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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】高分子マトリックス複合材料の再生利用
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/16 20060101AFI20220627BHJP
   C08J 11/24 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C08J11/16 ZAB
C08J11/24
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018552149
(86)(22)【出願日】2017-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 IB2017051838
(87)【国際公開番号】W WO2017175100
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】62/318,555
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518349318
【氏名又は名称】コンポジット テック ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ゴサウ ジャン-マイケル
(72)【発明者】
【氏名】アルレド ロナルド イー.
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0231469(US,A1)
【文献】特開2005-054138(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0036144(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第102558603(CN,A)
【文献】特開2006-124480(JP,A)
【文献】特開平08-269227(JP,A)
【文献】特開2015-189850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/16
C08J 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強材を熱硬化性ポリマーマトリックス内に前記補強材を含むポリマーマトリックス複合材料から分離および単離する方法であって、
前記方法が、
(a)(i)前記ポリマーマトリックス複合材料、ならびに(ii)フェノール化合物およびメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸およびそれらの組み合わせから選択される10~60重量%の酸性触媒を含む再生組成物を接触させるステップ、
(b)前記再生組成物を30℃~200℃の温度に加熱、および、1bar~20barの範囲の圧力に曝露し、前記再生組成物との接触によって、前記熱硬化性ポリマーマトリックスが(iii)鎖切断によって分解し、前記再生組成物内で可溶化したようになり、(iv)その結果前記補強材を前記再生組成物中に放出するステップ、
ならびに
(c)分離した補強材を前記再生組成物から単離するステップ
を含む、
前記方法。
【請求項2】
前記再生組成物を50℃~200℃の温度に加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記再生組成物を5bar~20barの範囲の圧力に曝露する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フェノール化合物をフェノール、クレゾール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキシ安息香酸、ニトロフェノール、ニトロソフェノール、フェノールアルデヒドおよびそれらの組み合わせから選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱硬化性ポリマーマトリックスをエポキシ樹脂、メラミンホルムアルデヒド、ポリエステル樹脂、尿素ホルムアルデヒド、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、シアン酸エステル、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂およびそれらの組み合わせから選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記熱硬化性ポリマーマトリックスがエポキシ樹脂である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記補強材が繊維、織物、粒子またはそれらの組み合わせの形態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記補強材がナノ材料の形態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記補強材がセラミック、粘土、金属、金属酸化物、金属炭化物、ガラス、石英、玄武岩、炭素、グラファイト、ホウ素、窒化ホウ素、植物またはそれらの組み合わせ製である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記補強材を炭素繊維、炭素織物、ガラス繊維、ガラス織物およびそれらの組み合わせから選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
