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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】免疫原性化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20220627BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220627BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220627BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220627BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220627BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220627BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220627BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220627BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20220627BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
A61K39/39
A61K47/64 ZNA
A61P37/04
A61P35/00
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/12
C07K7/08
C07K14/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020185572
(22)【出願日】2020-11-06
(62)【分割の表示】P 2016555933の分割
【原出願日】2014-12-02
(65)【公開番号】P2021020967
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】1321242.8
(32)【優先日】2013-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515170539
【氏名又は名称】アルティミューン ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】ジョージズ,バートランド
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/090002(WO,A1)
【文献】特表2008-539252(JP,A)
【文献】Shukla, N. M. et al.,Toward self-adjuvanting subunit vaccines: model peptide and protein antigens incorporating covalently bound toll-like receptor-7 agonistic imidazoquinolines,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2011年,Vol.21, No.11,p.3232-3236
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
C07K 7/08
C07K 14/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ii)ペプチド部分に共有結合している(i)免疫刺激部分を含む免疫刺激化合物と、製薬上許容される担体または希釈剤とを含有する医薬組成物であって、
前記免疫刺激部分が、Toll様受容体7(TLR7)またはTLR8アゴニスト、またはNOD1のアゴニストまたはNOD2のアゴニストから選択されるNOD様受容体(NLR)アゴニストから選択され、前記免疫刺激部分が、イミダゾピリジン部分、イミダゾキノリン部分、ムラミル-ジペプチド部分、ムラミル-トリペプチド部分、およびγ-D-グルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸部分の少なくとも1つを含み、
前記ペプチド部分が、17~45アミノ酸長であり、RRLL(5)A(7)LAL(11)A(13)LLRRのアミノ酸配列を含み、
アミノ酸部分(5)、(7)、(11)および(13)がそれぞれA、LまたはHから選択され;
