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特許7095050センサ及び誘導型エネルギー伝送ユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】センサ及び誘導型エネルギー伝送ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/18 20060101AFI20220627BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
H01F38/18 Q
G01S7/481 Z
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020177892
(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2021068903
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】10 2019 128 928.9
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール フーバー
(72)【発明者】
【氏名】アウグスト バウムガルトナー
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-203697(JP,A)
【文献】中国実用新案第206117320(CN,U)
【文献】特開2017-204554(JP,A)
【文献】特開2015-132600(JP,A)
【文献】特開2008-249375(JP,A)
【文献】特開平08-051041(JP,A)
【文献】国際公開第99/001878(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/18
G01S 7/481
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域(20)内の物体を検出するためのセンサ(10)、特にレーザスキャナ又はレーダであって、発射信号(26)を送出するための少なくとも1つの発信器(22)と、前記物体により反射された発射信号(30)から受信信号を生成するための受信器(34)と、台座ユニット(14)と、前記監視領域(20)を周期的に走査するために前記台座ユニット(14)に対して回転軸(18)を中心として運動可能な走査ユニット(12)と、前記受信信号に基づいて前記物体に関する情報を取得するための制御及び評価ユニット(56)とを備え、前記台座ユニット(14)と前記走査ユニット(12)の間に誘導型エネルギー伝送ユニット(44)が設けられ、該ユニット(44)が、誘導型エネルギー伝送の磁場を誘導するための、前記台座ユニット(12)の第1の誘導要素(46a)と前記走査ユニット(12)の第2の誘導要素(46b)とを含み、これら誘導要素(46a~b)がL字状の断面を有しているセンサ(10)において、
誘導要素(46a~b)がそれぞれ前記回転軸(18)を中心として周方向に少なくとも2つの誘導切片(46a1~bn)に分かれていることを特徴とするセンサ(10)。
【請求項2】
前記誘導要素(46a~b)が前記回転軸(18)を中心としたリング状に配置され、特に、そのL字状の断面が一緒に中空リングを形成するように該誘導要素(46a~b)が互いに対して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項3】
前記誘導切片(46a1~bn)が互いに補い合って前記回転軸(18)を中心とするリングとなるリング切片として構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ(10)。
【請求項4】
前記誘導要素(46a~b)が、リング状の担持体(58)、特にプラスチックから成る担持体(58)を備え、該担持体(58)上で前記誘導切片(46a1~bn)が当接(62)により空隙に対して調整され、その状態で該担持体(58)と固定されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項5】
前記担持体(58)が前記誘導切片(46a1~bn)の間に分割部(60)を備えていることを特徴とする請求項に記載のセンサ(10)。
【請求項6】
前記誘導切片(46a1~bn)がフェライト製であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項7】
