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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】協調作業システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
A01B69/00 303J
A01B69/00 303Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018156204
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2020028259
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-167910(JP,A)
【文献】特開2017-199107(JP,A)
【文献】特開2018-117566(JP,A)
【文献】特開2004-008053(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0319913(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
G05D 1/00 - 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行領域内を自動走行する第1作業車両と、
前記第1作業車両の後方を走行する第2作業車両と、
行領域内の中央側領域に設定された複数の作業経路と、走行領域内の外周側領域に設定されて上流側の前記作業経路の終端から下流側の作業経路の始端へ走行案内する連結経路とを有する目標走行経路に沿って前記第1作業車両を自動走行させる自動走行制御部と、
前記目標走行経路における最下流の前記作業経路の終端から走行領域内の外周側領域に設定された退避位置へ走行案内する退避経路を設定する退避経路設定部と、
前記第1作業車両と前記第2作業車両との距離を測定する距離測定部と、が備えられ、
記退避位置は、前記第1作業車両が、前記目標走行経路に応じて走行領域内に設定された予定走行経路の終端に到達した前記第2作業車両と干渉しない位置に設定され
前記自動走行制御部は、前記第1作業車両が最下流の前記作業経路の終端に到達すると前記第1作業車両を一旦停止させ、前記距離測定部による測定距離が設定距離以下になると前記第1作業車両を前記退避経路に沿って自動走行させる協調作業システム。
【請求項2】
前記退避位置は、前記第1作業車両が、前記予定走行経路の終端よりも上流側を走行中の前記第2作業車両と干渉しない位置に設定されている請求項1記載の協調作業システム。
【請求項3】
前記退避位置は、走行領域内の前記外周側領域のうち、並列状に設定された複数の前記作業経路の並設方向で、最下流の前記作業経路の外側の領域内に設定されている請求項1又は2記載の協調作業システム。
【請求項4】
前記退避位置は、前記自動走行制御部が前記第1作業車両の自動走行を開始させるスタート地点に設定されている請求項1~3のいずれか1項に記載の協調作業システム。
【請求項5】
前記自動走行制御部は、前記第1作業車両が最下流の前記作業経路の終端に到達した時点で前記距離測定部による測定距離が前記設定距離以下であれば、前記第1作業車両を一旦停止させずに前記退避経路に沿って自動走行させる請求項1~4のいずれか1項に記載の協調作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場等の走行領域内を複数台の作業車両にて協調して作業を行う協調作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圃場の走行領域内の中央側領域に設定された複数の直進経路(作業経路の一例)と、走行領域内の外周側領域に設定されて上流側の直進経路の終端から下流側の直進経路の始端へ走行案内する旋回経路(連結経路の一例)とを有する目標走行経路に沿って自動走行する無人トラクタ(第1トラクタの一例)と、ユーザが搭乗して無人トラクタに随伴して手動走行する有人トラクタ(第2トラクタの一例)により、圃場に対して同一又は異なる農作業を実行することで、ユーザ等の人数を少なく抑えて効率よく農作業を実行する協調作業システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-221009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の協調作業システムでは、有人トラクタが無人トラクタの斜め後方を併走し、各々のトラクタに連結されている作業装置の作業幅を重畳させて走行する並走モードや、無人トラクタの真後ろを有人トラクタが追走して、同一領域を作業装置が重複して作業する追走モードが存在するが、いずれのモードにおいても無人トラクタが有人トラクタの前を走行する。そのため、無人トラクタが目標走行経路の最下流(最終)の直進経路を走行完了すると、その次の直進経路が無いので、無人トラクタが当該直進経路の終端で作業を完了して停止することになる。
よって、無人トラクタの後方を走行する有人トラクタが、並走又は追走のいずれのモードであっても、最下流の直進経路の終端で停止中の無人トラクタが邪魔になり、有人トラクタが自身の予定走行経路の最下流の直進経路の終端まで進行して作業装置にて農作業を行うことが困難となる。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、第1作業車両の後方を走行する第2作業車両が予定走行経路の終端まで進行して作業を行うことのできる協調作業システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、走行領域内を自動走行する第1作業車両と、
前記第1作業車両の後方を走行する第2作業車両と、
衛星測位システムにより位置情報を取得して、走行領域内の中央側領域に設定された複数の作業経路と、走行領域内の外周側領域に設定されて上流側の前記作業経路の終端から下流側の作業経路の始端へ走行案内する連結経路とを有する目標走行経路に沿って前記第1作業車両を自動走行させる自動走行制御部と、
前記目標走行経路における最下流の前記作業経路の終端から走行領域内の外周側領域に設定された退避位置へ走行案内する退避経路を設定する退避経路設定部と、が備えられ、
前記自動走行制御部は、前記第1作業車両が最下流の前記作業経路の終端に到達すると、前記退避経路に沿って前記第1作業車両を自動走行させるように構成され、
