(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】エンドシアリン結合抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220627BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220627BHJP
A61K 35/00 20060101ALI20220627BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20220627BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220627BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220627BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220627BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220627BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220627BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20220627BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220627BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220627BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220627BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220627BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220627BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220627BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220627BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
A61K31/7088
A61K35/00
A61K35/12
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K48/00
A61P35/00
C07K16/28
C07K16/30
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C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2018560245
(86)(22)【出願日】2017-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2017052399
(87)【国際公開番号】W WO2017134234
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2020-02-03
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518277653
【氏名又は名称】メディアファルマ・エッセ・エッレ・エッレ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・ヤコベッリ
(72)【発明者】
【氏名】アンナリーザ・ディ・リージオ
(72)【発明者】
【氏名】エンツァ・ピッコロ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルーカ・サーラ
(72)【発明者】
【氏名】エミリー・カポーネ
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/017759(WO,A2)
【文献】国際公開第2010/097825(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0328623(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0260769(US,A1)
【文献】Becker R. et al., Tumor stroma marker endosialin (Tem1) is a binding partner of metastasis-related protein Mac-2 BP/90K. FASEB J. 2008 Aug;22(8):3059-67. doi: 10.1096/fj.07-101386. Epub 2008 May 19. PMID: 18490383.,2008年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C12N 15/63
C07K 16/28
C12P 21/08
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C07K 16/46
C07K 19/00
C07K 16/30
A61K 39/395
A61K 47/68
A61K 31/7088
A61K 35/12
A61K 48/00
A61K 35/00
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1(SEQ ID NO: 1)に記載のヒトエンドシアリンのアミノ酸477~488の間のエピトープに対する抗体又はその機能性断片であって、
(i) 配列番号2に示されるCDRH1、配列番号3に示されるCDRH2及び配列番号4に示されるCDRH3を含む重鎖、並びに
(ii) 配列番号5に示されるCDRL1、配列番号6に示されるCDRL2及び配列番号7に示されるCDRL3を含む軽鎖、
を含む、抗体又はその機能性断片。
【請求項2】
配列番号8(SEQ ID NO:8)に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び、配列番号9(SEQ ID NO:9)に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項1に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項3】
Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv断片、ダイアボディ(二重特異性抗体)、ScFv、
又は小モジュール免疫薬(SMIP
)である、請求項1又は2に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項4】
IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4型、又はIgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD若しくはIgE型抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項5】
モノクローナル抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項6】
配列番号18(SEQ ID NO:18)、配列番号19(SEQ ID NO:19)、配列番号20(SEQ ID NO:20)若しくは配列番号21(SEQ ID NO:21)に示されるアミノ酸配列又はそれらに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び
配列番号22(SEQ ID NO:22)、配列番号23(SEQ ID NO:23)、配列番号24(SEQ ID NO:24)若しくは配列番号25(SEQ ID NO:25)に示されるアミノ酸配列又はそれらに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項1、3、4又は5のいずれか一項に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項7】
標識基(a labelling group)又はエフェクター基に結合している、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項8】
イメージング時に検出可能な常磁性イオン、放射性イオン又は蛍光発生イオンに結合している、請求項7に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項9】
抗細胞薬、特に内皮細胞を死滅させることができる又は内皮細胞の成長若しくは分裂を抑制することができる抗有糸分裂剤又はDNA傷害剤に結合している、請求項7に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項10】
抗細胞薬が化学療法剤、放射性同位体又は細胞毒を含む、請求項9に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項11】
抗細胞薬が、代謝拮抗物質、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、抗生物質、アルキル化剤、又は、植物由来、真菌由来若しくは細菌由来の毒素を含む、請求項10に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項12】
抗細胞薬が、DNA傷害剤、特にマイナーグルーブバインダーデュオカルマイシン誘導体を含む、請求項9に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項13】
細胞毒が、A鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α-サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素又はシュードモナス外毒素を含む、請求項10に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項14】
細胞毒は脱グリコシル化リシンA鎖を含む、請求項10に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項15】
(a)請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体、もしくはその機能性断
片をコードする核酸配列、及び