バッチ方式で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記分離した補強材は、濾過または遠心分離を使用して前記再生組成物から単離する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ポリマーマトリックス複合材料の再生利用に関する。特に、本発明は、補強材を熱硬化性ポリマーマトリックス内に補強材を含むポリマーマトリックス複合材料から分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然資源の枯渇についてのますます高まっている懸念に伴って、消費者および産業廃棄物の再生利用のためのプログラムを開始するための進行中の協調的な努力がある。
【0003】
多くのポリマーベースの製品を再生利用するための技術が開発されてきた一方、これらは主に、非複合熱可塑性ポリマー製品に限定されてきた。例えば、特に廃ソフトドリンクボトル(waste soft drink bottle)形態におけるポリエチレンテレフタレート(PET)を再生利用するための広範なプログラムが、現在存在している。
【0004】
ポリマーマトリックス複合材料は、現代社会において、典型的には、ポリマー製品が改善された特性を示すことを必要とする用途において広く使用される。
【0005】
ポリマーマトリックス複合材料は、かかる改善された特性を、それらのポリマーマトリックス内に補強材、例えば繊維、織物および/または粒子補強材を包含させることによって提供する。
【0006】
改善された特性を付与する一方、ポリマーマトリックス複合材料内の補強材の存在によって、多くの再生利用の課題が提示される。ポリマーマトリックス複合材料再生利用プロセスの一部として、補強材をポリマーマトリックスから分離することが望ましい場合が多い。ポリマーマトリックス複合材料が熱可塑性ポリマーマトリックスを有する場合、補強材の分離を、当該ポリマーマトリックスの熱可塑性性質を利用することによって達成することができる。例えば熱可塑性ポリマーマトリックスを、熱および/または好適な溶媒を用いて液化することができる。液化した後、補強材を、固体(補強材)を液体(液化された熱可塑性ポリマーマトリックス)から分離するための既知の手法を使用して分離してもよい。熱可塑性ポリマーマトリックス複合材料をまた、再生利用の形態として単に新たな製品に再成形してもよい。
【0007】
しかしながら、ポリマーマトリックス複合材料が熱硬化性ポリマーマトリックスを有する場合、補強材の熱硬化性ポリマーマトリックスからの分離は、かなりより困難である。特に、熱硬化性ポリマーマトリックスは、熱の適用の際の融解または慣用の溶媒によって容易に溶媒和されることには修正可能でない。
【0008】
多くの手法が、それにもかかわらず、熱硬化性ポリマーマトリックスを有するポリマーマトリックス複合材料中の成分の少なくとも数種を再生利用する試みにおいて開発されてきた。
【0009】
例えば、補強材を回収するために、熱硬化性ポリマーマトリックス複合材料を熱分解に供し、それによって有機ポリマーマトリックスを実質的に燃焼させて除去し、補強材を残留させる。補強材をポリマーマトリックス複合材料から分離することに成功する一方、かかる熱分解手法は、熱的に安定な補強材を有する複合材料に限定される。この手法はまた、所望されない炭化層を回収した補強材の表面上に残留させる傾向がある。さらに、回収した補強材の機械的特性は、いずれにしても時々使用する高温によって悪影響を受け得る。
【0010】
別の例は、熱硬化性ポリマーマトリックス全体に微小亀裂を伝播させるように機能し、それによってマトリックスの小さな粒子への破砕を促進する、いわゆる「亀裂剤」を使用する。このようにしてポリマーマトリックスを破砕することにより、ポリマーマトリックスの補強材からの分離がもたらされ得る。しかしながら、この手法は、補強材の寸法が断片化されたポリマーマトリックスの寸法に近づくに伴ってより効果的でなくなる(すなわち同様のサイズの補強材を分離することはより困難であり得る)。さらに、少なくともプロセス動力学のため、当該手法は、商業的規模の用途には良好に適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、当該分野において知られている手法と関連する1つ以上の課題に対処する、または少なくともかかる手法に対する実行可能な代替法を提供する、熱硬化性マトリックスを有するポリマーマトリックス複合材料の成分を再生利用する手法を開発する機会が、依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、したがって、補強材を熱硬化性ポリマーマトリックス複合材料内に補強材を含むポリマーマトリックス複合材料から分離する方法であって、当該方法が、(i)ポリマーマトリックス複合材料、ならびに(ii)フェノール化合物および酸性または塩基性触媒を含む再生組成物を接触させることを含み、ここで前記再生組成物との接触によって、前記熱硬化性ポリマーマトリックスが(a)鎖切断によって分解し、再生組成物内で可溶化したようになり、(b)その結果補強材を再生組成物中に放出する、前記方法を提供する。
【0013】
本発明はさらに、補強材を熱硬化性ポリマーマトリックス内に補強材を含むポリマーマトリックス複合材料から分離するための再生組成物の使用を提供し、当該再生組成物は、フェノール化合物および酸性または塩基性触媒を含む。
【0014】
本発明はまた、補強材を熱硬化性ポリマーマトリックス内に補強材を含むポリマーマトリックス複合材料から分離するために使用する場合の再生組成物を提供し、当該再生組成物は、フェノール化合物および酸性または塩基性触媒を含む。
【0015】
一実施形態において、再生組成物の使用は、再生組成物およびポリマーマトリックス複合材料を接触させることを含む。
【0016】
