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特許7094950抗CD19抗体とBCL-2阻害剤との組み合わせおよびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】抗CD19抗体とBCL-2阻害剤との組み合わせおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220627BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220627BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20220627BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220627BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220627BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61K39/395 N
A61P35/00
A61K31/496
C07K16/28
C12N15/13
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2019522273
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2017077654
(87)【国際公開番号】W WO2018078123
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】16196184.2
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005432
【氏名又は名称】モルフォシス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】エンデル,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ペトロプーロス,コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】ケレメン,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ボクスハマー,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】リュケルト,マルクス
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/024097(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/024095(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/130585(WO,A1)
【文献】Seminars in Oncology,2016年04月01日,Vol. 43, No. 2, pp.280-290
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
C07K 16/28
C12N 15/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病の処置であって、CD19に特異的な抗体がベネトクラクスと組み合わせて用いられる処置のための医薬の製造における、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域および配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む、CD19に特異的な抗体の使用
【請求項2】
請求項1に記載の使用において、前記抗体は、ADCC活性を有することを特徴とする使用
【請求項3】
請求項1または2に記載の使用において、前記抗体は、配列

を含む可変重鎖および配列

を含む可変軽鎖を含むことを特徴とする使用
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の使用において、前記抗体は、配列

を含む重鎖定常ドメインを含むことを特徴とする使用
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の使用において、前記抗体は、配列

を含む軽鎖定常ドメインを含むことを特徴とする使用
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の使用において、前記CD19に特異的な抗体およびベネトクラクスは、異なる医薬組成物中に製剤化されたものであることを特徴とする使用
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の使用において、前記CD19に特異的な抗体およびベネトクラクスは、別々に投与されることを特徴とする使用
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の使用において、
(a)ベネトクラクスは、前記CD19に特異的な抗体の投与前に投与される;または
(b)前記CD19に特異的な抗体は、ベネトクラクスの投与前に投与される
ことを特徴とする使用
【請求項9】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の使用において、前記CD19に特異的な抗体およびベネトクラクスは、同時に投与されることを特徴とする使用
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の使用において、前記CD19に特異的な抗体およびベネトクラクスは、患者において両方の薬剤が同時に有効であるときに投与されることを特徴とする使用
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の使用において、慢性リンパ球性白血病の処のための医薬の製造における使用であることを特徴とする使用
【請求項12】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の使用において、急性リンパ芽球性白血病の処のための医薬の製造における使用であることを特徴とする使用
【請求項13】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の使用において、非ホジキンリンパ腫の処のための医薬の製造における使用であることを特徴とする使用
【請求項14】
請求項13に記載の使用において、前記非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫であることを特徴とする使用
【請求項15】
請求項13に記載の使用において、前記非ホジキンリンパ腫は、小リンパ球性リンパ腫であることを特徴とする使用
【請求項16】
請求項13に記載の使用において、前記非ホジキンリンパ腫は、粘膜関連リンパ組織リンパ腫であることを特徴とする使用
【請求項17】
請求項13に記載の使用において、前記非ホジキンリンパ腫は、辺縁帯リンパ腫であることを特徴とする使用
【請求項18】
請求項13に記載の使用において、前記非ホジキンリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫であることを特徴とする使用
【請求項19】
請求項13に記載の使用において、前記非ホジキンリンパ腫は、バーキットリンパ腫であることを特徴とする使用
【請求項20】
請求項13に記載の使用において、前記非ホジキンリンパ腫は、マントル細胞リンパ腫であることを特徴とする使用
【請求項21】
非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病の処置に用いるための組み合わせ医薬であって、当該医薬は:
(i)配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域および配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む、CD19に特異的な抗体;および
(ii)ベネトクラクス
を含むことを特徴とする組み合わせ医薬。
【請求項22】
請求項21に記載の組み合わせ医薬において、前記抗体は、ADCC活性を有することを特徴とする組み合わせ医薬。
【請求項23】
請求項21または22に記載の組み合わせ医薬において、前記抗体は、配列

を含む可変重鎖および配列

を含む可変軽鎖を含むことを特徴とする組み合わせ医薬。
【請求項24】
請求項21乃至23の何れか1項に記載の組み合わせ医薬において、前記抗体は、配列

を含む重鎖定常ドメインを含むことを特徴とする組み合わせ医薬。
【請求項25】
請求項21乃至24の何れか1項に記載の組み合わせ医薬において、前記抗体は、配列

を含む軽鎖定常ドメインを含むことを特徴とする組み合わせ医薬。
【請求項26】
請求項21乃至25の何れか1項に記載の組み合わせ医薬において、当該医薬は、慢性リンパ球性白血病の処置に用いるためのものであることを特徴とする組み合わせ医薬。
【請求項27】
