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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/036 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
G02B6/036
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019089172
(22)【出願日】2019-05-09
(62)【分割の表示】P 2018042419の分割
【原出願日】2015-09-25
(65)【公開番号】P2019164371
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2019-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2014195937
(32)【優先日】2014-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014195938
(32)【優先日】2014-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 隆之
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 祥
(72)【発明者】
【氏名】岸 達也
(72)【発明者】
【氏名】丸山 遼
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特許第6527259(JP,B2)
【文献】特開昭60-231434(JP,A)
【文献】国際公開第2010/093187(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02- 6/036
G02B 6/44
C03B 37/00-37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアの外周側に形成されたクラッドとを備え、
前記クラッドは、少なくとも前記コアに隣接した内クラッド部と、前記内クラッド部の外周側に形成された外クラッド部とを有し、
前記コアは、屈折率がΔ1であり、最大屈折率がΔ1maxであり、
前記内クラッド部は、屈折率がΔ2であり、最小屈折率がΔ2minであり、
前記外クラッド部は、屈折率がΔ3であり、
前記コア、前記内クラッド部、および前記外クラッド部の屈折率は、式(1)および式(2’)に示す関係があり、
Δ1max>Δ2min、かつΔ1max>Δ3 ・・・(1)
0.01%≦|Δ2min-Δ3|≦0.03% ・・・(2’)
前記コアの外周半径r1、前記内クラッド部の外周半径r2、および前記外クラッド部の外周半径r3は、式(3)および式(4)に示す関係があり、
r1<r2<r3 ・・・(3)
0.25≦r1/r2≦0.4 ・・・(4)
ケーブルカットオフ波長λccは、式(5)を満たし、
λcc≦1260nm ・・・(5)
波長1310nmにおけるモードフィールド径は、式(6)を満たし、
8.59μm≦モードフィールド径≦8.88μm ・・・(6)
前記コア、前記内クラッド部、および前記外クラッド部の屈折率は、式(1A)および式(2A’)に示す関係があり、
Δ1max>Δ3>Δ2min ・・・(1A)
0.01%≦(Δ3-Δ2min)≦0.03% ・・・(2A’)
Δ1maxが、0.37%≦Δ1max≦0.39%を満たし、
前記モードフィールド径と前記ケーブルカットオフ波長λccとの比は、式(3A)を満たし、
6.86≦モードフィールド径/ケーブルカットオフ波長λcc≦7.09 ・・・(3A)
前記コアの屈折率分布は、ステップ型である、光ファイバ。
【請求項2】
直径15mmのマンドレルに10回巻回したときの波長1550nmにおける損失増加は0.25dB以下であり、
前記マンドレルに10回巻回したときの波長1625nmにおける損失増加は1.0dB以下である、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記外クラッド部は、純粋シリカガラスからなり、
前記内クラッド部は、フッ素が添加されたシリカガラスからなることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記内クラッド部、および前記外クラッド部の屈折率は、式(2’’)および式(2A’ ’)に示す関係がある、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の光ファイバ。
|Δ2min-Δ3|=0.01% ・・・(2’’)
(Δ3-Δ2min)=0.01% ・・・(2A’ ’)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバに関する。
本願は、2014年9月26日に出願された日本国特許出願2014-195937号および日本国特許出願2014-195938号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
FTTH(Fiber To The Home)の普及に伴い、光ファイバはビルや住宅等の屋内まで敷設されている。これに伴い、曲げを加えたときに生じる過剰損失、いわゆる曲げ損失(マクロベンド損失)を低減した光ファイバが注目を集めている。
低曲げ損失光ファイバを用いることにより、光ファイバに曲げが印加される際に発生する損失に起因する信号の瞬断の防止や、取り扱いの平易化による敷設コストの低減などが期待されている。
標準シングルモード光ファイバ(S-SMF)の規格であるITU-T Recommendation G.652に準拠しつつ、標準シングルモード光ファイバに比べて曲げ損失が低減された光ファイバの規格として、ITU-T Recommendation G.657がある。
【0003】
曲げ損失の改善手法としては、例えば以下の手法がある。
(1)コアの屈折率を高くする。
コアの屈折率を高くすることによって、S-SMFに比べてモードフィールド径(MFD)を小さくすることで、コアへの光の閉じ込めを改善することができる。このため、曲げ損失を低減することができる。この場合は、分散をG.652に合わせるために、コア近傍のクラッドの屈折率を低くした、いわゆるデプレスト型の屈折率分布を採用することが好ましい(例えば、特許文献1、非特許文献1を参照)。また、特許文献1では、内層クラッド領域の屈折率を調整することで、MFDおよび曲げ損失の両特性のバランスを保つことが可能であることを示している。
