(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】流動性材料吐出装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
B05C5/00 101
(21)【出願番号】P 2019025838
(22)【出願日】2019-02-15
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 高
(72)【発明者】
【氏名】筒井 正信
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 祐之
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-151393(JP,A)
【文献】特開平7-165275(JP,A)
【文献】特開2001-334193(JP,A)
【文献】特開昭63-221867(JP,A)
【文献】特開2019-10603(JP,A)
【文献】特開2017-6886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05D 1/00-7/26
B65D 83/00-83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジ内部を軸方向に移動するピストンと、
前記ピストンの先端に設けられ、流動性材料が収容された前記カートリッジに設けられたプランジャの内周面と接触可能であり、外周面が円筒形状を有する当接部と、
を備え、
前記当接部は、前記ピストンにおいて径方向に移動可能に設けられている流動性材料吐出装置。
【請求項2】
前記ピストンの先端には軸方向に突出した軸部が設けられ、
前記当接部は、円環状部材であって、前記当接部の内周面に対して前記軸部が挿入されている請求項1に記載の流動性材料吐出装置。
【請求項3】
前記当接部の外径は、前記プランジャの内径よりも大きく、前記カートリッジの内径よりも小さい請求項1又は2に記載の流動性材料吐出装置。
【請求項4】
前記当接部は、金属製又は合成樹脂製である請求項1から3のいずれか1項に記載の流動性材料吐出装置。
【請求項5】
前記ピストンの先端には貫通孔が形成され、前記貫通孔を介して気体を吸引可能である請求項1から4のいずれか1項に記載の流動性材料吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性材料吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主翼、胴体等の航空機部品を組み立てる際、複数の部材間の合わせ面や、一の部材の端面と他の部材の板面の交差部分に形成される隅部に、流動性材料であるシーラントを塗布する場合がある。航空機部品は、塗布されたシーラントによって気密性が確保される。
【0003】
シーラントの塗布作業は、通常、シーラントが収容されたカートリッジを装填したシールガン(シーラント吐出装置)を用いて作業者によって手動で行われる。しかし、組み立てに必要な部品点数が多いため、塗布作業に多くの時間を要している。また、シーラントには有機溶剤が含まれているため、人体への影響も懸念される。そこで、シーラントの塗布作業を自動塗布装置によって行うことが提案されている。自動塗布装置は、サーボ制御されて駆動するピストンを有する。ピストンが駆動することによって、カートリッジの先端に設けられたノズルからシーラントが吐出される。
【0004】
下記の特許文献1では、駆動機構を多関節ロボット等の駆動機構で構成することによって、シーラントの塗布を自動的に行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シーラントは、一般的に比較的高い圧縮性を有し、圧力の変化に対して体積、すなわち、密度が変化しやすい。そのため、ピストンが移動した場合、シーラントがノズルから吐出されるだけでなく、シーラントの体積が収縮して、カートリッジの内圧が上昇する状態となりやすい。その結果、カートリッジの後端側に設けられてシーラントを押圧するプランジャと、カートリッジの内面との間に隙間が発生し、シーラントがプランジャによって押圧されずに、プランジャの後端側から漏れる場合がある。
【0007】