前記退避位置は、前記第1作業車両が、前記目標走行経路に応じて走行領域内に設定された予定走行経路の終端に到達した前記第2作業車両と干渉しない位置に設定されている点にある。
【0007】
本構成によれば、退避経路設定部にて、目標走行経路における最下流の作業経路の終端から、走行領域内の外周側領域に設定された退避位置へ走行案内する退避経路を設定することができ、その退避位置は、第1作業車両が、目標走行経路に応じて走行領域内に設定された予定走行経路の終端に到達した第2作業車両と干渉しない位置に設定されている。
そして、自動走行制御部は、目標走行経路に沿って第1作業車両を自動走行させ、その第1作業車両が最下流の作業経路の終端に到達すると、退避経路に沿って第1作業車両を自動走行させることができるので、目標走行経路の最下流の作業経路の終端に到達した第1作業車両が、その後方を走行する後続の第2作業車両の走行の支障になるのを回避することができる。
よって、第1作業車両の後方を走行する第2作業車両が予定走行経路の終端まで進行して作業を行うことでき、第1作業車両と第2作業車両による協調作業を適切に行うことができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記退避位置は、前記第1作業車両が、前記予定走行経路の終端よりも上流側を走行中の前記第2作業車両と干渉しない位置に設定されている点にある。
【0009】
本構成によれば、走行領域内に設定された予定走行経路の終端よりも上流側を第2作業車両が走行中であっても、退避位置に位置する第1作業車両が第2作業車両と干渉することがないので、例えば、退避位置に位置する第1作業車両が第2作業車両の走行の支障になることがなく、第1作業車両と第2作業車両による協調作業を一層適切に行うことができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記退避位置は、走行領域内の前記外周側領域のうち、並列状に設定された複数の前記作業経路の並設方向で、最下流の前記作業経路の外側の領域内に設定されている点にある。
【0011】
本構成によれば、退避位置が、走行領域内の外周側領域のうち、並列状に設定された複数の作業経路の並設方向で、最下流の前記作業経路の外側(つまり、並設方向の下流側)の領域内に設定されている。当該領域は、最下流の作業経路の終端から目標走行経路と同じ流れ(作業経路の並設方向で下流側への流れ)、且つ、短い距離で迅速に入ることができるので、第1作業車両が最下流の作業経路の終端に到達したときに第1作業車両を迅速に退避位置に退避させることができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記退避位置は、前記自動走行制御部が前記第1作業車両の自動走行を開始させるスタート地点に設定されている点にある。
【0013】
本構成によれば、退避位置が、自動走行制御部が第1作業車両の自動走行を開始させるスタート地点に設定されているので、スタート地点とは別に退避位置を設定する必要がなく、第1作業車両が最下流の作業経路の終端に到達したときに第1作業車両を確実に退避位置に退避させることができる。
【0014】
本発明の第5特徴構成は、前記第1作業車両と前記第2作業車両との距離を測定する距離測定部が備えられ、
前記自動走行制御部は、前記第1作業車両が最下流の前記作業経路の終端に到達すると前記第1作業車両を一旦停止させ、前記距離測定部による測定距離が設定距離以下になると前記第1作業車両を前記退避経路に沿って自動走行させる点にある。
【0015】
本構成によれば、自動走行制御部は、第1作業車両が最下流の作業経路の終端に到達すると第1作業車両を一旦停止させるので、例えば、第1作業車両の後方を走行する第2作業車両が予定よりも大幅に遅れて予定走行経路の終端よりも上流側を走行中であったとしても、退避経路を走行中の第1作業車両が第2作業車両の走行の支障になるのを回避することができる。そして、自動走行制御部は、一旦停止中の第1作業車両と後方側の第2作業車両との距離が設定距離以下になると第1作業車両が退避経路に沿って自動走行させるので、特別な指示を必要とせず、第1作業車両が退避経路に沿って自動走行させることができる。しかも、第2作業車両に搭乗するユーザ等が、第1走行車両の退避経路に沿った自動走行を設定距離以下の比較的近い場所で適切に監視すること等も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】協調作業システムの概略構成を示す図
図2】自動走行システムの概略構成を示すブロック図
図3】目標走行経路及び退避経路の一例を示す図
図4】目標走行経路及び退避経路の一例を示す図
図5】退避経路の一例を示す図
図6】退避経路の一例を示す図
図7】退避経路の一例を示す図
図8】退避経路の一例を示す図
図9】退避経路の一例を示す図
図10】退避動作の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る協調作業システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、協調作業システムの概略構成を示しており、自動走行可能な複数台のトラクタ1(作業車両に相当する)を用い、前方側のトラクタ1A(第1作業車両に相当する)を無人で自動走行させ、且つ、後方側のトラクタ1B(第2作業車両に相当する)をユーザ等が運転して有人で手動走行させる状態で協調して作業を行っている場合を例示している。この協調作業システムにおいては、図1に示すように、作業車両としてトラクタ1を適用しているが、トラクタ以外の、田植機、コンバイン、草刈機、ホイールローダ、除雪車等の作業車両を適用することができる。なお、本実施形態では、複数台のトラクタ1A,1Bの構成は同一であるので、無人で自動走行させる前方側のトラクタ1Aを中心に説明する。
【0018】
トラクタ1Aを自動走行させる自動走行システムは、図1及び図2に示すように、トラクタ1Aに搭載された自動走行ユニット2(自動走行装置に相当する)、及び、自動走行ユニット2と通信可能に通信設定された携帯通信端末3を備えている。携帯通信端末3には、タッチ操作可能な表示部51(例えば、液晶パネル)等を有するタブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォン等を採用することができる。図1に示す例では、後方側のトラクタ1Bに搭乗するユーザ等が、前方側のトラクタ1Aの自動走行ユニット2と通信可能に通信設定された携帯通信端末3を携帯している。
【0019】