(b) (a)に記載のいずれかの配列に相補的な核酸配列、
から成る群から選択される、単離された核酸分子。
【請求項16】
(a)配列番号14~配列番号17のいずれかに示される配列を含む核酸配列、及び
(b) (a)に記載のいずれかの配列に相補的な核酸配列、
から成る群から選択される、請求項15に記載の単離された核酸分子。
【請求項17】
核酸配列が作動可能に制御配列に連結している、請求項15に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項18】
請求項15又は16に記載の核酸分子又は請求項17に記載のベクターを含む宿主。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体又はその機能性断片の製造方法であって、請求項18に記載の宿主から当該抗体又はその機能性断片を得る工程を含む、方法。
【請求項20】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体又はその機能性断片、請求項15又は16に記載の核酸分子、請求項17に記載のベクター、請求項18に記載の宿主又は請求項19に記載の方法により生成された抗体又はその機能性断片を、任意選択により薬学的に許容可能な担体、希釈剤及び/又は賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項21】
抗腫瘍剤である、抗体又は抗体断片をさらに含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
正常内皮細胞表面よりも腫瘍血管細胞の細胞表面で多く発現されるヒトエンドシアリンを認識する、請求項1から14のいずれか一項に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項23】
ヒト腫瘍関連抗原LGALS3BPを認識する二重特異的抗体である、請求項1から14及び22のいずれか一項に記載の抗体又はその機能性断片。
【請求項24】
腫瘍性疾患又は癌の予防又は治療において使用するための、請求項20又は21に記載の医薬組成物。
【請求項25】
腫瘍性疾患又は癌が、神経芽腫、肉腫、滑膜肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫(MFH)、脂肪肉腫及び骨肉腫、高悪性度神経膠腫、脳腫瘍、癌腫、膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎癌、胃癌、子宮内膜癌、肺癌、卵巣癌、及び、腫瘍血管系、腫瘍間質若しくは腫瘍細胞においてエンドシアリンを発現する腫瘍からなる群から選択される、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
静脈内、筋肉内又は皮下に投与される、請求項24又は25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
さらなる治療用組成物又は放射線治療と組み合わせて投与するための、請求項24から26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍周皮細胞及び腫瘍間質の細胞に特徴的な細胞表面抗原であるエンドシアリンに特異的に結合する、マウス、キメラ(マウス/ヒト)及びヒト化抗体の開発に関する。当該抗体は、エンドシアリン発現細胞において内在化され、PDGFで刺激されたヒトの周皮細胞におけるMAPKの活性化を阻害する能力を有する。当該抗体は、既知のエンドシアリン相互作用物質であるLGALS3BPによって誘導される血管新生を阻害し、ヒト肉腫異種移植片の成長を抑制することができる。in vivo成長阻害効果は、当該抗体がLGALS3BPに対するヒト化モノクローナル抗体である1959と組み合わせて投与されると増強される。
【0002】
本発明はまた、切断可能なリンカーを用いて、デュオカルマイシン誘導体から構成されるペイロードと結合した、エンドシアリンに特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体に基づき、抗体-薬物コンジュゲート(Antibody-Drug Conjugate :ADC)に関しています。
【0003】
最後に、本発明は本発明の抗体をコードするヌクレオチド及び本発明の抗体を発現する細胞に関する。
【背景技術】
【0004】
本発明は、抗体、特に、腫瘍内皮細胞マーカーであるエンドシアリン(TEM-1及びCD248としても知られる)に結合するモノクローナル抗体(前記結合は抗体内在化を誘導し、PDGFで刺激されたヒトの周皮細胞におけるMAPK活性化を低下させる)、そのような抗体を含む組成物並びにそのような抗体を使用する方法に関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Harlow 及び Lane (編), Antibodies: A Laboratory Manual, CSHL press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988
【文献】Hudsonら, Nat. Met. 9: 129-134 (2003
【発明の概要】
【0006】
癌は、癌遺伝子及び癌抑制遺伝子の構造及び/又は発現に影響する、一連の体細胞の変化を特徴とする疾患である。直径1~2mmを超える腫瘍成長は、血管新生として知られるプロセスである新しい血管の形成、並びに、間質繊維細胞及び細胞外マトリックスタンパク質の形質転換に依存することが周知である1。in vivo及びin vitroでの研究により、腫瘍間質及び血管系は、正常対照と比較した場合に、タンパク質及び受容体の発現が異なることを特徴とすることが示されてきた。従って、癌及び/又は血管新生を治療するためのより優れた特異性を得るためのアプローチは、癌細胞若しくは新生内皮細胞又は前駆体において発現しており、正常細胞では発現していないか、より低いレベルで発現している特異的な抗原を標的とすることができる抗体の使用である。これらの標的は、抗原の生物学的活性を阻害することによって、又は、抗原保有細胞に到達した際に特異的にこれらの標的細胞を死滅させる免疫コンジュゲート若しくは放射性コンジュゲートを送達することによって、抗原保有細胞を殺すための抗体を用いて、利用することができる。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような標的の例は膜タンパク質、すなわちエンドシアリンである。エンドシアリン2-4は、幅広いヒトの癌種の腫瘍周皮細胞及び線維芽細胞によって発現されるが、多くの正常組織における各細胞型では検出されない、高度に制限された165kDaの細胞表面タンパク質である。エンドシアリンcDNAは757アミノ酸の、分子量80.9kDaと予測されるI型膜タンパク質をコードしている。バイオインフォマティクス評価により、エンドシアリンはC型レクチン様タンパク質に分類され、単一のリーダーペプチド、5つの球状細胞外ドメイン(C型レクチンドメイン、Sushi/ccp/scrパターンと類似した1つのドメイン、及び3つのEGFリピートを含む)、続いてムチン様領域、膜貫通セグメント、及び短い細胞質尾部から構成される。カーボンハイドレート分析により、エンドシアリンコアタンパク質が高度にシアル化されたO-結合型オリゴ糖を有し、O-シアルログリゴタンパク質エンドペプチターゼに感受性であり、シアロムチン様分子群に位置することが示されている。エンドシアリンは、細胞接着及び細胞移動を仲介する細胞外マトリックスのタンパク質(フィブロネクチン、コラーゲンI)5と相互作用することが示された。他の重要なエンドシアリンとの相互作用物質は、細胞接着及び細胞移動に関与し、血管新生促進因子としても作用する腫瘍分泌タンパク質LGALS3BPである6,7。
【0008】
腫瘍血管マーカーであるエンドシアリン/TEM1は、診断及び治療のための魅力的な分子として出現してきた。これは、多くのヒト腫瘍の間質において横断的に発現し、正常組織においては発現が低いか発現しておらず、血液循環からのアクセスが容易であるためである。小さなscFvコンストラクトもまた、エンドシアリンを標的とする、薬物送達ビヒクル8又は蛍光イメージング技術による診断用8について報告されている。
【0009】
エンドシアリンはヒトの癌において広汎に発現している10。その頻度、範囲、強さは癌種及びそれぞれの腫瘍のサブタイプによって変化する。ほとんどすべての肉腫においてエンドシアリンが検出されたことから、このタンパク質は肉腫の非常に頻繁な特徴であることが示唆された。肉腫において、エンドシアリンは、悪性肉腫細胞、間質細胞、及び血管系を含むいくつかの細胞コンパートメントにおいて検出された。エンドシアリン発現の頻度が最も高く、最も範囲が広く、最も強度が強く、潜在的に最も有望な治療可能性がある肉腫のサブタイプは、滑膜肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫(MFH)、脂肪肉腫及び骨肉腫であった。肉腫に加えて、エンドシアリン発現が顕著な癌種サブタイプとして現れた膀胱癌を有する癌種の血管系において、高いエンドシアリン発現率が観察された。癌種における、血管系及び間質へのエンドシアリン発現の制限は、抗血管新生又は血管破壊の作用機序を有することが期待される有望なエンドシアリン指向性治療薬に影響を及ぼす。対照的に、肉腫において、エンドシアリンを標的とする治療薬は、悪性肉腫細胞に対する直接的な抗癌効果と、抗血管新生効果及び/又は血管破壊効果による間接的な抗癌効果の両方を有する。さらに、癌細胞によってエンドシアリンを直接発現する腫瘍について、悪性組織におけるエンドシアリン発現の強度を測定する診断アッセイは、抗エンドシアリン療法から恩恵を得ることができる患者を選択する助けとなるだろう。従って、エンドシアリンは、肉腫などのある種のヒトの癌のバイオマーカーとして10-11、及び標的化治療剤としての両方の潜在的価値を有する。
【0010】
エンドシアリンが、腫瘍の進行と相関する発現レベルで15,16、腫瘍成長及び間質拡散に重要な役割を果たすことを示している12-14研究者もいるが、エンドシアリンが機能するメカニズムは実質的には知られていない。Maiaらは、エンドシアリンの細胞質ドメインが腫瘍成長のカギとなる制御因子であり、CD248WT/WTマウスと比較した場合に、このドメインを欠くマウスの腫瘍成長は顕著に減少していることを報告した17。さらに、彼らは、エンドシアリンの細胞質ドメインを発現する線維芽細胞に存在するエンドシアリンもまた、PDGF-BB誘導性の移動を低下させることを発見しました。
【0011】