シーラントの吐出量は、ピストンの移動量で調整され制御されているため、シーラントの漏れが発生すると、ピストンの移動量によるシーラントの吐出量制御が成り立たず、目標吐出量と実際の吐出量の間に誤差が生じる。その結果、形成すべきシーラント層の膜厚や、断面三角形状のフィレットの幅が目標値と異なってしまうため、塗布品質が安定しないという問題がある。
【0008】
シーラントがプランジャの後端側から漏れなければ、カートリッジ交換等のためピストンをカートリッジから抜いたとき、ピストン先端の外周面にはシーラントが付着しない。他方、シーラントがプランジャの後端側から漏れる状況下では、ピストンをカートリッジから抜いたとき、ピストン先端の外周面にシーラントが付着した状態となる。その結果、カートリッジ交換時において、付着したシーラントを除去するという清掃作業が必要となり、工程全体にかかる時間が長時間化するという問題がある。
【0009】
シーラントの漏れを防止するため、特許文献1では、空気圧で膨らんだゴムによってプランジャをカートリッジに押し当てることが開示されている。しかし、ゴムによる緊迫力の制御は困難である。また、必要以上に緊迫力を付与すると、ピストンが受ける抵抗が大きくなったり、カートリッジが破裂する可能性があるという問題が発生する。
【0010】
プランジャとカートリッジの内面との隙間は、ピストン軸とカートリッジの中心軸とが位置ずれしている場合にも発生する。軸の位置ずれがある場合に緊迫力を付与すると、カートリッジの内周面に対する緊迫力のアンバランスが顕著になるため、シーラントの漏れが発生しやすくなる。しかし、カートリッジ交換が頻繁な場合、交換のたびに高精度に位置合わせを行うことは時間や手間がかかるため、困難である。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、シーラントの吐出作業において、プランジャの後端側からのシーラントの漏洩を防止することが可能な流動性材料吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の流動性材料吐出装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る流動性材料吐出装置は、カートリッジ内部を軸方向に移動するピストンと、前記ピストンの先端に設けられ、流動性材料が収容された前記カートリッジに設けられたプランジャの内周面と接触可能であり、外周面が円筒形状を有する当接部とを備え、前記当接部は、前記ピストンにおいて径方向に移動可能に設けられている。
【0013】
この構成によれば、ピストンはカートリッジ内部を軸方向に移動し、カートリッジに収容された流動性材料を押圧する。押圧された流動性材料は、カートリッジの先端側に設けられたノズルから外部へ吐出される。ピストンの先端には、外周面が円筒形状を有する当接部が設けられており、当接部は、カートリッジに設けられたプランジャの内周面と接触可能である。また、当接部は、ピストンにおいて径方向に移動可能に設けられている。これにより、ピストンがプランジャを押圧するとき、ピストンの軸とカートリッジの中心軸が位置ずれしている場合でも、当接部の中心軸は、カートリッジの中心軸に合うように位置決めされる。その結果、当接部によって発生する緊迫力は、周方向に沿ってほぼ均等に発生し、プランジャとカートリッジの内面との隙間が生じにくくなる。
【0014】
上記発明において、前記ピストンの先端には軸方向に突出した軸部が設けられ、前記当接部は、円環状部材であって、前記当接部の内周面に対して前記軸部が挿入されてもよい。
【0015】
この構成によれば、円環状部材である当接部の内周面に対して、ピストンの先端において突出した軸部が挿入されている。当接部の内周面と、軸部の外周面との間に隙間を設けて、当接部がピストンの軸部に設置されていることで、当接部は、ピストンにおいて径方向に移動可能である。
【0016】
上記発明において、前記当接部の外径は、前記プランジャの内径よりも大きく、前記カートリッジの内径よりも小さくてもよい。
【0017】
この構成によれば、当接部がプランジャの内周面と接触するとき、プランジャを外側に拡張させて、プランジャをカートリッジの内周面に確実に押し当てることが可能になる。これにより、プランジャとカートリッジの内面との隙間が生じにくくなる。また、当接部の外径は、カートリッジの内径よりも小さいことから、ピストンが受ける抵抗が大きくなったり、カートリッジが破裂する可能性があるという問題が生じない。