請求項21乃至25の何れか1項に記載の組み合わせ医薬において、当該医薬は、急性リンパ芽球性白血病の処置に用いるためのものであることを特徴とする組み合わせ医薬。
【請求項28】
請求項21乃至25の何れか1項に記載の組み合わせ医薬において、当該医薬は、非ホジキンリンパ腫の処置に用いるためのものであることを特徴とする組み合わせ医薬。
【請求項29】
請求項28に記載の組み合わせ医薬において、前記非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫であることを特徴とする組み合わせ医薬。
【請求項30】
請求項28に記載の組み合わせ医薬において、前記非ホジキンリンパ腫は、小リンパ球性リンパ腫であることを特徴とする組み合わせ医薬。
【請求項31】
請求項28に記載の組み合わせ医薬において、前記非ホジキンリンパ腫は、粘膜関連リンパ組織リンパ腫であることを特徴とする組み合わせ医薬。
【請求項32】
請求項28に記載の組み合わせ医薬において、前記非ホジキンリンパ腫は、辺縁帯リンパ腫であることを特徴とする組み合わせ医薬。
【請求項33】
請求項28に記載の組み合わせ医薬において、前記非ホジキンリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫であることを特徴とする組み合わせ医薬。
【請求項34】
請求項28に記載の組み合わせ医薬において、前記非ホジキンリンパ腫は、バーキットリンパ腫であることを特徴とする組み合わせ医薬。
【請求項35】
請求項28に記載の組み合わせ医薬において、前記非ホジキンリンパ腫は、マントル細胞リンパ腫であることを特徴とする組み合わせ医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病の処置のための、抗CD19抗体およびBCL-2阻害剤の医薬品の組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
B細胞は、液性免疫反応において大きい役割を果たすリンパ球である。B細胞は、ほとんどの哺乳動物の骨髄で産生され、循環血中のリンパ球プールの5~15%に相当する。B細胞の主な機能は、様々な抗原に対する抗体を作ることであり、B細胞は適応免疫系の本質的な成分である。
【0003】
免疫系の調節におけるその決定的な役割のため、B細胞の調節異常は、リンパ腫および白血病などの種々の障害に関連する。これらには、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)および急性リンパ芽球性白血病(ALL)が含まれる。
【0004】
NHLは、リンパ球から生じる不均一な悪性腫瘍である。米国(U.S.)における発生率は年間65,000人、死亡率は約20,000人と推定される(American Cancer Society,2006;およびSEER Cancer Statistics Review)。本疾患はすべての年齢で起こる可能性があり、通常の発症は40歳を超える成人から始まり、発生率は年齢と共に増加する。NHLは、リンパ節、血液、骨髄および脾臓に蓄積するリンパ球のクローン増殖を特徴とするが、主要な臓器の何れも関係し得る。病理学者および臨床医により使用される現在の分類体系は、NHLを前駆体および成熟B細胞新生物または成熟T細胞新生物にまとめた、腫瘍の世界保健機関(WHO)分類(World Health Organization Classification of Tumours)である。PDQは、現在、臨床試験への組み入れのためNHLを低悪性度(indolent)または高悪性度(aggressive)に分類している。低悪性度NHL群は、主に濾胞性亜型、小リンパ球性リンパ腫、MALT(粘膜関連リンパ組織)および辺縁帯からなり、低悪性度は、新たに診断されたB細胞NHL患者の約50%を包含する。高悪性度NHLは、主にびまん性大細胞型B細胞(DLBL、DLBCLまたはDLCL)(新たに診断された全患者の40%がびまん性大細胞を有する)、バーキット細胞およびマントル細胞と組織学的に診断された患者を含む。NHLの臨床経過はばらつきが大きい。臨床経過の主要な決定因子は、組織学的サブタイプである。大部分の低悪性度型のNHLは、不治の疾患と考えられる。患者は、最初に化学療法または抗体療法の何れかに反応するが、大部分は再発する。これまでの研究からは、早期介入による生存期間の改善が立証されていない。無症候性患者では、患者が症状を示すようになるか、または疾患の進行速度が加速していると思われるまで「経過観察を行う(watch and wait)」ことが容認される。本疾患は、時間経過と共により高悪性度の組織型に変化することがある。生存期間中央値は8~10年であり、低悪性度患者は、多くの場合、その疾患の処置段階において3つ以上の処置を受ける。症状を示す低悪性度NHL患者の初期処置は、歴史的に併用化学療法であった。最も多く使われている薬として、シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾン(CVP);またはシクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチン、プレドニゾン(CHOP)が挙げられる。患者の約70%~80%は、それらの初期化学療法に反応し、寛解の期間は2~3年程度持続する。最終的に患者の大半が再発する。抗CD20抗体、リツキシマブの発見および臨床使用により、反応率および生存率が著しく改善されている。大部分の患者の現在の標準治療は、リツキシマブ+CHOP(R-CHOP)またはリツキシマブ+CVP(R-CVP)である。インターフェロンがアルキル化剤と併用してNHLの初期処置として承認されているが、米国では使用が限定される。リツキシマブ療法は、いくつかのタイプのNHLにおいて有効であることが示されており、現在低悪性度(濾胞性リンパ腫)および高悪性度NHL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)の両方の第1選択治療として承認されている。しかしながら、抗CD20モノクローナル抗体(mAb)には、一次耐性(再発した低悪性度患者で50%の奏効)、獲得耐性(再処置時の奏効率50%)、稀な完全奏効(再発した母集団で完全奏効率2%)および再発パターンの継続を含め、かなりの限界がある。最後に、多くのB細胞はCD20を発現せず、したがって多くのB細胞障害は抗CD20抗体療法を用いて処置できない。
【0005】
NHLに加えて、B細胞の調節異常に起因するいくつかのタイプの白血病が存在する。慢性リンパ球性白血病(「慢性リンパ性白血病」または「CLL」とも呼ばれる)は、Bリンパ球の異常蓄積により引き起こされる成人白血病の一種である。CLLでは、悪性リンパ球は正常かつ成熟しているように見えることがあるが、効率的に感染に対処することができない。CLLは、成人における白血病の最も一般的な形態である。男性の方が女性よりもCLLを2倍発症しやすい。しかしながら、重要な危険因子は年齢である。新規症例の75%超が50歳を超える患者で診断される。毎年10,000例超が診断され、死亡数は年間ほぼ5,000例である(American Cancer Society,2006;およびSEER Cancer Statistics Review)。CLLは不治の疾患であるが、ほとんどの場合にゆっくりと進行する。CLLの多くの人は、何年間も通常の活動的な生活を送る。初期CLLは、一般に、その発症が遅いために処置されない。早期介入により生存時間または生活の質が改善されないと考えられるからである。代わりに、その状態が時間経過と共にモニターされる。初期のCLL処置は、正確な診断および疾患の進行に応じて様々である。CLL療法に使用される薬は数十存在する。併用化学療法レジメン、たとえばFCR(フルダラビン、シクロホスファミドおよびリツキシマブ)およびBR(イブルチニブおよびリツキシマブ)は、新たに診断されたCLLおよび再発したCLLの両方に効果的である。同種異系骨髄(幹細胞)移植は、そのリスクのためにCLLの第1選択治療として使用されることが稀である。
【0006】
もう1つのタイプの白血病は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)であり、急性リンパ性白血病とも呼ばれる。ALLは、骨髄における悪性の幼若白血球(リンパ芽球とも呼ばれる)の過剰産生および連続的増殖を特徴とする。「急性」は、循環血中のリンパ球(「芽球」)が未分化、未成熟状態であること、および疾患が急速に進行し、処置しないまま放置した場合、平均余命が数週間~数カ月であることを指す。ALLは小児期に最も多く見られ、発生率のピークは4~5歳である。12~16歳の小児は、他の年齢の小児よりALLで死亡しやすい。現在、小児ALLの少なくとも80%は治癒可能と考えられる。診断される症例は毎年4,000例未満であり、死亡数は年間ほぼ1,500である(American Cancer Society,2006;およびSEER Cancer Statistics Review)。
【0007】