今回、補強材を熱硬化性ポリマーマトリックス内に含むポリマーマトリックス複合材料を、驚くべきことに、再生組成物を用いて比較的穏和な条件下で分解して、補強材の熱硬化性ポリマーマトリックスからの分離を有効かつ効率的に可能にすることができることが、見出された。
【0017】
本発明による方法は、有利には、供給原料として、特定の条件下で分解するように戦略的に設計されている特殊な熱硬化性ポリマーマトリックスを含むポリマーマトリックス複合材料を使用することに限定されない。換言すれば、本発明による方法は、供給原料として、慣用の商業的な熱硬化性ポリマーマトリックスを含むポリマーマトリックス複合材料を有利に使用することができる。
【0018】
本発明によれば、フェノール化合物および酸性または塩基性触媒を含む再生組成物によって、鎖切断による熱硬化性ポリマーマトリックスの分解が促進される。「鎖切断」によって、熱硬化性ポリマーマトリックスの分子構造を構成する共有結合の破壊を意味する。この鎖切断によって、次に熱硬化性ポリマーマトリックスが分解することが引き起こされ、再生組成物中に可溶化されたようになるのに十分に低い分子量を有するその残留物が生成する。熱硬化性ポリマーマトリックスのかかる分解によって、結果として補強材がポリマーマトリックス複合材料から放出され、それによって分離される。
【0019】
分離した補強材を、再生組成物から、既知の分離手法、例えば濾過または遠心分離を使用して容易に単離することができる。
【0020】
単離した補強材を、有利には、それがポリマーおよび他の汚染物を実質的に含まないという意味において極めて「清浄な」状態において提供することができる。最も顕著には、プロセスの比較的穏和な条件のために、補強材を、ポリマーマトリックス複合材料から、元の補強材(すなわちポリマーマトリックス複合材料において使用する前の補強材)の物理的特性および機械的特性を実質的に維持しながら分離することができる。単離した補強材は、したがって新たな用途に再生利用するのに特に良好に適している。
【0021】
本発明はさらに、本発明の方法によりポリマーマトリックス複合材料から分離した補強材を提供する。
【0022】
本発明によってまた、有利には、ポリマーマトリックス複合材料の分解した熱硬化性ポリマー成分の再生利用が可能になる。当該方法によれば、熱硬化性ポリマーマトリックスを分解し、再生組成物内で可溶化したようになる。可溶化した分解した熱硬化性ポリマーマトリックスは、比較的低分子量の種の形態にあり、再生組成物から手法、例えば蒸留または溶媒抽出を用いて容易に単離することができる。ポリマーマトリックス複合材料の単離した分解したポリマー成分を、次に新たな用途に再生利用することができる。あるいはまた、ポリマーマトリックス複合材料の分解した熱硬化性ポリマー成分を含む再生組成物を、それ自体新たな用途に再生利用してもよい。
【0023】
本発明の方法によって提供される別の利点は、それが商業的規模での操作に特に良好に適していることである。
【0024】
本発明のさらなる態様および実施形態を、以下に概説する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明による方法は、補強材を熱硬化性ポリマーマトリックス内に補強材を含むポリマーマトリックス複合材料から分離するためのものである。
【0026】
表現「ポリマーマトリックス複合材料」は、そのポリマーマトリックス内に、ポリマーマトリックスに本質的に不溶性である1種以上の補強材を含むポリマーを意味することを意図する。
【0027】
表現「補強材」は、ポリマーマトリックスの特性を改変する役割を果たすポリマーマトリックス内に包含された材料を意味することを意図する。補強材は、ポリマーマトリックス中に実質的に不溶性であり、ポリマーマトリックスの物理的および/または化学的特性を様々な方法において改変することができる。例えば、補強材は、ポリマーマトリックスを強化し、硬化させ、頑健にし、かつ/またはその温度もしくは耐衝撃性を高めることができる。補強材は、種々の物理的形態において、例えば繊維、織物および/または粒子の形態において提供され得る。補強材は、ナノ材料(すなわち100nmより大きくない少なくとも1種の寸法を有する材料)の形態にあってもよい。補強材はまた、様々な化学的形態において提供され得、例えばそれは、無機、有機、金属、粘土またはセラミックであってもよい。
【0028】
本発明に従って使用するポリマーマトリックス複合材料は、全体に補強材が配置される熱硬化性ポリマーマトリックスを有する。
【0029】
表現「熱硬化性ポリマーマトリックス」は、架橋して三次元ネットワーク構造を形成するポリマーマトリックスを意味することを意図する。熱可塑性ポリマーマトリックスとは異なり、熱硬化性ポリマーマトリックスは、熱の適用の際に溶融および流動せず、代わりに十分に高い温度で分解する。
【0030】
熱硬化性ポリマーが熱硬化性ポリマーマトリックスを提供することは、理解されるであろう。
【0031】
「熱硬化性ポリマーマトリックス内にある」補強材または「補強材を含む」熱硬化性ポリマーマトリックスによって、補強材が熱硬化性ポリマーマトリックス全体にわたって、それが何らかの方法において熱硬化性ポリマーマトリックスを分解せずに熱硬化性ポリマーマトリックスから単に分離することができないように会合、分布または包埋されることを意味する。
【0032】
熱硬化性ポリマー(熱硬化性ポリマーマトリックスを提供する)の例としては、エポキシ樹脂、メラミンホルムアルデヒド、ポリエステル樹脂、尿素ホルムアルデヒド、ビニルエステル、フェノール樹脂、シアン酸エステル、ポリイミドおよびマレイミド樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
一実施形態では、熱硬化性ポリマーマトリックスを、エポキシ樹脂、メラミンホルムアルデヒド、ポリエステル樹脂、尿素ホルムアルデヒド、ビニルエステル、フェノール樹脂、シアン酸エステル、ポリイミド、マレイミド樹脂およびそれらの組み合わせから選択する。
