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特許7094803回転子積層鉄心及び回転子積層鉄心の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】回転子積層鉄心及び回転子積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20220627BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
H02K1/22 A
H02K15/02 F
H02K15/02 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018125923
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020005478
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】蓮尾 裕介
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163761(JP,A)
【文献】特開平02-264411(JP,A)
【文献】特開2004-357347(JP,A)
【文献】特開2005-051897(JP,A)
【文献】特開2012-023900(JP,A)
【文献】特開2008-289286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/22
H02K 1/27
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1~第N(Nは2以上の自然数)のブロック体が積層された積層体を備え、
前記第1~第Nのブロック体のうち第m(mは1~Nのうちの任意の自然数)のブロック体は、
複数の打抜部材が第mのカシメによって相互に締結されることで構成されており、
高さ方向に延びる第mの磁石挿入孔と、高さ方向に延びる第mの位置決め部とを含み、
前記第1~第Nのブロック体が積層された状態で、前記第1~第Nのカシメは高さ方向において一致しており、前記第1~第Nの位置決め部は高さ方向において一致しているが、前記第1~第Nのブロック体のうち高さ方向において隣り合う少なくとも一組の第n(nは1~N-1のうちの任意の自然数)のブロック体と第n+1のブロック体との間で前記第n及び第n+1の磁石挿入孔は周方向においてずれており、
前記第nのブロック体の下端面から突出する前記第nのカシメの突起は前記第n+1のブロック体の上端面に位置する前記第n+1のカシメの窪み内に収容されているが、前記第nのブロック体と前記第n+1のブロック体とは前記第n及び第n+1のカシメによって締結されていない、回転子積層鉄心。
【請求項2】
前記第1のブロック体の上端面に配置された第1の端面板と、
前記第Nのブロック体の下端面に配置された第2の端面板とをさらに備え、
前記第2の端面板は、前記第Nのブロック体の下端面から突出する前記第Nのカシメの突起が収容される収容凹部を含む、請求項1に記載の回転子積層鉄心。
【請求項3】
前記積層体は、前記第1~第N(Nは3以上の自然数)のブロック体が積層されて構成されており、
前記第1のブロック体と前記第Nのブロック体との間で前記第1及び第Nの磁石挿入孔は高さ方向において一致している、請求項1又は2に記載の回転子積層鉄心。
【請求項4】
前記第1~第Nの位置決め部は、凸条、凹溝又は貫通孔である、請求項1~3のいずれか一項に記載の回転子積層鉄心。
【請求項5】
第1~第N(Nは2以上の自然数)のブロック体を得ることであって、前記第1~第Nのブロック体のうち第m(mは1~Nのうちの任意の自然数)のブロック体は、複数の打抜部材が第mのカシメによって相互に締結されることで構成されており、高さ方向に延びる第mの磁石挿入孔と高さ方向に延びる第mの位置決め部とを含むことと、
前記第1~第Nのカシメ同士が高さ方向において一致し、前記第1~第Nの位置決め部同士が高さ方向において一致し、前記第1~第Nのブロック体のうち高さ方向において隣り合う少なくとも一組の第n(nは1~N-1のうちの任意の自然数)のブロック体と第n+1のブロック体との間で前記第n及び第n+1の磁石挿入孔が周方向においてずれるように、前記第1~第Nのブロック体を積層して、積層体を得ることとを含み、
前記積層体を得ることは、前記第nのブロック体と前記第n+1のブロック体とが前記第n及び第n+1のカシメによって締結されないように、前記第nのブロック体の下端面から突出する前記第nのカシメの突起を前記第n+1のブロック体の上端面に位置する前記第n+1のカシメの窪み内に収容することを含む、回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項6】
前記第1のブロック体の上端面に第1の端面板を配置することと、
第2の端面板に形成された収容凹部内に前記第Nのブロック体の下端面から突出する前記第Nのカシメの突起が収容されるように、前記第Nのブロックの下端面に前記第2の端面板を配置することとをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記積層体を得ることは、前記第1のブロック体と前記第Nのブロック体との間で前記第1及び第Nの磁石挿入孔が高さ方向において一致するように、前記第1~第N(Nは3以上の自然数)のブロック体を積層することを含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1~第Nの位置決め部は、凸条、凹溝又は貫通孔である、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転子積層鉄心及び回転子積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数のブロック体を含む回転子積層鉄心を開示している。各ブロック体はそれぞれ、複数の磁石挿入孔と、一対のキーとを含む。複数の磁石挿入孔は、一対のキーの対向方向を基準にして、所定角度ずれている。複数のブロック体のうち高さ方向において隣り合うブロック体同士は、裏表反転するように積層されている。この場合、回転子積層鉄心の周面に現れる磁極は、上下に隣接するブロック体の間で周方向にずれる。これにより、回転軸に対して磁極を傾斜させるスキューの効果(トルクリップル、振動、騒音等の低減)が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-051896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、積層鉄心は、高さ方向において複数の打抜部材がカシメにより相互に締結されることにより構成される。具体的には、カシメは、打抜部材の表面側に形成された窪みと、打抜部材の裏面側に形成された突起とで構成されている。一の打抜部材のカシメの窪みには、他の打抜部材のカシメの突起が嵌合される。そのため、積層体の最下層をなす打抜部材に形成されているカシメの突起は、積層体の下端面よりも外側に突出することがある。この場合、複数のブロック体を積層したときに、カシメの突起が隣接するブロック体に干渉し、ブロック体同士の間に隙間が発生してしまうことがある。従って、占積率(回転子積層鉄心の全体の体積のうち打抜部材の体積が占める割合)の低下に伴い、モータの出力密度が低下しうる。
