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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】グロメット及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20220627BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220627BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20220627BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
H02G3/22
B60R16/02 622
H01B17/58 C
H01B7/00 301
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020030059
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021136744
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】飯島 彬友
(72)【発明者】
【氏名】加藤 桂介
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-73408(JP,A)
【文献】特開2014-46844(JP,A)
【文献】特開2018-46704(JP,A)
【文献】特開2016-59188(JP,A)
【文献】特開2017-99168(JP,A)
【文献】特開2015-186399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
B60R 16/02
H01B 17/58
H01B 7/00
H02G 3/04
F16L 5/02
H01B 7/282
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を通過させるための貫通孔が設けられた組付け対象のパネルよりも柔軟な有底筒状に形成され、その軸方向が前記貫通孔を通る姿勢で当該貫通孔を塞ぐように前記パネルに組付けられるグロメット本体部と、
前記グロメット本体部の底壁における外面から各々がチューブ状に突出し、各内側に前記電線を通す複数のチューブ部と、
前記複数のチューブ部の相互間を区画し、前記底壁に対する外面視で凹となり内面視で凸となるように前記底壁に形成された溝状、又は前記外面視で凸となり前記内面視で凹となるように前記底壁に形成された突条状、の区画部と、
前記溝状の前記区画部における内側面又は前記突条状の前記区画部における外側面を避けつつ、前記区画部を跨いで前記底壁の前記外面、及び、前記溝状の前記区画部における内底面又は前記突条状の前記区画部における外天面にレリーフ状に分割形成され、全体として一のマークを構成するマーキング部と、
を備えたことを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記マーキング部が、前記グロメット本体部の前記パネルへの組付け方向を示すマークを構成することを特徴とする請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記マーキング部が、前記区画部の前記内底面又は前記外天面、前記底壁の前記外面における前記区画部を挟んだ一対の領域、のそれぞれに頂点が配置された三角形のマークであって、前記区画部の前記内底面又は前記外天面に位置する頂点で前記組付け方向を示すことを特徴とする請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記マーキング部が、凸レリーフ状に形成された凸マークであることを特徴とする請求項1~3のうち何れか一項に記載のグロメット。
【請求項5】
前記区画部における一対の側壁が、前記内底面又は前記外天面から離れるにつれて相互間隔が拡がるように傾斜した傾斜壁であることを特徴とする請求項1~4のうち何れか一項に記載のグロメット。
【請求項6】
請求項1~5のうち何れか一項に記載のグロメットと、
前記複数のチューブ部それぞれに通された前記電線と、
を備えたことを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を保護するグロメット、及びそのようなグロメットを備えたワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両における金属製のパネル等に設けられた貫通孔を通過する電線を、その貫通孔の内周縁等から保護するために、ゴム等の柔軟な材料で形成されたグロメットが利用されている。このとき、パネルへの組付け方向等のマークを示すレリーフ状のマーキング部が設けられたグロメットが知られている(例えば、特許文献1参照。)このようなマーキング部により、組付け対象のパネル等への誤組付け等を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-46844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、グロメットの中には、各々の内側に電線を通す複数のチューブ部を有するものがある。そして、このようなタイプのグロメットでは、各チューブ部の向きを柔軟に変えて配策時に電線の配策方向を変えられる良好な作業性が得られるように、複数のチューブ部の相互間を区画する溝状又は突条状の区画部が形成されることがある。
