(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】多様なファセット角を有するフレネルレンズアセンブリ
(51)【国際特許分類】
G02B 3/08 20060101AFI20220627BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20220627BHJP
G02B 30/00 20200101ALI20220627BHJP
G02C 7/02 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
G02B3/08
G02B27/02 Z
G02B30/00
G02C7/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020153162
(22)【出願日】2020-09-11
(62)【分割の表示】P 2019522712の分割
【原出願日】2017-09-20
【審査請求日】2020-10-08
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビールフイゼン,サージ
(72)【発明者】
【氏名】フ,シンダ
(72)【発明者】
【氏名】カロッロ,ジェローム
【審査官】沖村 美由
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180871(JP,A)
【文献】特表2011-507011(JP,A)
【文献】特開2005-049367(JP,A)
【文献】特開2000-131510(JP,A)
【文献】特開平2-168220(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043471(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第2523346(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00- 3/14
G02C 1/00-13/00
G02B 27/00-30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
レンズアセンブリを備え、前記レンズアセンブリは、ループ状に延在する少なくとも1つのフレネルプリズムを規定する第1の表面を有するレンズ本体を含み、
前記フレネルプリズムは、前記フレネルプリズムの長さ方向に沿った異なる位置において、異なるファセット角を有し、
前記レンズ本体は前記レンズ本体のある位置において直交する第1の断面および第2の断面の各々から見た場合に湾曲しており、
前記レンズ本体
の第3の断面
は、第1の曲率半径
を有し、
前記フレネルプリズムは、前記第3の断面において見た場合に第1のファセット角を有し、
前記レンズ本体
の前記第3の断面に平行な第4の断面
は、第2の曲率半径
を有し、
前記フレネルプリズムは、また、前記第4の断面において見た場合に前記第1のファセット角と異なる第2のファセット角を有し、
前記第1の曲率半径は、前記第2の曲率半径より小さ
く、
前記レンズ本体は、さらに、ループ状に延在する少なくとも1つの前記フレネルプリズムを規定する第2の表面を有し、
前記各フレネルプリズムは楕円形に延在し、
前記第2の表面は、前記第1の表面の反対側の面であり、
前記第1の表面上の第1のフレネルプリズムの楕円の焦点を通過する第1の軸と、前記第2の表面上の第2のフレネルプリズムの楕円の焦点を通過する第2の軸とは互いに直交する、装置。
【請求項2】
前記各フレネルプリズムは、前記第3の断面および前記第4の断面において、ファセットの高さが等しい、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記各フレネルプリズムと、前記各フレネルプリズムに隣接するフレネルプリズムとは、ファセットの高さが
製造公差の範囲内で等しい、請求項1
または2に記載の装置。
【請求項4】
前記各フレネルプリズムを含む隣接し合うフレネルプリズムの対において、ピッチは
製造公差の範囲内で等しい、請求項1~
3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記第2の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の半径比は、0.1以下である、請求項1~
