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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】脱ベンジル反応用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/648 20060101AFI20220627BHJP
   C07C 211/48 20060101ALI20220627BHJP
   C07C 211/07 20060101ALI20220627BHJP
   C07C 211/27 20060101ALI20220627BHJP
   C07C 211/46 20060101ALI20220627BHJP
   C07C 209/62 20060101ALI20220627BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220627BHJP
   C07D 295/023 20060101ALN20220627BHJP
   C07D 295/033 20060101ALN20220627BHJP
【FI】
B01J23/648 Z
C07C211/48
C07C211/07
C07C211/27
C07C211/46
C07C209/62
C07B61/00 300
C07D295/023
C07D295/033
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019523914
(86)(22)【出願日】2018-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2018021566
(87)【国際公開番号】W WO2018225737
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2017111567
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017111568
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017124898
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】特許業務法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】水崎 智照
(72)【発明者】
【氏名】鈴鹿 弘康
(72)【発明者】
【氏名】佐治木 弘尚
(72)【発明者】
【氏名】澤間 善成
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕太
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-526588(JP,A)
【文献】国際公開第2009/091031(WO,A1)
【文献】特開昭63-68538(JP,A)
【文献】特開平5-38444(JP,A)
【文献】特表2006-521197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07B 31/00 - 61/00
C07B 63/00 - 63/04
C07C 1/00 - 409/44
C07D 295/023
C07D 295/033
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンジル基を有する有機化合物から前記ベンジル基を脱離させる脱ベンジル反応に用いられる脱ベンジル反応用触媒であって、
担体と、前記担体上に担持されるPd粒子とNb酸化物粒子と、を含んでいる、
脱ベンジル反応用触媒。
【請求項2】
高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により求められるPdの物質量nPd(mol)とNbの物質量nPd(mol)との比(nNb/nPd)が下記式(1)を満たしている、請求項1に記載の脱ベンジル反応用触媒。
0<(nNb/nPd)≦1.0 ・・・(1)
【請求項3】
前記比(nNb/nPd)が下記式(2)を更に満たしている、請求項2に記載の脱ベンジル反応用触媒。
0.1≦(nNb/nPd)≦1.0 ・・・(2)
【請求項4】
高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により求められるNbの含有率R1(wt%)が下記式(3)を満たしている、
0<R1≦4.0 ・・・(3)
請求項1~3のうちの何れか1項に記載の脱ベンジル反応用触媒。
【請求項5】
前記R1が下記式(4)を更に満たしている、請求項4に記載の脱ベンジル反応用触媒。
0.5≦<R1≦4.0 ・・・(4)
【請求項6】
前記Nb酸化物がNbである、請求項1~5のうちの何れか1項に記載の脱ベンジル反応用触媒。
【請求項7】
