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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】戸体及び戸体の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E05C 17/44 20060101AFI20220627BHJP
   E05C 9/12 20060101ALI20220627BHJP
   E05C 19/16 20060101ALI20220627BHJP
   E05F 5/00 20170101ALI20220627BHJP
   E06B 3/36 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
E05C17/44
E05C9/12
E05C19/16 Z
E05F5/00 C
E06B3/36
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018211125
(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公開番号】P2020076274
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】菊野 亘
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-003545(JP,A)
【文献】特開平08-260799(JP,A)
【文献】特開2006-274570(JP,A)
【文献】特開2012-241452(JP,A)
【文献】国際公開第2010/150068(WO,A2)
【文献】独国実用新案第202005019908(DE,U1)
【文献】特開2003-333714(JP,A)
【文献】特開2011-247025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 17/44
E05C 19/16
E05D 7/08-7/086
E05F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を備えた壁の見込み方向における一方側に配置され、前記壁に回動自在に支持されて前記開口を閉じることが可能な戸体であって、
下方に突出可能に設けられ、突出して当該戸体と対向する部位に当接し当該戸体を支持可能な突出支持部材を有し、
前記壁よりも前記一方側に位置する回動軸を有するヒンジにより、
幅方向における一方の端側にて、上端側と下端側とが前記壁に支持され、
前記幅方向における他方の端側の上部に、当該戸体が前記開口を閉じた状態を維持することが可能な閉止維持部材を有し、
前記閉止維持部材は、前記壁において前記開口を形成している開口側壁縁部に固定された金属製のラッチ受けに当接するマグネットであることを特徴とする戸体。
【請求項2】
請求項1に記載の戸体であって、
前記突出支持部材を、当該戸体と対向する部位に当接している当接位置、及び、当該戸体と対向する部位と離間している離間位置に移動可能な操作部と、
前記操作部の操作により、前記突出支持部材が前記当接位置に移動するときに前記壁側と係合して施錠し、前記突出支持部材が前記離間位置に移動するときに係合が解除されて解錠される施錠部材と、
を有することを特徴とする戸体。
【請求項3】
開口を備えた壁の見込み方向における一方側に配置され、前記壁に回動自在に支持されて前記開口を閉じることが可能な戸体の施工方法であって、
前記戸体は、
前記壁よりも前記一方側に位置する回動軸を有するヒンジにより、
幅方向における一方の端側にて、上端側と下端側とが前記壁に支持されており、
下方に突出可能に設けられ、突出して当該戸体と対向する部位に当接し当該戸体を支持可能な突出支持部材と、
前記幅方向における他方の端側の上部に、当該戸体が前記開口を閉じた状態を維持する閉止維持部材と、
前記突出支持部材を、当該戸体と対向する部位に当接している当接位置、及び、当該戸体と対向する部位と離間している離間位置に移動可能な操作部と、
前記操作部の操作により、前記突出支持部材が前記当接位置に移動するときに前記壁側と係合して施錠し、前記突出支持部材が前記離間位置に移動するときに係合が解除されて解錠される施錠部材と、
を有しており、
前記壁の前記開口を形成している開口側壁縁部において前記戸体の前記一方の端側における下端部に前記ヒンジを固定する下ヒンジ固定工程と、