4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記半径比は0.05以下である、請求項
5に記載の装置。
【請求項7】
前記レンズ本体はアナモルフィックである、請求項1~
6のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野
本開示は、概して、仮想現実ディスプレイに関し、より具体的には、仮想現実ディスプレイの光学レンズアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
仕事および娯楽用途での視覚媒体の利用が増えていることにともなって、使用者は、臨場感のある視覚体験、特に三次元での体験が組み込まれた視覚体験を求めている。そのため、使用者は、仮想現実(virtual reality、VR)ヘッドセットおよび他の三次元(3D)表示技術を求め始めている。しかしながら、従来のレンズ技術では、使用者の視野、特に視野周縁に、歪みや、焦点の消失、不要な拡大、望ましくない像面湾曲が導入されてしまう。こうした歪みや、収差があると、VRや3D体験の質が低下し、特には、VRディスプレイの臨場感が損なわれる。歪みおよび収差を打ち消すために、従来の3Dディスプレイシステムでは、コンピュータによる複雑な歪み補正技術および色補正技術を採用しているが、その結果、画像表示にかかる待ち時間が長くなっている。歪み、収差、または待ち時間があるために、視覚体験が損なわれている。
【0003】
添付の図面を参照すれば、本開示に対する理解がより深まり、本開示の多くの特徴および利点が当業者にとって明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】いくつかの実施形態に係るフレネル表面を有するレンズアセンブリを用いた、目の近くで使うディスプレイシステムの断面図である。
【
図2】いくつかの実施形態に係るフレネル表面を有するレンズ本体を示す図である。
【
図3A】いくつかの実施形態に係るレンズ本体の例のフレネル表面を示す図である。
【
図3B】いくつかの実施形態に係るレンズ本体の例のフレネル表面を示す図である。
【
図4】いくつかの実施形態に係るフレネル表面を有するレンズ本体を示す図である。
【
図5】いくつかの実施形態に係るレンズ本体の表面によって規定される複数のフレネルプリズムについて、その向きの例を示す図である。
【
図6】いくつかの実施形態に係るレンズ本体の表面によって規定される複数のフレネルプリズムについて、その向きの例を示す図である。
【
図7】いくつかの実施形態に係るレンズ本体の、互いに直交する各断面について、中心線の湾曲を示す図である。
【
図8】いくつかの実施形態に係るレンズ本体の表面にて規定されるフレネル表面について、異なる位置におけるその構成を示す断面図である。
【
図9】いくつかの実施形態に係るレンズ本体の表面にて規定されるフレネル表面について、異なる位置におけるその構成を示す断面図である。
【
図10】いくつかの実施形態に係るレンズ本体について、中心線の湾曲のあてはめ曲率半径の変化を示す図である。
【
図11】いくつかの実施形態に係る、対向するフレネル表面を含むレンズ本体を示す図である。
【
図12】いくつかの実施形態に係るアナモルフィックレンズ本体を示す図である。
【
図13】いくつかの実施形態に係るアナモルフィックレンズ本体を示す図である。
【
図14】本開示の少なくとも1つの実施形態に係るレンズアセンブリを実現するヘッドマウントディスプレイ(head mounted display、HMD)デバイスの背面図である。
【0005】
別々の図面中で同一の参照記号を用いている場合は、類似のものまたは同一のものを指している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
具体的な一例において、装置は、複数のフレネルプリズムを規定する表面を有するレンズ本体を含むレンズアセンブリを備える。複数のフレネルプリズムは、複数のグルーブまたはセグメントとも称され、そのファセット角は、複数のフレネルプリズムに沿った位置に応じて変化してもよい。たとえば、各フレネルプリズムは、そのフレネルプリズムの長さ方向に沿った第1の位置では第1のファセット角を有してよく、そのフレネルプリズムの長さ方向に沿った第2の位置では、第1のファセット角とは異なる第2のファセット角を有してよい。
