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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/289 20210101AFI20220627BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20220627BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20220627BHJP
   H01M 50/507 20210101ALI20220627BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20220627BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20220627BHJP
   H01M 50/358 20210101ALI20220627BHJP
【FI】
H01M50/289 101
H01M50/291
H01M50/213
H01M50/507
H01M50/342 101
H01M50/35 201
H01M50/358
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019523488
(86)(22)【出願日】2018-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2018020879
(87)【国際公開番号】W WO2018225609
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2017113302
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】神足 昌人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直剛
(72)【発明者】
【氏名】安井 俊介
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/156022(WO,A1)
【文献】特開2014-110139(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146078(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 50/30
H01M 50/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内圧が設定圧力を越えると開弁する排出弁の排出口を設けてなる端面を排気側端面とし、前記排気側端面と反対側の端面を非排気側端面とする複数の電池セルと、
前記電池セルを定位置に配列してなる電池ホルダーと、
前記電池ホルダーで定位置に配置してなる前記電池セルの前記排出口に連結してなる排気ダクトと
前記排気側端面に対向して、前記電池セルの電極端子を接続してなるバスバーとを備える電池モジュールであって、
前記電池セルの前記非排気側端面の対向位置に、前記非排気側端面の内圧による変形を阻止するストッパを配置してなり
前記電池セルが、
一端を開口して底面を閉塞してなる外装缶と、
前記外装缶の開口縁に気密に連結されて開口部を密閉し、かつ電極端子を設けてなる封口板とを備え、
前記電池セルは、前記外装缶の底面に、設定圧力で薄肉部を破壊する前記排出弁を設けており、
前記電池セルが、底面を排気側端面として、前記封口板側を非排気側端面としてなることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
請求項に記載される電池モジュールであって、
前記電池セルが円筒形電池であることを特徴とする電池モジュール。
【請求項3】
請求項またはに記載される電池モジュールであって、
前記ストッパが前記封口板を押圧することを特徴とする電池モジュール。
【請求項4】
請求項に記載される電池モジュールであって、
前記ストッパが前記封口板の平面部を押圧することを特徴とする電池モジュール。
【請求項5】
請求項またはに記載される電池モジュールであって、
前記ストッパが前記封口板に設けてなる凸部電極を押圧することを特徴とする電池モジ
ュール。
【請求項6】
請求項またはに記載される電池モジュールであって、
前記ストッパが前記封口板の外周縁のカシメ部を押圧することを特徴とする電池モジュール。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれかに記載される電池モジュールであって、