これらのタイプの光ファイバとしては、曲げ半径15mmまで対応する、G.657.A1に準拠する製品がある。
【0004】
(2)トレンチ型の屈折率分布を採用する。
クラッド部の、コアから離れた位置に低屈折率部を有するトレンチ型の屈折率分布を採用することによって、コアへの光の閉じ込めを改善し、曲げ損失を低減することができる(例えば、特許文献2を参照)。
このタイプの光ファイバとしては、曲げ半径10mmまで対応する、G.657.A2あるいはG.657.B2に準拠する製品や、さらに小さい曲げ半径7.5mmまで対応する、G.657.B3に準拠する製品がある。また、曲げ半径7.5mmまで対応する、G.657.B3に準拠しつつ、その他の光学特性がG.657.Aシリーズの規格に準拠した製品もある。
【0005】
(3)クラッド部に空孔を形成する。
クラッド部の、コアから離れた位置に、光ファイバの長手方向に沿う空孔を形成した光ファイバ(例えばホールアシステッドファイバ(HAF))や、独立した多数の空隙からなる微細構造を形成した光ファイバ(例えば、Corning社製、ClearCurve(登録商標))は、コアへの光の閉じ込めを改善することができるため、曲げ損失を低減することができる(例えば、特許文献3、4を参照)。
このタイプの光ファイバとしては、曲げ半径7.5mmまで対応する、G.657.B3に準拠する製品がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2013-520711号公報
【文献】特開昭63-43107号公報
【文献】国際公開第2004/092793号
【文献】特表2009-543126号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】K. Okamoto and T. Okoshi,“Computer-aided synthesis of the optimum refractive index profile for a multimode fiber,”IEEE Trans. Microwave Theory Tech., vol. MTT-25, pp.213-221, 1976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の手法において、コアの屈折率を高くした光ファイバは、曲げ損失を小さくすることができる。しかし、これに伴ってモードフィールド径が小径化し、S-SMFとの接続損失が増大する。このため、曲げ損失の低減には限界がある。
トレンチ型の屈折率分布を有する光ファイバは、屈折率が異なる複数の層を形成する必要があるため、母材の製造工程が複雑化する。
空孔付きの光ファイバは、中実構造の光ファイバに比べて製造工程が複雑化する。また、高度な紡糸技術が要求されるため、製造が容易とはいえない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、接続損失を増大させることなく曲げ損失を低減でき、しかも製造が容易である光ファイバを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
コアに近い部分のクラッドの屈折率が光ファイバの光学特性に大きな影響を与えることは周知であるが、本発明者は、詳細な検討の結果、モードフィールド径を小さくすることなく、曲げ損失を低減できる屈折率分布を見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、上記屈折率分布を採用することにより、他の光ファイバと接続した際の接続損失の抑制と曲げ損失の低減とを両立させている。
【0010】
本発明の第1態様は、コアと、前記コアの外周側に形成されたクラッドとを備え、前記クラッドは、少なくとも前記コアに隣接した内クラッド部と、前記内クラッド部の外周側に形成された外クラッド部とを有し、前記コアは、屈折率がΔ1であり、最大屈折率がΔ1maxであり、前記内クラッド部は、屈折率がΔ2であり、最小屈折率がΔ2minであり、前記外クラッド部は、屈折率がΔ3であり、前記コア、前記内クラッド部、および前記外クラッド部の屈折率は、式(1)および式(2’)に示す関係があり、
Δ1max>Δ2min、かつΔ1max>Δ3 ・・・(1)
0.01%≦|Δ2min-Δ3|≦0.03% ・・・(2’)
前記コアの外周半径r1、前記内クラッド部の外周半径r2、および前記外クラッド部の外周半径r3は、式(3)および式(4)に示す関係があり、
r1<r2<r3 ・・・(3)
0.25≦r1/r2≦0.5 ・・・(4)
ケーブルカットオフ波長λccは、式(5)を満たし、
λcc≦1260nm ・・・(5)
波長1310nmにおけるモードフィールド径は、式(6)を満たし、
8.59μm≦モードフィールド径≦9.40μm ・・・(6)
前記コア、前記内クラッド部、および前記外クラッド部の屈折率は、式(1A)および式(2A’)に示す関係があり、
Δ1max>Δ3>Δ2min ・・・(1A)
0.01%≦(Δ3-Δ2min)≦0.03% ・・・(2A’)
Δ1maxが、0.33%≦Δ1max≦0.39%を満たし、
前記モードフィールド径と前記ケーブルカットオフ波長λccとの比は、式(3A)を満たし、
6.86≦モードフィールド径/ケーブルカットオフ波長λcc≦7.49 ・・・(3A)
前記コアの屈折率分布は、ステップ型である、光ファイバを提供する。
【0011】
本発明の第2態様は、第1態様の光ファイバにおいて、直径15mmのマンドレルに10回巻回したときの波長1550nmにおける損失増加は0.25dB以下であり、前記マンドレルに10回巻回したときの波長1625nmにおける損失増加は1.0dB以下である光ファイバを提供する。
【0012】
本発明の第3態様は、第1または第2態様の光ファイバにおいて、前記外クラッド部は、純粋シリカガラスからなり、前記内クラッド部は、フッ素が添加されたシリカガラスからなる光ファイバを提供する。
【0013】