【0007】
一例において、レンズアセンブリは、ディスプレイパネルを備えたヘッドアップディスプレイに組み込むことができる。レンズアセンブリは、レンズアセンブリの光軸がディスプレイパネルと交わるように載置される。レンズアセンブリは、アナモルフィックX-Yレンズ本体を含んでもよい。アナモルフィックX-Yレンズ本体は、複数のアナモルフィックX-Yフレネルプリズムを含むか(そのファセット角が、グルーブまたはセグメント(楕円形)が連なる方向に沿って変化し、これにより、特定位置に対する制御が可能であるもの)、または、X方向のフレネルプリズムとY方向のフレネルプリズムとを有しセグメント角が連続的に変動する型(らせん状)の複数のフレネルプリズムといったような、薄く積層された複数のフレネルプリズム(楕円形)を含む。X方向とY方向とは、使用者の視野面において互いに直交する方向(たとえば左右方向と上下方向)である。とりわけ、このレンズアセンブリが装置に組み込まれることにより、新規の構成が提供される。たとえば、レンズ本体が2軸型の湾曲を有する構成、または、湾曲したレンズ本体に平坦領域が組み込まれた構成などが提供される。こうした新規の構成により、使用者の体験は向上し、歪みも緩和される。
【0008】
たとえば、
図1中に示されるように、装置は、レンズ本体102を有するレンズアセンブリ124を備え、レンズ本体102は、ディスプレイパネル104と眼の節点106との間に配置されている。レンズ本体102は表面112および表面114を有する。図中では、表面112が複数のフレネルプリズム108を規定している。ディスプレイパネル104から放射される、光線116または光線118などの光は、複数のフレネルプリズム108を通る際に屈折し、眼の節点106へと進む。
図1中に示される向きにて右から左へと見たとき、横切っている光線116は、フレネルプリズムの1つにぶつかる最後の光線であり、光線118は、このフレネルプリズムに隣接するフレネルプリズムにぶつかる最初の光線であり、両光線は、眼の節点106に向かって進み、眼の節点106において、互いに隣接し合って見える。
【0009】
複数のフレネルプリズム108は、受光表面110(またはファセット)を含み、受光表面は、ディスプレイパネル104からの光を、眼の節点へ向かうよう屈折させる。受光表面は、平坦表面または湾曲表面であってもよい。図中では、この屈折表面110は非球表面である。受光表面110と、非屈折ファセット120とが交差して、稜線122が形成されている。
【0010】
各フレネルプリズム108は、ファセットの高さ(fh)およびファセット角(fa)を有し、かつ、隣接するフレネルプリズムからファセットピッチ(fp)だけ離れている。ファセットの高さ(fh)が示す高さは、稜線122と、図中の表面112などの、レンズ本体102の中心線の湾曲に平行な、ある表面と、の間の高さである。ファセット角が示す角度は、稜線から、受光表面110と表面112または隣接するフレネルプリズムとが接する点まで、屈折表面110に沿って延在する線と、レンズ本体102の中心線または表面112が描く曲線の接線に平行な線と、の間の角度である。ピッチ(fp)は、隣接し合うフレネルプリズムの稜線同士の間隔である。
【0011】
図中には、レンズ本体102が、複数のフレネルプリズム108を規定する1つの表面112を有するように示されているが、別の例では、第2の表面114もまた、複数のフレネルプリズムを規定してもよい。さらに、図中には、複数のフレネルプリズムを規定する表面112が、ディスプレイパネル104と向かい合うように、かつ、眼の節点106に対向する表面の反対側にあるように示されている。別の例として、表面114は、表面112により規定される複数のフレネルプリズムの代わりに、または表面112により規定される複数のフレネルプリズムに加えて、複数のフレネルプリズムを規定してもよい。
【0012】
たとえば、レンズ本体102は、光学プラスチックまたはガラスから形成されていてよく、フレネル表面112は、レンズアセンブリ作製時の成形過程において形成されてよい。代替的には、フレネル表面112は、プラスチックまたはガラスのレンズ生地に対して、たとえばエンボス加工、レーザアブレーション、または他の機械加工技術により、形成されてよい。代替的に、眼の節点106は、フレネル表面をそれぞれ有する別個のフレネルレンズを2枚合わせることによってできていてもよい。以下に、湾曲したレンズ本体が説明される。この湾曲したレンズ本体は、湾曲外形を維持するように湾曲レンズアセンブリ106を作製することによって(たとえば、剛性材料を使用してレンズ本体102を成形し、湾曲外形を強固に維持することによって)、得ることができる。または、この湾曲したレンズ本体は、レンズ本体102を可撓性となるように形成し、このレンズ本体102を湾曲位で載置して、所望の湾曲外形を得ることによっても、得ることができる。
