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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/52 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
E06B9/52 G
E06B9/52 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018195783
(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公開番号】P2020063596
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高山 幸久
【審査官】芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-71693(JP,U)
【文献】実開昭56-61694(JP,U)
【文献】実開平4-62893(JP,U)
【文献】実開昭49-5939(JP,U)
【文献】実開昭58-39998(JP,U)
【文献】実開昭48-87851(JP,U)
【文献】実公昭47-33983(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/52- 9/54
3/04- 3/46
3/50- 3/52
7/00- 7/36
E05D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦框を有する網戸と、
前記縦框と対向する一対の縦枠を備え、前記網戸をスライド移動可能に支持する枠体と、を有し、
前記一対の縦枠は、前記網戸のスライド方向において、互いに対向する内周側に突出する突出片を有し、
前記縦框は、前記網戸のスライド方向において前記縦枠と対向する側が開放され前記突出片が挿入される挿入凹部を有し、
前記網戸は、前記突出片が挿入され、前記挿入凹部の見込み幅よりも狭いスリットを前記挿入凹部内に形成するスリット形成部材が当該挿入凹部内に設けられており、
前記挿入凹部は、前記縦框の長手方向に沿って設けられており、見込み方向に間隔を空けて対向する一対の見付け壁部と、
前記一対の見付け壁部を見込み方向に繋ぐ見込み壁部と、
前記スリット形成部材と係合し、スライド方向における、前記スリット形成部材の前記挿入凹部から開放されている側への移動を規制する移動規制部と、
を有し、
前記スリット形成部材は、前記見込み壁部をスライド方向に押圧することにより、当該スリット形成部材を前記移動規制部に押圧する押圧機構により前記縦框に保持されていることを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記スリット形成部材は、合成樹脂製であることを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建具であって、
前記スリットは、前記スリット形成部材に設けられていることを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の建具であって、
前記挿入凹部には、前記移動規制部がスライド方向において互いに異なる位置に複数設けられていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網戸を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、網戸を備えた建具として、たとえば、建物の躯体に固定された枠体内に外障子と内障子が摺動可能に納められ、外障子の更に室外側に網戸が見付け面内で左右方向にスライド可能に納められている建具が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような建具の枠体は上枠と下枠と左右の縦枠とで矩形状に形成されており、上枠及び下枠には、室外側の端に網戸を案内するレールを通しており、左右の縦枠には、見込み方向においてレールと同じ位置に、見付け面内でそれぞれ内周側に突出してヒレ状をなす縦枠片が形成されている。一方、網戸の左右の縦框の外側端部には網戸を縦枠に当接させた際に縦枠片を受け入れる凹溝が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-224433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の建具は、網戸を縦枠に当接させた際に、網戸の左右の縦框の外側端部に設けられている凹溝に、縦枠に設けられている縦枠片が挿入されている。