トラクタ1Aは、駆動可能な操舵輪として機能する左右の前輪5、及び、駆動可能な左右の後輪6を有する走行機体7が備えられている。走行機体7の前方側には、ボンネット8が配置され、ボンネット8内には、コモンレールシステムを備えた電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)9が備えられている。走行機体7のボンネット8よりも後方側には、搭乗式の運転部を形成するキャビン10が備えられている。
【0020】
走行機体7の後部には、3点リンク機構11を介して、作業装置12の一例であるロータリ耕耘装置を昇降可能かつローリング可能に連結することで、トラクタ1Aをロータリ耕耘仕様に構成することができる。トラクタ1Aの後部には、ロータリ耕耘装置に代えて、プラウ、播種装置、散布装置、等の作業装置12を連結することができる。
【0021】
トラクタ1Aには、図2に示すように、エンジン9からの動力を変速する電子制御式の変速装置13、左右の前輪5を操舵する全油圧式のパワーステアリング機構14、左右の後輪6を制動する左右のサイドブレーキ(図示せず)、左右のサイドブレーキの油圧操作を可能にする電子制御式のブレーキ操作機構15、ロータリ耕耘装置等の作業装置12への伝動を断続する作業クラッチ(図示せず)、作業クラッチの油圧操作を可能にする電子制御式のクラッチ操作機構16、ロータリ耕耘装置等の作業装置12を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動機構17、トラクタ1Aの自動走行等に関する各種の制御プログラム等を有する車載電子制御ユニット18、トラクタ1Aの車速を検出する車速センサ19、前輪5の操舵角を検出する舵角センサ20、及び、トラクタ1Aの現在位置及び現在方位を測定する測位ユニット21等が備えられている。
【0022】
なお、エンジン9には、電子ガバナを備えた電子制御式のガソリンエンジンを採用してもよい。変速装置13には、油圧機械式無段変速装置(HMT)、静油圧式無段変速装置(HST)、又は、ベルト式無段変速装置等を採用することができる。パワーステアリング機構14には、電動モータを備えた電動式のパワーステアリング機構14等を採用してもよい。
【0023】
キャビン10の内部には、図1に示すように、パワーステアリング機構14(図2参照)を介した左右の前輪5の手動操舵を可能にするステアリングホイール38、搭乗者用の運転席39、タッチパネル式の表示部、及び、各種の操作具等が備えられている。キャビン10の前方側部位の両横側部には、キャビン10(運転席39)への乗降部となる乗降ステップ41が備えられている。
【0024】
図2に示すように、車載電子制御ユニット18は、変速装置13の作動を制御する変速制御部181、左右のサイドブレーキの作動を制御する制動制御部182、ロータリ耕耘装置等の作業装置12の作動を制御する作業装置制御部183、自動走行時に左右の前輪5の目標操舵角を設定してパワーステアリング機構14に出力する操舵角設定部184、及び、予め設定された自動走行用の目標走行経路PT(例えば、図3図4参照)や退避経路PE(例えば、図3図4参照)等を記憶する不揮発性の車載記憶部185等を有している。
【0025】
ここで、目標走行経路PTは、走行領域R内でトラクタ1Aに自動的に作業を行わせるための経路である。退避経路PEは、複数台のトラクタ1A,1Bで協調して作業を行う場合に、前方側のトラクタ1Aが目標走行経路PTの終端p1(後述する最下流の作業経路PW)に到達したとき、その前方側のトラクタ1Aが後方を遅れて走行する後方側のトラクタ1Bの作業の邪魔にならないように、前方側のトラクタ1Aを目標走行経路PTの終端p1から退避位置p2まで自動的に退避させるための経路である。
【0026】
図2に示すように、測位ユニット21には、衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)を利用してトラクタ1Aの現在位置と現在方位とを測定する衛星航法装置22、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサ等を有してトラクタ1Aの姿勢や方位等を測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)23等が備えられている。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)やRTK-GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)等がある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK-GPSが採用されている。そのため、圃場周辺の既知位置には、図1及び図2に示すように、RTK-GPSによる測位を可能にする基準局4が設置されている。
【0027】
トラクタ1Aと基準局4との夫々には、図2に示すように、GPS衛星71(図1参照)から送信された電波を受信するGPSアンテナ24,61、及び、トラクタ1Aと基準局4との間における測位データを含む各種データの無線通信を可能にする通信モジュール25,62等が備えられている。これにより、衛星航法装置22は、トラクタ側のGPSアンテナ24がGPS衛星71からの電波を受信して得た測位データと、基地局側のGPSアンテナ61がGPS衛星71からの電波を受信して得た測位データとに基づいて、トラクタ1Aの現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。また、測位ユニット21は、衛星航法装置22と慣性計測装置23とを備えることにより、トラクタ1Aの現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
【0028】
トラクタ1Aに備えられるGPSアンテナ24、通信モジュール25、及び、慣性計測装置23は、図1に示すように、アンテナユニット80に収納されている。アンテナユニット80は、キャビン10の前面側の上部位置に配置されている。
【0029】
図2に示すように、携帯通信端末3には、表示部51等の作動を制御する各種の制御プログラム等を有する端末電子制御ユニット52、及び、トラクタ側の通信モジュール25との間における測位データを含む各種データの無線通信を可能にする通信モジュール55、等が備えられている。端末電子制御ユニット52は、トラクタ1Aを自動走行させるための走行案内用の目標走行経路PT(例えば、図3参照)を生成する走行経路生成部53、トラクタ1Aを自動走行させるための走行案内用の退避経路PEを生成する退避経路生成部56、及び、ユーザが入力した各種の入力データや走行経路生成部53が生成した目標走行経路PT、退避経路生成部56が生成した退避経路PE等を記憶する不揮発性の端末記憶部54、等を有している。