前記担体がカーボン担体である、請求項1~6のうちの何れか1項に記載の脱ベンジル反応用触媒。
【請求項8】
前記ベンジル基が第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシル基、及び、水酸基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基に対する保護基として前記有機化合物に含まれている、請求項1~7のうちの何れか1項に記載の脱ベンジル反応用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱ベンジル反応用触媒に関する。より詳しくは、保護基としてベンジル基を有する有機化合物からこのベンジル基を脱離させる脱ベンジル反応に用いられる脱ベンジル反応用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機化合物の合成プロセス中のある化学反応ステップにおいて、有機化合物中の官能基が反応に関与することが望ましくない場合、この官能基を保護基により保護し、反応に関与しないようにすることがよく行われている。
【0003】
例えば、有機化合物中のカルボキシル基は、反応性が高いため、ベンジル基により保護することが一般的である。そして、このベンジル基は、所定の反応が終了した後、元のカルボキシ基に戻す。
【0004】
その脱ベンジル化反応としては、水素雰囲気下で、Pd担持カーボン触媒などのPdを担体に担持させた触媒を用いておこなう水素化反応が提案されている。
【0005】
例えば、このようなPd担持カーボン触媒としては、被毒物質による修飾により、Pd担持カーボン触媒の活性をコントロールするコンセプトでエチレンジアミン修飾Pd担持カーボン触媒(非特許文献1)や、ジフェニルスルフィド修飾Pd担持カーボン触媒(特許文献1)が提案されている。
【0006】
また、カーボン担体以外の担体にPdを担持したPd担持触媒としては、Pdをベータゼオライト(NH 型など)に担持させた触媒が提案されている(特許文献1)。この触媒は、芳香族ハロゲン化合物や、芳香族ケトン化合物での脱ベンジル反応において、これらの芳香族有機化合物の他の官能基を分解あるいは水素化することなく、効率良く脱ベンジル反応を進行させることを意図したものである。
【0007】
更に、ネビボロールの製造に有用な中間体(アミノ基をベンジル基により保護した構造を有する芳香族有機化合物)を、Pd担持カーボン触媒を用いて脱ベンジル化することが開示されている(特許文献3)。
【0008】
なお、本件特許出願人は、上記文献公知発明が記載された刊行物として、以下の刊行物を提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2007-152199号公報
【文献】特開2013-82637号公報
【文献】特表2012-506894号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】J.Org. Chem., 1998, 63, 7990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ベンジル基を有する有機化合物から当該ベンジル基を脱離させる脱ベンジル反応において、従来のPd担持触媒よりも高い収率で目的生成物(脱ベンジル体)を得るという観点からは、上述した従来技術であっても未だ改善の余地があることを本発明者らは見出した。
【0012】
本発明は、かかる技術的事情に鑑みてなされたものであって、ベンジル基を有する有機化合物から当該ベンジル基を脱離させる脱ベンジル反応において、従来のPd担持触媒よりも高い収率で目的生成物(脱ベンジル体)を得ることのできる脱ベンジル反応用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上述の課題の解決に向けて鋭意検討を行った結果、Pd担持触媒に対しNb酸化物を更に添加した構成を採用することが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
より具体的には、本発明は、以下の技術的事項から構成される。
すなわち、本発明は、
ベンジル基を有する有機化合物から前記ベンジル基を脱離させる脱ベンジル反応に用いられる脱ベンジル反応用触媒であって、
担体と、前記担体上に担持されるPd粒子とNb酸化物粒子と、を含んでいる、
脱ベンジル反応用触媒を提供する。
【0015】
本発明者らは、従来のPd担持触媒に対し、担体にNb酸化物が更に担持された構成とすることにより、詳細なメカニズムは解明されていないが、ベンジル基を有する有機化合物から当該ベンジル基を脱離させる脱ベンジル反応において、容易に高い収率で目的生成物(脱ベンジル体)を得られることを見出した。
【0016】
また、本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の脱ベンジル反応用触媒においては、