網戸は、重量が大きなガラス等を備える障子のように高い剛性・強度が求められない。このため、強風等により煽られると上下方向における中央部分が見込み方向に移動して湾曲する場合がある。特に、近年では、窓の大型化に伴い建具の高さも高くなり縦框の長さが長くなっているため、より大きく湾曲して振れることにより、縦框と、縦框に挿入されている縦枠片とが接触して不快な音が発生する虞があるという課題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、網戸が強風に煽られても音が発生し難い建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために本発明の建具は、縦框を有する網戸と、前記縦框と対向する一対の縦枠を備え、前記網戸をスライド移動可能に支持する枠体と、を有し、前記一対の縦枠は、前記網戸のスライド方向において、互いに対向する内周側に突出する突出片を有し、前記縦框は、前記網戸のスライド方向において前記縦枠と対向する側が開放され前記突出片が挿入される挿入凹部を有し、前記網戸は、前記突出片が挿入され、前記挿入凹部の見込み幅よりも狭いスリットを前記挿入凹部内に形成するスリット形成部材が当該挿入凹部内に設けられていることを特徴とする建具である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、網戸が強風に煽られても音が発生し難い建具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る建具を室外側から見た外観図である。
図2図1におけるA-A断面図である。
図3】本実施形態に係る建具の縦断面図である。
図4】縦框凹部に保持された係合部材を示す横断面図である。
図5】縦框上部材及び係合部材を示す斜視図である。
図6】縦框上部材及び係合部材を示す縦断面図である。
図7】係合部材を外周側から見た斜視図である。
図8】係合部材を内周側から見た斜視図である。
図9】縦框凹部においてより外周側に保持された係合部材を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
【0009】
本実施形態の建具1は、図1図3に示すように、建物に設けられた枠体2に、ガラスを備えて枠体2に固定されたFIX障子3と、枠体2とFIX障子3とによって形成される開口2aを閉止可能な引き戸障子4と、開口2aを覆うことが可能な網戸5と、を有している。
【0010】
以下の説明においては、建物に設けられている建具1を室外側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。建具1の各部位であっても、また、建具1を構成する各部材については単体の状態であっても、建具1が建物に設けられている状態にて上下方向、左右方向、奥行き方向となる方向にて方向を特定して説明する。
【0011】
引き戸障子4及び網戸5は、左右方向となるスライド方向にスライド移動可能に枠体2に支持されている。
枠体2は、左右一対の縦枠21と、一対の縦枠21の上端及び下端を繋ぐ上枠22及び下枠23とが矩形状に枠組みされている。引き戸障子4は、FIX障子3より室内側にてスライド可能に支持されており、網戸5は、FIX障子3より室外側にてスライド可能に支持されている。
【0012】
枠体2は、一対の縦枠21、上枠22、及び、下枠23における最も室外側の縁から、枠体2の内周側に向かって突出する突出片21a、22a、23aを有しており、上下の突出片22a、23aが、網戸5がスライド移動する際に案内されるレールをなしている。左の縦枠21の突出片21aは、開口2aを覆うべく網戸5を左側に寄せたときに、網戸5の縦框51に挿入される。以下の説明においては、上枠22の突出片22aを上レール22a、下枠23の突出片23aを下レール23aという。
【0013】
網戸5は、左右一対の縦框51と、一対の縦框51の上端部間を繋ぐ上框52と、一対の縦框51の下端部間を繋ぐ下框53とが矩形状に枠組みされた框体50、及び、框体50に囲まれた領域に張設された網材54を有している。以下の説明においては、矩形状に框組みされた框体50に囲まれている内側を内周側、外側を外周側として説明する。
【0014】
縦框51は、アルミニウム製の押出成形部材でなり、網戸5を閉じた際に縦枠21と係合する左側の縦框51は、図4に示すように、上下方向となる長手方向に貫通する中空部510と、中空部510の内周側に設けられ網材54の端部が係止される網材係止部511と、中空部510の外周側に設けられ、外周側が開放されて内周側に窪む縦框凹部512と、を有している。