コイル(48a~b)が各誘導要素(46a~b)に入れられ、特に該コイル(48a~b)の間に前記回転軸(18)と平行又はそれに垂直に配置された空隙が設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項8】
台座ユニット(14)と該台座ユニット(14)に対して回転軸(18)を中心として運動可能な走査ユニット(12)とを備えるセンサ(10)、特に請求項1~7のいずれかに記載のセンサ(10)のための誘導型エネルギー伝送ユニット(44)の製造方法であって、該誘導型エネルギー伝送ユニット(44)が、誘導型エネルギー伝送の磁場を誘導するための、前記台座ユニット(14)用の第1の誘導要素(46a)と前記走査ユニット(12)用の第2の誘導要素(46b)とを含み、これら誘導要素(46a~b)がL字状の断面を有している、という誘導型エネルギー伝送ユニット(44)の製造方法において、
誘導要素(46a~b)を、互いに前記回転軸(18)を中心として周方向に補い合う少なくとも2つの誘導切片(46a1~bn)を組み合わせることにより構成することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記誘導切片(46a1~bn)を前記誘導要素(46a~b)のリング状の担持体(58)にまず粗めに調整された状態で填め込み、次に当接により空隙に対して調整し、最後にその調整状態で前記担持体(58)に固定することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記誘導切片(46a1~bn)を磁石製取り付けリング(62)上で当接により空隙に対して調整することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は10のプレアンブルに記載の、台座ユニットと該台座ユニットに対して回転軸を中心として運動可能な走査ユニットとを有するセンサ、特にレーザスキャナ又はレーダ、並びにセンサ用誘導型エネルギー伝送ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザスキャナでは、レーザにより生成された光線が偏向ユニットを用いて周期的に監視領域を塗りつぶすように掃引される。その光が監視領域内にある物体の表面で拡散反射され、スキャナ内で評価される。偏向ユニットの角度位置から物体の角度位置が推量され、更に光伝播時間と光速を用いてレーザスキャナから物体までの距離が推量される。この角度及び距離の情報を用いて監視領域内の物体の場所が2次元極座標で捕らえられる。これにより、物体の位置を突き止めたり、同じ物体を異なる箇所で複数回検知することによりその輪郭を特定したりする。また、例えばレーザスキャナ内で偏向ユニットにもう一つの運動自由度を与えたり、物体をレーザスキャナに対して動かしたりすることにより、交差方向に相対運動させることによって、第3の空間座標を同様に把握することもできる。そうすれば3次元的な輪郭も計測することができる。
【0003】
レーザスキャナにおける監視平面の走査は通常、発射光線が回転中の回転ミラーに当たることにより達成される。発光器、受光器並びに付属の電子機器及び光学系は装置内に固定的に取り付けられており、一緒に回転運動を行うことはない。一方、回転ミラーを一緒に動く走査ユニットで置き換えることも知られている。例えば特許文献1では発光器と受光器を持つ測定ヘッド全体が回転する。レーダは似たような基本構成で機能するが、こちらは発信器及び受信器が全く別の周波数領域を利用する。
【0004】
回転する電子的な構成部品にはエネルギーを供給する必要がある。ここで滑り接触部等の機械的な摩耗を避けるために無線で給電を行う努力が成される。これについては誘導型エネルギー伝送が知られている。リング状コイルがセンサの静止部と可動部に1つずつ収納される。磁場を集中させて案内することでコイルの誘導結合を強めるために、各コイルはシェル状のフェライトで囲まれている。フェライトはまた遮蔽体としても作用し、漂遊磁場により周辺の金属部材内に渦電流が発生して損失が生じることを防止する。
【0005】
2つのコイルは周囲のフェライトも含めて互いに対して回転し、両者の間には空隙がある。高い伝送効率を達成するにはこの空隙をできるだけ狭くすべきである。その際、空隙の向きの違いが区別される。空隙の向きが回転軸と平行である場合、フェライトは内と外に配置された直径の異なる2つの同心円状のリングとなる。その外側リング用のコイル巻線は費用がかかり高価である。その上、フェライトの偏心は非常に小さいものでなければならない。そうしなければ空隙を狭めたときにフェライト同士が触れてしまうからである。空隙の向きが回転軸と垂直である場合、フェライトは上下に配置された直径が同じ2つのリングとなる。この配置は振動及び衝撃の負荷に弱く、重なる恐れがある。正確な隙間間隔を設定するために位置合わせ工程が必要となる。
