(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】衛星通信システム及び衛星通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 72/12 20090101AFI20220627BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20220627BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20220627BHJP
H04B 7/155 20060101ALI20220627BHJP
H04B 7/185 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
H04W72/12 150
H04W72/04 150
H04W84/06
H04B7/155
H04B7/185
(21)【出願番号】P 2020034601
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2021-03-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)発行者名:一般社団法人電子情報通信学会、刊行物名:IEICE Communications Express、巻数、号数:Vol.8,No.9、発行年月日:令和1年6月14日 (2)開催日:令和1年6月18日、集会名:第32回宇宙技術および科学の国際シンポジウム(ISTS2019福井大会)、開催場所:福井県民ホール アオッサ
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」の「小型旅客機等に搭載可能な電子走査アレイアンテナによる周波数狭帯域化技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】591280197
【氏名又は名称】株式会社構造計画研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100126468
【氏名又は名称】田久保 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】関口 真理子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 義巳
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-512179(JP,A)
【文献】特開2010-114681(JP,A)
【文献】特開2011-239284(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159879(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/14- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工衛星を介して、端末と地上の基地局とが通信する衛星通信システムであって、
前記端末は、
送信するアップリンクデータを一次的にバッファリングする端末データ送信バッファ部と、
前記アップリンクデータのパケットが所定時間内に流入する流入量を計測するアップリンクトラフィック計測部と、
計測した前記流入量
が記録されたBSR(Buffer Status Report)を含む制御メッセージを生成するBSR送信部と、
前記基地局から送信された無線フレームを受信する端末無線フレーム受信部と、
受信した前記無線フレームからアップリンクリソース割当情報を取得するリソース割当部と、
バッファリングした前記アップリンクデータと、生成した前記制御メッセージと、を含む無線フレームを、取得したアップリンクリソース割当情報に基づいて前記基地局に送信する端末無線フレーム送信部と、
を備え、
前記基地局は、
受信した前記無線フレームを、前記アップリンクデータと前記制御メッセージに分離する基地局無線フレーム受信部と、
分離した前記アップリンクデータを一次的にバッファリングする基地局データ送信バッファ部と、
分離した前記制御メッセージから前記BSRを取得するBSR受信部と、
取得した前記BSRに基づいて、アップリンクリソース割当情報を生成するスケジューリング部と、
生成した前記アップリンクリソース割当情報と、ダウンリンクデータとを含む無線フレームを、前記端末に送信する基地局無線フレーム送信部と、
を備えることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の衛星通信システムにおいて、
前記スケジューリング部は、
取得した前記BSRに基づいて、前記アップリンクデータのトラフィック量についての移動平均を算出するトラフィック量移動平均算出部と、
算出した移動平均トラフィック量に基づいて、アップリンクリソース割当量を算出するPID制御部と、
算出したアップリンクリソース割当量に基づいて、リソースブロックを割り当て、前記アップリンクリソース割当量を含むアップリンクリソース割当情報を生成するリソースブロック割当決定部と、
を有し、
前記リソースブロック割当決定部は、前記アップリンクリソース割当情報を前記基地局無線フレーム送信部に送信することを特徴とする衛星通信システム。
【請求項3】
人工衛星を介して、端末と地上の基地局とが通信する衛星通信方法であって、
前記端末内では、
送信するアップリンクデータを一次的にバッファリングする工程と、
前記アップリンクデータのパケットが所定時間内に流入する流入量を計測する工程と、