ヒトCD19分子は、以下に限定されるものではないが、プレB細胞、発生初期のB細胞{すなわち、未成熟B細胞)、最終分化を経て形質細胞となる成熟B細胞および悪性B細胞など、ヒトB細胞の表面上に発現する構造的に異なる細胞表面受容体である。CD19は、大部分のプレB急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、B細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、通常の急性リンパ性白血病および一部のヌル細胞型急性リンパ芽球性白血病に発現する(Nadler et al,J.Immunol.,131:244-250(1983),Loken et al,Blood,70:1316-1324(1987),Uckun et al,Blood,71:13-29(1988),Anderson et al,1984.Blood,63:1424-1433(1984),Scheuermann,Leuk.Lymphoma,18:385-397(1995))。形質細胞上のCD19の発現から、CD19が多発性骨髄腫、形質細胞腫、ワルデンシュトレーム腫瘍などの分化したB細胞腫瘍上に発現し得ることがさらに示唆される(Grossbard et al.,Br.J.Haematol,102:509-15(1998);Treon et al,Semin.Oncol,30:248-52(2003))。
【0008】
したがって、CD19抗原は、非ホジキンリンパ腫(本明細書に記載の各サブタイプを含む)、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病の処置における免疫療法の標的となる。
【0009】
いくつかのCD19療法が示されてきた。CD3-ζおよび4-BB共刺激ドメインの両方を含む抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞が進行CLLの患者に投与された。その全体を援用するKalos et al.,T cells with Chimeric Antigen Receptors Have Potent Antitumor Effects and Can Establish Memory in Patients with Advanced Leukemia,Science Translational Medicine,vol.3,no.95(10 August 2011)。その全体を援用するSadelain et al.,The promise and potential pitfalls of chimeric antigen receptors,Current Opinion in Immunology,Elsevier,vol.21,no.2,2 April 2009にも、抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)が記載されている。しかしながら、Kalos et al.もSadelain et al.も、本明細書に例示されるようなBCL-2阻害剤と併用した、CD19に特異的な抗体を記載していない。
【0010】
非特異的B細胞リンパ腫におけるCD19抗体の使用は、何れもその全体を援用する国際公開第2007076950号パンフレット(米国特許第2007154473号明細書)において、考えられる併用相手の長いリスト内でイブルチニブの粗略な言及と共に考察されているが、本明細書に例示される抗体を教示しておらず、また本明細書に例示されるような非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病の処置における組み合わせの相乗効果も示唆していない。
【0011】
CLL、NHLおよびALLにおけるCD19抗体の使用は、その全体を援用するScheuermann et al.,CD19 Antigen in Leukemia and Lymphoma Diagnosis and lmmunotherapy,Leukemia and Lymphoma,Vol.18,385-397(1995)に記載されているが、本明細書に例示される組み合わせを示唆していない。
【0012】
CD19に特異的な別の抗体は、すべてその全体を援用する国際公開第2005012493号パンフレット(米国特許第7109304号明細書)、国際公開第2010053716号パンフレット(米国特許出願公開第12/266,999号明細書)(Immunomedics);国際公開第2007002223号パンフレット(米国特許第8097703号明細書)(Medarex);国際公開第2008022152号パンフレット(米国特許出願公開第12/377,251号明細書)および国際公開第2008150494号パンフレット(Xencor)、国際公開第2008031056号パンフレット(米国特許出願公開第11/852,106号明細書)(Medimmune);国際公開第2007076950号パンフレット(米国特許出願公開第11/648,505号明細書)(Merck Patent GmbH);国際公開第2009/052431号パンフレット(米国特許出願公開第12/253,895号明細書)(Seattle Genetics);ならびに国際公開第2010095031号パンフレット(米国特許出願公開第12/710,442号明細書)(Glenmark Pharmaceuticals)、国際公開第2012010562号パンフレットおよび国際公開第2012010561号パンフレット(International Drug Development)、国際公開第2011147834号パンフレット(Roche Glycart)ならびに国際公開第2012/156455号パンフレット(Sanofi)に記載されている。
【0013】
CD19に特異的な抗体および他の薬の組み合わせは、その全体を援用する国際公開第2010151341号パンフレット(米国特許出願公開第13/377,514号明細書)(The Feinstein Institute);米国特許第5686072号明細書(University of Texas)ならびに国際公開第2002022212号パンフレット(国際出願PCT/米国特許出願公開第01/29026号明細書)(IDEC Pharmaceuticals)、国際公開第2013/024097号パンフレット(米国特許出願公開第14/126,928号明細書)(MorphoSys AG)および国際公開第2013/024095号パンフレット(米国特許出願公開第14/127,217号明細書)(MorphoSys AG)に記載されている。
【0014】
いくつかのBCL-2阻害剤が市販されている。GDC-0199、ABT-199およびRG7601とも呼ばれるVENCLEXTA(商標)(ベネトクラクス)は、FDAに承認された試験により見出されたように、少なくとも1つの前治療を受けたことがある、17pを有する慢性リンパ球性白血病(CLL)の患者の処置に適応されるBCL-2阻害剤である。ベネトクラクスは、すべてその全体が参照により援用される米国特許第8,546,399号明細書および同第9,174,982号明細書に記載されている。
【0015】
抗癌剤の発見および開発における近年の進展にもかかわらず、CD19発現腫瘍に関係する癌の多くの形態は依然として予後不良である。したがって、そうした形態の癌を処置するための改良された方法が求められている。
【発明の概要】
【0016】
従来技術は、単独でも組み合わせでも、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病の処置における、例示した抗体およびベネトクラクスの組み合わせの相乗効果を示唆していない。
【0017】
一態様では、本開示は、CD19に特異的な抗体およびBCL-2阻害剤の相乗効果のある組み合わせに関する。こうした組み合わせは、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病などのB細胞悪性腫瘍の処置に有用である。
【0018】
インビトロモデルは、ある化合物または化合物の組み合わせがヒトにおいてどのように挙動するかを示唆すると考えられる。
【0019】
MEC-1細胞(DSMZ# ACC497)は、慢性B細胞白血病細胞株である。このインビトロモデルのMEC-1細胞は、本組み合わせがヒトの慢性リンパ性白血病(CLL)の処置においてどのように作用するかを示唆する。
【0020】
さらに、化合物がインビトロで組み合わされると、組み合わせが相加作用のみを有することが予想される。驚くべきことに、本発明者らは、CD19に特異的な特定の抗体およびベネトクラクスの組み合わせが、抗体およびベネトクラクス単独と比較してインビトロで相乗効果レベルの特異的な細胞殺傷に関与することを見出した。具体的には、本発明者らは、MOR00208およびベネトクラクスの組み合わせが、MEC-1細胞において、抗体およびベネトクラクス単独と比較してインビトロで相乗効果レベルの特異的な細胞殺傷に関与することを見出した。
【0021】
要約すると、例示した抗CD19抗体およびベネトクラクスの組み合わせは、CLLに関係するモデルにおいて相乗的に挙動した。CLLはB細胞関連障害であり、かつCD19がB細胞上に高度に発現するため、例示した組み合わせは、同じ作用機序を有すると考えられ、他のB細胞関連障害、たとえばALLおよびNHLの処置でも相乗的に挙動するはずである。
【0022】