【0005】
そこで、本開示は、スキューの効果を発揮しつつ占積率の向上を図ることが可能な回転子積層鉄心及び回転子積層鉄心の製造方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つの観点に係る回転子積層鉄心は、第1~第N(Nは2以上の自然数)のブロック体が積層された積層体を備える。第1~第Nのブロック体のうち第m(mは1~Nのうちの任意の自然数)のブロック体は、複数の打抜部材が第mのカシメによって相互に締結されることで構成されており、高さ方向に延びる第mの磁石挿入孔と、高さ方向に延びる第mの位置決め部とを含む。第1~第Nのブロック体が積層された状態で、第1~第Nのカシメは高さ方向において一致しており、第1~第Nの位置決め部は高さ方向において一致しているが、第1~第Nのブロック体のうち高さ方向において隣り合う少なくとも一組の第n(nは1~N-1のうちの任意の自然数)のブロック体と第n+1のブロック体との間で第n及び第n+1の磁石挿入孔は周方向においてずれている。第nのブロック体の下端面から突出する第nのカシメの突起は第n+1のブロック体の上端面に位置する第n+1のカシメの窪み内に収容されているが、第nのブロック体と第n+1のブロック体とは第n及び第n+1のカシメによって締結されていない。
【0007】
本開示の他の観点に係る回転子積層鉄心の製造方法は、第1~第N(Nは2以上の自然数)のブロック体を得ることであって、前記第1~第Nのブロック体のうち第m(mは1~Nのうちの任意の自然数)のブロック体は、複数の打抜部材が第mのカシメによって相互に締結されることで構成されており、高さ方向に延びる第mの磁石挿入孔と高さ方向に延びる第mの位置決め部とを含むことと、前記第1~第Nのカシメ同士が高さ方向において一致し、前記第1~第Nの位置決め部同士が高さ方向において一致し、前記第1~第Nのブロック体のうち高さ方向において隣り合う第n(nは1~N-1のうちの任意の自然数)のブロック体と第n+1のブロック体との間で前記第n及び第n+1の磁石挿入孔同士が周方向においてずれるように、前記第1~第Nのブロック体を積層して、積層体を得ることとを含む。前記積層体を得ることは、前記第nのブロック体と前記第n+1のブロック体とが前記第n及び第n+1のカシメによって締結されないように、前記第nのブロック体の下端面から突出する前記第nのカシメの突起を前記第n+1のブロック体の上端面に位置する前記第n+1のカシメの窪み内に収容することを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る積層鉄心及び積層鉄心の製造方法によれば、スキューの効果を発揮しつつ占積率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、回転子の一例を示す分解斜視図である。
図2図2(a)は上側のブロック体の上面図であり、図2(b)は下側のブロック体の上面図である。
図3図3は、上側のブロック体の磁石挿入孔と下側のブロック体の磁石挿入孔との位置関係を説明するための図である。
図4図4は、図3のIV-IV線断面図である。
図5図5は、回転子積層鉄心の製造装置の一例を示す概略図である。
図6図6は、打抜装置の一例を示す概略図である。
図7図7は、打抜部材を積層させる機構と、ブロック体をダイプレートから排出する機構とを模式的に示す断面図である。
図8図8は、打抜加工のレイアウトの一例を示す図である。
図9図9は、積層体の他の例を側方から見た様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0011】
[回転子の構成]
まず、図1図4を参照して、回転子1(ロータ)の構成について説明する。回転子1は、固定子(ステータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)を構成する。本実施形態において、回転子1は埋込磁石型(IPM)モータを構成する。回転子1は、回転子積層鉄心2(回転子鉄心)と、シャフト3とを含む。
【0012】
回転子積層鉄心2は、積層体10と、端面板4,5とを含む。積層体10は、2つのブロック体BL1,BL2が積層されて構成されている。
【0013】
ブロック体BL1は、図1及び図2(a)に示されるように、円筒状を呈している。ブロック体BL1の中央部には、中心軸Axに沿って延びるようにブロック体BL1を貫通する軸孔BL1aが設けられている。軸孔BL1aは、ブロック体BL1の高さ方向(積層方向)に延びている。本実施形態においてブロック体BL1は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。
【0014】
軸孔BL1aの内周面には、一対の突条BL1b(位置決め部)が形成されている。突条BL1bは共に、ブロック体BL1の上端面から下端面に至るまで高さ方向に延びている。一対の突条BL1bは、中心軸Axを間において対向しており、ブロック体BL1の内周面から中心軸Axに向けて突出している。
【0015】
ブロック体BL1には、矩形状を呈する複数の磁石挿入孔BL11が形成されている。磁石挿入孔BL11は、中心軸Axに沿って延びるようにブロック体BL1を貫通している。すなわち、磁石挿入孔BL11は高さ方向に延びている。磁石挿入孔BL11は、ブロック体BL1の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。具体的には、ブロック体BL1には、2つの磁石挿入孔BL11がブロック体BL1の外周縁側に向けて広がるV字状を呈するように組をなしており、8組の磁石挿入孔BL11が中心軸Ax周りにおいて略45°ごとに配置されている。磁石挿入孔BL11の位置、形状及び数は、モータの用途、要求される性能などに応じて変更してもよい。
【0016】
各磁石挿入孔BL11内には、永久磁石BL12が挿入されている。これにより、ブロック体BL1の周面にN極とS極とが交互に発現する。永久磁石BL12の形状は、特に限定されないが、本実施形態では直方体形状を呈している。永久磁石BL12の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
【0017】
永久磁石BL12は、磁石挿入孔BL11内において、固化樹脂BL13によって固定されている。固化樹脂BL13は、永久磁石BL12が挿入された後の磁石挿入孔BL11内に溶融状態の樹脂材料(溶融樹脂)が充填された後に当該溶融樹脂が固化したものである。固化樹脂BL13は、永久磁石BL12を磁石挿入孔BL11内に固定する機能と、上下方向で隣り合う打抜部材W1同士を接合する機能とを有する。固化樹脂BL13を構成する樹脂材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。