本発明の第4態様は、光ファイバであって、コアと、前記コアの外周側に形成されたクラッドとを備え、前記クラッドは、少なくとも前記コアに隣接した内クラッド部と、前記内クラッド部の外周側に形成された外クラッド部とを有し、前記コアは、屈折率がΔ1であり、最大屈折率がΔ1maxであり、前記内クラッド部は、屈折率がΔ2であり、最小屈折率がΔ2minであり、前記外クラッド部は、屈折率がΔ3であり、前記コア、前記内クラッド部、および前記外クラッド部の屈折率は、式(1)および式(2)に示す関係がある。Δ1max>Δ2min、かつΔ1max>Δ3・・・(1)、0.01%<|Δ2min-Δ3|<0.03%・・・(2)。前記コアの外周半径r1、前記内クラッド部の外周半径r2、および前記外クラッド部の外周半径r3は、式(3)および式(4)に示す関係がある。r1<r2<r3・・・(3)、0.2≦r1/r2≦0.5・・・(4)。ケーブルカットオフ波長λccは、式(5)を満たす。λcc≦1260nm・・・(5)。波長1310nmにおけるモードフィールド径は、式(6)を満たす。8.6μm≦モードフィールド径≦9.5μm・・・(6)。
【0014】
本発明の第5態様は、上記第4態様の光ファイバにおいて、前記コア、前記内クラッド部、および前記外クラッド部の屈折率は、式(1A)および式(2A)に示す関係があることが好ましい。Δ1max>Δ3>Δ2min・・・(1A)、0.01%<(Δ3-Δ2min)<0.03%・・・(2A)。
本発明の第6態様は、上記第5態様の光ファイバにおいて、さらに、Δ1maxが、0.33%≦Δ1max≦0.40%を満たす。
本発明の第7態様は、上記第4~第6態様のうちいずれか1態様の光ファイバにおいて、直径15mmのマンドレルに10回巻回したときの波長1550nmにおける損失増加は0.25dB以下であり、前記マンドレルに10回巻回したときの波長1625nmにおける損失増加は1.0dB以下であることが好ましい。
本発明の第8態様は、上記第4~第7態様のうちいずれか1態様の光ファイバにおいて、前記外クラッド部が純粋シリカガラスからなり、前記内クラッド部が、フッ素が添加されたシリカガラスからなる構成としてよい。
本発明の第9態様は、上記第4~第8態様のうちいずれか1態様の光ファイバにおいて、前記外クラッド部が純粋シリカガラスからなり、前記内クラッド部が、塩素が添加されたシリカガラスからなる構成としてよい。
また、前記内クラッド部は、Δ2<Δ3となる場合には、例えばフッ素(F)が添加されたシリカガラスからなることが好ましく、Δ2>Δ3となる場合には、例えば塩素(Cl)が添加されたシリカガラスからなることが好ましい。
【0015】
本発明の第10態様は、光ファイバであって、コアと、前記コアの外周側に形成されたクラッドとを備え、前記クラッドは、少なくとも前記コアに隣接した内クラッド部と、前記内クラッド部の外周側に隣接したトレンチ部と、前記トレンチ部の外周側に形成された外クラッド部とを有し、前記コアは、屈折率がΔ1であり、最大屈折率がΔ1maxであり、前記内クラッド部は、屈折率がΔ2であり、最小屈折率がΔ2minであり、前記トレンチ部は、屈折率がΔ3であり、最小屈折率がΔ3minであり、前記外クラッド部は、屈折率がΔ4であり、前記コア、前記内クラッド部、前記トレンチ部、および前記外クラッド部の屈折率は、式(11)~式(13)に示す関係がある。Δ1max>Δ2>Δ3min・・・(11)、Δ1max>Δ4>Δ3min・・・(12)、0.01%<(Δ4-Δ3min)<0.03%・・・(13)。前記コアの外周半径r1、前記内クラッド部の外周半径r2、前記トレンチ部の外周半径r3、および前記外クラッド部の外周半径r4は、式(14)~式(16)に示す関係がある。r1≦r2<r3<r4・・・(14)、1≦r2/r1≦5・・・(15)、1<r3/r2≦2・・・(16)。ケーブルカットオフ波長λccは、式(17)を満たす。λcc≦1260nm・・・(17)。波長1310nmにおけるモードフィールド径は、式(18)を満たす。8.6μm≦モードフィールド径≦9.5μm・・・(18)。
本発明の第11態様は、上記第10態様の光ファイバにおいて、直径15mmのマンドレルに10回巻回したときの波長1550nmにおける損失増加は0.25dB以下であり、前記マンドレルに10回巻回したときの波長1625nmにおける損失増加は1.0dB以下であることが好ましい。
本発明の第12態様は、上記第10または第11態様の光ファイバにおいて、前記外クラッド部は、純粋シリカガラスからなることが好ましく、前記トレンチ部は、フッ素が添加されたシリカガラスからなることが好ましい。
【0016】
本発明の一態様は、コアと、前記コアの外周側に形成されたクラッドとを備え、前記クラッドは、少なくとも前記コアに隣接した内クラッド部と、前記内クラッド部の外周側に形成された外クラッド部とを有し、前記コアは、屈折率がΔ1であり、最大屈折率がΔ1maxであり、前記内クラッド部は、屈折率がΔ2であり、最小屈折率がΔ2minであり、前記外クラッド部は、屈折率がΔ3であり、前記コア、前記内クラッド部、および前記外クラッド部の屈折率は、式(1)および式(2’)に示す関係があり、
Δ1max>Δ2min、かつΔ1max>Δ3 ・・・(1)
0.01%≦|Δ2min-Δ3|≦0.03% ・・・(2’)
前記コアの外周半径r1、前記内クラッド部の外周半径r2、および前記外クラッド部の外周半径r3は、式(3)および式(4)に示す関係があり、
r1<r2<r3 ・・・(3)
0.2≦r1/r2≦0.5 ・・・(4)
ケーブルカットオフ波長λccは、式(5)を満たし、
λcc≦1260nm ・・・(5)
波長1310nmにおけるモードフィールド径は、式(6)を満たし、
8.6μm≦モードフィールド径≦9.5μm ・・・(6)
前記コア、前記内クラッド部、および前記外クラッド部の屈折率は、式(1A)および式(2A’)に示す関係があり、
Δ1max>Δ3>Δ2min ・・・(1A)
0.01%≦(Δ3-Δ2min)≦0.03% ・・・(2A’)
Δ1maxが、0.33%≦Δ1max≦0.40%を満たし、
前記モードフィールド径と前記ケーブルカットオフ波長λccとの比は、式(3A)を満たし、
6.8≦モードフィールド径/ケーブルカットオフ波長λcc≦7.61 ・・・(3A)
前記コアの屈折率分布は、ステップ型である、光ファイバを提供する。
【0017】
前記光ファイバでは、直径15mmのマンドレルに10回巻回したときの波長1550nmにおける損失増加は0.25dB以下であり、前記マンドレルに10回巻回したときの波長1625nmにおける損失増加は1.0dB以下であることが好ましい。
【0018】
前記光ファイバは、前記外クラッド部は、純粋シリカガラスからなり、前記内クラッド部は、フッ素が添加されたシリカガラスからなる構成としてよい。
【0019】