計測した前記流入量
が記録されたBSR(Buffer Status Report)を含む制御メッセージを生成する工程と、
前記基地局から送信された無線フレームを受信する工程と、
受信した前記無線フレームからアップリンクリソース割当情報を取得する工程と、
バッファリングした前記アップリンクデータと、生成した前記制御メッセージと、を含む無線フレームを、取得したアップリンクリソース割当情報に基づいて前記基地局に送信する工程と、
を備え、
前記基地局内では、
受信した前記無線フレームを、前記アップリンクデータと前記制御メッセージに分離する工程と、
分離した前記アップリンクデータを一次的にバッファリングする工程と、
分離した前記制御メッセージから前記BSRを取得する工程と、
取得した前記BSRに基づいて、アップリンクリソース割当情報を生成する工程と、
生成した前記アップリンクリソース割当情報と、ダウンリンクデータとを含む無線フレームを、前記端末に送信する工程と、
を備えることを特徴とする衛星通信方法。
【請求項4】
請求項3に記載の衛星通信方法において、
前記アップリンクリソース割当情報を生成する工程は、
取得した前記BSRに基づいて、前記アップリンクデータのトラフィック量についての移動平均を算出工程と、
算出した移動平均トラフィック量に基づいて、アップリンクリソース割当量を算出する工程と、
算出したアップリンクリソース割当量に基づいて、リソースブロックを割り当て、前記アップリンクリソース割当量を含むアップリンクリソース割当情報を生成する工程と、を有し、
前記アップリンクリソース割当情報を前記端末に送信することを特徴とする衛星通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星を介して、端末と地上の基地局とが通信する衛星通信システム及び衛星通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代において、無線通信は、産業、日常生活において欠かせないインフラである。スマートフォンに代表される無線端末数は、IoT等の普及により、人口の数倍以上に増加している。この状況下で、限られた数の基地局でこれらの端末がネットワークに接続し、データ通信を行うために、様々な無線アクセス方式が提案されている。端末と基地局間で通信するアクセス方式に加えて、端末が人工衛星を介して、基地局と通信する衛星アクセス方式が知られている。
【0003】
衛星を介さないアクセス方式では、端末が定期的に端末内部の送信バッファに貯まったデータ量をバッファ状態レポート(BSR:Buffer Status Report)として、アップリンク制御チャネルで基地局に通知する(特許文献1参照)。基地局は、受信したBSRに基づいて、端末に割り当てるリソースを決定し、ダウンリンクの制御チャネルで基地局が端末に通知する。この方式は衛星アクセス方式への適用が検討、研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、衛星アクセス方式の場合には、端末が、人工衛星を介して、基地局と通信するので、制御パケットが端末と基地局とを往復するのに約480msecの時間を要する。この往復時間のために、基地局が、割り当てたリソース情報を端末が受信した場合、端末では、割り当てられたリソースが適切ではなく、リソースの過不足が発生する場合がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を考慮してなされたものであって、衛星アクセス方式において、アップリンクトラフィックにおける遅延時間の短縮できる衛星通信システム、衛星通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る衛星通信システムは、人工衛星を介して、端末と地上の基地局とが通信する衛星通信システムであって、前記端末は、送信するアップリンクデータを一次的にバッファリングする端末データ送信バッファ部と、前記アップリンクデータのパケットが所定時間内に流入する流入量を計測するアップリンクトラフィック計測部と、計測した前記流入量が記録されたBSR(Buffer Status Report)を含む制御メッセージを生成するBSR送信部と、前記基地局から送信された無線フレームを受信する端末無線フレーム受信部と、受信した前記無線フレームからアップリンクリソース割当情報を取得するリソース割当部と、バッファリングした前記アップリンクデータと、生成した前記制御メッセージと、を含む無線フレームを、取得したアップリンクリソース割当情報に基づいて前記基地局に送信する端末無線フレーム送信部と、を備え、前記基地局は、受信した前記無線フレームを、前記アップリンクデータと前記制御メッセージに分離する基地局無線フレーム受信部と、分離した前記アップリンクデータを一次的にバッファリングする基地局データ送信バッファ部と、分離した前記制御メッセージから前記BSRを取得するBSR受信部と、取得した前記BSRに基づいて、アップリンクリソース割当情報を生成するスケジューリング部と、生成した前記アップリンクリソース割当情報と、ダウンリンクデータとを含む無線フレームを、前記端末に送信する基地局無線フレーム送信部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記衛星通信システムにおいて、前記スケジューリング部は、取得した前記BSRに基づいて、前記アップリンクデータのトラフィック量についての移動平均を算出するトラフィック量移動平均算出部と、算出した移動平均トラフィック量に基づいて、アップリンクリソース割当量を算出するPID制御部と、算出したアップリンクリソース割当量に基づいて、リソースブロックを割り当てるリソースブロック割当決定部と、を有し、前記リソースブロック割当決定部は、前記アップリンクリソース割当量を含む前記アップリンクリソース割当情報を前記基地局無線フレーム送信部に送信することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る衛星通信方法は、人工衛星を介して、端末と地上の基地局とが通信する衛星通信方法であって、前記端末内では、送信するアップリンクデータを一次的にバッファリングする工程と、前記アップリンクデータのパケットが所定時間内に流入する流入量を計測する工程と、計測した前記流入量が記録されたBSR(Buffer