【0034】
別の実施形態において、熱硬化性ポリマーマトリックスを、エポキシ樹脂から選択する。
【0035】
一実施形態において、補強材は、繊維、織物、粒子およびそれらの組み合わせから選択された形態にある。
【0036】
補強材が粒子の形態にある場合、粒子は、様々な形状を有することができる。例えば、粒子は、球形またはロッド形状を有してもよい。
【0037】
さらなる実施形態において、補強材は、ナノ材料の形態にある。
【0038】
別の実施形態において、補強材は、繊維、織物およびそれらの組み合わせから選択された形態にある。
【0039】
補強材は、様々な物質製であってもよい。例えば、補強材は、無機、有機、金属、粘土またはセラミックであってもよい。
【0040】
一実施形態において、補強材は、セラミック、粘土、金属、金属酸化物、金属炭化物、ガラス、石英、玄武岩、炭素、グラファイト、ホウ素、窒化ホウ素、植物およびそれらの組み合わせから選択された組成物製である。
【0041】
一実施形態において、炭素系補強材を、炭素繊維、炭素織物、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびグラファイトから選択する。
【0042】
一実施形態において、ホウ素系補強材を、ホウ素または窒化ホウ素繊維およびナノチューブから選択する。
【0043】
一実施形態において、補強材は、非ポリマー補強材である。
【0044】
さらなる実施形態において、補強材を、炭素繊維、炭素織物、ガラス繊維、ガラス織物およびそれらの組み合わせから選択する。
【0045】
本発明に従って使用するポリマーマトリックス複合材料は、補強材を含む熱硬化性ポリマーマトリックスを含む。一般に、補強材は、熱硬化性ポリマーマトリックスの少なくとも一部の全体に分布する。熱硬化性ポリマーマトリックスの架橋構造により、補強材をポリマーマトリックス複合材料から分離することは、困難である。特に、ポリマーマトリックスの熱硬化性(すなわち架橋)特性によって、ポリマーマトリックスが単に溶融または溶解し、補強材から離れることが妨げられる。
【0046】
驚くべきことに、今回、熱硬化性ポリマーマトリックスを、比較的穏和なプロセス条件を使用して、その中に補強材を放出するように効果的かつ効率的に分解することができることが、見出された。補強材を、ポリマーマトリックス複合材料から、実質的に清浄な形態において単離することができ、比較的穏和な加工条件によって、有利には、補強材がその元の化学的および機械的特性のすべてではないにしてもほとんどを保持することが可能になる。
【0047】
本発明による方法は、ポリマーマトリックス複合材料および再生組成物を接触させることを含む。
【0048】
再生組成物は、フェノール化合物および酸性または塩基性触媒を含み、ポリマーマトリックス複合材料から誘導された補強材および分解した熱硬化性ポリマーマトリックス残留物の再生または再生利用を容易にする。
【0049】
ポリマーマトリックス複合材料および再生組成物を「接触させる」によって、再生利用するべきポリマーマトリックス複合材料を再生組成物に添加し、再生組成物を再生利用するべきポリマーマトリックス複合材料に添加し、またはかかる作用を組み合わせて、再生組成物がポリマーマトリックス複合材料と物理的に接触するようにすることを意味する。ポリマーマトリックス複合材料および再生組成物を接触させる作用は、実際には、典型的には、関連する成分を反応容器内で合わせることによって生じる(以下でより詳細に討議する)。再生組成物および/またはポリマーマトリックス複合材料の成分を、かかる反応容器中に、別個に、または一緒に導入してもよい。
【0050】
「フェノール化合物」によって、芳香環に直接共有結合した水酸基(OH)を含む化合物(例えばAr-OH)を意味する。
【0051】
好適なフェノール化合物の例には、フェノール、クレゾール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキシ安息香酸、ニトロフェノール、ニトロソフェノール、フェノールアルデヒド、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
フェノール化合物に加えて、再生組成物は、酸性または塩基性触媒を含む。「酸性」または「塩基性」である触媒によって、それが再生組成物をそれぞれ酸性(すなわちpH<7)または塩基性(すなわちpH>7)にすることができる化学構造を有することを意味する。
【0053】
再生組成物は、それぞれの酸性または塩基性触媒が再生組成物内で可溶であることによって酸性または塩基性にされる。熱の再生組成物への適用は、酸性または塩基性触媒の再生組成物中の溶解性を促進するために必要とされ得る。
【0054】
触媒の酸性または塩基性性質を、当該分野において公知の手法によって容易に決定することができる。例えば、触媒の酸性または塩基性性質を、そのpHを測定することによって決定することができる。
【0055】
再生組成物を酸性または塩基性にする場合には、使用する酸性または塩基性触媒のタイプに関して特定の限定はない。
【0056】
好適な酸性触媒の例には、塩酸、酢酸、乳酸、ギ酸、プロピオン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、安息香酸、フタル酸、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
好適な塩基性触媒の例には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩、アンモニア、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、アナリン(analine)、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