前記外クラッド部は、純粋シリカガラスからなり、前記内クラッド部は、塩素が添加されたシリカガラスからなる構成としてよい。
【0020】
本発明の他の態様は、コアと、前記コアの外周側に形成されたクラッドとを備え、前記クラッドは、少なくとも前記コアに隣接した内クラッド部と、前記内クラッド部の外周側に隣接したトレンチ部と、前記トレンチ部の外周側に形成された外クラッド部とを有し、前記コアは、屈折率がΔ1であり、最大屈折率がΔ1maxであり、前記内クラッド部は、屈折率がΔ2であり、最小屈折率がΔ2minであり、前記トレンチ部は、屈折率がΔ3であり、最小屈折率がΔ3minであり、前記外クラッド部は、屈折率がΔ4であり、前記コア、前記内クラッド部、前記トレンチ部、および前記外クラッド部の屈折率は、式(11)~式(13’)に示す関係があり、
Δ1max>Δ2>Δ3min ・・・(11)
Δ1max>Δ4>Δ3min ・・・(12)
0.01%≦(Δ4-Δ3min)≦0.03% ・・・(13’)
前記コアの外周半径r1、前記内クラッド部の外周半径r2、前記トレンチ部の外周半径r3、および前記外クラッド部の外周半径r4は、式(14)~式(16)および式(4A)に示す関係があり、
r1≦r2<r3<r4 ・・・(14)
1≦r2/r1≦5 ・・・(15)
1<r3/r2≦2 ・・・(16)
0.2≦r1/r3≦0.5 ・・・(4A)
ケーブルカットオフ波長λccは、式(17)を満たし、
λcc≦1260nm ・・・(17)
波長1310nmにおけるモードフィールド径は、式(18)を満たし、
8.6μm≦モードフィールド径≦9.5μm ・・・(18)
Δ1maxが、0.33%≦Δ1max≦0.40%を満たし、
前記モードフィールド径と前記ケーブルカットオフ波長λccとの比は、式(5A)を満たし、
6.8≦モードフィールド径/ケーブルカットオフ波長λcc≦7.61 ・・・(5A)
前記コアの屈折率分布は、ステップ型である、光ファイバを提供する。
【0021】
前記光ファイバでは、直径15mmのマンドレルに10回巻回したときの波長1550nmにおける損失増加は0.25dB以下であり、前記マンドレルに10回巻回したときの波長1625nmにおける損失増加は1.0dB以下であることが好ましい。
【0022】
前記外クラッド部は、純粋シリカガラスからなり、前記トレンチ部は、フッ素が添加されたシリカガラスからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
上記本発明に係る態様によれば、内クラッド部と外クラッド部の屈折率の差、および、コアと内クラッド部の外周半径の比などを調整することによって、他の光ファイバ(例えば通常のシングルモード光ファイバ(S-SMF))と接続した際の接続損失を低く抑え、かつ曲げ損失を低減できる。
【0024】
また、上記本発明の一態様によれば、トレンチ部と外クラッド部の屈折率の差、および、コアと内クラッド部とトレンチ部との外周半径の比などを調整することによって、他の光ファイバ(例えば通常のシングルモード光ファイバ(S-SMF))と接続した際の接続損失を低く抑え、かつ曲げ損失を低減できる。
さらに、上記本発明の一態様によれば、従来の製造方法を大きく変更せずに利用できるため、製造が容易であり、製造コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態に係る光ファイバを模式的に示す断面図である。
図2A】前図に示す光ファイバの屈折率分布を模式的に示す図である。
図2B】比較例の光ファイバの屈折率分布を模式的に示す図である。
図3】第2実施形態に係る光ファイバを模式的に示す断面図である。
図4】前図に示す光ファイバの屈折率分布を模式的に示す図である。
図5】第3実施形態に係る光ファイバを模式的に示す断面図である。
図6】前図に示す光ファイバの屈折率分布を模式的に示す図である。
図7】他の実施形態に係る光ファイバの屈折率分布を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係る光ファイバ10の概略構成を示す。
光ファイバ10は、中心部に配されるコア1と、コア1の外周側にコア1と同心状に設けられたクラッド4とを有する。
クラッド4は、少なくとも、コア1の外周側に隣接した内クラッド部2と、内クラッド部2の外周側に形成された外クラッド部3とを有する。
【0027】
図2Aに、光ファイバ10の屈折率分布を模式的に示す。
コア1の屈折率をΔ1とし、最大屈折率をΔ1maxとする。
内クラッド部2の屈折率をΔ2とし、最小屈折率をΔ2minとする。
外クラッド部3の屈折率をΔ3とする。
【0028】
コア1の最大屈折率Δ1maxは、コア1の中心から外周までの径方向範囲において最大となるコア1の屈折率である。図2Aに示す屈折率分布では、コア1の屈折率Δ1は径方向位置にかかわらず一定であるため、屈折率Δ1は全範囲で最大屈折率Δ1maxに等しい。
内クラッド部2の最小屈折率Δ2minは、内クラッド部2の内周から外周までの径方向範囲において最小となる内クラッド部2の屈折率である。図2Aに示す屈折率分布では、内クラッド部2の屈折率Δ2は径方向位置にかかわらず一定であるため、屈折率Δ2は全範囲で最小屈折率Δ2minに等しい。
【0029】
光ファイバ10では、次の式(1)が成り立つ。
Δ1max>Δ2min、かつΔ1max>Δ3 ・・・(1)
式(1)に示すように、コア1の最大屈折率Δ1maxは、内クラッド部2の最小屈折率Δ2minおよび外クラッド部3の屈折率Δ3より大きく設定されている。
また、光ファイバ10では、内クラッド部2の最小屈折率Δ2minは、外クラッド部3の屈折率Δ3より小さく設定されている。
【0030】
光ファイバ10では、さらに、次の式(2)が成り立つ。
0.01%<|Δ2min-Δ3|<0.03% ・・・(2)
式(2)は、内クラッド部2の最小屈折率Δ2minと外クラッド部3の屈折率Δ3との差の絶対値が、0.01%を越え、かつ0.03%未満であることを意味する。
なお、式(2)は、次の式で代替してもよい。
0.01%≦|Δ2min-Δ3|≦0.03% ・・・(2’)
【0031】
Δ2minとΔ3との差の絶対値が小さすぎると、曲げ損失を十分に低減できないおそれがある。一方、Δ2minとΔ3との差の絶対値が大きすぎると、モードフィールド径が小さくなり、他の光ファイバ(例えば通常のシングルモード光ファイバ(S-SMF))と接続した際の接続損失が大きくなるおそれがある。