前記ストッパが絶縁材であることを特徴とする電池モジュール。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれかに記載される電池モジュールであって
前記バスバーが前記ストッパを介して前記非排気側端面を押圧することを特徴とする電池モジュール。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれかに記載される電池モジュールであって、
前記ストッパが前記電池ホルダーに一体的に成形されてなることを特徴とする電池モジュール。
【請求項10】
請求項1ないしのいずれかに記載される電池モジュールであって、
前記電池ホルダーを内側に配置してなる筐体を備え、
前記筐体が、直接に、あるいは前記電池ホルダーと前記バスバーの何れか又は両方を介して前記ストッパを前記非排気側端面に押圧することを特徴とする電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内圧が設定値よりも高くなると開弁して内圧上昇を阻止して、電池の外装ケースが異常な内圧で破壊するのを防止する排出弁を備えた電池セルを備える電池モジュールに関し、とくに、排出弁が開いた状態で高温ガスや異物を排出ダクトから正常に排気する電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電池セルは、使用時における充放電の電流値や外的条件によって内圧が異常に高くなることがある。内圧の異常な上昇は電池ケースを破壊する原因となるので、この弊害を防止するために、設定圧力で開弁する排出弁を備えた電池セルが開発されている。この電池セルを備える電池モジュールは、開弁した排出弁から排出される高温・高圧の排出ガスを外部に排気するための排出ダクトを設けている。排出ダクトは、排出弁の開口部に連結されて開口部から排出される高温・高圧の排出ガスを外部に誘導して排気する。(特許文献1参照)
【0003】
以上の電池モジュールは、排出弁から排出される排出ガスを外部に排気して、高温・高圧の排出ガスが電池モジュール内部に噴射される弊害を防止できる。しかしながら、電池セルは、電池の構造や使用環境によっては内圧が異常に高くなる状態で、排出弁以外の部分が破壊されて高温・高圧の排出ガスが噴射することがある。とくに、充放電容量を増加するために、電池ケース内に極めて高い密度で電極を圧入している電池セルは、高密度な電極が内部におけるガスの流通を阻害して、ガス圧を不均一にする原因となる。
【0004】
さらに、近年、外装缶の底面に、局部的にリング状の薄肉部を設けて排出弁とする電池セルも開発されている(特許文献2参照)。
この電池セルは、封口板の反対側の端面である外装缶の底面に薄肉部からなる排出弁を設けているので、内圧が異常に高くなると外装缶の底面側から高温・高圧の排出ガスを排出して、封口板側からは排出しない。この電池セルは、外装缶底面に設けた排出弁の開口部に排出ダクトを連結して、外装缶の底面側から排出される高温・高圧の排出ガスを外部に排気する構造として電池モジュールが組み立てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-170613号公報
【文献】特開2017-69184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
排出弁の開口部に排出ダクトを連結している電池モジュールは、開口する排出弁から排出される高温・高圧の排出ガスを正常に外部に排出できる。しかしながら、電池セルの内部で発生する内圧の不均衡は、内圧が設定圧力に上昇する状態で、排出弁以外の部分を破損する原因となる。たとえば、外装缶の底面に薄肉部を設けて排出弁としている電池セルを備える電池モジュールは、底面を排出ガスを排出する「排気側端面」として、この端面に排出ダクトを連結するが、反対側の端面である封口板側には排出弁がないので「非排気側端面」として排出ダクトは設けない。ところが、電池セルの内圧が異常に高くなって、底面側に設けた排出弁が開弁する状態で、非排気側端面である封口板側が破壊されて高温・高圧の排出ガスが噴出することがある。とくに、電池セルは、外装缶の開口部にカシメ構造やレーザー溶接して封口板を固定する構造とするので、金属板を絞り加工して製作される外装缶の底面に匹敵する強度の実現が難しく、内圧が異常に高くなる状態で封口板側である非排気側端面の破損を皆無にできない。とくに、充放電容量を大きくするために、内部の電極密度を極めて高くする電池セルにあっては、内圧の不均衡も非排気側端面を破損する原因となる。
【0007】