前記開口側壁縁部において前記戸体の前記他方の端側における上部に前記閉止維持部材と係合する係合部を固定する係合部固定工程と、
前記突出支持部材を突出させた状態で前記戸体を、前記壁に固定した前記ヒンジと係合させ、前記戸体の前記他方の端側に設けられた前記施錠部材を前記壁側と係合させるとともに前記突出支持部材を前記戸体と対向する部位に当接させて当該戸体を自立させる戸体自立工程と、
前記戸体に前記一方の端側の上端部に係合させた前記ヒンジを前記壁に固定する上ヒンジ固定工程と、
を有することを特徴とする戸体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸体及び戸体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
戸体のなかには、戸体をなすドアの厚み方向における中央に回転中心を備えるヒンジにより支持され、見込み方向においてドア枠よりも一方側に配置されたアウトセットタイプのドアが知られている(例えば、特許文献1参照)。このドアは、回動軸がドア枠よりも一方側に位置するピボットヒンジにより回動自在に支持されており、ドアの回動軸がドア枠よりも一方側に位置しているので、ドアを90度以上開くことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-180037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した戸体は、ドア枠の内側にドアが配置される、所謂インセットタイプのドアよりも大きく開くことが可能であるためドアの開き幅が大きい。このため、ドアを、使用状況に応じた所望の角度に開いた状態で回動を規制して、容易に所望の角度に開いた状態を維持できることが望まれている。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所望の角度にて開いた状態を容易に維持することが可能な戸体及びこの戸体の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の戸体は、開口を備えた壁の見込み方向における一方側に配置され、前記壁に回動自在に支持されて前記開口を閉じることが可能な戸体であって、下方に突出可能に設けられ、突出して当該戸体と対向する部位に当接し当該戸体を支持可能な突出支持部材を有していることを特徴とする戸体である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、所望の角度にて開いた状態を容易に維持することが可能な戸体及びこの戸体の施工方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る扉を示す側面図である。
図2】本実施形態に係る扉を示す横断面図である。
図3】戸先側の縦材を示す横断面図である。
図4】施錠機構を説明するための図である。
図5】最上位置に位置するマグネットラッチ及びロック棒を示す図である。
図6】最下位置に位置するマグネットラッチ及びロック棒を示す図である。
図7】扉の施工方法を示す図である。
図8】開閉操作部と操作部とを備えた扉を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る戸体および戸体の施工方法について図面を参照して説明する。
本実施形態の戸体は、隣接する2つの空間を仕切る壁の一方側の空間に配置されて回動自在に設けられている戸体であり、所謂アウトセットタイプの扉である。本実施形態では、図1図2に示すように、2つの空間を室内側の空間と室外側の空間とし、戸体としての扉1は室外側の空間に配置されている例について説明する。
【0010】
本実施形態の扉1は、壁2において室内側の空間と室外側の空間とを連通する開口2aを形成している開口側壁縁部2bにピボットヒンジ3により回動自在に支持され、開口2aを室外側から覆うように構成されている。扉1は、開口2aを閉じた状態で、下端が下方にて床4と間隔を空けて対向しており、扉1の幅方向における両端部と上端部とが、開口側壁縁部2bの室外側の面と対向している。
【0011】
以下の説明においては、扉1が壁2に取り付けられている状態を室内空間側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となり扉の幅側となる方向を左右方向、室内外方向を見込み方向として示す。また、扉1を構成する各部材及び各部位については、単体の状態であっても扉1が取り付けられた状態で上下方向、左右方向、見込み方向等となる方向にて方向を特定して説明する。また、扉1においては、幅方向においてピボットヒンジ3により支持されている側を吊り元側、反対側を戸先側とする。
