IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 上▲海▼▲凱▼▲賽▼生物技▲術▼研▲發▼中心有限公司の特許一覧 ▶ シーアイビーティー アメリカ インコーポレイテッドの特許一覧 ▶ ▲凱▼▲賽▼(金▲郷▼)生物材料有限公司の特許一覧

特許7095020長鎖二塩基酸の精製プロセス及びシステム
<>
  • 特許-長鎖二塩基酸の精製プロセス及びシステム 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】長鎖二塩基酸の精製プロセス及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/47 20060101AFI20220627BHJP
   C07C 51/43 20060101ALI20220627BHJP
   C07C 51/44 20060101ALI20220627BHJP
   C07C 55/21 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C07C51/47
C07C51/43
C07C51/44
C07C55/21
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020097792
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021102599
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】201911347657.4
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517272909
【氏名又は名称】上海凱賽生物技術股分有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519322820
【氏名又は名称】シーアイビーティー アメリカ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】520198823
【氏名又は名称】▲凱▼▲賽▼(金▲郷▼)生物材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 晨
(72)【発明者】
【氏名】秦 兵兵
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 玉峰
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲凱▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 修才
【審査官】▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1570124(CN,A)
【文献】特開昭50-149616(JP,A)
【文献】特開昭63-258830(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1351006(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101177650(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109516913(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長鎖二塩基酸の発酵液又はその処理液を膜濾過し、酸性化して結晶化させ、固液分離し、乾燥して長鎖二塩基酸の粗生成物を得るステップ(1)と、
前記長鎖二塩基酸の粗生成物を減圧蒸留して長鎖二塩基酸製品を得るステップ(2)とを含み、
前記膜濾過は、限外濾過膜による濾過及び精密濾過膜による濾過であり、
前記精密濾過膜により前記発酵液又はその処理液を60~100℃で濾過し、得られた濾液を20~45℃まで降温し、さらに前記限外濾過膜により濾過し、
前記精密濾過膜の孔径は、0.01~0.1ミクロンであり、
前記限外濾過膜の分画分子量は、1,000~10,000Daであり、
前記減圧蒸留における圧力≦100Paであり、
前記酸性化による結晶化は、前記膜濾過後の濾液をpH2.5~3.7に調整して結晶化させることを含み、
前記減圧蒸留は、分子蒸留、高真空精留から選ばれ、
前記分子蒸留における主蒸発器の圧力は、0.1~15Paであり、
前記主蒸発器の蒸発面の温度は、160~230℃である、長鎖二塩基酸の精製プロセス。
【請求項2】
記精密濾過膜の場合、膜の両側の圧力差を0.05~0.5MPaに制御する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記膜濾過後の濾液を脱色処理した後、酸性化して結晶化させることを含み、前記脱色処理の温度は50~100℃である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
記主蒸発器の凝縮面の温度は、130~160℃である、請求項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記高真空精留に使用される精留塔の理論段数は、8~24であり、及び/又は、
前記精留塔の塔頂圧力は、1~100Paであり、及び/又は、
前記精留塔の塔頂温度は、160~250℃であり、及び/又は、
前記精留塔の塔底温度は、180~270℃であり、及び/又は、
前記精留塔の還流比は、(1~10):1である、請求項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記減圧蒸留の前に前記長鎖二塩基酸の粗生成物を脱色処理し、又は前記減圧蒸留で得られた製品を脱色処理することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記脱色処理は、溶融脱色処理を含み、
前記溶融脱色処理は、脱色される固体を加熱溶融し、溶融状態で脱色剤に通過させることを含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記溶融脱色処理の温度は、130~180℃であり、及び/又は、
前記脱色剤は、活性炭であり、前記溶融脱色処理において、前記活性炭の使用量は、前記脱色される固体の質量の3~50%である、請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
長鎖二塩基酸の発酵液又はその処理液を膜濾過するための膜濾過ユニットと、
前記膜濾過して得られた濾液を酸性化して結晶化させて固液混合物を得るための酸性化による結晶化ユニットと、
前記固液混合物を固液分離するための分離ユニットと、
前記分離ユニットにより分離された固体を乾燥処理して長鎖二塩基酸の粗生成物を得るための乾燥ユニットと、
前記長鎖二塩基酸の粗生成物を蒸留分離して長鎖二塩基酸製品を得るための減圧蒸留ユニットと、を含み、
前記膜濾過は、限外濾過膜による濾過及び精密濾過膜による濾過であり、
前記精密濾過膜により前記発酵液又はその処理液を60~100℃で濾過し、得られた濾液を20~45℃まで降温し、さらに前記限外濾過膜により濾過し、