Tomkowicz Bらは、エンドシアリンはPDGF(platelet derived growth factor:血小板由来増殖因子)受容体シグナル経路を介して、ヒト初代培養周皮細胞の増殖を仲介することを実証した18。高レベルのエンドシアリンを発現する正常周皮細胞は、増殖し、PDGF受容体及びMAPK Erk1/2の両方をリン酸化することによってPDGF刺激に応答し、前初期転写因子c-Fosの発現を誘導することができた。エンドシアリンをノックダウンした周皮細胞においては、PDGF誘導性増殖、Erk1/2リン酸化及びc-Fos発現が顕著に損なわれた。この結果は、エンドシアリンが、ヒト周皮細胞の増殖をPDGF経路と一緒に制御していることを示しており、このタンパク質を標的化することは、腫瘍の血管新生を軽減し、癌を抑制するための新規な様式を意味し得る。
【0012】
全体として、実験データ及び臨床データは、エンドシアリンが腫瘍形成及び血管新生において重要な役割を果たし、エンドシアリンを標的とする薬剤が、いくつかの癌の治療及び診断ツールとして有用であり得ることを示唆している19-23。
【0013】
科学の進歩及び臨床現場への新規な化学治療剤及び標的化治療薬の導入にも関わらず、癌は依然として治療が困難な疾患であり、世界中で死因の約13%を占めている24-26。
【0014】
その結果、より効果的で可能な限り毒性が低い新しい抗腫瘍治療法を開発することが緊急に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、特定のエンドシアリン阻害剤が腫瘍成長を阻害することができることを発見した。特に、マウスmMP-E-8.3、キメラcMP-E-8.3及びヒト化hMP-E-8.3モノクローナル抗体は、抗エンドシアリン阻害剤として使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、(A)標的タンパク質のタンパク配列、(B)マウスの免疫化のために使用したペプチド配列の違い、を示している。
【
図2】
図2は、mMP-E-8.3、cMP-E-8.3及び選択されたヒト化抗体hMP-E-8.3がヒト組み換えエンドシアリンを認識することを、ELISA(2A)及びフローサイトメーター(2B)によって示しており、mMP-E-8-3については、レーザー走査共焦点顕微鏡法によっても示している(2C)。
【
図3】
図3は、mMP-E-8.3がSjsa-1エンドシアリン陽性細胞中に内外化していることをフローサイトメーター(3A)及びレーザー走査共焦点顕微鏡法(3B)によって示している。
【
図4】
図4は、mMP-E-8.3が、PDGF刺激されたヒト周皮細胞においてMAPK Erk1/2リン酸化を阻害することを示している。
【
図5】
図5は、エンドシアリン状態(陽性/陰性)が、短いDFS(A)及びOS比率(B)を有する患者を同定することを示している。生存率(DFS及びOS)に対するエンドシアリン状態の予測的役割もまたLGALS3BP状態(高い/低い)という観点で調査された(C、D)。
【
図6】
図6は、cMP-E-8.3が、マトリゲル上で周皮細胞によるLGALS3BP誘導性管形成を阻害することを示している。
【
図7】
図7は、cMP-E-8.3が、ヌードマウスにおけるヒト骨肉腫Sjsa-1異種移植片の成長を抑えることを示している。また、
図7は、cMP-E-8.3の阻害効果が、腫瘍分泌タンパク質LGALS3BPに対するヒト化抗体である1959により強化されることも示している。
【
図8】
図8は、hMP-E-8.3ヒト化配列を示している。
【
図9】
図9は、hMP-E-8.3/ADC特徴評価を示している。
【
図10】
図10は、Sjsa-1エンドシアリン陽性細胞におけるhMP-E-8.3/ADC内在化を、フローサイトメーター(2A)及びレーザー走査共焦点顕微鏡法(2B)によって示している。
【
図11】
図11は、hMP-E-8.3 /ADCのin vitro抗腫瘍活性と、エンドシアリン表面発現との相関を示す。
【
図12】
図12は、エンドシアリン表面発現をCRISPR/Cas9技術によってノックダウンしたSjSa-1細胞において、hMP-E-8.3/ADCのin vitro抗腫瘍活性が消失/低減することを示している。
【
図13】
図13は、SjSA-1細胞における、hMP-E-8.3 /ADCのin vivo抗腫瘍活性を示している。
【
図14】
図14は、SjSA-1細胞において、hMP-E-8.3 /ADCのin vivo抗腫瘍活性がネイキッド抗体よりも優れていることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第一の態様は、配列番号1(SEQ ID NO:1)のヒトエンドシアリンのアミノ酸477~488の間のエピトープに対する抗体又はその機能性断片である。
【0018】
本発明はまた、本明細書に記載する抗体に基づくコンジュゲートを提供する。特に、hMP-E-8.3モノクローナル抗体に基づく抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は本発明のさらなる主題である。
【0019】
モノクローナル抗体hMP-E-8.3及びそのADCは、医薬、特にヒトの医薬、より特定すると、腫瘍性疾患及び癌の診断、予防及び/又は治療のための医薬における使用に適している。
【0020】
ADC及び癌治療
大規模な研究にもかかわらず、多くの抗癌剤は、重大な非特異的毒性を有する。細胞周期を標的とし、それにより急速に増殖する細胞を殺すことによって、それらは正常組織と腫瘍組織とを明確に区別せず、悪性細胞に対する限定的な選択性を獲得するにすぎない。選択性を欠くことために、腫瘍を根絶し得る濃度の薬物を使用することができないことがある。さらに、長期間の治療後、腫瘍は抗がん剤に対する薬剤耐性を発現し得る。従って、癌細胞に対する細胞傷害性薬物の標的化による腫瘍選択性の向上が必要である。
【0021】
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、この必要性を軽減するための理想的な候補である。ADCは殺細胞薬に結合したモノクローナル抗体(monoclonal antibody:mAb)である。腫瘍特異的抗原に対するその高い結合特異性のため、mAbは腫瘍細胞に致死的なペイロードを標的化するためのビヒクルとして使用することができる27-28 ADDIN EN.CITE ADDIN EN.CITE.DATA [, ]。ネイキッドmAbは、その癌生存シグナルを遮断する能力及び/又は標的癌細胞に対する免疫応答を誘導する能力のために、癌の治療にも使用することができる。しかしながら、ネイキッドmAbの治療効果はしばしば限定的である。これは、免疫グロブリンを細胞傷害性薬物又は放射性同位体と共に備え、高い特異的ADCを得ることよって回避することができる。
【0022】
本発明は、エンドシアリンに特異的に結合し、切断可能なリンカーによってデュオカルマイシン誘導体から成るペイロードと結合された(coupled to)ヒト化モノクローナル抗体hMP-E-8.3に基づく革新的なADCに関する。このペイロードは、DNA傷害剤、具体的にはマイナーグルーブバインダーに属する。
【0023】
ADCの標的としてのエンドシアリンの選択は、このグリコシル化受容体が肉腫及び神経芽腫などのいくつかの腫瘍で過剰発現しており、正常組織では過剰発現していないことを示す実験データ及び臨床データにより、妥当であることが示される。
【0024】
本発明のさらなる態様は、任意選択により発現制御配列に作動可能に連結する、抗体をコードする核酸分子である。
【0025】
本発明のさらなる態様は、宿主、特に前記核酸分子を含む組み換え細胞である。当該細胞は抗体の調製に使用されてよい。
【0026】
本発明のよりさらなる態様は、抗体、核酸分子又は前記宿主を任意選択により薬学的に許容可能な担体と共に含む医薬組成物である。
【0027】
本発明のよりさらなる態様は、腫瘍性疾患及び癌の予防又は治療のための方法である。
【0028】
用語「抗体」は、特に少なくとも1種の免疫グロブリン重鎖及び少なくとも1種の免疫グロブリン軽鎖を含む分子を意味する。各重鎖及び軽鎖は可変ドメイン及び定常ドメインを含んでよい。抗原結合部位は、重鎖及び軽鎖の可変ドメインから形成されてよい。可変領域(可変ドメインともいう)は相補性決定領域(complementarity determining region:CDR)、例えば、CDR1、CDR2、及びCDR3領域並びにCDRに隣接するフレームワーク領域(framework regions:FR)を含む。
【0029】
用語「相補性決定領域」は、当業者によって容易に理解され(例えば、Harlow 及び Lane (編), Antibodies: A Laboratory Manual, CSHL press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988を参照のこと)、主に抗原と接触して抗体の特異性が決定された抗体の可変ドメイン内のアミノ酸ストレッチ(stretches of amino acids)を意味する。この領域は超可変領域としても知られる。
【0030】
本発明は、抗体の断片、例えば、少なくとも1種の抗原結合部位を含む前述の抗体の一部も包含する。抗体断片の例は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、ダイアボディ(二重特異性抗体)、ScFv断片、単鎖抗体分子、小モジュール免疫薬(small modular immunopharmaceutical:SMIP)、アフィボディ、アビマー(avimer)、ナノボディ、ドメイン抗体及びヒトエンドシアリンに結合するという所望の能力を示す、他の断片を含む。特定の抗体断片の総説として、Hudsonら, Nat. Met. 9: 129-134 (2003)を参照されたい。
【0031】
「アビマー」は、例えば、in vitroエキソンシャッフリング及びファージディスプレイを用いて操作された、多量体結合タンパク質又はペプチドに関する。複数の結合ドメインが結合されており、単一エピトープの免疫グロブリンドメインと比較して高い親和性及び特異性をもたらす。
【0032】
「ナノボディ」又は単一ドメイン抗体は、単一の単量体可変抗体ドメインから成る抗体断片に関する。
【0033】
「アフィボディ」分子は、多数の標的タンパク質に特異的に結合するように操作された小さな高親和性タンパク質である。
【0034】
「ダイアボディ」は、二価又は二重特異的であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、Hudsonら, (2003)を参照されたい。単鎖抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの一部若しくは全て、又は、抗体の軽鎖可変ドメインの一部を含む抗体である。抗体断片は、無傷の抗体のタンパク質分解及び本明細書に記載の組み換え宿主(例えば大腸菌又はファージ)による産生を含むが、これに限定されない様々な技術によって作製することができる。
【0035】
特定の実施形態において、本発明で提供される抗体は、多重特異的抗体、例えば、二重特異的抗体である。多重特異的抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。