電池モジュールは、排気側端面に排出ダクトを連結するので、排気側端面から排出される排出ガスを排出ダクトで電池モジュールの外部に排気できるが、非排気側端面には排出ダクトが配設されないため非排気側端面から排出される排出ガスを外部に排出できず、非排気側端面が破壊すると高温・高圧の排出ガスが電池モジュール内に噴射されて安全性を著しく低下させる原因となる。
【0008】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、簡単な構造で、電池セルの構造を変更することなく、電池セルの非排気側端面からの高温・高圧の排出ガスの噴射を確実に阻止して高い安全性を実現できる電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明の電池モジュールは、内圧が設定圧力を越えると開弁する排出弁の排出口を設けている端面を排気側端面として、排気側端面と反対側の端面を非排気側端面とする複数の電池セルと、電池セルを定位置に配列している電池ホルダーと、電池ホルダーで定位置に配置してなる電池セルの排出口に連結している排気ダクトとを備える。さらに、電池モジュールは、電池セルの非排気側端面の対向位置に、非排気側端面の内圧による変形を阻止するストッパを配置している。
【0010】
以上の電池モジュールは、簡単な構造で、電池セルの構造を変更することなく、電池セルの非排気側端面から高温・高圧の排出ガスが噴射されるのを確実に阻止して、高い安全性を実現できる特徴がある。それは、電池モジュールが、電池セルの非排気側端面をストッパで押圧して、内圧で非排気側端面の変形を阻止するからである。とくに、以上の電池モジュールは、電池セル自体の構造を変更することなく、電池セルの非排気側端面の対向位置にストッパを配置する極めて簡単な構造によって、非排気側端面の破壊を阻止して、内圧が異常に上昇する時には排出弁を開口して排気側端面のみから高温・高圧の排出ガスを排出して、排出ダクトで安全に電池モジュールの外部に排出できる特徴を実現する。以上の特徴は、充放電容量を大きくするために電極の充填密度を高くしている高品質な電池セルにおいて特に大切な特徴である。充填密度の高い電池セルは、高密度な電極がガスの自由な流通を阻害して内圧アンバランスの原因となる。内圧のアンバランスは、排気側端面と非排気側端面の内圧が同一とならず、非排気側端面の内圧が高くなることがあるが、この状態においても、非排気側端面はストッパで変形が阻止されて破壊が確実に防止される。また、高容量な電池セルは、外装缶をできる限り薄くして、単位重量と単位容積に対する充放電容量を増加している。このことから、高品質な電池セルは外装缶を薄くすることが要求されて、非排気側端面の強度、すなわち破壊する耐圧を高くすることが難しく、内圧上昇時に非排気側端面が破壊しやすくなるが、以上の電池モジュールは電池セルの非排気側端面の破壊をストッパで確実に阻止できることから、高品質な電池セルにおいても、異常な内圧上昇時には非排気側端面を破壊することなく、確実に排出弁を開いて高温・高圧の排出ガスを排出ダクトから安全に外部に排気できる特徴がある。
【0011】
本発明のある態様にかかる電池モジュールの電池セルは、一端を開口して底面を閉塞している外装缶と、外装缶の開口縁に気密に連結されて開口部を密閉し、かつ電極端子を設けてなる封口板とで構成し、電池セルの外装缶の底面に、設定圧力で薄肉部を破壊する排出弁を設けており、電池セルの底面を排気側端面として、封口板側を非排気側端面とすることができる。
【0012】
以上の電池モジュールは、電極端子を設けている封口板側を非排気側端面として、外装缶の底面に薄肉部を設けて排出弁とするので、排出弁の開口面積を大きくして、開弁した排出弁から速やかに高温・高圧の排出ガスを排気できる。さらに、封口板側を非排気側端面としてここにストッパを配置するので、底面に比較して構造的に高強度化の実現が難しい、封口板側の破壊を確実に阻止して安全性を向上できる特徴がある。とくに、高容量化のために外装缶と封口板からなる電池ケースを薄くする必要があるが、このことは、封口板側の破断強度を低下する原因となるが、以上の電池モジュールは、封口板側の破壊をストッパで阻止するので、高容量化された高品質な電池セルを使用する電池モジュールにおいても、高い安全性を確保できる特徴がある。
【0013】