【0006】
従って空隙に対する公差の要求は高い。ところが焼結フェライトには2~5%という大きな製造公差があり、その収縮公差はフェライトの寸法に比例する。フェライトは従来、回転対称に一部品で作製されており、比較的大きい。従って、隙間寸法が小さい場合にはフェライトに後処理を施さなければならないのが普通である。脆い材料特性のため、その処理は非常に高価で費用がかかる。その上、フェライトの脆い材料特性は、部品サイズが大きくなるに従って振動及び衝撃といった外部環境からの影響に起因する割れにより故障する危険性をはらんでいる。
【0007】
特許文献2は非接触でデータ及びエネルギーを回転する測定ヘッドに伝送するレーザスキャナを開示している。エネルギー伝送は誘導方式で行うことができ、強磁性コアについての言及があるが、それに関する詳しい説明はない。
【0008】
特許文献3から、不動の台座ユニット乃至は可動の走査ユニットが有する互いに回転する2つの回路基板上に誘導型エネルギー供給及び容量型データ伝送のための構成部品が収められたレーザスキャナが知られている。回路基板は、それぞれL字状の断面を持つ2つの部品から成るフェライトカバーで囲まれている。これらのL字形は水平軸に対して互いに鏡像になっており、その内側ではシャフトのところで短辺が空隙の間隔を空けて対向しており、その結果、全体で半径方向に外方へ開いたU字状を成している。これは先に論じた平行な空隙の考え方に相当する。
【0009】
特許文献4は非接触のデータ及びエネルギー伝送装置を備える別のレーザスキャナを開示している。エネルギーを送出するユニットとエネルギーを受け取るユニットがそれぞれL字状の断面を有しており、L字形の長辺にコイルが配置され、2つのL字形は長辺同士及び短辺同士がそれぞれ対向するように互いに配置されている。L字形を適宜回転させることにより垂直な空隙と平行な空隙の両方の配置が提案されている。しかし、どのようにすればエネルギーを送出するユニットとエネルギーを受け取るユニットを要求された公差で製造できるかについては論じられていない。
【0010】
特許文献5には、圧力センサ、膨張測定器、温度センサ又は振動センサ等、回転する部分を持つ他の種類のセンサのための非接触型エネルギー及びデータ伝送装置が紹介されている。エネルギー伝送にはL字状の磁気コアが用いられ、ここでもL字形の長辺と短辺がそれぞれ対向しているが、空隙の設定及び製造公差という問題点は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】DE 197 57 849 B4
【文献】EP 2 388 619 A1
【文献】EP 2 933 655 B1
【文献】EP 1 975 571 B1
【文献】EP 2 875 512 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
故に本発明の課題は一緒に動く走査ユニットを有するセンサの構成を簡素化することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1又は10に記載の、監視領域内の物体を検出するためのセンサ並びにセンサ用誘導型エネルギー伝送ユニットの製造方法により解決される。本センサは、監視領域内へ発射信号を送出し、物体から反射された発射信号から対応する受信信号を生成して評価するために、発信器と受信器を備える。本センサは、台座ユニットと、該台座ユニットに対して回転軸を中心として運動可能であり、その運動の過程で監視領域を周期的に走査する走査ユニットという2つの部分から成る。走査ユニット内で一緒に動く構成要素に給電するために、電磁誘導を利用した無線エネルギー伝送のためのエネルギー伝送ユニットが設けられる。エネルギー伝送ユニットは、台座ユニットと一緒に静止している第1の案内要素と、走査ユニットと一緒に動く第2の案内要素とを含んでいる。これらの案内要素は磁場を強めて案内する機能を有する。各案内要素はL字状の断面を有している。
【0014】
本発明の出発点となる基本思想は、案内要素を複数の部品から製造するということにある。案内要素は回転軸を基準として周方向に少なくとも2つの案内切片に分かれている。つまりそれは、従来のように比較的大きくて回転対称な、一部品で作製された構成要素ではない。
【0015】
