(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】爪保護具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/11 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
A61F5/11
(21)【出願番号】P 2019214735
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】500264227
【氏名又は名称】丸山 政雄
(72)【発明者】
【氏名】丸山 政雄
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-063858(JP,A)
【文献】特開2017-042581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先端縁劈開または爪縁裂開の夫々開口部と該開口部の周囲近傍爪縁を、爪保護具に具備する収容間隙へ挿嵌した後、該爪保護具に具備する第1脚部と第2脚部の少なくともどちらか一方が該開口部に密接するよう塑性変形部位を加圧され、塑性変形されることで、該開口部は閉止状態で挟圧固定され、該開口部の固定および補強および保護することができる該爪保護具において、
金属材または樹脂材または複合材で形成された矩形状平板を互いに対向するよう結合部から折り曲げられて断面略U字状を模る第1脚部および第2脚部によって、該開口部および該開口部周囲近傍爪縁を挿嵌状に挿設できる収容間隙が形成され、
また、
該第1脚部および該結合部の少なくともどちらか一方に、加圧による塑性変形を可能とする部位、または弾性挟圧力を生成する弾性作用部位、を備えたことで、該開口部を閉止状態で挟圧固定できることを特徴とする、爪保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
爪先端縁劈開または爪縁裂開の夫々発症開口部および前述開口部を含む周囲近傍爪縁の固定および補強および保護ができるとともに爪甲部欠損も防止できる爪保護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の爪の変形を防止できる用具の発明においては、略平状の爪へ装着することで爪甲の変形を予防できる爪変形防止具が提案されている。
【0003】
例えば、本願出願人が先に発明した、爪甲上へ装着することで、爪を変形させる方向へ加わる外圧を抑制して、爪甲の変形および爪割裂を未然に防止ができる爪保護具が提案されている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本願発明者は、前述に記載された爪保護具においては以下のような問題点があることを見いだした。
【0005】
爪縁部が2枚状に爪先端縁剥離した爪甲剥離症の劈開部または二股状爪縁裂開した爪甲裂症の劈開部であって、該劈開部および該裂開部の起点部位である夫々の爪縁端開口部(以下、開口部という)の悪化進展を防ぐためには、該開口部を閉止するように固定して、該開口部を形成する2股状分裂した爪縁端裂開部位の開閉動による疲労劈開または疲労裂開の進展を閉止する必要がある。文献1記載の爪保護具では、爪甲上に着接される爪保護部と爪縁部に掛止されるフック状の係止部が設けされている。確かに爪甲面側の亀裂を覆設するよう着接することで該亀裂部の保護の効果は見出せている。しかし、爪縁部に裂開状に発症した開口部においてはフック状の係止部が掛着されているだけで、該開口部の開閉動を閉止できるような閉止固定がなされていない。このことにより該開口部が該フック状係止部内で開閉様の動きが発生し、該発症開口部位の疲労裂開または疲労破断による爪甲部欠損を招くだけでなく、爪甲側に着接された該爪保護部の着脱まで誘発するという問題がある。
【0006】
例えば、爪縁裂症が第一趾爪側縁に発症している爪へ文献1記載の該爪保護具を掛着して徒歩を行なった場合である。該爪保護具に具備する係止部内の前記開口部爪縁端の動きを観察すると、該開口部が閉止固定されていないため、歩行時の足裏着地時から立脚時を経て爪先離地時の間の一連動作では第一趾爪郭が地面より圧迫され隆起が起こり開口部は拡開する。次に地面からはなれる遊脚時では地面の圧迫から開放された該爪郭は平常に戻ることで該開口部は閉じる。このように一歩足を踏み出すごとに該開口部は該係止部内で開閉動が連続することで、該開口部が疲労裂開を発生して線状亀裂が爪甲面側まで進展する恐れがある。さらに悪化すると、該線状亀裂部から疲労破断し、爪甲部欠損と進展する危険がある。このことからも、文献1記載の爪保護具は爪縁裂開を保護するのには不向きであることが明らかとなった。また、爪先端縁に発症した劈開においても同様、該係止部では掛かり止めするだけで該劈開部位を閉止固定できないため疲労剥離を防止することは困難と思われる。