本発明のある態様にかかる電池モジュールは、電池セルを円筒形電池とすることができ、この電池モジュールは、電池セルの容積に対する充放電の容量を高くできる特徴を実現しながら、外装缶の底面に比較して高強度の実現が難しい封口板側の破断をストッパで確実に阻止して、高い安全性を実現できる特徴がある。円筒形電池がその形状から角形電池に比較して充放電容量を大きくできるのは、セパレータを介して積層した正負の電極板を渦巻き状に巻いて円柱状の電極とし、これを円筒状の外装缶に挿入して組み立てできるからである。積層した電極板を渦巻き状に巻いて製作される円柱状の電極は、巻回工程で電極密度を高くでき、さらに円柱状の電極を円筒状の外装缶に挿入することから電極を高密度な状態で挿入して組み立てして、充放電容量を大きくできる。ただ、円筒形電池は外装缶の開口縁と封口板とをカシメて連結するので、封口板側の強度を外装缶の底面に匹敵する強度とすることが難しく、異常な内圧で封口板側が破壊しやすくなるが、以上の電池モジュールは、底面側に比較して高強度化が難しい封口板側の内圧による破壊をストッパで確実に阻止するので、円筒形電池を使用して高容量化を実現しながら、封口板側の破壊を阻止して高い安全性も実現する特徴がある。
【0014】
本発明のある態様にかかる電池モジュールのストッパは、封口板を押圧する構造とすることができる。さらに、ストッパが封口板の平面部を押圧し、あるいは封口板の凸部電極を押圧し、さらにまた、カシメ部を押圧する構造とすることができる。
【0015】
本発明のある態様にかかる電池モジュールは、ストッパを絶縁材とすることができる。また、本発明のある態様にかかる電池モジュールは、電池セルの排気側端面に対向して、電池セルの電極端子を接続しているバスバーを備える構造として、かつバスバーがストッパを介して非排気側端面を押圧する構造とすることができる。
【0016】
本発明のある態様にかかる電池モジュールは、ストッパを電池ホルダーに一体的に成形する構造とすることができる。
【0017】
また、本発明のある態様にかかる電池モジュールは、電池ホルダーを内側に配置している筐体を備える構造として、筐体が、直接に、あるいは電池ホルダーとバスバーの何れか又は両方を介してストッパを非排気側端面に押圧する構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例にかかる電池モジュールの概略断面図である。
図2】本発明の他の実施例にかかる電池モジュールの拡大概略断面図である。
図3】本発明の他の実施例にかかる電池モジュールの拡大概略断面図である。
図4】本発明の他の実施例にかかる電池モジュールの拡大概略断面図である。
図5】本発明の他の実施例にかかる電池モジュールの拡大概略断面図である。
図6】本発明の他の実施例にかかる電池モジュールの拡大概略断面図である。
図7図6に示す電池モジュールのストッパを示す斜視図である。
図8】本発明の他の実施例にかかる電池モジュールの概略断面図である。
図9図8に示す電池モジュールのストッパを示す斜視図である。
図10図8に示す電池モジュールのストッパを連結する状態を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明は以下のものに特定されない。また、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0020】
以下に示す電池モジュールは、主として、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車や、モータのみで走行する電気自動車などの電動車両の駆動用電源に適用する例を説明する。なお本発明の電池モジュールを、ハイブリッド車や電気自動車以外の車両に使用したり、電動車両以外の大出力が要求される用途、例えば家庭用、工場用の蓄電装置等に使用してもよい。
【0021】
実施形態に係る電池モジュールの断面図を図1ないし図8に示す。これらの図に示す電池モジュール100は、複数の電池セル1と、各々の電池セル1を定位置に配置する電池ホルダー2と、電池ホルダー2で定位置に配置している電池セル1の正負の電極端子に接続している金属板のバスバー4と、電池セル1に設けている排出弁5の排出口6に連結している排出ダクト7と、以上の全ての部品を内部の定位置に配置している筐体17とを備える。
【0022】
電池セル1は、リチウムイオン二次電池の円筒形電池である。ただ、本発明は電池セル1をリチウムイオン二次電池には特定せず、充電できる他の全ての電池、たとえばリチウムイオン二次電池以外の非水系電解液電池やその他の電池とすることができる。電池セル1の円筒形電池は、底を閉塞する円筒状の外装缶8の開口部を封口板9で気密に密閉している。外装缶8は金属板を深絞り加工して製作される。封口板9は円盤状で、中央部に凸部電極3を設けている。封口板9は、外装缶8の開口縁に、絶縁材を介してカシメ構造で絶縁して気密構造に固定される。
【0023】
電池セル1は、外装缶8の底面に排出弁5を設けている。排出弁5は電池セル1の内圧が設定圧力よりも高くなると開弁して、内部のガスを外部に排気して電池ケースの破壊を防止する。電池セル1の内圧上昇は、電池の過充電、過放電、過大電流、物理的衝撃、外部短絡、異常高温などの過酷な条件下において発生する。電池セル1は、内圧が異常に高くなる状態で排出弁5を開弁して電池ケースの破裂などを防止している。