Status Report)を含む制御メッセージを生成する工程と、前記基地局から送信された無線フレームを受信する工程と、受信した前記無線フレームからアップリンクリソース割当情報を取得する工程と、バッファリングした前記アップリンクデータと、生成した前記制御メッセージと、を含む無線フレームを、取得したアップリンクリソース割当情報に基づいて前記基地局に送信する工程と、を備え、前記基地局内では、受信した前記無線フレームを、前記アップリンクデータと前記制御メッセージに分離する工程と、分離した前記アップリンクデータを一次的にバッファリングする工程と、分離した前記制御メッセージから前記BSRを取得する工程と、取得した前記BSRに基づいて、アップリンクリソース割当情報を生成する工程と、生成した前記アップリンクリソース割当情報と、ダウンリンクデータとを含む無線フレームを、前記端末に送信する工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
前記衛星通信方法において、前記アップリンクリソース割当情報を生成する工程は、取得した前記BSRに基づいて、前記アップリンクデータのトラフィック量についての移動平均を算出工程と、算出した移動平均トラフィック量に基づいて、アップリンクリソース割当量を算出する工程と、算出したアップリンクリソース割当量に基づいて、リソースブロックを割り当てる工程と、を有し、前記アップリンクリソース割当量を含む前記アップリンクリソース割当情報を前記端末に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の衛星通信システム、衛星通信方法では、衛星アクセス方式において、UDPベース、TCPベースのアップリンクトラフィックにおける遅延時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る衛星通信システムの説明図である。
【
図4】UDP通信おける衛星通信システムによる遅延時間に関するシミュレーション結果を示す図である
【
図5】
図5Aは、UDP通信における遅延時間に関するシミュレーション結果である比較例1を示す図であり、
図5Bは、UDP通信における遅延時間に関するシミュレーション結果である比較例2を示す図である。
【
図6】UDP通信における遅延時間に関するシミュレーション結果である比較例3を示す図である。
【
図7】TCP通信における衛星通信システムと比較例4、比較例5、比較例6の遅延時間に関するシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<衛星通信システム10の構成>
以下に、本発明の実施形態に係る衛星通信システム10及び衛星通信方法を実施するための形態(以下、「実施形態」という)について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る衛星通信システム10の説明図である。
【0014】
衛星通信システム10は、端末100と地上に設置された基地局200とを備え、端末100と基地局200は、人工衛星50を介して通信する。
【0015】
端末100は、端末データ送信バッファ部102、アップリンクトラフィック計測部104、BSR送信部106、端末無線フレーム受信部108、リソース割当部110及び端末無線フレーム送信部112を備える。
【0016】
端末100は、通信機能を有する端末である。例えば、端末100は、3GPP(3rd Generation Partnership Project)で策定されたLTE(登録商標)端末である。また、端末100は、航空機搭載端末であってもよい。
【0017】
端末データ送信バッファ部102は、送信するアップリンクデータを一次的にバッファリングする手段である。
【0018】
アップリンクトラフィック計測部104は、アップリンクデータのパケットが所定時間内に流入する流入量を計測する手段である。ここで、所定時間とは、後述するBSR送信部106がBSRを生成する所定間隔と同等の時間である。
【0019】
BSR送信部106は、所定間隔で、前記流入量に基づいてBSRを含む制御メッセージを生成、通知する手段である。ここで、所定間隔は、0.5~2(msec)で、好ましくは、1(msec)である。
【0020】
端末無線フレーム受信部108は、基地局200から送信された無線フレームを受信する手段である。
【0021】
リソース割当部110は、前記無線フレームからアップリンクリソース割当情報を取得する手段である。
【0022】
端末無線フレーム送信部112は、アップリンクリソース割当情報に基づいて、無線フレームを基地局200に送信する無線フレームを送信する手段である。ここで、無線フレームは、バッファリングしたアップリンクデータと、生成した制御メッセージと、を含む。
【0023】
