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特許7094850抗真菌活性を有するラクトバチルス・ファーメンタム菌
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】抗真菌活性を有するラクトバチルス・ファーメンタム菌
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220627BHJP
   A23C 9/123 20060101ALI20220627BHJP
   A23K 10/18 20160101ALI20220627BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20220627BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20220627BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20220627BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220627BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A23C9/123
A23K10/18
A23L5/00 J
A23L33/135
A61K35/747
A61P31/04
A61P31/10
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018187992
(22)【出願日】2018-10-03
(62)【分割の表示】P 2018510815の分割
【原出願日】2016-08-30
(65)【公開番号】P2019013240
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2018-11-26
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】15183198.9
(32)【優先日】2015-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM32092
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM32086
(73)【特許権者】
【識別番号】503260310
【氏名又は名称】セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】スィスィーリェ ルゲ マルビ ニルスン
(72)【発明者】
【氏名】ティーナ ホアンベク
(72)【発明者】
【氏名】ピーア ラスムスン
(72)【発明者】
【氏名】ローネ ポウルスン
(72)【発明者】
【氏名】トマス エクハルト
(72)【発明者】
【氏名】ゴナ ウーアゴー
(72)【発明者】
【氏名】エラヘ ガネイ モガダム
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】吉森 晃
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-236638(JP,A)
【文献】特開昭61-53218(JP,A)
【文献】特表2018-526993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-1/38
A23C 9/00-9/20
PubMed、JSTPlus/JST7580/JMEDPlus(JDream3)、AGRICOLA/CROPU/FSTA/BIOSIS/CAPLUS/EMBASE/MEDLINE/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM32092で寄託されたラクトバチルス・ラムノサスCHCC15860の細菌株。
【請求項2】
請求項1に記載のラクトバチルス・ラムノサスの細菌株を含む組成物。
【請求項3】
前記組成物は、受託番号DSM32086で寄託されたラクトバチルス・ファーメンタムの細菌株を更に含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの凍結保護化合物を更に含む、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、冷凍物1gあたり少なくとも109コロニー形成単位の濃度、又は冷凍物1gあたり少なくとも1010コロニー形成単位の濃度、又は冷凍物1gあたり少なくとも1011コロニー形成単位の濃度で乳酸菌を含有する固体凍結又は凍結乾燥スターター培養物である、請求項2~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のラクトバチルス・ラムノサスの細菌株又は請求項2~5のいずれか1項に記載の組成物を乳又は乳製品に添加することで混合物を得、次いで、pHが4.6未満に達するまで前記乳又は乳製品の混合物を約22℃~約43℃の温度で発酵することを含む、発酵乳製品を製造する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法によって得られる発酵乳製品を食料、飼料又は医薬製品に添加することを含む、食料、飼料又は医薬製品を製造する方法。
【請求項8】
請求項1に記載のラクトバチルス・ラムノサスの細菌株又は請求項2~5のいずれか1項に記載の組成物を含む食料、飼料又は医薬製品。
【請求項9】
食料、飼料又は医薬製品を製造するための請求項1に記載のラクトバチルス・ラムノサスの細菌株又は請求項2~5のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗真菌活性(antifungal activity)を有するラクトバチルス・ファーメンタム菌、該細菌を含む組成物、特に、該細菌を含む補助培養物(adjunct cultures)、該細菌又は培養物を用いて発酵乳製品を製造する方法、並びに、これらから得られる食料、飼料、医薬製品を含めた発酵乳製品に関する。
【背景技術】
【0002】
何十年もの間、乳酸菌は、食料の貯蔵寿命を延ばすために使用されてきた。発酵中、乳酸菌は、乳酸その他の有機酸を産生するので発酵産物のpHが下がる。酸性pHを有する製品では、病原菌や腐敗細菌を含めほとんどの微生物のさらなる増殖が起こりにくい。しかしながら、低いpHの影響を受けずに増殖する酵母やカビが、しばしば発酵乳製品の腐敗を引き起こす。
【0003】
有機酸の生成に加えて、抗菌活性、特に抗真菌活性を有する代謝産物を生成する乳酸菌もある。
【0004】
例えば、欧州特許出願第EP0221499号では、キュウリジュースを添加した寒天培地で培養した場合、様々なカビ(molds)の増殖を阻害することが可能なラクトバチルス・ラムノサスNRRL-B-15972の抗真菌特性について記載されている。同様に、欧州特許出願第EP0576780号は、カゼイン加水分解物及び酵母抽出物を添加した乳清ベースの培地で、ペニシリウム(Penicillium)、クラドスポリウム(Cladosporium)、フザリウム(Fusarium)及びカンジダ(Candida)の増殖を明らかに阻害する株であるラクトバチルス・ラムノサスLC‐705に関する。欧州特許出願第EP1442113号は、抗微生物作用を有するプロピオニバクテリウム・ジェンセニイ(Propionibacterium jensenii)と、ラクトバチルス・ラムノサスといったラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)の混合物、及びその生物防除(bioprotection)への使用について記載する。欧州特許出願第EP13717237号は、抗真菌作用を有するラクトバチルス・パラカゼイ株について記載する。欧州特許出願第EP13714671号は、抗真菌作用を有するラクトバチルス・ラムノサス株について記載する。
【0005】
抗真菌作用を有する乳酸菌の概要、ならびにパンや果実の防除のためのそれらの使用は、Gerez et al.,2013に記載されている。
【0006】
さらに、抗真菌作用を有する培養物は市販されており、例えば、Chr.HansenのFreshQ(登録商標)培養物、並びにDupont,SACCO及びBioproxの培養物が挙げられる。実際の食品用途において顕著な抗真菌作用をもたらす培養物の同定が必要なため、抗真菌作用を有する培養物を開発することは重要な課題である。また、生物防除培養物(bioprotective cultures)候補の選択において慎重な評価が必要な別の要素として、食品の官能特性への影響がある。市販品において問題となるのは、生成物が所望のpHに達した後で培養物が酸性化し続ける後酸性化の程度である。これは、特に、製品の冷却前又は発酵段階中に発酵タンク内で発酵物を保持する間に貯蔵温度が上昇するという問題などが代表である。
【0007】
さらに、市販の生物防除培養物は、望ましくないフレーバーインパクトとして知覚されうる「クリーミーな」風味を引き起こす過剰なジアセチル風味成分を生成すると考えられる(Aunsbjerg et al.,2015)。
【0008】
したがって、抗真菌作用を有しフレーバーインパクトが最小限な新規かつ有用な食品グレードの細菌が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、受託番号:DSM32093で寄託された真菌ペニシリウム・ソリタム(Penicillium solitum)の増殖又は受託番号:DSM32094で寄託された真菌ペニシリウム・ブレビコンパクタム(Penicillium brevicompactum)の増殖を少なくとも50%阻害する能力を有するラクトバチルス・ファーメンタム種(species Lactobacillus fermentum)の細菌を提供する。
【0010】
鋭意努力により、発酵製品を生産する方法において生物防御株として使用された場合、顕著な抗真菌作用やさらなる利点をもたらすラクトバチルス・ファーメンタム株の新しい群が同定された。ペニシリウム・ソリタム又はペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖を少なくとも50%阻害する、合計10種の異なるラクトバチルス・ファーメンタム株が同定された。
【0011】
本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株は、発酵中の発酵乳製品におけるスターター培養物によって産生されるアセトアルデヒドの濃度を少なくとも50%低減する能力を有するという特徴をさらに有しうる。
【0012】
関連する実施形態では、本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株は、少量、例えば0~5ppmの範囲内のジアセチルしか分泌しないことを更に特徴としてもよい。
【0013】
本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株は、発酵後の貯蔵中に該ラクトバチルス・ファーメンタムを含む発酵乳製品のpHを、該ラクトバチルス・ファーメンタムを含まない同じスターター培養物を用いて発酵させた乳製品に比べて上昇させるという特徴を代替的に又は追加的に有してもよい。
【0014】
したがって、本発明は、上述の細菌、該細菌を含む組成物、発酵乳製品を製造するために該細菌を用いる方法、並びに、これらから得られる製品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、スターター培養物のみ(基準、第1列)、FreshQ(登録商標)4(第2列)と共に、Holdbac(登録商標)YM-C Plus(第3列)と共に、又はラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591(第4列)と共に用いて発酵させた乳から調製したプレート上のカビの増殖を示す。プレートは、7±1℃で19日間(上段)及び27日間(下段)インキュベートした。以下の標的汚染物質:(A)ペニシリウム・カルネウム、(B)ペニシリウム・パネウム、及び(C)ペニシリウム・ロックフォルティを500胞子/スポットの濃度で添加した。
【0016】
図2図2は、スターター培養物のみ(基準、第1列)、FreshQ(登録商標)4(第2列)と共に、Holdbac(登録商標)YM-C Plus(第3列)と共に、又はラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591(第4列)と共に用いて発酵させた乳から調製したプレート上のカビの増殖を示す。プレートは、25±1℃で6日間(上段)及び11日間(下段)でインキュベートした。以下の標的汚染物質:(A)ペニシリウム・カルネウム、(B)ペニシリウム・パネウム、及び(C)ペニシリウム・ロックフォルティを500胞子/スポットの濃度で添加した。
【0017】
図3図3は、スターター培養物のみ(基準、第1列)、FreshQ(登録商標)4(第2列)と共に、Holdbac(登録商標)YM-C Plus(第3列)と共に、又はラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591(第4列)と共に用いて発酵させた乳から調製したプレート上のカビの増殖を示す。プレートは、7±1℃で19日間(上段)及び27日間(下段)でインキュベートした。以下の標的汚染物質:(A)ペニシリウム・ブレビコンパクタム、(B)ペニシリウム・クラストサム、及び(C)ペニシリウム・ソリタムを500胞子/スポットの濃度で添加した。
【0018】
図4図4は、スターター培養物のみ(基準、第1列)、FreshQ(登録商標)4(第2列)と共に、Holdbac(登録商標)YM-C Plus(第3列)と共に、又はラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591(第4列)と共に用いて発酵させた乳から調製したプレート上のカビの増殖を示す。プレートは、25±1℃で6日間(上段)及び11日間(下段)でインキュベートした。以下の標的汚染物質:(A)ペニシリウム・ブレビコンパクタム(DSM32093)、(B)ペニシリウム・クラストサム、及び(C)ペニシリウム・ソリタム(DSM32093)を500胞子/スポットの濃度で添加した。