したがって、例示したCD19に特異的な抗体およびベネトクラクスの組み合わせは、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病のヒトの処置において効果的であるはずである。例示したCD19に特異的な抗体およびベネトクラクスの組み合わせの予想される有効性は、臨床試験において確認されるであろう。
【0023】
ベネトクラクスおよび他のBCL-2阻害剤は、抗アポトーシスB細胞リンパ腫-2(Bcl-2)タンパク質を阻害して、細胞のプログラム細胞死を引き起こすことにより作用するため、ベネトクラクスおよび他のBCL-2阻害剤の作用機序は類似していることから、例示した抗CD19抗体およびベネトクラクス以外のBCL-2阻害剤の組み合わせで非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病を有するヒトを処置したときも相乗作用が見られるはずであると考えられる。
【0024】
例示した抗CD19抗体および他の抗CD19抗体はCD19に結合するため、任意の抗CD19抗体およびBCL-2阻害剤、たとえばベネトクラクスの組み合わせで非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病を有するヒトを処置するときも相乗作用が見られるはずであると考えられる。
【0025】
本開示の態様は、CD19に特異的な抗体が配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域および配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域ならびにベネトクラクスを含む組み合わせを含む。実施形態では、この組み合わせは、相乗効果を有する。好ましい態様では、この組み合わせは、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病の処置に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、MEC-1細胞株におけるMOR00208およびベネトクラクスの組み合わせの細胞毒性を示す。MEC-1細胞は、ベネトクラクスで24時間にわたり前処理した。
図2図2は、MEC-1細胞株におけるMOR00208およびベネトクラクスの組み合わせの細胞毒性を示す。MEC-1細胞は、ベネトクラクスで24時間にわたり前処理した。
図3図3は、MEC-1細胞株におけるMOR00208およびベネトクラクスの組み合わせの細胞毒性を示す。MEC-1細胞は、ベネトクラクスで24時間にわたり前処理した。
図4図4は、MOR00208の可変ドメインのアミノ酸配列を示す。
図5図5は、MOR00208のFc領域のアミノ酸配列を示す。
図6図6は、MEC-1細胞株におけるMOR00208およびベネトクラクスのChou-Talayの併用係数(Combination Index)曲線を示す。
図7図7は、MEC-1細胞株におけるMOR00208およびベネトクラクスのChou-Talayの併用係数曲線を示す。
図8図8は、MEC-1細胞株におけるMOR00208およびベネトクラクスのChou-Talayの併用係数曲線を示す。
図9図9は、ABT-199と併用したMOR00208が、s.c.Toledo SCIDマウスモデルにおいて、何れかの単独療法と比較して腫瘍成長の優れた抑制を示したことを示す。群平均値±平均値の標準誤差(SEM)を図示する。アスタリスクは、MOR0028単独処置またはそれぞれのABT-199単独処置に対する組み合わせ処置の腫瘍倍加時間の統計的有意性を示す:*p値<0.05、**p値<0.01および****p値<0.0001。処置は、腫瘍注射から23日後の腫瘍容積中央値266mm(123~406mm)でランダム化時に開始した。MOR00208(11mg/kg)は、腹腔内注射(i.p.)により週2回投与した。ABT-199(20または40mg/kg)は、毎日経口(p.o.)投与した。
図10図10は、ABTと併用したMOR00208が、s.c.Toledo SCIDマウスモデルにおいて、何れかの単独療法と比較して腫瘍成長の優れた生存率中央値を示したことを示す。カプランマイヤー曲線は、ランダム化から人道的エンドポイント(腫瘍容積2000mm)までの生存率を図示する。処置は、腫瘍注射から23日後の腫瘍容積中央値266mm(123~406mm)でランダム化時に開始した。MOR00208(11mg/kg)は、腹腔内注射(i.p.)により週2回投与した。ABT-199(20または40mg/kg)は、毎日経口(p.o.)投与した。
【発明を実施するための形態】
【0027】
「相乗作用」、「協力作用」または「相乗的」は、組み合わせの予想される相加作用を超えるものを意味する。インビトロ研究に関して、ある組み合わせの「相乗作用」、「協力作用」または「相乗的」作用は、本明細書ではChou et al.,Clarke et al.および/またはWebb et al.の方法により決定される。その全体を援用するTing-Chao Chou,Theoretical Basis,Experimental Design,and Computerized Simulation of Synergism and Antagonism in Drug Combination Studies,Pharmacol Rev 58:621-681(2006)を参照されたい。さらにその全体を援用するClarke et al.,Issues in experimental design and endpoint analysis in the study of experimental cytotoxic agents in vivo in breast cancer and other models,Breast Cancer Research and Treatment 46:255-278(1997)も参照されたい。さらにその全体を援用するWebb,J.L.(1963)Enzyme and Metabolic Inhibitors,Academic Press,New Yorkも参照されたい。
【0028】
「抗体」という用語は、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEなどの任意のアイソタイプを含むモノクローナル抗体を意味する。IgG抗体は、ジスルフィド結合により連結された2つの同一重鎖および2つの同一軽鎖からなる。重鎖および軽鎖は、それぞれ定常領域および可変領域を含む。各可変領域は、抗原のエピトープへの結合を主に担う「相補性決定領域」(「CDR」)または「超可変領域」と呼ばれる3つのセグメントを含む。それらは、N末端から順に番号が付されCDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれる。CDRの外側の可変領域のより高度に保存された部分は、「フレームワーク領域」と呼ばれる。「抗体フラグメント」は、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab’、F(ab’)2フラグメントまたはそれぞれCDRおよびフレームワーク領域を含む少なくとも1つの可変重鎖または可変軽鎖を含む他のフラグメントを意味する。
【0029】
ヒトのBCL2遺伝子によりコードされるBcl-2(B細胞リンパ腫2)は、(アポトーシス促進性)アポトーシスの誘導または(抗アポトーシス性)アポトーシスの阻害の何れかにより、細胞死(アポトーシス)を調節するレギュレータータンパク質のBcl-2ファミリーの最初のメンバーである。Bcl-2は、NCBI遺伝子番号596により参照される。Bcl-2は、特に重要な抗アポトーシスタンパク質と考えられており、したがってオンコジーンに分類される。Bcl-2の名称は、Bcl-2が、濾胞性リンパ腫の染色体14および18が関与する染色体転座において最初に記載された一連のタンパク質の2番目のメンバーであるため、B細胞リンパ腫2に由来する。完全なゲノムデータが利用可能な多くの哺乳動物において、オーソログ(マウスのBcl2など)が同定されている。
【0030】
「BCL-2阻害剤」は、抗アポトーシス性B細胞リンパ腫-2(Bcl-2)タンパク質を阻害し、細胞のプログラム細胞死を引き起こすことにより機能する薬剤のクラスである。BCL-2阻害剤は、ベネトクラクスを含む。ベネトクラクスは、AbbvieおよびGenentech(商標名VENCLEXTA(商標)、GDC-0199、ABT-199およびRG7601としても知られる)により販売されている。ベネトクラクスは、現在、FDAに承認された試験により見出されたように、少なくとも1つの前治療を受けたことがある、17p欠失を有する慢性リンパ球性白血病(CLL)の患者の処置用というラベルが貼付されている。ベネトクラクスの式は、4-(4-{[2-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル]メチル}-1-ピペラジニル)-N-({3-ニトロ-4-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルメチル)アミノ]フェニル}スルホニル)-2-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イルオキシ)ベンズアミドであり、以下の構造を有する。
【0031】
「ベネトクラクス」、「ABT」および「ABT-199」は、本明細書において同義語として使用される。