【0024】
排出弁5は、電池セル1の一方の端面に設けられる。図に示す電池セル1は、外装缶8の底面に排出弁5を設けて、封口板9側には排出弁5を設けない。排出弁5を設けた底面は、排出ガスを排出する排気側端面10で、排出弁5を設けない上端面は非排気側端面11として排出ガスを排出しない。
【0025】
図の電池セル1は、外装缶8の底面にリング状に薄肉部12を設けて排出弁5としている。この構造の排出弁5は、薄肉部12の厚さを調整して開弁する設定圧力をコントロールする。薄肉部12を薄くして開弁する設定圧力を低く、厚くして開弁する設定圧力を高くする。この排出弁5は、電池の内圧が設定圧力よりも高くなると薄肉部12が破断して開弁する。リング状の薄肉部12で構成される排出弁5は、開弁状態で薄肉部12が破断されるので、薄肉部12の内側に排出口6が開口される。
【0026】
電池ホルダー2は、絶縁材料である熱可塑性樹脂等の樹脂を成形して製作される。電池ホルダー2は、好ましくは難燃性と耐熱性に優れた樹脂製とすることができる。このような樹脂として、例えば、PC(ポリカーボネート)やPP(ポリプロピレン)やナイロンなどが使用できる。
【0027】
図に示す電池ホルダー2は、電池セル1を電池収納部27に配置して、定位置に配置する。図に示す電池ホルダー2は、複数の電池セル1を平行な姿勢であって、両端面をほぼ同一平面に配置する。また、電池ホルダー2は、排出弁5の排出口6を排出ダクト7を連結する位置に電池セル1を配置する。電池ホルダー2は、複数の電池収納部27を有し、電池収納部27に電池セル1を配置する。電池収納部27は、電池セル1を配置できる内形として、電池セル1を挿入して定位置に配置する。電池ホルダー2は、電池収納部27の間に隔壁13を有し、隔壁13の両側に電池収納部27を設けてここに電池セル1を絶縁して配置する。さらに、電池収納部27は、両端部に開口部のある平面プレート部14を設けている。
【0028】
図1の電池ホルダー2は、正負の電極端子をバスバー4に接続するための接続開口15を平面プレート部14に設けている。図の電池ホルダー2は、電池セル1の長手方向の中央部で、図において上下のホルダーユニット2A、2Bに分割している。ホルダーユニット2A、2Bは、上下に分割する状態で内側に電池セル1を挿入した後、連結して電池セル1を定位置に配置する。電池ホルダー2は、平面プレート部14の接続開口15を電池セル1の外形よりも小さくして、電池セル1を電池収納部27から外部に移動しないように配置する。ただ、電池ホルダーは、下端に電池セルを挿入できる形状の開口部を設けて、下端の開口部から電池セルを挿入して定位置に配置することもできる。
【0029】
バスバー4は金属板で、直接又は矢印で示すリード板を介して電池セル1の正負の電極端子に接続される。バスバー4は、隣接する電池セル1を並列または直列に接続する。図の電池モジュール100は、隣接する電池セル1を並列に接続している。並列接続される電池セル1は、正極を第1のバスバー4Aで接続して、負極を第2のバスバー4Bで接続している。電池モジュール100は、電池セル1を並列に接続して電流容量を大きくできる。電池モジュール100は電池セル1を直列に接続して出力電圧を高くできる。電池セルを直列に接続する電池モジュールは、隣の電池セルの正極と負極とをバスバー4で接続する。
【0030】
円筒形電池の電池セル1は、封口板9の凸部電極3と外装缶8の底面を正負の電極端子とする。凸部電極3と外装缶8の底面は、第1のバスバー4Aと第2のバスバー4Bに接続される。図の電池モジュール100は、第1のバスバー4Aと第2のバスバー4Bを電池ホルダー2の平面プレート部14の表面の定位置に配置している。図示しないが、電池ホルダーは、平面プレート部にバスバーを内蔵して定位置に配置する嵌合凹部を設けて、バスバーを定位置に配置することができる。バスバー4は、レーザー溶接、スポット溶接、超音波溶接などの方法で、直接に、あるいはリード板を介して電池セル1の電極端子に接続される。
【0031】
排出ダクト7は、各々の電池セル1の排出弁5から排出される高温・高圧の排出ガスを筐体17の外部に排気する。排出ダクト7は、電池セル1の排気側端面10に設けている排出弁5の排出口6に連結して配置されて、排出弁5から排出される排出ガスを外部に排気する。排出ダクト7は、各々の電池セル1の排出弁5の排出口6に連結される複数の開口窓16を有し、先端を筐体17の外部に配置している。
【0032】