前記ペプチドが、前記免疫刺激部分の溶解性を低下させ且つ前記免疫刺激部分のアジュバント活性を増加させる、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記ペプチド部分が、そのN末端およびC末端の一方または両方に式RRLLの二塩基配列を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ペプチド部分が、配列番号17、配列番号29、配列番号31、または配列番号32と90%以上の同一性を有する配列を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ペプチド部分が末端リシンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ペプチド部分の75%以下のアミノ酸残基が、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、バリン、メチオニン、アラニン、プロリン、およびグリシンからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記免疫刺激部分と前記ペプチド部分との間にさらにスペーサー部分を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記スペーサー部分が切断可能な結合を含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記免疫刺激部分が5000Da未満の分子量を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記免疫刺激部分が、TLR7および/またはTLR8のアゴニストから選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記免疫刺激部分が、イミダゾピリジン部分、イミダゾキノリン部分、ムラミルジペプチド部分、ムラミルトリペプチド部分、およびγ-D-グルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸部分の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記免疫刺激部分が、式(I)、(IIa)、(IIb)、(IIIa)、(IIIb)または(IV):
【化1】



(式中、R1、R4およびR5は、HまたはC1-C6分岐もしくは非分岐アルキルもしくはアルケニルからそれぞれ独立して選択され、あるいはR4とR5は、それらが結合している炭素原子と共に4、5、6、7または8員のシクロアルキル、シクロアルケニルまたは芳香族炭化水素環を形成し、
ここでR1、R4、およびR5のそれぞれ、またはR4とR5の組み合わせにおける2個以下の炭素原子は、O、NおよびSから選択されるヘテロ原子と置換可能であり;また
波線は、化合物の残りの部分への結合点を示す)
のいずれか1つによる構造を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記免疫刺激部分が、式(VI):
【化2】

による構造を有する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記免疫刺激部分が、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、N-グリコリルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-グルタミンn-ブチルエステル(ムラブチド)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-リシン、N-アセチルムラミル-L-アラニル-γ-D-グルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸、N-アセチル-D-グルコサミニル-(β-1,4)-N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、6-O-ステアロイル-N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、ミファムルチド、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニンコレステロールエステル、γ-D-グルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸、L-アラニル-γ-D-グルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸、N-アセチルムラミル-L-アラニル-γ-D-グルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸、ラウロイル-γ-D-グルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸、6-O-(N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン)-イル、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニル、または6-O-(N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン)-イルから選択される化合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
免疫応答を刺激するための、請求項1に記載の医薬組成物であって、非経口、皮下、経口、表皮、皮内、筋肉内、動脈内、腹腔内、腫瘍内、膀胱内、もしくは静脈内注入を介する投与、または皮膚もしくは粘膜への局所投与のために構成されている、前記医薬組成物。