前記精密濾過膜の孔径は、0.01~0.1ミクロンであり、
前記限外濾過膜の分画分子量は、1,000~10,000Daであり、
前記酸性化による結晶化は、前記膜濾過後の濾液をpH2.5~3.7に調整して結晶化させることを含み、
前記減圧蒸留ユニットは、分子蒸留を行うための分子蒸留装置又は高真空精留を行うための精留塔を含み、
前記分子蒸留における主蒸発器の圧力は、0.1~15Paであり、
前記主蒸発器の蒸発面の温度は、160~230℃である、長鎖二塩基酸の精製システム。
【請求項10】
前記膜濾過ユニットと前記酸性化による結晶化ユニットとの間に、前記膜濾過で得られた濾液を脱色処理するための第1脱色ユニットが設置される、請求項に記載の精製システム。
【請求項11】
第2脱色ユニットを含み、
前記第2脱色ユニットは、前記長鎖二塩基酸の粗生成物を脱色処理するために、前記乾燥ユニットと前記減圧蒸留ユニットとの間に設置され、又は、
前記第2脱色ユニットは、減圧蒸留で得られた製品を脱色処理するために、前記減圧蒸留ユニットの後に設置される、請求項に記載の精製システム。
【請求項12】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の精製プロセスにより得られる長鎖二塩基酸製品であって、
総酸の含有量≧98.5%であり、純度≧97.5%であり、灰分の含有量≦50ppmであり、窒素の含有量≦50ppmである、長鎖二塩基酸製品。
【請求項13】
Feの含有量≦2ppmである、請求項12に記載の長鎖二塩基酸製品。
【請求項14】
光透過率≧92%である、請求項12に記載の長鎖二塩基酸製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長鎖二塩基酸に関し、特に、生物学的発酵法により生成される長鎖二塩基酸の精製プロセス及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
長鎖二塩基酸(Long chain dicarboxylic acids、LCDA、単にDCnと称し、n=9~18)は、重要な有機中間体であり、化学産業、軽工業、農薬、医薬、新材料などの分野で広く使用されている。現在、長鎖二塩基酸を調製する最も一般的な方法は、特定の菌株で長炭素鎖のアルカン、脂肪酸、脂肪酸エステル又は脂肪酸塩を生物学的に発酵させることにより得られるというものである。二塩基酸の抽出及び精製技術も、工業的に調製される二塩基酸の最終的なコストに影響を与える。このため、二塩基酸を簡単且つ効率的に抽出及び精製する技術の開発は、発酵プロセス技術の普及及び応用を促進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】中国特許公開番号CN102503800A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、通常、有機溶媒を用いた再結晶により長鎖二塩基酸を精製する。中国特許公開番号CN102503800Aの特許出願には、アルコール類又はアセトンを溶媒として長鎖二塩基酸の粗生成物を再結晶化することにより、精製された長鎖二塩基酸を得るという長鎖二塩基酸の精製方法が開示された。溶媒を希釈する方法により精製の収率を向上させることができるものの、溶媒としてアルコール類を用いて長鎖二塩基酸を精製するプロセスには、高温で二塩基酸とエタノールがエステル化するという欠点があり、精製プロセス中に新たな生成物が発生してしまい、製品の純度に影響を与える。
【0005】
また、再結晶では、主に溶解度の違いによって不純物を除去するが、一部の不純物の溶解度が長鎖二塩基酸と類似しているので、再結晶を繰り返して精製しても、長鎖二塩基酸の溶解度と類似する不純物を完全的に除去することは困難である。有機溶媒を用いた結晶化により得られる製品は、残留溶媒の課題を抱えている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
長鎖二塩基酸の発酵液又はその処理液を膜濾過し、酸性化して結晶化させ、固液分離し、乾燥して長鎖二塩基酸の粗生成物を得るステップ(1)と、
前記長鎖二塩基酸の粗生成物を減圧蒸留して長鎖二塩基酸製品を得るステップ(2)とを含む、長鎖二塩基酸の精製プロセスを提供する。
【0007】
ここで、前記減圧蒸留では圧力≦100Paである。
【0008】
本発明は、上記の方法により抽出された長鎖二塩基酸をさらに提供する。
【0009】
本発明の一実施形態は、長鎖二塩基酸製品を提供し、
総酸の含有量≧98.5%であり、さらに≧99%であり、
純度≧97.5%であり、またさらに≧98%であり、さらに≧98.5%であり、
灰分の含有量≦50ppmであり、さらに≦30ppmであり、
窒素の含有量≦50ppmであり、
Feの含有量≦2ppmであり、
光透過率≧92%、またさらに≧95%、またさらに≧97%、さらに≧99%である。
本発明は、長鎖二塩基酸の精製システムをさらに提供する。前記システムは、
長鎖二塩基酸の発酵液又はその処理液を膜濾過するための膜濾過ユニットと、
前記膜濾過して得られた濾液を酸性化して結晶化させて固液混合物を得るための酸性化による結晶化ユニットと、
前記固液混合物を固液分離するための分離ユニットと、
前記分離ユニットにより分離された固体を乾燥処理して長鎖二塩基酸の粗生成物を得るための乾燥ユニットと、
前記長鎖二塩基酸の粗生成物を蒸留分離して長鎖二塩基酸製品を得るための減圧蒸留ユニットと、を含む。
【0010】
本発明の一実施形態に係る精製プロセスは、手順が簡略化され、得られた製品の純度が高く、溶媒晶析法の機器に対する要求が高く、溶媒回収システムを必要とし、溶媒の安全性が悪く、また溶媒による環境汚染という欠点を克服できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る長鎖二塩基酸の精製システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明において、本発明の特徴及び利点を具体化する代表的な実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、異なる実施例において様々な変更を行うことができ、それらは、すべて本発明の範囲から逸脱するものではなく、且つ、その中の説明及び図は、本質的に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。ここで、「第1」、「第2」、「第3」などは、同じ名称の複数のプロセス又は製品を区別するためのものであるが、これらに限定されない。
【0013】
本発明の一実施形態は、長鎖二塩基酸の発酵液又はその処理液から長鎖二塩基酸を抽出するための長鎖二塩基酸の精製プロセスを提供する。前記プロセスは、
長鎖二塩基酸の発酵液又はその処理液を膜濾過し、酸性化して結晶化させ、固液分離し、乾燥して長鎖二塩基酸の粗生成物を得るステップ(1)と、
前記長鎖二塩基酸の粗生成物を減圧蒸留して長鎖二塩基酸製品を得るステップ(2)とを含む。
【0014】
減圧蒸留では圧力≦100Paであり、好ましくは≦50Paである。
【0015】