理論によって制限されることを望まずに、酸性または塩基性触媒は、熱硬化性ポリマーマトリックスの分解を促進する化学反応を促進すると考えられる。
【0059】
再生組成物は一般に、再生組成物の全質量に相対して1~99重量%のフェノール化合物および1~50重量%の酸性または塩基性触媒を含む。
【0060】
再生組成物はまた、1種以上の他の成分を含んでもよい。例えば、再生組成物は、溶媒、例えば有機溶媒(例えばトルエン、キシレン、アルコール)、水またはそれらの組み合わせを含んでもよい。一実施形態において、使用する溶媒は、水である。
【0061】
一実施形態において、フェノール化合物は、再生組成物中に、20~99重量%、または30~90重量%、または40~90重量%、または50~90重量%、60~85重量%、または60~75重量%の範囲内の量において存在する。
【0062】
一実施形態において、酸性または塩基性触媒は、再生組成物中に、5~80重量%、または5~60重量%、または10~60重量%、または15~60重量%、20~50重量%、または25~40重量%の範囲内の量において存在する。
【0063】
一実施形態において、再生組成物は、1~50重量%、または1~40重量%、または1~30重量%、または1~25重量%、1~20重量%、または1~15重量%の範囲内の量における溶媒を含む。
【0064】
フェノール化合物および酸性または塩基性触媒が再生組成物の100重量%を構成しない場合、100重量%までの残りの重量%は、一般に溶媒から構成される。
【0065】
ポリマーマトリックス複合材料と再生組成物との間の接触を最大にし、熱硬化性ポリマーマトリックスの分解を促進するために、再生組成物は、一般に液体形態にある。
【0066】
一実施形態において、再生組成物は、液体再生組成物である。
【0067】
再生組成物を形成する1種以上の成分が室温で固体である場合、当該成分は、存在する1種以上の他の液体溶媒成分に溶解することによって液化され得、かつ/または熱を組成物に適用して、固体成分を液体形態に変換してもよい。
【0068】
本発明の方法を実施する場合、ポリマーマトリックス組成物と再生組成物との間の接触は、一般に反応容器内で起こる。
【0069】
適切な反応容器を、再生組成物の成分と実質的に非反応性であるように選択する。例えば、反応容器は、再生組成物を収容するための内側ガラス裏張りを有する鋼製であってもよい。あるいはまた、反応容器は、耐食性合金、例えばHastelloy 256またはCarpenter 20製であってもよい。
【0070】
ポリマーマトリックス複合材料と再生組成物との間の接触を促進するために、これらの成分を反応容器内で撹拌または混合することが望ましい場合がある。
【0071】
ポリマーマトリックス複合材料および再生組成物を含有する反応容器を、したがって撹拌反応容器の形態において提供してもよい。
【0072】
反応容器は、1種以上の機械的撹拌機、例えばアンカーまたは「H」撹拌機を含んでもよい。
【0073】
反応容器は、典型的には、再生組成物、ポリマーマトリックス複合材料およびそれから誘導される残留物を導入または除去するための1つ以上の開口部を含む。
【0074】
反応容器の底部は、平坦な表面を呈するか、または倒立した円錐台の形態にあってもよい。
【0075】
反応容器の体積を、実施するべきプロセスの規模に基づいて選択する。有利には、本発明による方法を、小規模または大規模で容易に実施することができる。例えば、反応容器を、50リットル~15,000リットルの範囲内の体積を有するように選択してもよい。
【0076】
熱硬化性ポリマーマトリックスの分解を促進するために、ポリマーマトリックス複合材料の最大の表面積を再生組成物に曝露することが、一般に望ましい。ポリマーマトリックス複合材料が様々な形状およびサイズにおいて存在し得るので、それを再生組成物と接触させる前に粉砕する必要があり得る。それでもやはり、補強材の性質および分離した補強材を適用するべき意図された用途に依存して、粉砕と、ポリマーマトリックス複合材料の再生組成物との表面積接触を最大にすることとの間の均衡を考慮する必要があり得る。例えば、補強材が繊維であり、分離した繊維の意図する用途が繊維長さを最大にすることを必要とする場合、ポリマーマトリックス複合材料を所望の繊維長さを妥協する程度まで粉砕することは適切でない場合がある。
【0077】
ポリマーマトリックス複合材料を、再生組成物中に部分的に、または完全に浸漬してもよい。
【0078】
本発明による方法は、有利には、ポリマーマトリックス複合材料を大きい、または小さい片において収容することができる。例えば、ポリマーマトリックス複合材料は、粉末の形態にあってもよく、あるいはまたそれは、100cm以上までの寸法を呈してもよい。
【0079】
本発明に従って使用するべきポリマーマトリックス複合材料が粉砕を必要とする場合、これを、当該分野において公知の手法を用いて達成することができる。例えば、ポリマーマトリックス複合材料を、シュレッダー、ハンマーミル、グラインダーまたは造粒機を用いて粉砕してもよい。
【0080】
ポリマーマトリックス複合材料の性質(例えば物理的形態および化学組成)ならびに再生組成物の性質(例えば化学組成)に依存して、熱硬化性ポリマーマトリックスの所望の程度の分解を許容可能な時間枠において少なくとも促進するために、熱をポリマーマトリックス複合材料と接触している再生組成物に供給することが必要であり得る。
【0081】
一実施形態において、当該方法は、熱をポリマーマトリックス複合材料と接触している再生組成物に供給することを含む。
【0082】
当該場合において、本発明は、補強材を熱硬化性ポリマーマトリックス内に補強材を含むポリマーマトリックス複合材料から分離する方法であって、当該方法が以下:
(a)(i)ポリマーマトリックス複合材料、ならびに(ii)フェノール化合物および酸性または塩基性触媒を含む再生組成物を接触させるステップ;ならびに