【0036】
特定の実施形態において、結合特異性の一方は、前述の通りヒトエンドシアリンに対するものであり、他方はLGALS3BPに対するものである。このような二重特異的抗体の使用は、単一抗体の治療の効果と比較した場合に腫瘍の血管新生をより大きく阻害するため、有用でなければならない。二重特異的抗体は、内皮細胞血管新生(LGALS3BPに対する抗体)及び/又は癌細胞並びに周皮細胞(エンドシアリンに対する抗体)に対して同時に作用するだろう。
【0037】
多重特異的抗体を作製するための技術は、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組み換え共発現及び「knob into hole」操作を含むがこれらに限定されない。多重特異的抗体はまた、抗体Fc-ヘテロダイマー分子を作製するために静電的ステアリング効果(electrostatic steering effects)で操作し;2つ以上の抗体又は断片を架橋し;ロイシンジッパーを用いて二重特異的抗体を作製し;「ダイアボディ」技術を用いて二重特異的抗体を作製し;及び、単鎖Fvを用いることにより、並びに前述の三重特異的抗体を調製することにより、作製される。「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能性抗原結合部位を有する操作された抗体もまた、本発明に含まれる。
【0038】
特定の実施形態において、本発明で提供されるアミノ酸配列バリアントは、ヒトエンドシアリンに結合するという所望の能力を示す限り、検討される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入することにより、又はペプチド合成により調製されてよい。このような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失及び/若しくは挿入並びに/又は置換を含む。欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせにより、最終的な構造が所望の特性、例えば抗原結合特性を有するように、最終構築物に到達させることができる。
【0039】
抗体の「結合」又は「結合している」とは、標的抗原(すなわち、エピトープ、特に配列番号1に記載のヒトエンドシアリンのアミノ酸477~488の間のエピトープを含有する断片を含む、ヒトエンドシアリン)との、少なくとも一時的な相互作用(interaction)又は結合(association)を意味する。
【0040】
特定の実施形態において、本発明で提供される抗体は、解離定数(Kd)≦1μM、≦100nM、≦10 nM、≦1 nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM (例えば 10-8 M以下又は例えば10-8 Mから10-13 M、例えば10-9 Mから10-13 M)を有する。
【0041】
一つの実施形態において、Kdは、目的の抗体のFab及びその抗原で行う、放射性標識抗原結合アッセイ(Radioimmunoassay:RIA)で測定される。
【0042】
他の実施形態において、Kdは固定化した抗原の表面プラズモン共鳴アッセイにより測定される。本発明の好ましい実施形態では、抗体は、本明細書に記載のヒトエンドシアリンのエピトープに対するヒトモノクローナル抗体である。
【0043】
抗体は、天然の及び/又は合成由来の、例えば、哺乳類由来の任意の抗体である。好ましくは、存在する場合は、定常ドメインはヒト定常ドメインである。可変ドメインは、好ましくは哺乳類の可変ドメイン、例えば、ヒト化又はヒト可変ドメインである。
【0044】
本発明による抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。特に、本発明の抗体は、好ましくは組み換えマウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくは完全ヒト抗体、多重特異的抗体、特に二重特的抗体、又はそれらの断片である。
【0045】
モノクローナル抗体は、任意の適切な方法、Kohler及びMilsteinによるもの27又は組み換えDNA法等によって生産されてよい。モノクローナル抗体はまた、Clackson28らによって記載された技術28を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離されてよい。
【0046】
本発明の好ましい態様において、本発明の抗体はヒト化抗体、特に完全ヒト抗体である。
【0047】
抗体のヒト化形態は、キメラ化又はCDRグラフト等の当該分野で公知の方法に従って生成されてよい。ヒト化抗体の生産のための別の方法は、当該分野で周知であり、EP-A1 0 239 400及びWO 90/07861等に記載されている。ヒト抗体はin vitro方法によっても誘導することができる。適切な例としては、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本発明における「キメラ抗体」は、異なる種(例えば、マウス及びヒト等)由来のポリペプチドを含む抗体に関する。キメラ抗体の生産は、例えば、WO 89/09622に記載されている。
【0049】
本発明の抗体は、好ましくはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD及びIgE型抗体であってよい。当然ながら、生成された抗体は、最初にそのようなアイソタイプを有する必要はないが、生成された抗体は任意のアイソタイプを有することができ、抗体はアイソタイプスイッチであり得る。
【0050】
本発明の抗体又は抗体断片は、任意選択により、治療目的で脱免疫化されてよい。
【0051】
本発明の抗体は、例えば、薬物標的化及びイメージング用途のために、さらに他の部分と結合され得ることは、当業者に明らかであろう。他の部分と結合した抗体は、「抗体コンジュゲート」とも呼ばれる。結合は、結合部位への抗体又は抗原の発現後に化学的に行われてよい、あるいは、結合生成物は、DNAレベルで本発明の抗体又は抗原へと操作されてよい。
【0052】
診断目的のために、本発明の抗体又は抗体断片は、標識、すなわち標識基(a labelling group)に結合されていてもよい。適切な標識には、放射性標識、蛍光標識、適切な色素基、酵素標識、色原体、化学発光基、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ等が含まれる。好ましくは、標識は抗体に共有結合している。
【0053】
標識された抗体又は抗体断片(「抗体コンジュゲート」ともいう)は、特に、in vivoでの免疫組織化学アッセイ又は分子イメージングにおいて使用されてよい。
【0054】
治療目的のために、本発明の抗体又は抗体断片は、エフェクター基、特に、細胞傷害剤又は放射性基剤等の治療エフェクター基とコンジュゲートされてよい。
【0055】
本発明の抗体は、任意選択により、標識基及び/又はエフェクター基、好ましくは治療基に結合されてよい。本発明の好ましい態様において、抗体は、イメージング時に検出可能な常磁性イオン、放射性イオン又は蛍光発生イオンに結合している。このタイプの抗体は特に診断用途に適する。
【0056】
本発明の他の態様においては、抗体は、好ましくは腫瘍細胞の成長又は細胞分裂を死滅又は抑制することができる抗有糸分裂剤又はDNA傷害剤の形態の、抗細胞薬に結合される。抗細胞薬は、例えば、化学療法剤、放射性同位体又は細胞毒を含んでよい。抗細胞薬の例は、代謝拮抗物質、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、抗生物質、アルキル化剤、又は、植物由来、真菌由来若しくは細菌由来の毒素を含む。本発明の抗体に結合することができるDNA傷害剤の例は、マイナーグルーブバインダーデュオカルマイシン誘導体である。本発明の抗体に結合するのに適した細胞毒は、例えば、A鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α-サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素又はシュードモナス外毒素を含んでよい。さらに、細胞毒は脱グリコシル化リシンA鎖を含んでいてもよい。
【0057】
標識基又はエフェクター基は、潜在的な立体障害を低減させるために、様々な長さのリンカー(スペーサーアーム)によって結合されてよい。エフェクター基はまた、抗体に直接的に結合してもよい。
【0058】
本願の発明者は、配列番号1に記載のヒトエンドシアリンのアミノ酸477~488番の間のエピトープに対する抗体、その機能性断片若しくはその機能的誘導体が、特に治療及び診断用途で有用であることを見出した。本発明の抗体により認識されるエピトープは、ヒトエンドシアリンの細胞外ドメイン中に位置する。
【0059】
驚くべきことに、本発明の抗体は、その生物学的活性という点で有利な特性を示すことが見いだされた。エンドシアリンに対する抗体の結合が、周皮細胞におけるPDGFシグナル伝達を阻害することが見いだされた。さらに、本発明の抗体は、エンドシアリン陽性細胞株に内在化する能力を有する。本発明の抗体は、LGALS3BPによって誘導されるin vitro管形成を阻害する能力を有する。さらには、本発明の抗体は、肉腫異種移植片において単独で又はLGALS3BPに対する抗体と組み合わせて、腫瘍の成長を阻害することができる。これらの特性は、特定の相補性決定領域によって特徴付けられる以下に記載される抗体で特に明確であること見出された。
【0060】
本発明の特定の実施形態において、抗体は、本明細書の以下に記載した、特異的重鎖相補鎖決定領域CDRH1、CDRH2及び/又はCDRH3を含んでよい。
【0061】
一つの実施形態において、ヒト抗体は、配列番号2 (SEQ ID NO:2)に示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する重鎖相補鎖決定領域1(CDRH1)を含む。
【0062】
好ましい実施形態において、ヒト抗体は、CDRH1は、 配列番号26 (SEQ ID NO:26)に示される配列又はそれから1又は2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する。
【0063】
さらなる実施形態において、抗体は配列番号3 (SEQ ID NO:3)に示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する重鎖相補鎖決定領域2(CDRH2)を含む。
【0064】
よりさらなる態様において、抗体は配列番号4 (SEQ ID NO:4)に示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する重鎖相補鎖決定領域3(CDRH3)を含む。
