(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】最適化された内部ステム形状を備える中空バルブの製造方法
(51)【国際特許分類】
F01L 3/14 20060101AFI20220627BHJP
B21J 5/06 20060101ALI20220627BHJP
B21J 7/16 20060101ALI20220627BHJP
B21K 1/22 20060101ALI20220627BHJP
F01L 3/20 20060101ALI20220627BHJP
F01L 3/24 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
F01L3/14 A
B21J5/06 C
B21J7/16 A
B21K1/22
F01L3/20 C
F01L3/24 D
(21)【出願番号】P 2019568330
(86)(22)【出願日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2018055048
(87)【国際公開番号】W WO2019001780
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】102017114509.5
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518073055
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル バルブトレイン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL-MOGUL VALVETRAIN GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】トルシュテン マティアス
(72)【発明者】
【氏名】アントニウス ウォルキング
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ハイネック
(72)【発明者】
【氏名】ギド ベイヤード
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-084725(JP,A)
【文献】特開2013-155676(JP,A)
【文献】特開平06-299816(JP,A)
【文献】特開2012-197718(JP,A)
【文献】特開2014-166644(JP,A)
【文献】特許第4390291(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 3/00~ 3/24
B21J 5/06
B21J 7/16
B21K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最適化された内部ステム形状を備える中空バルブにおけるバルブ本体の製造方法であって、
・円筒状キャビティ(8)を包囲する環状壁(6)、並びにベース部(10)を備えるボウル状半製品(4)を提供するステップと、
・前記ベース部(10)からバルブヘッド(12)を形成するステップと、
・外面に
前記環状壁(6)の内面に形成される表面拡大構造部と相補的な構造部を有するマンドレルを前記円筒状キャビティ(8)内に差し込み、前記環状壁(6)を
フォーミング加工によって軸線方向に延長するステップと、
・マンドレルを差し込まずに、ロータリースウェージングによって前記環状壁(6)の外径を減少させ、これにより前記完成したバルブ本体(16)において所定の外径(D)を有するバルブステム(14)を得るステップと、
を含む方法において、
前記環状壁の延長時に、異なる直径及び連続的に減少する複数のマンドレルを使用し、少なくとも最後に使用するマンドレルが、
前記構造部が設けられた外面を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記ボウル状半製品を提供する前記ステップが、少なくとも部分的に円筒状のブランク(2)を提供すること、並びに前記ブランク(2)から前記ボウル状半製品(4)を形成することを含む方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記ボウル状半製品(4)の形成を熱間成形法、特に後方缶押出又は鍛造で行う方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の方法であって、前記バルブヘッド(12)の形成を熱