(b)熱を再生組成物に供給するステップ
を含み、
ここで再生組成物との接触によって、熱硬化性ポリマーマトリックスが(a)鎖切断によって分解し、再生組成物内で可溶化したようになり、かつ(b)その結果補強材を再生組成物中に放出する、
前記方法を提供する。
【0083】
熱を再生組成物に供給することによって、(i)固体形態で存在する場合、その1種以上の成分を液体形態に変換するのが補助され、それにより、ポリマーマトリックス複合材料と再生組成物との間の接触が増強され、かつ/または(ii)鎖切断および再生組成物内の熱硬化性ポリマーマトリックスの分解された残留物のその後の溶媒和による熱硬化性ポリマーマトリックスの分解が増強され得る。
【0084】
本発明はさらに、補強材を熱硬化性ポリマーマトリックス内に補強材を含むポリマーマトリックス複合材料から分離する方法であって、当該方法が以下:
(a)(i)ポリマーマトリックス複合材料、ならびに(ii)フェノール化合物および酸性または塩基性触媒を含む再生組成物を接触させるステップ;ならびに
(b)熱を再生組成物に供給するステップ
を含み、
ここで(i)ポリマーマトリックス複合材料と接触する再生組成物が液体形態にあり、かつ(ii)液体再生組成物と接触することによって、熱硬化性ポリマーマトリックスが(a)鎖切断によって分解し、再生組成物内で可溶化したようになり、かつ(b)その結果補強材を再生組成物中に放出する、
前記方法を提供する。
【0085】
一実施形態において、再生組成物を、少なくとも30℃、または少なくとも40℃、または少なくとも50℃、または少なくとも60℃、または少なくとも70℃、または少なくとも80℃、または少なくとも90℃、または少なくとも100℃、または少なくとも110℃、または少なくとも120℃、または少なくとも130℃、または少なくとも140℃、または少なくとも150℃、または少なくとも160℃、または少なくとも170℃、または少なくとも180℃、または少なくとも190℃、または少なくとも200℃、または少なくとも210℃、または少なくとも220℃、または少なくとも230℃、または少なくとも240℃、または少なくとも250℃、または少なくとも260℃、または少なくとも270℃、または少なくとも280℃、または少なくとも290℃または少なくとも300℃、または少なくとも350℃の温度に加熱する。
【0086】
さらなる実施形態において、再生組成物を、約30℃~約350℃、または約70℃~約350℃、または約100℃~約350℃、または約150℃~約350℃、または約200℃~約350℃、または約250℃~約350℃、または約30℃~約200℃、または約50℃~約200℃、または約70℃~約200℃、または約80℃~約200℃、または約90℃~約200℃、または約100℃~約200℃の範囲内の温度に加熱する。
【0087】
一実施形態において、再生組成物は、塩基性触媒を含み、約250℃~約350℃の温度に加熱される。
【0088】
さらなる実施形態において、再生組成物は、酸性触媒を含み、約100℃~約200℃の温度に加熱される。
【0089】
熱の再生組成物への供給を、当該分野において公知の手法を用いて達成することができる。例えば、熱を、内部に再生組成物を含む加熱した反応容器から供給してもよい。
【0090】
熱硬化性ポリマーマトリックスの分解を促進するために、当該プロセスを(大気圧に相対して)圧力の上昇下で行うことがまた、望ましい場合がある。
【0091】
一実施形態において、当該方法は、圧力をポリマーマトリックス複合材料と接触している再生組成物に供給することを含む。
【0092】
さらなる実施形態において、再生組成物を、少なくとも1bar、または少なくとも2bar、または少なくとも3bar、または少なくとも5bar、または少なくとも8bar、または少なくとも10bar、または少なくとも15bar、または少なくとも20bar、または少なくとも25bar、または少なくとも30bar、または少なくとも35bar、または少なくとも40bar、または少なくとも45bar、または少なくとも50bar、または少なくとも55bar、または少なくとも60barの圧力に供する。
【0093】
別の実施形態において、再生組成物を、約1bar~約60bar、または2bar~約60bar、または約5bar~約60bar、または約2bar~約20bar、または5bar~約20bar、または約30bar~約60barの範囲内の圧力に供する。
【0094】
再生組成物を圧力の上昇に供することを、当該分野において公知の手法を用いて達成することができる。例えば、本発明による方法を、圧力反応容器中で行ってもよい。
【0095】
本発明によれば、熱硬化性ポリマーマトリックスは、再生組成物と接触することによって分解する。理論によって制限されることを望まずに、再生組成物は、熱硬化性ポリマーマトリックスを膨潤させ、それによって再生組成物の熱硬化性ポリマーマトリックス内への進入を補助すると考えられる。再生組成物によって、次に熱硬化性ポリマーマトリックス全体にわたる鎖切断が効率的に促進され得る。この鎖切断によって、次に熱硬化性ポリマーマトリックスが分解することが生じ、再生組成物中に可溶化したようになるのに十分に低い分子量を有するその残留物が生成する。熱硬化性ポリマーマトリックスのかかる分解によって、結果として補強材がポリマーマトリックス複合材料から放出され、それによって分離される。
【0096】
熱硬化性ポリマーマトリックスの分解はまた、他の化学的経路、例えば脱水素化および/または加水分解を介して起こり得る。
【0097】
熱硬化性ポリマーマトリックスのかかる分解経路は、補強材をポリマーマトリックス複合材料から分離するために使用する慣用の熱分解および「クラッキング」手法とは異なる。
【0098】