筐体17は、金属ケースで電池ホルダー2とバスバー4と排出ダクト7とを定位置に配置する。電池セル1を定位置に配置している電池ホルダー2と、電池セル1に接続しているバスバー4と、排気側端面10に配置している排出ダクト7とは一体構造に連結されて電池ユニットとして組み立てられて筐体17内の定位置に固定される。バスバー4は、電池セル1に連結され、さらに電池ホルダー2との嵌合構造で電池ホルダー2の定位置に配置される。排出ダクト7は、図示しないが、電池ホルダー2に固定されて定位置に配置される。筐体17は、ネジ止め、嵌合構造、挟着構造などで、電池ユニットを内部の定位置に固定して配置する。金属製のバスバー4と、金属製の筐体17は、互いに絶縁して配置される。バスバー4と筐体17との絶縁は、隙間を設け、絶縁材を配置し、あるいは排出ダクト7などの絶縁材で構成されるパーツを配置して実現される。
【0033】
電池モジュール100は、非排気側端面11が内圧で変形して破断するのを阻止するストッパ18を備える。ストッパ18は、非排気側端面11が変形しないように押圧して、非排気側端面11の破壊を阻止する。ストッパ18は、電池セル1の非排気側端面11の対向位置にあって、非排気側端面11を押圧する。ストッパ18は、先端を押圧部18Aとして背面を固定部18Bとしている。押圧部18Aは、封口板9の平面部9Aや凸部電極3を押圧し、あるいは封口板9のカシメ部19を押圧して、非排気側端面11の内圧による破断を防止する。ストッパ18は、押圧部18Aが非排気側端面11を押圧する反作用で移動しないように、固定部18Bをバスバー4、電池ホルダー2、筐体17などで支持している。
【0034】
図1ないし図4のストッパ18は、電池セル1の非排気側端面11にある封口板9の平面部9Aとカシメ部19を押圧部18Aで押圧する。図1ないし図4のストッパ18は、押圧部18Aで封口板9の平面部9Aとカシメ部19を押圧して、非排気側端面11の変形と破壊を理想的な状態で阻止する。ただ、ストッパ18は、押圧部18Aで平面部9Aのみを押圧し、あるいはカシメ部19のみを押圧する形状とすることもできる。
【0035】
以上の図のストッパ18は、バスバー4と非排気側端面11の封口板9との間に配置される。このストッパ18は、図1の矢印で示すように、固定部18Bを電池ホルダー2の平面プレート部14の内側に配置している。図の電池ホルダー2は、平面プレート部14と筐体17との間に鎖線で示す連結部20を設けている。連結部20は筐体17の内面に突出する形状で、突出高さを、平面プレート部14と筐体17との隙間を塞ぐ高さとしている。連結部20は、絶縁材の電池ホルダー2に一体的に成形して設けられる。連結部20に支持されて変形が阻止される平面プレート部14は、ストッパ18に押されて変形せず、ストッパ18が確実に非排気側端面11の変形を阻止して破壊を防止する。図の電池ホルダー2は、平面プレート部14の外側に金属板のバスバー4を配置する。この構造の電池ホルダー2は、バスバー4に厚い金属板を使用し、バスバー4を平面プレート部14の外面に嵌合構造などで連結して、バスバー4で平面プレート部14を補強する構造にできる。この電池ホルダー2は、バスバー4で変形が阻止されるので、平面プレート部14を筐体17で押圧することなく、平面プレート部14でストッパ18の固定部18Bを移動しない状態に支持する。
【0036】
図1の電池モジュール100は、ストッパ18を電池ホルダー2と別部材とする。このストッパ18はプラスチック等の絶縁材で製作される。図2の電池モジュール100は、ストッパ18を電池ホルダー2と一体構造とする。このストッパ18は、電池ホルダー2に一体的に成形して設けられる。電池ホルダー2と一体構造のストッパ18は、位置ずれなく定位置に配置される。電池ホルダー2と一体構造のストッパ18は、図において上面が固定部18Bとなるので、固定部18Bをバスバー4や筐体17で支持して、非排気側端面11に押圧されて移動しない構造とする。図3の電池モジュール100は、非排気側端面11とバスバー4との間にストッパ18を配置する。このストッパ18は、固定部18Bをバスバー4に連結して、バスバー4を介してストッパ18を定位置に支持する。この構造は、バスバー4に厚い金属板を使用して、変形しない強固なバスバー4で固定部18Bを移動しないように支持し、あるいは図の鎖線で示すように、ストッパ18と筐体17との間に絶縁材の連結部20を設けて、連結部20でバスバー4の変形を防止する。この構造は、筐体17に支持される連結部20がバスバー4の変形を阻止して、バスバー4がストッパ18を移動しないように支持する。図4の電池モジュール100は、ストッパ18を非排気側端面11と筐体17との間に配置する。このストッパ18は、固定部18Bを強靭な金属製の筐体17に連結して、変形を確実に阻止する。バスバー4は、ストッパ18の間に配線されて凸部電極3に接続される。
【0037】