間成形法、特に後方缶押出又は鍛造で行う方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の方法であって、前記環状壁(6)の延長を、マンドレルを使用するロータリースウェージング、又はしごき加工で行う方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の方法であって、前記マンドレルの前記構造部が、その前記外面に溝を含み、前記外面に互いに分離した隆起部を含み、又は前記外面に隆起部及び窪みハニカム構造部を含む方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の方法であって、冷却剤、特にナトリウムを前記キャビティ内に充填するステップと、前記バルブステムを閉鎖するステップとを更に含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の中空バルブの製造方法、並びに本発明に係る方法に基づいて製造された中空バルブに関する。本発明は、特に、内部冷却を向上させる最適化された内部ステム形状を備える中空バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
吸気バルブ及び排気バルブは、内燃機関の構成要素であり、大きな熱的及び機械的応力を受ける。従って、十分な冷却により、バルブの長期的な機能性を保証する必要がある。この点に関して、中空バルブは、中実ステムバルブ及び中空ステムバルブに比べて、ステム及びバルブヘッドの両方にキャビティが設けられているために有利であり、これにより内部冷却の改善を図ることができる。更なる利点としては、軽量化、ホットスポットの回避、並びにCO2の削減を挙げることができる。冷却は、内部ステム形状を最適化することにより更に改善することができる。この場合に冷却は、キャビティ内、即ちキャビティ内における冷却剤の熱輸送によってのみならず、バルブ壁と冷却剤との間の熱輸送によって高めることができる。この点に関しては、例えば、特許文献1(独国特許第10057192号明細書)に記載のように、ドリル加工されたディスク表面を通してステム内に差し込まれるインサートの使用が知られている。
【0003】
中空バルブは、典型的には、様々な加工法の組み合わせ、例えば、鍛造、旋削、並びに溶接によって製造される。この場合、特にキャビティの旋削又はフライス加工にかかるコストが大きい。更に、ディスク表面又は作動時における他の重要箇所の溶接点も回避されるのが望ましい。既知の方法における他の欠点は、多数の加工ステップがしばしば必要なことである。例えば、特許文献2(米国特許出願公開第6006713号明細書)に開示の技術は、中空ブランクを溶接によって閉鎖して製造される中空バルブに関する。
【0004】
内部冷却バルブの更なる例としては、特許文献3(特開2014-084725号公報)、特許文献4(特開2011-179390号公報)、特許文献5(特開2009-138594号公報)、特許文献6(実開平3-52309号公報)、特許文献7(実開昭63-171605号公報)、特許文献8(中国実用新案第202900355号明細書)、特許文献9(中国実用新案第205154285号明細書)、特許文献10(特開2014-166644号公報)、並びに特許文献11(欧州特許出願公開第2690262号明細書)が知られている。これら文献には、成形により、内部冷却バルブを製造するための様々な方法が開示されている。これら文献の幾つかには、冷却剤とバルブ本体との間の熱伝達の改善を目的とするバルブキャビティ内部の構造部も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許第10057192号明細書
【文献】米国特許出願公開第6006713号明細書
【文献】特開2014-084725号公報
【文献】特開2011-179390号公報
【文献】特開2009-138594号公報
【文献】実開平3-52309号公報
【文献】実開昭63-171605号公報
【文献】中国実用新案第202900355号明細書
【文献】中国実用新案第205154285号明細書
【文献】特開2014-166644号公報
【文献】欧州特許出願公開第2690262号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、最適化された内部ステム形状を備える中空バルブ、並びに上述した欠点を有することがなく、生産性が高く、かつ、良好な材料利用性を有するその中空バルブの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴を有する中空バルブの製造方法により解決される。好適な実施形態は、従属請求項に記載したとおりである。