【0030】
目標走行経路PTや退避経路PEの詳細構成や生成方法については後述するが、走行経路生成部53にて生成された目標走行経路PTは、表示部51に表示可能であり、車体データ及び圃場データ等と関連付けた目標走行経路PTの経路データとして端末記憶部54に記憶されている。経路データには、目標走行経路PTの方位角、及び、目標走行経路PTでのトラクタ1Aの走行形態等に応じて設定された設定エンジン回転速度や目標走行速度、等が含まれている。
また、退避経路生成部56にて生成された退避経路PEは、表示部51に表示可能であり、車体データ及び圃場データ、目標走行経路PTの経路データ等と関連付けた退避経路PEの経路データとして端末記憶部54に記憶される。退避経路PEの経路データには、退避経路PEの方位角、及び、退避経路PEでのトラクタ1Aの走行形態等に応じて設定された設定エンジン回転速度や目標走行速度、等が含まれている。
【0031】
走行経路生成部53が目標走行経路PTを生成し、退避経路生成部56が退避経路PEを生成すると、端末電子制御ユニット52が、携帯通信端末3からトラクタ1Aに経路データを転送することで、トラクタ1Aの車載電子制御ユニット18が、目標走行経路PT及び退避経路PEの経路データを取得することができる。
【0032】
そして、車載電子制御ユニット18は、取得した経路データに基づいて、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1Aの現在位置)を取得しながら、目標走行経路PTに沿ってトラクタ1Aを自動走行させることができる。
また、この車載電子制御ユニット18は、トラクタ1Aが協調作業行うための協調作業モードに設定されている場合に、取得した経路データに基づいて、測位ユニット21にて自己の現在位置を取得しながら、目標走行経路PTに引き続き、退避経路PEに沿ってトラクタ1Aを自動走行させることができる。
測位ユニット21にて取得するトラクタ1Aの現在位置については、リアルタイム(例えば、数ミリ秒周期)でトラクタ1Aから携帯通信端末3に送信されており、携帯通信端末3にてトラクタ1Aの現在位置を把握している。
【0033】
目標走行経路PT及び退避経路PEの経路データの転送に関しては、トラクタ1Aが自動走行を開始する前の段階において、経路データの全体を端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に一挙に転送することができる。また、例えば、当該経路データを、データ量の少ない所定距離ごとの複数の経路部分に分割することもできる。この場合には、トラクタ1Aが自動走行を開始する前の段階においては、経路データの初期経路部分のみが端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に転送される。自動走行の開始後は、トラクタ1Aがデータ量等に応じて設定された経路取得地点に達するごとに、その地点に対応する以後の経路部分のみの経路データが端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に転送するようにしてもよい。
【0034】
トラクタ1Aの自動走行を開始する場合には、例えば、ユーザ等がスタート地点Sにトラクタ1Aを移動させて、各種の自動走行開始条件が満たされると、携帯通信端末3にて、ユーザが表示部51を操作して自動走行の開始を指示することで、携帯通信端末3は、自動走行の開始指示をトラクタ1Aに送信する。これにより、トラクタ1Aでは、車載電子制御ユニット18が、自動走行の開始指示を受けることで、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1Aの現在位置)を取得しながら、目標走行経路PT(協調作業モードに設定されている場合は目標走行経路PT及び退避経路PE)に沿ってトラクタ1Aを自動走行させる自動走行制御を開始する。
車載電子制御ユニット18が、測位ユニット21(衛星測位システムに相当する)により取得されるトラクタ1Aの測位情報に基づいて、走行領域R内の目標走行経路PTや退避経路PEに沿ってトラクタ1Aを自動走行させる自動走行制御を行う自動走行制御部として構成されている。
【0035】
自動走行制御には、変速装置13の作動を自動制御する自動変速制御、ブレーキ操作機構15の作動を自動制御する自動制動制御、左右の前輪5を自動操舵する自動操舵制御、及び、ロータリ耕耘装置等の作業装置12の作動を自動制御する作業用自動制御、等が含まれている。
【0036】
自動変速制御においては、変速制御部181が、目標走行速度を含む目標走行経路PTや退避経路PEの経路データと測位ユニット21の出力と車速センサ19の出力とに基づいて、目標走行経路PTや退避経路PEでのトラクタ1Aの走行形態等に応じて設定された目標走行速度がトラクタ1Aの車速として得られるように変速装置13の作動を自動制御する。
【0037】
自動制動制御においては、制動制御部182が、目標走行経路PTや退避経路PEの経路データと測位ユニット21の出力とに基づいて、目標走行経路PTや退避経路PEの経路データに含まれている制動領域において左右のサイドブレーキが左右の後輪6を適正に制動するようにブレーキ操作機構15の作動を自動制御する。
【0038】
自動操舵制御においては、トラクタ1Aが目標走行経路PTや退避経路PEを自動走行するように、操舵角設定部184が、目標走行経路PTや退避経路PEの経路データと測位ユニット21の出力とに基づいて左右の前輪5の目標操舵角を求めて設定し、設定した目標操舵角をパワーステアリング機構14に出力する。パワーステアリング機構14が、目標操舵角と舵角センサ20の出力とに基づいて、目標操舵角が左右の前輪5の操舵角として得られるように左右の前輪5を自動操舵する。
【0039】
作業用自動制御においては、作業装置制御部183が、目標走行経路PTの経路データと測位ユニット21の出力とに基づいて、トラクタ1Aが後述する作業経路PW(例えば、図3図4参照)の始端等の作業開始地点に達するのに伴って作業装置12による所定の作業(例えば耕耘作業)が開始され、かつ、トラクタ1Aが作業経路PW(例えば、図3図4参照)の終端等の作業終了地点に達するのに伴って作業装置12による所定の作業が停止されるように、クラッチ操作機構16及び昇降駆動機構17の作動を自動制御する。
【0040】
このようにして、トラクタ1Aにおいては、変速装置13、パワーステアリング機構14、ブレーキ操作機構15、クラッチ操作機構16、昇降駆動機構17、車載電子制御ユニット18、車速センサ19、舵角センサ20、測位ユニット21、及び、通信モジュール25、等によって自動走行ユニット2が構成されている。