当業者は、熱硬化性ポリマーが溶融することができないことおよびそれらの溶媒への不溶性が主に、熱硬化性ポリマーマトリックスの架橋構造がポリマーマトリックスを形成するポリマー鎖の流動または加溶媒分解を妨げる結果であることを理解するであろう。本発明の方法に従って誘発される鎖切断により、熱硬化性ポリマーマトリックスを、再生組成物内で溶媒和され得る十分に低い分子量の分子断片に断片化する。したがって、鎖切断により、熱硬化性ポリマーマトリックスは、再生組成物内で可溶化したようになる。
【0099】
熱硬化性ポリマーマトリックスが分解し、再生組成物内で可溶化するようになる結果、熱硬化性ポリマーマトリックス内の補強材は、再生組成物内に放出され、その結果ポリマーマトリックス複合材料から分離されたようになる。
【0100】
本発明による方法は、したがって、熱硬化性ポリマーマトリックスの可溶化された分子断片および分散または分散補強材を含む再生組成物を製造する。
【0101】
補強材を、慣用の分離手法を用いて再生組成物から有利に単離することができる。例えば、分離した補強材を、再生組成物から、濾過または遠心分離によって単離してもよい。
【0102】
熱硬化性ポリマーマトリックスの可溶化された分子断片および分散または分散補強材(すなわち再生組成物プロセス製品)を含む再生組成物が偶然、分離した補強材を再生組成物から単離するべき温度で固体である場合、再生組成物プロセス製品を、それを液化し、分離した補強材の単離を容易にするように加熱してもよい。
【0103】
一実施形態において、当該方法はさらに、補強材を再生組成物から、例えば濾過または遠心分離によって単離するステップを含む。
【0104】
プロセス中の分解によって生成する熱硬化性ポリマーマトリックスの分子断片の組成は、ポリマーマトリックス複合材料の熱硬化性ポリマーマトリックスのタイプに依存して変化する。かかる分子断片は、典型的には、熱硬化性ポリマーマトリックスを形成するために使用するモノマー成分を反映する組成を有する。例えば、熱硬化性ポリマーマトリックスをフェノールベースのモノマーを用いて製造する場合、プロセス中に生成する熱硬化性ポリマーマトリックスの分子断片は、フェノール組成物を有し得る。かかる分解生成物は再生組成物に可溶化されたようになるが、それらは、再生組成物自体の一部を提示することを意図しない。言い換えれば、再生組成物自体は、プロセスのまさに開始時および熱硬化性ポリマーマトリックスのあらゆる分解が起こる前に提示し、使用するものであることを意図する。
【0105】
したがって、本発明に従って使用する再生組成物は、熱硬化性ポリマーマトリックスのあらゆる分解が起こる前に、フェノール化合物および酸性または塩基性触媒を含む。再生組成物自体のフェノール化合物および酸性または塩基性触媒は、したがって本発明の方法の間にin situで生成しない。
【0106】
本発明による方法を、バッチ方式で、または連続的に実施してもよい。
【0107】
一実施形態において、プロセスを、バッチ方式で実行する。当該場合において、本発明は、補強材を熱硬化性ポリマーマトリックス内に含むポリマーマトリックス複合材料から補強材を分離するためのバッチ方式方法であって、当該方法が(i)ポリマーマトリックス複合材料ならびに(ii)フェノール化合物および酸性または塩基性触媒を含む再生組成物を接触させることを含み、ここで再生組成物との接触によって、熱硬化性ポリマーマトリックスが(a)鎖切断によって分解し、再生組成物内で可溶化したようになり、(b)その結果補強材を再生組成物中に放出する、前記方法を提供する。
【0108】
当業者は、「バッチ方式の」方法が、当該方法において使用するべきすべての原料成分を、例えば反応容器中に細かく調べることを含み、ここでそれらがプロセスの継続期間にわたって残留することを理解するであろう。対照的に、「連続的」方法は、当該方法において使用するべき原料成分を、例えば反応容器中に、当該方法の継続期間を通して導入することを含む。当該場合において、当該方法から生成した生成物をまた、しばしば、当該方法中に例えば反応容器から取り出す。
【0109】
熱硬化性ポリマーマトリックスが再生組成物によって分解し、再生組成物内で溶媒和されるので、補強材を、それがポリマー残留物および他の汚染物を実質的に含まないという意味において極めて「清浄な」形態において有利に単離することができる。
【0110】
最も顕著には、本発明による方法は、熱硬化性ポリマーマトリックスを比較的穏和な条件下で分解し、その結果補強材をポリマーマトリックス複合材料から分離し、同時に元の補強材の物理的および機械的特性を実質的に維持することができる。単離した補強材を、したがって補強材の厳しい特性を要求する用途に再生利用することができる。
【0111】
所要に応じて、再生組成物から単離した後、補強材を洗浄し、乾燥し、および/または他の下流の加工手法に供してもよい。
【0112】
本発明の方法から誘導された単離した補強材を、新たなポリマーマトリックス複合製品を製造するにあたって使用するために再生利用することができる。
【0113】
本発明の方法を行った後、再生組成物は、熱硬化性ポリマーマトリックスの分解残留物を含む。有利には、当該再生組成物を、熱硬化性ポリマーマトリックスの分解残留物の量が、例えば当該方法を遅くすることによって当該方法を不利に干渉し始めるような時点まで、本発明の方法において使用し続けることができる。
【0114】
再生組成物中の熱硬化性ポリマーマトリックスの分解残留物は、典型的には、1つ以上の官能基で置換されていてもいなくてもよい比較的低分子量の炭化水素の混合物の形態にある。分解した残留物を、再生組成物から、周知の手法、例えば蒸留、溶媒抽出などを用いて有利に単離することができる。分解残留物を再生組成物から単離した後に、再生組成物および分解残留物の両方を、再生利用することができる。
【0115】
「清浄にした」再生組成物を、有利には、本発明による方法における使用のために再生利用することができる。
【0116】