本発明において、長鎖二塩基酸の発酵液は、アルカン、脂肪酸及びその誘導体を基質として微生物発酵の方法により得られる発酵液であってもよい。ここで、微生物は、酸化によりアルカン、脂肪酸、及び脂肪酸誘導体の末端メチル基をカルボキシル基に変換して長鎖二塩基酸を生成するためのものである。
【0016】
一実施形態において、長鎖二塩基酸の発酵液の処理液は、発酵液中の長鎖二塩基酸塩以外の一種又はそれ以上の他の成分を除去し又はその含有量を低減して得られる液体である。例えば、遠心又は膜濾過により発酵液から菌体や発酵後の残留基質を分離し、処理液を得る。
【0017】
一実施形態において、長鎖二塩基酸は、C9~C18のジカルボン酸である。
【0018】
一実施形態において、長鎖二塩基酸は、直鎖の飽和若しくは不飽和ジカルボン酸であり、前記長鎖二塩基酸の両端にカルボキシル基を有する。
【0019】
一実施形態において、長鎖二塩基酸は、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、9-エン-オクタデカン二酸のうちの1つ又は複数であってもよい。
【0020】
一実施形態において、膜濾過の前に、発酵液又はその処理液にアルカリを加えて長鎖二塩基酸を溶解させる。
【0021】
一実施形態において、アルカリを加えて発酵液又はその処理液をpH6~12に調整し、さらに8~11に調整してもよく、例えば8.2、8.5、8.8、9.0、9.2、9.5、9.8、10.0、10.2、10.5、10.8、11.5が挙げられる。添加するアルカリの種類は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどであってもよい。
【0022】
一実施形態において、膜濾過の前に、発酵液又はその処理液を60~100℃、例えば62℃、65℃、68℃、70℃、72℃、75℃、78℃、80℃、82℃、85℃、88℃、90℃、92℃、95℃、98℃まで加熱することができる。
【0023】
一実施形態において、膜濾過は、限外濾過膜による濾過及び/又は精密濾過膜による濾過を含む。
【0024】
一実施形態において、精密濾過膜による濾過の温度は、30~100℃であり、さらに50~100℃であってもよく、またさらに60~100℃であってもよく、例えば35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、62℃、65℃、68℃、70℃、72℃、75℃、78℃、80℃、82℃、84℃、85℃、86℃、88℃、90℃、92℃、94℃、95℃、96℃、98℃が挙げられる。
【0025】
一実施形態において、精密濾過膜の孔径は、0.01~1ミクロンであってもよく、さらに0.01~0.2ミクロンであってもよく、またさらに0.02~0.1ミクロンであってもよく、例えば0.03ミクロン、0.05ミクロン、0.08ミクロン、0.1ミクロン、0.15ミクロン、0.5ミクロンが挙げられる。
【0026】
一実施形態において、限外濾過膜による濾過の温度は、20~100℃であり、さらに20~45℃であってもよく、またさらに30~40℃であってもよく、例えば25℃、30℃、32℃、34℃、35℃、36℃、38℃が挙げられる。
【0027】
一実施形態において、限外濾過膜の分画分子量は、1,000~200,000Daであってもよく、さらに1,000~30,000Daであってもよく、またさらに1,000~10,000Daであってもよく、例えば1,500Da、2,000Da、3,000Da、4,000Da、5,000Da、6,000Da、8,000Da、10,000Da、15,000Da、20,000Da、25,000Daが挙げられる。
【0028】
一実施形態において、限外濾過膜は、ポリプロピレン膜、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、無機限外濾過膜、例えばセラミック膜であってもよい。
【0029】
一実施形態において、膜濾過は、精密濾過膜による濾過及び限外濾過膜による濾過を含み、先ず発酵液又はその処理液を精密濾過膜により濾過し、さらに濾液を限外濾過膜により濾過する。
【0030】
一実施形態において、精密濾過膜により発酵液又はその処理液を60~100℃で濾過し、得られた濾液を20~45℃まで降温し、さらに限外濾過膜により濾過する。
【0031】
一実施形態のステップ(1)において、膜濾過後の濾液を脱色処理した後、酸性化して結晶化させる。
【0032】
一実施形態のステップ(1)において、脱色処理の温度は、50~100℃であってもよく、またさらに60~100℃であってもよく、さらに60~80℃であってもよく、例えば62℃、65℃、68℃、70℃、72℃、75℃、78℃、80℃、85℃、88℃、90℃、95℃が挙げられる。
【0033】
一実施形態のステップ(1)において、脱色処理の時間は、10~180分間であってもよく、さらに15~120分間であってもよく、例えば20分間、30分間、40分間、60分間、70分間、80分間、90分間、100分間、110分間、130分間、150分間、170分間が挙げられる。
【0034】
一実施形態のステップ(1)において、脱色処理に用いられる脱色剤は、活性炭繊維、活性炭粒子、活性炭粉末であってもよく、脱色剤の使用量は、脱色される液体の質量に対して0.05~5wt%、例えば1wt%、1.5wt%、2wt%、2.5wt%、3wt%、3.5wt%、4wt%であってもよい。
【0035】
一実施形態において、酸性化による結晶化は、濾液をpH2~5.5に調整して結晶化させるステップを含む。
【0036】
一実施形態において、酸性化による結晶化プロセスは、膜濾過液又は脱色処理後の清澄液のpH値を2~4.5に調整し、またさらに2~4に調整してもよく、またさらに2.5~4に調整してもよく、さらに2.5~3.7に調整してもよく、例えば2.2、2.5、2.8、3.0、3.2、3.5、3.7、3.8、4.0、4.2、4.3、4.5が挙げられ、これにより、長鎖二塩基酸を晶析させるステップを含む。
【0037】
一実施形態において、膜濾過液又は脱色処理後の清澄液に酸を加えてそのpH値を調整してもよく、この酸は、無機酸及び/又は有機酸であってもよい。添加する無機酸は、塩酸及び/又は硫酸であってもよい。
【0038】
一実施形態において、ステップ(1)は、
長鎖二塩基酸の発酵液又はその処理液を30~100℃まで加熱し、pHを8~11に調整した後、20~100℃の温度で膜濾過して濾液を得るステップと、
濾液を50~100℃で脱色処理して清澄液を得るステップと、
清澄液のpHを2~4.5に調整し、晶析させ、濾過、乾燥して長鎖二塩基酸の粗生成物を得るステップと、を含む。
【0039】
一実施形態において、ステップ(2)は、長鎖二塩基酸の粗生成物を減圧蒸留し、留分を収集し、長鎖二塩基酸製品を得るステップを含む。
【0040】
一実施形態において、減圧蒸留では、圧力は、1~100Paであってもよく、さらに1~50Paであってもよく、例えば3Pa、5Pa、6Pa、10Pa、15Pa、20Pa、25Pa、30Pa、50Pa、60Pa、80Paが挙げられる。
【0041】
一実施形態において、減圧蒸留は、分子蒸留、高真空精留を含む。
【0042】