【0008】
本発明の方法に従って製造された最適化された内部ステム形状を備える中空バルブは、バルブヘッドを有するバルブ本体と、バルブステムとを備え、バルブステムに、その長手方向軸線に延在するバルブステムキャビティが設けられ、バルブステムの内面に、表面拡大構造部が設けられている。
【0009】
本発明の一態様によれば、構造部は、内面に配置されたリブを含むことができる。
【0010】
他の態様によれば、リブは、長手方向軸線に対して角度付きで延在することができる。
【0011】
他の態様によれば、リブの高さは、軸線方向に変化させることができる。
【0012】
他の態様によれば、構造部は、内面において互いに分離した窪みを含むことができる。
【0013】
他の態様によれば、構造部は、互いに隣接配置されたハニカム部を含むことができる。
【0014】
他の態様によれば、内面は、異なる構造部を有する複数の領域を含むことができる。
【0015】
更に、本発明の課題は、最適化された内部ステム形状を備える中空バルブにおけるバルブ本体の製造方法、即ち、円筒状キャビティを包囲する環状壁、並びにベース部を有するボウル状半製品を提供するステップと、ベース部からバルブヘッドを形成するステップと、
外面に構造部を有するマンドレルをキャビティ内に差し込み、環状壁を形成によって軸線方向に延長するステップと、マンドレルを差し込まずに、ロータリースウェージングによって環状壁の外径を減少させ、これにより完成したバルブ本体において所定の外径を有するバルブステムを得るステップとを含む方法により解決される。
【0016】
本発明の他の態様によれば、ボウル状半製品を提供するステップは、少なくとも部分的に円筒状のブランクを提供すること、並びにブランクからボウル状半製品を形成することを含む。
【0017】
本発明に係る方法の他の態様によれば、ボウル状半製品の形成は熱間成形法、特に後方缶押出又は鍛造で行うことができる。
【0018】
本発明に係る方法の他の態様によれば、バルブヘッドの形成は熱間成形法、特に後方缶押出又は鍛造で行うことができる。
【0019】
本発明に係る方法の他の態様によれば、環状壁の延長は、マンドレルを使用するロータリースウェージング、又はしごき加工で行うことができる。
【0020】
本発明に係る方法の他の態様によれば、マンドレルの構造部は、その外面に溝を含み、外面に互いに分離した隆起部を含み、又は外面に隆起部及び窪みで構成されたハニカム構造部を含むことができる。
【0021】
本発明に係る方法の他の態様によれば、環状壁の延長時に、異なる直径及び連続的に減少する複数のマンドレルを使用することができ、少なくとも最後に使用するマンドレルは、構造部が設けられた外面を有する。
【0022】
他の態様によれば、本発明は、冷却剤、特にナトリウムをキャビティ内に充填し、バルブステムを閉鎖するステップを更に含むことができる。
【0023】
更に、本発明の課題は、最適化された内部ステム形状を備えると共に、上述した方法で製造されたバルブ本体を備える中空バルブにより解決される。
【0024】
以下、本発明の例示的な実施形態を図面に基づいて詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1A~
図1Fは、中空バルブ(
図1F参照)のバルブ本体をブランク(
図1A参照)から製造する本発明に係る製造方法の様々な中間ステップを示す説明図である。
【
図2A】本発明に係るバルブステムを示す断面図である。
【
図2B】
図2Aにおける実施形態のバルブステムの内面を部分的に示す説明図である。
【
図3】
図3A~
図3Cは、本発明に係る他の実施形態の各バルブステムにおける内面を部分的に示す説明図である。
【
図4】2つの異なる構造部を有するバルブステムの内面を部分的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1F及び
図2Aは、それぞれ、本発明に係る中空バルブ又はバルブ本体16の軸線方向断面図(即ち、バルブステム14の長手方向軸線が断面平面に位置している)、並びに半径方向断面図(即ち、断面平面が長手方向軸線に対して直交している)を示す(バルブの長手方向軸線によって軸線方向が規定される)。中空バルブのバルブ本体16は、バルブヘッド12、並びに外径Dを有するバルブステム14を含む。この場合、長手方向軸線に平行に延在するキャビティの形態のバルブステムキャビティ18は、バルブステム14内に位置している。バルブステム14の内面20、即ち、バルブステムキャビティとバルブステム壁との間の境界面には、表面拡大構造部が設けられている。
