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特許7094807ふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具およびふく進測定方法
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  • 特許-ふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具およびふく進測定方法 図1
  • 特許-ふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具およびふく進測定方法 図2
  • 特許-ふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具およびふく進測定方法 図3
  • 特許-ふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具およびふく進測定方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】ふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具およびふく進測定方法
(51)【国際特許分類】
   B61K 9/08 20060101AFI20220627BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20220627BHJP
   E01B 35/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
B61K9/08
G01B11/16 H
E01B35/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018129597
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2020006798
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 匠
(72)【発明者】
【氏名】酒庭 直樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】赤松 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】澤永 博俊
(72)【発明者】
【氏名】荻野 剛
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-003428(JP,A)
【文献】特開2012-251882(JP,A)
【文献】特開2010-047974(JP,A)
【文献】特開昭61-060431(JP,A)
【文献】特開2003-075116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61K 9/08
G01B 11/00
E01B 35/00
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道軌道の枕木上に載載され、枕木の上面およびレール下部のフランジの上面の前記枕木から離れた位置に所定のオフセットを有した状態にそれぞれ板状もしくはシート状のターゲットを貼付するためのふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具であって、
レールの上を跨ぐように配置される本体部と、
前記本体部から枕木の横であってレールの側方へ延設する張出し部と、
枕木の所定部位に当接して少なくとも枕木の長手方向に対する位置決めの基準を付与する位置決め部と、を備え、
前記本体部は枕木の上面に接する一対の脚部を有し、前記一対の脚部の少なくとも一方および前記張出し部の所定部位に、前記ターゲットの外形に対応する形状を有する開口部が形成されていることを特徴とするふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具。
【請求項2】
前記開口部は、その厚みが前記ターゲットの厚みよりも厚くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具。
【請求項3】
前記張出し部は、前記本体部からレールの側方へ端部がレールと平行をなすように突出する突出部と、前記突出部のレール側の端部に、ヒンジを介して上下方向へ回動可能に連結された回動部と、を備え、
前記回動部に、前記ターゲットに対応する形状を有する前記開口部の一つが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具。
【請求項4】
記位置決め部は、前記枕木の長手方向の側端面に当接する垂下片であることを特徴とする請求項1又は2に記載のふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具。
【請求項5】