【0013】
特に、レンズ本体102の異なる位置(図が示されるページの奥へ向かう方向に沿った異なる位置)での断面において見た場合、ある断面における複数のフレネルプリズムのファセット角は、別の断面におけるファセット角から変化していてよい。このようにファセット角が変化することにより、レンズ本体が別の構造構成をとることができる。
【0014】
図2中に示されるさらに他の例において、レンズ本体200は複数のフレネルプリズム202を含む。複数のフレネルプリズムが連なる方向に切断した別個の断面、たとえば断面A-Aまたは断面B-Bなどにおいて、所与のフレネルプリズムのファセット角は異なる。
図2中に示される例において、断面B-Bにおいて見たフレネルプリズムのファセット角は、断面A-Aにおいて見た同じフレネルプリズムのファセット角より小さい。具体的な一例において、フレネルプリズムは、連続的に変動するファセット角を有する。
【0015】
たとえば、
図3A中に示されるように、複数のフレネルプリズムは断面A-Aにおいてファセット角(fa
A)を有してよく、同じ複数のフレネルプリズムが断面B-Bにおいて、別のファセット角(fa
B)を有してよい。一例において、ファセット角fa
Aは、ファセット角fa
Bより大きい。任意で、隣接し合うフレネルプリズム間のピッチ(fp)は一定であってもよい。たとえば、ある選択されたフレネルプリズムを含む、隣接し合うフレネルプリズムの対において、ピッチ(fp)はほぼ等しくてよい。「ほぼ等しい」という用語は、本明細書中において使用される場合、製造公差の範囲内において等しいことを意味する。代替的に、ピッチは変化してもよい。
【0016】
図3A中に示されるように、ファセット角が変化した結果としてファセット
の高さが変化してもよい。たとえば、断面A-Aにおけるファセット
の高さ(fh
A)は、断面B-Bにおけるファセット
の高さ(fh
B)より大きい。代替的に、
図3B中に示されるように、レンズ本体の中心線に平行な表面に対するファセット
の高さ(fh)は、ファセット角がfa
Aからfa
Bに変化しても、変わらず一定であってもよい。たとえば、この平行な表面とは、ファセット角が最大となる断面などにおいて、レンズ本体の中心線に平行であり、かつ隣接するフレネルプリズム同士の間の最も低い点を通る表面であってもよい。このような例において、ピッチは、一定、または、隣接し合うフレネルプリズムの対においてほぼ等しいものとして図示される。代替的に、レンズ本体の異なる位置および異なる断面において、ピッチは異なる。
【0017】
特に、使用する複数のフレネルプリズムのファセット角が位置に応じて変化することにより、歪みが緩和された、または使用者の体験をあまり損なわない、別の形状のレンズ本体とすることができる。たとえば、
図4中では、レンズ本体400は複数のフレネルプリズム402を含む。複数のフレネルプリズム402は、稜線が連続ループとなるように形成できる。つまり、複数のフレネルプリズム402に含まれる各フレネルプリズムの稜線がそれぞれ輪を描いて出発点に戻ることで、各稜線が連続するように形成できる。一例において、複数のフレネルプリズム402の稜線は、同心を有し円形であってもよい。たとえば、
図5中では、1組のフレネルプリズム500が、中心軸504の周りに同心状である複数の円形のフレネルプリズム502を含む。
図6中に示される別の例において、レンズ本体600は、稜線が本質的に楕円形をなす複数のフレネルプリズム602を含む。この楕円は、その焦点が、軸604と一直線上に並んでいてもよい。代替的に、稜線は、上から見たときに不規則な連続曲線を描いていてもよい。
【0018】
図4に戻って、レンズ400は、さらに、互いに直交する2つの断面(たとえば、互いに直交する方向404に沿った2つの断面)の各々において見た場合にレンズ本体が湾曲して見えるような、軸湾曲を呈してもよい。この2つの断面は、レンズ本体の厚さに平行な断面である。たとえば、