一実施形態において、分子蒸留における主蒸発器では、圧力は、0.1~30Paであってもよく、さらに0.1~15Paであってもよく、例えば1Pa、2Pa、5Pa、6Pa、8Pa、10Pa、12Pa、16Pa、18Pa、20Pa、25Paが挙げられる。
【0043】
一実施形態において、分子蒸留における主蒸発器では、蒸発面の温度は、130~250℃であり、さらに160~230℃であってもよく、例えば140℃、150℃、160℃、180℃、200℃、210℃、220℃、240℃が挙げられる。
【0044】
一実施形態において、分子蒸留における主蒸発器では、凝縮面の温度は、130~160℃であり、さらに130~150℃であってもよく、例えば135℃、140℃、145℃、150℃、155℃が挙げられる。
【0045】
一実施形態において、分子蒸留における供給口の温度は、130~160℃であり、さらに135~150℃であってもよく、例えば130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、155℃が挙げられる。
【0046】
一実施形態において、高真空精留に使用される精留塔の理論段数は、8~24であってもよく、さらに12~20であってもよく、例えば10、12、18、24が挙げられる。充填塔を使用することが好ましく、充填物は、本分野において通常に使用される充填物、例えば波紋状ワイヤーメッシュパッキング(Corrugated Wire Mesh Packing)であってもよい。
【0047】
一実施形態において、高真空精留に使用される精留塔の塔頂圧力は、1~100Paであってもよく、さらに1~50Paであってもよく、例えば20Pa、30Pa、60Pa、70Pa、80Paが挙げられる。
【0048】
一実施形態において、高真空精留に使用される精留塔の塔頂温度は、160~250℃であってもよく、さらに180~240℃であってもよく、例えば170℃、185℃、190℃、195℃、200℃、210℃、220℃、225℃、228℃、230℃、232℃、235℃、238℃、240℃、245℃が挙げられる。
【0049】
一実施形態において、高真空精留に使用される精留塔の塔底温度は、180~270℃、例えば190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、243℃、245℃、248℃、250℃、255℃、260℃、265℃であってもよい。
【0050】
一実施形態において、高真空精留における還流比は、(1~10):1であってもよく、さらに(6~10):1であってもよく、例えば1:1、2:1、5:1、6:1、8:1、10:1が挙げられる。
【0051】
一実施形態のステップ(2)において、減圧蒸留の前に長鎖二塩基酸の粗生成物を脱色処理してもよく、減圧蒸留で得られた製品を脱色処理してもよい。
【0052】
一実施形態のステップ(2)において、脱色処理は、溶液脱色又は溶融脱色であってもよい。
【0053】
一実施形態において、脱色処理に用いられる脱色剤は、活性炭であってもよい。
【0054】
一実施形態において、溶融脱色とは、脱色される長鎖二塩基酸の粗生成物又は減圧蒸留で得られた留分をそのまま脱色剤と接触して脱色することを意味する。例えば、長鎖二塩基酸の粗生成物又は減圧蒸留後の留分を加熱溶融し、溶融状態で脱色剤に通過させる。
長鎖二塩基酸の粗生成物を溶融状態で脱色してから減圧蒸留するか、又は、減圧蒸留後の留分を溶融脱色することにより、加熱によるエネルギー消耗を低減し、さらにプロセスの手順を簡略化することができる。
【0055】
一実施形態において、溶融脱色における温度は、130~180℃であってもよく、さらに130~150℃であってもよく、例えば135℃、140℃、145℃、150℃、155℃、160℃、165℃、170℃、175℃が挙げられる。
【0056】
一実施形態において、溶融脱色における活性炭の使用量は、長鎖二塩基酸の粗生成物の質量又は減圧蒸留で得られた留分の質量に対して3~50wt%であり、さらに5~25wt%であってもよく、例えば5wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、40wt%、45wt%が挙げられる。
【0057】
一実施形態において、溶融脱色終了後、更なる濾過により残留した活性炭を除去でき、これにより、溶融脱色により、脱色される物質を脱色及び精製処理するとともに、その後の不純物の混入を回避することができる。
【0058】
一実施形態において、脱色処理に用いられる活性炭は、粉末活性炭、活性炭繊維、活性炭粒子、活性炭カラムのうちの1つ又は複数であってもよい。
【0059】
製品の品質に対する顧客及び市場の要求に応じて、本発明の精製プロセスにより得られた製品は、製品の品質をさらに改善するためにさらに精製されることができる。
【0060】
本発明の一実施形態に係る精製プロセスは、手順を簡略化するとともに、溶媒晶析法による製品の品質が悪く、溶媒が環境を汚染するという欠点を克服できる。
【0061】
本発明の一実施形態に係る精製プロセスは、生物学的発酵法により調製される長鎖二塩基酸の抽出及び精製に適しており、膜濾過と蒸留技術の組み合わせ、特にセラミック膜や限外濾過膜による濾過と分子蒸留又は高真空精留技術の組み合わせにより、有機溶媒を使用する必要がなくなり、得られた製品は、高純度、白色で、かつ低灰分、低金属イオン及び低窒素含有量を有する。
【0062】
本発明の一実施形態は、上記の精製プロセスにより得られる長鎖二塩基酸を提供する。
【0063】
図1に示すように、本発明の一実施形態は、上記の精製プロセスを実現するための長鎖二塩基酸の精製システムを提供する。前記精製システムは、順次に設置されている膜濾過ユニット、酸性化による結晶化ユニット、分離ユニット、乾燥ユニット及び減圧蒸留ユニットを含む。
【0064】
一実施形態において、精製システムは、原料液貯蔵タンクを含む。原料液貯蔵タンクは、膜濾過ユニットに接続することができ、長鎖二塩基酸の発酵液又はその処理液を収容するために用いられる。
【0065】
一実施形態において、膜濾過ユニットは、長鎖二塩基酸の発酵液又はその処理液の膜による濾過に使用される。膜濾過ユニットには、濾過膜、例えば精密濾過膜及び/又は限外濾過膜を設置することができる。
【0066】
一実施形態において、精密濾過膜の孔径は、0.01~1ミクロンであってもよく、またさらに0.02~0.2ミクロンであってもよく、さらに0.02~0.1ミクロンであってもよく、例えば0.03ミクロン、0.05ミクロン、0.08ミクロン、0.1ミクロン、0.15ミクロン、0.5ミクロンが挙げられる。
【0067】
一実施形態において、限外濾過膜の分画分子量は、1,000~200,000Daであってもよく、またさらに1,000~30,000Daであってもよく、さらに1,000~10,000Daであってもよく、例えば1,500Da、2,000Da、3,000Da、4,000Da、5,000Da、6,000Da、8,000Da、10,000Da、15,000Da、20,000Da、25,000Daが挙げられる。
【0068】
一実施形態において、限外濾過膜は、ポリプロピレン膜、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、無機限外濾過膜、例えばセラミック膜であってもよい。