【0019】
図5図5は、スターター培養物のみ(基準、第1列)、FreshQ(登録商標)4(第2列)と共に、Holdbac(登録商標)YM-C Plus(第3列)と共に、又はラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591(第4列)と共に用いて発酵させた乳から調製したプレート上の酵母の増殖を示す。プレートは、7±1℃で11日間(上段)又は25±1℃で5日間(下段)でインキュベートした。以下の標的汚染物質:(A)トルラスポラ・デルブルッキー、(B)クリプトコッカス・ハンセニ、(C)デバリオミセス・ハンセニ)、及び(D)ヤロウイア・リポリティカを1×103cfu/スポット(上段)、1×102cfu/スポット(中段)、及び1×101cfu/スポット(下段)の濃度で添加した。
【0020】
図6図6は、スターター培養物のみ(基準)、又はスターター培養物をFreshQ(登録商標)4、Holdbac(登録商標)YM-C Plus又はラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591と組み合わせて用いて発酵させた発酵乳製品を7±1℃で14日間保存した後のジアセチルレベルを示す。LOD:検出限界(Limit of detection)。LOQ:定量限界(Limit of quantification)。
【0021】
図7図7は、スターター培養物のみ(基準、第1列)、ラクトバチルス・ラムノサスCHCC15860(第2列)と共に、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591(第3列)と共に、又はラクトバチルス・ラムノサスCHCC15860とラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591(第4列)との組み合わせと共に用いて発酵させた乳から調製したプレート上のカビの増殖を示す。プレートは25±1℃で5日間でインキュベートした。以下の標的汚染物質を500胞子/スポットの濃度で添加した:(A)ペニシリウム・カルネウム、(B)ペニシリウム・パネウム、及び(C)ペニシリウム・ロックフォルティ。
【0022】
図8図8は、(1)スターター培養物のみ、(2)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12798と共に(3)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12797、(4)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591、(5)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14588、(6)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15844、(7)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15865、(8)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15847、(9)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15848、(10)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15926、及び(11)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC2008を用いて発酵させた乳から調製したプレート上のカビの増殖を示す。プレートは、25±1℃で5日間(写真の左カラム)又は7日間(写真の右カラム)でインキュベートした。以下の標的汚染物質を500胞子/スポットの濃度で添加した:(A)ペニシリウム・ブレビコンパクタム(DSM32094)、(B)ペニシリウム・クラストサム、及び(C)ペニシリウム・ソリタム(DSM32093)。
【0023】
図9図9は、スターター培養物のみ(基準)、又はスターター培養物をFreshQ(登録商標)4、Holdbac(登録商標)YM-C Plus、又はラクトバチルス・ファーメンタム株と組み合わせて用いて発酵させた発酵乳製品を7±1℃で14日間保存した後のジアセチルレベルを示す。LOD:検出限界(Limit of detection)。LOQ:定量限界(Limit of quantification)。
【0024】
図10図10は、(A)7±1℃及び(B)25±1℃で28日間保存した発酵乳製品におけるpHの経時的な変化を示す。これらの製品は、スターター培養物のみ(基準)、又はスターター培養物をFreshQ(登録商標)4、Holdbac(登録商標)(登録商標)YM-C Plus、又はラクトバチルス・ファーメンタム株と組み合わせて用いて発酵させた。
【0025】
図11図11は、(A)7±1℃及び(B)25±1℃で21日間保存した発酵乳製品におけるpHの経時的な変化を示す。これらの製品は、スターター培養物のみ(基準、△)、又はスターター培養物をFreshQ(登録商標)4(◇)、Holdbac(登録商標)YM-C Plus(〇)又はラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591(□)と組み合わせて用いて発酵させた。
【0026】
図12図12は、スターター培養物のみ(基準)、又はスターター培養物をラクトバチルス・ファーメンタム株と組み合わせて用いて発酵させた発酵乳製品を7±1℃で14日間保存した後のアセトアルデヒドレベルを示す。LOD:検出限界(Limit of detection)。LOQ:定量限界(Limit of quantification)。
【0027】
図13図13は、スターター培養物のみ(基準)、又はスターター培養物をラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591と組み合わせて用いて発酵させた発酵乳製品を7±1℃で14日間保存した後のアセトアルデヒドレベルを示す。LOD:検出限界(Limit of detection)。LOQ:定量限界(Limit of quantification)。
【0028】
図14図14は、4種の市販のスターター培養物、FD-DVS YF-L812、F-DVS YF-L901、F-DVS YoFlex Mild 2.0、及びF-DVS CH-1を乳(1%脂肪及び4.5%タンパク質)において43℃で培養させた酸化曲線を示す。
【0029】
図15図15は、4種の市販のスターター培養物、FD-DVS YF-L812、F-DVS YF-L901、F-DVS YoFlex Mild 2.0 及びF-DVS CH-1のいずれか1つを用いて発酵させたヨーグルトを6℃で43日間まで保存後の後酸性化曲線を示す。
【0030】
図16図16は、(1)スターター培養物FD-DVS YF-L812のみ、(2)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12798と共に(3)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12797、(4)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591、(5)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14588、(6)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15844、(7)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15865、(8)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15847、(9)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15926、及び(10)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC2008を用いて発酵させた乳から調製したプレート上のカビの増殖を示す。プレートは、25±1℃で4日間(写真の左カラム)又は8日間(写真の右カラム)でインキュベートした。標的汚染物質であるペニシリウム・ブレビコンパクタム(DSM32094)を500胞子/スポットの濃度で添加した。
【0031】
図17図17は、(1)スターター培養物F-DVS CH-1のみ、(2)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12798と共に(3)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12797、(4)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591、(5)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14588、(6)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15844、(7)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15865、(8)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15847、(9)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15926、及び(10)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC2008を用いて発酵させた乳から調製したプレート上のカビの増殖を示す。プレートは、25±1℃で4日間(写真の左カラム)又は8日間(写真の右カラム)でインキュベートした。標的汚染物質であるペニシリウム・ブレビコンパクタム(DSM32094)を500胞子/スポットの濃度で添加した。
【0032】
図18図18は、(1)スターター培養物FD-DVS YF-L812のみ、(2)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12798と共に(3)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12797、(4)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591、(5)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14588、(6)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15844、(7)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15865、(8)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15847、(9)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15926、及び(10)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC2008を用いて発酵させた乳から調製したプレート上のカビの増殖を示す。プレートは、25±1℃で4日間(写真の左カラム)又は8日間(写真の右カラム)でインキュベートした。標的汚染物質であるペニシリウム・ソリタム(DSM32093)を500胞子/スポットの濃度で添加した。
【0033】
図19図19は、(1)スターター培養物F-DVS CH-1のみ、(2)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12798と共に(3)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12797、(4)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591、(5)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14588、(6)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15844、(7)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15865、(8)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15847、(9)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15926、及び(10)ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC2008を用いて発酵させた乳から調製したプレート上のカビの増殖を示す。プレートは、25±1℃で4日間(写真の左カラム)又は8日間(写真の右カラム)でインキュベートした。標的汚染物質であるペニシリウム・ソリタム(DSM32093)を500胞子/スポットの濃度で添加した。
【0034】