図7中では、第1の断面において見た場合に、レンズ本体は湾曲702を呈している。レンズ本体を通って延在する中心線は、平坦ではなく、湾曲している。直交する断面を見た場合にも、レンズ本体は平坦ではなく湾曲しているが(断面704を参照)、その湾曲の程度は、第1の断面の湾曲の程度とは異なる。互いに直交する断面において見た曲線(702または704)は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。特に、両断面の湾曲は異なっていてよい。
【0019】
別の例において、互いに平行な断面(たとえば、
図4の断面A-Aおよび断面B-B)を見た場合に、レンズの湾曲またはファセット角は、変化してもよい。たとえば、レンズ本体の断面を見て、あてはめ曲率半径を求めてもよい。
図8中に示される一例において、レンズ400は、断面A-Aにおいて見た場合に、曲率半径(r
A)を有する。複数のファセットフレネルプリズム802を有するレンズ本体は、あてはめ曲率半径r
Aを有する円804に、近似的にあてはめることができる。
図9中に示されるレンズ400の、上記とは異なる断面B-Bにおいて、レンズは、上記とは異なるファセット角を有する複数のフレネルプリズム902を有してもよい。断面B-Bにおいて、曲率半径r
Bを有するレンズ400の湾曲を、近似的に円904にあてはめることができる。図中、半径r
Bは半径r
Aより大きい。両半径の半径比を、異なる位置において定めることができる。たとえば、レンズの半径が最も小さくなる断面におけるレンズの半径を求めることができ、上記断面と平行な、レンズの半径が最も大きくなる断面での、レンズの半径を求めることができる。半径比は、最も大きな半径に対する最も小さな半径の比として定めることができる。一例において、所与のレンズ構成について、半径比は0.1以下であり、たとえば、0.05以下、さらには0.01以下である。平坦な区画に近似的にあてはめた曲率半径は、無限に大きくなると考えられる。具体的な一例において、曲率半径が最も大きくなる断
面においてレンズ本体が平坦である場合、半径比はゼロに近くなる。
【0020】
図10中に示される別の例において、断面A-Aおよび断面B-Bに直交する断面においてレンズ1000を見た場合、レンズ1000の湾曲領域1002は、曲率半径の小さい円1006に近似的にあてはめることができ、断面10104に沿った別の領域は、曲率半径の大きい円1008に近似的にあてはめることができ、かつ、ほぼ平坦であってもよい。このような形状と、ディスプレイパネルとを組み合わせることにより、たとえばそうした仮想現実ヘッドセットを使用した際の、三次元での体験がさらに向上し得る。
【0021】
図中には、上述のレンズ本体が、複数のフレネルプリズムを規定する1つの表面を有するように示されているが、代替的に、レンズ本体は、複数のフレネルプリズムをそれぞれ規定する2つの表面を有してもよい。たとえば、
図11中では、レンズアセンブリ1100は、中心線1108を有するレンズ本体1102を含む。一方の主要な表面1104は、複数のフレネルプリズムを規定する。同様に、反対側の表面1106も、複数のフレネルプリズムを規定してもよい。一方の表面上にある複数のフレネルプリズム、または両方の表面上にある複数のフレネルプリズムは、異なる断面において、異なるファセット角を有してもよい。さらに、中心線1108から見た場合に、レンズ1102は直線状として図示されている。代替的に、中心線1108は、別の断面において見た場合に湾曲していてもよい。図中、複数のフレネルプリズムは、中心の軸1110の反対側の複数のフレネルプリズムのファセット角を鏡映した構造を有する。言い換えると、中心の軸1110の第1の側にあるフレネルプリズムは、中心の軸1110の第2の側にあるフレネルプリズムと対称である。つまり、あるフレネルプリズムと、これに対向して向かい合うフレネルプリズムとは、ファセット角がほぼ等しい。代替的に、ファセット角は、中心の軸1110に対して非対称である。さらに他の例において、2つのレンズ本体を一緒に使用し、前面にプリズムをそれぞれ有する2つの対向表面を規定してもよい。
【0022】
具体的な一例において、1つの表面が複数の楕円形フレネルプリズムを規定して、各楕円形フレネルプリズムの第1の軸が各楕円の焦点を通って延在し、同一または別個のレンズ本体に形成された第2の表面が、複数の楕円形フレネルプリズムを規定して、各楕円形フレネルプリズムの第2の軸が、第2の表面により規定されるその楕円形フレネルプリズムの焦点を通って延在するようにできる。第1の軸と第2の軸とは直交してもよい。たとえば、視聴者から見て、第1の軸は左右に延在していてよく、第2の軸は上下に延在していてよい。