高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により求められるPdの物質量nPd(mol)とNbの物質量nPd(mol)との比(nNb/nPd)が下記式(1)を満たしていることが好ましい。
0<(nNb/nPd)≦1.0 ・・・(1)
【0017】
このように、わずかのNb酸化物を添加するだけで本発明の効果が得られるので、本発明の脱ベンジル反応用触媒は、原料コストの増加を十分に低減できる。(nNb/nPd)を1.0以下とすることで、より確実に原料コストの増加を低減できる。
【0018】
ここで、本発明の効果を更に確実に得る観点から、本発明の脱ベンジル反応用触媒においては、前記比(nNb/nPd)が下記式(2)を更に満たしていることがより好ましい。
0.1≦(nNb/nPd)≦1.0 ・・・(2)
【0019】
このように、本発明者らは、式(1)の(nNb/nPd)の値を0.1以上とすることで、わずかのNb酸化物を添加するだけで本発明の効果が更に確実に得られることを見出した。
【0020】
また、本発明の脱ベンジル反応用触媒においては、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により求められるNbの含有率R1(wt%)が下記式(3)を満たしていることが好ましい。
0<R1≦4.0 ・・・(3)
【0021】
R1を4.0wt%以下とすることで、原料コストの増加をより十分に低減できるようになる。
【0022】
更に、この場合、R1が下記式(4)を更に満たしていることが好ましい。
0.5≦<R1≦4.0 ・・・(4)
【0023】
R1の値を0.5以上とすることで、わずかのNb酸化物を添加するだけで本発明の効果がより確実に得られるようになる。
【0024】
また、本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の脱ベンジル反応用触媒においては、前記Nb酸化物がNbであることが好ましい。
【0025】
更に、入手容易性、取扱い性、原料コスト、高比表面積を有するなどの観点から、本発明の脱ベンジル反応用触媒においては、前記担体がカーボン担体であることが好ましい。
【0026】
また、本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の脱ベンジル反応用触媒においては、前記ベンジル基が第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシル基、及び、水酸基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基に対する保護基として前記有機化合物に含まれていることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ベンジル基を有する有機化合物から当該ベンジル基を脱離させる脱ベンジル反応において、従来のPd担持触媒よりも高い収率で目的生成物(脱ベンジル体)を得ることのできる脱ベンジル反応用触媒が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0029】
本実施形態の脱ベンジル反応用触媒は、担体と、担体上に担持されるPd粒子とNb酸化物粒子と、を含んでいる。
【0030】
この脱ベンジル反応用触媒は、従来のPd担持触媒に対し、担体にNb酸化物が更に担持された構成とすることにより、ベンジル基を有する有機化合物から当該ベンジル基を脱離させる脱ベンジル反応において、容易に高い収率で目的生成物(脱ベンジル体)を得られる。
【0031】
また、本発明の効果をより確実に得る観点から、この脱ベンジル反応用触媒は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により求められるPdの物質量nPd(mol)とNbの物質量nPd(mol)との比(nNb/nPd)が下記式(1)を満たしていることが好ましい。
0<(nNb/nPd)≦1.0 ・・・(1)
【0032】
このように、わずかのNb酸化物を添加するだけで本発明の効果が得られるので、原料コストの増加を十分に低減できる。(nNb/nPd)を1.0以下とすることで、より確実に原料コストの増加を低減できる。
【0033】
ここで、本発明の効果を更に確実に得る観点から、式(1)の比(nNb/nPd)が下記式(2)を更に満たしていることがより好ましい。
0.1≦(nNb/nPd)≦1.0 ・・・(2)
【0034】
このように、式(1)の(nNb/nPd)の値を0.1以上とすることで、わずかのNb酸化物を添加するだけで本発明の効果がより確実に得られる。
【0035】
また、この脱ベンジル反応用触媒においては、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により求められるNbの含有率R1(wt%)が下記式(3)を満たしていることが好ましい。
0<R1≦4.0 ・・・(3)
【0036】
R1を4.0wt%以下とすることで、原料コストの増加をより十分に低減できるようになる。