ストッパ18はプラスチック等の絶縁材で製作される。図1ないし図3のストッパ18は、内径を凸部電極3の外径にほぼ等しい円筒状として、先端の外周部にはカシメ部19を案内する切り欠き18aを設けている。このストッパ18は、内側に凸部電極3を、切り欠き18aにカシメ部19を挿入して定位置に配置される。図4のストッパ18は、円筒を凸部電極3の両側に分割した形状として、両側のストッパ18の間にバスバー4を配置して、このバスバー4を凸部電極3に接続する。
【0038】
図5図6図8のストッパ18は、封口板9の凸部電極3を押圧する。図5の電池モジュール100は、バスバー4をストッパ18に併用する。バスバー4が凸部電極3を押圧して、非排気側端面11の変形による破壊を防止する。バスバー4のストッパ18は、凸部電極3の連結部を押圧部18Aとして、凸部電極3を押圧する。ストッパ18は、固定部18Bを支持する部材に連結して、凸部電極3を押圧する反作用での移動するのを阻止する。バスバー4のストッパ18は、固定部18Bを電池ホルダー2に連結して位置ずれを阻止し、また、鎖線で示すように、筐体17との間に設けた支持部21に固定部18Bを連結して位置ずれを阻止し、あるいは支持部21で電池ホルダー2に押圧されるバスバー4に固定部18Bを連結して位置ずれを阻止する。バスバー4との間に設けられる支持部21は、プラスチックなどの絶縁材を成形して製作される。絶縁材の支持部21は、電池ホルダー2に一体構造とし、あるいは筐体17内面の定位置に接着などの方法で固定される。
【0039】
図6のストッパ18は、バスバー4に連結された接続金具である。このストッパ18はリード板に併用されて、バスバー4を凸部電極3に接続する。図7の斜視図は接続金具のストッパ18を示す。このストッパ18は、底を閉塞して開口縁に鍔22を設けた筒状に金属板をプレス加工して製作される。鍔22はバスバー4の表面に、底は凸部電極3に溶接して固定されて、非排気側端面11に固定される。このストッパ18は、凸部電極3に固定する底を押圧部18A、バスバー4に連結する鍔22を固定部18Bとする。このストッパ18は、バスバー4を介して定位置に固定され、あるいは筐体17との間に設けた支持部21を介して定位置に配置される。ストッパ18を定位置に配置するバスバー4は、電池ホルダー2に固定して定位置に配置される。図6の鎖線で示す支持部21をバスバー4と筐体17との間に配置する構造は、バスバー4を位置ずれしないように定位置に配置し、また接続金具のストッパ18を定位置に配置して、非排気側端面11の変形と破断を阻止する。
【0040】
図8の電池モジュール100は、ストッパ18が凸部電極3の貫通穴23に連結する係止金具である。このストッパ18は弾性変形する金属板をプレス加工して製作される。係止金具のストッパ18を図9の斜視図に示す。このストッパ18は、円筒部の底面に押圧部18Aの係止プレート24を設けて、上端縁に固定部18Bの鍔26を設けている。底の係止プレート24はリング状で内側に、凸部電極3の側面に設けている貫通穴23に挿入される係止突起25を設けている。円筒部の高さは、鍔26をバスバー4の下面に接触させて、係止突起25を凸部電極3の貫通穴23に挿入する寸法である。このストッパ18は、凸部電極3を係止プレート24の中心孔に挿入し、図10に示すように、係止突起25を弾性変形させて凸部電極3の貫通穴23に挿入する。ストッパ18は、バスバー4を介して定位置に位置ずれしないように配置されるので、バスバー4を電池ホルダー2で定位置に配置し、また、支持部21でバスバー4を押圧して定位置に配置して、ストッパ18を定位置に配置する。支持部21は、図の鎖線で示すように、バスバー4と筐体17との間に配置され、とくに、係止金具の鍔26を裏面に配置する部分に支持部21を配置して、ストッパ18は最も位置ずれしないように配置される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の電池モジュールは、電池セルの内圧が上昇する状態で、高温・高圧の排出ガスを排気側端面から排出する構造の電源モジュールに有効に使用できる。
【符号の説明】
【0042】
100…電池モジュール、1…電池セル、2…電池ホルダー、2A、2B…ホルダーユニット、3…凸部電極、4…バスバー、4A…第1のバスバー、4B…第2のバスバー、5…排出弁、6…排出口、7…排出ダクト、8…外装缶、9…封口板、9A…平面部、10…排気側端面、11…非排気側端面、12…薄肉部、13…隔壁、14…平面プレート部、15…接続開口、16…開口窓、17…筐体、18…ストッパ、18A…押圧部、18B…固定部、18a…切り欠き、19…カシメ部、20…連結部、21…支持部、22…鍔、23…貫通穴、24…係止プレート、25…係止突起、26…鍔、27…電池収納部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10