【0005】
上述したマーキング部は、視認性の観点からグロメットにおける目立つ場所になるべく大きく形成されることが望ましい。しかしながら、上記のように配策時の作業性に配慮した区画部が設けられたグロメットについては、レリーフ状のマーキング部を設ける際に次のような制限を受ける場合がある。即ち、レリーフ状のマーキング部を大きく目立つように例えば区画部を跨いで設けると、区画部の肉厚が変わってチューブ部の動きが妨げられて配策時の作業性が損なわれる恐れがある。従って、区画部が設けられたグロメットについては、配策時の作業性を損なうことがないようにマーキング部の形成位置や大きさが制限されることある。
【0006】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、配策時の作業性とマーキング部の視認性とを両立させることができるグロメット及びワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、グロメットは、電線を通過させるための貫通孔が設けられた組付け対象のパネルよりも柔軟な有底筒状に形成され、その軸方向が前記貫通孔を通る姿勢で当該貫通孔を塞ぐように前記パネルに組付けられるグロメット本体部と、前記グロメット本体部の底壁における外面から各々がチューブ状に突出し、各内側に前記電線を通す複数のチューブ部と、前記複数のチューブ部の相互間を区画し、前記底壁に対する外面視で凹となり内面視で凸となるように前記底壁に形成された溝状、又は前記外面視で凸となり前記内面視で凹となるように前記底壁に形成された突条状、の区画部と、前記溝状の前記区画部における内側面又は前記突条状の前記区画部における外側面を避けつつ、前記区画部を跨いで前記底壁の前記外面、及び、前記溝状の前記区画部における内底面又は前記突条状の前記区画部における外天面にレリーフ状に分割形成され、全体として一のマークを構成するマーキング部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、ワイヤハーネスは、上述のグロメットと、前記複数のチューブ部それぞれに通された前記電線と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上述のグロメットによれば、溝状又は突条状の区画部で区画された複数のチューブ部は、区画部の幅を拡縮するように各チューブの向き、即ち配策時の電線の配策方向が変えられる。このとき、レリーフ状のマーキング部が、区画部の幅の拡縮に影響を与えやすい、溝状の区画部の内側面又は突条状の区画部の外側面を避けて設けられている。マーキング部がこのように形成されていることで、配策時の良好な作業性を得ることができる。そして、上記のグロメットによれば、上記箇所を避けつつ、区画部を跨いで底壁の外面、及び、区画部における内底面又は区画部における外天面にレリーフ状に分割形成され、全体として一のマークを示すように形成されている。このような分割形成により、配策時の作業性への影響を抑えつつも、マーキング部を視認性の良好な目立つ場所に大きく形成することが可能となる。即ち、上記のグロメットによれば、配策時の作業性とマーキング部の視認性とを両立させることができる。
【0010】
また、上述のワイヤハーネスによれば、電線保護のために上述のグロメットが採用されていることから、配策時の作業性とマーキング部の視認性とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態のグロメットが適用されたワイヤハーネスを、グロメットの組付け対象であるパネルとともに見た斜視図である。
図2図1に示されているマーキング部を、図1中の領域A11の拡大図で示す図である。
図3図2中のV11-V11線に沿ったマーキング部の断面図である。
図4図1図3に示されているグロメットと比較するための第1比較例を示す図である。
図5図4中のV12-V12線に沿った断面図である。
図6図1図3に示されているグロメットと比較するための第2比較例を示す図である。
図7図6中のV13-V13線に沿った断面図である。
図8図6及び図7に示されている第2比較例において、電線の配策の作業性の点で改善の余地が見られる様子を示す模式図である。
図9図1図3に示されているグロメットにおいて、電線の配策時の良好な作業性が得られる様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、グロメット及びワイヤハーネスの一実施形態について説明する。
【0013】
図1は、一実施形態のグロメットが適用されたワイヤハーネスを、グロメットの組付け対象であるパネルとともに見た斜視図である。
【0014】
このワイヤハーネス1は、車両に搭載されるもので、車体を構成する金属パネルとしてのパネルP10に設けられた貫通孔P11に電線20が通過するように配策される。ワイヤハーネス1は、グロメット10と、電線20の2本の束と、を備えている。
【0015】
グロメット10は、パネルP10よりも柔軟なゴム等の樹脂で形成され、電線20の2本の束を支持して、パネルP10の貫通孔P11の内周縁P111から保護しつつこの貫通孔P11を通過させる。このグロメット10は、グロメット本体部11と、複数(本実施形態では2本)のチューブ部12と、区画部13と、マーキング部14と、を備えている。