本発明にはまず、摩耗のない非接触のエネルギー供給の利点がある。複数の案内切片から成る構成により空隙での機械的な公差を特に小さくしてエネルギー伝送効率を高めることができる。これは後処理なしで、又はいずれにせよ非常にわずかな後処理で達成されるため、機能的な品質が同等である又はそれどころかより高い場合の製造コストが著しく低減する。しかもエネルギー伝送ユニットは高い機械的な頑強性を示す。
【0016】
本センサは光電センサ、特にレーザスキャナであることが好ましい。その場合、発信器と受信器は発光器乃至は受光器となる。あるいは、本センサはレーダであり、その場合はそれに応じてレーダ発信器とレーダ受信器がレーダ波又はマイクロ波の領域で用いられる。各々の発信器と受信器は走査ユニット内に配置されていること、つまり回転軸を中心とした運動を一緒に行い、エネルギー伝送ユニットを介して台座ユニットから給電されることが好ましい。
【0017】
前記案内要素は回転軸を中心としたリング状に配置され、特に、そのL字状の断面が一緒に中空リングを形成するように該案内要素が互いに対して配置されていることが好ましい。中空リングは、2つのL字形を互いに点反射又は180°回転させ、互いに補い合って長方形の断面を成すようにすることにより生み出される。L字形の辺の末端の移行部では長方形の断面が開いている。なぜならそこでは両方の案内要素が互いに対して運動するからである。
【0018】
案内切片は互いに補い合って回転軸を中心とするリングとなるリング切片として構成されていることが好ましい。これによれば、各案内切片は円環又はリングの断片となり、好ましくはそれぞれが360°を等分割して成る部分の1つとなる。また、各案内切片はその等分割部分を完全にはカバーしておらず、周方向においてリング切片の間に一定の隙間と公差が残っている。リング切片は少なくとも2つ、好ましくは3~6個又は8個設けられる。より多くの数も考えられるが、すぐにこれ以上追加の利点は得られないという限界にぶつかる。
【0019】
案内要素は、リング状の担持体、特にプラスチックから成る担持体を備え、該担持体上で案内切片が当接により空隙に対して調整され、その状態で該担持体と固定されていることが好ましい。この担持体は製造を著しく容易にする。なぜなら、粗い調整が直ちに成され、空隙に対する正確な調整が著しく容易になるからである。また、担持体は案内要素を機械的に安定させる。そして、より柔軟性が高くて脆さがないという担持体の特性のおかげで、一部品型のフェライト部材に比べて頑強性が著しく改善されている。
【0020】
担持体は案内切片の間に分割部を備えていることが好ましい。これにより、製造の際の最初の粗い調整と、当接による空隙に対する正確な調整が容易になる。その上、各案内切片がその位置により良好に固定された状態を保ち、しかも担持体がより頑強になる。ただし、磁場をより良好に案内して効率を更に高めるために案内切片間の隙間をできるだけ小さくしておきたいなら、分割部はなくても構わない。
【0021】
案内切片はフェライト製であることが好ましい。フェライトは磁場の案内に必要な特性を備えている。材料としてのフェライトには脆さと高い収縮公差を持つという欠点もあるが、それは本発明により十分に克服される。
【0022】
好ましくはコイルが各案内要素に入れられる。少なくとも1つの不動のコイルと一緒に動くコイルをそれぞれ設けることにより誘導型エネルギー伝送が生じる。案内要素はコイルを取り囲み、磁場を案内する。
【0023】
前記コイルの間に回転軸と平行又はそれに垂直に配置された空隙が設けられていることが好ましい。空隙は静止した台座ユニットと可動の走査ユニットの間の移行部となる。従来は、冒頭で説明したように、平行な空隙と垂直な空隙に対して全く異なるリング形状が必要であった。なぜなら一方はリングが同心円状に内と外にあり、他方は上下にあるからである。L字状の断面を有する本発明に係る案内要素の場合は水平な辺又は垂直な辺のいずれかを選んでコイルを配置することができる。ただしそれは、例えばコイルを常にL字形の長辺の方に収めるために、平行な空隙及び垂直な空隙に対して案内要素の詳細な形状を互いに異ならせることを排除するものではない。
【0024】
本発明に係る製造方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に模範的に記載されているが、それらに限られるものではない。
【0025】
該方法では、好ましくは、案内切片を案内要素のリング状の担持体にまず粗めに調整された状態で填め込み、次に当接により空隙に対して調整し、最後にその調整状態で担持体に固定する。このようにすれば、簡単に実施可能でありながらも非常に公差が小さい製造方法となり、その方法を用いて非常に狭い空隙を形成することができる。
【0026】