【0037】
更に、この場合、R1が下記式(4)を更に満たしていることが好ましい。
0.5≦<R1≦4.0 ・・・(4)
【0038】
R1の値を0.5以上とすることで、わずかのNb酸化物を添加するだけで本発明の効果がより確実に得られるようになる。
【0039】
また、この脱ベンジル反応用触媒は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により求められるPdの含有率は110.0wt%未満であることが好ましい。
【0040】
更に、この脱ベンジル反応用触媒は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により求められるPdの含有率は4.0~9.wt%未満であることが好ましい。
【0041】
担体は、Pd粒子とNb酸化物粒子を担持することができ、かつ表面積の大きいものであれば特に制限されない。活性炭、活性炭の粉砕物、グラッシーカーボン(GC)、ファインカーボン、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、などのカーボン担体、アルミナ、シリカ、シリカアルミナなどの無機酸化物系材料などから適宜採択することができる。
【0042】
入手容易性、取扱い性、原料コスト、高比表面積を有するなどの観点からは、担体がカーボン担体であることが好ましい。
【0043】
担体の比表面積は、500m/g以上であることが好ましく、800m/g以上であることがより好ましく、1000m/g以上であることが更に好ましい。
【0044】
脱ベンジル反応用触媒に含まれるNb酸化物粒子において、Nb酸化物は特に限定されないが、Nbを主成分(Nb酸化物中の50wt%以上)とすることが好ましい。本発明の効果をより確実に得る観点からは、Nb酸化物がNbであることが好ましい。
【0045】
脱ベンジル反応用触媒に含まれるPd粒子については、本発明の効果を得られる範囲において、Pd(0価)の他に、Pd酸化物が含まれていてもよく、Pd水酸化物が含まれていてもよく、Pd酸化物及びPd水酸化物が含まれていてもよい。更に、Pd粒子はPd酸化物からなるものであってもよく、Pd粒子はPd水酸化物からなるものであってもよく、Pd粒子はPd酸化物及びPd水酸化物からなるものであってもよい。本発明の効果をより確実に得る観点からは、Pd(0価)の粒子であることが好ましい。
【0046】
また、Pd粒子は、Pd酸化物が含まれている場合、Pd水酸化物が含まれている場合、Pd酸化物及びPd水酸化物が含まれている場合、Pd酸化物からなる場合、Pd水酸化物からなる場合、Pd酸化物及びPd水酸化物からなる場合のいずれの状態にあるときでも、脱ベンジル反応における還元雰囲気化で還元され、反応系内において少なくとも一部がPd(0価)になるものであってもよい。
【0047】
また、本発明の脱ベンジル反応用触媒は、担体に、Pd粒子と、Nb酸化物粒子が担持された状態となっている。また、本発明の効果を得られる範囲で、本発明の脱ベンジル反応用触媒は、担体にPd粒子が担持されたPd担持体と、担体にNb酸化物粒子が担持されたNb酸化物担持体とを所定の配合割合で混合した混合物の状態であってもよい。
【0048】
更に、本発明の脱ベンジル反応用触媒が使用される反応系の溶媒としては、反応物(ベンジル基を有する有機化合物)の少なくとも一部が溶解できる化学的性質を有していれば特に限定されない。例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、炭素数が1~3のアルコールが好ましく挙げられる。これらを任意の割合で混合した混合物を採用してもよい。
【0049】
また、本発明の脱ベンジル反応用触媒が使用される反応系における反応物(ベンジル基を有する有機化合物)は、保護基としてベンジル基を有する有機化合物であれば特に限定されないが、ベンジル基が第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシル基、及び、水酸基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基に対する保護基として前記有機化合物に含まれていることが好ましい。
【0050】
<脱ベンジル反応用触媒の製造方法>
本発明の脱ベンジル反応用触媒の製造方法は、特に限定されず公知の手法の組合せを採用できる。
【0051】
例えば、脱ベンジル反応用触媒は、例えば、担体に、Pd化合物、Nb化合物を、水ななどの分散媒(又は溶媒)に投入しPd化合物やNb化合物を担体へ含侵又は吸着することにより実施して担体にPd粒子とNb酸化物粒子が担持された触媒を得てもよい。更に、Pd化合物やNb化合物を担体へ含侵又は吸着した後の液を必要に応じて還元処理することにより、担体にPd粒子とNb酸化物粒子が担持された触媒を得てもよい。
【0052】
