。これに基づき、出発空港B1の荷捌き場ではその貨物について荷捌きの準備作業を開始することができる。そして、その貨物が出発空港B1の荷捌き場に到着した時は、貨物情報に基づいて直ちに荷捌き作業を開始することができるので、貨物の出発空港B1での滞在時間の短縮が可能である。したがって、緊急貨物に対する短時間輸送の要請に応えることができる。
【0050】
また、出発空港B1の荷捌き場で貨物を積み付けたULDが機体への搭載位置まで搬送されると、GPS13が出力する位置情報が領域情報メモリ12に記憶されている搭載位置の領域情報と一致するため、貨物が搭載位置に存在すると判定される。このため、
図5の通信機38が通信禁止の状態になる。よって、ULDの機体への搭載を終了し、離陸する航空機の全ての乗降口が閉ざされた時から、航空機の運航の安全に支障を及ぼすおそれがある電子機器の使用が禁止される前に、貨物の通信機38の使用を阻止することができる。
【0051】
上述したように、離陸する航空機の全ての乗降口が閉ざされた時は、その直後に電子機器の使用禁止の機内アナウンスが流される。したがつて、この機内アナウンスを音声認識手段により検出すれば、その検出信号を用いて通信機38を通信禁止の状態にすることもできる。この場合は、GPS13と搭載位置の領域情報によるULD搭載位置到着判定に基づいて通信機38の通信を禁止する方法を用いる必要は無い。
【0052】
図7において、貨物を搭載した航空機が出発空港B1を離陸した後、
図9に示すように、到着空港B2に着陸して滑走を終了し、その貨物が到着空港B2の荷捌き場から所定距離手前まで移動した時は、GPS13の位置情報が領域情報メモリ12に記憶されている領域情報と一致するため、貨物が到着空港B2に接近したことが判定され、接近通知信号と貨物情報が到着空港B2の貨物位置管理装置20’B2に送信される。
【0053】
したがって、貨物位置管理装置20’B2の表示部22にその貨物が到着空港B2に接近したことと貨物情報が表示される。これに基づき、到着空港B2の荷捌き場ではその貨物について荷捌きの準備作業を開始することができる。そして、その貨物が到着空港B2の荷捌き場B1に到着した時は、直ちに荷捌き作業を開始することができるので、貨物の到着空港B2での滞在時間の短縮が可能である。したがって、緊急貨物に対する短時間輸送の要請に応えることができる。
【0054】
また、貨物を搭載した航空機が到着空港B2の荷捌き場から所定距離手前まで移動した時は、貨物位置通報装置10’の通信制御部6が送信部5に対して行っていた無線通信の禁止を解除する。これに基づき、送信部5は貨物の現在位置情報、すなわち、所定の到着空港に到着したこと、およびその貨物の貨物情報を荷主側集配センターおよび受取人側集配センターの貨物位置管理装置20’A1,20’A2に送信することが好ましい。
【0055】
好ましい実施の形態では、貨物位置管理装置20’に貨物位置通報装置10’から受信した貨物情報に基づいて、その貨物の予約受付処理を行う予約受付処理部(図示せず)を備えることが望ましい。予約受付処理部は、予約受付の際に表示されている貨物情報に基づいて、貨物に付着される取扱票などに、その貨物の輸送先(目的空港)、貨物取扱注意、緊急貨物表示等を記載することができる。すなわち、空輸貨物の取扱の促進と安全性確保に有利である。
【0056】
現在位置管理システムXの電源としては、リチウム電池やその他の電池を使用可能であるが、リチウム電池の発熱または出火による事故を回避したい場合は、非リチウム電池を用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
図1
10,10’ 貨物位置通報装置
1 貨物情報メモリ
2 領域情報メモリ
3 GPS
4 判定部
5 送信部
6 通信制御部
20,20’ 貨物位置管理装置
7 受信部
8 表示部
図2
AP1 出発空港
cpa1 通信禁止エリア
AP2 到着空港
cpa2 通信禁止エリア