【0041】
この実施形態では、キャビン10にユーザ等が搭乗せずにトラクタ1Aを自動走行させるだけでなく、キャビン10にユーザ等が搭乗した状態でトラクタ1Aを自動走行させることも可能となっている。よって、キャビン10にユーザ等が搭乗せずに、車載電子制御ユニット18による自動走行制御により、トラクタ1Aを目標走行経路PTや退避経路PEに沿って自動走行させることができるだけでなく、キャビン10にユーザ等が搭乗している場合でも、車載電子制御ユニット18による自動走行制御により、トラクタ1Aを目標走行経路PTや退避経路PEに沿って自動走行させることができる。
【0042】
キャビン10にユーザ等が搭乗している場合には、車載電子制御ユニット18にてトラクタ1Aを自動走行させる自動走行状態と、ユーザ等の運転に基づいてトラクタ1Aを走行させる手動走行状態とに切り替えることができる。よって、自動走行状態にて目標走行経路PTや退避経路PEを自動走行している途中に、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができ、逆に、手動走行状態にて走行している途中に、手動走行状態から自動走行状態に切り替えることができる。手動走行状態と自動走行状態との切り替えについては、例えば、運転席39の近傍に、自動走行状態と手動走行状態とに切り替えるための切替操作部を備えることができるとともに、その切替操作部を携帯通信端末3の表示部51に表示させることもできる。また、車載電子制御ユニット18による自動走行制御中に、ユーザがステアリングホイール38を操作すると、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができる。
【0043】
トラクタ1Aには、図1及び図2に示すように、トラクタ1A(走行機体7)の周囲における障害物を検知して、障害物との衝突を回避するための障害物検知システム100が備えられている。障害物検知システム100は、レーザを用いて測定対象物までの距離を3次元で測定可能な複数のライダーセンサ101,102と、超音波を用いて測定対象物までの距離を測定可能な複数のソナーを有するソナーユニット103,104と、障害物検知部110と、衝突回避制御部111とが備えられている。
【0044】
ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104にて測定する測定対象物は、物体や人等としている。ライダーセンサ101,102は、トラクタ1Aの前方側を測定対象とする前ライダーセンサ101と、トラクタ1Aの後方側を測定対象とする後ライダーセンサ102とが備えられている。ソナーユニット103,104は、トラクタ1Aの右側を測定対象とする右側のソナーユニット103と、トラクタ1Aの左側を測定対象とする左側のソナーユニット104とが備えられている。
【0045】
障害物検知部110は、ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104の測定情報に基づいて、所定距離内の物体や人等の測定対象物を障害物として検知する障害物検知処理を行うように構成されている。衝突回避制御部111は、障害物検知部110にて障害物を検知すると、トラクタ1Aを減速させる又はトラクタ1Aを走行停止させる衝突回避制御を行うように構成されている。衝突回避制御部111は、衝突回避制御において、トラクタ1Aを減速させる又はトラクタ1Aを走行停止させるだけでなく、報知ブザーや報知ランプ等の報知装置26を作動させて、障害物が存在することを報知している。衝突回避制御部111は、衝突回避制御において、通信モジュール25,55を用いて、トラクタ1Aから携帯通信端末3に通信して表示部51に障害物の存在を表示させることで、障害物が存在することを報知可能としている。
【0046】
障害物検知部110は、ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104の測定情報に基づく障害物検知処理をリアルタイムで繰り返し行い、物体や人等の障害物を適切に検知している。衝突回避制御部111は、リアルタイムで検知される障害物との衝突を回避するための衝突回避制御を行うようにしている。
【0047】
障害物検知部110及び衝突回避制御部111は、車載電子制御ユニット18に備えられている。車載電子制御ユニット18は、コモンレールシステムに含まれたエンジン用の電子制御ユニット、ライダーセンサ101,102、及び、ソナーユニット103,104等にCAN(Controller Area Network)を介して通信可能に接続されている。
【0048】
トラクタ1Aには、図1図2に示すように、その前方側と後方側とを撮像範囲とする前後2台のカメラ108,109が備えられている。前カメラ108は、前ライダーセンサ101と同様に、キャビン13の前面側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。後カメラ109は、後ライダーセンサ102と同様に、キャビン13の後端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の後方側を斜め上方側から見下ろす後下がり姿勢で配置されている。各カメラ108,109の撮像画像は、トラクタ1Aのキャビン10内の表示部や携帯通信端末3の表示部51等において表示させることができ、これにより、ユーザなどにトラクタ1Aの周囲の状況を視認させることができる。
【0049】
目標走行経路PTと退避経路PEの詳細構成及び生成方法について説明する。
走行経路生成部53が目標走行経路PTを生成するに当たり、携帯通信端末3の表示部51に表示された目標走行経路設定用の入力案内に従って、運転者や管理者等のユーザ等が作業車両や作業装置12の種類や機種等の車体データを入力しており、入力された車体データが端末記憶部54に記憶されている。目標走行経路PTの生成対象となる走行領域R(図3参照)を圃場としており、携帯通信端末3の端末電子制御ユニット52は、圃場の形状や位置を含む圃場データを取得して端末記憶部54に記憶している。
【0050】