【0023】
別の例において、
図12および
図13中では、レンズ本体1200が、輪を描いて出発点に戻る連続した稜線を形成する複数のフレネルプリズム1202を含んでいてよい。このようなレンズ1200は、互いに直交する2つの断面のいずれにおいて見た場合にもレンズ本体が湾曲して(たとえば、平坦でなく)見えるような、2軸型の湾曲を呈してもよい。代替的に、このようなレンズ本体は、レンズ本体の特定の点において多軸型の湾曲を呈し、かつ、直交する少なくとも1つの断面において、単軸型の湾曲、または湾曲のない平坦領域を呈してもよい。具体的な一例において、レンズ本体1200は、複数のファセットプリズムを含むアナモルフィックレンズとして形成されていてよく、これら複数のファセットプリズムは、各フレネルプリズムの長さ方向に沿った異なる位置において、異なるファセット角を有する。一例において、複数のフレネルプリズムは、第1の位置と第2の位置とにおけるファセット
の高さがほぼ等しくてよい。隣接し合うフレネルプリズムの対におけるファセットピッチは、ほぼ等しくてよい。
【0024】
具体的な一例において、複数のフレネルプリズム1202のファセット角(fa)は、0o~80oの範囲であってよく、たとえば、10o~80oの範囲、20o~70oの範囲、または25o~70oの範囲などであってよい。さらに他の例において、複数のフ
レネルプリズム1202のピッチ(fp)は、100マイクロメートル~3ミリメートルの範囲であってよく、たとえば、500マイクロメートル~2mmの範囲、または500マイクロメートル~1mmの範囲などであってよい。複数のフレネルプリズム1202は、-20o~60oの範囲の抜き勾配(頂点からレンズの中に向かって延在する鉛直線と、非屈折面と、によって規定される角度)を有してもよい。
【0025】
図14に、目の近くで使うディスプレイシステム100を実現するよう構成された、少なくとも1つの実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ(head mounted
display、HMD)デバイス1400の例が示される。HMDデバイス1400を使用者の顔に近い位置に固定して、使用者の動きに合わせてHMDデバイス1400も動くようにするために、ストラップまたは他の方法で使用者の頭部に取り付けた装置を用いて、使用者の頭部にHMDデバイス1400を装着する。しかしながら、場合によっては、使用者が、タブレットコンピュータなどの手持ち式装置を自分の顔の高さに持ち、その手持ち式装置の動きを抑えることにより、使用者の頭部が動いても手持ち式装置の向きが使用者の頭部に対して比較的固定されているようにしてもよい。こうした場合、上述のように扱う手持ち式装置は、使用者の頭部に物理的に取り付けて「装着」されてはいないのであるが、HMDデバイス1400の一実現例とみなすことができる。
【0026】
HMDデバイス1400は、表面1404を有するハウジング1402と、顔用ガスケット1406と、使用者の頭部にハウジング1402を装着して使用者がハウジング1402の表面1404と向かい合うようにするための1組のストラップまたはハーネス(明確さを期して
図14中に図示せず)とを備える。上記の実施形態において、HMDデバイス1400は両眼用HMDであり、したがって、左眼用ディスプレイパネル1408および右眼用ディスプレイパネル1410が表面1404に配置されている(ディスプレイパネル1408、1410は、2つ一緒に、または別々に、
図1のディスプレイパネル104の一実施形態を表す)。ディスプレイパネル1408、1410は、別個のディスプレイパネル(すなわち、別個のディスプレイドライバハードウェアコンポーネントにより駆動される独立したディスプレイアレイ)として実現されてもよく、または、ディスプレイパネル1408、1410は、単一のディスプレイパネルにおいて論理的に分割された領域(たとえば、単一のディスプレイアレイが左「半分」と右「半分」とに論理的に分割されたもの)として実現されてもよい。ハウジング1402は、さらに、左眼用ディスプレイパネル1408と一直線上に並ぶアイピースレンズアセンブリ1412と、右眼用ディスプレイパネル1410と一直線上に並ぶアイピースレンズアセンブリ1414とを含む。代替的に、いくつかの実施形態において、HMDデバイス1400は単眼用HMDとして実現されてもよく、この単眼用HMDは、左アイピースレンズアセンブリ1412および右アイピースレンズアセンブリ1414を通して、または、間にレンズを挟まず直接、使用者の両眼に対して単一の画像を提示する。レンズアセンブリ1412、1414はそれぞれ、レンズアセンブリ124、200、400、1100、1200、またはそれらの組み合わせなどの、本明細書中に開示されるレンズアセンブリのうちいずれのレンズアセンブリを実現するものであってもよい。一例において、レンズアセンブリ1412、1414の構造は、垂直方向に規定されていてかつ