【0069】
一実施形態において、精製システムは、原料液貯蔵タンクを加熱するための加熱装置を含み、これにより、長鎖二塩基酸の発酵液又はその処理液を一定の温度、例えば50~100℃で膜により濾過する。
【0070】
一実施形態において、膜濾過ユニットにおいて長鎖二塩基酸の発酵液を膜により濾過処理した後、濾液を得る。酸性化による結晶化ユニットは、濾液を酸性化して結晶化させるためのものである。
【0071】
一実施形態において、酸性化による結晶化ユニットは、酸性化タンクを含み、酸性化タンクにおいて濾液を酸性化して結晶化させて固液混合物を得ることができる。
【0072】
一実施形態において、膜濾過ユニットと酸性化による結晶化ユニットとの間には、第1脱色ユニットをさらに設置してもよく、これにより、濾液を脱色処理してから酸性化して結晶化させる。
【0073】
一実施形態において、第1脱色ユニットは、脱色タンク及びフィルターを含むことができる。脱色タンクは、脱色される液体と固体脱色剤とを固液混合して脱色するためのものである。脱色終了後、フィルターにより固体脱色剤を除去することができる。前記フィルターは、プレート及びフレームフィルター(Plate-and-frame filter)であってもよい。
【0074】
一実施形態において、第1脱色ユニットは、脱色処理を一定の温度(例えば50~100℃)で行うために、脱色タンクを加熱するための加熱装置を含む。
【0075】
一実施形態において、分離ユニットは、酸性化による結晶化ユニットにおける固液混合物を固液分離するためのものである。
【0076】
一実施形態において、分離ユニットは、濾過分離機又は遠心分離機を含むことができる。
【0077】
一実施形態において、乾燥ユニットは、分離ユニットにより得られる固体を加熱して乾燥することにより長鎖二塩基酸の粗生成物を得るための加熱装置を含む。
【0078】
一実施形態において、減圧蒸留ユニットは、乾燥後の長鎖二塩基酸の粗生成物を蒸留分離して長鎖二塩基酸製品を得るためのものである。
【0079】
一実施形態において、減圧蒸留ユニットは、加熱装置において長鎖二塩基酸の粗生成物を溶融状態にするための加熱装置を含む。
【0080】
一実施形態において、減圧蒸留ユニットは、減圧蒸留プロセスを行うための蒸留装置を含む。
【0081】
一実施形態において、蒸留装置は、分子蒸留を行うための分子蒸留装置を含む。
【0082】
他の実施形態において、蒸留装置は、高真空精留を行うための精留塔を含む。
【0083】
一実施形態において、精留塔の理論段数は、8~24であってもよく、さらに12~20であってもよく、例えば10、12、18、24が挙げられる。
【0084】
一実施形態において、精製システムは、第2脱色ユニットを含む。
【0085】
一実施形態において、第2脱色ユニットは、脱色タンク及びフィルターを含むことができる。脱色タンクは、脱色される液体と固体脱色剤とを固液混合して脱色するためのものである。脱色終了後、フィルターにより残留した固体脱色剤を除去することができる。前記フィルターは、プレート及びフレームフィルターであってもよい。
【0086】
一実施形態において、長鎖二塩基酸の粗生成物又は減圧蒸留で得られた留分をそのまま第2脱色ユニットにおける脱色剤と接触して脱色する。例えば、長鎖二塩基酸の粗生成物又は減圧蒸留後の留分を溶融状態で第2脱色ユニットにおける脱色剤に通過させる。
【0087】
一実施形態において、第2脱色ユニットは、脱色処理を一定の温度(例えば130~180℃)で行うために、脱色タンクを加熱するための加熱装置を含む。
【0088】
一実施形態において、第2脱色ユニットは、減圧蒸留の前に長鎖二塩基酸の粗生成物を脱色処理するために、乾燥ユニットと減圧蒸留ユニットとの間に設置され、又は、第2脱色ユニットは、減圧蒸留で得られた製品を脱色処理するために、減圧蒸留ユニットの後に設置される。
【0089】
他の実施形態において、長鎖二塩基酸の粗生成物又は減圧蒸留で得られた製品を溶融状態まで加熱し、そして脱色剤により脱色処理する。脱色後、濾過により残留した脱色剤を除去し、長鎖二塩基酸の第2粗生成物又は長鎖二塩基酸製品を得ることができる。
【0090】
本発明において、酸性化タンク、脱色タンク、溶解タンク、加熱装置などは、いずれも従来的装置であってもよい。
【0091】
以下、具体的な実施例により本発明の一実施形態に係る長鎖二塩基酸の精製プロセスをさらに説明する。ここで、特に説明しない限り、使用された原料は、いずれも市販のものであり、使用されたテスト方法は、以下の通りである。
【0092】
1.長鎖二塩基酸のガスクロマトグラフによる検出
標準的な長鎖二塩基酸サンプルを対照として使用し、GB5413.27-2010乳幼児用食品及び乳製品中の脂肪酸の測定を参照した。
【0093】
2.灰分の検出
テストサンプルを坩堝に入れて焼いてから、700~800℃のマッフル炉で2時間焼き、降温し、重量が変化しなくなった後、その重量を測定し、重量百分率を計算した。
【0094】
3.全窒素の測定
ケルダール法を使用した。
【0095】
4.光透過率テスト
物質の色調によって特定の波長における光透過率が違うことにより、二塩基酸製品の色調を25質量%の長鎖二塩基酸サンプルのジメチルスルホキシド溶液の440nmにおける光透過率で表す。
【0096】
5.Feの含有量テスト
GB/T3049-2006を参照して分光光度法により測定する。
【0097】
実施例1 DC12 精密濾過膜+分子蒸留
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸(DC12)の発酵液を得た。
【0098】
発酵液を85℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.2に調整し、85℃でセラミック精密濾過膜により濾過して菌体を除去して濾液を得た。ここで、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであった。
【0099】
3wt%の活性炭により濾液を85℃で40分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により清澄液を得、硫酸で清澄液のpH値を2.8に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0100】
DC12粗生成物を分子蒸留により精製し、分子蒸留装置の主蒸発器における圧力を18Paとし、主蒸発器における蒸発面の温度を180℃とし、主蒸発器における凝縮面の温度を140℃とし、供給口の温度を130℃とし、留分を収集してDC12製品を得た。
【0101】
実施例2 DC12精密濾過膜+高真空精留
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0102】
発酵液を85℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.2に調整し、85℃でセラミック精密濾過膜により濾過して菌体を除去して濾液を得た。ここで、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであった。