【請求項15】
抗腫瘍免役応答を刺激するための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
腫瘍内投与のために構成されている、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
液体、エアロゾル、固体、注射剤、スプレー剤、懸濁剤、またはエマルション剤として存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
抗腫瘍免役応答を刺激するための医薬の製造における、請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な免疫刺激化合物、および医薬における、特にワクチン用アジュバントとしての前記化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
弱毒化された生の、または不活性化された細菌およびウイルスは、多くの成功したワクチンの基盤を形成した。全ウイルスアプローチまたは全細菌アプローチは依然として、ワクチン接種による防御免疫の生成の最も有効な手段である。しかし、これらのワクチンは、軽度~重度の副作用を伴う可能性がある。さらに、ワクチン関連疾患の稀な症例が、弱毒化ウイルスから病原型への復帰によって生じる可能性がある。ゲノミクス、分子生物学および免疫学における進歩は、感染性生物に由来する防御抗原の同定、組み換え発現および免疫学的特徴付けを容易にし、ワクチン設計へのより合理的なアプローチを可能とする。精製された天然または組み換えペプチド、タンパク質または多糖(キャリアタンパク質に連結されている)は、現在、生または死滅全細胞ワクチンに対する、はるかによりクリーンで、より安全で、より免疫学的に定義された代替品を提供する。しかし、これらの「より純粋な」ワクチン調製物には、自然免疫応答を活性化させるために必要とされる危険シグナルが欠けており、このため、防御適応免疫応答を生成するために強力なアジュバントまたは送達系によって送達されなければならない。
【0003】
ワクチンアジュバントは、複数の目的(例えば、効力を増大させ、抗原の量および/または必要とされる投与回数を減少させ、応答の迅速性および/または強度を高め、応答の幅を増大させるため(例えば、病原体進化から生じ得るような複数のエピトープに対して防御するため)、ならびに応答期間および/または後期応答(記憶)をプライミングする能力を高めるためなど)のために使用することができる。例えば、アジュバントにおける最近の関心の高まりは、乏しい免疫原(例えば、汎発性インフルエンザワクチンH5N1)、不十分な製造能力(用量節約)およびより広範な特異的免疫応答(変異するウイルス)の場合におけるそれらの使用に関する。またアジュバントは、高齢者(免疫老化機序を受ける可能性がある)、子供(既存免疫が低い)、およびワクチン接種に対して応答する能力が低い免疫不全の個人のワクチン接種のために潜在的に重要でもある。
【0004】
免疫系を刺激するための、ワクチンの投与と組み合わせたアジュバントの使用に関連した特定の課題がある。第一に、少なくとも免疫細胞に接触するまで、ワクチンの抗原成分と免疫刺激成分とを注射部位において共送達して維持することが重要である。これは、アジュバントの利益を最大化するために重要であるが、毒性を低下させるために必要である場合もある。免疫刺激剤(例えばToll様受容体(TLR)またはNod様受容体(NLR)のアゴニスト)は、典型的には容易に体全体に運ばれる小分子である。このため、これらの免疫刺激剤は、全身性反応による許容できない臨床的副作用(例えば自己免疫疾患の誘発)を生じさせる可能性がある。
【0005】
抗原と免疫刺激剤の両方が確実に一緒に免疫細胞に提示され得るようにするため、免疫刺激剤を所望の抗原に共有結合的に連結することが知られている。例えば、WO 2012/167088は、ポリエチレングリコールを含むリンカーによって抗原に共有結合的に連結している「免疫応答修飾因子」について記載している。WO 2004/032829は、抗原性部分と「ペアになった」免疫応答修飾部分(ここでペアリング(pairing)は共有結合によるものであってよい)を含む免疫刺激組成物について記載している。WO 2006/116475は、抗原性ペプチドに共有結合的に連結している免疫応答修飾因子について記載している。
【0006】
また、送達を助けるために免疫刺激剤の化学構造を修飾することも知られている。例えば、WO 2012/024284およびWO 2010/048520は、製剤化を可能とするため、またはバイオアベイラビリティを改善するために脂質に共有結合的に連結している免疫刺激剤について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO 2012/167088
【文献】WO 2004/032829
【文献】WO 2006/116475
【文献】WO 2012/024284
【文献】WO 2010/048520