【0065】
本発明の抗体は、特異的軽鎖相補鎖決定領域CDRL1、CDRL2及び/又はCDRL3も含んでよい。
【0066】
従って、一つの実施形態において、抗体は配列番号5 (SEQ ID NO:5)に示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する軽鎖相補鎖決定領域1(CDRL1)を含む。
【0067】
さらなる実施形態において、抗体は配列番号6 (SEQ ID NO:6)に示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する軽鎖相補鎖決定領域2(CDRL2)を含む。
【0068】
さらなる実施形態において、抗体は配列番号7 (SEQ ID NO:7)に示すアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する軽鎖相補鎖決定領域3(CDRL3)を含む。
【0069】
本発明の抗体は、好ましくは、1つの重鎖内にCDRの特定の組合せ(すなわち、CDRH1、CDRH2及びCDRH3の組合せ)を含んでよい。
【0070】
従って、一つの好ましい実施形態において、抗体は、重鎖相補鎖決定領域CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、CDRH1は配列番号2で示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有し、CDRH2は配列番号3で示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有し、CDRH3は配列番号4で示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する。
【0071】
本発明によると、抗体は、1つの軽鎖内に特定のCDRの組合せ(すなわち、CDRL1、CDRL2及びCDRL3)を含むことがさらに好ましい。
【0072】
従って、一つの好ましい実施形態において、抗体は、軽鎖相補鎖決定領域CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、CDRL1は配列番号5で示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有し、CDRL2は配列番号6で示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有し、CDRL3は配列番号7で示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む。
【0073】
上記の通り、抗体の相補鎖決定領域(CDR)は、フレームワーク領域に隣接していてよい。3つのCDRを含有する抗体の重鎖又は軽鎖は、例えば4つのフレームワーク領域を含有する。
【0074】
さらに、本発明はまた、上記重鎖及び/又は軽鎖CDRで特徴づけられた特異的抗体と同じ、ヒトエンドシアリン上のエピトープに対する抗体も包含する。それらの抗体の機能性断片及び機能的誘導体もまた本発明の範囲内である。
【0075】
抗体によって認識されるエンドシアリン上のエピトープを決定するために、ヒトエンドシアリンの細胞外ドメインのアミノ酸配列に由来する短いペプチドが由来するタンパク質配列の、化学的に調製されたアレイを用いて、抗体エピトープを見つけ、同定することができる(Reinicke W., Methods Mol. Biol. 2004, 248: 443-63)。本発明の抗体によって結合されるエンドシアリン細胞外ドメインのエピトープをマッピングするさらなる方法は、Snaps/SELDI (Wangら、 Int. J. Cancer, 2001, June 15; 92 (6): 871-6)又はAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane (1988)に記載されたような、日常的な交差ブロッキングアッセイを含む。
【0076】
本発明の特に好ましい実施形態において、抗体は、
(i)以下を含む重鎖:
- 配列番号2に示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する重鎖相補鎖決定領域1(CDRH1)、
- 配列番号3に示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する重鎖相補鎖決定領域2(CDRH2)、及び
- 配列番号4に示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する重鎖相補鎖決定領域3(CDRH3)、
(ii)以下を含む軽鎖:
- 配列番号5に示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する軽鎖相補鎖決定領域1(CDRL1)、
- 配列番号6に示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する軽鎖相補鎖決定領域2(CDRL2)、及び
- 配列番号7に示されるアミノ酸配列又はそれから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する軽鎖相補鎖決定領域3(CDRL3)、
あるいはヒトエンドシアリン上で同じエピトープを認識するモノクローナル抗体を含む。
【0077】
好ましくは、CDR配列は、変化を有しない配列番号2~7に示される配列から選択される。
【0078】
特に、抗体は、配列番号2、3及び4に示される重鎖相補鎖決定領域CDRH1~3並びに、配列番号5、6及び7に示される軽鎖相補鎖決定領域CDRL1~3を含んでよい。
【0079】
本発明の好ましい実施形態において、抗体は、配列番号8(SEQ ID NO:8)に示される重鎖可変領域(VH)又は、それから1若しくは2アミノ酸が異なる配列を含む。さらに、本発明の抗体は、好ましくは、配列番号9(SEQ ID NO:9)に示される軽鎖可変領域(VL)又は、それから1若しくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む。さらに、本発明はまた、配列番号8に示される重鎖可変領域及び/又は配列番号9に示される軽鎖可変領域に対して、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、好ましくは、全長に渡って少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む抗体を包含する。特に好ましくは、抗体は、配列番号8に示される重鎖可変領域及び配列番号9に示される軽鎖可変領域を含む。
【0080】
本発明のとりわけ好ましい実施形態において、本発明の抗体は、配列番号10(SEQ ID NO:10)若しくは11(SEQ ID NO:11)に示されるアミノ酸配列又はその全長に渡って少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号12(SEQ ID NO:12)若しくは13(SEQ ID NO:13)で示されるアミノ酸配列又はその全長に渡って少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。重鎖及び軽鎖アミノ酸配列の配列同一性は、好ましくは、配列番号10、11、12及び13に示される配列に対してそれぞれ少なくとも95%である。最も好ましくは、抗体は、配列番号10に示される重鎖アミノ酸配列と、配列番号12に示される軽鎖アミノ酸配列とを含み、配列番号11に示される重鎖アミノ酸配列と、配列番号13に示される軽鎖アミノ酸配列とを含む。
【0081】
特に、好ましくは、ヒト化抗体は特にモノクローナルヒト化抗体である。
【0082】
本発明の特に好ましい実施形態は、配列番号18(SEQ ID NO:18)、配列番号19(SEQ ID NO:19)、配列番号20(SEQ ID NO:20)若しくは配列番号21(SEQ ID NO:21)に示されるアミノ酸、又はそれらに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、及び/又は
配列番号22(SEQ ID NO:22)、配列番号23(SEQ ID NO:23)、配列番号24(SEQ ID NO:24)若しくは配列番号25(SEQ ID NO:25)に示されるアミノ酸、又はそれらに対して少なくとも90%の配列同一性を有するヒトアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体に関する。
【0083】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、配列番号18に記載のアミノ酸又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び、配列番号22に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、ヒト化抗体に関する。
【0084】
他の好ましい実施形態において、本発明は、配列番号19に記載のアミノ酸又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び、配列番号23に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、ヒト化抗体に関する。
【0085】
また、本発明の好ましい実施形態は、配列番号20に記載のアミノ酸又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び、配列番号24に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、ヒト化抗体である。
【0086】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、配列番号21に記載のアミノ酸又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び、配列番号25に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、ヒト化抗体に関する。
【0087】
本発明の好ましい実施形態において、抗体は、正常内皮細胞表面よりも腫瘍血管細胞の細胞表面で多く発現される、ヒトエンドシアリンを認識する。好ましくは、抗体は、ヒト腫瘍関連抗原LGALS3BP (別名Mac-2 BP又は90K)を認識する二重特異的抗体としてさらに定義される。
【0088】