本発明の方法から誘導された熱硬化性ポリマーマトリックスの単離した分解残留物は、例えばフェノール-ホルムアルデヒド接着剤組成物における使用のために再生利用することができるフェノール化合物を含んでもよい。
【0117】
一実施形態において、当該方法はさらに、熱硬化性ポリマーマトリックスの分解残留物を再生組成物から、例えば蒸留によって単離することを含む。
【0118】
あるいはまた、ポリマーマトリックス複合材料の分解した熱硬化性ポリマー成分を含む再生組成物を、それ自体新たな用途に再生利用してもよい。
【0119】
本発明の方法は、したがって、ポリマーマトリックス複合材料の再生利用可能性を最大化するのみならず、それを実質的に自己充足型である方法において実施することができることが明らかである。さらに、当該方法は、商業的規模において実施するのに良好に適している。
【0120】
本発明を、以下で、以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例
【0121】
実施例1
熱硬化性ポリイミドマトリックスを有する1kgの細断した炭素繊維強化ポリマー(CFRP)を、フェノール(工業銘柄(tech grade)-それは10重量%の水を含有する)の1kgの水酸化ナトリウム(再生組成物)との混合物10l中で、300℃に1時間、撹拌しながらステンレス鋼圧力容器中で加熱した。30barの圧力が、観察された。冷却時に、再生組成物を排出し、得られた分離した艶消し仕上げをした繊維を押圧して、追加の再生組成物を除去し、続いてアセトンで繰り返し洗浄し、続いて水ですすいだ。600gの繊維を、乾燥時に回収した。分解した熱硬化性ポリマーマトリックスを含む再生組成物を、合板用接着剤の製造のための添加剤として直接使用することができる。
【0122】
実施例2
熱硬化性ポリウレタンマトリックスを有する100gの細断したCFRPを、90%フェノール(工業銘柄-それは10重量%の水を含有する)および10%トルエンスルホン酸の混合物(再生組成物)2L中で、ガラスフラスコ中で5日間、100℃に加熱した。圧力を、大気圧で維持した。分離した繊維を、再生組成物から濾過により除去し、高温水で洗浄した。58gの繊維を、乾燥後に回収した。
【0123】
実施例3
100gの細断したCFRP熱硬化性エポキシベースのマトリックスを、250mlのフェノール(工業銘柄-それは10重量%の水を含有する)、250mlのアニリンおよび50gの水酸化カリウムの混合物(再生組成物)と共に、ステンレス鋼圧力容器中で、325℃に15分間加熱した。60barの圧力が、観察された。冷却時に、再生組成物を排出し、得られた分離した艶消し仕上げをした繊維を押圧して、追加の再生組成物を除去し、続いてアセトンで繰り返し洗浄し、続いて水ですすいだ。61gの繊維を、乾燥時に回収した。
【0124】
実施例4
100gの細断したCFRP熱硬化性ビニルエステルベースのマトリックスを、250mlのフェノール(工業銘柄-それは10重量%の水を含有する)および250mlのメタンスルホン酸(再生組成物)と共に、ステンレス鋼圧力容器中で150℃で180分間加熱した。4barの圧力が、観察された。冷却時に、再生組成物を排出し、得られた分離した艶消し仕上げをした繊維を押圧して、追加の再生組成物を除去し、続いてアセトンで繰り返し洗浄し、続いて水ですすいだ。59gの繊維を、乾燥時に回収した。
【0125】
実施例5
25gの細断したガラス織物/エポキシ回路基板を、500mlの90/10 フェノール(工業銘柄-それは10重量%の水を含有する)/TSA混合物中で、95℃に5日間加熱した。圧力を、大気圧で維持した。冷却後、分離した繊維を、再生組成物から濾過により除去した。濾過、アセトンでの洗浄および乾燥の後、19.5gの清浄な白色ガラス繊維を、回収した。
【0126】
実施例6
20gのFiberite炭素織物/エポキシ老朽プリプレグを、1.3cmのストリップに切断し、200mlのレゾルシノールおよび100mlのTSA中で140℃に24時間加熱した。濾過および3回のアセトン洗浄の後、11.5gの清浄な炭素繊維を、回収した。
【0127】
実施例7
10gの細断した炭素/エポキシロケットモーターケースを、100gの90/10 レゾルシノール/TSA混合物中で150℃に12時間加熱した。圧力を、大気圧で維持した。冷却後、分離した繊維を、再生組成物から濾過により除去した。濾過、アセトンでの洗浄および乾燥の後、6gの清浄な炭素繊維を、回収した。
【0128】
実施例8
50gの細断した炭素/エポキシロケットモーターケースを、125gのフェノール(工業銘柄-それは10重量%の水を含有する)、125gのクレゾール、125gのレゾルシノール、125gのヒドロキノンおよび50gのTSAの混合物中で、150℃に14時間加熱した。圧力を、大気圧で維持した。冷却後、分離した繊維を、再生組成物から濾過により除去した。濾過、アセトンでの洗浄および乾燥の後、31gの炭素繊維を、濾過により回収した。
【0129】
本明細書および後続する特許請求の範囲を通じて、文脈が別段要求しない限り、単語「含む(comprise)」、ならびに変化形、例えば「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、述べた整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群の包含を意味するが、あらゆる他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群の排除を意味しないと理解される。
【0130】
本明細書におけるあらゆる先行する刊行物(もしくはそれに由来する情報)または既知であるあらゆる事項への言及は、当該先行する刊行物(もしくはそれに由来する情報)または既知の事項が、本明細書が関する努力の分野における共通の一般的知識の一部を形成するという知識または承認またはいかなる形態の示唆とも解釈されず、かつ解釈するべきではない。