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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】ベンズイミダゾール誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20220627BHJP
   B01J 27/045 20060101ALI20220627BHJP
   B01J 31/04 20060101ALI20220627BHJP
   C07D 403/12 20060101ALI20220627BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALN20220627BHJP
   A61K 31/497 20060101ALN20220627BHJP
   A61K 31/501 20060101ALN20220627BHJP
   A61K 31/506 20060101ALN20220627BHJP
   A61P 25/04 20060101ALN20220627BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220627BHJP
【FI】
C07D401/12
B01J27/045 Z
B01J31/04 Z
C07D403/12
A61K31/4439
A61K31/497
A61K31/501
A61K31/506
A61P25/04
C07B61/00 300
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019506069
(86)(22)【出願日】2018-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2018009884
(87)【国際公開番号】W WO2018168899
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2017049458
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】住友ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 真吾
(72)【発明者】
【氏名】李 鐘光
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋子
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/117647(WO,A1)
【文献】再公表特許第2012/029636(JP,A1)
【文献】特開2003-112045(JP,A)
【文献】特表2014-508754(JP,A)
【文献】国際公開第2016/086158(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/034433(WO,A2)
【文献】特表2009-507026(JP,A)
【文献】特表2005-529089(JP,A)
【文献】特許第6768674(JP,B2)
【文献】特開2018-154562(JP,A)
【文献】特開2018-154620(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168898(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168894(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/12
B01J 27/045
B01J 31/04
C07D 403/12
A61K 31/4439
A61K 31/497
A61K 31/501
A61K 31/506
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
[式中、
は、複数ある場合は各々独立して、ハロゲン、シアノ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシ(該アルキル及び該アルコキシは、各々独立して、同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよい)を表し;
nは、0、1、2又は3を表し;
及びRは、各々独立して、水素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、シアノ、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)又はC3-10シクロアルキルを表し;
は、水素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、シアノ、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)又はC3-10シクロアルキルを表し;
は、C6-10アリール又は5~12員のヘテロアリール(該アリール及び該ヘテロアリールは、各々独立して、ハロゲン;同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;及び同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルコキシからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表し;
mは、1、2又は3を表し;
及びRは、各々独立して、またR及びRが複数ある場合は各々独立して、水素原子、重水素原子、水酸基、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ(該アルキル及び該アルコキシは、各々独立して、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C3-7シクロアルキル又はC3-7シクロアルコキシ(該シクロアルキル及び該シクロアルコキシは、各々独立して、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表す]
で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩の製造方法であって
(3):
【化2】
[式中、R及びnは、前記と同義であり、Xは、水酸基、ハロゲン、アルキルスルホニルオキシ又はアリールスルホニルオキシを表す]
で表される化合物と式(4):
【化3】
[式中、R、R、R、R、R及びmは、前記と同義である]
で表される化合物を反応させた後に、R-X(Rは前記と同義であり、Xはハロゲンを表す)と反応させることにより、式(2):
【化4】
[式中、R、R、R、R、R、R、R、m及びnは、前記と同義である]
で表される化合物を製造する工程;および
式(2)で表される化合物を還元、及びオルトギ酸トリエステル、ギ酸エステル、及びギ酸塩からなる群から選択される1又は2以上のギ酸等価体と共に環化することにより、式(1)で表される化合物を製造する工程
を含む製造方法
【請求項2】
式(1)で表される化合物が、式(1’):
【化5】
[式中、R、R、R、R、R、R、R、m及びnは、請求項1と同義である]
である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
nが、0であり;
及びRが、各々独立して、水素原子又はC1-6アルキルであり;
が、水素原子又はC1-6アルキルであり;
が、フェニル又は5若しくは6員のヘテロアリール(該フェニル及び該ヘテロアリールは、各々独立して、ハロゲン;同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;及び同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルコキシからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)であり;
mが、1であり;
及びRが、各々独立して、水素原子、重水素原子又はC1-4アルキルであり;
が、ハロゲンであり;
が、フッ素又は臭素である、
請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
が、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル又はピリダジニル(該ピリジル、該ピラジニル、該ピリミジニル及び該ピリダジニルは、各々独立して、ハロゲン;同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;及び同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルコキシからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)である、
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
還元を、還元性金属、還元性金属塩、又は還元性金属と還元性金属塩の混合物を用いて行う、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
還元を、還元性金属を用いて行う、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
還元性金属が、亜鉛又は鉄である、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
還元において、更に酸化被膜除去剤を用いる、請求項~請求項のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
酸化被膜除去剤が、臭化リチウム、塩化リチウム又はクロロトリメチルシランである、請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
還元を、水素存在下、接触還元触媒を用いて行う、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