図20図20は、スターター培養物FD DVS YF-L812又はF-DVS CH-1のみ(基準)、又はスターター培養物を9種のラクトバチルス・ファーメンタム株と組み合わせて用いて発酵させた発酵乳製品を7±1℃で14日間保存した後のジアセチルレベルを示す。LOD:検出限界(Limit of detection)。LOQ:定量限界(Limit of quantification)。
【0035】
図21図21は、スターター培養物FD DVS YF-L812又はF-DVS CH-1のみ(基準)、又はスターター培養物を9種のラクトバチルス・ファーメンタム株と組み合わせて用いて発酵させた発酵乳製品を7±1℃で14日間保存した後のアセトアルデヒドレベルを示す。LOD:検出限界(Limit of detection)。LOQ:定量限界(Limit of quantification)。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、受託番号:DSM32093で寄託された真菌ペニシリウム・ソリタムの増殖又は受託番号:DSM32094で寄託された真菌ペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖を少なくとも50%阻害する能力を有するラクトバチルス・ファーメンタム種の細菌を提供する。好ましくは、本発明は、乳又は乳ベースの基質、例えば、発酵乳製品において増殖した場合、受託番号:DSM32093で寄託された真菌ペニシリウム・ソリタムの増殖又は受託番号:DSM32094で寄託された真菌ペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖を少なくとも50%阻害する能力を有するラクトバチルス・ファーメンタム種に関する。真菌の増殖を阻害する能力は、該分野で公知の多くの様々なアッセイによって決定することができる。本出願の文脈において、受託番号:DSM32093で寄託された真菌ペニシリウム・ソリタムの増殖又は受託番号:DSM32094で寄託された真菌ペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖を少なくとも50%阻害する能力は、好ましくは、以下を含むアッセイを用いることによって決定される:
(1)
(a)少なくとも107CFU/gの濃度の前記ラクトバチルス・ファーメンタムとスターター培養物を乳に植菌すること;
(b)pHが4.6に達するまで発酵すること;及び
(c)寒天の添加により発酵乳を固化すること、により発酵乳製品を調製すること;
(2)寒天で固化した発酵乳上において、500胞子/スポットの濃度で前記ペニシリウム・ソリタム又はペニシリウム・ブレビコンパクタムのスポットを少なくとも1つ生成し、これを25℃で7日間インキュベートすること;並びに
(3)前記ペニシリウム・ソリタム又はペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖によって形成されたコロニーの最大直径を決定し、ラクトバチルス・ファーメンタム株が存在しないこと以外は同じ条件で形成されたコロニーの最大直径に対する百分率として表すことによって、阻害率を決定すること。
【0037】
本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株は、該細菌を用いて製造した食料製品の貯蔵安定性を高めるので、特に有利である。代替的に、本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株は、受託番号:DSM32093で寄託された真菌ペニシリウム・ソリタムの増殖及び受託番号:DSM32094で寄託された真菌ペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖を少なくとも50%阻害する。関連する実施形態では、本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株は、受託番号:DSM32093で寄託された真菌ペニシリウム・ソリタムの増殖及び/又は受託番号:DSM32094で寄託された真菌ペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖を、60%、少なくとも70%、又は少なくとも75%阻害する。
【0038】
上記アッセイにおいて同定された本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株の少なくとも107CFU/gという濃度は、優れた抗真菌作用をもたらす濃度を表すものであることが理解されるべきである。したがって、本発明は、107CFU/g~1011CFU/g、107CFU/g~1010CFU/g、及び107CFU/g~109CFU/gの濃度といった、少なくとも107CFU/gの濃度の本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株を包含するが、より低い濃度でも良好な抗真菌作用も得られるのであれば、本発明はこれらの濃度に限定されない。
【0039】
本発明の一態様によれば、本発明の細菌は、食料製品の官能特性に影響を及ぼす揮発性化合物を低量しか分泌しない又は本質的に分泌しないことをさらに特徴としてもよい。市販のストレプトコッカス・サーモフィルスとラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカスの混合物といった一般的なスターター培養物は、発酵製品の官能特性に大きく影響する揮発性化合物を産生することが知られている。アセトアルデヒド、ジアセチル及びアセトインは、食料製品の官能特性に影響を及ぼす既知の揮発性化合物である。関連する実施形態では、本発明の細菌は、スターター培養物中の他の細菌によって産生されるアセトアルデヒドの存在を減少させることを特徴とする。例えば、ある本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株は、発酵中の発酵乳製品におけるスターター培養物によって産生されるアセトアルデヒドの濃度を少なくとも50%低減する能力を有することをさらに特徴としてもよい。該低減は、本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株を用いずに製造された発酵製品と比較して決定される。発酵製品中のアセトアルデヒド濃度を決定するための様々なアッセイが該技術分野において知られており、本発明の目的のために使用することができる。発酵中の発酵乳製品におけるスターター培養物によって産生されるアセトアルデヒドの濃度を少なくとも50%を低減する能力は、好ましくは、以下を含むアッセイで決定される:
(1)
(a)少なくとも107CFU/gの濃度の前記ラクトバチルス・ファーメンタムとスターター培養物を乳に植菌すること、及び
(b)pHが4.6に達するまで発酵すること、により発酵乳製品を調製すること;
(2)発酵乳製品を7±1℃で14日間保存すること;並びに
(3)1gの発酵乳製品に対し200μlの4N H2S04を添加し、静的ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによってアセトアルデヒドの濃度を決定すること。
【0040】
アセトアルデヒドは、発酵中に乳酸菌によって生成される味成分である。ある用途ではこの成分は望ましいものの、他の用途ではアセトアルデヒドの存在を低減又は回避することが有利である。したがって、発酵乳製品におけるアセトアルデヒドの濃度を低減するラクトバチルス・ファーメンタム菌は、特定の用途、例えば、マイルド又は甘味を加えたヨーグルトを調製する場合に有利である。本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株は、例えば、発酵中の発酵乳製品におけるスターター培養物によって産生されるアセトアルデヒドの濃度を、少なくとも75%、少なくとも95%又は少なくとも98%低減してもよい。
【0041】
代替的又は追加的に、本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株は、0~5ppmの範囲内のジアセチルを分泌するという特徴を有しうる。ジアセチルの分泌は、該分野で公知の多くの様々なアッセイによって決定することができるが、好ましくは、以下を含むアッセイで決定される:
(1)
(a)少なくとも107CFU/gの濃度の前記ラクトバチルス・ファーメンタムとスターター培養物を乳に植菌すること、及び
(b)pHが4.6に達するまで発酵すること、により発酵乳製品を調製すること;
(2)発酵乳製品を7±1℃で14日間保存すること;並びに
(3)1gの発酵乳製品に対し200μlの4N H2S04を添加し、静的ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによりジアセチルの濃度を決定すること。
【0042】
低濃度のジアセチルを分泌するラクトバチルス・ファーメンタム菌は、これらの菌株を用いた食料製品を製造する方法において有利である。というのは、かかる揮発性化合物を高濃度で産生する抗真菌活性を発揮する他の菌株では、最終製品の味に影響を及ぼしてしまうので、すべての用途に使用できないからである。本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株は、0~3ppm又は0~2ppmの範囲内のジアセチルを分泌するということを特徴としてもよい。
【0043】
本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株は、さらなる有利な効果を奏することを特徴としてもよい。例えば、これらの菌株は、発酵後の貯蔵中に該ラクトバチルス・ファーメンタムを含む発酵乳製品のpHを、該ラクトバチルス・ファーメンタムを含まない同じスターター培養物を用いて発酵させた乳製品に比べて上昇させる(つまり、後酸性化に対抗する)ことを特徴としてもよい。このpHの上昇は、少なくとも0.1の値の上昇であり、発酵製品を25℃で21日間保存した後に測定することが好ましい。上述のように、先行技術の抗真菌細菌は、後酸性化をもたらすことが観察された。本発明者らは、驚くべきことに、本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株は、後酸性化をもたらさないのみならず、実際にpH値を上昇させることによって後酸性化に対抗することを見出した。以下の実施例に示されるように、この効果は、特に市販の抗真菌細菌と一緒に使用される場合、多くの市販のスターター培養物を含め顕著な後酸性化を示すスターター培養物を用いる発酵プロセスにおいて特に顕著である。
【0044】
本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株は、例えば、発酵後の貯蔵中に該ラクトバチルス・ファーメンタムを含む発酵乳製品のpHを、該ラクトバチルス・ファーメンタムを含まない同じスターター培養物を用いて発酵させた乳製品に比べて上昇させ、このpHの上昇は少なくとも0.1の値の上昇であり、発酵製品を25℃で21日間保存した後に測定され、該スターター培養物は、発酵中の乳製品のpHを10時間以内にpH4.6の値まで低下させることができる乳酸菌を含むことを特徴としてもよい。例えば、アッセイは、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)やラクトバチルス・デルブルッキー亜種(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)の混合物ベースでもよい。それぞれの混合物は、ヨーグルトの製造のために多用され、後酸性化を引き起こすことが知られている。
【0045】
関連する実施形態では、このようなラクトバチルス・ファーメンタムを含む発酵乳製品は、25℃で少なくとも14日間保存された場合pHを4.0超で維持する、ここで、該発酵乳製品は、以下の工程を含む方法によって得られる:少なくとも107CFU/gの濃度の前記ラクトバチルス・ファーメンタムとスターター培養物を乳に植菌すること;及び、pHが4.6に達するまで発酵すること;発酵産物を撹拌して冷却すること。従って、これらの本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株は、従来技術の生体防除培養物や、従来のスターター培養物においてさえ観察された後酸性化効果を低減する。25℃で少なくとも14日間保存された場合pHを4.0超で維持することができるという本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株の特定事項は、単にこのような効果を決定するのに一般的に使用されるアッセイについての特徴であることが理解されるべきである。本発明の本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株やそれを含む組成物(食料又は飼料製品を含む)が実際にこれらの条件下で貯蔵される必要はなく、必須要件でもない。再度説明すると、一態様では、アッセイは、発酵中の乳製品のpHを10時間以内にpH4.6の値まで低下させることができる乳酸菌を含むスターター培養物を用いて実施してもよい。例えば、アッセイは、ストレプトコッカス・サーモフィルスとラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカスの混合物ベースでもよい。
【0046】
本発明の細菌は、有利には、以下の寄託株の1つに由来してもよい:
(a)ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ). Inhoffenstr. 7B. D-38124 Braunschweigに受託番号:32084で寄託されたラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC12798:
(b)ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ). Inhoffenstr. 7B. D-38124 Braunschweigに受託番号:32085で寄託されたラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC12797:
(c)ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ). Inhoffenstr. 7B. D-38124 Braunschweigに受託番号:32086で寄託されたラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC14591:
(d)ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ). Inhoffenstr. 7B. D-38124 Braunschweigに受託番号:32087で寄託されたラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC14588:
(e)ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ). Inhoffenstr. 7B. D-38124 Braunschweigに受託番号:32088で寄託されたラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC15844:
(f)ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ). Inhoffenstr. 7B. D-38124 Braunschweigに受託番号:32089で寄託されたラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC15865:
(g)ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ). Inhoffenstr. 7B. D-38124 Braunschweigに受託番号:32090で寄託されたラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC15847:
(h)ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ). Inhoffenstr. 7B. D-38124 Braunschweigに受託番号:32091で寄託されたラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC15848:
(i)ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ). Inhoffenstr. 7B. D-38124 Braunschweigに受託番号:32096で寄託されたラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC15926:
(j)ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ). Inhoffenstr. 7B. D-38124 Braunschweigに受託番号:22584で寄託されたラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC2008:
(k)(a)~(j)に記載の寄託細菌の1つから得ることができる変異株、ここで、該変異株は、以下の工程を含むアッセイにおいて、受託番号:DSM32093で寄託された真菌ペニシリウム・ソリタムの増殖又は受託番号:DSM32094で寄託された真菌ペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖を少なくとも50%阻害する能力を有する:
(1)
(a)少なくとも107CFU/gの濃度の前記ラクトバチルス・ファーメンタムとスターター培養物を乳に植菌すること、
(b)pHが4.6に達するまで発酵すること、及び
(c)寒天の添加により発酵乳を固化すること、により発酵乳製品を調製すること;
(2)寒天で固化した発酵乳上において、500胞子/スポットの濃度で前記ペニシリウム・ソリタム又はペニシリウム・ブレビコンパクタムのスポットを少なくとも1つ生成し、これを25℃で7日間インキュベートすること;並びに
(3)前記ペニシリウム・ソリタム又はペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖によって形成されたコロニーの最大直径を決定し、ラクトバチルス・ファーメンタム株が存在しないこと以外は同じ条件で形成されたコロニーの最大直径に対する百分率として表すことによって、阻害率を決定すること。
【0047】
本出願の文脈において、用語「乳酸菌(lactic acid bacteria)」又は「乳酸菌(LAB)」は、糖の発酵の主な代謝最終産物として乳酸を生産する食品グレードの細菌を指す。これらの細菌は、共通の代謝的特徴及び生理学的特徴を有し、通常、グラム陽性、低GC、酸耐性、非胞子形成性、非呼吸性、棒状の桿菌又は球菌である。発酵段階では、これらの細菌による乳糖の消費が乳酸の形成を引き起こし、pHを低下させてタンパク質凝集物の形成をもたらす。したがって、これらの細菌は乳の酸性化及び乳製品の質感に関与する。本明細書で使用される用語「乳酸菌」は、ラクトバチルス属の種(Lactobacillus spp.)、ビフィドバクテリウム属の種(Bifidobacterium spp.)、ストレプトコッカス属の種(Streptococcus spp.)、ラクトコッカス属の種(Lactococcus spp.)といった属の細菌、例えば、ラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、及びリューコノストック属の種(Leuconostoc spp.)に属する細菌を包含するが、これらに限定されない。
【0048】
繁殖する最適温度によるが、乳酸菌は中温性又は好熱性乳酸菌としての特徴を有する。「中温性(mesophile)」という用語は、中程度の温度で最も良好に繁殖する微生物を指す。用語「中温発酵(mesophilic fermentation)」は、約22℃~約35℃の間の温度での発酵を指す。用語「中温発酵乳製品(mesophilic fermented milk product)」は、中温性スターター培養物の中温発酵により調製された発酵乳製品を指し、そのような発酵乳製品として、バターミルク、サワーミルク、カルチャードミルク、スメタナ、サワークリーム及びフレッシュチーズ、例えばクアーク、トバログ及びクリームチーズが挙げられる。産業上最も有用な中温性細菌として、ラクトコッカス属の種及びリューコノストック属の種が挙げられる。
【0049】
用語「好熱性(thermophile)」は、高温で最も良好に繁殖する微生物を指す。用語「好熱発酵(thermophilic fermentation)」は、約35℃~約45℃で行う発酵方法を指す。用語「好熱発酵乳製品(thermophilic fermented milk product)」は、好熱性スターター培養物を用いる好熱発酵により調製された発酵乳製品を指し、そのような発酵乳製品として、セットヨーグルト、スタードヨーグルト、ステインドヨーグルト及び飲用ヨーグルトが挙げられる。産業上最も有用な好熱性細菌として、ストレプトコッカス属の種及びラクトバチルス属の種が挙げられる。
【0050】
以下に概説するように、本発明は、中温発酵及び好熱発酵を用いる方法を包含する。
【0051】
真菌、酵母及びカビに関して「阻害する」という用語は、例えば、本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株を含む食料製品内部及び/又は食料製品表面上の真菌、酵母及びカビの増殖又は胞子形成又は胞子数又は濃度が、かかる細菌を含まない食料製品に比べて低減することを指す。本発明のラクトバチルス・ファーメンタム菌によってもたらされる阻害の程度は、好ましくは、ラクトバチルス・ファーメンタム菌の存在下及び非存在下での寒天固化発酵乳における増殖によって決定される。
【0052】
本出願の文脈において、用語「変異株(mutant)」は、遺伝子操作、放射線照射及び/又は化学処理などの手段により作製された本発明の株に由来する株として理解されるべきである。変異株は、本発明の寄託株と比較して機能的に同等の変異株、例えば、特に抗真菌特性に関し、実質的に同一、又は改善された特性を有する変異株である。そのような変異株は、本発明の一部である。特に、用語「変異株(mutant)」は、エタンメタンスルホン酸(EMS)又はN-メチル-N’-ニトロ-N-ニトログアニジン(NTG)などの化学変異原やUV光などによる処理を含む通常使用される任意の突然変異形成処理に本発明の株を供することにより取得された株、又は自然発生した突然変異株を指す。変異株は、複数の突然変異形成処理(1つの処理は、1つの突然変異形成処理であって、その後にスクリーニング/選択工程が行われるものとして理解されるべきである)に供されたものでもよいが、好ましくは、20以下、又は10以下、又は5以下の処理(又はスクリーニング/選択工程)が実施されたものであることが望ましい。好ましい変異株では、親株と比較して、細菌ゲノム中のヌクレオチドの5%未満、又は1%未満、又は0.1%未満が、別のヌクレオチドによりシフトしているか又は欠失している。
【0053】
本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に特に示さない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するものとして解釈すべきである。
【0054】
本発明は、上述のアッセイにおける寒天固化発酵乳上において、受託番号:DSM32093で寄託された真菌ペニシリウム・ソリタムCHCC16948の増殖又は受託番号:DSM32094で寄託された真菌ペニシリウム・ブレビコンパクタムCHCC16935の増殖を少なくとも50%阻害する能力を有する少なくとも1種のラクトバチルス・ファーメンタム種を含む組成物を更に提供する。
【0055】
それぞれの組成物は、乳酸菌を含め数多くのさらなる細菌を含んでもよい。本発明の好ましい組成物は、ラクトバチル属の種、ビフィドバクテリウム属の種、ストレプトコッカス属の種、ラクトコッカス属の種、例えば、ラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・ラクティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びリューコノストック属の種の一つ又は複数から選択される少なくとも1種の細菌を更に含むという特徴を有する。
【0056】
特に好ましい実施形態では、本発明の組成物は、上述の抗真菌活性を有する少なくとも1種のラクトバチルス・ファーメンタム種の細菌、並びに1種又は複数種の抗真菌活性を有する第2の細菌を含む。一実施形態では、本発明の抗真菌活性を有するラクトバチルス・ファーメンタム菌のいくつかの異なる株を組み合わせる。これらの更なる細菌は、例えば以下(a)~(e)の細菌より選択されてもよい:
(a)ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM32092で寄託されたラクトバチルス・ラムノサス菌CHCC15860株:
(b)ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM23035で寄託されたラクトバチルス・ラムノサス菌CHCC5366株:
(c)ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM24616で寄託されたラクトバチルス・ラムノサス菌CHCC12697株:
(d)ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM24651で寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ菌CHCC12777株;及び
(e)ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM25612で寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ菌CHCC14676株。
【0057】
本発明者らは、ラクトバチルス・ラムノサスCHCC15860及びラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591の組み合わせにより、各株を単独で使用した場合と比較して驚くべき相乗的な抗真菌効果を見出した。
【0058】
本発明の組成物は、さらに、1つ以上の凍結保護化合物(cryoprotective compounds)及び香味化合物を含め、多くの追加成分を含んでもよい。
【0059】
乳酸菌は、乳にスターター培養物の形態で添加するのが最も一般的である。本文脈において使用される用語「スターター」又は「スターター培養物」は、乳ベースの酸性化に関与する1種以上の食品グレードの微生物、特に乳酸菌の培養物を指す。スターター培養物は新鮮でもよいが、凍結又は凍結乾燥状態が最も頻繁に見られる。これらの製品は、「ダイレクトバットセット」ト(Direct Vat Set)」(DVS)培養物として知られ、発酵乳製品又はチーズなどの乳製品を製造するための発酵容器又はバットに直接植菌するように生産される。それぞれのスターター培養物は、多数の製造元から市販されており、その中には、F-DVS YoFlex Mild 2.0、F-DVS YF-L901、FD-DVS YF-812及びF-DVS CH-1が含まれる。これらの4つの培養物は、ストレプトコッカス・サーモフィルスとラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカスの混合物を含み、Chr.Hansen社から市販されている。
【0060】
したがって、本発明の一態様は、上記のような抗真菌活性を有するラクトバチルス・ファーメンタム種の細菌を含み、冷凍物1gあたり少なくとも109コロニー形成単位の濃度、又は冷凍物1gあたり少なくとも1010コロニー形成単位の濃度、又は冷凍物1gあたり少なくとも1011コロニー形成単位の濃度で乳酸菌を含有する固体凍結又は凍結乾燥スターター培養物の形態の組成物を提供する。