【0016】
グロメット本体部11は、有底筒状に形成され、その軸方向D11が貫通孔P11を通る姿勢で当該貫通孔P11を塞ぐようにパネルP10に組付けられる。ここで、本実施形態では、グロメット本体部11は、底壁111が長円形となった有底の円錐台筒状に形成されている。図1では、底壁111を図中上側に向け、開口11aを下側に向けて図示されている。グロメット本体部11の開口11a側には、貫通孔P11を図中でパネルP10の裏面側に潜ってこの裏面側から貫通孔P11の周囲に密着するフランジ部112が設けられている。また、グロメット本体部11の周壁113におけるフランジ部112寄りに、パネルP10への組付けに際して貫通孔P11の内周縁P111が嵌入して係止する係止溝114が周方向に一周に亘って形成されている。グロメット本体部11は、この係止溝114に貫通孔P11の内周縁P111が係止し、パネルP10の裏面側から貫通孔P11の周囲にフランジ部112が密着することで、貫通孔P11を水密に塞ぐようにパネルに組付けられる。
【0017】
チューブ部12は、グロメット本体部11と一体に形成された箇所で、グロメット本体部11の底壁111における外面からチューブ状に突出し、その内側に電線20の束を通す。本実施形態では、このチューブ部12として、電線20の太束を通す太チューブ121と細束を通す細チューブ122との2本が形成されている。
【0018】
区画部13は、2本のチューブ部12の相互間を区画し、底壁111に対する外面視で凹となり内面視で凸となるように底壁111に形成された溝状の部位である。
【0019】
マーキング部14は、溝状の区画部13における内側面131を避けつつ、区画部13を跨いで底壁111の外面、及び、溝状の区画部13における内底面132にレリーフ状に分割形成され、全体として一のマークを構成する部位である。
【0020】
図2は、図1に示されているマーキング部を、図1中の領域A11の拡大図で示す図であり、図3は、図2中のV11-V11線に沿ったマーキング部の断面図である。
【0021】
上述したように、このマーキング部14が跨いで形成される区画部13は、底壁111に対する外面視で凹となり内面視で凸となった溝状の部位である。そして、マーキング部14は、区画部13の内側面131を避けつつ、底壁111の外面、及び区画部13の内底面132にレリーフ状に分割形成されている。
【0022】
このマーキング部14は、グロメット本体部11のパネルP10への組付け方向を示すマークを構成する。そして、マーキング部14は、区画部13の内底面132、底壁111の外面における区画部13を挟んだ一対の領域111a、のそれぞれに頂点141が配置された三角形のマークとなっている。図1に示されているように、パネルP10における貫通孔P11の近傍には、このパネルP10側においてグロメット本体部11(即ち、グロメット10)の組付け方向を示すマークP12が形成されている。上述した三角形のマークとなったマーキング部14は、区画部13の内底面132に位置する、底壁111の外縁に最も近い一の頂点141aで組付け方向を示す。グロメット10の組付け時には、この内底面132の頂点141aをパネルP10側のマークP12に合わせるようにして位置決めされた状態でグロメット本体部11(即ち、グロメット10)の組付けが行われることとなる。
【0023】
そして、本実施形態では、このようなマーキング部14が、凸レリーフ状に形成された凸マークとなっている。また、区画部13における上記の内側面131を有する一対の側壁133が、内底面132から離れるにつれて相互間隔が拡がるように傾斜した傾斜壁となっている。
【0024】
図4は、図1図3に示されているグロメットと比較するための第1比較例を示す図であり、図5は、図4中のV12-V12線に沿った断面図である。
【0025】
図4及び図5に示されている第1比較例は、図1図3に示されているグロメット10とはマーキング部54が異なっており、図4及び図5では図2及び図3との同一構成要素については図2及び図3と同じ符号が付されている。以下では、これら同一構成要素の重複説明は割愛し、相違点である第1比較例のマーキング部54について説明を行う。
【0026】
第1比較例のマーキング部54は、パネルP10への組付け方向を示す三角形の凸レリーフ状のマークであるが、溝状の区画部13の内底面132に収まるように小さく形成されている。パネルP10へのグロメット50の組付け時には、この小さなマーキング部54における底壁111の外縁に最も近い一の頂点541をパネルP10側のマークP12に合わせるようにして位置決めされた状態で組付けが行われる。
【0027】
しかしながら、この第1比較例ではマーキング部54が小さく、その視認性の点で改善の余地が見られる。
【0028】
図6は、図1図3に示されているグロメットと比較するための第2比較例を示す図であり、図7は、図6中のV13-V13線に沿った断面図である。
【0029】
図6及び図7に示されている第2比較例も、上述の第1比較例と同様に図1図3に示されているグロメット10とはマーキング部64が異なっており、図6及び図7では図2及び図3との同一構成要素については図2及び図3と同じ符号が付されている。以下では、これら同一構成要素の重複説明は割愛し、相違点である第2比較例のマーキング部64について説明を行う。
【0030】