接触還元触媒が、パラジウム-炭素又はプラチナサルファイテッドカーボンである、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
還元を、酸存在下で行う、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
ギ酸等価体がオルトギ酸トリエステルである、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
ギ酸等価体における、オルトギ酸トリエステルがオルトギ酸トリメチルまたはオルトギ酸トリエチルであり、ギ酸エステルがギ酸メチルまたはギ酸エチルであり、ギ酸塩がギ酸亜鉛、ギ酸ナトリウム、またはギ酸アンモニウムである、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
還元及び環化を、ワンポットで行う、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
還元及び環化において、ニトロを還元した後、続いて酸及びギ酸等価体を添加し、環化することを特徴とする、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
還元及び環化において、酸及びギ酸等価体存在下で、ニトロを還元することにより、還元後、系中で環化させることを特徴とする、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
酸が、ギ酸である、請求項1~請求項17のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として有用なベンズイミダゾール誘導体の製造方法、その製造中間体及び当該製造中間体の製造方法に関する。より詳しくは、神経障害性疼痛等の疾患の治療薬又は予防薬として有用なベンズイミダゾール誘導体の製造方法、その製造中間体及び当該製造中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係るベンズイミダゾール誘導体と部分的に化学構造が共通する化合物を製造する方法については、文献等に報告されている(特許文献1、特許文献2、非特許文献1)。しかし、後述の本発明のベンズイミダゾール誘導体の製造方法、その製造中間体及び当該製造中間体の製造方法は、それら文献には開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2010/074193号
【文献】国際公開第2012/058254号
【非特許文献】
【0004】
【文献】Journal of The American Chemical Society. 2007, 129, 14550-14551.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上述のとおり医薬として有用なベンズイミダゾール誘導体(1)の製造方法で、保護基の脱着工程がなく、短い反応工程数で目的物を得ることができる、工業的製造方法として有利な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、下記式(1)で表されるベンズイミダゾール誘導体の製造方法、その製造中間体及び当該製造中間体の製造方法について、鋭意研究を重ねた結果、後述の式(2)で表される製造中間体を用いる製造方法により、下記式(1)で表されるベンズイミダゾール誘導体が効率よく製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
[項1]式(1):
【化1】
[式中、
は、複数ある場合は各々独立して、ハロゲン、シアノ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシ(該アルキル及び該アルコキシは、各々独立して、同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよい)を表し;
nは、0、1、2又は3を表し;
及びRは、各々独立して、水素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、シアノ、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)又はC3-10シクロアルキルを表し;
は、水素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、シアノ、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)又はC3-10シクロアルキルを表し;
は、C6-10アリール又は5~12員のヘテロアリール(該アリール及び該ヘテロアリールは、各々独立して、ハロゲン;同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;及び同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルコキシからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表し;
mは、1、2又は3を表し;
及びRは、各々独立して、またR及びRが複数ある場合は各々独立して、水素原子、重水素原子、水酸基、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ(該アルキル及び該アルコキシは、各々独立して、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C3-7シクロアルキル又はC3-7シクロアルコキシ(該シクロアルキル及び該シクロアルコキシは、各々独立して、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表す]
で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩の製造方法であって、式(2):
【化2】
[式中、R、R、R、R、R、R、R、m及びnは、前記と同義である]
で表される化合物を、還元、及びギ酸等価体と共に環化する工程を含む製造方法。
【0009】
[項2]式(3):
【化3】
[式中、R及びnは、項1と同義であり、Xは、水酸基、ハロゲン、アルキルスルホニルオキシ又はアリールスルホニルオキシを表す]
で表される化合物と式(4):
【化4】
[式中、R、R、R、R、R及びmは、項1と同義である]
で表される化合物を反応させた後に、R-X(Rは項1と同義であり、Xはハロゲンを表す)と反応させることにより、式(2)で表される化合物を製造する工程を更に含む、
項1に記載の製造方法。
【0010】
[項3]式(3):
【化5】
[式中、R及びnは、項1と同義であり、Xは、水酸基、ハロゲン、アルキルスルホニルオキシ又はアリールスルホニルオキシを表す]
で表される化合物とR-X(Rは項1と同義であり、Xはハロゲンを表す)と反応させた後に、式(4):
【化6】
[式中、R、R、R、R、R及びmは、項1と同義である]
で表される化合物を反応させることにより、式(2)で表される化合物を製造する工程を更に含む、
項1に記載の製造方法。
【0011】
[項4]式(1):
【化7】
[式中、
は、複数ある場合は各々独立して、ハロゲン、シアノ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシ(該アルキル及び該アルコキシは、各々独立して、同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよい)を表し;
nは、0、1、2又は3を表し;
及びRは、各々独立して、水素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、シアノ、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)又はC3-10シクロアルキルを表し;
は、水素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、シアノ、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)又はC3-10シクロアルキルを表し;
は、C6-10アリール又は5~12員のヘテロアリール(該アリール及び該ヘテロアリールは、各々独立して、ハロゲン;同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;及び同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルコキシからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表し;
mは、1、2又は3を表し;
及びRは、各々独立して、またR及びRが複数ある場合は各々独立して、水素原子、重水素原子、水酸基、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ(該アルキル及び該アルコキシは、各々独立して、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C3-7シクロアルキル又はC3-7シクロアルコキシ(該シクロアルキル及び該シクロアルコキシは、各々独立して、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表す]
で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩の製造方法であって、下記の工程A及び工程Bを含む製造方法;
工程A
式(3):
【化8】
[式中、R及びnは、前記と同義であり、Xは、水酸基、ハロゲン、アルキルスルホニルオキシ又はアリールスルホニルオキシを表す]
で表される化合物と式(4):
【化9】
[式中、R、R、R、R、R及びmは、前記と同義である]
で表される化合物を反応させた後に、R-X(Rは前記と同義であり、Xはハロゲンを表す)と反応させることにより、式(2):
【化10】
[式中、R、R、R、R、R、R、R、m及びnは、前記と同義である]
で表される化合物を製造する工程;
工程B