【0018】
ブロック体BL1は、複数の打抜部材W1が積み重ねられて構成されている。打抜部材W1は、後述する電磁鋼板ESが所定形状に打ち抜かれた板状体であり、ブロック体BL1に対応する形状を呈している。ブロック体BL1は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材を積層することをいう。転積は、主にブロック体の板厚偏差を相殺することを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
【0019】
積層方向において隣り合う打抜部材W1同士は、カシメ部BL14によって締結されている。具体的には、カシメ部BL14は、図4に示されるように、最下層以外の打抜部材W1に形成されたカシメBL15と、最下層の打抜部材W1に形成された貫通孔BL16とを含む。
【0020】
カシメBL15は、打抜部材W1の表面(上面)側に形成された窪みBL15aと、打抜部材W1の裏面(仮面)側に形成された突起BL15bとで構成されている。カシメBL15は、例えば、全体として山型状を呈している。このような形状のカシメBL15は、「V字形カシメ」とも言われる。
【0021】
一の打抜部材W1の窪みBL15aは、当該一の打抜部材W1の表面側に隣り合う他の打抜部材W1の突起BL15bと嵌合している。一の打抜部材W1の突起BL15bは、当該一の打抜部材W1の裏面側において隣り合うさらに他の打抜部材W1の窪みBL15aと嵌合している。
【0022】
貫通孔BL16は、カシメBL15の外形に対応した形状を呈する長孔である。カシメBL15がV字形カシメである場合、貫通孔BL16は矩形状を呈する。貫通孔BL16には、打抜部材W1に隣接する打抜部材W1の突起BL15bが嵌合している。貫通孔BL16は、ブロック体を連続して製造する際、既に製造されたブロック体に対し、続いて形成された打抜部材がカシメ(突起)によって締結されるのを防ぐ機能を有する。
【0023】
図4に示されるように、カシメBL15の突起BL15bの先端部は、貫通孔BL16から外方に突出している。すなわち、カシメBL15の突起BL15bの先端部は、ブロック体BL1の下端面から若干突出している。
【0024】
ブロック体BL2は、図1及び図2(b)に示されるように、円筒状を呈している。ブロック体BL2の中央部には、中心軸Axに沿って延びるようにブロック体BL2を貫通する軸孔BL2aが設けられている。軸孔BL2aは、ブロック体BL2の高さ方向(積層方向)に延びている。本実施形態においてブロック体BL2は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。
【0025】
軸孔BL2aの内周面には、一対の突条BL2b(位置決め部)が形成されている。突条BL2bは共に、ブロック体BL2の上端面から下端面に至るまで高さ方向に延びている。一対の突条BL2bは、中心軸Axを間において対向しており、ブロック体BL2の内周面から中心軸Axに向けて突出している。
【0026】
ブロック体BL2には、矩形状を呈する複数の磁石挿入孔BL21が形成されている。磁石挿入孔BL21は、中心軸Axに沿って延びるようにブロック体BL2を貫通している。すなわち、磁石挿入孔BL21は高さ方向に延びている。磁石挿入孔BL21は、ブロック体BL2の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。具体的には、ブロック体BL2には、2つの磁石挿入孔BL21がブロック体BL2の外周縁側に向けて広がるV字状を呈するように組をなしており、8組の磁石挿入孔BL21が中心軸Ax周りにおいて略45°ごとに配置されている。磁石挿入孔BL21の位置、形状及び数は、モータの用途、要求される性能などに応じて変更してもよい。
【0027】
各磁石挿入孔BL21内には、永久磁石BL22が挿入されている。これにより、ブロック体BL2の周面にN極とS極とが交互に発現する。永久磁石BL22の形状は、特に限定されないが、本実施形態では直方体形状を呈している。永久磁石BL22の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
【0028】
永久磁石BL22は、磁石挿入孔BL21内において、固化樹脂BL23によって固定されている。固化樹脂BL23は、永久磁石BL22が挿入された後の磁石挿入孔BL21内に溶融状態の樹脂材料(溶融樹脂)が充填された後に当該溶融樹脂が固化したものである。固化樹脂BL23は、永久磁石BL22を磁石挿入孔BL21内に固定する機能と、上下方向で隣り合う打抜部材W2同士を接合する機能とを有する。固化樹脂BL23を構成する樹脂材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。
【0029】
ブロック体BL2は、複数の打抜部材W2が積み重ねられて構成されている。打抜部材W2は、後述する電磁鋼板ESが所定形状に打ち抜かれた板状体であり、ブロック体BL2に対応する形状を呈している。ブロック体BL2は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。
【0030】
積層方向において隣り合う打抜部材W2同士は、カシメ部BL24によって締結されている。具体的には、カシメ部BL24は、図4に示されるように、最下層以外の打抜部材W2に形成されたカシメBL25と、最下層の打抜部材W2に形成された貫通孔BL26とを含む。
【0031】
カシメBL25は、打抜部材W2の表面(上面)側に形成された窪みBL25aと、打抜部材W2の裏面(仮面)側に形成された突起BL25bとで構成されている。カシメBL25は、例えば、全体として山型状を呈している。このような形状のカシメBL25は、「V字形カシメ」とも言われる。
【0032】
一の打抜部材W2の窪みBL25aは、当該一の打抜部材W2の表面側に隣り合う他の打抜部材W2の突起BL25bと嵌合している。一の打抜部材W2の突起BL25bは、当該一の打抜部材W2の裏面側において隣り合うさらに他の打抜部材W2の窪みBL25aと嵌合している。
【0033】
貫通孔BL26は、カシメBL25の外形に対応した形状を呈する長孔である。カシメBL25がV字形カシメである場合、貫通孔BL26は矩形状を呈する。貫通孔BL26には、打抜部材W2に隣接する打抜部材W2の突起BL25bが嵌合している。貫通孔BL26は、ブロック体を連続して製造する際、既に製造されたブロック体に対し、続いて形成された打抜部材がカシメ(突起)によって締結されるのを防ぐ機能を有する。
【0034】
図4に示されるように、カシメBL25の突起BL25bの先端部は、貫通孔BL26から外方に突出している。すなわち、カシメBL25の突起BL25bの先端部は、ブロック体BL2の下端面から若干突出している。