前記案内切片は磁石製取り付けリング上で当接により空隙に対して調整することが好ましい。各案内切片は強磁性であるため、磁石製取り付けリングにより与えられる位置に自ら収まり、一緒に当接して所定の空隙を取り囲む。なお、空隙が垂直である場合、外側コイルを有する案内要素のための内側の取り付けリングと、また内側コイルを有する案内要素のための外側の取り付けリングが必要である。
【0027】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】レーザスキャナの概略断面図。
図2】(a)空隙が垂直である場合のエネルギー伝送ユニットの詳細図、及び(b)空隙が平行である場合の図2(a)に対応する詳細図。
図3】(a)製造中に取り付けリング内に配置された、担持体上に案内切片を有するエネルギー伝送ユニット用の案内要素の断面図、及び(b)図3(a)の案内要素の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1はレーザスキャナ10の概略断面図である。このレーザスキャナ10は大きく分けて可動の走査ユニット12と、台座ユニット14とを含む。走査ユニット12は光学的な測定ヘッドであり、台座ユニット14には給電部、評価用電子機器、接続部等、他の要素が収納されている。動作中は、台座ユニット14の駆動部16により走査ユニット12が回転軸18を中心として回転駆動されることで、監視領域20を周期的に走査する。
【0030】
走査ユニット12では発光器22が発光光学系24を用いて発射光線26を生成する。この光線は鏡胴28で遮蔽されて監視領域20へ送出される。発射光線26が監視領域20内で物体に当たると、対応する光線が反射光30としてレーザスキャナ10まで戻る。反射光30は受光光学系32により受光器34へと案内され、そこで電気的な受信信号に変換される。受光器34はこの実施形態では回路基板36上に配置されている。この基板は回転軸18上にあり、駆動部16のシャフト38と接続されている。受光光学系32は回路基板36上で小脚部40により支持されており、発光器22の別の回路基板42を保持している。2つの回路基板36、42は相互に結合されているが、共通のフレキシブルプリント回路基板として構成することもできる。
【0031】
走査ユニット12のこの具体的な構成は純粋に模範的なものと理解すべきである。本発明の本来の対象は台座ユニット14から走査ユニット12内へエネルギーを伝送するための非接触の誘導型エネルギー伝送ユニット44である。エネルギー伝送ユニット44は、走査ユニット12と一緒に動く、コイル48aを有する案内要素46aと、台座ユニット14と一緒に静止している、コイル48bを有する案内要素46bとを備えている。走査ユニット12と台座ユニット14の間の移行部50は破線で示したように案内要素46a~b及びコイル48a~bの間に延在している。誘導型エネルギー伝送ユニット44については後で図2(a)~(b)及び図3(a)~(b)を参照してより厳密に説明する。エネルギー伝送には無線データ伝送の部分を補うことができる。
【0032】
エネルギー伝送ユニット44は走査ユニット12内で回路基板36と、そして台座ユニット14内で給電ユニット52と接続されている。給電ユニット52は例えば接続部54を介して電力網と接続されている。更に台座ユニット14内には制御及び評価ユニット56が配置されている。このユニット56は台座ユニット14の制御対象要素と接続され、また既に触れた図示せぬ無線データ伝送部を介して走査ユニット12(例えば同様に回路基板36)と接続されている。このように、制御及び評価ユニット56は発光器22を制御し、受光器34の受信信号を受信してその後の評価を行うことができる。加えて制御及び評価ユニット46は駆動部16を制御し、レーザスキャナに関して公知である図示せぬ角度測定ユニットの信号を受け取る。角度測定ユニットは各時点における走査ユニット12の角度位置を特定する。
【0033】
前記評価のため、好ましくは、検知された物体までの距離が光伝播時間法で測定される。発射光線26が送出されたその都度の角度位置は角度測定ユニットから同様に分かる。こうして、各走査周期の完了毎に走査平面内の全ての対象点の2次元極座標が角度と距離を通じて利用可能になる。加えて走査ユニット12を傾ければ3次元監視領域20を捕らえることもできる。
【0034】
既に走査ユニット12の具体的な構成に関して触れたように、レーザスキャナ10の構成も全て模範的なものと理解すべきである。走査光線26、30が1本しかない図示したシステムの代わりに、仰角方向に間隔をおいた複数の走査を行う複数光線のシステムも考えられる。レーザスキャナ10自体も、回転軸18を中心として運動する走査ユニット12と静止した台座ユニット14を有し、エネルギー伝送ユニット44を導入できる光電センサの一例に過ぎない。また本発明は光電センサに限定されるものでもなく、例えばレーダとして仕上げることもできる。そのようにしても大まかな構成に変わりはない。発光器22と受光器34の代わりに適宜のレーダ発信器とレーダ受信器が入り、光学系はなくなるか、レードーム等に置き換えられる。