光ファイバ10では、Δ2minとΔ3との差の絶対値を0.01%を越える範囲とすることによって、曲げ損失を低減することができる。また、Δ2minとΔ3との差の絶対値を0.03%未満とすることによって、モードフィールド径(MFD)を適正化し、他の光ファイバと接続した際の接続損失を低く抑えることができる。
【0032】
第1実施形態の光ファイバ10では、Δ1maxと、Δ2minと、Δ3との大小関係に関して、次の式(1A)が成り立つ。
Δ1max>Δ3>Δ2min ・・・(1A)
式(1A)に示すように、コア1の最大屈折率Δ1maxは、外クラッド部3の屈折率Δ3より大きく設定されている。
外クラッド部3の屈折率Δ3は、内クラッド部2の最小屈折率Δ2minより大きく設定されている。
【0033】
Δ3がΔ2minより大きいため、上述の式(2)は、次のように記載することができる。
0.01%<(Δ3-Δ2min)<0.03% ・・・(2A)
式(2A)は、外クラッド部3の屈折率Δ3と内クラッド部2の最小屈折率Δ2minとの差が、0.01%を越え、かつ0.03%未満であることを意味する。
なお、式(2A)は、次の式で代替してもよい。
0.01%≦(Δ3-Δ2min)≦0.03% ・・・(2A’)
【0034】
コア1、内クラッド部2および外クラッド部3の外周半径を、それぞれr1、r2、r3とする。
コア1と内クラッド部2と外クラッド部3との外周半径r1~r3の間には、次の式(3)に示す関係がある。
r1<r2<r3 ・・・(3)
【0035】
コア1の外周半径r1と内クラッド部2の外周半径r2との比r1/r2は、次の式(4)に示す範囲にある。
0.2≦r1/r2≦0.5 ・・・(4)
【0036】
r1/r2が小さすぎると、モードフィールド径が小さくなり、他の光ファイバ(例えばS-SMF)と接続した際の接続損失が大きくなるおそれがある。一方、r1/r2が大きすぎると、曲げ損失が増大するおそれがある。
光ファイバ10では、r1/r2を0.2以上とすることによって、モードフィールド径を適正化し、他の光ファイバと接続した際の接続損失を低く抑えることができる。r1/r2を0.5以下とすることによって、曲げ損失を低減することができる。
【0037】
光ファイバ10は、ケーブルカットオフ波長λcc(すなわち、22mのカットオフ波長λc22m)が1260nm以下とされる。すなわち、次の式(5)が成立する。
λcc≦1260nm ・・・(5)
これによって、ITU-T Recommendation G.652の規定を満足することができる。
カットオフ波長λccは、例えばITU-T Recommendation G.650に記載の測定法により測定することができる。
【0038】
光ファイバ10は、上述の屈折率および外周半径の調整によって、波長1310nmにおけるモードフィールド径(MFD)が、8.6μm以上、かつ9.5μm以下となるように設定される。すなわち、次の式(6)が成立する。
8.6μm≦MFD≦9.5μm ・・・(6)
モードフィールド径をこの範囲にすることによって、他の光ファイバ(例えばS-SMF)と接続した際の接続損失を低く抑えることができる。
光ファイバ10は、モードフィールド径をこの範囲とすることによって、ITU-T G.652の規定を満たす。
【0039】
光ファイバ10は、直径15mmの円筒形のマンドレルに10回巻回したときの波長1550nmにおける損失増加は0.25dB以下となることが好ましい。
また、直径15mmの円筒形のマンドレルに10回巻回したときの波長1625nmにおける損失増加は1.0dB以下となることが好ましい。
【0040】
コア1は、例えばゲルマニウム(Ge)等のドーパントを添加することによって屈折率を高めたシリカガラスで構成することができる。
内クラッド部2は、例えばフッ素(F)等のドーパントを添加することによって屈折率を低くしたシリカガラスで構成することができる。内クラッド部2は、例えば塩素(Cl)等のドーパントを添加することによって屈折率を高くしたシリカガラスで構成してもよい。
外クラッド部3は、例えば純粋シリカガラスで構成することができる。外クラッド部3は、ドーパント(例えばGe、Fなど)を添加することによって屈折率を調整してもよい。
【0041】
光ファイバ10を構成する各層は、MCVD法、PCVD法、VAD法、OVD法などの公知の方法、またはこれらの組み合わせにより形成することができる。
例えば、MCVD法を採用する場合には、光ファイバ母材を次のようにして作製することができる。
【0042】
外クラッド部3となるシリカガラス管(例えば純粋シリカガラスからなるガラス管)の内側に、例えばフッ素(F)等のドーパントを含む原材料を用いて、内クラッド部2となるガラス堆積層を形成する。内クラッド部2の屈折率はドーパントの添加量によって調整することができる。
【0043】
次いで、上記ガラス堆積層の内側に、例えばゲルマニウム(Ge)等のドーパントを含む原材料を用いて、コア1となるガラス堆積層を形成する。なお、コア1は、別途作製したコアロッドを用いて形成することもできる。
ガラス堆積層が形成されたシリカガラス管は、透明化、中実化などの工程を経て光ファイバ母材とする。この光ファイバ母材を線引きすることによって、図1に示す光ファイバ10を得る。
CVD法は、ドーパントの添加によって屈折率分布を精度よく調整できる点で好ましい。
光ファイバ10の製造には、VAD法、OVD法も適用可能である。VAD法、OVD法には、生産性が高いという利点がある。
【0044】
光ファイバ10では、内クラッド部2と外クラッド部3の屈折率の差を上記範囲(式(2)を参照)とし、かつコア1と内クラッド部2の外周半径の比を上記範囲(式(4)を参照)とすることによって、他の光ファイバと接続した際の接続損失を低く抑え、かつ曲げ損失を低減できる。
【0045】
コアに近い部分のクラッドの屈折率が光ファイバの光学特性に大きな影響を与えることは周知であるが、本発明者は、詳細な検討の結果、モードフィールド径を小さくすることなく、曲げ損失を低減できる屈折率分布を見出した。
光ファイバ10は、この屈折率分布を採用することにより、他の光ファイバと接続した際の接続損失の抑制と曲げ損失の低減とを両立させている。
【0046】
光ファイバ10は、内クラッド部2と外クラッド部3の屈折率の差が小さいため、従来の製造方法(例えば通常のS-SMFの製造方法)を大きく変更することなく利用して、内クラッド部2および外クラッド部3の屈折率を容易に、かつ精度よく調整することができる。
また、内クラッド部2と外クラッド部3の屈折率の差が小さいため、製造方法に基づく制約が少ない。例えば、屈折率分布の調整に適しているとされるCVD法だけでなく、VAD法、OVD法を採用することもできる。