【0103】
3wt%の活性炭により濾液を85℃で20分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により清澄液を得、硫酸で清澄液のpH値を2.8に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0104】
DC12粗生成物を高真空精留により精製し、精留塔の段数を12とし、塔頂圧力を60Paとし、塔頂温度を238℃とし、塔底温度を250℃とし、還流比を5:1とし、留分を収集し、冷却してDC12製品を得た。
【0105】
実施例3 DC16精密濾過膜+限外濾過膜+分子蒸留
特許文献CN1570124Aに記載の実施例8の発酵方法によりヘキサデカン二酸(DC16)の発酵液を得た。
【0106】
発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、90℃でセラミック精密濾過膜により濾過して菌体を除去し、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであった。その後、30℃まで降温し、30℃で限外濾過膜により濾過して濾液を得た。ここで、限外濾過膜の分画分子量は5,000Daであった。
【0107】
2.5wt%の活性炭により濾液を85℃で20分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により清澄液を得、塩酸で清澄液のpHを3.0に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC16粗生成物を得た。
【0108】
DC16粗生成物を分子蒸留により精製し、分子蒸留装置の主蒸発器における圧力を6Paとし、主蒸発器における蒸発面の温度を200℃とし、主蒸発器における凝縮面の温度を150℃とし、供給口の温度を140℃とし、留分を収集し、冷却してDC16製品を得た。
【0109】
実施例4-1 DC12精密濾過膜+限外濾過膜+分子蒸留
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0110】
DC12の発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、90℃でセラミック精密濾過膜により濾過して菌体を除去し、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであった。その後、35℃まで降温し、35℃で限外濾過膜により濾過して濾液を得た。ここで、限外濾過膜の分画分子量は5,000Daであった。
【0111】
2.5wt%の活性炭により濾液を85℃で20分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により清澄液を得、硫酸で清澄液のpH値を3.0に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0112】
DC12粗生成物を分子蒸留により精製し、分子蒸留装置の主蒸発器における圧力を5Paとし、主蒸発器における蒸発面の温度を180℃とし、主蒸発器における凝縮面の温度を140℃とし、供給口の温度を130℃とし、留分を収集し、冷却してDC12製品を得た。
【0113】
実施例4-2 DC12精密濾過膜+限外濾過膜+分子蒸留
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0114】
DC12の発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、90℃でセラミック精密濾過膜により濾過して菌体を除去し、セラミック精密濾過膜の孔径は0.15μmであった。その後、35℃まで降温し、35℃で限外濾過膜により濾過して濾液を得た。ここで、限外濾過膜の分画分子量は15,000Daであった。
【0115】
2.5wt%の活性炭により濾液を85℃で20分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により清澄液を得、硫酸で清澄液のpH値を4に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0116】
DC12粗生成物を分子蒸留により精製し、分子蒸留装置の主蒸発器における圧力を8Paとし、主蒸発器における蒸発面の温度を180℃とし、主蒸発器における凝縮面の温度を140℃とし、供給口の温度を130℃とし、留分を収集し、冷却してDC12製品を得た。
【0117】
実施例4-3 DC12精密濾過膜+限外濾過膜+分子蒸留
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0118】
DC12の発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、90℃でセラミック精密濾過膜により濾過して菌体を除去し、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであった。その後、35℃に降温し、35℃で限外濾過膜により濾過して濾液を得た。限外濾過膜の分画分子量は15,000Daであった。
【0119】
2.5wt%の活性炭により濾液を85℃で20分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により清澄液を得、硫酸で清澄液のpH値を4.5に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0120】
DC12粗生成物を分子蒸留により精製し、分子蒸留装置の主蒸発器における圧力を18Paとし、主蒸発器における蒸発面の温度を150℃とし、主蒸発器における凝縮面の温度を130℃とし、供給口の温度を130℃とし、留分を収集し、冷却してDC12製品を得た。
【0121】
実施例5-1 DC12精密濾過膜+限外濾過膜+高真空精留
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0122】
DC12の発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、90℃でセラミック精密濾過膜により濾過して菌体を除去し、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであった。その後、35℃まで降温し、35℃で限外濾過膜により濾過して濾液を得た。ここで、限外濾過膜の分画分子量は5,000Daであった。
【0123】
2.5wt%の活性炭により濾液を85℃で20分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により清澄液を得、硫酸で清澄液のpH値を3.0に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0124】
DC12粗生成物を高真空精留により精製し、精留塔の段数を10とし、塔頂圧力を30Paとし、塔頂温度を230℃とし、塔底温度を243℃とし、還流比を5:1とし、留分を収集し、冷却してDC12製品を得た。
【0125】