【0061】
本発明はさらに、上記の特徴の2つ以上を特徴とするラクトバチルス・ファーメンタム菌及びそれを含む組成物、並びにそれらを含む組成物を提供する。例えば、本発明は、以下の工程を含むアッセイにおいて、真菌ペニシリウム・ソリタムの増殖又は受託番号:DSM32094で寄託された真菌ペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖を少なくとも50%阻害する能力を有するラクトバチルス・ファーメンタム種を提供する:
(1)
(a)少なくとも107CFU/gの濃度の前記ラクトバチルス・ファーメンタムとスターター培養物を乳に植菌すること、
(b)pHが4.6に達するまで発酵すること、及び
(c)寒天の添加により発酵乳を固化すること、により発酵乳製品を調製すること;
(2)寒天で固化した発酵乳上において、500胞子/スポットの濃度で前記ペニシリウム・ソリタム又はペニシリウム・ブレビコンパクタムのスポットを少なくとも1つ生成し、これを25℃で7日間インキュベートすること;並びに
(3)前記ペニシリウム・ソリタム又はペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖によって形成されたコロニーの最大直径を決定し、ラクトバチルス・ファーメンタム株が存在しないこと以外は同じ条件で形成されたコロニーの最大直径に対する百分率として表すことによって、阻害率を決定すること;
そして、前記ラクトバチルス・ファーメンタム種の細菌は、0~5ppmの範囲内のジアセチルを分泌することを更に特徴とし、ここで、ジアセチルの濃度は、以下を含むアッセイで決定される:
(4)
(a)少なくとも107CFU/gの濃度の前記ラクトバチルス・ファーメンタムとスターター培養物を乳に植菌すること、及び
(b)pHが4.6に達するまで発酵すること、により発酵乳製品を調製すること;
(5)発酵乳製品を7±1℃で14日間保存すること;並びに
(6)1gの発酵乳製品に対し200μlの4N H2S04を添加し、静的ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによりジアセチルの濃度を決定すること。
【0062】
これらの細菌は、発酵中の発酵乳製品におけるスターター培養物によって産生されるアセトアルデヒドの濃度を少なくとも50%低減する能力を有することを更に特徴としてもよい。
【0063】
代替的に又は追加的に、ラクトバチルス・ファーメンタム種の細菌は、発酵後の貯蔵中に該ラクトバチルス・ファーメンタムを含む発酵乳製品のpHを、該ラクトバチルス・ファーメンタムを含まない同じスターター培養物を用いて発酵させた乳製品に比べて上昇させるということを更に特徴としてもよい。
【0064】
本発明の別の実施形態では、以下の工程を含むアッセイにおいて、受託番号:DSM32093で寄託された真菌ペニシリウム・ソリタムの増殖又は受託番号:DSM32094で寄託された真菌ペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖を少なくとも50%阻害する能力を有するラクトバチルス・ファーメンタムの細菌を更に提供する:
(1)
(a)少なくとも107CFU/gの濃度の前記ラクトバチルス・ファーメンタムとスターター培養物を乳に植菌すること、
(b)pHが4.6に達するまで発酵すること、及び
(c)寒天の添加により発酵乳を固化すること、により発酵乳製品を調製すること;
(2)寒天で固化した発酵乳上において、500胞子/スポットの濃度で前記ペニシリウム・ソリタム又はペニシリウム・ブレビコンパクタムのスポットを少なくとも1つ生成し、これを25℃で7日間インキュベートすること;並びに
(3)前記ペニシリウム・ソリタム又はペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖によって形成されたコロニーの最大直径を決定し、ラクトバチルス・ファーメンタム株が存在しないこと以外は同じ条件で形成されたコロニーの最大直径に対する百分率として表すことによって、阻害率を決定すること;
そして、前記ラクトバチルス・ファーメンタム種の細菌は、発酵後の貯蔵中に該ラクトバチルス・ファーメンタムを含む発酵乳製品のpHを、該ラクトバチルス・ファーメンタムを含まない同じスターター培養物を用いて発酵させた乳製品に比べて上昇させるということを更に特徴とし、このpHの上昇は、少なくとも0.1の値の上昇であり、発酵製品を25℃で21日間保存した後に測定したものである。また、これらの細菌の1つの実施形態では、これらの細菌は、更に、発酵中の発酵乳製品におけるスターター培養物によって産生されるアセトアルデヒドの濃度を少なくとも50%低減する能力を更に有してもよい。
【0065】
更なる実施形態では、本発明は、上述の抗真菌活性を有するラクトバチルス・ファーメンタム菌又はそれを含む組成物を、乳又は乳製品に添加すること、及び、pHが4.6未満に達するまで混合物を約22℃~約43℃の温度で発酵することを含む、発酵乳製品を製造する方法を提供する。
【0066】
本出願の文脈において、用語「乳」は、動物の乳腺又は植物によって産生される液体を指す一般的な意味で広範に使用される。本発明によれば、乳は加工されていてもよく、用語「乳」は、全乳、脱脂乳、無脂肪乳、低脂肪乳、全脂肪乳、低乳糖乳又は濃縮乳を含む。無脂肪乳は、無脂肪又はスキムミルクの製品である。低脂肪乳は、典型的には、約1%~約2%の脂肪を含む乳として定義される。全脂肪乳は2%以上の脂肪を含むことが多い。用語「乳」は、各種哺乳類及び植物由来のミルクを包含する意図である。乳の哺乳類の由来源としては、牛、羊、山羊、水牛、ラクダ、ラマ、メア、及びシカが含まれるが、これらに限定されない。乳の植物由来源としては、大豆、エンドウ豆、ピーナッツ、大麦、米、オート麦、キヌア、アーモンド、カシュー、ココナッツ、ヘーゼルナッツ、麻、ゴマの種及びヒマワリの種子から抽出された乳が含まれるが、これらに限定されない。本発明の方法及び製品において、牛由来の乳は、発酵のための出発物質として最も好ましく使用される。
【0067】
用語「乳」は、脂肪を低減した及び/又はラクトースを低減した乳製品も含まれる。それぞれの製品は、該技術分野で周知の方法を用いて調製することができ、市販されている(例えば、米国テキサス州Select Milk Producers Inc.から取得できる)。ラクトースを低減した乳は、ラクトースを、ラクトース酵素により、又はナノ濾過、電気透析、イオン交換クロマトグラフィー及び遠心分離によりグルコースやガラクトースに加水分解することを含む、該分野で公知の任意の方法に従って製造することができる。
【0068】
用語「乳製品」又は「乳ベース」は、本出願では、乳酸菌の増殖及び発酵のための培地として使用することができる乳又は乳成分ベースの組成物を指すのに広範に使用される。乳製品又は乳ベースは、乳酸菌を増殖又は発酵させる目的で使用できる乳由来の成分及びその他の成分を含む。
【0069】
発酵乳製品を製造する方法の発酵工程は、乳に乳酸菌を添加することを含む。乳製品の製造に用いられる発酵方法は周知であり、当業者は、温度、酸素、微生物の量及び特性、ならびに発酵時間を含む発酵方法の条件を選択することができる。
【0070】
発酵の前に、該技術分野で公知の方法に従い乳基質は均質化又は殺菌されてもよい。本明細書中、「均質化(homogenizing)」とは、可溶性の懸濁物又は乳液を取得するための激しい混合を意味する。均質化を発酵の前に行う場合、乳脂肪が乳から分離しないほど小さなサイズに分散するように均質化してもよい。これは、乳を高圧で小さなオリフィスを通して押し出すことにより達成され得る。本明細書中、「殺菌(pasteurizing)」とは、生きた生物、例えば微生物を減少又は死滅させるために乳基質を処理することを意味する。好ましくは、殺菌は、一定時間、特定の温度で乳基質を維持することにより達成される。該特定の温度は、通常加熱により達成される。温度及び時間は、特定の細菌、例えば有害な細菌を死滅又は不活性化するように選択され得る。急速冷却工程が続いてもよい。
【0071】
特に有利な本発明の方法では、以下の(a)及び/又は(b)であるように、上述の抗真菌活性を有するラクトバチルス・ファーメンタム菌又はそれを含む組成物を乳又は乳製品に添加し、混合物を発酵する:
(a)発酵終了時の発酵乳製品における抗真菌活性を有するラクトバチルス・ファーメンタム菌の濃度が少なくとも1×106cfu/g又は少なくとも1×107cfu/gである;及び/又は
(b)発酵乳製品の表面における抗真菌活性を有するラクトバチルス・ファーメンタム菌の濃度が少なくとも1×105cfu/cm2である。
【0072】
この方法は、ラクトバチルス・ファーメンタム菌の抗真菌効果を十分に利用できるという利点を有する。
【0073】
かかる濃度を達成する1つの方法は、上述のラクトバチルス・ファーメンタム菌の濃度が発酵中に増加するように、発酵のパラメータを維持する発酵乳製品の製造方法を用いることである。従来のスターター培養物及び発酵条件(実施例に記載されているように)を使用すると、一般に、上述のラクトバチルス・ファーメンタム菌の濃度が発酵中に少なくとも0.5log増加する。あるいは、上述のラクトバチルス・ファーメンタム菌の濃度が大きく低下しないように、例えば、発酵中に30%を超えて、25%を超えて、又は20%を超えて低下しないように、発酵のパラメータを維持する。
【0074】
本発明はまた、乳製品を本発明のラクトバチルス・ファーメンタム菌で発酵させることにより得られる発酵物(fermentate)を提供する。発酵物という用語は、発酵製品(fermentation product)を指すのに使用される。それぞれの発酵物は、本発明のラクトバチルス・ファーメンタム菌を用いた発酵プロセスから得られる液体であってもよい。この液体は細菌を含んでもよいが、それを含有する必要はない。この液体は、好ましくは、本発明のラクトバチルス・ファーメンタム菌によって産生される抗真菌代謝産物を含有する。発酵物は、食料、飼料又は医薬製品を製造するために使用することができる。例えば、発酵物を食料又は飼料製品に噴霧して、抗真菌効果を達成してもよい。
【0075】
本発明はさらに、上述の発酵乳製品を製造する方法を含む、食料、飼料又は医薬製品を製造する方法、並びに、この方法によって得られる食料、飼料又は医薬製品を更に提供する。
【0076】
発酵は、食料製品、飼料製品又は医薬品を製造するために行われる。用語「発酵乳製品」、「食品」又は「飼料」製品は、本発明の発酵方法によって得られる製品を指し、チーズ、ヨーグルト、フルーツヨーグルト、ヨーグルト飲料、水切りヨーグルト(ギリシャヨーグルト、ラブネ)、クワルク、フロマージュ・フレ及びクリームチーズを含む。食料という用語は、発酵ソーセージといった発酵肉及び発酵魚製品を含む他の発酵食品をさらに包含する。
【0077】
用語「チーズ」は、以下のタイプのチーズ:カッテージ、フェタ、チェダー、パルメザン、モッツァレラ、エメンタール、ダンボ、ゴーダ、エダム、フェタタイプ、ブルーチーズ、塩漬けチーズ、カマンベール及びブリーチーズなどのハード、セミハード及びソフトチーズを含めたあらゆるチーズを包含すると理解される。当業者は、凝塊をチーズにどのように変換するか知っており、方法は、各文献中に見られる、例えば、Kosikowski,F.V.,and V.V.Mistry,“Cheese and Fermented Milk Foods”,1997,3rd Ed.F.V.Kosikowski,L.L.C.Westport,CTを参照のこと。本明細書中に使用されるとき、1.7%(w/w)未満のNaCl濃度を有するチーズは、「低塩チーズ(low-salt cheese)」と称される。
【0078】
本出願の文脈において、用語「ヨーグルト」は、ストレプトコッカス・サーモフィルス及びラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス、そして場合により他の微生物、例えばラクトバチルス・デルブルッキー亜種ラクティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・パラカゼイ、又はそれらに由来する任意の微生物を含む製品を指す。ストレプトコッカス・サーモフィルス及びラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス以外の乳酸菌株も、最終製品に様々な特性、例えば腸内叢の平衡を促進する特性、を付与するために含まれる。本明細書で使用される用語「ヨーグルト」は、セットヨーグルト、スタードヨーグルト、飲用ヨーグルト、プチスイス、熱処理ヨーグルト、高タンパク質量及びヨーグルト風の製品であるという特徴を有する水切りヨーグルト又はギリシャスタイルヨーグルトを包含する。
【0079】
特に、用語「ヨーグルト」は、フランス及びヨーロッパの規制に従って定義される、特定の好熱性乳酸菌(つまり、ラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィルス)のみによる乳酸発酵によって得られた凝固乳製品であり、これらの菌が同時に培養され最終製品中に少なくとも10×106CFU(コロニー-形成単位)/gの量で生存しているヨーグルトも包含するが、これらに限定されない。ヨーグルトは場合により、酪農原料(例えば、クリーム)、あるいは砂糖又は甘味剤、1つ又は複数の香味料、果物、穀物、又は栄養物質、特にビタミン、ミネラル及び繊維、ならびに安定剤及び増粘剤といった他の成分を含有してもよい。必要に応じて、ヨーグルトはAFNOR NF 04-600規格及び/又はcodex StanA-lla-1975規格の発酵乳及びヨーグルトの基準を満たす。AFNOR NF 04-600規格を満たすためには、製品は発酵後に加熱してはならず、酪農原料は完成品の最低70%(m/m)を占める必要がある。
【0080】
更なる実施形態では、本発明は、上述の抗真菌作用を有する1種又は複数種のラクトバチルス・ファーメンタム菌、及び以下の(a)~(f)の1種又は複数種を含む食料、飼料又は医薬製品を提供する:
(a)ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、ラクトバチルス属、リューコノストック属、シュードレノコストック属、ペディオコッカス属、ブレビバクテリウム属及びエンテロコッカス属の1つ又は複数の属より選択される少なくとも1種の更なる細菌:
(b)ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM32092で寄託されたラクトバチルス・ラムノサス菌CHCC15860株:
(c)ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM23035で寄託されたラクトバチルス・ラムノサス菌CHCC5366株:
(d)ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM24616で寄託されたラクトバチルス・ラムノサス菌CHCC12697株:
(e)ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM24651で寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ菌CHCC12777株;及び
(f)ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM25612で寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ菌CHCC14676株。
【実施例
【0081】
実施例1:様々な酵母及びカビ汚染物質並びにジアセチル生産に対するラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591の阻害効果の半定量的分析
ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591の阻害効果についての半定量的分析をするために、ヨーグルトの製造プロセス及び製品に似せた寒天アッセイを使用した。
【0082】
均質化した低脂肪乳(1.5%w/v)を、90±1℃で20分間加熱処理し、そして急速に冷却した。市販のスターター培養物(F-DVS Mild 2.0)を0.02%(v/w)で植菌し、植菌した乳を200mlのボトルに分注した。1つのボトルには、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591を2×107CFU/gの総濃度で植菌し、2つのボトルには、2種類の市販の生物防除培養物(FreshQ(登録商標)4及びHoldbac(登録商標)YM-C Plus)のいずれかを、推奨される用量で(FreshQ(登録商標)4及びHoldbac(登録商標)YM-C Plusにそれぞれ100U/T及び20DCU/100L)植菌し、そして、1つのボトルには、基準としてスターター培養物のみ植菌した。全てのボトルは、43±1℃の水槽内でインキュベートし、4.60±0.1のpHになるまでこの条件で発酵させた。発酵後、ボトルを激しく振とうして凝塊を破壊し、氷上で冷却した。次いで、発酵乳を40℃の温度に温め、融解してから60℃に冷却した5%の滅菌寒天溶液を40mlを加えた。この発酵乳と寒天の溶液を滅菌ペトリ皿に注ぎ、プレートをLAFベンチで30分間乾燥させた。
【0083】
ペニシリウム・ブレビコンパクタム(DSM32094)、ペニシリウム・クラストサム(Penicillium crustosum)、ペニシリウム・ソリタム(DSM32093)、ペニシリウム・カルネウム(Penicillium carneum)、ペニシリウム・パネウム(Penicillium paneum)及びペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)の6種の異なるカビの胞子懸濁液を500胞子/スポットの濃度でスポットした。3種のカビを各プレートにスポットした。トルラスポラ・デルブルッキー(Torulaspora delbrueckii)、クリプトコッカス・ハンセニ(Cryptococcus hansenii)、デバリオミセス・ハンセニ(Debaryomyces hansenii)及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)を含む4種の酵母を104、103及び102CFU/スポットの濃度でスポットした。プレートを7±1℃と25±1℃でインキュベートし、カビと酵母の増殖を定期的に調べた。
【0084】
14日目に、複雑なマトリックス中の揮発性物質を分析する高感度な方法である静的ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)によりサンプルをジアセチルについて解析した。セットアップは、FID(Flame Ionization Detector)を備えたガスクロマトグラフに接続された静的ヘッドスペースサンプラーから構成されていた。その目的のために、以下の装置を使用した:
HSオートサンプラー:HS40XI,TurboMatrix110,Perkin Elmer.
HSソフトウェア:HSControl v.2.00,Perkin Elmer.
GC:Autosystem XL,Perkin Elmer.
GCソフトウェア:Turbochrom navigator,Perkin Elmer.
カラム:HP-FFAP 25 m×0.20 mm×0.33μm,Agilent Technologies
【0085】
既知の濃度の標準液を用いて応答因子を決定し(較正)、使用した応答因子が分析希釈系内及び希釈系間、そして経時的(月)にわたり安定であるよう制御するために対照を使用した。サンプル及び対照における揮発性物質の濃度(ppm)は、標準液から得た応答因子を用いて決定した。1gのヨーグルトサンプルに200μlの4N H2SO4を添加することによってサンプルを調製し、直ちにHSGCで分析した。
【0086】
寒天アッセイの結果を図1~5に示す。これらは、試験したすべてのカビがスターター培養のみで発酵させた乳(基準)から生成した寒天プレート上で非常によく生育することを示す。しかし、乳の発酵中にラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591が存在する場合、得られたプレートで試験したペニシリウム種の全ての増殖が阻害されていた。阻害の程度は、2つの市販の生体防御培養物で観察された阻害と同等又は高かった。図3は、全ての試験した酵母が、スターター培養物のみで発酵された乳(基準)から生成した寒天プレート上で増殖したことを示す。乳の発酵中にラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591が存在する場合、得られたプレートで、添加された全ての濃度のC. fragiola及びヤロウイア・リポリティカの増殖が阻害されていた。トルラスポラ・デルブルッキー及びデバリオミセス・ハンセニの増殖は、乳の発酵中にラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591が存在する場合低濃度で阻害された。阻害の程度は、2つの市販の生体防御培養物で観察された阻害と同等又は高かった。
【0087】
ジアセチル生成に対する効果を図6に示す。これは、乳の発酵中に添加したラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591は、市販培養物と比較してジアセチル生成量が非常に少なかったことを示す。
【0088】
実施例2:様々なカビ汚染物質に対するラクトバチルス・ラムノサスCHCC15860と組み合わせたラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591の阻害効果の半定量的分析
ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591とラクトバチルス・ラムノサスCHCC15860の組み合わせの阻害効果についての半定量的分析をするために、ヨーグルトの製造プロセス及び製品に似せた寒天アッセイを使用した。
【0089】
均質化した低脂肪乳(1.5%w/v)を、90±1℃で20分間加熱処理し、そして急速に冷却した。市販のスターター培養物(F-DVS Mild 2.0)を0.02%(v/w)で植菌し、植菌した乳を200mlのボトルに分注した。1つのボトルには、ラクトバチルス・ラムノサスCHCC15860を1×107CFU/gの総濃度で植菌し、1つのボトルには、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591を1×107CFU/gの総濃度で植菌し、1つのボトルには、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591とラクトバチルス・ラムノサスCHCC15860をそれぞれ5×106CFU/gの濃度で植菌し、そして、1つのボトルには、基準としてスターター培養物のみ植菌した。全てのボトルは、43±1℃の水槽内でインキュベートし、4.60±0.1のpHになるまでこの条件で発酵させた。発酵後、ボトルを激しく振とうして凝塊を破壊し、氷上で冷却した。次いで、発酵乳を40℃の温度に温め、融解してから60℃に冷却した5%の滅菌寒天溶液を40mlを加えた。この発酵乳と寒天の溶液を滅菌ペトリ皿に注ぎ、プレートをLAFベンチで30分間乾燥させた。
【0090】
ペニシリウム・カルネウム、ペニシリウム・パネウム及びペニシリウム・ロックフォルティの3種の異なる胞子懸濁液を500胞子/スポットの濃度でスポットした。3種のカビを各プレートにスポットした。プレートを25±1℃でインキュベートし、定期的にカビの増殖を調べた。
【0091】
寒天アッセイの結果を図7に示す。これは、試験したすべてのカビがスターター培養のみで発酵させた乳(基準)から生成した寒天プレート上で非常によく生育することを示す。しかし、乳の発酵中にラクトバチルス・ラムノサスCHCC15860又はラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591が存在する場合、得られたプレートで試験したペニシリウム種の全ての増殖が阻害されていた。更に、ラクトバチルス・ラムノサスCHCC15860とラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591を組み合わせて使用すると、それぞれの株のみで使用する場合の阻害効果と比較して相乗的な阻害効果がみられた。
【0092】
実施例3:様々なカビ汚染物質に対する10種のラクトバチルス・ファーメンタム株の阻害効果の半定量的分析
10種のラクトバチルス・ファーメンタム株の阻害効果についての半定量的分析をするために、ヨーグルトの製造プロセス及び製品に似せた寒天アッセイを使用した。
【0093】
均質化した低脂肪乳(1.5%w/v)を、90±1℃で20分間加熱処理し、そして急速に冷却した。市販のスターター培養物(F-DVS YF-L901)を0.02%(v/w)で植菌し、植菌した乳を200mlのボトルに分注した。10個のボトルには、ラクトバチルス・ファーメンタム株を1×107CFU/gの濃度で植菌し、そして、1つのボトルには、基準としてスターター培養物のみ植菌した。全てのボトルは、43±1℃の水槽内でインキュベートし、4.60±0.1のpHになるまでこの条件で発酵させた。発酵後、ボトルを激しく振とうして凝塊を破壊し、氷上で冷却した。次いで、発酵乳を40℃の温度に温め、融解してから60℃に冷却した5%の滅菌寒天溶液を40mlを加えた。この発酵乳と寒天の溶液を滅菌ペトリ皿に注ぎ、プレートをLAFベンチで30分間乾燥させた。
【0094】
試験したラクトバチルス・ファーメンタム株は、以下の通りである:ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12798、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12797、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14588、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15844、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15865、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15847、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15848、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15926、及びラクトバチルス・ファーメンタムCHCC2008。
【0095】
ペニシリウム・ブレビコンパクタム(DSM32094)、ペニシリウム・クラストサム、ペニシリウム・ソリタム(DSM32093)、ペニシリウム・カルネウム、ペニシリウム・パネウム及びペニシリウム・ロックフォルティの6種の異なるカビの胞子懸濁液を500胞子/スポットの濃度でスポットした。3種のカビを各プレートにスポットした。プレートを25±1℃でインキュベートし、カビの増殖を定期的に調べた。
【0096】
14日目に、複雑なマトリックス中の揮発性物質を分析する高感度な方法である静的ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)によりサンプルをジアセチルについて解析した。セットアップは、FID(Flame Ionization Detector)を備えたガスクロマトグラフに接続された静的ヘッドスペースサンプラーから構成されていた。その目的のために、以下の装置を使用した:
HSオートサンプラー:HS40XI,TurboMatrix110,Perkin Elmer.