前記本体部のレール上方を覆う部位には、複数の開口が形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具。
【請求項6】
枕木の上面およびレール下部のフランジの上面の前記枕木から離れた位置に所定のオフセットを有した状態にそれぞれターゲットを貼付する工程と、
前記レールの上を走行可能な車両に搭載された撮影手段により前記枕木の上面のターゲットおよび前記レール下部のフランジの上面のターゲットを含む領域を撮影する工程と、
前記撮影手段により撮影された画像を解析して、前記枕木の上面のターゲットと前記レール下部のフランジの上面のターゲットとの距離を求め、前記オフセットを差し引くことで前記レールのふく進量を算出する工程と、
を含むことを特徴とするふく進測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道レールのふく進量を所定のふく進測定装置により測定する際に使用するターゲットをレールの上面に貼付するのに使用して有効な取付け用治具およびふく進測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道用レールには、温度変化による伸縮や車両加減速時に車輪から受ける力によって長手方向へ移動する「ふく進」と呼ばれる現象があり、ふく進が進行すると、継目の遊間やまくら木間隔を乱してしまい、道床が弛緩し軌道狂いが助長されてしまう。そのため、鉄道各社では、軌道に異常が生じないように定期的にレールのふく進量を計測してレール管理を行なっている。従来、ふく進量の計測は、作業員が現場で定規等を用いた手作業により目視で行なっているため、作業効率が悪く、多くの作業人員を要するとともに、測定誤差も生じやすいという課題があった。
【0003】
そこで、レールの腹部または底部に目印となるターゲットもしくはマーカを設けるとともに、レール側方の不動点に基準となるターゲットもしくはマーカをレール側と一直線上に並ぶように設け、レール側方の離れた位置に設置したカメラもしくはレール上を走行する車両に搭載したカメラによりターゲットやマーカを撮影して、撮影画像に基づいてレール変動量(ふく進量)を測定するようにした発明が開示されている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-3428号公報
【文献】特開2012-251882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や2に開示されているふく進測定方法にあっては、正確な測定を担保するために、複数(例えば不動点と左右のレールの3カ所)のターゲットもしくはマーカを一直線上に所定の向きで貼付しなければならないが、作業員が人手で行う必要があるため、作業に時間を要するとともに、経験の有無によって個人差がでるため貼付精度にバラツキが生じ易い。また、カントのある区間においては、軌道が傾斜しておりレール底部の枕木上面からの高さが直線区間と異なっているため、ターゲットもしくはマーカを正確な位置に貼付するのが難しいという課題がある。
【0006】
また、特許文献1に開示されている測定方法にあっては、測定現場へカメラを運んで移動しながら撮影を実施しなければならず作業効率が悪い。そこで、本発明者らは、レール上を走行する車両に搭載したカメラにより撮影することについて検討した。その結果、特許文献1の測定方法のように、側方からカメラでレールを撮影する場合には、レールの側面(腹部)にターゲットを貼付しても良いが、車両に搭載したカメラにより真上から撮影する場合には、レールの側面にターゲットを貼付すると画像に写り込まないことが分かった。
【0007】
そこで、レール下部のフランジ上面に貼付することを考えたが、レールのフランジはレール締結器により締結される部位であるため、レール締結器を避けてターゲットを貼付する必要がある。また、ターゲットを貼付する不動点側の部位として枕木上面やスラブ軌道におけるスラブ表面を考えたが、スラブ表面に貼付したターゲットは剥がれやすく、長期間にわたって測定を実施するには不向きであるとともに、枕木にはレール締結器が設けられているため不動点側のターゲットとレール側のターゲットを一直線上に並べて貼付することができないという課題があることが明らかになった。
【0008】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、ふく進を測定する際に使用するターゲット(マーカを含む)をレールおよび不動点としての枕木上に精度よく貼付するのに使用して好適なターゲット取付け用治具を提供することにある。
本発明の他の目的は、レールの直線区間のみならずカントのある区間においてもふく進測定のターゲットをレール下部のフランジの上面に容易に貼付することができるターゲット取付け用治具を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、レール上を走行する車両に搭載したカメラにより撮影しその画像を解析することでふく進量を測定するふく進測定方法およびその測定方法に好適なターゲット取付け用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具は、