式(2)で表される化合物を還元、及びギ酸等価体と共に環化することにより、式(1)で表される化合物を製造する工程。
【0012】
[項5]式(1):
【化11】
[式中、
は、複数ある場合は各々独立して、ハロゲン、シアノ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシ(該アルキル及び該アルコキシは、各々独立して、同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよい)を表し;
nは、0、1、2又は3を表し;
及びRは、各々独立して、水素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、シアノ、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)又はC3-10シクロアルキルを表し;
は、水素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、シアノ、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)又はC3-10シクロアルキルを表し;
は、C6-10アリール又は5~12員のヘテロアリール(該アリール及び該ヘテロアリールは、各々独立して、ハロゲン;同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;及び同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルコキシからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表し;
mは、1、2又は3を表し;
及びRは、各々独立して、またR及びRが複数ある場合は各々独立して、水素原子、重水素原子、水酸基、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ(該アルキル及び該アルコキシは、各々独立して、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C3-7シクロアルキル又はC3-7シクロアルコキシ(該シクロアルキル及び該シクロアルコキシは、各々独立して、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表す]
で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩の製造方法であって、下記の工程C、工程D及び工程Eを含む製造方法;
工程C
式(3):
【化12】
[式中、R及びnは、前記と同義であり、Xは、水酸基、ハロゲン、アルキルスルホニルオキシ又はアリールスルホニルオキシを表す]
で表される化合物と式(4):
【化13】
[式中、R、R、R、R、R及びmは、前記と同義である]
で表される化合物を反応させることにより、式(5):
【化14】
[式中、R、R、R、R、R、R、m及びnは、前記と同義である]
で表される化合物を製造する工程;
工程D
式(5)で表される化合物を還元、及びギ酸等価体と共に環化することにより、式(6):
【化15】
[式中、R、R、R、R、R、R、m及びnは、前記と同義である]
で表される化合物を製造する工程;
工程E
式(6)で表される化合物とR-X(Rは前記と同義であり、Xはハロゲンを表す)と反応させることにより、式(1)で表される化合物を製造する工程。
【0013】
[項6]式(1)で表される化合物が、式(1’):
【化16】
[式中、R、R、R、R、R、R、R、m及びnは、項1と同義である]
である、
項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【0014】
[項7]
nが、0であり;
及びRが、各々独立して、水素原子又はC1-6アルキルであり;
が、水素原子又はC1-6アルキルであり;
が、フェニル又は5若しくは6員のヘテロアリール(該フェニル及び該ヘテロアリールは、各々独立して、ハロゲン;同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;及び同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルコキシからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)であり;
mが、1であり;
及びRが、各々独立して、水素原子、重水素原子又はC1-4アルキルであり;
が、ハロゲンであり;
が、フッ素又は臭素である、
項2~項6のいずれか一項に記載の製造方法。
【0015】
[項8]
及びRが、C1-4アルキルであり;
、R及びRが、水素原子であり;
及びXが、フッ素である、
項2~項7のいずれか一項に記載の製造方法。
【0016】
[項9]
が、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル又はピリダジニル(該ピリジル、該ピラジニル、該ピリミジニル及び該ピリダジニルは、各々独立して、ハロゲン;同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;及び同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルコキシからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~項8のいずれか一項に記載の製造方法。
【0017】
[項10]
が、式(7):
【化17】
(式中、
は、ハロゲン;同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;又は同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルコキシを表す)である、
項1~項8のいずれか一項に記載の製造方法。
【0018】
[項11]
還元を、還元性金属、還元性金属塩、又は還元性金属と還元性金属塩の混合物を用いて行う、項1~項10のいずれか一項に記載の製造方法。
【0019】
[項12]
還元を、還元性金属を用いて行う、項1~項10のいずれか一項に記載の製造方法。
【0020】
[項13]
還元性金属が、亜鉛又は鉄である、項12に記載の製造方法。
【0021】
[項14]
還元において、更に酸化被膜除去剤を用いる、項11~項13のいずれか一項に記載の製造方法。
【0022】
[項15]
酸化被膜除去剤が、臭化リチウム、塩化リチウム又はクロロトリメチルシランである、項14に記載の製造方法。
【0023】
[項16]
還元を、水素存在下、接触還元触媒を用いて行う、項1~項10のいずれか一項に記載の製造方法。
【0024】
[項17]
接触還元触媒が、パラジウム-炭素又はプラチナサルファイテッドカーボンである、項16に記載の製造方法。
【0025】
[項18]
還元を、酸存在下で行う、項1~項17のいずれか一項に記載の製造方法。
【0026】
[項19]
環化を、酸存在下で行う、項1~項18のいずれか一項に記載の製造方法。
【0027】
[項20]
ギ酸等価体がオルトギ酸トリエステル(例えば、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル)、ギ酸エステル(例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル)、及びギ酸塩(例えば、ギ酸亜鉛、ギ酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム)からなる群から選択される1又は2以上である、項1~項19のいずれか一項に記載の製造方法。
【0028】
[項21]
ギ酸等価体が、オルトギ酸トリエステルである、項20に記載の製造方法。
【0029】
[項22]
還元及び環化を、ワンポットで行う、項1~項21のいずれか一項に記載の製造方法。
【0030】
[項23]
還元及び環化において、ニトロを還元した後、続いて酸及びギ酸等価体を添加し、環化することを特徴とする、項1~項21のいずれか一項に記載の製造方法。
【0031】
[項24]
還元及び環化において、酸及びギ酸等価体存在下で、ニトロを還元することにより、還元後、系中で環化させることを特徴とする、項1~項22のいずれか一項に記載の製造方法。
【0032】
[項25]
酸が、ギ酸である、項1~項24のいずれか一項に記載の製造方法。
【0033】
[項26]
式(8):
【化18】
[式中、
1aは、複数ある場合は各々独立して、ハロゲン、シアノ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシ(該アルキル及び該アルコキシは、各々独立して、同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよい)を表し;
は、0、1、2又は3を表し;
2a及びR3aは、各々独立して、水素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、シアノ、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)又はC3-10シクロアルキルを表し;
4aは、水素原子を表し;
5aは、式(9):
【化19】
(式中、R8aは、ハロゲン;同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;又は同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルコキシを表す)表し;
は、1、2又は3を表し;
6a及びR7aは、各々独立して、またR6a及びR7aが複数ある場合は各々独立して、水素原子、重水素原子、水酸基、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ(該アルキル及び該アルコキシは、各々独立して、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C3-7シクロアルキル又はC3-7シクロアルコキシ(該シクロアルキル及び該シクロアルコキシは、各々独立して、ハロゲン及び水酸基からなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表す]