【0015】
縦框凹部512は、中空部510を形成し室外に臨む面を形成する中空外壁部510aと繋がった平面をなす凹部外壁部512aと、中空部510を形成し室内に臨む面を形成する中空内壁部510bと繋がった平面をなす凹部内壁部512bと、中空部510の外周側の側面を形成する外周壁部510cと、により形成されている。
【0016】
凹部外壁部512aと凹部内壁部512bとには、互いに対向する方向に向かって突出する凹部突片512c、512dが設けられている。凹部突片512c、512dは、凹部外壁部512aに2箇所、凹部内壁部512bに3箇所、左右方向においてほぼ等間隔に設けられている。凹部内壁部512bには3箇所に凹部突片512c、512dが設けられており、そのうちの内周側に位置する2箇所の凹部突片512cが、凹部外壁部512aに設けられている2箇所の凹部突片512cと対向している。以下の説明においては、見込み方向において対向する位置に、それぞれ設けられている凹部突片512cを対向凹部突片512cという。
【0017】
外周壁部510cと、外周壁部510c側に位置する対向凹部突片512cとの間隔L9と、左右方向に隣り合う2つの対向凹部突片512cの間隔L8とは、ほぼ等しく形成されている。凹部内壁部512bの最も外周側に設けられている凹部突片512dは、後述する係合部材7の誤装着を防止するためのものであり、必ずしも設けられていなくとも構わない。
【0018】
左右の縦框51の縦框凹部512内には、網戸5がスライド移動する際に、図5図6に示すように、縦框51の上部にて上枠22の上レール22aと摺動する摺動面6aを有する合成樹脂製の框上部材6が設けられており、左側の縦框51の上下方向における中央近傍には、網戸5を閉じたときに、左の縦枠21が備える突出片21aと係合する合成樹脂製の係合部材7が設けられている。ここで、縦框凹部512が挿入凹部に相当し、凹部外壁部512aと凹部内壁部512bとが一対の見付け壁部に相当し、外周壁部510cが一対の見付け壁部を見込み方向に繋ぐ見込み壁部に相当する。
【0019】
本実施形態の框上部材6は、摺動面6aを有する摺動部材60と、網戸5が移動する際に摺動抵抗を付加すべく、上レール22aを下方から押圧する摺動抵抗付加部材61とが一体に設けられている。框上部材6は、摺動部材60が縦框凹部512に挿入され、摺動部材60と一体をなす摺動抵抗付加部材61が、上框52に設けられて上レール22aが挿入される上框凹部52aに配置される。
【0020】
摺動部材60は、上部に、縦框51の上端部に配置されて上レール22aが挿入され網戸5がスライド移動する際に摺動される摺動面6aをなすU字凹部60aと、U字凹部60aの下に設けられ左右方向に貫通する貫通孔60bと、凹部外壁部512a及び凹部内壁部512bに設けられた2つの対向凹部突片512cの間に挿入される挿入突部60cと、網戸5を閉じたときに左の縦枠21が備える突出片21aが当接する縦枠当接部60dと、を有している。
【0021】
框上部材6は、縦框51の上方から挿入突部60cが、凹部外壁部512a及び凹部内壁部512bの2つの対向凹部突片512cの間に挿入され、縦框凹部512の開放されている外周側から挿入されるねじ62が、貫通孔60bに挿通されて外周壁部510cに螺合されて固定される。このとき、貫通孔60bは、ねじ頭部62aの直径より大きいため、貫通孔60b内にねじ頭部62aが収容されて框上部材6の上下方向の移動が規制される。
【0022】
係合部材7は、上下方向に間隔を空けて設けられた上側部70及び下側部71と、縦框凹部512内に配置された状態で上側部70の内周側の部位と下側部71の内周側の部位を繋ぐ連結部72と、を有している。
【0023】
図7図8に示すように、上側部70及び下側部71は、外周側の端が開放されて連結部72側に窪む係合凹部7aをそれぞれ有している。上側部70及び下側部71の係合凹部7aは、見込み方向にける中央より室内側に偏らせて同位置に配置されている。また、係合凹部7aは、見込み方向に間隔を空けてスリットSを形成する対向面7bを有しており、係合凹部7aの開放されている側は、先端、すなわち外周側に向かって間隔が広くなる傾斜7cを有している。ここで、係合部材7が、挿入凹部内に、突出片が挿入され、挿入凹部の見込み幅よりも狭いスリットを形成するスリット形成部材に相当する。
【0024】
係合凹部7aが有するスリットSの幅、すなわち対向面7bの間隔L1は、縦框凹部512の見込み幅、より具体的には、凹部外壁部512aと凹部内壁部512bとの外周側の端の見込み幅L2より狭く形成されている。
【0025】