【0018】
上記発明において、前記当接部は、金属製又は合成樹脂製でもよい。
【0019】
この構成によれば、当接部は、滑り性がよいため、プランジャの内部に挿入されやすくなり、当接部がプランジャの内部に確実に設置される。
【0020】
上記発明において、前記ピストンの先端には貫通孔が形成され、前記貫通孔を介して気体を吸引可能でもよい。
【0021】
この構成によれば、ピストンの先端に形成された貫通孔を介して、ピストンの外部の気体を吸引することができる。したがって、ピストンの先端がプランジャに挿入されたとき、ピストンとプランジャの間の空間の気体を吸引することによって、当接部とプランジャを密着させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シーラントの吐出作業において、プランジャの後端側からのシーラントの漏洩を防止することができ、シーラントの吐出量を安定させて、塗布品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシーラント吐出装置を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るシーラント吐出装置のシリンダ及びカートリッジのプランジャを示す縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るシーラント吐出装置のシリンダを示す斜視図である。
【
図4】カートリッジを示す部分拡大縦断面図である。
【
図5】従来のシーラント吐出装置のシリンダ及びカートリッジのプランジャを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明の一実施形態に係るシーラント吐出装置1の構成について、
図1を用いて説明する。
【0025】
本実施形態に係るシーラント吐出装置1は、
図1に示すように、カートリッジ固定部2と、ピストン3と、ピストンロッド4と、ピストン駆動部5などを備える。シーラント吐出装置1は、例えば、主翼、胴体等の航空機部品を組み立てる際、複数の部材間の合わせ面や、一の部材の端面と他の部材の板面の交差部分に形成される隅部にシーラント40を塗布する際に用いられる。
【0026】
シーラント吐出装置1は、カートリッジ固定部2にカートリッジ20を固定して、ピストン3がカートリッジ20の内部に収容されたシーラント40を押圧することによって、カートリッジ20の先端側に設けられたノズル21からシーラント40を吐出させる。
【0027】
シーラント吐出装置1は、ロボット等の駆動装置30に設置され、駆動装置30によって移動される。シーラント吐出装置1の移動が制御されることによって、シーラント40の塗布が必要な位置にシーラント40を吐出することができる。
【0028】
カートリッジ20は、円筒状部材であり、内部にシーラント40を収容可能である。カートリッジ20は、例えば市販製品でもよい。カートリッジ20の一端(先端側)には、ノズル21が設けられており、ノズル21を介してシーラント40が吐出される。シーラント40が内部に収容されているとき、カートリッジ20の他端(後端側)の内部には、プランジャ22が配置されている。プランジャ22は、例えば、縦断面がほぼU字形状であって、円筒状部材と半球状部材を組み合わせた形状を有する。プランジャ22は、底部がカートリッジ20の先端側に位置し、円形状の縁部がカートリッジ20の後端側に位置するように、カートリッジ20の内部に設置される。
【0029】
プランジャ22は、内部にピストン3の先端を収納することができ、ピストン3によって押圧されることによって、カートリッジ20の軸方向に沿って移動する。プランジャ22が移動してシーラント40を押圧することで、ノズル21からシーラント40が吐出される。
【0030】
図2及び
図4に示すように、プランジャ22のうち円筒状部の外周面には、封止リップ23が設けられる。封止リップ23は、円筒状部の周方向に沿って円環状に設けられ、外側方向に突出して形成されている。封止リップ23は、カートリッジ20の内周面と接触可能である。封止リップ23は、シーラント40が外部へ漏れることを防止する。
【0031】