図14中で紙面の奥へと延在する平面1416を介して、互いに鏡映関係にあってもよい。言い換えると、レンズアセンブリ1412、1414の構造は、平面1416に対して互いに鏡映関係にある。したがって、レンズアセンブリ1412、1414の正味の像面湾曲は、実質的に平坦、湾曲、またはそれらの組み合わせであり得るディスプレイパネル1408、1410の像面湾曲と、よく合致していてよい。特に、複数のフレネルプリズムは、ディスプレイパネル1408または1410に向かい合うレンズアセンブリ1412または1414の表面によって、規定される。したがって、HMDデバイス1400は、焦点収差が緩和され、かつ、従来のレンズを使用して実現したHMDに生じ得る他の収差または歪みも緩和されたものであり得る。
【0027】
概略的な記述または例示において上述された動作のすべてが必要でなくてもよく、特定の動作の一部が必要でなくてもよく、そして、記載された動作に加えて1つ以上のさらに他の動作が行なわれてもよいことに留意されたい。さらに、動作の列挙順が、必ずしも、それら動作の実行順と一致しなくてもよい。
【0028】
上述された明細書中において、特定の実施形態を参照して、いくつかの概念を説明したが、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更および変形が実施可能であることを認識する。したがって、明細書および図面は限定的ではなく例示的な意味で考慮されるべきであり、上記のような変更例はすべて本発明の範囲内に含まれるように意図されている。
【0029】
「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」などの用語またはその他の変形は、本明細書中において使用される場合、非排他的な包含を網羅することを意図している。たとえば、一連の特徴を含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもこれらの特徴のみに限らず、明記されていない他の特徴、またはこれらのプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の特徴を含むことができる。また、特に明記しない限り、「または」という用語は、排他的ではなく包括的な意味を有する。たとえば、条件AまたはBを満たすことは、Aが真であり(または存在する)、Bが偽である(または存在しない)こと、Aが偽であり(または存在しない)、Bが真である(または存在する)こと、AおよびBの両方が真である(または存在する)ことのいずれかを意味する。
【0030】
また、「a」または「an」は、本明細書中に記載の要素および成分を記載するために使用される。これらは、単に便宜上、本発明の範囲の一般的な意味を与えるために使用される。このような記載は、1つまたは少なくとも1つを含むように理解されるべきである。また、特に明記しない限り、単数形のものは、複数形のものを含む。
【0031】
利益、他の利点、および課題の解決策は、特定の実施形態にしたがって、上述されている。しかしながら、任意の利益、利点、または課題の解決策を生じ得るまたはより顕著にさせ得る利益、利点、課題の解決策、および任意の特徴が、任意の請求項またはすべての請求項の必要かつ重要な特徴、または不可欠な特徴として解釈されるべきではない。
【0032】
本明細書を読めば、当業者には、明確さを期して本明細書中において別々の実施形態に記載された特定の特徴が、組み合わせて単一の実施形態に提供されてもよいということが理解されるであろう。逆に、簡潔性のために単一の実施形態に記載されたさまざまな特徴は、別々に、または任意の組合せで提供されてもよい。さらに、ある範囲に含まれるとして記載された値に言及する場合、その範囲内の各々の値およびすべての値を含む。