上側部70及び下側部71の連結部72の上下に位置する部位、及び、左右方向におけるほぼ半分から内周側の部位は、見込み方向の幅L3が、凹部外壁部512aと凹部内壁部512bとに設けられた対向凹部突片512cの見込み方向における先端間の間隔L4よりも僅かに狭く形成されている。上側部70及び下側部71の、左右方向におけるほぼ半分から外周側の部位は、内周側の部位よりも見込み方向の幅が広く、凹部外壁部512aの内面と凹部内壁部512bの内面との間隔L5より僅かに狭い幅をなす拡幅部7d、7eを有している。
【0026】
係合部材7が縦框凹部512内に配置された際に、室内側に位置する拡幅部7dは、凹部内壁部512bに設けられた凹部突片512dと干渉しないように、室外側に位置する拡幅部7eよりも小さく形成されている。このため、係合凹部7aが見込み方向において中央より室内側に偏って配置されているべき係合部材7が、係合凹部7aが中央より室外側に偏るように取り付けられることを防止することが可能である。
【0027】
連結部72は、見込み方向の幅L6が、上側部70及び下側部71において連結部72の上下に位置する部位より広く、対向凹部突片512cが設けられている凹部外壁部512aの内面と凹部内壁部512bの内面との間隔L5より僅かに狭く形成された見込み張出部72aを有している。見込み張出部72aは、左右方向において2つに分割されており、左右方向における中央に対向凹部突片512cと係合可能な係合部としての見込み凹部72bが設けられている。
【0028】
2つに分割された見込み張出部72aの左右方向の幅L7は、各々、左右方向に隣り合う2つの対向凹部突片512cの間隔L8、及び、外周壁部510cと内周側に位置する対向凹部突片512cとの間隔L9より僅かに狭く形成されている。このため、係合部材7は、2つに分割された見込み張出部72aが、左右方向に隣り合う2つの対向凹部突片512cの間と、外周壁部510cと内周側に位置する対向凹部突片512cとの間とに挿入される位置、及び、2つに分割された見込み張出部72aの一方が、左右方向に隣り合う2つの対向凹部突片512cの間に挿入され、他方が、2つの対向凹部突片512cよりも外周側に配置される位置に挿入可能である。
【0029】
また、連結部72には、外周壁部510cと対向する面72cに、外周側に窪ませて、プレートナット73を回転不能に収容する収容凹部72dと、収容凹部72dと連結部72の外周側とを連通し、左右方向にねじ74が挿通される挿通孔72eと、が設けられている。
【0030】
係合部材7は、連結部72の挿通孔72eに挿通されたねじ74が、収容凹部72dに収容されたプレートナット73に螺合されている状態で、縦框51に上方から挿入される。このとき、ねじ74の先端74aは連結部72の内周側の面72cより外周壁部510c側へは突出していない。またこのとき、例えば、2つに分割された見込み張出部72aが、左右方向に隣り合う2つの対向凹部突片512cの間と、外周壁部510cと内周側に位置する対向凹部突片512cとの間とにそれぞれ挿入されて、左右方向への移動が規制される。すなわち、縦框凹部512が開放されている外周側への移動も規制される。ここで、対向凹部突片512cが、移動規制部に相当する。
【0031】
縦框凹部512は、縦框51の長手方向に沿って設けられているので、上下方向であればいずれの位置にも移動可能である。そして、所望の位置においてプレートナット73に螺合されているねじ74を締めることによりねじ74の先端74aを内周側に突出させ、外周壁部510cを外周側から内周側に押圧する。このとき、見込み張出部72aを対向凹部突片512cに押圧させることにより、外周壁部510cと対向凹部突片512cとの間で突っ張らせて係合部材7が保持される。すなわち、見込み壁部としての外周壁部510cをスライド方向に押圧することにより、係合部材7を移動規制部としての対向凹部突片512cに押圧して係合部材7が縦框51に保持されている。ここで、係合部材7、係合部材7を貫通するねじ74、及び、係合部材7を貫通するねじ74が螺合され係合部材7により回り止めされているプレートナット73が、見込み壁部をスライド方向に押圧することにより、スリット形成部材を移動規制部に押圧する押圧機構に相当する。
【0032】
係合部材7を取り付けた後に、縦框51の上方から框上部材6を取り付けた後に、網戸5を枠体2に建て込む。建て込んだ網戸5を左側の縦枠21側に寄せると、縦枠21の突出片21aが、縦框51に設けられた係合部材7の係合凹部7a内に挿入される。すなわち、見込み方向に間隔を空けてスリットSを形成する対向面7bの間に突出片21aが挿入される。
【0033】