HSソフトウェア:HSControl v.2.00,Perkin Elmer.
GC:Autosystem XL,Perkin Elmer.
GCソフトウェア:Turbochrom navigator,Perkin Elmer.
カラム:HP-FFAP 25 m×0.20 mm×0.33μm,Agilent Technologies
【0097】
既知の濃度の標準液を用いて応答因子を決定し(較正)、使用した応答因子が分析希釈系内及び希釈系間、そして経時的(月)にわたり安定であるよう制御するために対照を使用した。サンプル及び対照における揮発性物質の濃度(ppm)は、標準液から得た応答因子を用いて決定した。1gのヨーグルトサンプルに200μlの4N H2SO4を添加することによってサンプルを調製し、直ちにHSGCで分析した。
【0098】
後酸性化に対する影響をモニターするために、11個の発酵乳サンプル(スターター培養物単独及び10種のラクトバチルス・ファーメンタム株と組み合わせたスターター培養物)を7±1℃及び25±1℃で28日間保存し、pHを1日目、7日目、14日目、21日目及び28日目に測定した。
【0099】
寒天アッセイの結果を図8に示す。これは、試験したすべてのカビがスターター培養のみで発酵させた乳(基準)から生成した寒天プレート上で非常によく生育することを示す。全てのラクトバチルス・ファーメンタム株について、乳の発酵中に存在する場合、ペニシリウム・ブレビコンパクタム(DSM32094)とペニシリウム・ソリタム(DSM32093)の増殖の大幅な遅延が観察された。試験した残りのカビでは、これらのラクトバチルス・ファーメンタム株が乳の発酵中に存在する場合の遅延度はさまざまであった。株ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591の細菌は、このアッセイで試験した本質的に全てのカビで有意な阻害を達成した。
【0100】
ジアセチル生成に対する効果を図9に示す。これは、抗真菌性株ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12798、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12797、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14588、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15844、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15865、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15847、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15848、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15926、及びラクトバチルス・ファーメンタムCHCC2008はそれぞれジアセチルを分泌しない又は非常に少ないジアセチルしか分泌しないことを示す。
【0101】
後酸性化に対する影響を図10に示す。これは、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12798、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12797、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14588、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15844、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15865、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15847、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15848、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15926、及びラクトバチルス・ファーメンタムCHCC2008はそれぞれ後酸性化をもたらさないあるいは基準ヨーグルトと比較して後酸性化を低減すらさせることを示す。
【0102】
先行技術の抗真菌性食品グレードの細菌は、揮発性化合物の分泌にもたらし、スターター培養物によって引き起こされる後酸性化効果を増大させることが観察されたので、これらの知見は予想外であり、非常に重要である。
【0103】
実施例4:1種のラクトバチルス・ファーメンタム株の後酸性化に対する影響
1種のラクトバチルス・ファーメンタム株(CHCC14591)を後酸性化に対する影響について試験した。
【0104】
均質化した低脂肪乳(1.5%w/v)を、90±1℃で20分間加熱処理し、そして急速に冷却した。市販のスターター培養物(F-DVS Mild 2.0)を0.02%(v/w)で植菌し、植菌した乳を200mlのボトルに分注した。1つのボトルには、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591を2×107CFU/gの総濃度で植菌した、2つのボトルには、種類の市販の生物防除培養物(FreshQ(登録商標)4及びHoldbac(登録商標)YM-C Plus)のいずれかを、推奨される用量で(FreshQ(登録商標)4及びHoldbac(登録商標)YM-C Plusはそれぞれ100U/T及び20 DCU/100L)植菌し、そして、1つのボトルには、基準としてスターター培養物のみ植菌した。全てのボトルは、43±1℃の水槽内でインキュベートし、4.60±0.1のpHになるまでこの条件で発酵させた。発酵後、ボトルを激しく振とうして凝塊を破壊し、氷上で冷却した。
【0105】
後酸性化に対する影響をモニターするために、4個の発酵乳サンプル(スターター培養物単独及びFreshQ(登録商標)4、Holdbac(登録商標)YM-C Plus及びラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591)を7±1℃及び25±1℃で21日間保存し、pHを1日目、7日目、14日目及び21日目に測定した。
【0106】
後酸性化に対する影響を図11に示す。これは、乳の発酵中にラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591を添加すると発酵乳製品の後酸性化が阻害されることを示す。スターター培養物単独ではわずかな後酸性化がみられ、2種類の市販の生物防除培養物はいずれも後酸性化にもたらした。
【0107】
実施例5:10種のラクトバチルス・ファーメンタム株のアセトアルデヒド含量に対する影響
10種のラクトバチルス・ファーメンタム株を、アセトアルデヒド含量を低減する能力について試験した。
【0108】
均質化した低脂肪乳(1.5%w/v)を、90±1℃で20分間加熱処理し、そして急速に冷却した。市販のスターター培養物(F-DVS YF-L901 Yo-Flex(登録商標))を0.02%(v/w)で植菌し、植菌した乳を200mlのボトルに分注した。10個のボトルには、ラクトバチルス・ファーメンタム株を1×107CFU/gの濃度で植菌し、そして、1つのボトルには、基準としてスターター培養物のみ植菌した。全てのボトルは、43±1℃の水槽内でインキュベートし、4.60±0.1のpHになるまでこの条件で発酵させた。発酵後、ボトルを激しく振とうして凝塊を破壊し、氷上で冷却した。すべてのボトルは7±1℃で14日間保存した。
【0109】
14日目に、複雑なマトリックス中の揮発性物質を分析する高感度な方法である静的ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)によりサンプルをアセトアルデヒドについて解析した。セットアップは、FID(Flame Ionization Detector)を備えたガスクロマトグラフに接続された静的ヘッドスペースサンプラーから構成されていた。その目的のために、以下の装置を使用した:
HSオートサンプラー:HS40XI,TurboMatrix110,Perkin Elmer.
HSソフトウェア:HSControl v.2.00,Perkin Elmer.
GC:Autosystem XL,Perkin Elmer.
GCソフトウェア:Turbochrom navigator,Perkin Elmer.
カラム:HP-FFAP 25 m×0.20 mm×0.33μm,Agilent Technologies
【0110】
既知の濃度の標準液を用いて応答因子を決定し(較正)、使用した応答因子が分析希釈系内及び希釈系間、そして経時的(月)にわたり安定であるよう制御するために対照を使用した。サンプル及び対照における揮発性物質の濃度(ppm)は、標準液から得た応答因子を用いて決定した。1gのヨーグルトサンプルに200μlの4N H2SO4を添加することによってサンプルを調製し、直ちにHSGCで分析した。
【0111】
結果を図12に示す。これは、株ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12798、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12797、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14588、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15844、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15865、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15847、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15848、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15926、及びラクトバチルス・ファーメンタムCHCC2008はそれぞれ発酵中の発酵乳製品におけるスターター培養物によって産生されるアセトアルデヒドの濃度を低減する能力を有することを示す。
【0112】
実施例6:1種のラクトバチルス・ファーメンタム株のアセトアルデヒド含量に対する影響
1種のラクトバチルス・ファーメンタム株を、アセトアルデヒド含量を低減する能力について試験した。
【0113】
均質化した低脂肪乳(1.5%w/v)を、90±1℃で20分間加熱処理し、そして急速に冷却した。市販のスターター培養物(F-DVS Mild 2.0)を0.02%(v/w)で植菌し、植菌した乳を2つの200mlのボトルに分注した。1つのボトルには、ラクトバチルス・ファーメンタム株を1×107CFU/gの濃度で植菌し、そして、1つのボトルには、基準としてスターター培養物のみ植菌した。両方のボトルは、43±1℃の水槽内でインキュベートし、4.60±0.1のpHになるまでこの条件で発酵させた。発酵後、ボトルを激しく振とうして凝塊を破壊し、氷上で冷却した。これらのボトルは7±1℃で14日間保存した。
【0114】
14日目に、複雑なマトリックス中の揮発性物質を分析する高感度な方法である静的ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)によりサンプルをアセトアルデヒドについて解析した。セットアップは、FID(Flame Ionization Detector)を備えたガスクロマトグラフに接続された静的ヘッドスペースサンプラーから構成されていた。その目的のために、以下の装置を使用した:
HSオートサンプラー:HS40XI,TurboMatrix110,Perkin Elmer.
HSソフトウェア:HSControl v.2.00,Perkin Elmer.
GC:Autosystem XL,Perkin Elmer.
GCソフトウェア:Turbochrom navigator,Perkin Elmer.