鉄道軌道の枕木上に載載され、枕木の上面およびレール下部のフランジの上面の前記枕木から離れた位置に所定のオフセットを有した状態にそれぞれ板状もしくはシート状のターゲットを貼付するためのふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具であって、
レールの上を跨ぐように配置される本体部と、
前記本体部から枕木の横であってレールの側方へ延設する張出し部と、
枕木の所定部位に当接して少なくとも枕木の長手方向に対する位置決めの基準を付与する位置決め部と、を備え、
前記本体部は枕木の上面に接する一対の脚部を有し、前記一対の脚部の少なくとも一方および前記張出し部の所定部位に、前記ターゲットの外形に対応する形状を有する開口部が形成されているように構成したものである。
【0010】
上記のような構成によれば、取付け用治具にターゲットの外形に対応する形状を有する開口部(切欠き)が本体部および張出し部の所定部位に設けられているので、不動点としての枕木の上面およびレール下部のフランジの上面に、それぞれターゲットを所定のオフセットを有する関係で容易に貼付することができる。また、取付け用治具に位置決め部が設けられているため、ターゲットを所定部位に精度よく貼付することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記開口部は、その厚みが前記ターゲットの厚みよりも厚くなるように形成する。
かかる構成によれば、ターゲットを貼付する際の作業性が良好となり、容易にターゲットを所定部位に貼付することができる。
【0012】
また、望ましくは、前記張出し部は、前記本体部からレールの側方へ端部がレールと平行をなすように突出する突出部と、前記突出部のレール側の端部に、ヒンジを介して上下方向へ回動可能に連結された回動部と、を備え、
前記回動部に、前記ターゲットに対応する形状を有する前記開口部の一つが形成されているようにする。
かかる構成によれば、枕木の上面からレール下部のフランジの上面までの高さが異なっていても、回動部の傾斜角が変化することで、回動部の開口部がレール下部のフランジの上面と接する状態にすることができるため、レールの直線区間のみならずカントのある区間においてもターゲットをレール下部のフランジの上面に容易に貼付することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記位置決め部は、前記枕木の長手方向の側端面に当接する垂下片であるようにする。
かかる構成によれば、不慣れな作業員であっても取付け用治具を枕木に対して容易に位置決めして設置することができる。
【0014】
また、望ましくは、前記本体部のレール上方を覆う部位には、複数の開口が形成されているようにする。
かかる構成によれば、取付け用治具の軽量化を図り、持ち運びを容易に行なえるようにすることができる。
【0015】
また、本出願の他の発明に係るふく進測定方法は、
枕木の上面およびレール下部のフランジの上面の前記枕木から離れた位置に所定のオフセットを有した状態にそれぞれターゲットを貼付する工程と、
前記レールの上を走行可能な車両に搭載された撮影手段により前記枕木の上面のターゲットおよび前記レール下部のフランジの上面のターゲットを含む領域を撮影する工程と、
前記撮影手段により撮影された画像を解析して、前記枕木の上面のターゲットと前記レール下部のフランジの上面のターゲットとの距離を求め、前記オフセットを差し引くことで前記レールのふく進量を算出する工程と、を含むようにしたものである。
【0016】
かかる方法によれば、レール上を走行する車両に搭載したカメラによりレールおよび不動点のターゲットを同時に撮影してその画像を解析することでふく進量を測定するシステムを構築することができる。また、不動点として枕木上面を選択しているため、ターゲットを貼付し易くかつ剥がれにくくすることができるとともに、カメラを有する既存の車載線路設備モニタリング装置により取得した画像を用いてレールのふく進量を算出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るふく進測定に用いるターゲットの取付け用治具によれば、ふく進を測定する際に使用するターゲット(マーカ)をレールおよび不動点としての枕木上に精度よく貼付することができる。また、レールの直線区間のみならずカントのある区間においてもふく進測定のターゲット(マーカ)をレール下部のフランジの上面に容易に貼付することができる。さらに、レール上を走行する車両に搭載したカメラによりレールおよび不動点のターゲットを同時に撮影してその画像を解析することでふく進量を測定するシステムを構築することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)は本発明の実施形態に係るふく進測定方法におけるターゲットの貼付の仕方を示す平面図、(B)はターゲットの詳細を示す拡大図である。