図2Aは、そのような構造部の例を示し、この場合、長手方向軸線に平行に延在するリブが内面20に配置されている。リブ以外の他の構造部が配置されてもよく、更なる例については以下に
図3A~
図3Cとの関連で説明する。
【0027】
バルブステム壁と冷却液又は冷却剤との間の熱伝達は、表面拡大構造部によって高められている。従って、内部冷却が改善され、ホットスポットの形成が回避される。これにより、エンジンの動作も改善される。このように、最適化された内部形状を備える中空バルブが表されている。
【0028】
表面拡大構造部は、バルブステム14壁における特定の深さ範囲を含み、その深さ範囲は、隆起部22(
図2Aのリブ)と称される隆起領域、並びに窪み24と称される窪み領域によって特徴付けられる。この場合、「より高い」及び「より低い」、並びにその用語に対応する「高さ」及び「深さ」は、バルブステム壁から見た延長部に関連する。即ち、より高い領域(隆起部)は、より低い領域(窪み)に比べて半径方向内方に延在している。一般的に、指定された「基準面」が存在しないため、「より高い」及び「より低い」は互いに対して理解される用語である。隆起部と窪みとの間の移行部は、
図2Aに示す半径方向における急峻な移行部(側面)とは異なり、スムーズに形成する及び/又は湾曲するよう形成することができる。
図2Aに示す構造部の移行部において、例えばステップを滑らかにすることにより、周方向に起伏を得ることができる。
【0029】
図2B及び
図3A~3Cは、バルブステム14における内面20の構造部を部分的に示す。この場合、バルブステム14における内面20の構造部は概略的にのみ表されており、特に、幾つかの図(
図3B、
図3C、
図4)において、構造部は、図示の表面を完全には覆っていない。これは、図面を簡略化するためであり、構造部がバルブステムの内面全体又は内面全体における任意の領域に亘って延在できないことを意味しない。
【0030】
上述した好適な実施形態によれば、軸線方向に延在するリブは、バルブステム14の内面20に位置している。即ち、隆起部22は、リブとして形成され、また窪み24は、リブ間に位置する領域(溝)に対応している。この点に関して、
図2Aは、バルブステム14の断面図を示し、
図2Bは、バルブステムにおける内面22の部分図を示す。図面の明瞭性を維持するため、1つの隆起部22及び1つの窪み24にのみ参照符号が付されている。この点は、
図3A~
図3Cについても同様である。
【0031】
リブ及び隆起部の個数は、バルブの寸法に応じて決定可能であり、好適には10~50個のリブ、より好適には20~25個のリブが周方向に配置されている。更に、異なるリブの高さ及び/又は同じリブ内の高さを変えることも可能である(図示せず)。この場合、例えば、周方向においてより高いリブ及びより低いリブを交互に配置し、又はリブの高さを軸線方向において例えばバルブヘッドからステム端部に向けて小さくすることができる。
【0032】
図3Aの構成は、
図2A及び
図2Bに示す構成と極めて似ているが、隆起部22、即ちリブは、軸線方向(長手方向)に平行ではなく、軸線方向に対して角度付きで延在している点で異なる。図示の構成により、雌ねじ形状が得られる。
図2A及び
図2Bの実施形態に関して上述したリブの個数、高さ又は高さ変化の説明は、
図3Aの実施形態についても当てはまる。
【0033】
構造部の他の想定可能な構成においては、バルブステムの内面が実質的に(真)円筒面形状を有する。この場合、互いに分離配置された複数の窪みが円筒面から半径方向外方のバルブステム壁に向けて延在している。この構成は、
図3Bに例示されており、円形の窪み24がバルブステムの内面20に設けられている。全体的、即ち三次元的には、窪み24は球状セグメント形状を有することができる。円形の窪み以外の他の実現可能な形状には、例えば、平面図で見て、楕円形、長方形、又は四角形がある。また、深さ方向における構成も、球状セグメントではなく、例えば、円形、楕円形、長方形、又は四角形とすることができる。この場合、平面図においては円形であり、深さ方向においては長方形の窪みは、バルブステム壁に対して軸線方向に押し込まれた円筒部に対応する形状を有し、これに対して、平面図においては長方形であり、深さ方向においては円形の窪みは、バルブステム壁に対して半径方向に押し込まれた円筒部に対応する形状を有する(この文脈において、「軸線方向」及び「半径方向」とは、バルブステム壁に対して押し込まれるべき円筒部の方向に関連する)。平面図及び深さ方向に関して上述した形状の他の任意の組み合わせも同様に実現することができる。