圃場データの取得について説明すると、ユーザ等が運転してトラクタ1Aを実際に走行させることで、端末電子制御ユニット52は、測位ユニット21にて取得するトラクタ1Aの現在位置等から圃場の形状や位置等を特定するための位置情報を取得することができる。端末電子制御ユニット52は、取得した位置情報から圃場の形状及び位置を特定し、その特定した圃場の形状及び位置から特定した走行領域Rを含む圃場データを取得している。図3では、矩形状の走行領域Rが特定された例を示している。また、携帯通信端末3の表示部51に表示された入力用の画面上等において、ユーザ等が走行領域R内の任意の地点を指定することで、トラクタ1Aの自動走行を開始させるスタート地点Sを設定することができる。
【0051】
特定された圃場の形状や位置等を含む圃場データが端末記憶部54に記憶されると、走行経路生成部53は、端末記憶部54に記憶されている圃場データや車体データ、設定されたスタート地点S等を用いて、目標走行経路PT(図3図4参照)を生成する。なお、図3図4では、経路の理解を容易にするために協調して作業を行う2台のトラクタ1A,1Bを図示している。
【0052】
図3は、トラクタ1Aがそれの真後ろを追走する他の1台のトラクタ1Bと協調して作業を行う場合、又は、トラクタ1Aが単独で作業を行う場合の目標走行経路PTを例示している。
図3に示すように、走行経路生成部53は、走行領域R内を中央側領域R1と外周側領域R2とに区分け設定している。中央側領域R1は、走行領域Rの中央部に設定されており、トラクタ1Aが所定の作業(例えば、耕耘等の作業)を行いながら往復方向に自動走行する作業領域となっている。外周側領域R2は、中央側領域R1の周囲に設定されており、トラクタ1Aが所定の作業を止めて方向転換を行う転回領域となっている。走行経路生成部53は、例えば、車体データに含まれる旋回半径やトラクタ1Aの前後幅及び左右幅等から、トラクタ1Aを圃場の畔際で旋回走行させるために必要となる旋回走行用のスペース等を求めている。走行経路生成部53は、旋回走行用のスペース等を外周側領域R2に確保するように、走行領域R内を中央側領域R1と外周側領域R2とに区分けしている。
【0053】
走行経路生成部53は、図3に示すように、車体データや圃場データ等を用いて、トラクタ1Aがそれの真後ろを追走する他の1台のトラクタ1Bと協調して作業を行うため、又は、トラクタ1Aが単独で作業を行うための目標走行経路PTを生成している。例えば、目標走行経路PTは、中央側領域R1において同じ直進距離を有して作業幅に対応する一定距離をあけて平行に配置設定された複数の作業経路PWと、外周側領域R2において隣接する作業経路PWの始端と終端とを連結して上流側の作業経路PWの終端から下流側の作業経路PWの始端へ走行案内する連結経路PCとを有している。複数の作業経路PWは、トラクタ1Aを直進走行させながら、所定の作業を行うための経路である。連結経路PCは、所定の作業を行わずに、トラクタ1Aの走行方向を180度転換させるためのUターン経路であり、上流側の作業経路PWの終端と隣接する次の下流側の作業経路PWの始端とを連結している。なお、この目標走行経路PTは、トラクタ1Aがそれの真後ろを追走する他の1台のトラクタ1Bと協調して作業を行う場合には、トラクタ1Bの予定走行経路PPとなる。
【0054】
図4は、トラクタ1Aがそれの斜め後方を併走する他の1台のトラクタ1Bと協調して作業を行う場合の目標走行経路PTを例示している。
この場合には、走行経路生成部53は、図4に示すように、車体データや圃場データ等を用いて、トラクタ1Aの斜め後方を併走する他の1台のトラクタ1Bと協調して作業を行うための目標走行経路PTを生成している。例えば、目標走行経路PTは、中央側領域R1において同じ直進距離を有して2台分の作業幅に対応する一定距離をあけて平行に配置設定された複数の作業経路PWと、外周側領域R2において隣接する作業経路PWの始端と終端とを連結する連結経路PCとを有している。なお、図4中の太点線は、トラクタ1Aの斜め後方を随伴して作業を行うトラクタ1Bの予定走行経路PPを表している。
ちなみに、図3及び図4に示す目標走行経路PTは、あくまで一例であり、どのような目標走行経路を設定するかは適宜変更が可能である。
【0055】
退避経路生成部56は、走行経路生成部53にて目標走行経路PTが生成されると、端末記憶部54に記憶されている圃場データや車体データ、及び、目標走行経路PTの経路データを用いて、走行領域R内の外周側領域R2に退避経路PE(図3図4参照)を生成する。
【0056】
退避経路PEは、図3及び図4に示すように、目標走行経路PTの最下流の作業経路PWの終端p1から外周側領域R2に設定された退避位置p2までトラクタ1Aを走行案内するための経路であり、最下流の作業経路PWの終端p1と退避位置p2とを連結している。退避位置p2は、トラクタ1Aが、目標走行経路PTに応じて走行領域R内に設定された予定走行経路PPの終端に到達した第2トラクタ1Bと干渉しない位置に設定されている。具体的には、退避位置p2は、当該退避位置p2に位置する第1トラクタ1Aと、予定走行経路PPの終端に位置するトラクタ1Bとが全く接触しない位置に設定されている。
【0057】
本実施形態では、退避経路生成部56は、退避経路PEとして、端末記憶部54に記憶されている圃場データや車体データ、及び、目標走行経路PTの経路データ等に応じて、生成可能な複数種類の退避経路PE1~PE4(図5図8参照)を生成するように構成されている。生成された複数種類の退避経路PE1~PE4は、携帯通信端末3の表示部51等のタッチ操作等によりユーザ等が任意に選択することができる。以下、複数種類の退避経路PE1~PE3について説明を加える。
【0058】
なお、図3図4に示すように、走行領域R内の外周側領域R2は、並列状に設定された複数の作業経路PWの並設方向(図中の左右方向)の両端部において、外周側領域R2における作業経路PWの延設方向(図中の上下方向)の両端部間に亘る一対のサイドマージンR22(第1領域)と、作業経路PWの延設方向の両端部において、一対のサイドマージンR22間に亘る一対の枕地領域R21(第2領域)とから構成されている。図3図9中において、細二点鎖線は中央側領域R1と外周側領域R2の境界を示し、細点線は枕地領域R21とサイドマージンR22の境界を示している。
ちなみに、一対のサイドマージンR22のうち、作業経路PWの並設方向で下流側(図中の右方側)のサイドマージンR22が、走行領域R内の外周側領域R2のうち、複数の作業経路の並設方向で、最下流の作業経路PWの外側の領域に該当する。
【0059】
図5に示すように、退避経路PE1は、退避位置p2が、最下流の作業経路PWの終端p1に隣接する枕地領域R21において、最下流の作業経路PWの終端p1から作業経路PWの並設方向の上流側(図中の左方側)に離れた位置に設定された経路となっている。