【0012】
扉1は、パネル状をなすパネル芯材10と、パネル芯材10の吊り元側の縁に沿って設けられている吊り元材11と、パネル芯材10の戸先側の縁に沿って設けられている戸先材12と、を有している。吊り元材11と戸先材12は、同一の断面形状をなす押出成形部材でなる縦材13と、縦材13の室内側に嵌合され軟質の合成樹脂でなり開口側壁縁部2bの室外側の面に当接される戸当たり材14と、を有している。
【0013】
縦材13は、図3に示すように、見込み方向に間隔を空けて対向する室内壁部13a及び室外壁部13bと、室内壁部13a及び室外壁部13bのパネル芯材10側の縁より僅かに扉1の左右端側に設けられ各々対向する側に突出されて見込み面を形成する室内側見込み壁部13c及び室外側見込み壁部13dと、室内壁部13a及び室外壁部13bの、扉1における左右端側の縁をほぼ半円形状をなす壁部により繋ぐ円弧状壁部13eと、を有している。
【0014】
室内側見込み壁部13c及び室外側見込み壁部13dからは、各々パネル芯材10側に突出する2つの突出壁部13fと、2つの突出壁部13fのパネル芯材10側の縁を繋ぐ連結壁部13gと、により、室内側見込み壁部13c及び室外側見込み壁部13dよりもパネル芯材10側に窪む縦材凹部13hが上下方向に沿って形成されている。
【0015】
縦材凹部13hの開放されている側に位置する室内側見込み壁部13c及び室外側見込み壁部13dは、各々突出壁部13fよりも互いに対向する側に突出している。また、縦材凹部13h内には、連結壁部13gから室内側見込み壁部13c及び室外側見込み壁部13dの先端近傍に向かってそれぞれ左右方向に突出する2つの突起13iが設けられている。
【0016】
パネル芯材10は、両面に設けられているパネル面材10aの左右の端部が、吊り元材11と戸先材12をなす縦材13の室内壁部13a及び室外壁部13bと、縦材凹部13hを形成する2つの突出壁部13fとの間に各々挿入されて吊り元材11及び戸先材12と接合されている。前述した戸当たり材14は、室内壁部13aに長手方向に沿って設けられた嵌合溝13jに嵌合されて室内側に突出している。
【0017】
扉1には、吊り元材11をなす縦材13の上下の端部に、ピボットヒンジ3の回動軸をなすピン3aを挿入可能なヒンジ受け(不図示)が設けられている。ヒンジ受けは、扉1の厚み方向における中央にてピボットヒンジ3のピン3aを受けるように構成されている。より具体的には、ピボットヒンジ3のピン3aが、円弧状壁部13eのほぼ中心に配置するようにヒンジ受けが設けられている。
【0018】
壁2に設けられるピボットヒンジ3は、壁2の開口2aを形成する開口側壁縁部2bの内周面に固定されるヒンジ固定部3bと、ヒンジ固定部3bの上端又は下端から室外側に延出されるヒンジ延出部3cと、を有するヒンジプレート3dと、ヒンジ延出部3cの先端側の部位に設けられたピン3aと、を有している。
【0019】
扉1の戸先側には、図4に示すように、施錠機構5が設けられている。図4においては、施錠機構5の構成を示すために、パネル芯材10、吊り元材11、戸先材12、及び、後述するグレモンハンドル50を仮想線(二点鎖線)により示している。
【0020】
施錠機構5は、パネル芯材10の戸先側にて室内面及び室外面に設けられた操作部としてのグレモンハンドル50と、グレモンハンドル50の見込み方向に沿う回転軸5aに設けられたピニオン5bと、ピニオン5bと噛み合うラック51aを備えグレモンハンドル50の操作により上下方向に移動する上下移動部材51と、上下移動部材51と戸先側の縦材13内にて連結されるリンクバー52と、リンクバー52の上端部および下端部と各々連結され縦材凹部13hにて、室内側見込み壁部13c、室外側見込み壁部13d、及び、2つの突起13iに案内されて上下方向に移動する上連結棒53及び下連結棒54と、上連結棒53の上端に設けられ戸先側の縦材13の上端側において室内壁部13aから突出されているマグネットラッチ55と、下連結棒54の下端に設けられ下面にゴムシート56aが設けられているロック棒56と、を有している。
【0021】
施錠機構5は、グレモンハンドル50を操作することにより上下方向に移動する上下移動部材51と、リンクバー52及び上連結棒53または下連結棒54を介して繋がったマグネットラッチ55及びロック棒56が、グレモンハンドル50の操作とともに上下に移動するように構成されている。