【0032】
他のBCL-2阻害剤として以下が挙げられる:
ゲナセンス(Genasense):アンチセンスオリゴヌクレオチド薬剤ゲナセンス(G3139)は、Bcl-2を標的とするようにGenta Incorporatedにより開発された。アンチセンスDNA鎖またはRNA鎖は、非コードであり、コード鎖と相補的である(それぞれRNAまたはタンパク質を産生するための鋳型である)。アンチセンス薬剤は、mRNAとハイブリダイズして不活性化し、タンパク質が形成されないようにするRNAの短い配列である。ヒトリンパ腫細胞増殖(t(14;18)転座を有する)は、Bcl-2 mRNAの開始コドン領域を標的とするアンチセンスRNAにより阻害することができる。インビトロ研究から、Bcl-2 mRNAの最初の6コドンと相補的であるゲナセンスの同定に至った。これらは、リンパ腫の第I/II相試験において好成績を示した。大きい第III相試験が2004年に開始された。2016年時点で、本薬剤は、承認されておらず、その開発企業は倒産した。
【0033】
ABT-737およびABT-263:2000年代半ばに、Abbott Laboratoriesは、ABT-737として知られるBcl-2、Bcl-xLおよびBcl-wの新規な阻害剤を開発した。この化合物は、これらのBcl-2ファミリータンパク質を標的とするが、A1またはMcl-1を標的としないBH3模倣小分子阻害剤(SMI)のグループの一部である。ABT-737は、Bcl-2、Bcl-xLおよびBcl-wに対するそのより高い親和性を考慮すると、これまでのBCL-2阻害剤より優れている。インビトロ研究から、B細胞悪性腫瘍を有する患者由来の初代細胞がABT-737に感受性があることが示された。動物モデルでは、ABT-737は、生存率を改善し、腫瘍退縮を引き起こし、高いパーセンテージのマウスを治癒する。患者の異種移植片を利用する前臨床試験では、ABT-737は、リンパ腫および他の血液癌の処置に有効性を示した。その好ましくない薬理学的特性のため、ABT-737は、臨床試験に適さない一方、その誘導体ABT-263は、小細胞肺癌(SCLC)細胞株に対して類似の活性を有し、臨床試験に入っている。
【0034】
「VH」は、抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域または抗体フラグメントを指す。「VL」は、抗体の免疫グロブリン軽鎖の可変領域または抗体フラグメントを指す。
【0035】
「CD19」という用語は、CD19として知られるタンパク質を指し、以下の同義語:B4、Bリンパ球抗原CD19、Bリンパ球表面抗原B4、CVID3、分化抗原CD19、MGC12802およびT細胞表面抗原Leu-12を有する。
【0036】
ヒトCD19は、下記のアミノ酸配列を有する。
【0037】
「MOR00208」は抗CD19抗体である。可変ドメインのアミノ酸配列は、図4に記載される。MOR00208の重鎖および軽鎖のFc領域のアミノ酸配列は、図5に示される。「MOR00208」および「XmAb 5574」は、図4および5に示される抗体を表す同義語として使用される。MOR00208抗体は、その全体を援用する米国特許出願公開第12/377,25号明細書に記載される。
【0038】
米国特許出願公開第12/377,25号明細書には、以下のような4G7 H1.52 Hybrid S239D/I332E/4G7 L1.155と命名された抗体が記載される(後にMOR00208と命名される)。
>4G7 H1.52 Hybrid S239D/I332E
>4G7 L1.155
【0039】
CD19に特異的な別の抗体は、その全体を援用する米国特許第7,109,30号明細書(Immunomedics);その全体を援用する米国特許出願公開第11/917,75号明細書(Medarex);その全体を援用する米国特許出願公開第11/852,10号明細書(Medimmune);その全体を援用する米国特許出願公開第11/648,50号明細書(Merck Patent GmbH);その全体を援用する米国特許第7,968,68号明細書(Seattle Genetics);およびその全体を援用する米国特許出願公開第12/710,44号明細書(Glenmark Pharmaceuticals)に記載される。
【0040】
「Fc領域」は、抗体の定常領域を意味し、ヒトではIgG1、2、3、4サブクラスまたは他の定常領域であり得る。ヒトFc領域の配列は、IMGT,Human IGH C-REGIONs,http://www.imgt.org/IMGTrepertoire/Proteins/protein/human/IGH/IGHC/Hu_IGHCallgenes.html(2011年5月16日に検索)で入手可能である。
【0041】
「RefmAb33」は、アミノ酸配列が以下の通りである抗体である。
Fc領域を含む重鎖:
Fc領域を含む軽鎖:
【0042】
RefmAb33はRSVに特異的であり、MOR00208と同じFc領域を共有するため、アイソタイプコントロールとして使用される。
【0043】
「組み合わせ」は、品目、たとえば抗体およびベネトクラクスなどの化合物の2つ以上を意味する。
【0044】
本開示は、記載された組み合わせを含む組み合わせ、医薬品および医薬組成物にさらに関する。本発明の組み合わせの2つの成分、たとえばCD19に特異的な抗体およびベネトクラクスは、物理的にまたは時間的に一緒に、同時に、別々にまたは続けて投与され得る。
【0045】
ベネトクラクスは、現在、経口摂取され、1日1回投与されるのが現状である。MOR00208は、現在、静脈内投与され、週1回または2週間に1回投与されるのが現状である。
【0046】
好ましくは、両方の薬剤の投与により、両方の薬剤が患者に同時に有効であり得る。たとえば、MOR208が週1回投与され、ベネトクラクスが1日1回投与される場合、両方の薬剤の活性物質が同時に患者に存在する。一実施形態では、ベネトクラクスは、CD19に特異的な抗体、たとえばMOR00208の投与前および/または別々に投与される。
【0047】
同時にとは、2つの成分が、両方の成分(薬剤)が同時に患者に有効であるときに投与されることを意味する。「協力作用」は、両方の薬剤が同時に患者に有効であることを意味する。
【0048】
一緒に投与するとは、同時に投与することを意味し得る。
【0049】
組み合わせの成分は、異なる医薬組成物中で製剤化され得る。医薬組成物は、有効な作用物質、たとえばヒトの治療に使用するための抗体を含む。医薬組成物は、許容可能キャリアまたは賦形剤を含み得る。
【0050】
「投与される」または「投与」は、以下に限定されるものではないが、たとえば、静脈内経路、筋肉内経路、皮内経路もしくは皮下経路または粘膜経路などの注射用形態による送達、たとえば吸入用の鼻スプレーもしくはエアロゾルとしての送達または摂取可能な溶液、カプセルもしくは錠剤としての送達を含む。
【0051】
化合物または組み合わせの「治療有効量」は、既定の疾患または障害およびその合併症の臨床症状を治癒させるか、軽減するか、または部分的に阻止するのに十分な量を指す。特定の治療目的に効果的である量は、被検体の疾患または傷害の重症度ならびに体重および全身状態によって異なる。適切な投与量の決定は、通常の実験を用いて数値のマトリックスを構築し、マトリックス内の様々な点を試験することにより達成され得ることが理解されるであろう。これらは、すべて訓練を受けた医師または臨床科学者の通常の技術の範囲内である。
【0052】
「交差競合」は、抗体または他の結合剤が標準的な競合結合アッセイにおいて他の抗体または結合剤のCD19への結合に干渉する能力を意味する。抗体または他の結合剤が別の抗体または結合分子のCD19への結合に干渉できる能力または程度と、したがってそれが本発明による交差競合とされ得るかどうかとは、標準的な競合結合アッセイを用いて決定することができる。1つの好適なアッセイは、表面プラズモン共鳴技術を用いて相互作用の程度を測定できるBiacore技術(たとえば、BIAcore 3000装置(Biacore,Uppsala,Sweden)の使用による)を使用するものである。交差競合を測定するための別のアッセイは、ELISA系アプローチを使用する。抗体をその交差競合に基づき「エピトープビニング」するためのハイスループットプロセスは、国際公開第2003/48731号パンフレットに記載される。
【0053】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合できるまたは他の方法で分子と相互作用できる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、一般に、アミノ酸または炭水化物もしくは糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面分子群からなり、特定の三次元構造特徴および特定の荷電特徴を有し得る。エピトープは、「リニア」または「コンフォメーショナル」であり得る。「リニアエピトープ」という用語は、タンパク質と相互作用分子(抗体など)との間の相互作用点のすべてがタンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線状に生じるエピトープを指す(連続的)。「コンフォメーショナルエピトープ」という用語は、不連続アミノ酸が三次元構造で集合したエピトープを指す。コンフォメーショナルエピトープでは、相互作用点は、タンパク質上の互いに離されたアミノ酸残基を横断して生じる。