【0035】
ここで、図3に示されるように、ブロック体BL1,BL2が積層された状態で、ブロック体BL1の突条BL1bとブロック体BL2の突条BL2bとは、高さ方向において一致している。そのため、突条BL1b,BL2bは全体として、シャフト3を取り付けるためのキー部材として機能する。
【0036】
ブロック体BL1,BL2が積層された状態で、ブロック体BL1のカシメ部BL14とブロック体BL2のカシメ部BL24とは、高さ方向において一致している。このとき、図4に示されるように、ブロック体BL1の下端面から若干突出しているカシメBL15の突起BL15bは、隣り合うブロック体BL2の最上層に位置する打抜部材W2におけるカシメBL25の窪みBL25a内に収容されている。そのため、ブロック体BL1,BL2の間に隙間が生じ難くなっている。ブロック体BL1の下端面からの突起BL15bの突出量は僅かであるので、当該突起BL15bは窪みBL25aとは嵌合していない。すなわち、ブロック体BL1とブロック体BL2とは、カシメBL15,BL25によって締結されていない。
【0037】
図1及び図3に示されるように、ブロック体BL1,BL2が積層された状態で、ブロック体BL1の磁石挿入孔BL11とブロック体BL2の磁石挿入孔BL21とは、ブロック体BL1,BL2の周方向においてずれている。すなわち、磁石挿入孔BL11,BL21は、高さ方向において一致していない。具体的には、回転子積層鉄心2の磁極の数がX個である場合、磁石挿入孔BL11は、上方から見て、磁石挿入孔BL21に対して0.5°~(360°/X/2)程度ずれていてもよい。
【0038】
端面板4,5は、図1に示されるように、円環状を呈している。すなわち、端面板4,5の中央部にはそれぞれ、端面板4,5を貫通する軸孔4a,5aが設けられている。
【0039】
端面板4の内周面には、一対の突起4bが形成されている。一対の突起4bは、中心軸Axを間において対向しており、端面板4の内周面から中心軸Axに向けて突出している。端面板5の内周面には、一対の突起5bが形成されている。一対の突起5bは、中心軸Axを間において対向しており、端面板5の内周面から中心軸Axに向けて突出している。
【0040】
端面板4は、積層体10(ブロック体BL1)の上端面に配置されている。すなわち、端面板4は、ブロック体BL1の最上層の打抜部材W1を覆っている。端面板5は、積層体10(ブロック体BL2)の下端面に配置されている。すなわち、端面板5は、ブロック体BL2の最下層の打抜部材W2を覆っている。端面板4,5は、積層体10と一体化されていてもよい。
【0041】
図1及び図4に示されるように、端面板5の上面には、収容凹部5cが形成されている。収容凹部5cは、ブロック体BL2のカシメ部BL24に対応するように位置している。ブロック体BL2の下端面に端面板5が取り付けられた状態において、ブロック体BL2の下端面から若干突出しているカシメBL25の突起BL25bは、図4に示されるように、収容凹部5c内に収容されている。
【0042】
端面板4,5は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等によって構成されていてもよい。当該ステンレス鋼としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304等)が挙げられる。端面板4,5は、非磁性材料以外によって構成されていてもよい。
【0043】
シャフト3は、全体として円柱状を呈している。シャフト3には、一対の凹溝3aが形成されている。凹溝3aは、シャフト3の一端から他端にかけてシャフト3の延在方向に延びており、キー溝として機能する。シャフト3は、軸孔BL1a,BL2a,4a,5a内に挿通されている。このとき、凹溝3aには、突条BL1b,BL2b及び突起3b,4bが係合する。これにより、シャフト3と回転子積層鉄心2との間で回転力が伝達する。
【0044】
[回転子積層鉄心の製造装置]
続いて、図5を参照して、回転子積層鉄心2の製造装置100について説明する。製造装置100は、帯状の金属板である電磁鋼板ES(被加工板)から回転子積層鉄心2を製造するための装置である。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120(送出部)と、打抜装置130と、コントローラ150(制御部)とを備える。
【0045】
アンコイラー110は、コイル状に巻回された帯状の電磁鋼板ESであるコイル材111が装着された状態で、コイル材111を回転自在に保持する。送出装置120は、電磁鋼板ESを上下から挟み込む一対のローラ121,122を有する。一対のローラ121,122は、コントローラ150からの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板ESを打抜装置130に向けて間欠的に順次送り出す。
【0046】
コントローラ150は、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120及び打抜装置130をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、送出装置120及び打抜装置130に送信する。
【0047】
[打抜装置]
続いて、図5図7を参照して、打抜装置130について説明する。打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板ESを順次打抜加工して打抜部材W1,W2を形成する機能と、打抜加工によって得られた打抜部材W1,W2を順次積層しつつ重ね合わせてブロック体BL1,BL2を製造する機能とを有する。
【0048】
打抜装置130は、図5及び図6に示されるように、ベース131と、下型132と、ダイプレート133と、ストリッパ134と、上型135と、天板136、プレス機137(駆動部)と、吊り具138と、パンチA1~A6と、位置決めピンB1~B6とを有する。ベース131は、ベース131に載置された下型132を支持する。
【0049】
下型132は、下型132に載置されたダイプレート133を支持する。下型132には、電磁鋼板ESから打ち抜かれた材料(例えば、打抜部材W1,W2、廃材等)が排出される排出孔C1~C6が、パンチA1~A6に対応する位置にそれぞれ設けられている。排出孔C6内には、図7に示されるように、シリンダ132aと、ステージ132bと、プッシャ132cとが配置されている。
【0050】
シリンダ132aは、パンチA6によって電磁鋼板ESから打ち抜かれた打抜部材W1,W2が下方に落下するのを防止するため、打抜部材W1,W2を支持する。シリンダ132aは、コントローラ150からの指示信号に基づいて上下方向に移動可能に構成されている。具体的には、シリンダ132aは、シリンダ132a上に打抜部材W1,W2が積み重ねられるごとに間欠的に下方に移動する。シリンダ132a上において打抜部材W1,W2が所定枚数まで積層され、ブロック体BL1,BL2が形成されると、シリンダ132aの表面がステージ132bの表面と同一高さとなる位置にシリンダ132aが移動する。