で表される化合物又はその塩。
【0034】
[項27]
1aが、複数ある場合は各々独立して、ハロゲン、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシ(該アルキル及び該アルコキシは、各々独立して、同一又は異なる1~5個のフッ素で置換されていてもよい)であり;
が、0、1、2又は3であり;
2a及びR3aが、各々独立して、水素原子又は1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-6アルキルであり;
4aが、水素原子であり;
が、1であり;
6a及びR7aが、各々独立して、水素原子、重水素原子又は1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルキルである、
項26で表される化合物又はその塩。
【0035】
[項28]
式(8)で表される化合物が、式(8’):
【化20】
[式中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6a、R7a、m及びnは、前記と同義である]である、
項26又は27に記載の化合物又はその塩。
【発明の効果】
【0036】
本発明により、保護基の着脱工程がなく、反応工程数が短い、ベンズイミダゾール誘導体の製造方法を提供することが可能になった。本発明の好ましい態様としては、上記に加え更にカラムクロマトグラフィー精製を必要とせず、簡便で収率が高く、高純度の目的物を得ることができる工業的に有利なベンズイミダゾール誘導体の製造方法の提供である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書における用語を以下に説明する。
「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素が挙げられる。
【0038】
「C1-4アルキル」とは、直鎖状又は分枝鎖状の炭素原子数が1から4のアルキルを意味し、「C1-6アルキル」とは、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1から6のアルキルを意味する。「C1-3アルキル」の具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル等が挙げられる。「C1-4アルキル」の具体例としては、例えば、前記「C1-3アルキル」の具体例に加え、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等が挙げられる。「C1-6アルキル」の具体例としては、例えば、前記「C1-4アルキル」の具体例に加え、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル等が挙げられる。「C1-6アルキル」として、好ましくは「C1-4アルキル」が挙げられ、より好ましくは「C1-3アルキル」が挙げられ、更に好ましくはメチル又はエチルが挙げられる。
【0039】
「C1-6アルコキシ」とは、前記「C1-6アルキル」によって置換されたオキシ基を意味する。「C1-3アルコキシ」の具体例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1-メチルエトキシ等が挙げられる。「C1-4アルコキシ」の具体例としては、例えば、前記「C1-3アルコキシ」の具体例に加え、ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシ、1,1-ジメチルエトキシ等が挙げられる。「C1-6アルコキシ」の具体例としては、例えば、前記「C1-4アルコキシ」の具体例に加え、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。「C1-6アルコキシ」として、好ましくは「C1-4アルコキシ」が挙げられ、より好ましくは「C1-3アルコキシ」が挙げられ、更に好ましくはメトキシ又はエトキシが挙げられる。
【0040】
「C3-10シクロアルキル」とは、炭素原子数が3から10である環状の非芳香族性炭化水素基(飽和炭化水素基及び一部不飽和炭化水素基)を意味し、一部架橋された構造のものも含まれる。「C3-6シクロアルキル」の具体例としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等が挙げられる。「C3-7シクロアルキル」の具体例としては、例えば、前記「C3-6シクロアルキル」の具体例に加え、シクロヘプチル、シクロヘプテニル等が挙げられる。「C3-10シクロアルキル」の具体例としては、例えば、前記「C3-7シクロアルキル」の具体例に加え、シクロオクチル、シクロノナニル、シクロデカニル、アダマンチル等が挙げられる。「C3-10シクロアルキル」として、好ましくは「C3-7シクロアルキル」が挙げられ、より好ましくは「C3-6シクロアルキル」が挙げられ、更に好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルが挙げられる。
【0041】
「C3-7シクロアルコキシ」とは、前記「C3-7シクロアルキル」で置換されたオキシ基を意味する。「C3-6シクロアルコキシ」の具体例としては、例えば、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等が挙げられる。「C3-7シクロアルコキシ」の具体例としては、例えば、前記「C3-6シクロアルコキシ」の具体例に加えて、シクロヘプチルオキシ等が挙げられる。「C3-7シクロアルコキシ」として、好ましくは「C3-6シクロアルコキシ」が挙げられ、より好ましくはシクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ又はシクロヘキシルオキシが挙げられ、最も好ましくはシクロヘキシルオキシが挙げられる。
【0042】
「C6-10アリール」とは、炭素原子数が6から10である芳香族炭化水素基を意味する。「C6-10アリール」の具体例としては、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル等が挙げられる。「C6-10アリール」として、好ましくはフェニルである。
【0043】
「5~12員のヘテロアリール」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から独立して選択される1から4のヘテロ原子を含む、5から12の原子で構成される単環式又は二環式の芳香族複素環基(単環式ヘテロアリール又は二環式ヘテロアリール)を意味し、好ましくは5又は6員のヘテロアリール、より具体的には5又は6員の含窒素ヘテロアリールが挙げられる。二環式ヘテロアリールとは、同一又は異なる二つの単環式ヘテロアリールが縮環したもの、単環式ヘテロアリールと芳香環(例えば、ベンゼン等)とが縮環したもの又は単環式ヘテロアリールと非芳香族環(例えば、シクロヘキサン、ピペリジン等)とが縮環したものを意味する。「5又は6員の含窒素ヘテロアリール」とは、窒素原子を1から3含み、5から6の原子で構成される単環式の芳香族複素環基を意味し、その具体的としては、例えば、ピリジル、ピリダジニル、イソチアゾリル、ピロリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピリミジニル、チアジアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、イミダゾリジニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル等が挙げられる。「5又は6員のヘテロアリール」の具体例としては、例えば、前記「5又は6員の含窒素ヘテロアリール」の具体例に加え、フリル、チエニル等が挙げられる。「5~12員のヘテロアリール」の具体例としては、例えば、前記「5又は6員のヘテロアリール」の具体例に加え、インドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイミダゾリル、6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]チエピニル基等が挙げられる。「5~12員のヘテロアリール」として、好ましくは「5又は6員のヘテロアリール」が挙げられ、より好ましくは「5又は6員の含窒素ヘテロアリール」が挙げられ、更に好ましくはピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニルが挙げられ、特に好ましくはピリジルが挙げられる。
【0044】
「アルキルスルホニルオキシ」とは、前記「C1-4アルキル」(該アルキルは、同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよい)によって置換されたスルホニルオキシ基を意味する。「アルキルスルホニルオキシ」の具体例としては、例えば、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ等が挙げられる。
【0045】
「アリールスルホニルオキシ」とは、前記「C6-10アリール」(該アリールは、C1-4アルキルで置換されていてもよい)によって置換されたスルホニルオキシ基を意味する。「アリールスルホニルオキシ」の具体例としては、例えば、para-トルエンスルホニルオキシ等が挙げられる。
【0046】
「還元性金属、還元性金属塩、又は還元性金属と還元性金属塩の混合物」とは、電子を放出して還元反応を起こす金属、金属塩又はそれらの混合物を意味する。「還元性金属」の具体例としては、例えば、亜鉛、鉄、スズ、チタン等が挙げられる。「還元性金属塩」の具体例としては、例えば、塩化鉄、塩化スズ、塩化チタン等が挙げられる。「還元性金属、還元性金属塩、又は還元性金属と還元性金属塩の混合物」として、好ましくは亜鉛又は鉄である。
【0047】
「接触還元触媒」とは、炭素等の担体に金属を分散、担持させたものであり、主に水素雰囲気下で使用され、不飽和結合やニトロ等の還元に用いられる触媒を意味する。「接触還元触媒」の具体例としては、例えば、パラジウム-炭素、水酸化パラジウム-炭素等のパラジウム触媒類;ラネーニッケル等のニッケル触媒類;コバルト触媒類;プラチナサルファイテッドカーボン等の白金触媒類;ルテニウム触媒類;ロジウム触媒類等が挙げられる。「接触還元触媒」として、好ましくはパラジウム触媒類、プラチナ触媒類等が挙げられ、より好ましくはパラジウム-炭素又はプラチナサルファイテッドカーボンである。