【0022】
ロック棒56は、下連結棒54の下端に固定される下端固定部56bと、下端固定部56bの下端に設けられた円盤状の当接盤部56cとを有しており、当接盤部56cの下面にゴムシート56aが設けられている。当接盤部56cは、縦材13の円弧状壁部13eの半径より小さな半径の円形状をなしており、ロック棒56は、グレモンハンドル50の操作による移動範囲の最上位置に位置するときには、図5に示すように、戸先側の縦材13内に収容される。
【0023】
グレモンハンドル50を操作してロック棒56を、グレモンハンドル50の操作による移動範囲の最下位置に下げることにより、図6に示すように戸先材12から突出し、当接盤部56cに設けられたゴムシート56aが扉1の下方にて当該扉1と対向する部位をなす床4に当接されて扉1の回動が規制される。ここで、ロック棒56が、下方に突出可能に設けられ、突出して当該戸体と対向する部位に当接し当該戸体を支持可能な突出支持部材に相当する。また、グレモンハンドル50の操作による移動範囲の最下位置が、突出支持部材を、当該戸体と対向する部位に当接している当接位置に相当する。
【0024】
マグネットラッチ55は、上連結棒53の上端に固定された台座55aが室内壁部13aより室内側に突出しており、台座55aの室内側の面にマグネット55bが露出している。台座55aの下面からは下方に突出する台座突出片55cが、室内壁部13aと見込み方向に間隔を空けた位置に設けられている。
【0025】
壁2の開口側壁縁部2bには、マグネットラッチ55が当接して磁力により当接した状態が維持される金属製のラッチ受け57が固定されている。ラッチ受け57は、開口側壁縁部2bの内周面に固定されるラッチ受け固定部57aと、ラッチ受け固定部57aの室外側の縁から開口側壁縁部2bの室外側の面に沿って延出されたラッチ受け延出部57bと、ラッチ受け延出部57bの下端から室外側に延出されたラッチ受け下端延出部57cと、ラッチ受け下端延出部57cの室外側の縁から上方に延出されたラッチ受け上方延出部57dと、を有している。
【0026】
壁2側に設けられているラッチ受け57は、グレモンハンドル50の操作による移動範囲の最上位置に位置するときには、図5に示すように、台座突出片55cがラッチ受け上方延出部57dよりも高い位置に位置するように、ラッチ受け延出部57bが配置されており、扉1が閉じられたときには、マグネットラッチ55のマグネット55bがラッチ受け延出部57bに当接して、扉1が開口2aを閉じた状態が維持される。そして、グレモンハンドル50を操作してマグネットラッチ55を下げ、移動範囲の最下位置に移動することにより、図6に示すように、台座突出片55cがラッチ受け延出部57bとラッチ受け上方延出部57dとの間に挿入され、扉1の戸先部の室外側への移動が規制されて施錠される。本実施形態においては、マグネット55bが閉止維持部材に相当し、ラッチ受け延出部57bが、閉止維持部材が係合される係合部に相当し、台座突出片55cが施錠部材に相当する。
【0027】
本実施形態の扉1は、マグネットラッチ55及びロック棒56が、グレモンハンドル50の操作による移動範囲の最上位置に位置するときには、マグネットラッチ55の台座突出片55cがラッチ受け上方延出部57dよりも高い位置に位置し、ロック棒56は、扉1と下方にて対向する床4と離間して開閉自在な状態にある。ここで、グレモンハンドル50の操作による移動範囲の最上位置が、突出支持部材が戸体と対向する部位と離間している離間位置に相当する。
【0028】
この状態で、扉1を閉じた場合には、マグネットラッチ55の磁力により、開口2aを閉じた状態に維持することが可能であり、扉1を閉じた状態でマグネットラッチ55及びロック棒56が、グレモンハンドル50の操作による移動範囲の最下位置に移動したときには、ロック棒56により扉の回動が規制されると共に、施錠機構5により扉1が施錠される。また、扉1を開いた状態でマグネットラッチ55及びロック棒56が、グレモンハンドル50の操作による移動範囲の最下位置に移動した場合であっても、ロック棒56の当接盤部56cが床4に当接することにより、扉1の回動が規制される。
【0029】
本実施形態の扉1の施工方法について説明する。
扉1を壁2の開口側壁縁部2bに取り付ける場合には、図7に示すように、まず、壁2の開口2aにおいて扉1の吊り元側の開口側壁縁部2bをなす開口2aの内周面の下端部に、ピボットヒンジ3のヒンジ固定部3bを固定する(下ヒンジ固定工程)。このとき、ピボットヒンジ3はピン3aが室外側に位置するように配置されている。