【0054】
「同じエピトープに結合する」は、ある抗体または他の結合剤が、CD19および例示した抗体と同じエピトープに結合する能力を意味する。例示した抗体およびCD19に対する他の抗体のエピトープは、標準的なエピトープマッピング技術を用いて決定することができる。エピトープマッピング技術は、当該技術分野において周知であり、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66(Glenn E.Morris,Ed.,1996)Humana Press,Totowa,New Jerseyを含む。たとえば、リニアエピトープは、たとえば、タンパク質分子の一部に対応する大量のペプチドを固体支持体上に同時に合成し、ペプチドを依然として支持体に結合させたままペプチドを抗体と反応させることにより決定され得る。こうした技術は当該技術分野において公知であり、たとえば、米国特許第4,708,87号明細書;Geysen et al,(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8:3998-4002;Geysen et al,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:78-182;Geysen et al,(1986)Mol.Immunol.23:709-715に記載される。同様に、コンフォメーショナルエピトープも、たとえば、水素/重水素交換、X線結晶解析および二次元核磁気共鳴などにより、アミノ酸の空間構造を決定することによって容易に同定される。たとえば、Epitope Mapping Protocols,supraを参照されたい。タンパク質の抗原性領域も、たとえば、Oxford Molecular Groupから入手可能なOmiga version 1.0ソフトウェアプログラムを用いて計算されたものなど、標準的な抗原性およびハイドロパシープロットを用いて同定することができる。このコンピュータープログラムは、抗原性プロファイルの決定にHopp/Woods method、Hopp et al,(1981)Proc.Natl.Acad.Sci USA 78:3824-3828を、ハイドロパシープロットにKyte-Doolittle技術、Kyte et al,(1982)J.Mol.Biol.157:105-132を利用する。
【0055】
実施形態
本開示の態様は、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病の処置に使用される、CD19に特異的な抗体およびBCL-2阻害剤を含む組み合わせである。実施形態において本組み合わせは相乗的である。
【0056】
本明細書において、例示した抗CD19抗体およびベネトクラクスの組み合わせは、CLLに関係するインビトロモデルにおいて相乗的に挙動した。CLLはB細胞関連障害であり、CD19がB細胞上に高度に発現するため、例示した組み合わせは同じ作用機序を有するはずであり、他のB細胞関連障害、たとえばALLおよびNHLの処置でも相乗的に挙動するはずである。したがって、例示したCD19に特異的な抗体およびベネトクラクスの組み合わせは、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病のヒトの処置において効果的であるはずである。例示したCD19に特異的な抗体およびベネトクラクスの組み合わせの予想される有効性は、臨床試験において確認されるであろう。
【0057】
慢性B細胞白血病細胞株MEC-1細胞(DSMZ# ACC497)を試験した。このインビトロモデルのMEC-1細胞は、本組み合わせがヒトの慢性リンパ性白血病(CLL)の処置においてどのように作用するかを示唆する。Chouインデックスの値は、MOR00208およびベネトクラクス単独と比較して、MEC-1細胞の特異的殺傷においてMOR00208およびベネトクラクスの組み合わせの明らかな協力作用を示す。
【0058】
要約すると、例示した抗CD19抗体およびベネトクラクスの組み合わせは、CLLに関係するモデルにおいて相乗的に挙動する。
【0059】
したがって、例示したCD19に特異的な抗体およびベネトクラクスの組み合わせは、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病のヒトの処置において効果的であるはずである。
【0060】
ベネトクラクスおよび他のBCL-2阻害剤の作用機序は、類似しているため、例示した抗CD19抗体およびベネトクラクス以外のBCL-2阻害剤の組み合わせで非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病を有するヒトを処置するときも相乗作用が見られるはずであると考えられる。
【0061】
例示した抗CD19抗体および他の抗CD19抗体はCD19に結合するため、たとえば、すべてその全体を援用する米国特許出願公開第12/377,25号明細書(Xencor)、国際公開第2005012493号パンフレット、国際公開第2010053716号パンフレット(Immunomedics);国際公開第2007002223号パンフレット(Medarex);国際公開第2008022152号パンフレット(Xencor);国際公開第2008031056号パンフレット(Medimmune);国際公開第2007/076950号パンフレット(Merck Patent GmbH);国際公開第2009/052431号パンフレット(Seattle Genetics);および国際公開第2010095031号パンフレット(Glenmark Pharmaceuticals)に記載される任意の抗CD19抗体とB細胞リンパ腫-2(Bcl-2)タンパク質阻害剤との組み合わせを用いて、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病を有するヒトを処置するときも相乗作用が見られるはずであると考えられる。
【0062】
実施形態では、CD19に特異的な抗体は、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域および配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含む抗体と交差競合する抗体を含む。
【0063】
実施形態では、CD19に特異的な抗体は、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域および配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含む抗体と同じエピトープに結合する抗体を含む。
【0064】
実施形態では、CD19に特異的な抗体は、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域および配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含む。
【0065】
実施形態では、CD19に特異的な抗体は、細胞障害活性を有する。実施形態では、CD19に特異的な抗体は、ADCC誘導活性を有する定常領域を含む。実施形態では、CD19に特異的な抗体は、ADCCを誘導する。
【0066】
実施形態では、CD19に特異的な抗体は、ADCCを誘導し、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域および配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含む。
【0067】
実施形態では、CD19に特異的な抗体は、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域および配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域と、ADCC誘導活性を有する定常領域とを含む。
【0068】
実施形態では、CD19に特異的な抗体は、配列
の可変重鎖および配列
の可変軽鎖を含む。
【0069】
ある種の実施形態では、前記抗体は、配列
の重鎖定常ドメインを含む。
【0070】
実施形態では、CD19に特異的な抗体は、配列
の軽鎖定常ドメインを含む。
【0071】
実施形態では、BCL-2阻害剤は、ベネトクラクスである。
【0072】
実施形態では、組み合わせの成分、CD19に特異的な抗体およびベネトクラクスは、別々に投与される。一実施形態では、ベネトクラクスは、CD19に特異的な抗体の投与前に投与される。
【0073】
実施形態では、組み合わせの成分は、両方の成分(薬剤)が患者において同時に有効であるときに投与される。「協力作用」は、両方の薬剤が同時に患者において有効であることを意味する。実施形態では、組み合わせの成分は、物理的にまたは時間的に一緒に、同時に、別々にまたは続けて投与される。実施形態では、組み合わせの成分は同時に投与される。
【0074】
実施形態では、組み合わせは、医薬組成物である。実施形態では、組成物は、許容可能なキャリアを含む。実施形態では、組み合わせは、有効量で投与される。