基地局200は、基地局無線フレーム受信部202、基地局データ送信バッファ部204、BSR受信部206、スケジューリング部208、トラフィック量移動平均算出部210、PID制御部212、リソースブロック割当決定部214及び基地局無線フレーム送信部216を備える。
【0024】
基地局無線フレーム受信部202は、端末100から受信した無線フレームを、アップリンクデータと制御メッセージに分離する手段である。
【0025】
基地局データ送信バッファ部204は、アップリンクデータを一次的にバッファリングする手段である。
【0026】
BSR受信部206は、制御メッセージからBSRを取得する手段である。
【0027】
スケジューリング部208は、BSRに基づいて、アップリンクリソース割当情報を生成する手段である。スケジューリング部208は、PID制御部212、リソースブロック割当決定部214及び基地局無線フレーム送信部216を有する。
【0028】
トラフィック量移動平均算出部210は、取得した前記BSRに基づいて、アップリンクデータのトラフィック量についての移動平均を算出する手段である。
【0029】
PID制御部212は、アップリンクデータの移動平均トラフィック量に基づいてPID(Proportional Integral Differential)制御により、アップリンクリソース割当量を算出する手段である。
【0030】
リソースブロック割当決定部214は、アップリンクリソース割当量に基づいて、リソースブロックを割り当て、アップリンクリソース割当量を含むアップリンクリソース割当情報を生成する手段である。
【0031】
基地局無線フレーム送信部216は、アップリンクリソース割当情報と、ダウンリンクデータとを含む無線フレームを、端末100に送信する手段である。
【0032】
<端末100の動作の説明>
* 次に、端末100から人工衛星50を介して、アップリンクデータが基地局200に送信される場合の動作について、図を用いて説明する。
図2は、端末100の処理手順の説明図である。
【0033】
端末100から人工衛星50を介して、基地局200に送信されるアップリンク(UL)データが端末データ送信バッファ部102及びアップリンクトラフィック計測部104に供給される(ステップS1)。
【0034】
端末データ送信バッファ部102は、供給されたアップリンクデータを一次的にバッファリングした後に、端末無線フレーム送信部112にアップリンクデータを送信する(ステップS2)。
【0035】
アップリンクトラフィック計測部104は、供給されたアップリンクデータのパケットが所定時間内に流入する流入量を計測し、前記流入量をBSR送信部106に送信する(ステップS3)。
【0036】
BSR送信部106は、前記流入量を受信し、所定間隔で受信した前記流入量に基づいてBSRを含む制御メッセージを生成し、端末無線フレーム送信部112に送信する(ステップS4)。
【0037】
端末無線フレーム受信部108は、基地局200から送信された無線フレームを受信し、リソース割当部110に送信する(ステップS5)。
【0038】
リソース割当部110は、前記無線フレームを受信し、受信した無線フレームからアップリンクリソース割当情報を取得し、端末無線フレーム送信部112に送信する(ステップS6)。
【0039】
端末無線フレーム送信部112は、受信したアップリンクリソース割当情報に基づいて、無線フレームを人工衛星50を介して、基地局200に送信する(ステップS7)。
【0040】
<基地局200の動作の説明>
次に、基地局200から人工衛星50を介して、無線フレームが端末100の送信される場合の動作について、図を用いて説明する。
図3は、基地局200の処理手順の説明図である。
【0041】
基地局無線フレーム受信部202は、端末100から受信した無線フレームを、アップリンクデータと制御メッセージとに分離する(ステップS11)。基地局無線フレーム受信部202は、分離したアップリンクデータを基地局データ送信バッファ部204に送信する。また、基地局無線フレーム受信部202は、制御メッセージをBSR受信部206に送信する。
【0042】
基地局データ送信バッファ部204は、前記アップリンクデータを受信し、一次的にバッファリングし、他の端末に送信する(ステップS12)。
【0043】
BSR受信部206は、前記制御メッセージを受信し、受信した前記制御メッセージからBSRを取得し、スケジューリング部208に送信する(ステップS13)。
【0044】
スケジューリング部208のトラフィック量移動平均算出部210は前記BSRを受信し、受信した前記BSRに基づいて、アップリンクデータのトラフィック量についての移動平均を算出し、PID制御部212に送信する(ステップS14)。
【0045】
PID制御部212は、受信したアップリンクデータの移動平均トラフィック量に基づいてPID制御により、端末100に割り当てるアップリンクリソース割当量を算出し、リソースブロック割当決定部214に送信する(ステップS15)。
【0046】
リソースブロック割当決定部214は、アップリンクリソース割当量を受信し、受信したアップリンクリソース割当量に基づいて、リソースブロックを割り当て、アップリンクリソース割当量を含むアップリンクリソース割当情報を基地局無線フレーム送信部216に送信する(ステップS16)。
【0047】
基地局無線フレーム送信部216は、前記アップリンクリソース割当情報を受信し、受信した前記アップリンクリソース割当情報と端末100に送信するダウンリンクデータとを含む無線フレームを、人工衛星50を介して、端末100に送信する(ステップS17)。
【0048】
図4は、UDP通信おける衛星通信システム10による遅延時間に関するシミュレーション結果を示す図である。