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体若しくはその断片又はストリンジェントな条件下でそれらにハイブリダイズすることができる核酸をコードする核酸分子に関する。上記の抗体、抗体断片又はその誘導体をコードする本発明の核酸分子は、例えば、DNA、cDNA、RNA又は合成により生産されたDNA若しくはRNA、あるいは、それらの核酸分子のいずれかを単独で又は組み合わせて含む組み換えにより生産されたキメラ核酸分子であってよい。核酸分子はまた、遺伝子全体若しくははその実質的な部分又はその断片及び誘導体に対応するゲノムDNAであってよい。ヌクレオチド配列は、天然のヌクレオチド配列に対応してもよく、又は、単一若しくは複数のヌクレオチド置換、欠失若しくは付加を含んでもよい。本発明の特に好ましい実施形態においては、核酸分子はcDNA分子である。
【0089】
本発明において、本発明の単離された核酸分子は、特に
(a)本明細書に記載の抗体、抗体断片又はその誘導体をコードする核酸配列、好ましくは配列番号14(SEQ ID NO:14)、15(SEQ ID NO:15)及び配列番号16(SEQ ID NO:16)、17(SEQ ID NO:17)又は配列番号18~25のいずれか一つに示される核酸配列、
(b) (a)に記載のいずれかの配列に相補的な核酸配列、及び、
(c) ストリンジェントな条件下で(a)又は(b)にハイブリダイズすることができる核酸配列
から成る群から選択される。
【0090】
用語「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、2つの核酸分子断片が、例えばSambrookらによる「Expression of cloned genes in E. coli」(Molecular Cloning: A laboratory manual (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USA)に記載の標準化されたハイブリダイゼーション条件下で互いにハイブリダイズすることを意味する。例えばそのような条件では、約45°Cで6.0xSSC中でハイブリダイゼーションし、続いて50°Cで2.0xSSC中で、好ましくは65°Cで2.0xSSC中で又は50°Cで0.2xSSC中で、好ましくは65°Cで0.2xSSC中で洗浄工程を行う。
【0091】
他の態様において、本発明は、本発明の核酸分子を含むベクターに関する。前記ベクターは、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス又はレトロウイルスベクターであってよい。レトロウイルスベクターは、複製可能であっても複製能を欠損していてもよい。好ましくは、本発明のベクターは、核酸分子が、転写及び任意選択により原核細胞宿主及び/又は真核細胞宿主における発現を可能にする一つ又は複数の制御配列に操作可能に結合している発現ベクターである。
【0092】
本発明はさらに、本発明のベクターを含む宿主に関する。前記宿主は原核細胞若しくは真核細胞又は非ヒトトランスジェニック動物であってよい。宿主中に存在する本発明のポリヌクレオチド又はベクターは、宿主のゲノム中に統合されていてもよく、又は染色体外で維持されていてよい。
【0093】
宿主は任意の原核細胞又は真核細胞、例えば、細菌、昆虫、真菌、植物、動物、哺乳類又は好ましくはヒト細胞であってよい。好ましい真菌細胞は、例えば、サッカロマイセス属の細胞、とりわけサッカロマイセス.セレビシエ種の細胞である。
【0094】
本発明はさらに、前記抗体の合成及び培地からの前記抗体の回収が可能な条件下において、本発明の宿主を培養する工程を含む、抗体の調製方法に関する。
【0095】
本発明のさらなる態様は、本発明の抗体若しくはその断片、本発明の核酸分子、ベクター、宿主又は本発明の方法によって得られる抗体を含む医薬組成物に関する。本明細書で使用される用語「組成物」は、少なくとも1種の本発明の化合物を含む。好ましくは、このような組成物は、治療用/医薬又は診断用組成物である。
【0096】
本発明の診断用組成物は、癌の発症又は疾患状態を評価するために使用されてよい。
【0097】
組成物は、好ましくは薬学的許容可能な担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含む。
【0098】
薬学的に許容可能な担体、賦形剤及び/又は希釈剤の適切な例は、当業者に周知であり、リン酸緩衝食塩水、水、油/水エマルション等のエマルション、様々なタイプの湿潤剤、滅菌溶液などが挙げられる。このような担体、賦形剤及び/又は希釈剤を含む組成物は、周知の従来技術により製剤化され得る。
【0099】
適切な組成物の投与は様々な経路、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、皮内、鼻腔内又は気管支内投与、によって行ってよい。静脈内、筋肉内及び/又は皮下投与が好ましい。
【0100】
これらの医薬組成物は、対象に適切な用量で投与することができる。投与レジメンは主治医及び臨床的要因によって決定され得る。
【0101】
本発明の組成物は、局所的又は全身的に投与されてよい。非経口投与のための調製物は、無菌水性若しくは非水性溶液、懸濁液及びエマルションを含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、及びオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルである。水性担体は、水、アルコール/水性溶液、エマルション又は懸濁液を含み、生理食塩水及び緩衝媒体を含む。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガー又は固定油を含む。静脈内ビヒクルは、流体及び栄養補充剤、電解質補充剤(リンガーデキストロースに基づくものなど)等を含む。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガス等の保存料及び他の添加剤もまた存在し得る。さらには、本発明の医薬組成物は、医薬組成物が意図する用途に応じてさらなる剤を含んでよい。
【0102】
特に好ましい実施形態において、組成物はさらなる抗体又は抗体断片等のさらなる活性剤を含む。
【0103】
好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも1種のさらなる抗腫瘍剤と組み合わせて使用される。前記組合せは、例えば、異常な細胞増殖の阻害において効果的である。多くの抗腫瘍剤が現在当業者に公知である。一般に、当該用語は、過剰増殖障害、特に癌を予防、緩和及び/又は治療することができる全ての剤を含む。
【0104】
好ましくは、抗腫瘍剤は、抗体、小分子、代謝拮抗物質、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管標的剤、キナーゼ阻害剤、タンパク質合成阻害剤、免疫治療剤、ホルモン又はそれらの類似体から成る群から選択される。
【0105】
本発明で提供される抗体と組み合わせて使用することができる抗腫瘍剤の具体的な例は、例えば、パクリタキセル、アントラサイクリン、フルオロピリミジン、ビンカアルカロイド、白金塩、特にカペシタビン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、エソルビシン、ブレオマイシン、マフォスファミド、イフォスファミド、サイトシンアラビノシド、ビスクロロエチルニトロソウレア、ビスルファン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、プレドニゾン、ヒドロキシプロゲステロン、テストステロン、タモキシフェン、ダカルバジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ペンタメチルメラミン、ミトキサントロン、アムサクリン、クロラムブシル、メチルシクロヘキシルニトロソウレア、メルファラン、シクロホスファミド、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン(cytarabine:A)、5-アザシチジン、ヒドロキシウレア、デオキシコフォルマイシン、4-ヒドロキシペルオキシシクロホスファミド、5-フルオロウラシル(5 fluorouracil:5-FU)、5-フルオロデオキシウリジン(5-fluorodeoxyuridine:5-FUdR)、メトトレキセート(methotrexate:MTX)、コルヒチン、タキソール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、トリメトレキセート、テニポシド、シスプラチン及びジエチルスチルベストロール(diethylstilbestro:DES)等を含む。
【0106】
本発明の特に好ましい実施形態においては、さらなる活性剤は、LGALS3BPの阻害剤、例えば抗LGALS3BP抗体又はその機能性断片である。この組み合わせは、特に腫瘍血管形成の阻害に有効である。
【0107】
本発明の組成物は、上記に記載の活性剤を含むさらなる治療用組成物並びに/又はX線照射及び/若しくは放射線治療を組み合わせて投与されてよい。
【0108】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、腫瘍性疾患又は癌の治療及び/又は予防における使用のためのものである。組成物は、腫瘍性疾患又は癌を治療及び/又は予防するための医薬の製造のためにも使用されてよい。
【0109】
腫瘍性疾患は、好ましくは、腫瘍間質及び血管系又は癌細胞自体におけるエンドシアリン発現に関連し、それに伴う障害、とりわけ、肉腫(滑膜肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫(MFH)、脂肪肉腫及び骨肉腫)、神経芽腫、高悪性度神経膠腫、脳腫瘍、癌腫(膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎癌、胃癌、子宮内膜癌、肺癌、卵巣癌)並びに、腫瘍血管系、間質及び/又は腫瘍細胞においてエンドシアリンを発現する全ての腫瘍から選択される。
【0110】
本発明はさらに、本発明の抗体を哺乳類に投与する疾患の治療方法に関しており、前記疾患は、直接的又は間接的に腫瘍間質又は血管系及び/若しくは腫瘍細胞におけるエンドシアリンの発現に関連している。
【実施例】
【0111】
実施例1: モノクローナル抗体mMP-E-8.3の生産
4週齢のBalb/cマウスを、完全フロインドアジュバント(Complete Freund's Adjuvan:CFA)又は不完全フロインドアジュバント(Incomplete Freund's Adjuvant:IFA)中のエマルションとして腹腔内注射により免疫化した。7日後、さらなる免疫原をマウスに腹腔内注射した。さらに7日後、マウスを免疫原の静脈内投与で追加免疫し、その3日後に脾臓を細胞融合のために取り出した。免疫脾細胞とマウス非分泌性骨髄腫細胞株NS-1との融合によって、体細胞ハイブリッドを調製した。ハイブリドーマ上清を、それぞれのペプチドに対するELISAアッセイで選択した。すべての陽性ハイブリドーマ細胞コロニーを、限界希釈によって2回クローン化し、さらに特性決定した。