プランジャ22の縁部には、ダストワイパー24が形成される。ダストワイパー24は、プランジャ22の底部側から縁部側に向かって拡径したテーパ形状を有する。ダストワイパー24の先端、すなわち、プランジャ22の縁部は、カートリッジ20の内周面と接触可能である。ダストワイパー24は、外部からカートリッジ20内部への異物(例えばダスト)の侵入を防止する。
【0032】
カートリッジ固定部2は、例えば、内部にカートリッジ20を収容可能な構成を有し、収容されたカートリッジ20が移動しないように固定する。カートリッジ固定部2は、ロボット等の駆動装置30と接続される。
【0033】
ピストン3は、カートリッジ固定部2に収容されたカートリッジ20の内部を軸方向に移動するように設けられている。ピストン3は、円筒状部材であり、棒状のピストンロッド4の先端において、ピストンロッド4と一体的に設置される。ピストン3の先端には、後述する当接部6が設けられている。
【0034】
ピストンロッド4は、ピストン駆動部5と接続され、ピストン駆動部5によって移動される。ピストン3の軸方向の移動が、ピストンロッド4を介して制御されることによって、ピストン3のカートリッジ20における位置やピストン3の移動量が調整される。シーラント40の吐出量は、ピストン3の移動量で調整され制御される。
【0035】
ピストン駆動部5は、ピストンロッド4と接続され、ピストンロッド4をカートリッジ20の軸方向に対して平行に移動させる。ピストン駆動部5は、例えば、サーボモータ7と、送りネジ8と、ブラケット9などを有する。サーボモータ7は、送りネジ8と接続され、送りネジ8を軸周りに回転させる。送りネジ8は、ピストンロッド4と結合されたブラケット9と接続されており、送りネジ8の軸周りの回転によって、ブラケット9を軸方向に対して平行に移動させる。ピストン駆動部5のサーボモータ7や送りネジ8は、ロボット等の駆動装置30と接続される。
【0036】
サーボモータ7、送りネジ8及びカートリッジ固定部2が駆動装置30に対して固定され、ピストン3及びピストンロッド4が移動可能な構成とされていることより、カートリッジ固定部2に固定されたカートリッジ20の内部に収容されたシーラント40をピストン3の駆動によって吐出させることができる。
【0037】
図1~
図3に示すように、ピストン3の先端には、外周面が円筒形状を有する当接部6が設けられている。当接部6は、カートリッジ20に設けられたプランジャ22の内周面と接触可能である。
【0038】
図2に示すように、ピストン3の先端には軸方向に突出した軸部10が設けられる。軸部10は、ピストン3の径よりも小さい円筒形状を有する。当接部6は、円環状部材であって、当接部6の内周面に対して軸部10が挿入されている。軸部10の外径は、当接部6の内径よりも小さく、軸部10の外周面と当接部6の内周面の間に隙間が形成された嵌め合い構造になっている。
【0039】
これにより、当接部6は、ピストン3において径方向に移動(スライド)可能に設けられている。この構造によって、ピストン3がプランジャ22を押圧するとき、ピストン3の軸心とカートリッジ20の中心軸が位置ずれしている場合でも、当接部6の中心軸は、カートリッジ20の中心軸に合うように位置決めされる。その結果、当接部6によって、カートリッジ20の内面に対して発生する緊迫力は、周方向に沿ってほぼ均等に発生し、プランジャ22とカートリッジ20の内面との隙間が生じにくくなる。
【0040】
円環状の当接部6は、
図2及び
図3に示すように、例えば円板13と、ボルト14によって、軸方向への抜けが抑制されている。円板13は、当接部6と隣接してピストン3の先端側に設置される。ボルト14は、ピストン3の先端において、当接部6との間で円板13を挟むように固定される。
【0041】
なお、当接部6の構成は、上述した例に限定されず、当接部6は、外周面が円筒形状を有する部材であって、ピストン3において径方向に移動可能に設けられていれば、他の構成であってもよい。例えば、当接部6において、軸方向に突出した軸部を設けて、その軸部をピストン3の中心部に設けた凹部に挿入してもよい。この場合、軸部の外径が凹部の内径よりも小さいことにより、当接部6は、ピストン3において径方向に移動可能に設けられている。
【0042】