実施例5-2 DC12精密濾過膜+限外濾過膜+高真空精留
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0126】
DC12の発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、90℃でセラミック精密濾過膜により濾過して菌体を除去し、セラミック精密濾過膜の孔径は0.15μmであった。その後、35℃まで降温し、35℃で限外濾過膜により濾過して濾液を得た。ここで、限外濾過膜の分画分子量は12,000Daであった。
【0127】
2wt%の活性炭により濾液を85℃で20分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により清澄液を得、硫酸で清澄液のpH値を4.2に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0128】
DC12粗生成物を高真空精留により精製し、精留塔の段数を24とし、塔頂圧力を30Paとし、塔頂温度を240℃とし、塔底温度を252℃とし、還流比を5:1とし、留分を収集し、冷却してDC12製品を得た。
【0129】
実施例5-3 DC12精密濾過膜+限外濾過膜+高真空精留
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0130】
DC12の発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、90℃でセラミック精密濾過膜により濾過して菌体を除去し、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであった。その後、35℃まで降温し、35℃で限外濾過膜により濾過して濾液を得た。ここで、限外濾過膜の分画分子量は5,000Daであった。
【0131】
2wt%の活性炭により濾液を85℃で20分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により清澄液を得、硫酸で清澄液のpH値を3に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0132】
DC12粗生成物を高真空精留により精製し、精留塔の段数を24とし、塔頂圧力を30Paとし、塔頂温度を240℃とし、塔底温度を252℃とし、還流比を7:1とし、留分を収集し、冷却してDC12製品を得た。
【0133】
実施例6-1 DC12精密濾過膜+限外濾過膜+粗生成物の溶融脱色+高真空精留
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0134】
DC12の発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、90℃でセラミック精密濾過膜により濾過して菌体を除去し、セラミック精密濾過膜の孔径は0.25μmであった。その後、35℃まで降温し、35℃で限外濾過膜により濾過して濾液を得た。限外濾過膜の分画分子量は20,000Daであった。2wt%の活性炭により濾液を85℃で20分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により清澄液を得た。
【0135】
硫酸で清澄液のpH値を4.5に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0136】
DC12粗生成物を加熱溶融してから活性炭粒子から構成される活性炭カラムにより脱色し、脱色の温度は150℃であり、活性炭粒子の質量は、DC12粗生成物の質量に対して40%であった。
【0137】
脱色後の粗生成物を高真空精留により精製し、精留塔の段数を20とし、塔頂圧力を30Paとし、塔頂温度を230℃とし、塔底温度を245℃とし、還流比を5:1とし、留分を収集し、冷却してDC12製品を得た。
【0138】
実施例6-2 DC12精密濾過膜+限外濾過膜+粗生成物の溶融脱色+高真空精留
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0139】
DC12の発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、90℃でセラミック精密濾過膜により濾過して菌体を除去し、セラミック精密濾過膜の孔径は0.15μmであった。その後、35℃まで降温し、35℃で限外濾過膜により濾過して濾液を得た。ここで、限外濾過膜の分画分子量は5,000Daであった。2wt%の活性炭により濾液を85℃で20分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により清澄液を得た。
【0140】
硫酸で清澄液のpH値を3に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0141】
DC12粗生成物を加熱溶融してから活性炭粒子から構成される活性炭カラムにより脱色し、脱色の温度は150℃であり、活性炭粒子の質量は、DC12粗生成物の質量に対して40%であった。
【0142】
脱色後の粗生成物を高真空精留により精製し、精留塔の段数を22とし、塔頂圧力を30Paとし、塔頂温度を230℃とし、塔底温度を252℃とし、還流比を8:1とし、留分を収集し、冷却してDC12製品を得た。
【0143】
実施例6-3 DC12精密濾過膜+限外濾過膜+粗生成物の溶融脱色+高真空蒸留
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0144】
DC12の発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、90℃でセラミック精密濾過膜により濾過して菌体を除去し、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであった。その後、35℃まで降温し、35℃で限外濾過膜により濾過して濾液を得た。限外濾過膜の分画分子量は5,000Daであった。2wt%の活性炭により濾液を85℃で20分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により清澄液を得た。
【0145】
硫酸で清澄液のpH値を3に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0146】
DC12粗生成物を加熱溶融してから活性炭粒子から構成される活性炭カラムにより脱色し、脱色の温度は140℃であり、活性炭粒子の質量は、DC12粗生成物の質量に対して25%であった。
【0147】
脱色後の粗生成物を高真空精留により精製し、精留塔の段数を18とし、塔頂圧力を30Paとし、塔頂温度を240℃とし、塔底温度を250℃とし、還流比を5:1とし、留分を収集し、冷却してDC12製品を得た。
【0148】
実施例7 DC12精密濾過膜+限外濾過膜+粗生成物の溶融脱色+分子蒸留
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0149】