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、免疫刺激剤の全身分布が、望ましくない副作用を引き起こすという問題に対処した。本発明者らは、免疫刺激剤の物理化学的特性は、ペプチドへの共有結合によって制御することができることを見出した。さらなる物理化学的特性は、付加的特徴を組み込むことによって改変することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明は、免疫刺激部分とペプチド部分とを含む化合物であって、ここで上記ペプチド部分が:
(a) 疾患関連抗原ではなく;
(b) 75%以下のアミノ酸残基が疎水性であるアミノ酸配列を有し;および/または
(c) 5以上の等電点を有する
上記化合物を提供する。
【0010】
本発明はまた、免疫刺激部分、ペプチド部分、およびベクター部分を含む化合物も提供する。
【0011】
また本発明は、以下のものも提供する:細胞外液における免疫刺激剤の溶解性を低下させるためのペプチドの使用であって、上記ペプチドが免疫刺激剤に共有結合的に連結している、上記使用;治療法によりヒトまたは動物の身体を治療する方法において使用するための本発明の化合物;本発明の化合物と製薬上許容される担体または希釈剤とを含む医薬組成物;治療法によりヒトまたは動物の身体を治療する方法において使用するための本発明の医薬組成物;抗原に対する動物またはヒトの免疫応答の刺激において使用するための本発明の医薬組成物;ならびに抗原に対する免疫応答を刺激するための医薬の製造において使用するための本発明の化合物。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例に示されるとおり、様々な免疫刺激ペプチドコンジュゲートと組み合わせた組み換えタンパク質に対するT細胞免疫応答の改善を表す。雌BALB/cマウスに、12.5μg HA単独を、またはさらに13.2μg PEG-FIM-01もしくは15μg PEG-FIM-01(等モル用量)を接種した。バーは、IFN-g ELISpotアッセイにおいて測定されたスポット形成細胞の平均数を表す。106脾細胞当たりのIFNγ SFCの数を計数した。バーは、HAに対する平均±SEM応答を表す。統計的分析はスチューデントT検定に基づいた。
図2図2は、実施例に示されるとおり、様々な免疫刺激ペプチドコンジュゲートと組み合わせた組み換えタンパク質に対する体液性応答の改善を表す。雌BALB/cマウスに、12.5μg HA単独を、またはさらに13.2μg PEG-FIM-01もしくは15μg PEG-FIM-01(等モル用量)を接種した。非接種動物を陰性対照として使用した。データは、平均EC50希釈-1の平均+標準誤差として示される。スチューデントT検定を用いた統計的分析のため、対数変換データを用いた(ここで*<.05、**<.01および***<.001である)。
図3図3は、実施例に示されるとおり、様々な免疫刺激ペプチドコンジュゲートと組み合わせたペプチドワクチンの免疫原性の改善を表す。雌BALB/cマウスに、(1) FP-02.2(25mcg/ペプチド)単独、(2) FP-02.2(25mcg/ペプチド) + FA-FIM-01(5mcg)、(3) FP-02.2(25mcg/ペプチド) + FA-PEG-FIM-01(5mcg)を接種した。バーは、IFN-g ELISpotアッセイにおいて測定された、FP-02.2ワクチンに含まれる各ペプチドに対するスポット形成細胞の累加平均数を表す。統計的分析はスチューデントT検定に基づいた。
図4図4は、実施例に示されるとおり、様々な用量の免疫刺激ペプチドコンジュゲートの存在下で改善されたワクチン免疫原性を表す。雌BALB/cマウスに、FP-02.2(25mcg/ペプチド)単独を、または(1) 0mcg、(2) 0.5mcg、(3) 1,58mcg、(4) 5mcg(5) 15.8mcgおよび(6) 50mcgの様々な用量のFA-PEG-FIM-01と組み合わせて接種した。バーは、IFN-g ELISpotアッセイにおいて測定された、FP-02.2ワクチンに含まれる各ペプチドに対するスポット形成細胞の累加平均数を表す。統計的分析はスチューデントT検定に基づいた。
図5図5は、実施例に示されるとおり、遊離免疫刺激剤対応物R848と比較した、免疫刺激ペプチドコンジュゲートのより優れたアジュバント活性を表す。雌BALB/cマウスに、(1) FP-02.2(25mcg/ペプチド)、(2) FP-02.2(25mcg/ペプチド) + FA-PEG-FIM-01(15mcg)、(3) FP-02.2(25mcg/ペプチド) + R848(1.5mcg)、(4) FP-02.2(25mcg/ペプチド) + R848(10mcg)および(5) FP-02.2(25mcg/ペプチド) + R848(50mcg)を接種した。バーは、IFN-g ELISpotアッセイにおいて測定された、FP-02.2ワクチンに含まれる各ペプチドに対するスポット形成細胞の累加平均数を表す。統計的分析はスチューデントT検定に基づいた。
図6図6は、実施例に示されるとおり、免疫刺激ペプチドコンジュゲートのワクチンアジュバント活性においてペプチド部分が果たす重要な役割を表す。雌BALB/cマウスに、(1) FP-02.2(25mcg/ペプチド) + FA-PEG-FIM-01(15mcg)、(2) FP-02.2(25mcg/ペプチド) + PEG-FIM-01(13.15mcg) (3)、FP-02.2(25mcg/ペプチド) + RKL-PEG-FIM-01(4.3mcg) (4)またはFP-02.2(25mcg/ペプチド) + R848(1.5mcg)(等モル用量に対応)を接種した。バーは、IFN-g ELISpotアッセイにおいて測定された、FP-02.2ワクチンに含まれる各ペプチドに対するスポット形成細胞の累加平均数を表す。統計的分析はスチューデントT検定に基づいた。