【0051】
ステージ132bには、シリンダ132aが通過可能な孔が設けられている。プッシャ132cは、コントローラ150からの指示信号に基づいて、ステージ132bの表面上において水平方向に移動可能に構成されている。シリンダ132aの表面がステージ132bの表面と同一高さとなる位置にシリンダ132aが移動した状態で、プッシャ132cは、ブロック体BL1,BL2をシリンダ132aからステージ132bに払い出す。ステージ132bに払い出されたブロック体BL1,BL2は打抜装置130から排出される。
【0052】
図6に戻って、ダイプレート133は、パンチA1~A6と共に、打抜部材W1,W2を成形する機能を有する。ダイプレート133には、パンチA1~A6に対応する位置にダイD1~D6がそれぞれ設けられている。各ダイD1~D6には、上下方向に延びると貫通孔D1a~D6a(ダイ孔)が設けられている。各貫通孔D1a~D6aはそれぞれ、対応する排出孔C1~C6と連通している。各貫通孔D1a~D6aの径は、対応するパンチA1~A6の先端部が挿通可能で且つ当該先端部よりも若干大きな大きさである。ダイプレート133には、位置決めピンB1~B6に対応する位置に挿通孔E1~E6がそれぞれ設けられている。
【0053】
ストリッパ134は、ストリッパプレート134aと、保持プレート134bとを含む。ストリッパプレート134aは、パンチA1~A6で電磁鋼板ESを打ち抜く際にパンチA1~A6に食いついた電磁鋼板ESをパンチA1~A6から取り除く機能を有する。ストリッパプレート134aは、ダイプレート133の上方に位置している。保持プレート134bは、ストリッパプレート134aを上方から保持する。
【0054】
ストリッパ134には、パンチA1~A6に対応する位置に貫通孔F1~F6がそれぞれ設けられている。各貫通孔F1~F6はそれぞれ、上下方向に延びると共に、対応するダイD1~D6の貫通孔D1a~D6aと連通する。各貫通孔F1~F6内にはそれぞれ、パンチA1~A6の下部が挿通されている。パンチA1~A6の当該下部はそれぞれ、各貫通孔F1~F6内においてスライド可能である。
【0055】
ストリッパ134には、位置決めピンB1~B6に対応する位置に貫通孔F7~F12がそれぞれ設けられている。各貫通孔F7~F12はそれぞれ、上下方向に延びると共に、対応する挿通孔E1~E6と連通する。各貫通孔F7~F12内にはそれぞれ、位置決めピンB1~B6の下部が挿通されている。位置決めピンB1~B6の当該下部はそれぞれ、各貫通孔F7~F12内においてスライド可能である。
【0056】
上型135は、ストリッパ134の上方に位置している。上型135には、パンチA1~A6及び位置決めピンB1~B6の基部(上部)が固定されている。そのため、上型135は、パンチA1~A6及び位置決めピンB1~B6を保持している。上型135のうち打抜装置130の上流側及び下流側の各端部にはそれぞれ、天板136側に位置し且つ上下方向に延びる収容空間135aと、収容空間135aから下方に向けて貫通する貫通孔135bとが設けられている。
【0057】
天板136は、上型135の上方に位置している。天板136は、上型135を保持している。プレス機137は、天板136の上方に位置している。プレス機137のピストンは、天板136に接続されており、コントローラ150からの指示信号に基づいて動作する。プレス機137が動作すると、ピストンが伸縮して、ストリッパ134、上型135、天板136、吊り具138、パンチA1~A6及び位置決めピンB1~B6(以下、これらを可動部160という。)が全体的に上下動する。
【0058】
吊り具138は、ストリッパ134を上型135に吊り下げて保持する。吊り具138は、長尺のロッド部138aと、ロッド部138aの上端に設けられた頭部138bとを有する。ロッド部138aの下端部は、ストリッパ134に固定されている。ロッド部138aの上端部は、上型135の貫通孔135bに挿通されている。頭部138bは、下端部よりも径が大きく、上型135の収容空間135a内に収容されている。そのため、頭部138bは、収容空間135a内において上型135に対して上下動可能である。
【0059】
パンチA1~A6は、ダイプレート133(ダイD1~D6)と共に、電磁鋼板ESを所定形状に打ち抜く機能を有する。パンチA1~A6はそれぞれ、打抜装置130の上流側(送出装置120側)から下流側に向けてこの順に並ぶように配置されている。電磁鋼板ESの幅方向(以下、単に「幅方向」という。)において、複数のパンチA1(例えば2つのパンチA1)が並んでいる。幅方向において、複数のパンチA2(例えば2つのパンチA2)が並んでいる。幅方向において、複数のパンチA3(例えば2つのパンチA3)が並んでいる。幅方向において、複数のパンチA4(例えば2つのパンチA4)が並んでいる。幅方向において、複数のパンチA5(例えば2つのパンチA5)が並んでいる。幅方向において、複数のパンチA6(例えば2つのパンチA6)が並んでいる。なお、複数のパンチA1に対応するように、複数の排出孔C1及び複数のダイD1も幅方向に並んでいる。他の複数の排出孔C2~C6及びダイD2~D6についても同様である。
【0060】
各パンチA1の先端形状は、いずれも略同一である。すなわち、各パンチA1による電磁鋼板ESの打抜形状は、いずれも略同一である。各複数のパンチA2の先端形状は、いずれも略同一であるが、位相が異なっている。すなわち、各パンチA2による電磁鋼板ESの打抜形状は、いずれも略同一であるが、所定の角度ずれている。換言すれば、各パンチA2による電磁鋼板ESの打抜形状は、いずれも回転対称である。各パンチA3の先端形状は、いずれも略同一である。すなわち、各パンチA3による電磁鋼板ESの打抜形状は、いずれも略同一である。
【0061】
各パンチA4の先端形状は、いずれも略同一である。すなわち、各パンチA4による電磁鋼板ESの打抜形状は、いずれも略同一である。各パンチA5の先端形状は、いずれも略同一である。すなわち、各パンチA5による電磁鋼板ESの打抜形状は、いずれも略同一である。各パンチA6の先端形状は、いずれも略同一である。すなわち、各パンチA6による電磁鋼板ESの打抜形状は、いずれも略同一である。
【0062】
位置決めピンB1~B6は、パンチA1~A6によって電磁鋼板ESが打ち抜かれる際に電磁鋼板ESを位置決めする機能を有する。位置決めピンB1~B6はそれぞれ、打抜装置130の上流側(送出装置120側)から下流側に向けてこの順に並ぶように配置されている。
【0063】
[回転子積層鉄心の製造方法]