【0112】
図1Aにおいては、標的タンパク質の配列を示す;
図1Bにおいては、免疫化に使用したペプチドのリストを示す(mMP-E-8.3のペプチド配列をハイライトした)。全ての陽性ハイブリドーマ上清について、ELISAアッセイで抗原親和性を確認し、抗原を高い親和性で認識する抗体としてmMP-E-8.3を選択した。
【0113】
実施例2: mMP-E-8.3、cMP-E-8.3及びhMP-E-8.3は、ELISA法でエンドシアリンを認識することができる; mMP-E-8.3は、フローサイトメーター及び共焦点顕微鏡法による。
材料と方法:(
図2)(A)。96穴プレート(NUNC Maxisorp modules)をヒト組み換えエンドシアリン(1μg/ml)で、4°C、一晩プレコートした。1%BSA/PBS+0.1%Tween-20で4°C、1時間ブロッキングした後、mMP-E-8.3、cMP-E-8.3、hMP-E-8.3及びエンドシアリンに対する市販の抗体を指示濃度で添加し、室温で2時間インキュベートした。PBS + 0.1% Tween-20で数回洗浄した後、ヤギ抗マウス又は抗ヒトIgG-HRP溶液を各ウェルに添加し、37°Cで1時間インキュベートした。洗浄後、安定化した色原体を各ウェルに添加し、少なくとも10分間暗所に置き、その後1N H
2SO
4を添加して反応を停止させ、450nmでの吸光度をELISAリーダーで読み取った。(B) Sjsa-1ヒト骨肉腫細胞株を、1μg/mlのmMP-E-8.3抗体、又は、100 ng/ml (青線)及び1μg/ml (緑線)のcMP-E-8.3及びhMP-E-8.3、又は1μg/mlのエンドシアリンに対する市販の抗体で、氷上で30分間染め、ヤギ抗マウス/抗ヒトAlexa-488コンジュゲート抗体と氷上で1時間インキュベートした後、細胞をフローサイトメーター(FACS)で分析した。(C) Sjsa-1ヒト骨肉腫細胞をガラスカバースリップ上で24時間培養した。その後細胞を4%パラホルムアルデヒドで、15分間室温で固定し、0.25%Triton X-100で5分間浸透させ、0.1% BSAで、室温で1時間ブロッキングした。カバースリップをmMP-E-8.3又は市販の抗体と共に、室温で2時間インキュベートした後、ヤギ抗マウス2次抗体Alexa-488コンジュゲートでインキュベートした。DRAQ5を用いて核を可視化した。画像は、488及び633nmのレーザーを使用するZeiss LSM 510メタ共焦点顕微鏡で取得した。黄色矢印は、mMP-E-8.3が細胞原形質膜上に存在するエンドシアリンを認識することを示す。
【0114】
結果:mMP-E-8.3、cMP-E-8.3及び選択されたヒト化バリアントhMP-E-8.3は、エンドシアリンを認識する(ELISA及びフローサイトメーターによる); マウス抗体は、Sjsa-1細胞により発現されたヒトエンドシアリンを認識することができた(レーザー走査共焦点顕微鏡法による)(
図2C)。
【0115】
実施例3: Sisa-1ヒト骨肉腫細胞株におけるmMP-E-8.3内在化
材料と方法:(
図3)。Sjsa-1細胞を12ウェルプレートに播種し、10%FBS RPMI-1640中で24時間培養した。その後、細胞を10μg/mlのmMP-E-8.3と共に氷上で30分間インキュベートし、37℃に戻して6時間インキュベートした。(A)6時間後、細胞をヤギ抗マウスAlexa488コンジュゲート二次抗体で染め、FACSで分析した。(B)6時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.2%Triton X-100/PBSで浸透させた後、蛍光標識したヤギ抗マウス/抗ヒト抗体で染色した(緑染色)。細胞核を青でカウンターステインした。黄色矢印及び白矢印は、それぞれ、細胞膜及び細胞質における抗体の局在化を示す。
【0116】
結果:(A) Sjsa-1細胞が、30分間の氷上でのmMP-E-8.3インキュベーション後、ヤギ抗マウス膜陽性を示しており、これは、抗体が原形質膜上に完全に局在することを示す。37°Cで6時間後、ヤギ抗マウスシグナルが60%減少し、これはmMP-E-8.3が細胞によって内在化されたことを示している。(B)Sjsa-1細胞は、30分間の氷上でのmMP-E-8.3インキュベーション後、ヤギ抗マウス膜陽性(黄色矢印)を示しており、これは、抗体が完全に原形質細胞膜に局在していることを示す。37°Cで6時間後、ヤギ抗マウスシグナルは細胞内、特に核周辺領域に存在する(白色矢印)。
【0117】
実施例4:mMP-E-8.3はヒト周皮細胞においてPDGFシグナル伝達を阻害した
材料と方法:(
図4)。12ウェルプレートにT/G HA-VSMC、ヒト血管平滑筋細胞株を播種し、24時間後、血清及び成長因子を欠く周皮細胞培養培地中で、2時間血清飢餓状態にした。細胞を10μg/mlのmMP-E-8.3抗体又は陰性対照抗体と共に2時間インキュベートした後、PDGF-BB (100 ng/mL)で15分間刺激した。細胞をRIPA緩衝液で直接的に溶解し、30μgの全溶解物をウェスタンブロット分析に供し、エンドシアリン、リン酸化形態のAkt及びMAPKを検出した。アクチンをローディングコントロールとして使用した。
【0118】
結果:mMP-E-8.3で前処置した細胞は、PDGF処理により誘導されるMAPKリン酸化の阻害を示した(
図4)。
【0119】
実施例5:キメラ化及びヒト化バージョンのmMP-E-8.3抗体の生産
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野で周知である。好ましくは、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された一つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「インポート」残基としばしば称され、典型的には「インポート」可変ドメインから取られている。ヒト化は、本質的には、以下のWinter及び共同研究者らの方法に従って、げっ歯類のCDR又はCDR配列で、ヒト抗体の対応する配列を置換することにより実施される。従って、このような「ヒト化」抗体は、実質的に無傷のヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応する配列で置換されているキメラ抗体である(U.S. Pat No.4816567)。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基及び場合によりいくつかのフレームワーク領域(FR)残基がげっ歯類抗体における類似部位に由来する残基で置換されている。
【0120】
mMP-E-8.3抗体のキメラ化バージョン(cMP-E-8.3と称する)を生産するために、mMP-E-8.3を生産するハイブリドーマ細胞を増殖させ、総RNAの抽出及びRT-PCRを実施し、従来の方法(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)を用いて抗体の可変領域をクローン化及び配列決定した。
【0121】
抗体キメラ化のために、マウス定常領域をヒト定常領域で置き換える。これは、ヒトkm3カッパLCを有するG1m17 IgG1アロタイプである。
【0122】
抗体のヒト化のために、マウス由来の相補性決定領域(Complementarity Determining Region:CDR)をヒト抗体フレームワークに移した。
【0123】
4つのヒト化重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を設計して組み合わせ、以下の抗体バリアントを得た。
8.3-LIBR-H1L1 (No. E02999)
8.3-LIBR-H1L2 (No. E03000)
8.3-LIBR-H1L3 (No. E03001)
8.3-LIBR-H1L4 (No. E03002)
8.3-LIBR-H2L1 (No. E03003)
8.3-LIBR-H2L2 (No. E03004)
8.3-LIBR-H2L3 (No. E03005)
8.3-LIBR-H2L4 (No. E03006)
8.3-LIBR-H3L1 (No. E03007)
8.3-LIBR-H3L2 (No. E03008)
8.3-LIBR-H3L3 (No. E03009)
8.3-LIBR-H3L4 (No. E03010)
8.3-LIBR-H4L1 (No. E03011)
8.3-LIBR-H4L2 (No. E03012)
8.3-LIBR-H4L3 (No. E03013)
8.3-LIBR-H4L4 (No. E03014)
【0124】
8.3-LIBR-H1L2 (No. E03000)が、親和性、抗体タイター及び安定性に基づき、最も優れた候補として選択された。
【0125】
実施例6. ヒト結腸直腸癌におけるEndosialinの予後値
材料と方法: 175人の患者からの、リンパ節転移又は遠隔転移がないと診断されたヒト原発性結腸直腸癌において、組織マイクロアレイ(Tissue Micro Array:TMA)上の免疫組織化学法によってエンドシアリン発現を分析した。結果は、患者の転帰と相関していた。142人(81.1%)の患者は結腸癌を有し、33人(18.9%)の患者は直腸癌を有していた。112人(64.0%)の患者が男性で、63人(36.0%)の患者が女性であった。診断時における患者の年齢の中央値は70歳であった(36~90歳の範囲)。経過観察期間の中央値は54.0か月(3~238か月の範囲)であった。免疫化学染色のために5μmのTMA切片を調製した。抗エンドシアリン(TEM1)ウサギポリクローナル抗体(Novus Biological)及び抗LGALS3BPマウスモノクローナル抗体1A422を使用して染色した。抗原回収は、クエン酸緩衝液(pH 6.0)中750W(10分)でのマイクロ波処理によって行った。抗ウサギ又は抗マウスEnVision kit (Dako)をシグナル増幅に用いた。非特異的な染色を除くために、非免疫血清を含めた。エンドシアリン発現と患者の臨床病理学的特徴との関係をカイ二乗検定によって評価した。生存分析は、Kaplan-Meier法によって行い、群を対数ランク検定で比較した。統計的手順は、SPSSバージョン15.0(SPSS Inc.)を用いて行った。 P <0.05は統計的に有意であると考えた。
【0126】
結果:175例中37(21.1%)の症例で、腫瘍細胞の細胞質でエンドシアリンが発現しており、37例の陽性例のうち11例(29.7%)では間質細胞における特異的陽性染色も共存していた。エンドシアリン陽性腫瘍細胞の割合は、4~100%の範囲であり、平均±SEは45.4±5.3であった。全ての症例で、エンドシアリン陽性であると考えられた。統計分析により、エンドシアリンタンパク質発現と評価された臨床病理学的パラメーターとの間には関連がないことが明らかになった。疾患の再発は、エンドシアリン陽性の患者の37.8%(14/37)で観察され、エンドシアリン陰性の患者の21.0%(29/138)で観察された。エンドシアリン陽性腫瘍を有する患者の29.7%及びエンドシアリン陰性の腫瘍を有する13.9%の患者がぞれぞれ死亡した。Kaplan-Meier分析では、エンドシアリンの発現は、より低いOS(P = 0.037)(