【0048】
「ギ酸等価体」とは、有機合成化学上、ギ酸と同様の化学変換を起こすことのできる化合物を意味する。「ギ酸等価体」の具体例としては、例えば、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル等のオルトギ酸トリエステル;ギ酸メチル、ギ酸エチル等のギ酸エステル;ギ酸亜鉛、ギ酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム等のギ酸塩等が挙げられる。「ギ酸等価体」として、好ましくはオルトギ酸エステルが挙げられ、より好ましくはオルトギ酸トリメチル又はオルトギ酸トリエチルが挙げられ、更に好ましくはオルトギ酸トリメチルが挙げられる。
【0049】
還元及び/又は環化において用いることがある「酸」とは、水に溶けたときに電離して、水素イオンを生ずる物質のことを意味する。「酸」の具体例としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、酪酸等の有機酸等が挙げられる。「酸」として、好ましくは塩酸、ギ酸又は酢酸が挙げられ、より好ましくは塩酸又はギ酸が挙げられ、更に好ましくはギ酸が挙げられる。
【0050】
式(2)で表される化合物を還元及び環化する工程としては、還元する工程及び環化する工程をこの順で実施してもよく、また、両反応をワンポットで行ってもよい。
【0051】
「ワンポット」とは、反応容器に反応物を順に投入し、多段階の反応を行う合成手法を意味する。「ワンポット」で反応を行うことにより、各段階で単離精製を行わないため、単離精製に要する溶媒等の大量の廃棄物、時間や労力の削減ができる。更に、反応容器を1つしか使用しないのでプロセスが大幅に簡略化される等、経済的メリットだけでなく、環境負荷の軽減につながる。
【0052】
「酸化被膜除去剤」とは、鉄や亜鉛等の金属表面の酸化体を除去し、適度に活性度を高めることができる化合物を意味する。「酸化被膜除去剤」の具体例としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のリチウム塩;塩酸、硫酸等の無機酸;ギ酸、酢酸等の有機酸;1,2-ジヨードエタン、1,2-ジブロモエタン等のジハロゲン化炭化水素;クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン等のハロゲン化シラン等が挙げられる。「酸化被膜除去剤」として、好ましくはギ酸、塩化リチウム又は臭化リチウムが挙げられ、より好ましくは塩化リチウム又は臭化リチウムが挙げられ、更に好ましくは臭化リチウムが挙げられる。
【0053】
「還元後、系中で環化させる」とは、還元反応を行う際に、環化反応を行うための酸及びギ酸等価体を共存させておくことで、ニトロの還元により生じる環化前駆体を反応系外に単離することなく、環化まで行うことを意味する。
【0054】
以下に本発明の好ましい態様について、詳細に説明する。
として、好ましくはハロゲンが挙げられ、より好ましくはフッ素又は塩素が挙げられる。
【0055】
nとして、好ましくは0、1又は2が挙げられ、より好ましくは0又は1が挙げられ、更に好ましくは0が挙げられる。
【0056】
及びRとして、好ましくは水素原子又はC1-6アルキルが挙げられ、より好ましくは水素原子又はC1-4アルキルが挙げられ、更に好ましくはC1-3アルキルが挙げられ、特に好ましくはメチル又はエチルが挙げられ、最も好ましくはメチルが挙げられる。
【0057】
として、好ましくは水素原子又はC1-6アルキルが挙げられ、より好ましくは水素原子又はC1-3アルキルが挙げられ、更に好ましくは水素原子、メチル又はエチルが挙げられ、最も好ましくは水素原子が挙げられる。
【0058】
として、好ましくはC6-10アリール又は5若しくは6員のヘテロアリール(該アリール及び該ヘテロアリールは、各々独立して、ハロゲン;1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルキル;及び1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルコキシからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられ、より好ましくはフェニル又は5若しくは6員の含窒素ヘテロアリール(該フェニル及び該ヘテロアリールは、各々独立して、ハロゲン;1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルキル;及び1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルコキシからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられ、更に好ましくはフェニル又は6員のヘテロアリール(該フェニル及び該ヘテロアリールは、各々独立して、ハロゲン;1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルキル;及び1~5個のフッ素で置換されていてもよいアルコキシからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられ、特にましくはピリジル(該ピリジルは、1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルキルで置換されていてもよい)が挙げられ、最も好ましくはトリフルオロメチルで置換されていてもよいピリジルが挙げられる。
【0059】
mとして、好ましくは1又は2が挙げられ、更に好ましくは1が挙げられる。
【0060】
及びRとして、好ましくは水素原子;重水素原子;水酸基;同一若しくは異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;又は同一若しくは異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC3-7シクロアルキルが挙げられ、より好ましくは水素原子、重水素原子、C1-4アルキル又はC3-7シクロアルキルが挙げられ、更に好ましくは水素原子又は重水素原子が挙げられ、特に好ましくは水素原子が挙げられる。
【0061】
として、好ましくはハロゲン;1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルキル;又は1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルコキシが挙げられ、より好ましくはフッ素;塩素;1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルキル;又は1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルコキシが挙げられ、更に好ましくはフッ素;塩素;又は1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-3アルキルが挙げられ、更に好ましくは1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-3アルキルが挙げられ、特に好ましくはトリフルオロメチルが挙げられる。
【0062】
として、好ましくはハロゲン、アルキルスルホニルオキシ又はアリールスルホニルオキシが挙げられ、より好ましくはハロゲンが挙げられ、更に好ましくはフッ素又は塩素が挙げられ、特に好ましくはフッ素が挙げられる。
【0063】
として、好ましくはフッ素又は臭素が挙げられ、より好ましくはフッ素が挙げられる。
【0064】
1aとして、好ましくはハロゲンが挙げられ、より好ましくはフッ素又は塩素が挙げられる。
【0065】
として、好ましくは0、1又は2が挙げられ、より好ましくは0又は1が挙げられ、更に好ましくは0が挙げられる。
【0066】
2a及びR3aとして、好ましくは水素原子又はC1-6アルキルが挙げられ、より好ましくは水素原子又はC1-4アルキルが挙げられ、更に好ましくはC1-3アルキルが挙げられ、特に好ましくはメチル又はエチルが挙げられ、最も好ましくはメチルが挙げられる。
【0067】
として、好ましくは1又は2が挙げられ、更に好ましくは1が挙げられる。
【0068】
6a及びR7aとして、好ましくは水素原子;重水素原子;水酸基;同一若しくは異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;又は同一若しくは異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC3-7シクロアルキルが挙げられ、より好ましくは水素原子、重水素原子、C1-4アルキル又はC3-7シクロアルキルが挙げられ、更に好ましくは水素原子又は重水素原子が挙げられ、特に好ましくは水素原子が挙げられる。
【0069】
8aとして、好ましくはハロゲン;1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルキル;又は1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルコキシが挙げられ、より好ましくはフッ素;塩素;1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルキル;又は1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルコキシが挙げられ、更に好ましくはフッ素;塩素;又は1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-3アルキルが挙げられ、更に好ましくは1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-3アルキルが挙げられ、特に好ましくはトリフルオロメチルが挙げられる。
【0070】
式(1)で表される化合物の1つの態様としては、(A)が挙げられる。
(A)
nが、0、1又は2であり;