上記実施形態の建具1によれば、網戸5の縦框51が有する縦框凹部512内には、縦框凹部512の見込み幅L2よりも狭く、縦枠21の突出片21aが挿入可能なスリットSを形成する係合部材7が設けられている。このため、縦框凹部512内に配置された係合部材7のスリットSに突出片21aが挿入された状態で網戸5が強風に煽られたとしても、網戸5の見込み方向の移動は、係合部材7が設けられていないときよりも小さく、網戸5と縦枠21等が接触して発生する音を小さく抑えることが可能である。このため、網戸5が強風に煽られても音が発生し難い建具1を提供することが可能である。
【0034】
網戸5は、例えば引き戸障子4のように重量が大きなガラス等を備えていないため、網戸5の框体50の剛性・強度が引き戸障子4の框より低く、強風に煽られたときには、撓み易い。このとき、網戸5の框体50の強度を上げるべく肉厚を厚くするなど剛性を高めることも可能であるが、建具全体の重量が大きくなると共にコストが高くなる。このため、本発明の建具1のように、縦框51に係合部材7を取り付けることにより、重量及びコストを抑えつつ、網戸5が強風に煽られても音が発生し難い建具1を提供することが可能である。
また、係合部材7は、網戸5を閉じたときに縦枠当接部60d等とともに突出片21aが当接されるので、縦枠当接部60d等に作用する力を分散させることが可能である。
【0035】
また、係合部材7により形成されたスリットSに挿入された突出片21aが合成樹脂製の係合部材7に接触して発生する音は、金属同士が接触して発生する音よりも低く小さい。このため、網戸5が強風に煽られても音がより発生し難い建具1を提供することが可能である。
【0036】
また、スリットSが係合部材7に設けられているので、係合部材7を縦框凹部512に設けることにより、縦框凹部512の見込み幅L2よりも狭いスリットSを縦框凹部512内に確実に設けることが可能である。
【0037】
また、縦框凹部512に挿入された係合部材7は、開放されている外周側からスライド方向に貫通するねじ74が、回り止めされたプレートナット73に螺合されているので、ねじ74を締めると開放されている側と反対側、すなわち外周壁部510c側に突出し、先端74aが外周壁部510cに当接する。このとき、係合部材7は、対向凹部突片512cにより縦框凹部512から開放されている側への移動が規制されているので、ねじ74を締めることにより係合部材7とねじ74が対向凹部突片512cと外周壁部510cとの間で突っ張ることにより、縦框51の縦框凹部512内に保持することが可能である。
【0038】
このため、係合部材7は、左右方向にスライドする網戸5に必要な框上部材6が設けられている縦框51であれば、縦框51に新たに加工を施すことなく、縦框51に上方から挿入して、ねじ74を締めるだけで係合部材7を縦框凹部512内に容易に備えることが可能である。また、縦框凹部512は、縦框51の長手方向に沿って設けられているので、縦框51の長手方向において所望の位置に係合部材7を配置することが可能である。
【0039】
また、縦框凹部512には、対向凹部突片512cがスライド方向において互いに異なる2箇所に設けられているので、係合部材7をスライド方向における異なる位置に配置することが可能である。このため、網戸5や枠体2の歪みなどにより、網戸5の縦框51と縦枠21との間隔が広がってしまったとしても、例えば、図9に示すように、係合部材7の、対向凹部突片512cと係合する位置を変更し、係合部材7の見込み張出部72aを、左右方向に隣り合う2つの対向凹部突片512cの間と、2つの対向凹部突片512cよりも外周側に配置することにより、係合部材7をより外周側に配置してスリットSに突出片21aを挿入させることが可能である。また、係合部材7の左右方向における取付位置を変更することにより、建付け調整等で発生する網戸5の面内方向のがたつきを抑制することも可能である。
【0040】
上記実施形態においては、係合部材7にスリットSが設けられている例について説明したが、これに限るものではない。例えば、係合部材が縦框凹部に取り付けられて、凹部外壁部または凹部内壁部とともに、縦框凹部内に当該縦框凹部の見込み幅よりも狭いスリットが形成される形態であっても構わない。
【0041】
上記実施形態においては、押圧機構を、係合部材7、ねじ74、及び、プレートナット73により構成した例について説明したが、これに限るものではない。例えば、係合部材に、ねじがスライド方向に進入するねじ穴が設けられている形態であっても構わない。また、係合部材にスライド方向に貫通する貫通孔が設けられており、貫通孔にスライド方向に挿通されて当該貫通孔に嵌合されるピンが、外周壁部をスライド方向に押圧することにより、係合部材を対向凹部突片に押圧して係合部材が縦框に保持される構成であっても構わない。