続いて、図5図8を参照して、回転子積層鉄心2の製造方法について説明する。まず、電磁鋼板ESが送出装置120によって打抜装置130に送り出され、電磁鋼板ESの被加工部位がパンチA1に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160をダイプレート133に向けて下方に押し出す。ストリッパ134がダイプレート133に到達してこれらで電磁鋼板ESが挟持された後も、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を下方に向けて押す。
【0064】
このとき、ストリッパ134は移動しないが、パンチA1~A6及び位置決めピンB1~B6の先端部はストリッパプレート134aの貫通孔F1~F12内を移動して、ダイプレート133のうち対応する貫通孔D1a~D6a及び挿通孔E1~E6に到達する。そのため、電磁鋼板ESがパンチA1によって所定の打抜形状に沿って打ち抜かれ、電磁鋼板ESの両側縁近傍に一対の貫通孔ES1が形成される(図6及び図8の位置S1参照)。すなわち、一対の貫通孔ES1は、幅方向において一列に並んでいる。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔C1から排出される。その後、プレス機137が動作して可動部160を上昇させる。
【0065】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの被加工部位がパンチA2に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、幅方向において一列に並ぶ複数のパンチA2によって電磁鋼板ESが所定の打ち抜き形状に沿って打ち抜かれ、複数の打抜部ES2,ES2が電磁鋼板ESに形成される(図6及び図8の位置S3参照)。すなわち、複数の打抜部ES2,ES2は、幅方向において一列に並んでいる。
【0066】
各打抜部ES2,ES2はそれぞれ、円形状に並ぶ16個の貫通孔によって構成されている。各貫通孔は、磁石挿入孔BL11,BL21に対応する。ここで、幅方向において一列に並ぶ複数のパンチA2の位相が異なっているので、相互に回転対称となる打抜部ES2,ES2が形成される。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔C2から排出される。パンチA2による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔ES1及び挿通孔E1,E2内には位置決めピンB1,B2が挿通される(図6及び図8の位置S2,S4参照)。
【0067】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの被加工部位がパンチA3に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、幅方向において一列に並ぶ複数のパンチA3によって電磁鋼板ESが所定の打ち抜き形状に沿って打ち抜かれ、複数の打抜部ES3が電磁鋼板ESに形成される(図6及び図8の位置S5参照)。すなわち、複数の打抜部ES3は、幅方向において一列に並んでいる。
【0068】
各打抜部ES3は、円形状の貫通孔によって構成されている。各貫通孔は、軸孔BL1a,BL2aに対応する。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔C3から排出される。パンチA3による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔ES1及び挿通孔E2,E3内には位置決めピンB2,B3が挿通される(図6及び図8の位置S4,S6参照)。
【0069】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの被加工部位がパンチA4に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、幅方向において並ぶ複数のパンチA4によって電磁鋼板ESが所定の打抜形状に沿って打ち抜かれ、複数の打抜部ES4が電磁鋼板ESに形成される(図6及び図8の位置S7参照)。すなわち、複数の打抜部ES4は、幅方向において並んでいる。
【0070】
各打抜部ES4は、円形状に並ぶ8つの貫通孔によって構成されている。各貫通孔は、カシメ部BL14,BL24の貫通孔BL16,BL26に対応する。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔C4から排出される。パンチA4による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔ES1及び挿通孔E3,E4内には位置決めピンB3,B4が挿通される(図6及び図8の位置S6,S8参照)。なお、カシメ部BL14,BL24のカシメBL15,BL25を形成する場合(後述する)には、パンチA4による電磁鋼板ESの打ち抜きが行われない。
【0071】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの被加工部位がパンチA5に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、幅方向において並ぶ複数のパンチA5によって電磁鋼板ESが所定の打抜形状に沿って半抜き加工され、複数の加工部ES5が電磁鋼板ESに形成される(図6及び図8の位置S9参照)。すなわち、複数の加工部ES5は、幅方向において並んでいる。
【0072】
各加工部ES5は、円形状に並ぶ8つの凹凸部によって構成されている。各凹凸部は、カシメ部BL14,BL24のカシメBL15,BL25に対応する。各加工部ES5が貫通孔である場合、打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔C4から排出される。パンチA5による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔ES1及び挿通孔E4,E5内には位置決めピンB4,B5が挿通される(図6及び図8の位置S8,S10参照)。
【0073】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの被加工部位がパンチA6に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、幅方向において並ぶ複数のパンチA6によって電磁鋼板ESが所定の打ち抜き形状に沿って打ち抜かれ、複数の打抜部ES6が形成される(図6及び図8の位置S11参照)。すなわち、複数の打抜部ES6は、幅方向において並んでいる。
【0074】
各打抜部ES6は、打抜部材W1,W2に対応する。パンチA6による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔ES1及び挿通孔E5,E6内には位置決めピンB5,B6が挿通される(図6及び図8の位置S10,S12参照)。こうして、打抜部材W1は、一の排出孔C6内においてシリンダ132a上に載置され、次に打ち抜かれた打抜部材W1と締結されつつ積層される。同様に、打抜部材W2は、他の排出孔C6内においてシリンダ132a上に載置され、次に打ち抜かれた打抜部材W2と締結されつつ積層される。以上の工程が繰り返されることにより、ブロック体BL1,BL2が形成される。その後、ブロック体BL1,BL2が積層された積層体10に対して端面板4,5が取り付けられて、回転子積層鉄心2が形成される。さらに、回転子積層鉄心2にシャフト3が取り付けられて、回転子1が完成する。