図2】ふく進測定のために枕木およびレール下部のフランジの上面にターゲット(マーカ)を貼付する際に使用するターゲット取付け用治具の実施形態を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図3図2の実施形態のターゲット取付け用治具の側面図である。
図4図2の実施形態のターゲット取付け用治具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1(A)は、本発明の実施形態に係るふく進測定方法におけるターゲットの貼付の仕方を示す平面図であり、符号10が付されているのは弾性枕木直結軌道において道床コンクリートの上に防振ゴム板を介して載置されるPC枕木、符号R1,R2が付されているのは鉄道車両が走行するレールであり、レールR1,R2はPC枕木10上に設置されたレール締結器20A,20Bによってそれぞれ固定されている。図1(A)に示されているレール締結器20A,20Bは、いわゆるパンドール型のレール締結器であって、埋込みボルトに螺合されたナット21A,21Bによって枕木10に結合され、弾性を有するクリップ22A,22BがレールR1の左右両方の下部フランジを下方へ押圧することで枕木上に固定する。他方のレールR2も同様である。
【0020】
図1(A)に示すように、本実施形態のふく進測定方法においては、PC枕木10の上面にレールR1,R2をそれぞれ挟むようにして両側方に細長い長方形をなす薄板状のターゲット11A,11Bが貼付されている。また、レールR1,R2の下部フランジF上面のPC枕木10から少し離れた位置に、同様なターゲット11Cが貼付されている。従来のふく進測定方法においては、3つのターゲット11A,11B,11Cが同一直線上に並ぶようにして貼付されるのに対し、本実施形態においては、これらのターゲットのうち11Aと11Bが、中心が枕木10の長手方向中心線と平行な直線上に並ぶようにして貼付され、ターゲット11Cは11A,11Bに対して所定のオフセットOFを有した状態で貼付されている。
【0021】
また、ターゲット11A,11B,11Cは、例えば幅が約20~30mmで、枕木の幅のおよそ半分の長さを有し、厚さが1~2mmのステンレス製のプレートで形成され、一方の面(上面)は白色塗料が塗布もしくは印刷されているとともに、図1(B)に示すように、所定間隔(例えば5cm)をおいて赤色等で着色された小さな円形のマークM1,M2,M3が付されている。マークM1,M2,M3は、プレートの表面にエッチング処理で凹部を形成し、赤色塗料を塗布もしくは印刷することで設けることができる。また、特に限定されるものでないが、ターゲット11A,11B,11Cの裏面は、両面接着テープによってPC枕木10とレールR1,R2の上面に接着される。なお、ターゲット11A~11Cは合成樹脂製のシートで構成されているものであっても良い。
【0022】
本実施形態のふく進測定方法においては、車両に搭載されたカメラによって、上記3つのターゲット11A,11B,11Cを含む領域を上方から撮影して、その画像を解析することでターゲット11A,11Bと11Cとの距離を求め、得られた距離からオフセットOFを差し引くことで、ふく進量を算出する。1台のカメラによって左右両レールの3つのターゲット11A,11B,11Cを含む領域を同時に撮影しても良いし、2台のカメラによって左右のレールのターゲットを別々に撮影しても良い。なお、既存の鉄道車両には、線路設備モニタリング装置と呼ばれるカメラを含む監視装置を搭載した営業車両があるので、そのような装置により取得した画像を解析することでふく進量を算出しても良い。
【0023】
次に、上記ターゲット11A,11B,11Cを枕木およびレール下部のフランジ上面に貼付するのに使用して好適な本発明に係るターゲット取付け用の治具30について、図2および図3を用いて説明する。このうち、図2(A)はターゲット取付け用の治具の平面図、図2(B)は正面図、図3はターゲット取付け用の治具を斜め上方から見た斜視図である。
ターゲット取付け用の治具30は、特に限定されるものでないが、全体が厚さ数mmのステンレス鋼板で構成され、本体部31と回動部32とを備えている。
【0024】
本体部31は図2(B)および図3に示すように、正面視でレールRの上方を覆うような形状を有する山形部31Aと、山形部31Aの両下端からそれぞれ外側へ延設され枕木の上面に載置される水平脚部31B,31Cとから構成されている。また、図2(A)および図3に示すように、山形部31Aと水平脚部31B,31Cにはそれぞれ複数の開口31aが形成され、軽量化が図られている。
そして、山形部31Aと水平脚部31B,31Cの直角に曲がる境界部には、前記ターゲット11の長さと同一の幅を有する切欠き31b,31cが形成されており、水平脚部31Bの切欠き31bと水平脚部31Cの切欠き31cにターゲット11Aと11Bをそれぞれ係合させてから下方へ押圧することで、枕木の上面の所定位置にターゲット11A,11B貼付できるように構成されている。
【0025】
さらに、切欠き31b,31cを囲むようにして細長いコの字状をなすスペーサ32b,32cが、水平脚部31B,31Cの下面にネジ等によって固着されている。このスペーサ32b,32cがあることによって、ターゲット11A,11Bを切欠き31b,31cに係合させるようにして枕木の上面に貼付する際に、ガイドの機能を発揮させることができる。