【0007】
前述のとおり、文献1記載の爪保護具は、爪甲の形状および爪甲の亀裂を保護するものであるが、爪縁裂開を発症した開口部の疲労裂開や疲労破断の防止および該開口部の閉止ができる効果については記載も示唆もない。
【0008】
本発明の目的は、爪先端縁に発症した爪先端縁劈開または爪縁裂開の開口部を保護するとともに、爪先端縁疲労剥離または該爪縁裂開口部の疲労裂開または該裂開部の疲労破断による爪甲欠損の危険を未然に阻止することを課題とし、該開口部の保護および疲労剥離もしくは疲労破断による爪甲部欠損の防止ができる、爪保護具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するための本発明の爪保護具は、以下の技術的手段から構成される。
【0010】
すなわち請求項1記載の発明は、爪先端縁劈開や爪縁裂開の発症起点部位である開口部および前述夫々該開口部の周囲近傍爪縁を収容間隙へ挿嵌した後、爪保護具に具備する第1脚部および第2脚部の少なくとも夫々どちらかの脚部が該開口部と密接するよう塑性変形部位を加圧し、塑性変形させることで、該開口部は閉止状態で挟圧固定され、該開口部の開閉動を閉止することができ、疲労裂開または疲労剥離を防止するとともに爪甲上に発症した線状亀裂部位の疲労破断による爪甲部欠損をも防止することができる爪保護具において、金属あるいは高分子化合物から少なくとも一つ以上の選択された適宜に塑性変形可能な材料で成る矩形状平板を用い、互いに対向するよう結合部から折り曲げられて断面略U字状を模る第1脚部および第2脚部によって、該爪縁を挿嵌状に挿設できる収容間隙が形成され、また、該第1脚部および該結合部の少なくともどちらか一方には、金属材からは塑性材もしくは弾性材の降伏点がコントロールされて塑性変形を可能とする形状を用いて、または樹脂材からは揮発性硬化樹脂や熱硬化性樹脂やエネルギー線硬化型樹脂や多官能アクリレートモノマー等の夫々の材から適宜選択された単一材料もしくは複合材料を用いて、押圧または挟圧いずれかの加圧によって塑性変形可能に成された塑性変形部を備えて、該開口部を閉止状態で挟圧固定できる爪保護具である。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の爪保護具に具備する第1脚部および結合部の少なくともどちらか一方に、爪縁に発症した前記開口部を閉止状態で挟圧固定できる弾性挟圧力を生成する弾性応力を有する金属や樹脂やゴムやエラストマーまたは複合材料から選択されて成された弾性作用部を備えて、該開口部を閉止状態で挟圧固定できる構成で成されたものである。
【0012】
このように本発明の上記の構成によれば、爪先端縁劈開または爪縁裂開の夫々開口部を閉止状態で固定できる爪保護具の構成によって、該開口部の開閉動を閉止できることで、疲労裂開または疲労剥離を防止でき、また爪甲上に発症した線状亀裂部位の疲労破断による爪甲部欠損をも防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について適宜図面を参照しながら説明するが、本実施形態は以下の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を損なわない範囲で任意に変更して実施可能である。
【実施形態】
【実施例1】
【0014】
爪保護具01Aの実施例について
図1、
図3、
図4を参照して説明する。
【0015】
第1実施形態の
図1(a)に示された爪保護具01Aは塑性変形可能なアルミニュウムから成り、互いに対向し爪縁裂開の症例
図4で示された爪縁裂開の開口部21を挿入する収容間隙14を形成する第1脚部11と第2脚部12、および該脚部の結合部13から構成される。実施例の爪保護具01Aは長手幅=5mm程度、第1脚部奥行き=約3mm程度、第2脚部奥行き=約2mm程度、材料厚さ=0.2mm程度、収容間隙開口高=3mm程度に形成されている。
【0016】
この爪保護具01Aは
図1(b)に示すように開口部21近傍爪縁を収容間隙14へ挿嵌して、塑性変形を可能とする爪保護具01Aの第1脚部11または結合部13を加圧し、
図3で表されるよう該開口部21へ密接するよう塑性変形することで、該開口部は閉止状態で挟圧固定されて使用されるものである。
【実施例2】
【0017】
爪保護具02Aの実施例について
図1、
図3、
図4を参照して説明する。
【0018】
第2実施形態の爪保護具02Aは弾性を有するステンレス板によって、互いに対向し爪縁裂開の発症例