従って、光ファイバ10の製造が容易であり、製造コストを低く抑えることができる。
【0047】
光ファイバ10は、内クラッド部2と外クラッド部3の屈折率の差が小さいため、内クラッド部2を形成するためのフッ素(F)、塩素(Cl)等のドーパントの添加量を削減できる。
フッ素(F)等のドープに用いられる原料ガス(例えばSiF)は高価であるため、ドーパント添加量の削減によって、原料コストを抑制し、製造コストを低く抑えることができる。
【0048】
光ファイバ10は、図2Aに示すように、内クラッド部2の最小屈折率Δ2minが外クラッド部3の屈折率Δ3より小さいため、コア1への光の閉じ込めが良好であり、曲げ損失を低減できる。
【0049】
さらに詳細には、Δ2が小さいと、特性以外の、例えばコストの面でも好ましい。通常、低屈折領域を形成するためには、上記のようなフッ素(F)等の屈折率を下げるドーパントを添加する必要があり、材料費が上昇する。しかし、本願では、フッ素の添加量は非常に微量であるため、コストの抑制が期待できる。加えて、Δ2が小さいと、伝送損失の面でも好ましい。内クラッド部2に添加されたドーパントは、光ファイバのプリフォームの焼結工程および紡糸工程などの高温環境下において、コア部分に拡散する。伝送損失の支配的因子であるレイリ一散乱係数は、ドーパントの含有量の増加に伴って増加するため、フッ素がコア部分へ拡散すると伝送損失が劣化する。しかし、本願では、フッ素の添加量は非常に微量であるため、伝送損失への影響をほとんど考慮する必要がない。
【0050】
ここで、図1に示す内クラッド部2の屈折率分布について、シミュレーションした結果を示す。表1は、図2Aに示す各パラメータを設定したときの特性の計算結果である。
【0051】
【表1】
【0052】
上記計算結果より、Δ2が-0.01%~-0.04%の範囲のとき、Δ1、r2、r1/r2を適切に設定すれば、G657A1に準拠する光ファイバ(波長1310nmにおけるMFDが8.6~9.5μm、ケーブルカットオフ波長λccが1260nm以下、直径15mmのマンドレルに10回巻回したときの波長1550(1625)nmにおける損失増加(曲げ損失)が0.25(1.0)dB以下)を実現できる。すなわち、Δ2が-0.01%~-0.04%の範囲のとき、MFDと曲げ損失の両方を向上させられることがわかった。
【0053】
比較例として、内クラッド部を有さない場合の結果を示す。表2は、図2Bに示す内クラッド部を有さない場合の屈折率分布の各パラメータを設定したときの特性の計算結果である。
【0054】
【表2】
【0055】
比較例では、ケーブルカットオフ波長が上限の1260nmであり、曲げ損失を強化した屈折率分布であるにもかかわらず、曲げ損失がG657A1規格を満たさないことがわかる。この比較例の結果からも、内クラッド部を適切な屈折率の範囲で設けることで、高性能な光ファイバを実現できることがわかる。
【0056】
(第2実施形態)
図3に、本発明の第2実施形態に係る光ファイバ20の概略構成を示す。
光ファイバ20は、中心部に配されるコア1と、コア1の外周側にコア1と同心状に設けられたクラッド14とを有する。
クラッド14は、少なくとも、コア1の外周側に隣接した内クラッド部12と、内クラッド部12の外周側に形成された外クラッド部13とを有する。
【0057】
図4に、光ファイバ20の屈折率分布を模式的に示す。
コア1の屈折率をΔ1とし、最大屈折率をΔ1maxとする。内クラッド部12の屈折率をΔ2とし、最小屈折率をΔ2minとする。外クラッド部13の屈折率をΔ3とする。
光ファイバ20では、第1実施形態の光ファイバ10と同様に、次の式(7)が成り立つ。
Δ1max>Δ2min、かつΔ1max>Δ3 ・・・(7)
【0058】
光ファイバ20では、内クラッド部12の最小屈折率Δ2minが、外クラッド部13の屈折率Δ3より大きくされている点で、第1実施形態の光ファイバ10と異なる。
【0059】
光ファイバ20では、第1実施形態の光ファイバ10と同様に、次の式(8)が成り立つ。
0.01%<|Δ2min-Δ3|<0.03% ・・・(8)
Δ2minとΔ3との差の絶対値を上記範囲とすることによって、モードフィールド径(MFD)を適正化し、他の光ファイバと接続した際の接続損失を低く抑え、かつ曲げ損失を低減することができる。
なお、式(8)は、次の式で代替してもよい。
0.01%≦|Δ2min-Δ3|≦0.03% ・・・(8’)
【0060】
コア1と内クラッド部12と外クラッド部13との外周半径r1~r3の間には、第1実施形態の光ファイバ10と同様に、次の式(9)、(10)に示す関係がある。
r1<r2<r3 ・・・(9)
0.2≦r1/r2≦0.5 ・・・(10)
r1/r2を0.2以上とすることによって、モードフィールド径を適正化し、他の光ファイバと接続した際の接続損失を低く抑え、かつ曲げ損失を低減することができる。
【0061】
光ファイバ20は、第1実施形態の光ファイバ10と同様に、ケーブルカットオフ波長λcc(すなわち、22mのカットオフ波長λc22m)が1260nm以下とされる。 また、波長1310nmにおけるモードフィールド径(MFD)は、8.6μm以上、かつ9.5μm以下とされる。
光ファイバ20は、直径15mmの円筒形のマンドレルに10回巻回したときの波長1550nmにおける損失増加は0.25dB以下となることが好ましい。また、直径15mmの円筒形のマンドレルに10回巻回したときの波長1625nmにおける損失増加は1.0dB以下となることが好ましい。
【0062】
コア1は、例えばゲルマニウム(Ge)等のドーパントを添加することによって屈折率を高めたシリカガラスで構成することができる。
内クラッド部2は、例えば純粋シリカガラスで構成することができる。内クラッド部2は、例えば塩素(Cl)等のドーパントを添加することによって屈折率を調整してもよい。
外クラッド部3は、例えば純粋シリカガラスで構成することができる。外クラッド部3は、例えばフッ素(F)等のドーパントを添加することによって屈折率を低くしたシリカガラスで構成してもよい。
【0063】
光ファイバ20は、第1実施形態の光ファイバ10と同様に、MCVD法、PCVD法、VAD法、OVD法などにより製造することができる。
例えば、MCVD法を採用する場合には、光ファイバ母材を次のようにして作製することができる。