カラム:HP-FFAP 25 m×0.20 mm×0.33μm,Agilent Technologies
【0115】
既知の濃度の標準液を用いて応答因子を決定し(較正)、使用した応答因子が分析希釈系内及び希釈系間、そして経時的(月)にわたり安定であるよう制御するために対照を使用した。サンプル及び対照における揮発性物質の濃度(ppm)は、標準液から得た応答因子を用いて決定した。1gのヨーグルトサンプルに200μlの4N H2SO4を添加することによってサンプルを調製し、直ちにHSGCで分析した。
【0116】
結果を図13に示す。これは、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591は発酵中の発酵乳製品におけるスターター培養物によって産生されるアセトアルデヒドの濃度を低減する能力を有することを示す。
【0117】
実施例7:市販のスターター培養物の機能的解析
本願に記載の4種の市販のスターター培養物を、異なる酸性化プロファイルに基づいて選択した。3種は冷凍されたF-DVS CH-1、F-DVS YoFlex Mild 2.0及びF-DVS YF-L901であり、1種は凍結乾燥されたFD-DVS YF-L812である。酸性化プロファイルの違いを試験するために、半脂肪乳を脱脂乳粉末で1%脂肪及び4.5%タンパク質に標準化し、85±1℃で30分間熱処理し、直ちに冷却した。4種の異なる市販のスターター培養物(F-DVS CH-1、F-DVS YoFlex Mild 2.0、F-DVS YF-L901又はFD-DVS YF-L812)のうち1種を0.02%(v/w)で植菌し、植菌した乳を200mlのボトルに分注した。これらのボトルは、43±1℃の水槽内でインキュベートし、4.5のpHになるまでこの条件で発酵させた。発酵の間中、pHを連続的に測定した。その後、これらのボトルは6℃で43日間保存し、pHを7日間の間隔で測定し、後酸性化のレベルを決定した。
【0118】
4種の市販のスターター培養物(F-DVS CH-1、F-DVS YoFlex Mild 2.0、F-DVS YF-L901又はFD-DVS YF-L812)の酸性化プロファイルを図14に示す。F-DVS CH-1は、4.87時間でpH4.55に達する速い発酵時間を示した。F-DVS YoFlex Mild 2.0は、5.29時間でpH4.55に達する中程度の発酵時間を示した。FD-DVS YF-L812及びF-DVS YF-L901は、それぞれ6.45及び5.87時間でpH4.55に達する遅い発酵時間を示した。後酸性化プロファイルは、FD-DVS YF-L812 とF-DVS YoFlex Mild 2.0では非常に低い後酸性化のレベルを示し(6℃で43日間の保存後ΔpH=0.12及びΔpH=0.11)、F-DVS YF-L901では中程度の後酸性化のレベルを示し(6℃で43日間の保存後ΔpH=0.26)、F-DVS CH-1では高い後酸性化のレベルを示した(6℃で43日間の保存後ΔpH=0.55)(図15)。
【0119】
実施例8:2種の異なるスターター培養物で発酵させた場合における、様々なカビ汚染物質に対する9種のラクトバチルス・ファーメンタム株の阻害効果の半定量的分析
9種のラクトバチルス・ファーメンタム株の阻害効果についての半定量的分析をするために、ヨーグルトの製造プロセス及び製品に似せた寒天アッセイを使用した。
【0120】
均質化した低脂肪乳(1.5%w/v)を、90±1℃で20分間加熱処理し、そして急速に冷却した。乳は、2種類の市販のスターター培養物(F-DVS CH-1又はFD-DVS YF-L812)のうちの1種類を0.02%(v/w)で植菌し、植菌した乳を200mlのボトルに分注した。各スターター培養物を植菌した9つのボトルには、ラクトバチルス・ファーメンタム株を1×107CFU/gの濃度で更に植菌し、そして各スターター培養物を植菌した1つのボトルには、基準としてスターター培養物のみ植菌した。全てのボトルは、43±1℃の水槽内でインキュベートし、4.55±0.1のpHになるまでこの条件で発酵させた。発酵後、ボトルを激しく振とうして凝塊を破壊し、氷上で冷却した。次いで、発酵乳を40℃の温度に温め、融解してから60℃に冷却した5%の滅菌寒天溶液を40mlを加えた。この発酵乳と寒天の溶液を滅菌ペトリ皿に注ぎ、プレートをLAFベンチで30分間乾燥させた。
【0121】
試験したラクトバチルス・ファーメンタム株は、以下の通りである:ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12798、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12797、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14588、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15844、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15865、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15847、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15926、及びラクトバチルス・ファーメンタムCHCC2008。
【0122】
2つの異なるカビ(ペニシリウム・ブレビコンパクタム(DSM32094)及びペニシリウム・ソリタム(DSM32093))の胞子懸濁液を500胞子/スポットの濃度でスポットした。1種のカビを各プレートにスポットした。プレートを7±1℃及び25±1℃でインキュベートし、カビの増殖を定期的に調べた。
【0123】
14日目に、複雑なマトリックス中の揮発性物質を分析する高感度な方法である静的ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)によりサンプルをジアセチルについて解析した。セットアップは、FID(Flame Ionization Detector)を備えたガスクロマトグラフに接続された静的ヘッドスペースサンプラーから構成されていた。その目的のために、以下の装置を使用した:
HSオートサンプラー:HS40XI,TurboMatrix110,Perkin Elmer.
HSソフトウェア:HSControl v.2.00,Perkin Elmer.
GC:Autosystem XL,Perkin Elmer.
GCソフトウェア:Turbochrom navigator,Perkin Elmer.
カラム:HP-FFAP 25 m×0.20 mm×0.33μm,Agilent Technologies
【0124】
既知の濃度の標準液を用いて応答因子を決定し(較正)、使用した応答因子が分析希釈系内及び希釈系間、そして経時的(月)にわたり安定であるよう制御するために対照を使用した。サンプル及び対照における揮発性物質の濃度(ppm)は、標準液から得た応答因子を用いて決定した。1gのヨーグルトサンプルに200μlの4N H2SO4を添加することによってサンプルを調製し、直ちにHSGCで分析した。
【0125】
寒天アッセイの結果を図16~19に示す。これは、試験したいずれのカビもスターター培養のみで発酵させた乳(基準)から生成した寒天プレート上で非常によく生育することを示す。全てのラクトバチルス・ファーメンタム株について、乳の発酵中に存在する場合、使用したスターター培養物にかかわらず、ペニシリウム・ブレビコンパクタム(DSM32094)とペニシリウム・ソリタム(DSM32093)のいずれでも増殖の大幅な遅延が観察された。
【0126】
ジアセチル生成に対する効果を図20に示す。これは、抗真菌性株ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12798、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12797、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14588、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15844、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15865、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15847、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15926、及びラクトバチルス・ファーメンタムCHCC2008はそれぞれスターター培養物により生成されたレベル以上のジアセチルは増加していないことを示す。
【0127】
先行技術の抗真菌性食品グレードの細菌は、スターター培養物によって引き起こされる揮発性化合物の分泌をもたらすことが観察されたので、これらの知見は予想外であり、非常に重要である。
【0128】
実施例9: 2種のスターター培養物で発酵させた場合における、9種のラクトバチルス・ファーメンタム株のアセトアルデヒド含量に対する影響
9種のラクトバチルス・ファーメンタム株を、アセトアルデヒド含量を低減する能力について試験した。
【0129】
均質化した低脂肪乳(1.5%w/v)を、90±1℃で20分間加熱処理し、そして急速に冷却した。2種の市販のスターター培養物(F-DVS CH-1又はFD-DVS YF-L812)を0.02%(v/w)で植菌し、植菌した乳を2つの200mlのボトルに分注した。9つのボトルには、ラクトバチルス・ファーメンタム株を1×107CFU/gの濃度で植菌し、そして、1つのボトルには、基準としてスターター培養物のみ植菌した。全てのボトルは、43±1℃の水槽内でインキュベートし、4.55±0.1のpHになるまでこの条件で発酵させた。発酵後、ボトルを激しく振とうして凝塊を破壊し、氷上で冷却した。これらのボトルは7±1℃で14日間保存した。
【0130】
試験したラクトバチルス・ファーメンタム株は、以下の通りである:ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12798、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12797、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14588、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15844、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15865、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15847、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15926、及びラクトバチルス・ファーメンタムCHCC2008。
【0131】
14日目に、複雑なマトリックス中の揮発性物質を分析する高感度な方法である静的ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)によりサンプルをアセトアルデヒドについて解析した。セットアップは、FID(Flame Ionization Detector)を備えたガスクロマトグラフに接続された静的ヘッドスペースサンプラーから構成されていた。その目的のために、以下の装置を使用した:
HSオートサンプラー:HS40XI,TurboMatrix110,Perkin Elmer.
HSソフトウェア:HSControl v.2.00,Perkin Elmer.
GC:Autosystem XL,Perkin Elmer.
GCソフトウェア:Turbochrom navigator,Perkin Elmer.
カラム:HP-FFAP 25 m×0.20 mm×0.33μm,Agilent Technologies
【0132】
既知の濃度の標準液を用いて応答因子を決定し(較正)、使用した応答因子が分析希釈系内及び希釈系間、そして経時的(月)にわたり安定であるよう制御するために対照を使用した。サンプル及び対照における揮発性物質の濃度(ppm)は、標準液から得た応答因子を用いて決定した。1gのヨーグルトサンプルに200μlの4N H2SO4を添加することによってサンプルを調製し、直ちにHSGCで分析した。
【0133】
結果を図21に示す。これは、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12798、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC12797、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14591、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC14588、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15844、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15865、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15847、ラクトバチルス・ファーメンタムCHCC15926、及びラクトバチルス・ファーメンタムCHCC2008のそれぞれの株は、発酵中の発酵乳製品におけるスターター培養物によって産生されるアセトアルデヒドの濃度を低減する能力を有することを示す。
【0134】
参考文献
EP0221499
EP0576780
EP1442113
US5,378,458
EP2693885
EP13717237
EP13714671
Gerez et al.,Control of spoilage fungi by lactic acid bacteria,Biological Control,vol.64(2013):231-237
Aunsbjerg et al.. Contribution of volatiles to the antifungal effect of Lactobacillus paracasei in defined medium and yoghurt. Int J Food Microbiology. vol. 194(2015):46-53
Kosikowski. F.V. and Mistry. V.V.. ”Cheese and Fermented Milk Foods”. 1997. 3rd Ed. F.V. Kosikowski. L.L.C. Westport. CT
【0135】
寄託と専門家のソリューション
出願人は、下記の寄託された微生物の試料が、特許登録の日まで、専門家のみに利用可能であるべきことを要求する。
【0136】
ラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC12798は、2015年7月16日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、受託番号:32084で寄託された。
【0137】
ラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC12797は、2015年7月16日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、受託番号:32085で寄託された。
【0138】
ラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC14591は、2015年7月16日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、受託番号:32086で寄託された。
【0139】
ラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC14588は、2015年7月16日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、受託番号:32087で寄託された。
【0140】
ラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC15844は、2015年7月16日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、受託番号:32088で寄託された。
【0141】
ラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC15865は、2015年7月16日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、受託番号:32089で寄託された。
【0142】
ラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC15847は、2015年7月16日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、受託番号:32090で寄託された。
【0143】
ラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC15848は、2015年7月16日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、受託番号:32091で寄託された。
【0144】
ラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC15926は、2015年7月22日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、受託番号:32096で寄託された。
【0145】
ラクトバチルス・ファーメンタム株CHCC2008は、2009年5月19日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、受託番号:22584で寄託された。
【0146】
ラクトバチルス・ラムノサス株CHCC15860は、2015年7月16日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、受託番号:32092で寄託された。
【0147】
ペニシリウム・ソリタム株CHCC16948は、2015年7月16日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、受託番号:32093で寄託された。
【0148】
ペニシリウム・ブレビコンパクタム株CHCC16935は、2015年7月16日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、受託番号:32094で寄託された。
【0149】
寄託は、特許手続上の微生物寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に従って行われた。
図1
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