この退避経路PE1は、最下流の作業経路PWの終端p1から設定旋回半径L1で約1/4円弧に沿って左回りに旋回走行させてトラクタ1Aの走行方向を約90度転換する旋回経路P1と、その旋回経路P1の終端から設定距離L2だけ作業経路PWの並設方向の上流側(図中の左方側)に離れた退避位置p2に向かってトラクタ1Aを直進走行させる直進経路P2とから構成されている。
旋回経路P1の設定旋回半径L1は、トラクタ1Aの最小旋回半径以上に設定されており、直進経路P2の設定距離L2は、トラクタ1Aの後方の作業装置12(図1参照)が、旋回経路P1から外れて直進経路P2に移行する距離以上に設定されている。そのため、作業装置12が旋回経路P1を旋回している途中の不安定な姿勢で、トラクタ1Aが退避位置p2に到達して走行停止してしまうことを防止することができる。
【0060】
図6に示すように、退避経路PE2は、退避位置p2が、作業経路PWの並設方向で下流側(図中の右方側)のサイドマージンR22において、中央側領域R1における作業経路PWの並設方向の外縁部に隣接する中間領域内(作業経路PWの並設方向で、最下流の作業経路PWの外側の領域内の一例)に設定された経路である。
退避経路PE2における退避位置p2は、トラクタ1Aの後方を走行するトラクタ1Bの予定走行経路PPが設定されていないサイドマージンR22内に位置し、且つ、予定走行経路PPの最下流の作業経路(図中右端の作業経路)を走行中の後続のトラクタ1Bと干渉せずにすれ違えるだけ、予定走行経路PPの最下流の作業経路から外側に離間した位置であるので、予定走行経路PPの終端よりも上流側を走行中の後続のトラクタ1Bと干渉しない位置となっている。このとき、退避位置p2に位置するトラクタ1Aの向きと予定走行経路PPの最下流の作業経路を走行中の後続のトラクタBの向きとは反対側となる。
この退避経路PE2は、最下流の作業経路PWの終端p1から右方側のサイドマージンR22に進入しながらトラクタ1Aの走行方向を約180度転換する転回経路P3~P5と、その転回経路P3~P5の終端から所定距離だけ後方側(図中下方側)に移動した退避位置p2に向かってトラクタ1Aを直線走行させる直進経路P6とから構成されている。
直進経路P6も、当該経路を走行中のトラクタ1Aが、予定走行経路PPの最下流の作業経路(図中右端の作業経路)を走行中の後続のトラクタ1Bと干渉せずにすれ違えるだけ、予定走行経路PPの最下流の作業経路から外側に離間した位置に設定されている。
【0061】
なお、転回経路P3~P5は、図示の例では、最下流の作業経路PWの終端p1から所定の旋回半径で約1/4円弧に沿って右回りに旋回走行させてトラクタ1Aの走行方向を約90度転換する旋回経路P3と、当該旋回経路P3の終端から後方にトラクタ1Aを直進走行させる直進経路P4と、当該直進経路P4の終端から所定の旋回半径で約1/4円弧に沿って右回りに旋回走行させてトラクタ1Aの走行方向を約90度転換する旋回経路P5とを有するスイッチバック方式の転回経路となっているが、勿論、略1/2円弧に沿ってトラクタ1Aを旋回走行させるUターン経路となっていてもよい。
【0062】
図7に示すように、退避経路PE3は、退避位置p2が、作業経路PWの並設方向で下流側(図中の右方側)のサイドマージンR22において、作業経路PWの延設方向の両端部のうち、最下流の作業経路PWの終端p1の側の端部(図中の上端部)の領域内(作業経路PWの並設方向で、最下流の作業経路PWの外側の領域内の一例)に設定された経路である。退避位置p2は、走行領域Rの四隅領域に相当する領域に設定されている。
退避経路PE3における退避位置p2も、トラクタ1Aの後方を走行するトラクタ1Bの予定走行経路PPが設定されていないサイドマージンR22内に位置し、且つ、予定走行経路PPの最下流の作業経路を走行中の後続のトラクタ1Bとすれ違うことがない位置であるので、予定走行経路PPの終端よりも上流側を走行中のトラクタ1Bと干渉しない位置となっている。
この退避経路PE3は、最下流の作業経路PWの終端p1から右方側のサイドマージンR22に向けて約1/4円弧に沿って右回りに旋回走行させてトラクタ1Aの走行方向を約90度転換する旋回経路P7と、その旋回経路P7の終端から所定距離だけ右方側に移動した退避位置p2に向かってトラクタ1Aを直進走行させる直進経路P8とから構成されている。
【0063】
図8に示すように、退避経路PE4は、退避位置p2が、トラクタ1Aの自動走行を開始させるスタート地点Sに設定された経路である。スタート地点Sは、最上流の作業経路PWの上流側(図中下側)の枕地領域R21に設定されており、そのため、退避経路PE4における退避位置p2は、予定走行経路PPの最下流の作業経路を走行中の後続のトラクタ1Bとすれ違うことがない位置となっている。
この退避経路PE4は、最下流の作業経路PWの終端p1から、最下流の作業経路PWの下流側(図中上側)の枕地領域R21、作業経路PWの並設方向の上流側(図中左側)のサイドマージンR22、最上流の作業経路PWの上流側(図中下側)の枕地領域R21を左回りに順に走行させて退避位置p2(スタート地点S)に至る経路として構成されている。
なお、トラクタ1Aの自動走行を開始させるスタート地点Sは、目標走行経路PTの最上流側の地点に限らず、走行領域R内においてユーザ等がトラクタ1Aの自動走行の開始を希望する任意の地点に設定することができる。
ちなみに、図5図8に示す退避経路PE1~PE4も、あくまで一例であり、どのような退避経路を設定するかは適宜変更が可能である。
【0064】
次に、図10のフローチャート、及び、図9に基づいて、自動走行する前方側のトラクタ1Aと、手動走行する後方側のトラクタ1Bとで協調して作業を行っている場合に、トラクタ1Aの車載電子制御ユニット18により実行される退避動作の流れについて説明する。なお、図9は、退避経路PEとして、複数種類の退避経路PE1~PE3のうち、退避経路PE3が設定されている場合を例示している。
【0065】
本実施形態では、車載電子制御ユニット18には、トラクタ1Aとトラクタ1Bとの距離を測定する距離測定部112(図2参照)が備えられており、車載電子制御ユニット18は、図9に示すように、トラクタ1Aが最下流の作業経路PWの終端p1に到達するとトラクタ1Aを一旦停止させ、距離測定部112による測定距離Dtが設定距離Ds以下になるとトラクタ1Aを退避経路PE3に沿って自動走行させるように構成されている。
【0066】