【0042】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0043】
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
縦框を有する網戸と、前記縦框と対向する一対の縦枠を備え、前記網戸をスライド移動可能に支持する枠体と、を有し、前記一対の縦枠は、前記網戸のスライド方向において、互いに対向する内周側に突出する突出片を有し、前記縦框は、前記網戸のスライド方向において前記縦枠と対向する側が開放され前記突出片が挿入される挿入凹部を有し、前記網戸は、前記突出片が挿入され、前記挿入凹部の見込み幅よりも狭いスリットを前記挿入凹部内に形成するスリット形成部材が当該挿入凹部内に設けられている建具である。
【0044】
このような建具によれば、網戸の縦框が有する挿入凹部内には、挿入凹部の見込み幅よりも狭く、縦枠の突出片が挿入可能なスリットを形成するスリット形成部材が設けられている。このため、挿入凹部内にスリット形成部材が形成するスリットに突出片が挿入された状態で網戸が強風に煽られたとしても、網戸の見込み方向の移動は、スリット形成部材が設けられていないときよりも小さく、網戸と建枠等が接触して発生する音を小さく抑えることが可能である。このため、網戸が強風に煽られても音が発生し難い建具を提供することが可能である。
【0045】
かかる建具であって、前記スリット形成部材は、合成樹脂製であることを特徴とする。
このような建具によれば、スリット形成部材により形成されたスリットに挿入された突出部が合成樹脂製のスリット形成部材に接触して発生する音は、金属同士が接触して発生する音よりも低く小さい。このため、網戸が強風に煽られてもより音が発生し難い建具を提供することが可能である。
【0046】
かかる建具であって、前記スリットは、前記スリット形成部材に設けられていることを特徴とする。
このような建具によれば、スリットがスリット形成部材に設けられているので、スリット形成部材を挿入凹部に設けることにより、挿入凹部の見込み幅よりも狭いスリットを挿入凹部内に確実に設けることが可能である。
【0047】
かかる建具であって、前記挿入凹部は、前記縦框の長手方向に沿って設けられており、見込み方向に間隔を空けて対向する一対の見付け壁部と、前記一対の見付け壁部を見込み方向に繋ぐ見込み壁部と、前記スリット形成部材と係合し、スライド方向における、前記スリット形成部材の前記挿入凹部から開放されている側への移動を規制する移動規制部と、を有し、前記スリット形成部材は、前記見込み壁部をスライド方向に押圧することにより、当該スリット形成部材を前記移動規制部に押圧する押圧機構により前記縦框に保持されていることを特徴とする。
【0048】
このような建具によれば、挿入凹部に挿入されたスリット形成部材は、見込み壁部をスライド方向に押圧することにより、当該スリット形成部材を移動規制部に押圧する押圧機構により保持されているので、押圧機構によりスリット形成部材を移動規制部と見込み壁部との間で突っ張らせて縦框の挿入凹部内に保持することが可能である。このため、ねじを締めるだけでスリット形成部を挿入凹部内に容易に備えることが可能である。また、挿入凹部は、縦框の長手方向に沿って設けられているので、縦框の長手方向において所望の位置にスリット形成部材を配置することが可能である。
【0049】
かかる建具であって、前記挿入凹部には、前記移動規制部がスライド方向において互いに異なる位置に複数設けられていることを特徴とする。
このような建具によれば、挿入凹部には、移動規制部がスライド方向において互いに異なる位置に複数設けられているので、スリット形成部材をスライド方向における異なる位置に配置することが可能である。このため、網戸や枠体の歪みなどにより、網戸の縦框と縦枠との間隔が広がってしまったとしても、スリット形成部材の、移動規制部と係合する位置を変更することにより、スリットに突出部を挿入させることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 建具、2 枠体、5 網戸、7 係合部材、21 縦枠、21a 突出片、
51 縦框、73 プレートナット、74 ねじ、510c 外周壁部、
512 縦框凹部、512a 凹部外壁部、512b 凹部内壁部、
512c 凹部突片、
L1 スリットの幅、L2 縦框凹部の見込み幅、S スリット、
図1
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図9