【0030】
また、壁2の開口2aにおいて扉1の戸先側の開口側壁縁部2bをなす開口2aの内周面の上端側に、ラッチ受け57のラッチ受け固定部57aを固定する(係合部固定工程)。このとき、ラッチ受け延出部57bは、開口側壁縁部2bの室外側の面に沿って配置されている。このとき、下ヒンジ固定工程と係合部固定工程とは、いずれが先でも構わない。
【0031】
次に、施錠機構5が備えられている扉1を、壁2の開口側壁縁部2bの室外側にて自立させる(戸体自立工程)。より具体的には、グレモンハンドル50を操作して、ロック棒56をグレモンハンドル50の操作による移動範囲の最下位置に移動することにより、戸先側の縦材13の下端よりも下方に突出させておく。このとき、リンクバー52によりロック棒56と連結されているマグネットラッチ55もグレモンハンドル50の操作による移動範囲の最下位置に位置している。
【0032】
ロック棒56を突出させた状態の扉1を壁2及び開口2aの室外側に移動し、開口側壁縁部2bに固定された下側のピボットヒンジ3のピン3aが扉1の吊り元側の縦材13の下端に設けられているヒンジ受けに挿入されるべく、扉1を上方から降下させる。このとき、扉1は、壁2とほぼ平行をなす状態で、ピン3aの上方から降下される。
【0033】
ピン3aがヒンジ受けに挿入されるとともに、ロック棒56が床4に当接され、更に、マグネットラッチ55の台座突出片55cがラッチ受け延出部57bとラッチ受け上方延出部57dとの間に挿入される。このとき、扉1は、下側のピボットヒンジ3とロック棒56により支持され、台座突出片55cがラッチ受け上方延出部57dに係合するとともにマグネットラッチ55のマグネット55bがラッチ受け延出部57bに当接して引き付けられているので、扉1の上部側の室外側への移動が規制されるため扉1が自立する。
【0034】
次に、自立している扉1の吊り元側の縦材13の上端に設けられているヒンジ受けに上側のピボットヒンジ3のピン3aを挿入して、ピボットヒンジ3を縦材13上に載置する。載置したピボットヒンジ3は、ヒンジプレート3dを、ピン3aを中心にして回転させることにより、ヒンジ固定部3bを、開口側壁縁部2bをなす開口2aの内周面の上端部と対面させて固定し、扉1の壁2への取り付けが完了する(上ヒンジ固定工程)。
【0035】
本実施形態の扉1によれば、下方に突出して扉1と対向する床4に当接し、当該扉1を支持可能なロック棒56を有しているので、扉1を所望な位置に移動させた後に、ロック棒56を下方に突出させて床4に当接させることにより、容易に所望の位置で扉1が開いている状態を維持することが可能である。また、ロック棒56は、扉1を支持しているので、扉1の重量が作用してロック棒56と床4との間に生じる摩擦力により、より確実に扉1が所望の位置にて開いている状態を維持することが可能である。特にロック棒56の下面には、ゴムシート56aが設けられているので、より高い摩擦力により扉1の回動を規制することが可能である。
【0036】
また、扉1は、幅方向における一方の端となる吊り元側にて、上端側と下端側とがピボットヒンジ3により壁2に支持されている。このため、例えば、下端側のピボットヒンジ3と突出したロック棒56とで扉1を自立させることが可能である。このため、ロック棒56を突出させた扉1を下端側のピボットヒンジ3に係合させた後に、扉1が自立した状態で上端側のピボットヒンジ3を取り付けることが可能である。すなわち、上端側のピボットヒンジ3と下端側のピボットヒンジ3とを同時に係合させないので容易に下端側のピボットヒンジ3と係合させることができ、下端側のピボットヒンジ3と係合した後には扉1を支えることなく上端側のピボットヒンジ3を固定できるので、より施工性に優れた扉1を提供することが可能である。
【0037】
また、扉1を、壁2と対向させて開口2aを閉じた状態に維持させるマグネットラッチ55が、幅方向における他方の端となる戸先側の上部に設けられているので、壁2に対向させた扉1が倒れることを防止することが可能である。また、扉1は、マグネットラッチ55の磁力により、開口2aを閉じた状態に維持されるので、正確な位置に取り付けられていない扉1であっても開口2aを閉じた状態を維持することが可能である。
【0038】