【0075】
本開示の態様は、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病の処置のための、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域および配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含むCD19に特異的な抗体であって、ベネトクラクスとの相乗効果のある組み合わせで使用される抗体を含む。
【0076】
本開示の態様は、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病の処置のための、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域および配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含むCD19に特異的な抗体であって、ベネトクラクスと併用して使用される抗体を含む。一実施形態では、前記抗体は、ベネトクラクスと併用して投与される。別の実施形態では、前記抗体は、ベネトクラクスと併用して使用され、前記抗体およびベネトクラクスは、別々に投与される。さらなる実施形態では、前記抗体は、ベネトクスラクスより前に投与される。さらなる実施形態では、ベネトクラクスは、前記抗体より前に投与される。
【0077】
本開示の態様は、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病の処置のための、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域および配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含むCD19に特異的な抗体と、ベネトクラクスとの相乗効果のある組み合わせを含む。実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯、びまん性大細胞型B細胞、バーキット細胞およびマントル細胞からなる群から選択される。
【0078】
実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫である。実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、小リンパ球性リンパ腫である。実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、粘膜関連リンパ組織である。実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、辺縁帯リンパ腫である。実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、バーキットリンパ腫である。実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、マントル細胞リンパ腫である。
【0079】
実施形態では、組み合わせは、慢性リンパ球性白血病の処置のためのものである。実施形態では、組み合わせは、急性リンパ芽球性白血病の処置のためのものである。
【0080】
もう1つの態様は、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病の処置を必要とする個体の、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病を処置する方法であって、CD19に特異的な抗体およびBCL-2阻害剤の投与を含む方法を含む。本方法の実施形態では、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域および配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含む、CD19に特異的な抗体を含む。本方法の実施形態では、抗体は、例示したCD19に特異的な抗体を含む。本方法の実施形態では、BCL-2阻害剤は、ベネトクラクスである。
【0081】
もう1つの態様は、ベネトクラクスとの相乗効果のある組み合わせでの、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および/または急性リンパ芽球性白血病の処置のための薬物の製造における、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域および配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含むCD19に特異的な抗体の使用を含む。
【実施例
【0082】
実施例1:MOR00208およびベネトクラクスの単独および組み合わせによるMEC-1細胞の細胞毒性
材料
試験対象の細胞株:MEC-1細胞(DSMZ# ACC497)。使用した細胞株の培養条件は、供給者の情報に従う。細胞培地:イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、Invitrogen、カタログ番号:31980;RPMI1640、Invitrogen、カタログ番号:31870;GlutaMAX、Invitrogen、カタログ番号:35050;FCS:Sigmaカタログ番号:F7524ロット番号:111M3396。NK:RPMI1640、GlutaMAX含有、Invitrogen、カタログ番号:31870、10%FCS;Biocoll:Biochrome AGカタログ番号:L6115ロット番号:0034D;MACS NK細胞アイソレーションキット:Miltenyi Biotecカタログ番号:130-092-657ロット番号:5150402327;ベネトクラクス:Selleck Chem.カタログ番号:S8048ロット番号:S804803;FCS:Sigmaカタログ番号:F7524ロット番号:111M3396;およびMOR00208と同じFc領域を含むRefmAb33(抗RSV)。
【0083】
方法
MEC-1細胞株(CLL)を対象として、MOR00208およびベネトクラクスの単独および組み合わせの細胞毒性能を試験した。標的細胞殺傷を、以下のパラメーター:3μM、6.5μMおよび10μMの濃度でのベネトクラクス単独処置;0.01pM、0.1pM、1pM、10pM、100pMおよび10nMの濃度でのMOR00208単独処置および列挙したベネトクラクス濃度およびMOR00208濃度の組み合わせ処置を用いて測定する。以下:RefmAb33、NK細胞単独、MEC-1細胞単独またはDMSOを対照として使用する。ベネトクラクス単独群およびMOR00208+ベネトクラクス組み合わせ群では、標的細胞をベネトクラクスまたはDMSO対照で24時間にわたり前処理し、続いてADCCアッセイより前に死細胞を除去する。死細胞除去キットを使用して、ベネトクラクスの細胞毒性作用により死滅した細胞を除去した。死細胞除去キットは、インビボでも生じる死細胞の除去を模倣し、その後のADCCアッセイにおける死細胞の偽陰性妨害を防止するため実施した。ADCCアッセイの場合、標的細胞をカウントし、1μg/mLの最終濃度でCFSEを用いて染色した。対照群、すなわちDMSO処理した標的細胞の場合、エフェクター:標的(E:T)細胞比を2:1、すなわち1×10E6/mLエフェクター細胞(NK細胞)および5×10E5/mL標的細胞(MEC-1細胞)に調整した。ベネトクラクス単独群およびMOR00208+ベネトクラクス組み合わせ群の場合、24時間の処置中に観察されたベネトクラクスの細胞毒性作用に従って標的細胞の数が減少した一方、エフェクター細胞の数は、1×10/mLで一定に維持された。ADCCアッセイは、以下の通り実施した。96ウェルプレートを使用し、100μLのMEC-1標的細胞懸濁液を各ウェルに加え、続いて100μLのNKエフェクター細胞濁液を各ウェルに加えた。混合した細胞懸濁液を遠心し、100μLの抗体を含む培地または対応する対照溶液に再懸濁した。抗体を培地で10nM~0.01pM(1.5μg/mL~1.5pg/mLに対応する)の範囲に希釈した。ADCCアッセイは、CO2インキュベーター中、37℃で2時間インキュベートした。氷上で10分のインキュベーション後、50μLのDAPI溶液を各ウェルに加え(最終濃度1μg/mL)、氷上でさらに10分間インキュベートした。ADCC測定は、BD FACSVerse装置を用いて行った。死標的細胞をDAPI陽性細胞と判定した。
【0084】
データ
MOR00208およびベネトクラクスの組み合わせの細胞毒性能を判定するため、全体で3つの独立した実験を行った。3つの実験のすべての個々の生データの表を表1~6に示す。3つの実験のすべての個々のADCC用量反応曲線を図1~3に示す。各ベネトクラクス濃度につき3つの実験のすべての平均(+/-SEM)併用係数曲線を図6~8に示す。
【0085】
実験1:
【0086】
実験2:
【0087】
実験3:
【0088】
協力作用の計算