例えば、湿式の還元処理を実施する場合には、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸などの還元剤のほか、ガス状水素を用いることができる。乾式で還元する場合にはガス状水素を用いて行うが、水素ガスを窒素等の不活性ガスで希釈して使用することも可能である。
【0053】
Pdの担体への担持と、Nb酸化物の担体への担持は、同時におこなってもよいし、どちらか一方を先に行い他方を後に行ってもよい。
【0054】
また、本発明の脱ベンジル反応用触媒は、担体にPd粒子が担持されたPd担持体と、担体にNb酸化物粒子が担持されたNb酸化物担持体とをそれぞれ個別に上述の方法で作成し、その後、Pd担持体とNb酸化物担持体とを所定の配合割合で混合した混合物として作成してもよい。
【実施例
【0055】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
<脱ベンジル反応用触媒の調製>
(実施例1)
脱ベンジル反応用触媒として、カーボン担体に、Pd粒子と、Nb酸化物粒子とが担持された触媒{商品名「NEDBZL-9D」、Pdの含有量:8.7wt%、Nbの含有量:表1に記載のR1、N.E.CHEMCAT社製(以下、必要に応じて「Pd-Nb/C」と表記)}を用意した。
このPd-Nb/Cは、Nb酸化物粒子は主成分がNb(XPS分析に基づく結果ではNbが100%)であった。
実施例1の脱ベンジル反応用触媒について、Pdの物質量nPd(mol)とNbの物質量nNb(mol)はICP分析で測定した。
実施例1の脱ベンジル反応用触媒を王水に浸し、金属を溶解させた。次に、王水から不溶成分のカーボンを除去した。次に、カーボンを除いた王水をICP分析した。
このICPの分析結果を用いて、比(nNb/nPd)の値、R1の値、Pdの含有量を算出した。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例2)~(実施例4)
実施例1の脱ベンジル反応用触媒について、Pdの含有量を実施例2(7.7wt%)、実施例3(5.7wt%)、実施例4(4.0wt%)とし、Nb酸化物の割合を変化させ、比(nNb/nPd)の値、R1の値を表1に示した値に変更したこと以外は、実施例1と同様の調製条件、同一の原料を使用して、実施例2~実施例4の脱ベンジル反応用触媒を調製した。Nb酸化物粒子は主成分がNb(XPS分析に基づく結果ではNbが100%)であった。
【0058】
(実施例5)~(実施例11)
実施例1と同様の調製条件、同一の原料を使用して、実施例5~実施例11の脱ベンジル反応用触媒を調製した。
これらの実施例5~実施例11の脱ベンジル反応用触媒は、Pdの含有量、比(nNb/nPd)の値、R1の値、Pdの含有量がそれぞれ実施例4と同一となった。Nb酸化物粒子は主成分がNb(XPS分析に基づく結果ではNbが100%)であった。
【0059】
(比較例1)
脱ベンジル反応用触媒として、カーボン担体に、Pd粒子のみが担持された触媒{商品名「10%Pdカーボン触媒(W)PEタイプ」、Pdの含有量:10wt%、N.E.CHEMCAT社製(以下、必要に応じて「Pd/C」と表記)}を用意した。実施例1の脱ベンジル反応用触媒に対し、Nb酸化物を担持していなこと以外は、実施例1と同様の調製条件、同一の原料を使用して、比較例1の脱ベンジル反応用触媒を調製した。
【0060】
(比較例2)
比較例1と同様の調製条件、同一の原料を使用して、比較例1と同一のPdの含有量を有する脱ベンジル反応用触媒を調製した。
【0061】
<脱ベンジル反応(C1)>
実施例1~実施例4、比較例1の脱ベンジル反応用触媒を使用して、下記化学式(C1)で示される脱ベンジル反応を実施した。なお化学式(C1)中、「Me」はメチル基を示す。
【化1】
【0062】
(反応条件)
式(C1)で示される反応物1: 1mol
脱ベンジル反応用触媒:反応物1に対しPd物質量換算値で0.01mol
溶媒 :トルエン
水素圧 :1atm
反応温度:室温
反応時間:1時間
実施例1~実施例4、比較例1の脱ベンジル反応用触媒について得られた結果を表1に示す。
【0063】
<脱ベンジル反応(C2)>
実施例5、比較例2の脱ベンジル反応用触媒を使用して、下記化学式(C2)で示される脱ベンジル反応を実施した。
【化2】
【0064】
(反応条件)
式(C2)で示される反応物1a: 1mol
脱ベンジル反応用触媒:反応物1に対しPd物質量換算値で0.01mol
溶媒 :メタノール
水素圧 :1atm
反応温度:室温
反応時間:表1に記載
実施例5、比較例2の脱ベンジル反応用触媒について得られた結果を表1に示す。
【0065】
<脱ベンジル反応(C3)>
実施例6の脱ベンジル反応用触媒を使用して、下記化学式(C3)で示される脱ベンジル反応を実施した。
【化3】
【0066】
(反応条件)
式(C3)で示される反応物1b: 1mol
脱ベンジル反応用触媒:反応物1に対しPd物質量換算値で0.01mol
溶媒 :重メタノール (CDOD)
水素圧 :1atm
反応温度:室温
反応時間:表1に記載
実施例6の脱ベンジル反応用触媒について得られた結果を表1に示す。