【0035】
図2(a)は空隙が垂直である場合のエネルギー伝送ユニット44の詳細図、図2(b)は空隙が平行である場合の対応する詳細図である。描かれているのは、既に図1でも示したように、全体としてリング状であるエネルギー伝送ユニット44の断面である。従って、好ましくはフェライト製である案内要素46a~bはそれぞれリングである。これらはL字状の断面を有している。2つのL字形は互いに点対称、あるいは180°だけ回転しており、以て実質的に長方形状の空洞を形成している。この空洞にコイル48a~bが互いに向き合って一緒に運動する乃至は静止した状態で配置されている。
【0036】
空隙が同じであれば、磁場はこれらのL字形により従来のリング状シェルとほぼ同程度に良好に案内される。一方、特に外側のコイル48aの収納はとても簡単である。コイル48a~bは両方の案内要素46a~bに対し、巻回済みの状態で上から又は下から直接又はコイル担持体を用いて填め込むことができる。コイル48a~bは、追加の担持体の有無に拘わらず、エナメル銅線又は高周波撚り線を巻回したり、回路基板内で実装したりできる。巻き数、巻き層及び巻き形式はその都度の具体的な要求に適合させる。図2(a)~(b)から直接分かるように、L字形とその配置の故に、垂直な空隙と平行な空隙の実施形態の間にはわずかな構造上の違いしかない。駆動部16の軸受隙間や振動及び衝撃等の影響が空隙の幅に及ぼす作用ができるだけ低減するような変形を選ぶことができる。
【0037】
図3(a)及び(b)は案内要素46bの断面図乃至は平面図である。ここでは台座ユニット14の内側の案内要素46bを代表として取り上げている。案内要素46a~bはそれぞれ複数の案内切片46a1~bnに分かれている。それらの各々は円環又はリングの断片であり、一緒になって初めてリングとなる。図示したような6個の案内切片46a1~bnの代わりにより多数又は少数の案内切片を設けてもよい。
【0038】
分割による誘導結合の効率の損失は、案内切片46a1~bnの間の隙間が小さいものにとどまる限りわずかである。一部品で作製される従来のフェライトとは違って、案内切片46a1~bn毎には小さい絶対公差しか生じない。なぜなら、比較的小さい案内切片46a1~bnの場合、フェライトの未加工鋳造品と焼結後のフェライトの間で予想される収縮はリング全体の場合よりも小さくなるからである。加えて、個数効果等があるため小さいフェライトは大きなフェライトに比べて比例関係を超えて安価に製造できる。
【0039】
図3(a)~(b)は案内切片46a1~bnを正確に調整して組み合わせるための追加の製造ステップも示している。まず、案内切片46a1~bnを担持体58に填め込む。これにより粗めの調整が成される。担持体58は好ましくは分割部60を備えている。担持体については、フェライトの加工に比べて非常に安価で正確な、プラスチック射出成形等の様々な製造法が考えられる。
【0040】
その後、当接により案内切片46a1~bnを所望の空隙に対してより高い精度で調整する。ここではその当接が取り付けリング62により予め決まっている。このリングは製造後に再び取り外される。取り付けリング62は所望の当接位置に磁石64を備えている。そうすると、案内切片46a1~bnの磁気特性のおかげで調整が自動的に行われる。調整に続いて案内切片46a1~bnが一緒に担持体58と固定される。同時に又は後の工程でコイル48a~bを追加することができる。図3(a)~(b)に示したのは台座ユニット14の案内要素46aである。他方の走査ユニット12の案内要素46bに対しては、それに応じて外側の取り付けリング62の代わりに内側の取り付けリングを用いる。
【0041】
こうして出来上がった案内要素46a~bはその都度の空隙に対して高い精度で調整されており、その精度が、案内切片46a1~bnの比較的小さい絶対公差により更に高められる。全ての公差を繋いだものにおいては、機械的な公差全体が調整で非常に小さくなっているため、後処理はもはや必須ではない。これはこの追加の製造ステップのコストを何倍も上回るような非常に大きな節約となる。また、担持体58上で個々の案内切片46a1~bnを継ぎ合わせてから固定することにより、エネルギー伝送ユニット44が非常に柔軟性の高いものになるため、機械的又は熱的な負荷がかかっても、脆いフェライト材料の破損につながる可能性は従来よりも低い。
図1
図2
図3