が、複数ある場合は各々独立して、ハロゲン又はC1-6アルキル(該アルキルは、各々独立して、同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよい)であり;
及びRが、各々独立して、C1-6アルキルであり;
が、水素原子であり;
mが、1であり;
が、6員のヘテロアリール(該ヘテロアリールは、ハロゲン;同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;及び同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルコキシからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)であり;
及びRが、各々独立して、水素原子、重水素原子又はC1-4アルキルである、
化合物又はその製薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0071】
式(1)で表される化合物の1つの態様としては、(A’)が挙げられる。
(A’)
、R、R、R、R、R、R、m及びnが、前記(A)と同義である、式(1’)で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0072】
式(1)で表される化合物の1つの態様としては、(B)が挙げられる。
(B)
nが、0であり;
及びRが、各々独立して、C1-6アルキルであり;
が、水素原子であり;
mが、1であり;
が、ピリジル(該ピリジルは、ハロゲン;同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;及び同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルコキシからなる群から選択される、同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)であり;
及びRが、各々独立して、水素原子、重水素原子又はC1-4アルキルである、
化合物又はその製薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0073】
式(1)で表される化合物の1つの態様としては、(B’)が挙げられる。
(B’)
、R、R、R、R、R、m及びnが、前記(B)と同義である、式(1’)で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0074】
式(8)で表される化合物の1つの態様としては、(a)が挙げられる。
(a)
が、0、1又は2であり;
1aが、複数ある場合は各々独立して、ハロゲン又はC1-6アルキル(該アルキルは、各々独立して、同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよい)であり;
2a及びR3aが、各々独立して、C1-6アルキルであり;
4aが、水素原子であり;
が、1であり;
5aが、式(9)であり;
6a及びR7aが、各々独立して、水素原子、重水素原子又はC1-4アルキルであり;
8aが、ハロゲン;同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキル;又は同一又は異なる1~5個のハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルコキシである、
化合物又はその塩が挙げられる。
【0075】
式(8)で表される化合物の1つの態様としては、(a’)が挙げられる。
(a’)
1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6a、R7a、R8a、m及びnが、前記(a)と同義である、式(8’)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0076】
式(8)で表される化合物の1つの態様としては、(b)が挙げられる。
(b)
が、0であり;
2a及びR3aが、各々独立して、C1-6アルキルであり;
4aが、水素原子であり;
が、1であり;
5aが、式(9)であり;
6a及びR7aが、各々独立して、水素原子、重水素原子又はC1-4アルキルであり;
8aが、1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルキル又は1~5個のフッ素で置換されていてもよいC1-4アルコキシある、
化合物又はその塩が挙げられる。
【0077】
式(8)で表される化合物の1つの態様としては、(b’)が挙げられる。
(b’)
2a、R3a、R4a、R5a、R6a、R7a、R8a、m及びnが、前記(b)と同義である、式(8’)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0078】
「製薬学的に許容される塩」としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。例えば、酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;クエン酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、para-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。また、塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩等の無機塩基塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン]、tert-ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジベンジルエチルアミン等の有機塩基塩等が挙げられる。さらに、「製薬学的に許容される塩」としては、アルギニン、リジン、オルニチン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩基性アミノ酸又は酸性アミノ酸とのアミノ酸塩も挙げられる。
【0079】
出発原料及び中間体は、塩を形成していてもよい。出発原料及び中間体の塩として、好ましくは慣用の無毒性塩である。それらとしては、有機酸塩(例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ギ酸塩、para-トルエンスルホン酸塩等)及び無機酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等)のような酸付加塩;アミノ酸(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等)との塩;アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等)等の金属塩;アンモニウム塩;有機塩基塩(例えば、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン塩等)等の他、当業者が適宜選択することができる。
【0080】
以下に本発明の製造方法を説明する。なお、以下に記載のない出発原料は、市販されている又は当業者に公知の方法若しくはそれに準じた方法に従い製造することができる。
【0081】
製造方法1
【化21】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、m及びnは、項1と同義であり、X、Xは、項2と同義である。)
【0082】
工程1:
化合物a4は、適当な塩基存在下又は非存在下、適当な溶媒中で化合物a1と化合物a2とを反応させ、更に化合物a3を反応させることにより製造することができる。本工程は、ワンポットで行うこともできる。また、化合物を反応させる順番を逆にすることもでき、化合物a1と化合物a3を反応させ、更に化合物a2を反応させ、化合物a4を製造することもできる。
塩基としては、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の無機塩基;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DABCO(1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン)等の有機塩基等が挙げられ、好ましくはジイソプロピルエチルアミン、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。また、化合物a2を過剰に使用する場合は塩基を用いなくてもよい。
溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、アセトニトリル等が挙げられ、好ましくはN-メチルピロリドン等が挙げられる。
反応時間は、化合物a1と化合物a2とを反応させる工程及びその後の化合物a3を反応させる工程それぞれにおいて、通常10分から30時間であり、好ましくは2時間から25時間である。
反応温度は、化合物a1と化合物a2とを反応させる工程及びその後の化合物a3を反応させる工程それぞれにおいて、通常0℃から溶媒の沸点までであり、好ましくは60℃から130℃である。
【0083】
工程2:
化合物(1)は、適当な還元条件下、適当な溶媒中で化合物a4のニトロを還元し、適当な触媒存在下、適当な溶媒中でギ酸又はギ酸等価体を反応させて環化を行うことにより製造することができる。本工程は、ワンポットで行うこともできる。また、本工程は、ニトロの還元により生じるフェニレンジアミン化合物(環化前駆体)を単離した後に、環化することもできる。
還元条件としては、通常の有機合成反応で用いられるニトロの還元条件が挙げられ、例えば、パラジウム-炭素、硫黄で被毒された白金炭素等による水素添加条件下での接触還元;亜鉛、鉄、スズ等による金属還元;水素化アルミニウムリチウム等によるヒドリド還元等が挙げられる。還元条件として、亜鉛を用いた金属還元を行う場合、臭化リチウム、塩化リチウム、クロロトリメチルシラン等の酸化被膜除去剤を共に用いることが好ましい。また、反応の前処理として希塩酸や酢酸で亜鉛表面を洗浄し、乾燥したものを使用してもよい。