当接部6の外径は、プランジャ22の内径よりも大きく、カートリッジ20の内径よりも小さい。これにより、当接部6がプランジャ22の内周面と接触するとき、プランジャ22を外側に拡張させて、プランジャ22をカートリッジ20の内周面に確実に押し当てることが可能になる。その結果、プランジャ22とカートリッジ20の内面との隙間が生じにくくなる。また、当接部6の外径は、カートリッジ20の内径よりも小さいことから、ピストン3が受ける抵抗が大きくなったり、カートリッジ20が破裂する可能性があるという問題が生じない。
【0043】
当接部6がプランジャ22の内周面に押し当てられるとき、当接部6の外周面は、カートリッジ20に形成された封止リップ23の背面側に配置されることが望ましい。プランジャ22の外周面にて外側方向に突出した封止リップ23が、外側方向に拡張するため、プランジャ22とカートリッジ20の内面との隙間を密封できる。これにより、当接部6がプランジャ22の内周面と接触するとき、封止リップ23を外側に拡張させて、プランジャ22の封止リップ23をカートリッジ20の内周面に確実に押し当てることが可能になる。その結果、プランジャ22とカートリッジ20の内面との隙間が生じにくくなる。
【0044】
当接部6は、例えば、金属製(例えば、ステンレス、鋼など)、又は、合成樹脂製(例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)など)である。これにより、当接部6は、滑り性がよいため、プランジャ22の内部に挿入されやすくなり、当接部6がプランジャ22の内部に確実に設置される。
【0045】
なお、ピストン3の先端をプランジャ22の内部に挿入して設置する際、ピストン3とプランジャ22の間の隙間に形成される空間が密閉されて、空気(気体)が圧縮された状態となる。そのため、この空間に溜まった空気が外部に排出されるようにしておくことが望ましい。例えば、ピストン3の先端に貫通孔11を設けて、軸方向に貫通した流路12を介して、空気が外部に排出されるようにしておくとよい。また、空気を単純に外気に開放するだけでなく、流路12と真空ポンプ(図示せず。)を接続してもよい。これにより、ピストン3の先端に形成された貫通孔11が、真空吸着機構として作用し、ピストン3の外部の気体を吸引することができる。その結果、ピストン3の先端がプランジャ22に挿入されたとき、ピストン3とプランジャ22の間の空間の空気を吸引することによって、当接部6とプランジャ22をより確実に密着させることができる。
【0046】
次に、本実施形態に係るシーラント吐出装置1を用いたシーラント吐出方法について説明する。
【0047】
まず、吐出させるシーラント40が内部に収容されたカートリッジ20が用意される。そして、カートリッジ20が、シーラント吐出装置1のカートリッジ固定部2に固定される。
【0048】
このとき、固定されたカートリッジ20のプランジャ22に対して、シーラント吐出装置1のピストン3を挿入し、設置する。ピストン3の先端に設けられた当接部6は、ピストン3において径方向に移動可能に設けられている。したがって、ピストン3がプランジャ22を押圧して、プランジャ22に当接部6が挿入されたとき、ピストン3の軸心とカートリッジ20の中心軸が位置ずれしている場合でも、当接部6の中心軸は、プランジャ22、すなわち、カートリッジ20の中心軸に合うように位置決めされる。また、当接部6の外径は、プランジャ22の内径よりも大きく、カートリッジ20の内径よりも小さい。これにより、当接部6がプランジャ22の内周面と接触するとき、プランジャ22を外側に拡張させて、プランジャ22をカートリッジ20の内周面に確実に押し当てる。
【0049】
また、ピストン3の先端に形成された貫通孔11が、真空吸着機構として作用可能な場合、プランジャ22に当接部6が挿入されるとき、真空ポンプを駆動して、ピストン3とプランジャ22の間の空間の空気を吸引してもよい。これにより、当接部6とプランジャ22をより確実に密着させることができる。
【0050】
次に、カートリッジ20が固定されたシーラント吐出装置1は、シーラント40を塗布する対象物(航空機部品等)に対向する位置へ移動させられる。または、対象物が、シーラント吐出装置1の作業位置に移動させられる。
【0051】
シーラント40の塗布作業は、サーボモータ7が駆動してピストン3を移動させることによって、ピストン3の移動量に応じて、シーラント40がノズル21から吐出される。このとき、対象物に塗布するシーラント40の必要量に応じて吐出量が調整される。必要な吐出量のシーラント40が吐出されると、ピストン3の移動が停止される。
【0052】