また、グレモンハンドル50を操作してロック棒56が当接位置に移動するときに台座突出片55cが壁2側に設けられたラッチ受け57と係合して施錠されるので、ロック棒56にて扉1の移動を規制しつつ施錠することが可能である。また、グレモンハンドル50を操作してロック棒56が離間位置に移動するときに台座突出片55cとラッチ受け57との係合が解除される。このため、施錠が解除されたときには、扉1の回動に対する規制も解除されるので扉1を容易に開くことが可能である。
【0039】
また、上記扉1の施工方法によれば、壁2に下側のピボットヒンジ3及びラッチ受け57を取り付けた状態で、ロック棒56を突出させた扉1を下側のピボットヒンジ3と係合させ、扉1の上部にてマグネットラッチ55をラッチ受け57に当接させるとともに台座突出片55cをラッチ受け57と係合させることにより施錠して、扉1を自立させることができる。このため、容易に下端側のピボットヒンジ3と係合させて、下端側のピボットヒンジ3と係合した後には重い扉1を支えなくてよいので、作業者の負担を軽減できる。このとき、扉1の上部はマグネットラッチ55と台座突出片55cとにより扉1が開口2aを閉じた状態が維持されているので、より確実に扉1を自立させておくことが可能である。
【0040】
扉1が開口2aを閉じて自立している状態で上端部側のピボットヒンジ3を固定するので、上端側のピボットヒンジ3を容易に固定することが可能である。このため、作業者の負担が少なく扉1を容易に取り付けることが可能である。
【0041】
上記実施形態においては、マグネット55bを閉止維持部材とし、台座突出片55cを施錠部材とした例について説明したが、これに限るものではない。例えば、マグネットが設けられておらず、台座突出片55c及びラッチ受け上方延出部57dが閉止維持部材と施錠部材とを兼ねて、台座突出片55cがラッチ受け上方延出部57dに係合したときに、扉1が開口2aを閉じた状態が維持されるように構成されていても構わない。
【0042】
また、上記実施形態においては、扉1の開閉時に把持するグレモンハンドル50の操作により、突出支持部材を当接位置と離間位置とに移動可能、かつ、施錠部材を操作可能な操作部として使用する例について説明したが、これに限るものではない。例えば、図8に示すように、扉1の開閉時に操作者が把持する開閉操作部6と、ロック棒56を当接位置と離間位置とに移動可能、かつ、台座突出片55cを操作可能な操作部7とが、別々に設けられていても構わない。この場合には、操作部7が、上記実施形態のグレモンハンドル50と同様に、見込み方向に沿う回転軸7aに設けられたピニオン7bが上下移動部材51のラック51aと噛み合っている。
【0043】
このように開閉操作部6と操作部7を別々に設けることにより、操作部7をグレモンハンドル50よりも小さくし、また、開閉操作部6を扉1の表面から窪ませた掘り込み引手とすることにより、扉1の表面からの突出量を小さくし、且つ、軽量化を図ることが可能である。
【0044】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0045】
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
開口を備えた壁の見込み方向における一方側に配置され、前記壁に回動自在に支持されて前記開口を閉じることが可能な戸体であって、下方に突出可能に設けられ、突出して当該戸体と対向する部位に当接し当該戸体を支持可能な突出支持部材を有していることを特徴とする戸体である。
【0046】
このような戸体によれば、下方に突出して当該戸体と対向する部位に当接し、当該戸体を支持可能な突出支持部材を有しているので、戸体を所望な位置に移動させた後に、突出支持部材を下方に突出させて、戸体と対向する部位に当接させることにより、所望の位置で戸体が開いている状態を容易に維持することが可能である。また、突出支持部材は、戸体を支持しているので、戸体の重量が作用して突出支持部材と戸体を対向する部位との間に生じる摩擦力により、より確実に戸体が所望の位置にて開いている状態を維持することが可能である。
【0047】
かかる戸体であって、前記壁よりも前記一方側に位置する回動軸を有するヒンジにより、幅方向における一方の端側にて、上端側と下端側とが前記壁に支持されることを特徴とする。
【0048】
このような戸体によれば、戸体が、幅方向における一方の端側にて、上端側と下端側とがヒンジにより壁に支持される。このため、例えば、下端側のヒンジと突出した突出支持部材とで戸体を自立させることが可能である。このため、突出支持部材を突出させた戸体を下端側のヒンジに係合させた後に、戸体が自立した状態で上端側のヒンジを取り付けることが可能である。すなわち、上端側のヒンジと下端側のヒンジとを同時に係合させないので容易に戸体を下端側のヒンジと係合させることができ、下端側のヒンジと係合した後には戸体を支えることなく上端側のヒンジを固定できるので、より施工性に優れた戸体を提供することが可能である。