図5A)及びDFS(P = 0.038)と有意に関連していた(
図5B)。
【0127】
LGALS3BPはエンドシアリン結合パートナーであり6、発明者らは、LGALS3BPに対するヒト化モノクローナル抗体を開発し (腫瘍の治療及びその転移を予防及び治療するための抗90kモノクローナル抗体の使用、WO 2010097825 A1)、生存率(DFS及びOS)に対するエンドシアリン発現の予後の役割もまた、LGALS3BP状態という観点から試験した。LGALS3BPは、CRC組織におけるLGALS3BP発現の低下が予後不良のマーカーとして見出された結腸癌を除いて、多くのヒト癌において負の予後因子であることが見出された。
【0128】
エンドシアリン陽性により、LGALS3BP低発現症例における、患者のOS及びDFS率(
図5C及びD)が低いことが同定された(それぞれP=0.015及びP=0.040)。対照的に、LGALS3BP高発現により、エンドシアリン陰性症例において、患者の再発及び死亡の可能性が有意に低いことが同定された。
【0129】
実施例7:マトリゲル上での管形成に対するcMP-E-8.3の効果
材料と方法:(
図6)。T/G HA-VSMC、ヒト血管平滑筋細胞を、5x10
4細胞/ウェルの密度でF12K無血清培地に播種した。20又は40μg/mlの濃度のcMP-E-8.3の存在下又は非存在下で、10μg/ml の組み換えLGALS3BPを含むF12K無血清培地で細胞を維持した。PDGF (100 ng/ml)を陽性対照として使用した。(A)Cultrex(マトリゲル)コートしたチャンバースライド上の、T/G HA-VSMCによる、毛細血管様管形成の代表的な位相差写真。(B) ヒストグラムは、4つの異なる視野における分岐点の数をカウントすることによって管形成の定量的決定を示す。データは、3回の独立した実験の平均±SEMとして表される。 * p <0.05。
【0130】
結果:キメラ抗体cMP-E-8.3は、マトリゲル上でLGALS3BPによって用量依存的に誘導される周皮細胞管形成を阻害することができる。
【0131】
実施例8:骨肉腫癌移植片に対するcMP-E-8.3の効果
材料と方法:(
図7)。ヒト骨肉腫癌移植片を、5週齢のCD1雌ヌードマウスに5x10
6個のSjsa-1細胞を皮下注射することにより確立した。細胞注射の3日後、マウスを無作為に10匹ずつ4つの群に分けた。一つの群に対して、PBS緩衝液中、15mg/kgの1959(LGALS3BPに対するヒト化抗体)、若しくは15 mg/kgのcMP-E-8.3抗体又は両方の抗体の各15mg/kgの組合せを週2回皮下注射した。
【0132】
結果: cMP-E-8.3処置したマウスでは、対照マウスと比較して最大40%の腫瘍体積の低減を示すが、1959及びcMP-E-8.3処置を受けた群は、最大70%の腫瘍体積の低減を示す。*p≦0.05; **p≦0.01。
【0133】
実施例9:hMP-E-8.3/ADCの生産及び特性化
ADC調製: hMP-E-8.3/ADCを、hMP-E-8.3を部分的に還元し、酵素的に切断可能なリンカー(バリン-シトルリン)を有するデュオカルマイシンの強力なマイナーグルーブアルキル化誘導体である薬物を利用可能な制限された鎖間システイン残基にコンジュゲートすることにより生成した。生産されたhMP-E-8.3/ADCを、還元及び非還元条件下でSDS-PAGEによって特性決定した。還元(R)及び非還元(NR)の3μgのネイキッドmAb又はADCの両方をロードした(
図9A)。サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography:SEC)を実施し、凝集状態を決定した。抗体及び薬物をそれぞれモニターするための二つの異なる波長220nm(青)及び320nm(赤)でシグナルを検出した(
図9B)。疎水性相互作用クロマトグラフィー(Hydrophobic interaction chromatography:HIC)を実施し、自然条件でロードされたアイソフォームの異なる存在を評価した。薬物抗体比(DAR)を決定するために、還元条件下でのPLRP LC/MSを実施した。
【0134】
結果:抗体の分解又は凝集は、試験したサンプルでは検出されなかった(
図9A及び9B)。算出されたDARは3.6であった(
図9C)。
【0135】
実施例10:hMP-E-8.3/ADCはSjSA-1細胞により内在化する
材料と方法: (
図10)。Sjsa-1細胞を12ウェルプレートに播種し、10% FBS RPMI-1640中で24時間培養した。細胞を、10μg/mlのhMP-E-8.3/ADCで、氷上で30分間インキュベートした後、37°Cに6時間戻した。(A)2時間後、ヤギ抗ヒトAlexa88コンジュゲート二次抗体で細胞を染色し、FACSで分析した。(B)2時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.2%Triton X-100/PBSで浸透させた後、蛍光標識したヤギ抗ヒト抗体で染色した(緑染色)。細胞質をAlexa Fluor phalloidinを用いて、赤でカウンターステインした。白色矢印は、37°Cに戻した細胞の細胞質における抗体の局在化を示す。
【0136】
結果:(A)Sjsa-1細胞は、30分間の氷上でのhMP-E-8.3インキュベーション後、ヤギ抗ヒト膜陽性を示し、抗体が原形質膜上に完全に局在することを示す。37°Cで2時間後、ヤギ抗ヒトシグナルが80%減少し、これはhMP-E-8.3が細胞によって内在化されたことを示している。(B)Sjsa-1細胞は、30分間の氷上でのhMP-E-8.3インキュベーション後、ヤギ抗ヒト膜陽性を示し、これは、抗体が完全に原形質細胞膜に局在していることを示す。37°Cで2時間後、ヤギ抗ヒトシグナルは細胞内、特に核周辺領域に存在する(白色矢印)。
【0137】
実施例11:hMP-E-8.3/ADC in vitro抗腫瘍活性はエンドシアリンの表面発現レベルと相関する
材料と方法:ヒト骨肉腫癌(SjSa-1)、ユーイング肉腫(A673)、神経芽腫(SKNAS)及びメラノーマ(A375)細胞を24ウェルに播種(1x103細胞/ウェル)し、漸増量のhMP-E-8.3/ADC (0.03~1.6μg/ml)の存在下又は非存在下、10%血清を補充した培地中で培養した。処理開始から144時間後、細胞を回収し、MTT染色を行った。結果は、対照(PBS処理した細胞)に対する割合(%)で示す。
【0138】
結果: hMP-E-8.3/ADCは、細胞の成長を強力かつ用量依存的に阻害する能力を示す。さらに、このhMP-E-8.3/ADCのin vitro抗腫瘍活性は、細胞表面におけるエンドシアリン受容体発現量と相関する(
図11)。
【0139】
実施例12: hMP-E-8.3/DC54活性は、エンドシアリンがノックダウンされたSjSa-1細胞においてほぼ消失する
材料と方法: SJSA-1細胞におけるTEM-1発現を、Zhang及び共同研究者らにより開発されたプロトコルに従ったCRISPR-Cas9システムのゲノム編集33により、除去した。一過性トランスフェクション後、エンドシアリンを発現していない細胞をFACSで選別し、単細胞クローンを単離して拡大した。FACS及びWBを使用して、クローンのエンドシアリン発現を分析した。クローン#3では、エンドシアリン発現が完全にノックダウンされた。両アレルの遺伝子破壊を、ゲノムDNAシーケンシングにより確認した。
【0140】
結果: SjSa-1細胞表面のエンドシアリン発現の消失により、hMP-E-8.3/ADC殺傷活性が劇的に低下した、これは、ADCの有効性が標的依存的であることを示す(
図12)。
【0141】
実施例13: hMP-E-8.3/ADCは、ヒト骨肉腫癌(SjSa-1)異種移植片において強力で持続性のある抗腫瘍活性を示す
材料と方法: ヒト骨肉腫癌異種移植片を、5週齢のCD1雌ヌードマウスに2.5x106個のSjsa-1細胞を皮下注射することにより確立した。腫瘍が触診可能になると(腫瘍体積範囲100mm3)、マウスを無作為に6匹ずつ2つの群に分けた。1つの群には、10mg/kgのPBSバッファー中hMP-E-8.3/ADCを週に1回二週間静脈注射したが、対照群にはPBSのみを注射した。腫瘍体積をキャリパーで毎週モニターした。Kaplan Meier生存曲線について、この試験のカットオフ値は、体積1500mm3であった。
【0142】
結果: hMP-E-8.3 /ADC処置したマウスは、有意で持続的な腫瘍の成長の低下を示した。さらに、処置開始から最大100日までの処置マウスにおいて完全寛解が2例観察された。Kaplan Mayer生存曲線は、hMP-E-8.3/ADC処置マウスにおける生存率の有意な増加を示す(Log-rank(Mantel-Cox)試験p=0.02)(
図12)。注目すべきことに、本試験で使用される用量のhMP-E-8.3 /ADCは、体重減少という点での毒性が観察されなかったため、動物に十分に耐容された。
【0143】
実施例14:hMP-E-8.3/ADCは、ヒト骨肉腫癌(SjSa-1)異種移植片において、ネイキッド抗体よりも優れた抗腫瘍活性を示す
材料と方法: ヒト骨肉腫癌異種移植片を、5週齢のCD1雌ヌードマウスに2.5x106個のSjsa-1細胞を皮下注射することにより確立した。腫瘍が触診可能になると(腫瘍体積範囲100mm3)、マウスを無作為に6匹ずつ3つの群に分けた。1つの群には、10 mg/kgのPBSバッファー中のhMP-E-8.3/ADC又はPBSバッファー中のネイキッドhMP-E-8.3抗体を週に2回二週間静脈注射したが、対照群にはPBSのみを注射した。腫瘍体積をキャリパーで毎週モニターした。Kaplan Meier生存曲線について、この試験のカットオフ値は、体積1500mm3であった。
【0144】
結果:ネイキッド抗体はわずかに腫瘍成長を低下させたが、腫瘍サイズの低減は統計的に有意ではなかった。一方、ADC処置したマウスでは有意で持続的な腫瘍成長阻害が観察され、このことは、当該細胞傷害性化合物がhMP-8.3 mAbに非常に優れた抗腫瘍活性を付与することを実証している(
図13)。Kaplan Mayer生存曲線は、hMP-E-8.3/ADC処置マウスにおける生存率の有意な増加を示す(Log-rank(Mantel-Cox)試験p=0.02)。注目すべきことに、本試験で使用される用量のhMP-E-8.3/ADCは、体重減少という点での毒性が観察されなかったため、動物に十分に耐容された。
[参考文献]
【配列表】