第2比較例のマーキング部64は、パネルP10への組付け方向を示す三角形の凸レリーフ状のマークであり、底壁111の外面において区画部13を挟む一対の領域の一方から他方に掛けて区画部13を部分的に埋めるように跨いで一体形成されている。パネルP10へのグロメット60の組付け時には、このマーキング部64における底壁111の外縁に最も近い一の頂点641をパネルP10側のマークP12に合わせるようにして位置決めされた状態で組付けが行われる。
【0031】
この第2比較例ではマーキング部64が大きく、その視認性の点で改善されている。その一方で、グロメット60の組付けに続いて行われる電線20の配策の作業性の点で以下に説明する改善の余地が見られる。
【0032】
図8は、図6及び図7に示されている第2比較例において、電線の配策の作業性の点で改善の余地が見られる様子を示す模式図である。この図8でも、図1図3との同一構成要素については図1図3と同じ符号が付されている。
【0033】
グロメット60に設けられている溝状の区画部13は、各チューブ部12の向きを柔軟に変えて配策時に電線20の配策方向を変えられる良好な作業性が得られるように形成されている。パネルP10へのグロメット60の組付けに続く電線20の配策時にチューブ部12の向きを変える際には、矢印D12で示されているように区画部13を拡縮させるように内側面131が動いてチューブ部12の向きの変更を助けるようになっている。図8の例では、2本のチューブ部12が互いに離れて倒されるように向きを変えられて電線20が配策され、太束の電線20が端末機器E10に接続されている。
【0034】
このとき、第2比較例では、区画部13を跨いで形成されたマーキング部64が、溝状の区画部13の一部を埋めるように形成されている。その結果、区画部13を埋めている部分の肉厚が厚くなり、電線20の配策によって向きを変えられた各チューブ部12を元の位置に復位させる復元力F11が強く働きがちとなる。この復元力F11はチューブ部12の動きを妨げることから電線20の配策時の作業性が損なわれる恐れがある。また、上記の復元力F11は電線20や、その先の端末機器E10に対する引っ張り力F12としても働くこととなる。このような引っ張り力F12は配策した電線20や端末機器E10の位置を変えてしまう恐れがあり、配策後のチューブ部12や電線20や端末機器E10を固定する何等かの手段が必要となる場合がある。配策中にこのような手段を講じることは、それ自体が配策時の作業性を損なう恐れがある。このように、第2比較例では、電線20の配策の作業性の点で改善の余地が種々見られる。
【0035】
これらの比較例に対し、図1図3に示されているグロメット10によれば、レリーフ状のマーキング部14が、溝状の区画部13の内側面131といった区画部13の幅の拡縮に影響を与えやすい箇所を避けて設けられている。マーキング部がこのように形成されていることで、以下に説明するように配策時の作業性とマーキング部の視認性とを両立させることができる。
【0036】
図9は、図1図3に示されているグロメットにおいて、電線の配策時の良好な作業性が得られる様子を示す模式図である。
【0037】
本実施形態のグロメット10では、区画部13の内側面131を避けてマーキング部14が分割して設けられていることから、第2比較例のように区画部13の内部が埋まることがない。この分割形成により、電線20の配策時の各チューブ部12の動きを助ける、区画部13の一対の側壁133の矢印D12で示された動きが妨げられることがないことから、配策時の良好な作業性を得ることができる。
【0038】
そして、このグロメット10によれば、区画部13の内側面131を避けつつ、区画部13を跨いで底壁111の外面、及び、区画部13の内底面132にレリーフ状に分割形成され、全体として一のマークを構成するようにマーキング部14が形成されている。このような分割形成により、配策時の作業性への影響を抑えつつも、マーキング部14を視認性の良好な目立つ場所に大きく形成することが可能となる。即ち、上記のグロメット10によれば、配策時の作業性とマーキング部14の視認性とを両立させることができる。
【0039】
ここで、本実施形態では、マーキング部14が、グロメット本体部11のパネルP10への組付け方向を示すマークを構成する。この構成によれば、電線20の配策作業に有効な組付け方向を示すマークを目立つ場所に大きく形成することが可能となるので、配策時の作業性を一層向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、マーキング部14が、区画部13の内底面132、底壁111の外面における区画部13を挟んだ一対の領域111a、のそれぞれに頂点141が配置された三角形のマークとなっている。そして、区画部13の内底面132に位置する頂点141aでパネルP10への組付け方向を示している。この構成によれば、三角形という単純な形状で大型化しやすく且つ支持方向を把握しやすいマークが、マーキング部14が構成する組付け方向を示すマークとして採用されていることから、一層良好な視認性を得ることができる。
【0041】
また、本実施形態では、マーキング部14が、凸レリーフ状に形成された凸マークとなっている。この構成によれば、視認しやすい凸マークがマーキング部14として採用されていることから、一層良好な視認性を得ることができる。
【0042】
また、本実施形態では、区画部13における一対の側壁133が、内底面132から離れるにつれて相互間隔が拡がるように傾斜した傾斜壁となっている。この構成によれば、区画部13における一対の側壁133が傾斜壁となっていることでチューブ部の動きに応じて側壁133が幅方向に動きやすいことから、配策時の一層良好な作業性を得ることができる。