【0049】
かかる戸体であって、前記幅方向における他方の端側の上部に、当該戸体が前記開口を閉じた状態を維持する閉止維持部材を有することを特徴とする。
【0050】
このような戸体によれば、戸体を、前記開口を閉じた状態に維持する閉止維持部材を、幅方向における他方の端側に有しているので、壁と対向させた戸体が倒れることを防止することが可能である。
【0051】
かかる戸体であって、前記突出支持部材を、当該戸体と対向する部位に当接している当接位置、及び、当該戸体と対向する部位と離間している離間位置に移動可能な操作部と、前記操作部の操作により、前記突出支持部材が前記当接位置に移動するときに前記壁側と係合して施錠し、前記突出支持部材が前記離間位置に移動するときに係合が解除されて解錠される施錠部材と、
を有することを特徴とする。
【0052】
このような戸体によれば、操作部を操作して突出支持部材が当接位置に移動するときに施錠部材が壁側と係合して施錠されるので、突出支持部材にて戸体の移動を規制しつつ施錠することが可能である。また、操作部を操作して突出支持部材が離間位置に移動するときに施錠部材の壁側との係合が解除される。このため、施錠が解除されたときには、戸体の規制も解除されるので戸体を容易に開くことが可能である。
【0053】
また、開口を備えた壁の見込み方向における一方側に配置され、前記壁に回動自在に支持されて前記開口を閉じることが可能な戸体の施工方法であって、前記戸体は、前記壁よりも前記一方側に位置する回動軸を有するヒンジにより、幅方向における一方の端側にて、上端側と下端側とが前記壁に支持されており、下方に突出可能に設けられ、突出して当該戸体と対向する部位に当接し当該戸体を支持可能な突出支持部材と、前記幅方向における他方の端側の上部に、当該戸体が前記開口を閉じた状態を維持する閉止維持部材と、前記突出支持部材を、当該戸体と対向する部位に当接している当接位置、及び、当該戸体と対向する部位と離間している離間位置に移動可能な操作部と、前記操作部の操作により、前記突出支持部材が前記当接位置に移動するときに前記壁側と係合して施錠し、前記突出支持部材が前記離間位置に移動するときに係合が解除されて解錠される施錠部材と、を有しており、前記壁の前記開口を形成している開口側壁縁部において前記戸体の前記一方の端側における下端部に前記ヒンジを固定する下ヒンジ固定工程と、前記開口側壁縁部において前記戸体の前記他方の端側における上部に前記閉止維持部材と係合する係合部を固定する係合部固定工程と、前記突出支持部材を突出させた状態で前記戸体を、前記壁に固定した前記ヒンジと係合させ、前記戸体の前記他方の端側に設けられた前記施錠部材を前記壁側と係合させるとともに前記突出支持部材を前記戸体と対向する部位に当接させて当該戸体を自立させる戸体自立工程と、前記戸体に前記一方の端側の上端部に係合させた前記ヒンジを前記壁に固定する上ヒンジ固定工程と、を有することを特徴とする戸体の施工方法である。
【0054】
このような戸体の施工方法によれば、壁に下側のヒンジ及び係合部を取り付けた状態で、突出支持部材を突出させた戸体を下側のヒンジと係合させ、戸体の上部にて閉止維持部材を係合部に係合させるとともに施錠させて、戸体を自立させることができる。このため、容易に下端側のヒンジと係合させることができ、また、下端側のヒンジと係合した後には重い戸体を支えなくてよいので、作業者の負担を軽減できる。このとき、戸体は閉止維持部材によりに開口を閉じた状態に維持されているので、より確実に戸体を自立させておくことが可能である。そして、戸体が開口を閉じて自立している状態で上端部側のヒンジを固定するので、上端側のヒンジを容易に固定することが可能である。このため、作業者の負担が少なく戸体を容易に取り付けることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 扉、2 壁、2a 開口、2b 開口側壁縁部、3 ピボットヒンジ、
3a ピン、4 床、5 施錠機構、6 開閉操作部、7 操作部、
50 グレモンハンドル、55 マグネットラッチ、55c 台座突出片、
56 ロック棒、57 ラッチ受け、
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