外クラッド部3となるシリカガラス管(例えばフッ素(F)等のドーパントを含むシリカガラス管)の内側に、純粋シリカガラスなどの原材料を用いて、内クラッド部2となるガラス堆積層を形成する。
次いで、ガラス堆積層の内側に、例えばゲルマニウム(Ge)等のドーパントを含む原材料を用いて、コア1となるガラス堆積層を形成する。なお、コア1は、別途作製したコアロッドを用いて形成することもできる。
ガラス堆積層が形成されたシリカガラス管は、透明化、中実化などの工程を経て光ファイバ母材とする。この光ファイバ母材を線引きすることによって、図3に示す光ファイバ20を得る。
【0064】
光ファイバ20では、内クラッド部12と外クラッド部13の屈折率の差を上記範囲とし、かつコア1と内クラッド部12の外周半径の比を上記範囲とすることによって、他の光ファイバと接続した際の接続損失を低く抑え、かつ曲げ損失を低減できる。
光ファイバ20は、従来の製造方法を大きく変更せずに利用できるため、製造が容易であり、製造コストを低く抑えることができる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。
例えば、図1図3に示す光ファイバ10,20では、クラッド4,14は2つのクラッド部(内クラッド部および外クラッド部)からなるが、クラッドは、内クラッド部および外クラッド部以外の層を有していてもよい。
【0066】
(第3実施形態)
図5に、本発明の第3実施形態に係る光ファイバ30の概略構成を示す。
光ファイバ30は、中心部に配されるコア21と、コア21の外周側にコア21と同心状に設けられたクラッド25とを有する。
クラッド25は、少なくとも、コア21の外周側に隣接した内クラッド部22と、内クラッド部22の外周側に隣接して形成されたトレンチ部23と、トレンチ部23の外周側に形成された外クラッド部24とを有する。
【0067】
図6に、光ファイバ30の屈折率分布を模式的に示す。
コア21の屈折率をΔ1とし、最大屈折率をΔ1maxとする。
内クラッド部22の屈折率をΔ2とし、最小屈折率をΔ2minとする。
トレンチ部23の屈折率をΔ3とし、最小屈折率をΔ3minとする。
外クラッド部24の屈折率をΔ4とする。
【0068】
コア21の最大屈折率Δ1maxは、コア21の中心から外周までの径方向範囲において最大となるコア21の屈折率である。図6に示す屈折率分布では、コア21の屈折率Δ1は径方向位置にかかわらず一定であるため、屈折率Δ1は全範囲で最大屈折率Δ1maxに等しい。
内クラッド部22の最小屈折率Δ2minは、内クラッド部22の内周から外周までの径方向範囲において最小となる内クラッド部22の屈折率である。図6に示す屈折率分布では、内クラッド部22の屈折率Δ2は径方向位置にかかわらず一定であるため、屈折率Δ2は全範囲で最小屈折率Δ2minに等しい。
トレンチ部23の最小屈折率Δ3minは、トレンチ部23の内周から外周までの径方向範囲において最小となるトレンチ部23の屈折率である。図6に示す屈折率分布では、トレンチ部23の屈折率Δ3は径方向位置にかかわらず一定であるため、屈折率Δ3は全範囲で最小屈折率Δ3minに等しい。
【0069】
光ファイバ30では、次の式(11)が成り立つ。
Δ1max>Δ2>Δ3min ・・・(11)
式(11)に示すように、コア21の最大屈折率Δ1maxは、内クラッド部22の屈折率Δ2より大きく設定されている。
内クラッド部22の屈折率Δ2は、トレンチ部23のΔ3minより大きく設定されている。
【0070】
光ファイバ30では、さらに、次の式(12)が成り立つ。
Δ1max>Δ4>Δ3min ・・・(12)
式(12)に示すように、コア21の最大屈折率Δ1maxは、外クラッド部24の屈折率Δ4より大きく設定されている。
外クラッド部24の屈折率Δ4は、トレンチ部23のΔ3minより大きく設定されている。
【0071】
光ファイバ30では、さらに、次の式(13)が成り立つ。
0.01%<(Δ4-Δ3min)<0.03% ・・・(13)
式(13)は、外クラッド部24の屈折率Δ4とトレンチ部23の最小屈折率Δ3minとの差が、0.01%を越え、かつ0.03%未満であることを意味する。
【0072】
Δ4とΔ3minとの差が小さすぎると、曲げ損失を十分に低減できないおそれがある。一方、Δ4とΔ3minとの差が大きすぎると、モードフィールド径が小さくなり、他の光ファイバ(例えば通常のシングルモード光ファイバ(S-SMF))と接続した際の接続損失が大きくなるおそれがある。
光ファイバ30では、Δ4とΔ3minとの差を0.01%を越える範囲とすることによって、曲げ損失を低減することができる。また、Δ4とΔ3minとの差を0.03%未満とすることによって、モードフィールド径(MFD)を適正化し、他の光ファイバと接続した際の接続損失を低く抑えることができる。
なお、式(13)は、次の式で代替してもよい。
0.01%≦(Δ4-Δ3min)≦0.03% ・・・(13’)
【0073】
コア21、内クラッド部22、トレンチ部23および外クラッド部24の外周半径を、それぞれr1、r2、r3、r4とする。
コア21と内クラッド部22とトレンチ部23と外クラッド部24との外周半径r1~r4の間には、次の式(14)に示す関係がある。
r1≦r2<r3<r4 ・・・(14)
【0074】
内クラッド部22の外周半径r2とコア21の外周半径r1との比r2/r1は、次の式(15)に示す範囲にある。
1≦r2/r1≦5 ・・・(15)
【0075】
r2/r1が小さすぎると、曲げ損失が増大するおそれがある。一方、r2/r1が大きすぎると、モードフィールド径が小さくなり、他の光ファイバ(例えばS-SMF)と接続した際の接続損失が大きくなるおそれがある。
光ファイバ30では、r2/r1を1以上とすることによって、曲げ損失を低減することができる。r2/r1を5以下とすることによって、モードフィールド径を適正化し、他の光ファイバと接続した際の接続損失を低く抑えることができる。
【0076】
トレンチ部23の外周半径r3と内クラッド部22の外周半径r2との比r3/r2は、次の式(16)に示す範囲にある。
1<r3/r2≦2 ・・・(16)
【0077】
r3/r2が小さすぎると、曲げ損失が増大するおそれがある。一方、r3/r2が大きすぎると、モードフィールド径が小さくなり、他の光ファイバ(例えばS-SMF)と接続した際の接続損失が大きくなるおそれがある。
光ファイバ30では、r3/r2を1より大きくとすることによって、曲げ損失を低減することができる。r3/r2を2以下とすることによって、モードフィールド径を適正化し、他の光ファイバと接続した際の接続損失を低く抑えることができる。