還元反応に用いる溶媒としては、それぞれの還元条件で通常用いられる溶媒が挙げられる。接触還元の場合、例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル等が挙げられる。金属還元の場合、例えば、テトラヒドロフラン、酢酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。ヒドリド還元の場合は、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。接触還元を行う際には、還元力の調整や化合物a4の還元により生じるフェニレンジアミン化合物の安定性保持のために、塩酸や酢酸等の添加剤を使用することができる。
還元反応の反応時間は、通常10分から24時間であり、好ましくは10分から5時間である。
還元反応の反応温度としては、通常0℃から溶媒の沸点までであり、好ましくは0℃から65℃である。
環化条件としては、還元が終了した反応溶液にギ酸又はギ酸等価体を加えてもよいし、還元条件にギ酸又はギ酸等価体を加えて還元と環化反応を分けることなく行うこともできる。
ギ酸等価体としては、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル等のオルトギ酸エステルが挙げられ、より好ましくはオルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル等が挙げられる。
触媒としては、ギ酸、酢酸等の有機酸;イッテルビウムトリフラート等のルイス酸;塩酸、硫酸等の無機酸等が挙げられ、好ましくはギ酸等が挙げられる。
溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒が挙げられ、好ましくはメタノール、エタノール等が挙げられる。また、前記触媒又はギ酸等価体として用いているギ酸又はオルトギ酸エステル等を溶媒として用いることも可能である。
環化反応の反応時間は、通常10分から24時間であり、好ましくは5時間から16時間である。
環化反応の反応温度は、通常0℃から溶媒の沸点までであり、好ましくは10℃から65℃である。
【0084】
製造方法2
式(1)で表される化合物は、例えば下記の方法によっても製造することができる。
【化22】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、m及びnは、項1と同義であり、X及びXは、項2と同義である。)
【0085】
工程3:
化合物a5は、化合物a1と化合物a2から工程1に記載の方法に準じて製造することができる。
【0086】
工程4:
化合物a6は、化合物a5から工程2に記載の方法に準じて製造することができる。
【0087】
工程5:
式(1)で表される化合物は、化合物a6と化合物a3から工程1に記載の方法に準じて製造することができる。
【実施例
【0088】
以下に本発明を、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び参考例に限定されるものではない。
【0089】
化合物の同定は水素核磁気共鳴吸収スペクトル(H-NMRスペクトル)、高速液体クロマト質量分析計;LCMS等によって行った。
【0090】
高速液体クロマト質量分析計;LCMSの測定条件は、以下の通りであり、観察された質量分析の値[MS(m/z)]をM+Hで、保持時間(分)をTで示す。
MS detector:ACQITY SQD
HPLC:ACQITY UPLC
カラム:ACQITY BEH C18 1.7μm 2.1×50mm
移動層:A液;0.05%ギ酸水溶液、B液;アセトニトリル
グラジエント条件:
0.0-1.3分;A/B=90:10~1:99
1.3-1.5分;A/B=1:99
1.5-2.0分;A/B=90:10
流速:0.75mL/分
測定波長:254nm
【0091】
化合物のHPLC面積百分率は以下の条件で測定した値を用いた。
HPLC:ポンプ;Shimadzu30Aseries、モニター;Shimadzu20Aseries
カラム:Kinetex 1.7μm C18 100A(100×2.1mm)
移動層:A液;0.05%トリフルオロ酢酸/水、B液;0.05%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル
グラジエント条件:
0-1分;A/B=100:0
1-9分;A/B=100:0~10:90
9-13分;A/B=10:90
流速:0.3mL/分
測定波長:220nm又は240nm
カラム温度:40℃
【0092】
以下の実施例及び参考例において、記載の簡略化のために次の略号を用いることもある。
J:結合定数、s:一重線、d:二重線、t:三重線、dd:二重線の二重線、m:多重線、brs:幅広い一重線。
【0093】
実施例Ex1
2-メチル-1-((2-ニトロ-5-((5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)アミノ)プロパン-2-オールの製造
【化23】
【0094】
合成法1-1:
窒素雰囲気下、1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オール(16.65g)及び炭酸水素ナトリウム(6.68g)のN-メチルピロリドン(50g)溶液を120℃に昇温し、3-フルオロ-4-ニトロフェノール(25g)のN-メチルピロリドン(75g)溶液を滴下した。120℃で4時間撹拌後、室温まで冷却し、反応液に2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン(31.53g)及び炭酸カリウム(37.39g)を加え、100℃で4時間撹拌した。75℃に冷却後、水(125g)加え分液後、50℃に冷却しメタノール(37.5g)を加え7℃に冷却した。7℃で2時間撹拌後、水(50g)を滴下し、更に2時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、冷却した67%メタノール水溶液(56g)で2回洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物を得た(55.27g、収率93.5%)。
HPLC面積百分率:99.7%(254nm)
1H-NMR (CDCl3,400 MHz) δ:8.55-8.43 (m, 2H), 8.26 (d, J = 9.4 Hz, 1H), 7.97 (dd, J = 8.6, 2.4 Hz, 1H), 7.09 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.71 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.42 (dd, J = 9.4, 2.4 Hz, 1H), 3.26 (d, J = 5.5 Hz, 2H), 1.37 (s, 6H).
【0095】
合成法1-2:
窒素雰囲気下、1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オール(187.3g)及びジイソプロピルエチルアミン(600.1g)のN-メチルピロリドン(370g)溶液を120℃に昇温し、3-フルオロ-4-ニトロフェノール(300g)のN-メチルピロリドン(900g)溶液を滴下した。120℃で7時間撹拌後、室温まで冷却し、反応液に2-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン(561.0g)及び炭酸カリウム(792.2g)を加え、100℃で15時間撹拌した。75℃に冷却後、水(1500g)加え分液後、25℃に冷却しイソプロパノール(600g)と水(1200g)を加え0℃に冷却し、1時間保温した。結晶の析出を確認後、水(1200g)を加え、20時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、冷却した33%イソプロパノール水溶液(900g)で2回洗浄し、減圧乾燥して、標記化合物を得た(592.2g、収率83.4%)。
【0096】
実施例Ex2
2-メチル-1-(6-{[5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)プロパン-2-オールの製造
【化24】
【0097】
合成法2-1:
窒素雰囲気下、臭化リチウム(18.95g)のメタノール(162g)溶液に亜鉛末(47.54g)、メタノール(108g)を加え、実施例1の化合物(54g)のメタノール(270g)溶液とギ酸(40.16g)を30℃以下で滴下した。20℃で1時間撹拌後、オルトギ酸トリメチル(77.16g)及びギ酸(20.08g)を加え、20℃で18時間撹拌した。反応液を45℃に加温し1時間撹拌後、亜鉛残渣をろ過し、温メタノール(162g)で2回洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮し、酢酸イソプロピル(540g)を加え減圧濃縮した。得られた濃縮溶液に酢酸イソプロピル(627g)及び水(540g)を加え、75℃で分液した。有機層を23%クエン酸三ナトリウム水溶液(702g)、7%炭酸水素ナトリウム水溶液(581g)、水(540g)でそれぞれ75℃で分液後、減圧濃縮した。室温に冷却し1時間保温後、析出した結晶をろ取し、酢酸イソプロピル(108g)で洗浄後、減圧乾燥して標記化合物の粗結晶を得た(48.38g、収率94.7%)。得られた粗結晶(47g)をイソプロパノールで再結晶し、標記化合物を得た(44.33g、再結晶の収率94.3%)。
HPLC面積百分率:99.9%(220nm)
1H-NMR (CD3OD, 400 MHz) δ:8.44-8.40 (m, 1H), 8.19 (s, 1H), 8.08 (dd, J = 8.8, 2.2 Hz, 1H), 7.71 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.50 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.12 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.08 (dd, J = 8.7, 2.2 Hz, 1H), 4.20 (s, 2H), 1.21 (s, 6H).