【0067】
<脱ベンジル反応(C4)>
実施例7の脱ベンジル反応用触媒を使用して、下記化学式(C4)で示される脱ベンジル反応を実施した。
【化4】
【0068】
(反応条件)
式(C4)で示される反応物1c: 1mol
脱ベンジル反応用触媒:反応物1に対しPd物質量換算値で0.01mol
溶媒 :重メタノール (CDOD)
水素圧 :1atm
反応温度:室温
反応時間:表1に記載
実施例7の脱ベンジル反応用触媒について得られた結果を表1に示す。
【0069】
<脱ベンジル反応(C5)>
実施例8の脱ベンジル反応用触媒を使用して、下記化学式(C5)で示される脱ベンジル反応を実施した。
【化5】
【0070】
(反応条件)
式(C5)で示される反応物1d: 1mol
脱ベンジル反応用触媒:反応物1に対しPd物質量換算値で0.01mol
溶媒 :メタノール
水素圧 :1atm
反応温度:室温
反応時間:表1に記載
実施例8の脱ベンジル反応用触媒について得られた結果を表1に示す。
【0071】
<脱ベンジル反応(C6)>
実施例9の脱ベンジル反応用触媒を使用して、下記化学式(C6)で示される脱ベンジル反応を実施した。
【化6】
【0072】
(反応条件)
式(C6)で示される反応物1e: 1mol
脱ベンジル反応用触媒:反応物1に対しPd物質量換算値で0.01mol
溶媒 :重メタノール (CDOD)
水素圧 :1atm
反応温度:室温
反応時間:表1に記載
実施例9の脱ベンジル反応用触媒について得られた結果を表1に示す。
【0073】
<脱ベンジル反応(C7)>
実施例10の脱ベンジル反応用触媒を使用して、下記化学式(C7)で示される脱ベンジル反応を実施した。
【化7】
【0074】
(反応条件)
式(C7)で示される反応物1f: 1mol
脱ベンジル反応用触媒:反応物1に対しPd物質量換算値で0.01mol
溶媒 :重メタノール (CDOD)
水素圧 :1atm
反応温度:室温
反応時間:表1に記載
実施例10の脱ベンジル反応用触媒について得られた結果を表1に示す。
【0075】
<脱ベンジル反応(C8)>
実施例11の脱ベンジル反応用触媒を使用して、下記化学式(C8)で示される脱ベンジル反応を実施した。
【化8】
【0076】
(反応条件)
式(C8)で示される反応物1g: 1mol
脱ベンジル反応用触媒:反応物1に対しPd物質量換算値で0.01mol
溶媒 :メタノール
水素圧 :1atm
反応温度:室温
反応時間:表1に記載
実施例11の脱ベンジル反応用触媒について得られた結果を表1に示す。
【表1】
【0077】
表1に示した結果から、本発明の構成を満たす実施例1~実施例4の脱ベンジル反応用触媒は、比較例1の脱ベンジル反応用触媒と比較し、(C1)で示される脱ベンジル反応の進行を促進し、望みの生成物2(選択率100%)の収率を大きく向上させていることが明らかとなった。
【0078】
また、表1に示した結果から、本発明の構成を満たす実施例5の脱ベンジル反応用触媒は、比較例2の脱ベンジル反応用触媒と比較し、(C2)で示される脱ベンジル反応の進行を促進し、望みの生成物2b(選択率100%)の収率が大きく向上していることが明らかとなった。
【0079】
更に、表1に示した結果から、本発明の構成を満たす実施例6~実施例11の脱ベンジル反応用触媒は、(C3)~(C8)で示される脱ベンジル反応の進行を促進し、望みの生成物2c~2g(選択率100%)の収率が大きく向上していることが明らかとなった。
【0080】
また、実施例1~4、実施例6~11の結果から、反応物がいわゆる芳香族N-ベンジル(式(C2)の反応物1aを参照)の場合に、本発明の脱ベンジル反応用触媒は望みの生成物の収率を大きく向上できる優れた触媒活性を有していることが明らかとなった。更に、実施例5の結果から、反応物がいわゆる脂肪族N-ベンジル(式(C2)の反応物1aを参照)の場合であっても、本発明の脱ベンジル反応用触媒は望みの生成物の収率を大きく向上できる優れた触媒活性を有していることが明らかとなった。
【0081】
以上の結果から、本実施例の脱ベンジル反応用触媒は、ベンジル基を有する有機化合物から当該ベンジル基を脱離させる脱ベンジル反応において、従来のPd担持触媒よりも高い収率で目的生成物(脱ベンジル体)を得られることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の脱ベンジル反応用触媒によれば、ベンジル基を有する有機化合物から当該ベンジル基を脱離させる脱ベンジル反応において、保護基のベンジル基を選択的に脱離でき、従来のPd担持触媒よりも高い収率で目的生成物(脱ベンジル体)を得ることができる。
【0083】
従って、本発明は、有機化合物の第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシル基、及び、水酸基などをベンジル基で保護する必要のある反応プロセスに採用することが有効であり、医薬・農薬・化学試薬の分野での研究開発、量産技術開発に寄与し、ひいては医薬・農薬・化学試薬の産業の発達に寄与にする。