【0075】
[作用]
以上の実施形態では、磁石挿入孔BL11,BL21が周方向においてずれているので、スキューの効果(トルクリップル、振動、騒音等の低減)を得ることが可能となる。加えて、以上の実施形態では、ブロック体BL1の下端面から突出するカシメBL15の突起BL15bが、対面するカシメBL25の窪みBL25a内に収容されるので、ブロック体BL1,BL2の間に隙間がほとんど生じなくなる。そのため、占積率の向上を図ることが可能となる。
【0076】
以上の実施形態では、ブロック体BL1の下端面から突出するカシメBL15の突起BL15bが、対面するカシメBL25の窪みBL25a内に収容されるようにブロック体BL1,BL2が積層されている。すなわち、ブロック体BL1,BL2を構成する打抜部材W1,W2の打抜方向が一致している。そのため、打抜部材W1,W2の打抜加工の際に、ブロック体BL1,BL2に反りが生じた場合であっても、反りの向きが一致するので、ブロック体BL1,BL2の間に隙間がより生じ難くなる。従って、占積率のさらなる向上を図ることが可能となる。また、ブロック体BL1,BL2の間に隙間がより生じ難くなるので、ブロック体BL1,BL2間の隙間から、永久磁石BL12,BL22の固定のための溶融樹脂等が漏れることが抑制される。そのため、製品の歩留まりを高めることが可能となる。
【0077】
以上の実施形態では、ブロック体BL2の下端面から若干突出しているカシメBL25の突起BL25bは、収容凹部5c内に収容されている。そのため、ブロック体BL2と端面板5との間に隙間が生じ難くなっている。一方、ブロック体BL1の上端面からはカシメBL15の突起BL15bが突出していないので、端面板4に収容凹部が形成されていなくても、ブロック体BL1と端面板4との間に隙間が生じ難くなっている。そのため、端面板4には収容凹部を設ける必要がない。従って、製品をより低コストで製造することが可能となる。
【0078】
以上の実施形態では、ブロック体BL1,BL2が積層された状態で、ブロック体BL1の突条BL1bとブロック体BL2の突条BL2bとは、高さ方向において一致している。そのため、突条BL1b,BL2bによって構成されるキー部材によってブロック体BL1,BL2の位置決めを行うことができる。従って、ブロック体BL1,BL2の位置決めにキー部材を併用することが可能となる。
【0079】
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
【0080】
(1)2つ以上の永久磁石が組み合わされた一組の磁石組が、一つの磁石挿入孔内に挿入されていてもよい。この場合、一つの磁石挿入孔内において、複数の永久磁石が磁石挿入孔の長手方向において並んでいてもよい。一つの磁石挿入孔内において、複数の永久磁石が高さ方向において並んでいてもよい。一つの磁石挿入孔内において、複数の永久磁石が当該長手方向に並ぶと共に複数の永久磁石が高さ方向において並んでいてもよい。
【0081】
(2)上記の実施形態では、回転子積層鉄心2の内部に永久磁石が埋め込まれたタイプのロータ(埋込磁石型モータに用いられるロータ)について説明したが、ブロック体を貫通する貫通孔内に永久磁石が埋め込まれないタイプのロータ(例えば、シンクロナスリラクタンスモータに用いられるロータ)に本開示を適用してもよい。
【0082】
(3)上記の実施形態では、キー溝として機能する一対の凹溝3aがシャフト3に設けられており、キーとして機能する一対の突起4b,5b及び突条BL1b,BL2bがそれぞれ端面板4,5及びブロック体BL1,BL2に設けられていたが、キー溝及びそれに対応するキーの数は一つ以上であってもよい。
【0083】
(4)上記の実施形態では、突条BL1b,BL2bがブロック体BL1,BL2を位置決めするための位置決め部として機能していたが、他の要素が位置決め部として機能してもよい。例えば、キー溝として機能する凹溝が各ブロック体BL1,BL2に設けられており、当該凹溝によってブロック体BL1,BL2が位置決めされてもよい。例えば、軽量化孔、液体の流路として機能する孔などの貫通孔が各ブロック体BL1,BL2に設けられており、当該貫通孔によってブロック体BL1,BL2が位置決めされてもよい。
【0084】
(5)積層体10は、N(Nは2以上の自然数)個のブロック体が積層されることにより構成されていてもよい。この場合も、全てのブロック体が積層された状態で、カシメ部及び位置決め部(キー部材等)が高さ方向において一致しているが、少なくとも隣り合うブロック体同士の間において磁石挿入孔が周方向にずれていてもよい。隣り合うブロック体同士がカシメによって締結されていなくてもよい。
【0085】
(6)積層体10が3個以上のブロック体によって構成されている場合、積層体10を径方向から見たときに、上端に位置するブロック体と下端に位置するブロック体との間でこれらのブロック体の磁石挿入孔が高さ方向において一致していてもよい。この場合、回転子積層鉄心2が固定子積層鉄心と共にモータを構成する際に、回転子積層鉄心2の回転軸方向への移動が抑制される。従って、シャフト3への負荷の偏りが抑制されるので、回転子積層鉄心2のより滑らかな回転を実現することが可能となる。
【0086】
例えば、図9(a)に示されるように、積層体10が3個のブロック体BL1~BL3によって構成されている場合、上端に位置するブロック体BL1と下端に位置するブロック体BL3との間でこれらのブロック体BL1,BL3の磁石挿入孔が高さ方向において一致しているが、ブロック体BL1,BL3とその間に位置するブロック体BL2との間でブロック体BL1,BL3の磁石挿入孔とブロック体BL2の磁石挿入孔とが高さ方向において一致せずに周方向においてずれていてもよい。この場合、磁石挿入孔内に挿入されている永久磁石によって積層体10の周面に発現する磁極のうち高さ方向において並ぶ同一種類の磁極は、全体としておおよそ、V字状(クランク状)を呈する。
【0087】
例えば、図9(b)に示されるように、積層体10が4個のブロック体BL1~BL4によって構成されている場合、上端に位置するブロック体BL1と下端に位置するブロック体BL4との間でこれらのブロック体BL1,BL4の磁石挿入孔が高さ方向において一致しているが、ブロック体BL1,BL4とその間に位置するブロック体BL2,BL3との間でブロック体BL1,BL4の磁石挿入孔とブロック体BL2,BL3の磁石挿入孔とが高さ方向において一致せずに周方向においてずれていてもよい。この場合、磁石挿入孔内に挿入されている永久磁石によって積層体10の周面に発現する磁極のうち高さ方向において並ぶ同一種類の磁極は、全体としておおよそV字状(クランク状)を呈する。なお、ブロック体BL2,BL3の間でこれらのブロック体BL2,BL3の磁石挿入孔が高さ方向において一致していてもよいし(図9(b)参照)、高さ方向において一致せずに周方向においてずれていてもよい(図示せず)。