DC12の発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、90℃でセラミック精密濾過膜により濾過して菌体を除去し、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであった。その後、35℃まで降温し、35℃で限外濾過膜により濾過して濾液を得た。ここで、限外濾過膜の分画分子量は5,000Daであった。
【0150】
2.5wt%の活性炭により濾液を85℃で20分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により清澄液を得た。硫酸で清澄液のpH値を3に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0151】
DC12粗生成物を加熱溶融してから活性炭粒子から構成される活性炭カラムにより脱色し、脱色の温度は135℃であり、活性炭粒子の質量は、DC12粗生成物の質量に対して10%であった。
【0152】
脱色後のDC12を分子蒸留により精製し、分子蒸留装置の主蒸発器における圧力を3Paとし、主蒸発器における蒸発面の温度を220℃とし、主蒸発器における凝縮面の温度を145℃とし、供給口の温度を135℃とし、留分を収集し、冷却してDC12製品を得た。
【0153】
実施例8 DC12精密濾過膜+限外濾過膜+粗生成物の溶融脱色+分子蒸留
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0154】
DC12の発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、90℃でセラミック精密濾過膜により濾過して菌体を除去し、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであった。その後、35℃まで降温し、35℃で限外濾過膜により濾過して濾液を得た。限外濾過膜の分画分子量は15,000Daであった。
【0155】
2.5wt%の活性炭により濾液を85℃で20分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により清澄液を得た。硫酸で清澄液のpH値を4.2に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0156】
DC12粗生成物を加熱溶融してから活性炭粒子から構成される活性炭カラムにより脱色し、脱色の温度は135℃であり、活性炭粒子の質量は、DC12粗生成物の質量に対して5%であった。
【0157】
脱色後のDC12を分子蒸留により精製し、分子蒸留装置の主蒸発器における圧力を16Paとし、主蒸発器における蒸発面の温度を180℃とし、主蒸発器における凝縮面の温度を140℃とし、供給口の温度を130℃とし、留分を収集し、冷却してDC12製品を得た。
【0158】
実施例9 DC12精密濾過膜+限外濾過膜+分子蒸留+留分の溶融脱色
本実施例に使用される原料やステップは、実施例4-1とほぼ同一であり、その相違点は、実施例4-1において分子蒸留後の留分をさらに脱色し、分子蒸留後の留分を加熱溶融してから活性炭粒子から構成される活性炭カラムにより脱色し、脱色の温度を135℃とし、活性炭の使用量を留分の15%とし、冷却してDC12製品を得ることにある。
【0159】
比較例1 DC12遠心+アルカリによる溶解+脱色+酸による沈殿
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0160】
発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、遠心により菌体を除去し、清澄液を得、硫酸で清澄液のpH値を3.0に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0161】
DC12粗生成物を100g取り、1000gの水を加え、70℃まで昇温し、苛性ソーダを加えてpHを10に調整し、攪拌してドデカン二酸を完全に溶解させた。得られた溶液にマクロポーラス粉状砂糖炭10gを加え、1時間攪拌し、熱いうちに濾過して濾液を得た。濾液にマクロポーラス粉状砂糖炭10gをさらに加え、1時間攪拌し、熱いうちに濾過して濾液を得た。得られた濾液に濃度が98質量%の硫酸を加えてpHを3未満に調整し、25℃まで降温し、濾過してDC12製品を得た。
【0162】
比較例2 DC12遠心+脱色+酢酸エチルによる再結晶
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0163】
発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、遠心により菌体を除去し、濾液に濾液の質量の2.5%の活性炭を加えて脱色し、90℃で25分間脱色し、90℃でセラミック膜により濾過し、清澄液を得、清澄液のpH値を3.0に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12粗生成物を得た。
【0164】
DC12粗生成物を300g取り、酢酸ブチル900mLを加え、80℃まで加熱して粗生成物を溶解させ、濾過し、60分間保温し、25℃まで冷却して結晶化させ、濾過し、得られた一次結晶化の製品に1000mLの酢酸ブチルをさらに加え、80℃まで加熱してDC12を溶解させ、30分間保温し、1時間以内に25℃まで冷却して結晶化させ、濾過、乾燥してDC12製品を得た。
【0165】
比較例3 DC16遠心+アルカリによる溶解+脱色+酸による沈殿
特許文献CN1570124Aに記載の実施例8の発酵方法によりヘキサデカン二酸の発酵液を得た。
【0166】
発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpHを8.5に調整し、遠心により菌体を除去し、清澄液を得、硫酸で清澄液のpH値を3.0に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、乾燥してDC16粗生成物を得た。
【0167】
DC16粗生成物を100g取り、1500gの水を加え、70℃まで昇温し、苛性ソーダを加えてpHを10.2に調整し、攪拌してヘキサデカン二酸を完全に溶解させた。得られた溶液にマクロポーラス粉状砂糖炭9.5gを加え、1時間攪拌し、熱いうちに濾過して濾液を得た。濾液にマクロポーラス粉状砂糖炭10gをさらに加え、1時間攪拌し、熱いうちに濾過して濾液を得た。得られた濾液に濃度が98質量%の硫酸を加え、pHを3未満に調整し、25℃まで降温し、濾過してDC16製品を得た。
【0168】
上記の実施例及び比較例で得られた製品に対して関連性能テストを行い、具体的な結果を表1に示す。
【0169】
【表1-1】
【表1-2】
【0170】
特に限定されない限り、本発明に使用される用語は、いずれも当業者に一般的に理解される意味を有する。
【0171】
なお、本発明に記載の実施形態は例示的なものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の範囲内において各種の他の置換、変更、改良を行うことができ、このため、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1