そして、対象物に対するシーラント40の塗布が必要な場所に対して、吐出作業が繰り返される。カートリッジ20に収容されたシーラント40が空又は少量になった場合、カートリッジ20の交換が行われる。カートリッジ20を取り外す場合、吐出時とは反対方向にピストン3を移動させた後、カートリッジ固定部2からカートリッジ20の固定が解除されて、カートリッジ20が取り外される。そして、上述した方法と同様に、再びカートリッジ20がカートリッジ固定部2に固定される。
【0053】
従来、シーラント吐出装置においてピストン50は、
図5に示すように、ほぼ円筒形状を有する一つの部材である。そのため、ピストンの軸心とカートリッジ20の中心軸とが位置ずれしている場合、プランジャ22がカートリッジ20の内周面に対して不均等に緊迫力がかかる。そのため、プランジャ22の後端側へシーラントの漏れが生じないようにするには、ピストン3の軸心とカートリッジ20の中心軸とを位置合わせする作業が必要である。
【0054】
他方、本実施形態によれば、
図2に示すように、ピストン3の先端には、外周面が円筒形状を有する当接部6が設けられており、当接部6は、カートリッジ20に設けられたプランジャ22の内周面と接触可能である。また、当接部6は、ピストン3において径方向に移動可能に設けられている。これにより、ピストン3がプランジャ22を押圧するとき、ピストン3の軸心とカートリッジ20の中心軸が位置ずれしている場合でも、当接部6の中心軸は、カートリッジ20の中心軸に合うように位置決めされる。
【0055】
したがって、ピストン3の軸心とカートリッジ20の中心軸とが位置ずれしている場合であっても、ピストン3の軸心とカートリッジ20の中心軸とを位置合わせする作業が必要なく、当接部6の径方向の移動によって、当接部6の中心軸がカートリッジ20の中心軸と一致する。
【0056】
その結果、ピストン3の軸心とカートリッジ20の中心軸とが位置ずれが生じていたとしても、当接部6が設けられていない従来のピストンと異なり、当接部6によって発生する緊迫力は、周方向に沿ってほぼ均等に発生し、プランジャ22とカートリッジ20の内面との隙間が生じにくくなる。
【0057】
また、当接部6の外径は、プランジャ22の内径よりも大きく、カートリッジ20の内径よりも小さい。これにより、当接部6がプランジャ22の内周面と接触するとき、プランジャ22を外側に拡張させて、プランジャ22をカートリッジ20の内周面に確実に押し当てることが可能になる。これにより、プランジャ22とカートリッジ20の内面との隙間が生じにくくなる。また、当接部6の外径は、カートリッジ20の内径よりも小さいことから、ピストン3が受ける抵抗が大きくなったり、カートリッジ20が破裂する可能性があるという問題が生じない。
【0058】
そして、当接部6は、金属製又は合成樹脂製であると望ましく、ピストン3の先端には貫通孔11が形成され、貫通孔11を介して気体を吸引可能であると望ましい。これにより、当接部6がプランジャ22の内部に確実に設置される。
【0059】
以上より、プランジャ22とカートリッジ20の内面との隙間が生じにくくなることから、シーラント吐出装置1におけるシーラント40の吐出作業において、シーラント40のプランジャ22の後端側からの漏洩を防止できる。そして、吐出量が安定することから、シーラント40の塗布品質が向上する。また、ピストン3をカートリッジ20から抜いたとき、ピストン3の先端の外周面にシーラント40が付着しないため、付着したシーラント40を除去するという清掃作業が不要になる。
【0060】
なお、上記実施形態では、吐出される材料がシーラントである場合について説明したが、本願発明はこの例に限定されず、シーラント以外の流動性材料に適用可能である。例えば、流動性材料として、接着剤等の合成樹脂、グリースや防錆剤等の油脂などでもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 :シーラント吐出装置
2 :カートリッジ固定部
3 :ピストン
4 :ピストンロッド
5 :ピストン駆動部
6 :当接部
7 :サーボモータ
8 :送りネジ
9 :ブラケット
10 :軸部
11 :貫通孔
12 :流路
13 :円板
14 :ボルト
20 :カートリッジ
21 :ノズル
22 :プランジャ
23 :封止リップ
24 :ダストワイパー
30 :駆動装置
40 :シーラント
50 :ピストン