【0043】
また、本実施形態では、ワイヤハーネス1が、上述のグロメット10と、2本のチューブ部12それぞれに通された電線20と、を備えている。このワイヤハーネス1によれば、電線20保護のために上述のグロメット10が採用されていることから、配策時の作業性とマーキング部14の視認性とを両立させることができる。
【0044】
尚、以上に説明した実施形態はグロメット及びワイヤハーネスの代表的な形態を示したに過ぎず、グロメット及びワイヤハーネスは、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0045】
例えば、上述の実施形態では、組付け対象のパネルP10が車体を構成する金属パネルとなったグロメット10やワイヤハーネス1が例示されているが、グロメット及びワイヤハーネスはこれに限るものではない。グロメット及びワイヤハーネスは、電線を通過させるための貫通孔が設けられた組付け対象のパネルにグロメットを組付けるものであれば、パネルの具体的な態様を問うものではない。
【0046】
また、上述の実施形態では、電線20の束を2本支持する、底壁111が長円形となった有底の円錐台筒状のグロメット10が例示されているが、グロメットはこれに限るものではない。グロメットは、有底筒状であれば他の形状の筒状であってもよく、電線の束を3本以上支持するものであってもよく、電線を束ではなく単線の状態で支持するもの等であってもよい。
【0047】
また、上述の実施形態では、溝状の区画部13と、区画部13の内側面131を避けて一部が区画部13の内底面132に形成されたマーキング部14と、を備えたグロメット10が例示されているが、グロメットはこれに限るものではない。グロメットにおける区画部は、例えば上述の実施形態の区画部13とは逆に、有底筒状のグロメットに対する外面視で凸となり内面視で凹となるように底壁に形成された突条状の部位等であってもよい。この区画部における一対の側壁を傾斜壁とする場合には、一対の側壁は、突条状の区画部における外天面から離れるにつれて相互間隔が拡がるように傾斜することとなる。そして、マーキング部は、突条状の区画部における外側面を避けつつ、区画部を跨いで底壁の外面、及び突条状の区画部における外天面にレリーフ状に分割形成される。そして、このマーキング部を三角形のマークとする場合、区画部の外天面に位置する頂点でパネルへの組付け方向を示すこととなる。
【0048】
また、上述の実施形態では、パネルP10への組付け方向を示すマークを構成するマーキング部14が例示されている。しかしながら、マーキング部はこれに限るものではなく、その具体的な指示態様を問うものではない。ただし、上記の組付け方向を示すマークを構成するマーキング部14とすることで、配策時の作業性を一層向上させることができる点は上述した通りである。
【0049】
また、上述の実施形態では、溝状の区画部13の内底面132及び一対の領域111aのそれぞれに頂点が配置された三角形のマークであって、内底面132に位置する頂点141aでパネルP10への組付け方向を示すマーキング部14が例示されている。また、上述した別例では、突条状の区画部の外天面及び一対の領域のそれぞれに頂点が配置された三角形のマークであって、外天面に位置する頂点でパネルへの組付け方向を示すマーキング部が例示されている。しかしながら、マーキング部はこれらに限るものではなく、その具体的なマーク形状を問うものではない。また、溝状や突条状の区画部が複数本形成されていて、それら複数本の区画壁を跨ぐようにマーキング部を形成することとしてもよい。ただし、上記のような三角形のマークを構成するマーキング部14とすることで、一層良好な視認性を得ることができる点も上述した通りである。
【0050】
また、上述の実施形態では、凸レリーフ状に形成された凸マークを構成するマーキング部14が例示されている。しかしながら、マーキング部はこれに限るものではなく、例えば凹レリーフ状に形成された凹マークや、波状や鋸歯状等の凹凸レリーフ状に形成された凹凸マーク等を構成するものであってもよい。ただし、凸マークを構成するマーキング部14とすることで、一層良好な視認性を得ることができる点も上述した通りである。
【0051】
また、上述の実施形態では、溝状の区画部13における一対の側壁133や突条状の区画部における一対の側壁が傾斜壁となったグロメットが例示されている。しかしながら、グロメットにおける区画部の形状はこれに限るものではなく、溝状で一対の側壁が内底面へと傾斜せずに垂下した形状や、突条状で一対の側壁が外天面から傾斜せずに垂下した形状等であってもよい。ただし、区画部13における一対の側壁を傾斜壁とすることで、配策時の一層良好な作業性を得ることができる点も上述した通りである。
【符号の説明】
【0052】
1 ワイヤハーネス
10 グロメット
11 グロメット本体部
11a 開口
12 チューブ部
13 区画部
14 マーキング部
20 電線
111 底壁
111a 一対の領域
112 フランジ部
113 周壁
114 係止溝
121 太チューブ
122 細チューブ
131 内側面
132 内底面
133 一対の側壁
141,141a 頂点
P10 パネル
P11 貫通孔
P12 マーク
P111 内周縁
D11 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9