【0034】
図3Cは、隣接するハニカム部(六角形)によるハニカム構造部を例示的に示す。この場合、隆起部22はやや太線で表され、窪み24はこれら隆起部に包囲されている。隆起部と窪みとの間の移行部は、好適には、鋭利な角ではなく丸みを帯びている。図示の表面は、実質的にゴルフボールの表面に対応している。一般的に、「ハニカム部」は、非六角形の形状、例えば、正方形又は長方形の形状を有していてもよい。ただし、これらハニカム部を隣接配置することによって全面的な構造部を得る必要があり、そのために、必要に応じて異なる形状のハニカム部を使用することができる。
【0035】
図3B及び
図3Cに例示する構成においても、個数、寸法、並びに隆起部及び窪みの高さ/深さは、バルブの寸法及びバルブにおける所望の特性(特に熱輸送特性)に応じて構成することができる。更に、バルブステムにおける内面の様々な領域間において、隆起部及び窪みの高さ/深さを変化させることができる。
【0036】
更に、バルブステムの内面においては、互いに異なる構造部が設けられた複数の領域を構成することも想定可能である。この構成は、
図4に例示されており、
図3B及び
図3Cに示す構造部が2つの異なる領域に配置されている。
【0037】
本発明によれば、上述した最適化された内部形状、即ちバルブステムの内面に構造部を備える中空バルブは、以下に説明する方法によって製造される。
【0038】
図1A~
図1Fは、本発明に係る製造方法の様々な中間ステップにおける軸線方向断面図を示す。出発点としては、好適には、当業者に既知のバルブ鋼で構成されたブランク2が使用される(
図1A参照)。ブランクは、少なくとも部分的に円筒形状、好適には、真円筒形状を有し、製造すべきバルブ本体又はバルブの円筒形状に対応している。
【0039】
ブランク2は、
図1Bに示すボウル状半製品4又はワークピースに形成される。ボウル状半製品は、後のステップでバルブヘッド(又はバルブディスク)12に形成されるベース部10、並びにボウル状半製品4の円筒状、好適には、真円筒状のキャビティ8を包囲すると共に、後のステップでバルブステム14に形成される環状壁6を有する。この点に関しては、後の成形ステップ時に、ベース部10と環状壁6との間で材料の流れが生じ得る。本発明によれば、より一般的には、ボウル状半製品4は直接に提供される。この場合、本発明に係る方法は、
図1Bに示すボウル状半製品4を提供するステップから開始する。
【0040】
バルブヘッド12は、後のステップにおいてベース部10から形成される。これにより得られたワークピースは
図1Cに示す。
【0041】
ボウル状ワークピース4へのブランク2の形成及びベース部10からバルブヘッド12への形成は、好適には、熱間成形法で行うのが好適である。更に、後方缶押出又は鍛造による加工も好適である。後方缶押出においては、スタンプがブランク2内に押し込まれることによりキャビティ8が形成される。
【0042】
次の加工ステップにおいては、環状壁6の軸線方向長さが増加される。この文脈において、「軸線方向」とは、ステムによって規定される長手方向、即ち環状壁の軸線方向を指す。これに対応するように、「半径方向」とは、軸線方向に直交する方向を指す。長さを効果的に増加させるため、このステップにおいては、マンドレル(図示せず)がキャビティ内に差し込まれ、従って半径方向への材料の流れが回避され、材料の流れが主として軸線方向に生じる。これにより、環状壁6の内径及び壁厚を所望の値に調整することができる。更に、この成形ステップおいては、複数のサブステップが含まれてもよく、これら複数のサブステップでは、任意的に、複数のマンドレルが直径の減少する順に差し込まれる。このようにして得られた半製品の形状は、
図1D及び
図1Eに例示されている。この場合、先ずは、より大きな直径を有するマンドレルを使用して
図1Dに示す半製品の状態が得られ、次いで、より小さな直径を有するマンドレルを使用して
図1Eに示す状態が得られる。言うまでもなく、異なる直径を有するマンドレルを3個以上使用することも可能である。
【0043】
マンドレル、又は複数のマンドレルが使用される場合、少なくとも最後に使用されるマンドレルは、バルブステム14における内面20の所望の表面拡大構造部と相補的な構造部をその外面に有する。材料は、ロータリースウェージングによって半径方向内方に向けても流れるため、構造部は、マンドレルの外面からバルブステムの内面に伝達されると共にバルブステムの内面に刻み込まれる。特に、マンドレルの外面は、