図5Aは、UDP通信おける遅延時間に関するシミュレーション結果である比較例1を示す図であり、
図5Bは、UDP通信おける遅延時間に関するシミュレーション結果である比較例2を示す図である。
図6は、UDP通信おける遅延時間に関するシミュレーション結果である比較例3を示す図である。
【0049】
比較例1は、リソースのスケジューリングを行わずに、均等にリソースを割り当てた場合である(fixed schedule)。比較例2、比較例3は、地上系LTE(登録商標)で採用されているリソーススケジューリング方式である。比較例2は、Round Robin scheduleであり、比較例は、Proportional Fairnessである。
【0050】
図4~
図6において、横軸が時間を示し、左縦軸が遅延時間を示し、右縦軸がトラフィック量を示す。Dが示すグラフが遅延時間を示し、Tがトラフィック量を示す。
【0051】
輻輳制御を行わないUDP(User Datagram Protocol)での通信の場合、衛星通信システム10では、トラフィック量が変動しても、遅延時間は発散せずに、2000(msec)未満である(
図4参照)。これに対して、比較例1、比較例2及び比較例3は、時間が経過すると、いずれも遅延時間が2000(msec)以上になっていることがわかる(
図5A、
図5B、
図6参照)。
【0052】
図7は、TCP通信における衛星通信システム10と比較例4、比較例5、比較例6の遅延時間に関するシミュレーション結果を示す図である。1セッションあたり3MバイトのデータをTCPでアップリンク転送する場合に要した時間を示す。
図7において、横軸がセッション数を示し、縦軸がセッション時間を示す。
【0053】
×は衛星通信システム10によるデータ、▲は比較例4のfixed scheduleによるデータ、◇は、比較例5のRound Robin scheduleによるデータ、■は、比較例6のProportional Fairnessによるデータを示す。
【0054】
輻輳制御を伴うTCP(Transmission Control Protocol)での通信の場合、衛星通信システム10は、比較例4~比較例6のいずれと比較しても、セッション時間(遅延時間)が短いことがわかる。比較例の中で最もセッション時間が短い比較例5に対しても、常に5000msec程度短い時間でセッション時間を終了しており、安定的に高い性能を発揮していることがわかる。
【0055】
衛星通信システム10は、人工衛星50を介して、端末100と地上の基地局200とが通信する衛星通信システム10であって、前記端末100は、送信するアップリンクデータを一次的にバッファリングする端末データ送信バッファ部102と、前記アップリンクデータのパケットが所定時間内に流入する流入量を計測するアップリンクトラフィック計測部104と、計測した前記流入量に基づいて作成したBSR(Buffer Status Report)を含む制御メッセージを生成するBSR送信部106と、前記基地局200から送信された無線フレームを受信する端末無線フレーム受信部108と、受信した前記無線フレームからアップリンクリソース割当情報を取得するリソース割当部110と、バッファリングした前記アップリンクデータと、生成した前記制御メッセージと、を含む無線フレームを、取得したアップリンクリソース割当情報に基づいて前記基地局200に送信する端末無線フレーム送信部112と、を備え、前記基地局200は、受信した前記無線フレームを、前記アップリンクデータと前記制御メッセージに分離する基地局無線フレーム受信部202と、分離した前記アップリンクデータを一次的にバッファリングする基地局データ送信バッファ部204と、分離した前記制御メッセージから前記BSRを取得するBSR受信部206と、取得した前記BSRに基づいて、アップリンクリソース割当情報を生成するスケジューリング部208と、生成した前記アップリンクリソース割当情報と、ダウンリンクデータとを含む無線フレームを、前記端末100に送信する基地局無線フレーム送信部216と、を備えることを特徴とする衛星通信システム。
【0056】
衛星通信システム10において、前記スケジューリング部208は、取得した前記BSRに基づいて、前記アップリンクデータのトラフィック量についての移動平均を算出するトラフィック量移動平均算出部210と、算出した移動平均トラフィック量に基づいて、アップリンクリソース割当量を算出するPID制御部212と、算出したアップリンクリソース割当量に基づいて、リソースブロックを割り当て、前記アップリンクリソース割当量を含むアップリンクリソース割当情報を生成するリソースブロック割当決定部214と、を有し、前記リソースブロック割当決定部214は、前記アップリンクリソース割当情報を前記基地局無線フレーム送信部216に送信する。
【0057】
衛星通信システム10によれば、衛星アクセス方式において、UDPベース、TCPベースのアップリンクトラフィックにおける遅延時間の短縮を図ることができる。
【0058】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0059】
10…衛星通信システム
50…人工衛星
100…端末
102…端末データ送信バッファ部
104…アップリンクトラフィック計測部
106…BSR送信部
108…端末無線フレーム受信部
110…リソース割当部
112…端末無線フレーム送信部
200…基地局
202…基地局無線フレーム受信部
204…基地局データ送信バッファ部
206…BSR受信部
208…スケジューリング部
210…トラフィック量移動平均算出部
212…PID制御部
214…リソースブロック割当決定部
216…基地局無線フレーム送信部