【0088】
[例示]
例1.本開示の一つの例に係る回転子積層鉄心(2)は、第1~第N(Nは2以上の自然数)のブロック体(BL1,BL2)が積層された積層体(10)を備える。第1~第Nのブロック体(BL1,BL2)のうち第m(mは1~Nのうちの任意の自然数)のブロック体(BL1,BL2)は、複数の打抜部材(W1,W2)が第mのカシメ(BL15,BL25)によって相互に締結されることで構成されており、高さ方向に延びる第mの磁石挿入孔(BL11,BL21)と、高さ方向に延びる第mの位置決め部(BL1b,BL2b)とを含む。第1~第Nのブロック体(BL1,BL2)が積層された状態で、第1~第Nのカシメ(BL15,BL25)は高さ方向において一致しており、第1~第Nの位置決め部(BL1b,BL2b)は高さ方向において一致しているが、第1~第Nのブロック体(BL1,BL2)のうち高さ方向において隣り合う少なくとも一組の第n(nは1~N-1のうちの任意の自然数)のブロック体(BL1)と第n+1のブロック体(BL2)との間で第n及び第n+1の磁石挿入孔(BL11,BL21)は周方向においてずれている。第nのブロック体(BL1)の下端面から突出する第nのカシメ(BL15)の突起(BL15b)は第n+1のブロック体(BL2)の上端面に位置する第n+1のカシメ(BL25)の窪み(BL25a)内に収容されているが、第nのブロック体(BL1)と第n+1のブロック体(BL2)とは第n及び第n+1のカシメ(BL15,BL25)によって締結されていない。この場合、第1~第Nの磁石挿入孔が周方向においてずれているので、スキューの効果(トルクリップル、振動、騒音等の低減)を得ることが可能となる。加えて、この場合、第nのブロック体の下端面から突出する第nのカシメの突起が、対面する第n+1のカシメの窪み内に収容されるので、第n及び第n+1のブロック体の間に隙間がほとんど生じなくなる。そのため、占積率の向上を図ることが可能となる。
【0089】
例2.例1の回転子積層鉄心(2)は、第1のブロック体(BL1)の上端面に配置された第1の端面板(4)と、第Nのブロック体(BL2)の下端面に配置された第2の端面板(5)とをさらに備え、第2の端面板(5)は、第Nのブロック体(BL2)の下端面から突出する第Nのカシメ(BL25)の突起(BL25b)が収容される収容凹部(5c)を含んでいてもよい。この場合、第1の端面には第1のカシメの突起が存在していない。そのため、第1の端面板に収容凹部を設ける必要がなくなる。従って、回転子積層鉄心をより低コストで製造することが可能となる。
【0090】
例3.例1又は例2の回転子積層鉄心(2)において、積層体(10)は、第1~第N(Nは3以上の自然数)のブロック体(BL1~BL3)が積層されて構成されており、第1のブロック体(BL1)と第Nのブロック体(BL3)との間で第1及び第Nの磁石挿入孔は高さ方向において一致していてもよい。この場合、回転子積層鉄心が固定子積層鉄心と共にモータを構成する際に、回転子積層鉄心の回転軸方向への移動が抑制される。従って、シャフトへの負荷の偏りが抑制されるので、回転子積層鉄心のより滑らかな回転を実現することが可能となる。
【0091】
例4.例1~例3のいずれかの回転子積層鉄心(2)において、第1~第Nの位置決め部(BL1b,BL2b)は、凸条、凹溝又は貫通孔であってもよい。この場合、キー部材、キー溝、軽量化又は液体の流通のために設けられる孔などを位置決めにも併用することが可能となる。
【0092】
例5.本開示の他の例に係る回転子積層鉄心(2)の製造方法は、第1~第N(Nは2以上の自然数)のブロック体(BL1,BL2)を得ることであって、第1~第Nのブロック体(BL1,BL2)のうち第m(mは1~Nのうちの任意の自然数)のブロック体(BL1,BL2)は、複数の打抜部材(W1,W2)が第mのカシメ(BL15,BL25)によって相互に締結されることで構成されており、高さ方向に延びる第mの磁石挿入孔(BL11,BL21)と高さ方向に延びる第mの位置決め部(BL1b,BL2b)とを含むことと、第1~第Nのカシメ(BL15,BL25)同士が高さ方向において一致し、第1~第Nの位置決め部(BL1b,BL2b)同士が高さ方向において一致し、第1~第Nのブロック体(BL1,BL2)のうち高さ方向において隣り合う少なくとも一組の第n(nは1~N-1のうちの任意の自然数)のブロック体(BL1)と第n+1のブロック体(BL2)との間で第n及び第n+1の磁石挿入孔(BL11,BL21)が周方向においてずれるように、第1~第Nのブロック体(BL1,BL2)を積層して、積層体(10)を得ることとを含む。積層体(10)を得ることは、第nのブロック体(BL1)と第n+1のブロック体(BL2)とが第n及び第n+1のカシメ(BL15,BL25)によって締結されないように、第nのブロック体(BL1)の下端面から突出する第nのカシメ(BL15)の突起(BL15b)を第n+1のブロック体(BL2)の上端面に位置する第n+1のカシメ(BL25)の窪み(BL25a)内に収容することを含む。この場合、例1と同様の作用効果が得られる。
【0093】
例6.例5の方法は、第1のブロック体(BL1)の上端面に第1の端面板(4)を配置することと、第2の端面板(5)に形成された収容凹部(5c)内に第Nのブロック体(BL2)の下端面から突出する第Nのカシメ(BL25)の突起(BL25b)が収容されるように、第Nのブロック(BL2)の下端面に第2の端面板(5)を配置することとをさらに含んでいてもよい。この場合、例2と同様の作用効果が得られる。
【0094】
例7.例5又は例6の方法において、積層体(10)を得ることは、第1のブロック体(BL1)と第Nのブロック体(BL3)との間で第1及び第Nの磁石挿入孔が高さ方向において一致するように、第1~第N(Nは3以上の自然数)のブロック体(BL1~BL3)を積層することを含んでいてもよい。この場合、例3と同様の作用効果が得られる。
【0095】
例8.例5~例7のいずれかの方法において、第1~第Nの位置決め部は、凸条、凹溝又は貫通孔であってもよい。この場合、例4と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0096】
1…回転子、2…回転子積層鉄心、4,5…端面板、5c…収容凹部、10…積層体、100…製造装置、Ax…中心軸、BL1,BL2…ブロック体、BL1b,BL2b…突条(位置決め部)、BL11,BL21…磁石挿入孔、BL15,BL25…カシメ、BL15a,BL25a…窪み、BL15b,BL15b…突起、W1,W2…打抜部材。
図1
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