図4で示された開口部21を挿入する収容間隙14を形成する第1脚部11と第2脚部12、および該脚部の結合部13から構成される。実施例の爪保護具02Aは長手幅=5mm程度、第1脚部奥行き=約3mm程度、第2脚部奥行き=約2mm程度、材料厚さ=0.2mm程度、収容間隙開口高=0.5mm程度に一体的に整形されている。
【0019】
この爪保護具02Aは開口部21と該開口部21の近傍爪縁を収容間隙14へ挿嵌して、
図3で表されるように、第1脚部11および結合部13に具備する弾性挟圧力を生成する弾性作用部によって、少なくとも第1脚部が該開口部21の開閉動を閉止できる閉止状に密接するよう第1脚部と第2脚部とにより挟圧固定して使用する爪保護具である。
【実施例3】
【0020】
爪保護具01Bの実施例について
図2、
図4を参照して説明する。
【0021】
第3実施形態の
図2(a)に示された爪保護具01Bは塑性変形可能なアルミニュウムから成り、互いに対向し爪縁裂開の症例
図4で示された爪縁裂開開口部21を挿入する収容間隙14を形成する第1脚部11と第2脚部12、および該脚部の結合部13、さらに該第1脚部11の爪甲側方向側縁部に具備される略矩形平板状で成る亀裂保護部15によって構成される。
図4で表れる線状亀裂部22は短手裂開幅略1mm、長手亀裂長さ略5mm状に発症。該線状亀裂部22へ閉止被着される亀裂保護部15を具備する実施例3の爪保護具01Aは長手幅=8mm程度、奥行き=3mm程度、材料厚さ=0.2mm程度、収容間隙開口高=4mm程度、亀裂保護部15は第1脚部11の長手幅方向略中央部に幅=3mm程度、爪甲中央方向長さ=8mm程度で爪保護具本体と一体成形され、形成されている。
【0022】
第3実施形態の爪保護具01Bは、本発明の爪保護具01Aおよび02Aを構成する第1脚部の爪甲側方向側縁部の適宜位置に、爪甲の湾曲形状に沿うよう容易に模れ密接できる、金属系から塑性材または弾性材および樹脂系からは揮発性硬化樹脂または熱硬化性樹脂またはエネルギー線硬化型樹脂または多官能アクリレートモノマーから適宜選択された材を用い、爪縁部に発症した開口部21から爪甲側にまで到る線状亀裂部22を少なくとも覆設できるサイズで且つ該開口部21を閉止被着できる略矩形平板状で成る亀裂保護部15を具備して成している。爪保護具01Bの特徴は、線状亀裂部の開口21を閉止するよう該具目保護具01Bに具備する該亀裂保護部15を、該線状亀裂部の開口21上へ覆設固定することにより、爪甲25および該亀裂部22が補強され、該爪甲25の撓曲変形を抑えることで、該線状亀裂部22の開閉動または拡開の抑止ができ、該線状亀裂部位22の疲労破断および亀裂進展の阻止および爪甲部変形の防止ができる効果を得られる爪保護具01A,02Aの夫々別の形態の実施例である。また、該裂開部の開口21が靴下や履物へ引っ掛けて裂開部を拡開させ悪化進展させることも抑止できる効果もある。
【0023】
前記本発明の夫々爪保護具を爪へ装設する際、開口部21の閉止固定を止着安定させるために、接着剤や粘着剤または両面粘着や粘着テープを用いてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0025】
本発明によれば、開口部21の開閉動を閉止できる構成により、該開口部21の開閉動による疲労劈開または疲労裂開の進展を防止することができ、さらに爪甲裂開部位の疲労破断による爪甲部欠損をも防止することができるようになった。このように、本発明によれば、従来のものに比べて極めて効果的に該開口部21の裂開進展の防止が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、医療用器具および美容器具の産業界において利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】(a)は本願発明の爪保護具01Aの実施例1を示す斜視図。(b)は爪保護具01Aを爪甲裂症を発症した爪縁に装着した一例の斜視図。
【
図2】(a)は本願発明の爪保護具01Bの実施例3を示す斜視図。(b)は爪保護具01Bを爪甲上まで線状亀裂が発症した爪に装着した一例の斜視図。
【
図3】爪保護具01Aが爪縁に密接状に挟圧固定された状態を表す縦断面図。
【
図4】(a)は爪縁裂開が爪縁に発症した一例を表す第一趾斜視図。(b)は爪甲部疲労破断により爪縁の一部が欠損した一例を表す第一趾斜視図。
【符号の説明】
【0028】
01A は、実施形態1の爪保護具
02A は、実施形態2の爪保護具
01B は、実施形態3の爪保護具
11 は、第1脚部
12 は、第2脚部
13 は、結合部
14 は、収容間隙
15 は、亀裂保護部
21 は、爪縁裂開の開口部
22 は、線状亀裂部
23 は、爪縁部
24 は、爪甲部欠損
25 は、爪甲