MOR00208およびベネトクラクス単独と比較して例示した抗CD19抗体およびベネトクラクスの組み合わせの相乗作用を判定するため、併用係数(CI)の計算を完了させる。そうした計算は、その全体を援用するTing-Chao Chou, Theoretical Basis,Experimental Design,and Computerized Simulation of Synergism and Antagonism in Drug Combination Studies,Pharmacol Rev 58:621-681(2006)およびその全体を援用するChou TC,Talalay P,Quantitative analysis of dose-effect relationships:the combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors.Adv Enzyme Regul 22:27-55(1984)に記載される。Chou-Talalayの方法は、CI-isobol法を用いて行う。
【0089】
半数影響式(Median effect equation)
半数影響式は、阻害剤(薬剤など)の作用をF/F=(D/D50)^mとしてモデル化する。式中、Dは用量であり、FおよびFは、用量Dにより影響を受けたまたは受けない系の割合であり(F+F=1);D50は、半数影響を発揮する用量(たとえば、IC50、ED50、LD50)である。定数mは、用量作用曲線の形状を決定する。本発明者らは、GraphPad Prismを使用して非線形回帰計算を行い、パラメーターmおよびD50を推定した。
【0090】
CI-isobol法
CI-isobol法は、薬剤間の協力作用の定量的評価を与える。併用係数(CI)は、単独および組み合わせた薬剤処理の用量作用データから推定する。CIが1未満であると協力作用を示し;CI=1であると相加作用を示し;CI>1であると拮抗作用を示す。薬剤相互作用(協力作用または拮抗作用)が顕著であるほど、CI値は1から離れる。形式的には、組み合わせ薬剤処理の併用係数(CI)は、CI=D/Dx1+D/Dx2と定義される。ここで、D1およびD2は、それぞれ組み合わせの薬剤1および薬剤2の用量であり;Dx1およびDx2は、組み合わせの作用と同じ作用を与えると考えられる薬剤1および薬剤2のみを用いた処理の用量である。用量Dx1およびDx2は、単独の薬剤処理の用量作用データから推定する必要がある。本質的には、半数影響式は各薬剤のデータにフィッティングさせる。薬剤の半数影響式から、本発明者らは、作用(すなわちFa、Fu)を発揮するのに必要な用量(すなわちD)を推定することができる。ある点が相加作用を示す線から離れているほど、1とそのCIとの差が大きくなり、したがって(相乗または拮抗)作用が強くなる。
【0091】
結果
ベネトクラクス濃度ごとの3つの実験のすべての平均(+/-SEM)併用係数曲線を図6~8に示す。併用係数の値は、MOR00208およびベネトクラクス単独と比較して、MEC-1細胞の特異的殺傷においてMOR00208およびベネトクラクスの組み合わせの明らかな協力作用を示す。非常に低用量のMOR00208は、例示したADCC細胞殺傷アッセイにおいてほとんどまたはまったく作用を有さない。したがって、非常に低用量のMOR00208のCI値は、ベネトクラクスの活性のみを表す1または1をやや上回る値を示す。MOR00208が単独で通常の細胞殺傷活性を示すMOR00208濃度では、MOR00208およびベネトクラクスの活性を表す1未満のCI値により、明らかな協力作用が示される。本明細書に例示したMOR00208の最高濃度は、MOR00208が12mg/kgで週1回投与される進行中の臨床試験で得られている。そのため、例示したインビトロモデルから、ヒトにおける活性が予測されると考えられる。したがって、MOR00208およびベネトクラクスの組み合わせは、ヒトの非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病(CLL)および急性リンパ芽球性白血病(ALL)の処置においても相乗的に挙動するはずである。
【0092】
本記述、具体的な例およびデータは例示的な実施形態を示しているが、例示として提示しており、本発明を限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。本明細書に含まれる考察、開示およびデータから本発明における様々な変更形態および修正形態が明らかになり、したがってこれらは本発明の一部と見なされる。
【0093】
実施例2:SCIDマウスのヒト皮下リンパ腫細胞異種移植モデルにおけるABT-199と併用したMOR00208の有効性
ベネトクラクス(ABT-199)と併用したMOR00208の有効性利益をヒト皮下TOLEDOリンパ腫細胞腫瘍のSCIDマウスモデルにおいてさらに研究した。腫瘍成長および死亡率を評価した。
【0094】
材料および方法
Toledo細胞株および培養基を購入し、Oncodesignから提供を受けた。腫瘍細胞は、37℃、湿潤雰囲気(5%CO、95%空気)で単層として成長させた。培養基は、10%ウシ胎仔血清(ref:P30-1506、Lonza)、HBSS(ref:BE10-543F)、グルコース(ref:G8769、Sigma、France)、Hepes(ref:BE17-737E、Lonza)およびピルビン酸ナトリウム(ref:BE13-115E、Lonza)を補充した、2mMのL-グルタミン(ref:BE12-702F,Lonza,Verviers,Belgium)を含むRPMI 1640であった。細胞は、プラスチックフラスコに付着している。実験に使用するため、カルシウムまたはマグネシウム(ref:BE10-543F、Lonza)を含まないハンクス培地中、trypsin-versene(ref:BE02-007E、Lonza)で5分処理して腫瘍細胞を培養フラスコから剥離させ、完全培養基の添加により中和させた。細胞を血球計数器でカウントし、その生存状況を0.25%トリパンブルー排除アッセイにより評価した。
【0095】
腫瘍は、マトリゲルを含む200μlのRPMI 1640(50:50、v:v、ref:356237,BD Biosciences,France)中のToledo細胞10×10個をSCIDマウスの右側腹部に皮下注射することにより誘発した。腫瘍が平均容積256±68mmになった23日目に、Vivo Manager(登録商標)ソフトウェア(Biosystemes,Couternon,France)を用いて60匹のマウスをその個々の腫瘍容積に従って動物10匹ずつ6群にランダム化した。群間の均一性を検討するため、統計的検定(分散分析、ANOVA)を行った。MOR208をマウスの腹膜腔に腹腔内(IP)注射した。組み合わせた物質を胃管により強制経口(経口(per os)、PO)投与した。
【0096】
23日目に開始した処置スケジュールは、以下の通りであった。
【0097】
群1の動物には、PEPの1日1回PO投与、PBSの単回IP注射を週2回行った。
【0098】
群2の動物には、20mg/kg/admでABT-199のPO投与を毎日行った。
【0099】
群3の動物には、40mg/kg/admでABT-199のPO投与を毎日行った。
【0100】
群4の動物には、11mg/kg/injでMOR208の単回IP注射を23日目、27日目、30日目、34日目、37日目および41日目に、続いて11mg/kg/injでMOR208の単回IP注射を48日目(週2回)に行った。
【0101】
群5の動物には、23日目、27日目、30日目、34日目、37日目および41日目と、48日目、51日目、55日目および58日目の11mg/kg/injのMOR208のIP注射とを併用して20mg/kg/admのABT-199のPO投与を毎日行った。
【0102】
群6の動物には、23日目、27日目、30日目、34日目、37日目および41日目と、48日目、51日目、55日目および58日目との11mg/kg/injのMOR208の単回IP注射2サイクルとを併用して40mg/kg/admのABT-199のPO投与を毎日行った。
【0103】
動物体重の測定、臨床記録および死亡率記録ならびに処置を含むすべての研究データは、Vivo Manager(登録商標)データベース(Biosystemes,Dijon,France)でスケジュールおよび記録した。生存状況および挙動を毎日記録した。体重および腫瘍容積は、週2回測定した。腫瘍の長さおよび幅は、カリパスで週2回測定し、腫瘍の容積は、式:
より推定した。
【0104】
結果
20mg/kgおよび40mg/kgの用量でのMOR00208およびABT-199の組み合わせ処置では、ビヒクル対照および両方の単独療法レジメンと比較して、Toledoリンパ腫細胞の成長の優れた統計学的に有意な阻害が得られた。ランダム化から人道的エンドポイント(腫瘍容積2000mm3)までのマウスの生存率を解析すると、ABT-199と併用したMOR00208の抗腫瘍作用は、さらに一層顕著であることを示す。組み合わせ群の生存期間中央値およびそれぞれの寿命の延長は、それぞれの単独療法と比較して優れていた。組み合わせ作用のさらなるキャラクタリゼーションにより、MOR00208の組み合わせの結果は、組み合わせの作用がそれぞれの単独療法の合計よりも大きいため、相乗に分類される(図9、表7、図10、表8)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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