一方、水平脚部31Bの外端部には下方へ向かって突出するように設けられた位置決め用垂下片(ストッパ)33がネジ等によって固定されており、この位置決め用垂下片33を枕木10の外側面に当接させることで、レールと直交する方向の位置決めを行えるように構成されている。
【0026】
また、水平脚部31Bの側部には枕木10の側方へ飛び出すように形成された三角形状をなす張出し部31dが設けられており、この張出し部31dの基部の下面には、枕木10の側面と平行な方向に並んだ一対のカムフォロア34A,34Bが下向きの状態で装着されている。これらのカムフォロア34A,34Bを枕木10の側面に当接させることで、レールの長手方向の位置決めを行えるとともに、治具30を枕木10の側面に沿って移動させ易くなる。
【0027】
さらに、張出し部31dのレールと対向する側の縁部には、逆台形状をなす傾斜板35が、ヒンジ36によって上下回動可能に装着されており、傾斜板35の先端すなわちヒンジ36と反対側の縁部には、ターゲット11Cの形状に対応した長方形をなす切欠き35aが形成されているとともに、この切欠き35aを囲むようにして縦に細長いコの字状をなすスペーサ32aが、下面にネジ等によって固着されている。このスペーサ32aがあることによって、ターゲット11Cを切欠き35aに係合させるようにしてレール下部のフランジの上面に貼付する際に、ガイドの機能を発揮させることができる。また、傾斜板35には2個の開口35bが形成され、軽量化が図られている。
【0028】
なお、上記実施形態のターゲット取付け用治具30においては、傾斜板35を上下回動可能に装着しているが、予め所定の角度で傾斜させ回動不能とした状態で設けるようにしても良い。
ただし、上記のように、傾斜板35がヒンジ36によって上下回動可能に装着されていることにより、カントのある区間でのターゲット11Cの貼付を正確に行うことができる。すなわち、カントのある区間では軌道が傾斜することで、枕木上面からレール下部のフランジの上面までの高さが直線区間とは異なることがあるが、傾斜板35が回動可能であれば傾斜板35の先端をレール下部のフランジの上面に接触させた際に傾斜板35の傾斜角度を変えることができるため、治具の一部が浮いたりすることがなく、それによってターゲット11Cの貼付を正確に行うことができる。
【0029】
次に、上記のような構成を有するターゲット取付け用治具30を用いたターゲット11A,11B,11Cの貼付の方法について説明する。ターゲットの貼付に際しては、先ず、傾斜板35をレールと反対側に倒した状態にして、治具30を、水平脚部31B,31Cが枕木の上面に接するようにして枕木の上面に載置する。この際、正規位置よりも枕木の長さ方向の外側に位置し、かつカムフォロア34A,34Bを枕木の側面に当接させるようにして載置する。次に、治具30全体を枕木上において、レールへ近づけるように、枕木と平行に移動させて垂下片(ストッパ)33を枕木の外側面に当接させる。これにより、治具30の位置決めが完了する。
【0030】
続いて、傾斜板35を回動させて傾斜板35の先端をレール下部のフランジの上面に接触させる。その後、ターゲット11A,11Bをターゲット取付け用治具30の本体部31の切欠き31b,31cに係合させるようにして枕木の上面に貼付するとともに、傾斜板35の先端の切欠き35aにターゲット11Cを係合させるようにしてレール下部のフランジの上面に貼付する。これによって、片方のレールについて、図1(A)に示すような所定の位置にターゲット11A,11B,11Cを貼付する作業が終了するので、他方の片方のレールに対して上記と同様な作業を行う。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、傾斜板35を回動可能な構成にするため、ヒンジを使用しているが、ヒンジの代わりに弾性の高い薄い金属板(板バネ)で張出し部31dと傾斜板35とを結合して、板バネが弾性変形することで傾斜板35が傾斜して下部フランジの上面に接触するように構成しても良い。
【0032】
また、カント区間で治具を使用することを考えなくても良いのであれば、傾斜板35を回動可能な構成にせず、予め所定の角度で傾斜させて形成しても良い。しかも、その場合には、垂下片(ストッパ)33を設けずに、傾斜板35の先端をレール腹部に当接させることで、レールと直交する方向の位置決めを行わせることも可能である。
さらに、ターゲット取付け用治具30の本体部31の上面に取っ手を取り付けて、持ち運びを容易に行なえる構成にしても良い。また、本体部31のレールの上方を覆う部位の断面形状は、山形でなく下向きのコの状あるいは半円形をなすように形成しても良い。
【符号の説明】
【0033】
10 PC枕木
11A,11B,11C ターゲット
20A,20B レール締結器
30 ターゲット取付け用治具
31 本体部
31a 開口部
31b,31c 切欠き
31d 張出し部
32 回動部
33 垂下片(ストッパ)
34A,34B カムフォロア
35 傾斜板
35a 切欠き
図1
図2
図3
図4