図2B及び
図3A~
図3Cに関連して上述した構造部と相補的であり得る。即ち、マンドレルは、その外面にリブと相補的な(溝状の)窪みを有することができ(
図2B,
図3A参照)、窪みと相補的な隆起部を有することができ(より正確には、
図3Bに関連して互いに分離した隆起部を有することができ)、又はハニカム構造部と相補的な隆起部及び窪みを有するハニカム状構造部を有することができる(
図3C参照)。
【0044】
延長又は延伸するための成形加工法としては、好適には、マンドレルを使用するロータリースウェージング又はしごき加工が行われる。
【0045】
最後に、環状壁6の外径は、スウェージングで減少することにより、バルブステムキャビティ18を有する完成したバルブ本体16が得られる。この場合、完成バルブ本体16のバルブステム14は、所定の外径D、即ち所望の目標直径を有する(
図1F参照)。この成形ステップは、好適には、マンドレルが差し込まれることなく行われるため、直径が効果的に減少すると共に、予めバルブステム14の内面20に刻み込まれた構造部が破壊されることがない。このステップは、外径の減少のみならず、環状壁6の更なる延長をもたらし、マンドレルが差し込まれない場合には、環状壁の壁厚の増加をもたらす。従って、壁厚については、最終ステップにおける壁厚の増加を考慮し、先行する延長ステップにおいて任意的に若干小さく調整し、これにより所定の厚さ、従って所定の外径Dに関して所定の内径を得るものとする。予め刻み込まれた構造部も、若干変化する可能性がある。従って、バルブステムの内面において所定の構造部を得る場合、先行するステップで使用されるマンドレルにおける外面の構造部は、刻み込まれた構造部の変化が補償されるよう選択する必要がある。
【0046】
この場合に重要なことは、環状壁6の外径を減少させるためのロータリースウェージングが行われた後、バルブ本体16への更なる成形ステップが行われないことである。これは、ロータリースウェージングによって得られた有利な材料特性に悪影響を及ぼすと共に、バルブステムにおける内面の構造部を破壊する可能性があるからである。従って、ロータリースウェージングが最終的な成形ステップである。ロータリースウェージングとは、増加圧力成形加工法のことであり、その成形加工においては、加工されるワークピースが半径方向の様々な側面からハンマーなどで連続的に叩かれる。叩かれることで生じる圧力により、材料はいわば「流れ」、材料構造が引張応力によって歪みを生じることがない。ロータリースウェージングは、好適には、冷間成形法、即ち機械加工された材料の再結晶温度未満で行われる。
【0047】
即ち、最終的な成形ステップとしてロータリースウェージングを行うことの大きな利点は、ロータリースウェージング時に、半径方向への力伝達によって圧縮応力が生じ、これによりクラックの発生を高める引張応力の生成が回避されることである。このことは、特に中空ステムのエッジ層に当てはまる。このような不所望な引張応力は、例えば、引き抜き加工又は「ネッキング」(収縮加工、即ち収縮による直径の減少)が行われる場合に発生する。ロータリースウェージングは、特にワークピース内における連続的な粒子流を可能にする。最終的な成形ステップとして引き抜き加工又はネッキングよりもロータリースウェージングを行う更なる利点は、より良好な表面品質が得られると共に、各ステップにおけるステム直径の減少が比較的大きいことである。より良好な表面品質が得られると共に、ロータリースウェージングによって維持可能な公差が極めて小さいため、バルブステムの後加工は通常は不要である。ネッキングなどのフリーフォーム加工又は圧縮加工の場合、得られる表面品質又は維持可能な公差は通常はより不良である。従って、ロータリースウェージング後においては、特に環状壁の外径を減少させるための引き抜き加工又はネッキングによる方法ステップが行われることはない。
【0048】
中空バルブの製造工程を完了するために、バルブステムにおいて外方に向けて開放された端部からナトリウムなどの冷却剤をバルブ本体のキャビティ内に充填し、その後にバルブステムの端部を、例えば、摩擦溶接又は他の溶接法によって取り付けられるバルブステム端部ピースで閉鎖することもできる(図示せず)。
【符号の説明】
【0049】
2 ブランク
4 ボウル状半製品
6 環状壁
8 円筒状キャビティ
10 ベース部
12 バルブヘッド
14 バルブステム
16 完成したバルブ本体
18 バルブステムキャビティ
20 構造部を有するバルブステムの内面
22 隆起部
24 窪み
D バルブステム外径