【0098】
合成法2-2:
窒素雰囲気下、実施例1の化合物(100mg)のエタノール(0.5g)溶液に3%プラチナサルファイテッドカーボン(含水)(10mg)と濃塩酸(136mg)を加え、反応容器内部を水素に置換後、室温で7時間撹拌した。反応容器内部を窒素に置換後、オルトギ酸トリメチル(764μL)を加え、室温で3時間、50℃で1時間撹拌後、セライトろ過し、エタノールで洗浄した。ろ液を減圧濃縮後、酢酸イソプロピルと炭酸水素ナトリウム水溶液で分液後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、標記化合物の粗結晶を得た(83.5mg)。
【0099】
合成法2-3:
実施例1の化合物(0.50g)のメタノール(6.7mL)溶液にオルトギ酸トリメチル(3.7mL)、ギ酸(0.52mL)及び亜鉛末(0.44g)を加え、70℃で2時間加熱撹拌した。反応混合物をセライト濾過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた残渣を酢酸エチルに溶解させ、ロッシェル塩水溶液と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。濃縮して得られる粗結晶をヘキサン/酢酸エチル(1/5)を用いた再結晶を行い、標記化合物(0.33g)を得た。
【0100】
参考例RE1
【化25】
【0101】
3-[(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アミノ]-4-ニトロフェノール(化合物Q1)の製造
窒素雰囲気下、1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オール(15.6g)及びジイソプロピルエチルアミン(30.9g)のN-メチルピロリドン(25g)溶液を120℃に昇温し、3-フルオロ-4-ニトロフェノール(25g)のN-メチルピロリドン(91g)溶液を滴下した。120℃で7時間撹拌後、室温まで冷却した反応溶液を1mol/L塩酸(1041g)に滴下し、室温で1時間撹拌した。析出した結晶をろ過し、水(100g)で3回洗浄後、減圧乾燥して標記化合物を得た(29.3g、収率81.4%)。
HPLC面積百分率:99.8%(254nm)
1H-NMR (DMSO-d6,400 MHz) δ:10.75 (s, 1H), 8.47 (t, J = 5.0 Hz, 1H), 7.97 (d, J = 9.4 Hz, 1H), 6.20 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.17 (dd, J = 9.4, 2.4 Hz, 1H), 4.82 (s, 1H), 3.13 (d, J = 5.0 Hz, 2H), 1.20 (s, 6H).
【0102】
1-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-1H-ベンズイミダゾール-6-オール(化合物Q2)の製造
窒素雰囲気下、化合物Q1(5g)のエタノール(50g)溶液に臭化リチウム(1.9g)、亜鉛末(7.2g)及びオルトギ酸トリメチル(58.6g)を加え、ギ酸(10.2g)を室温で滴下し、3時間撹拌した。反応溶液をセライトろ過し、ろ液を濃縮後、得られた残渣をアミノシリカゲル(50g)上に充填しクロロホルム/メタノール(1L/250mL)で溶出させた。得られたろ液を減圧濃縮し、析出した固体をイソプロパノール(25g)で再結晶し、標記化合物を得た(3.5g、収率76.3%)。
HPLC面積百分率:100.0%(254nm)
1H-NMR (DMSO-d6,400 MHz) δ:9.20 (br s, 1H), 7.88 (s, 1H), 7.38 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.91 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 6.66 (dd, J = 8.6, 2.2 Hz, 1H), 4.74 (br s, 1H), 4.00 (s, 2H), 1.09 (s, 6H).
【0103】
2-メチル-1-(6-{[5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}-1H-ベンズイミダゾール-1-イル)プロパン-2-オール(参考例RE-3)の製造
アルゴン雰囲気下、化合物Q2(1.10kg)のN,N-ジメチルホルムアミド(31.4kg)溶液に炭酸セシウム(2.61kg)と2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン(1.14kg)を加え、60℃に昇温し25時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却後、水(16.5kg)と酢酸エチル(7.93kg)、トルエン(6.68kg)を加え分液した。分液後の水層に塩(2.2kg)加え、撹拌後、酢酸エチル(1.98kg)とトルエン(3.81kg)を加え、分液抽出しこの操作を2回繰り返した。得られた有機層を併せた後、減圧濃縮し、標記化合物の粗結晶を得た(1.11kg、収率59.5%)。得られた粗結晶を酢酸エチル(20.0kg)とヘキサン(3.77kg)で再結晶し、標記化合物を得た(0.97kg、再結晶の収率87.3%)。
HPLC面積百分率:99.7%(254nm)
【0104】
実施例Ex3~6
対応する出発原料を用いて、前記実施例Ex1に準じた方法により、下表に示す実施例Ex3~6の化合物を製造した。
【表1】
【0105】
実施例Ex7~10
対応する出発原料を用いて、前記実施例Ex2に準じた方法により、下表に示す実施例Ex7~10の化合物を製造した。
【表2】
【0106】
参考例RE2~16
対応する出発原料を用いて、前記参考例RE1に準じた方法により、下表に示す参考例RE2~16の化合物を製造した。
【表3】
【表4】
【表5】
【0107】
実施例Ex1、Ex2及び参考例RE1に準じた方法により、下表の化合物を製造できる。
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明により、保護基の着脱工程がなく、反応工程数が短いベンズイミダゾール誘導体の製造方法を提供することができる。