距離測定部112は、例えば、後ライダーセンサ102の測定情報に基づいて、後方側のトラクタ1Bまでの距離を測定する距離測定処理を行うように構成されている。後ライダーセンサ102は3次元にて被写体までの距離を測定可能であるので、距離測定部112は、被写体の上端部までの距離及び下端部までの距離を測定し、被写体の高さも測定することができる。そこで、距離測定部112は、距離測定処理において、予め設定されたトラクタ1Bの高さに該当する被写体をトラクタ1Bと特定し、そのトラクタ1Bと特定した被写体までの距離を測定し、トラクタ1Aの後端位置(正確には作業装置12の後端位置)から後続のトラクタ1Bの前端位置までの間の車間距離を求めて測定距離Dtとしている。
なお、トラクタ1Bの高さは、例えば、ユーザ等が、トラクタ1Aの表示部や携帯通信端末3の表示部51等の表示装置に表示させる設定画面等を操作してトラクタ1Bの車両種別等を入力すると、その車両種別に対応付けられた高さをテーブル等から読み出し、その読み出した高さを後続のトラクタ1Bの高さに設定することができる。
また、距離測定部112は、後ライダーセンサ102の測定情報ではなく、例えば、後カメラ109の撮像画像等の他の情報に基づいて後方側のトラクタ1Bまでの距離を測定する距離測定処理を行うように構成されていてもよい。
【0067】
図9図10に示すように、車載電子制御ユニット18は、目標走行経路PTを走行中のトラクタ1Aが最下流の作業経路PWの終端p1に到達するとトラクタ1Aを一旦停止させ、距離測定部112にて後ライダーセンサ102の測定情報に基づく距離測定処理をリアルタイム等で繰り返し行わせて、トラクタ1Bまでの測定距離Dtを経時的に取得する(図10中のステップ♯1のYesの場合、ステップ♯2、ステップ♯3)。
【0068】
車載電子制御ユニット18は、取得した測定距離Dtと予め設定された設定距離Dsとを比較し、測定距離Dtが設定距離Dsを越えている間は、トラクタ1Bが設定距離Dsまで到達していないと判定し、退避経路PE3に沿ったトラクタ1Aの自動走行を開始しない(図10中のステップ♯4のNoの場合)。この場合、トラクタ1Aは、車載電子制御ユニット18による自動走行制御が行われず、最下流の作業経路PWの終端p1にて一旦停止状態を継続している。
【0069】
車載電子制御ユニット18は、取得した測定距離Dtと予め設定された設定距離Dsとを比較し、取得した測定距離Dtが設定距離Ds以下になると、トラクタ1Bが設定距離Dsに到達したと判定し、退避経路PE3に沿ったトラクタ1Aの自動走行を開始する(図10中のステップ♯4のYesの場合、ステップ♯5)。そして、車載電子制御ユニット18は、トラクタ1Aが退避位置p2に到達すると、トラクタ1Aの自動走行を停止する。
【0070】
なお、例えば、車載電子制御ユニット18は、トラクタ1Aが最下流の作業経路PWの終端p2に到達に到達した時点で、距離測定部112による測定距離Dtが設定距離Ds以下であれば、トラクタ1Aを一旦停止せずに、退避経路PE3に沿って自動走行させるように構成されていてもよい。
【0071】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0072】
(1)上記実施形態では、車載電子制御ユニット18が、トラクタ1Aが最下流の作業経路PWの終端p2に到達に到達するとトラクタ1Aを一旦停止させ、距離測定部112による測定距離Dtが設定距離Ds以下になるとトラクタ1Aを退避経路PE3に沿って自動走行させるように構成されている場合を例に示したが、このような構成に限られない。
【0073】
例えば、上記実施形態の改良として、車載電子制御ユニット18が、トラクタ1Aが最下流の作業経路PWの終端p2に到達に到達した時点で、距離測定部112による距離測定と、その測定距離Dtと設定距離Dsの比較を実行し、測定距離Dtが設定距離Ds以下であれば、トラクタ1Aを一旦停止せずに、退避経路PE3に沿って自動走行させるように構成されていてもよい。
【0074】
また、例えば、車載電子制御ユニット18は、トラクタ1Aが最下流の作業経路PWの終端p2に到達した時点やそこから所定時間遅れた時点でトラクタ1Aを退避経路PE3に沿って自動走行させるように構成されていてもよい。
また、例えば、車載電子制御ユニット18は、トラクタ1Aが最下流の作業経路PWの終端p1に到達するとトラクタ1Aを一旦停止させ、後方側のトラクタ1Bに搭乗するユーザ等の携帯通信端末3の操作により、携帯通信端末3からトラクタ1Aに対して自動走行を許可する指示が送信されて当該指示をトラクタ1Aが受信すると、トラクタ1Aを退避経路PE3に沿って自動走行させるように構成されていてもよい。
【0075】
また、例えば、トラクタ1Bが、予定走行経路PPにおける設定位置に到達したときにトラクタ1Aに自動走行を許可する指示を送信するように構成され、車載電子制御ユニット18が、トラクタ1Aが最下流の作業経路PWの終端p2に到達するとトラクタ1Aを一旦停止させ、後方側のトラクタ1Bから自動走行を許可する指示をトラクタ1Aが受信するとトラクタ1Aを退避経路PE3に沿って自動走行させるように構成されていてもよい。
【0076】
(2)車載電子制御ユニット18は、例えば、トラクタ1Aが協調作業モードで自動走行している場合に、距離測定部112に後ライダーセンサ102の測定情報に基づく距離測定処理をリアルタイム等で繰り返し行わせて、トラクタ1Bまでの測定距離Dtを経時的に取得し、その測定距離Dtが所定の距離に維持されるように、自動走行中のトラクタ1Aの走行速度を補正するように構成されていてもよい。
【0077】
(3)作業車両の構成は種々の変更が可能である。
例えば、作業車両は、エンジン9と走行用の電動モータとを備えるハイブリット仕様に構成されていてもよく、また、エンジン9に代えて走行用の電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、走行部として、左右の後輪6に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、左右の後輪6が操舵輪として機能する後輪ステアリング仕様に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 トラクタ(作業車両)
1A トラクタ(第1作業車両)
1B トラクタ(第2作業車両)
18 車載電子制御ユニット(自動走行制御部)
56 退避経路生成部
112 距離測定部
R 走行領域
R1 中央側領域
R2 外周側領域
R21 枕地領域
R22 サイドマージン
PT 目標走行経路
PW 作業経路
PC 連結経路
PE 退避経路
PE1 退避経路
PE2 退避経路
PE3 退避経路
p1 最下流の作業経路の終端
p2 退避位置
PP 予定走行経路
Ds 設定距離
Dt 測定距離


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10