【0078】
光ファイバ30は、ケーブルカットオフ波長λccが1260nm以下とされる。
すなわち、次の式(17)が成立する。
λcc≦1260nm ・・・(17)
これによって、ITU-T Recommendation G.652の規定を満足することができる。
カットオフ波長λccは、例えばITU-T Recommendation G.650に記載の測定法により測定することができる。
【0079】
光ファイバ30は、上述の屈折率および外周半径の調整によって、波長1310nmにおけるモードフィールド径(MFD)が、8.6μm以上、かつ9.5μm以下となるように設定される。すなわち、次の式(18)が成立する。
8.6μm≦MFD≦9.5μm ・・・(18)
モードフィールド径をこの範囲にすることによって、他の光ファイバ(例えばS-SMF)と接続した際の接続損失を低く抑えることができる。
光ファイバ30は、モードフィールド径をこの範囲とすることによって、ITU-T G.652の規定を満たす。
【0080】
光ファイバ30は、直径15mmの円筒形のマンドレルに10回巻回したときの波長1550nmにおける損失増加は0.25dB以下となることが好ましい。
また、直径15mmの円筒形のマンドレルに10回巻回したときの波長1625nmにおける損失増加は1.0dB以下となることが好ましい。
【0081】
コア21は、例えばゲルマニウム(Ge)等のドーパントを添加することによって屈折率を高めたシリカガラスで構成することができる。
内クラッド部22およびトレンチ部23は、例えばフッ素(F)等のドーパントを添加することによって屈折率を低くしたシリカガラスで構成することができる。
外クラッド部24は、例えば純粋シリカガラスで構成することができる。外クラッド部24は、ドーパント(例えばGe、Fなど)を添加することによって屈折率を調整してもよい。
【0082】
光ファイバ30を構成する各層は、MCVD法、PCVD法、VAD法、OVD法などの公知の方法、またはこれらの組み合わせにより形成することができる。
例えば、MCVD法を採用する場合には、光ファイバ母材を次のようにして作製することができる。
【0083】
外クラッド部24となるシリカガラス管(例えば純粋シリカガラスからなるガラス管)の内側に、例えばフッ素(F)等のドーパントを含む原材料を用いて、トレンチ部23となるガラス堆積層を形成する。
前記ガラス堆積層の内側に、例えばフッ素(F)等のドーパントを含む原材料を用いて、内クラッド部22となるガラス堆積層を形成する。
トレンチ部23および内クラッド部22の屈折率はドーパントの添加量によって調整することができる。
【0084】
次いで、ガラス堆積層の内側に、例えばゲルマニウム(Ge)等のドーパントを含む原材料を用いて、コア21となるガラス堆積層を形成する。なお、コア21は、別途作製したコアロッドを用いて形成することもできる。
ガラス堆積層が形成されたシリカガラス管は、透明化、中実化などの工程を経て光ファイバ母材とする。この光ファイバ母材を線引きすることによって、図5に示す光ファイバ30を得る。
CVD法は、ドーパントの添加によって屈折率分布を精度よく調整できる点で好ましい。
光ファイバ30の製造には、VAD法、OVD法も適用可能である。VAD法、OVD法には、生産性が高いという利点がある。
【0085】
光ファイバ30では、トレンチ部23と外クラッド部24の屈折率の差を前記範囲(式(13)を参照)とし、かつコア21、内クラッド部22、およびトレンチ部23の外周半径の比を前記範囲(式(15)~(17)を参照)とすることによって、他の光ファイバと接続した際の接続損失を低く抑え、かつ曲げ損失を低減できる。
【0086】
コアに近い部分のクラッドの屈折率が光ファイバの光学特性に大きな影響を与えることは周知であるが、本発明者は、詳細な検討の結果、モードフィールド径を小さくすることなく、曲げ損失を低減できる屈折率分布を見出した。
光ファイバ30は、この屈折率分布を採用することにより、他の光ファイバと接続した際の接続損失の抑制と曲げ損失の低減とを両立させた点に技術的意義がある。
【0087】
光ファイバ30は、トレンチ部23と外クラッド部24の屈折率の差が小さいため、従来の製造方法(例えば通常のS-SMFの製造方法)を大きく変更することなく利用して、トレンチ部23および外クラッド部24の屈折率を容易に、かつ精度よく調整することができる。
また、トレンチ部23と外クラッド部24の屈折率の差が小さいため、製造方法に基づく制約が少ない。例えば、屈折率分布の調整に適しているとされるCVD法だけでなく、VAD法、OVD法を採用することもできる。
従って、光ファイバ30の製造が容易であり、製造コストを低く抑えることができる。
【0088】
光ファイバ30は、トレンチ部23と外クラッド部24の屈折率の差が小さいため、トレンチ部23を形成するためのフッ素(F)等のドーパントの添加量を削減できる。
フッ素(F)等のドープに用いられる原料ガス(例えばSiF)は高価であるため、ドーパント添加量の削減によって、原料コストを抑制し、製造コストを低く抑えることができる。
【0089】
上述のように、コア21と内クラッド部22とトレンチ部23と外クラッド部24との外周半径r1~r4の間には、式(14)に示す関係がある。
r1≦r2<r3<r4 ・・・(14)
図5および図6に示す光ファイバ30では、r1とr2とr3とは互いに異なる値であるが、本発明は、r1=r2、かつr2≠r3の場合を含む。
【0090】
図7は、本発明の他の実施形態の光ファイバの屈折率分布図であり、r1=r2、かつr2≠r3の場合を示す。
この光ファイバでは、r1とr2とが等しいため、クラッド25は、トレンチ部23と、トレンチ部23の外周側に形成された外クラッド部24のみからなる。
【0091】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。
例えば、図5に示す光ファイバ30では、クラッド25は3つの層(内クラッド部、トレンチ部および外クラッド部)からなるが、クラッドは、これら以外の層を有していてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1、21…コア 2、12、22…内クラッド部 3、13、24…外クラッド部 4、14、25…クラッド 23…トレンチ部 10、20、30…光ファイバ。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7