図7図7は、実施例に示されるとおり、遊離免疫刺激剤R848とは対照的な、免疫刺激ペプチドコンジュゲートによる全身性炎症応答の不存在を表す。雌BALB/cマウスに、(1) 28mM L-ヒスチジンビヒクル、(2) 28mM L-ヒスチジン中R848(1.5mcg)、(3) 28mM L-ヒスチジン中FA-PEG-FIM-01(15mcg)、(3) リン酸塩10mM中FA-PEG-FIM-01(15mcg)(1群当たりn = 4)を、単一機会で注射した。(R848とFA-PEG-FIM-01は等モル用量で送達された)。グラフは、各免疫化群についての、1時間(IL-6、TNF-α、IFNα)または4時間(MCP-1、IFN-ガンマ)における個々のサンプルのピークサイトカイン濃度を示す。IL-10およびIL-12p70は、全てのサンプルについて陰性であった(データ示さず)。統計的分析はスチューデントT検定に基づいた。
図8図8は、実施例に示されるとおり、免疫刺激ペプチドコンジュゲートの存在下で改善されたワクチン誘導性CTL応答を表す。雌BALB/cマウスに、FP-02.2単独を、またはさらに15μg PEG-FIM-01を接種した。バーは、IFN-g ELISpotアッセイにおいて測定された、CTLエピトープ151によって誘導されたスポット形成細胞の平均数を表す。統計的分析はスチューデントT検定に基づいた。
図9図9は、実施例に示されるとおり、TLR-7およびTLR-8に対する免疫刺激ペプチドコンジュゲートの特異性を表す。FA-PEG-FIM-01、FA-FIM-01、RLK-PEG-FIM-01およびPEG-FIM-01を、TLR-7(A)およびTLR-8(B)を発現するHEK-293細胞におけるNF-カッパB活性化を誘導するそれらの能力について、R848と比較して試験した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、場合によりフレキシブルスペーサーを介して、ペプチドに結合している免疫刺激剤を含む免疫刺激化合物を提供する。上記ペプチドは、さらにベクターに結合し得る。本発明の化合物中の様々な部分は、共有結合を介して結合している。
【0014】
本発明の化合物は、感染性疾患(例えば、ウイルス、細菌、寄生生物および菌類感染)を予防するためのワクチンにおける使用のために興味深い。また本化合物は、例えば感染の治療、癌細胞に対する免疫の刺激、ポリペプチドホルモンのダウンレギュレーションおよび不適切な免疫応答(例えばアナフィラキシー、アレルギーおよび/または自己免疫)の抑制などの免疫治療法の分野においても興味深い。
【0015】
免疫刺激部分
本発明の化合物は免疫刺激部分を含む。本明細書中で使用される用語「免疫刺激部分」は、化合物に免疫刺激活性を与える当該化合物の一部分を指す。例えば、免疫刺激部分は、公知の免疫刺激剤から、水素原子を除去し、水素への共有結合を化合物の残りの部分への共有結合で置換することによって誘導することができる。
【0016】
本明細書中で使用される用語「免疫刺激活性」は、個体の免疫系を刺激する能力を指す。免疫刺激剤は、強力で持続的な細胞媒介性免疫、好ましくはCD8+T細胞媒介性免疫を促進し得る。代替的にまたは付加的に、免疫刺激剤は、ヒト樹状細胞を活性化し、抗原に対する耐性を破壊し、および/またはT調節細胞の影響に対抗することができる。
【0017】
好ましくは、免疫刺激部分は、5000Da以下の分子量を有する。より好ましくは、分子量は、2000Da以下、1000Da以下、900Da以下、800Da以下、750Da以下、700Da以下、650Da以下、600Da以下、550Da以下、500Da以下、450Da以下、400Da以下、350Da以下、300Da以下、または250Da以下である。免疫刺激部分は、少なくとも50Da、少なくとも100Da、少なくとも150Da、少なくとも200Da、少なくとも250Da、少なくとも300Da、少なくとも400Da、少なくとも500Da、少なくとも600Da、少なくとも700Da、少なくとも800Da、少なくとも900Da、または少なくとも1000Daの分子量を有し得る。任意のエンドポイントを任意の他のエンドポイントと組み合わせて、好適な分子量の範囲を規定することができる。例えば、免疫刺激部分は、100~600Da、または500~900Daの分子量を有し得る。
【0018】
好ましくは、免疫刺激部分は非ヌクレオチド免疫刺激剤である。例えば、免疫刺激部分は、ヌクレオチド免疫刺激剤の形および/または機能性を模倣するように設計された構造であってもよいし、無関係な構造および機能を有していてもよい。
【0019】
好適な免疫刺激剤は、それらがアゴニストとして作用する対象の受容体によって分類することができる。例えば、免疫刺激剤は、Toll様受容体(TLR)アゴニスト(例えばTLR3、TLR4、TLR7、TLR8、またはTLR9のアゴニスト);NOD様受容体(NLR)アゴニスト(例えばNOD-1またはNOD-2のアゴニスト);ならびにDC-サイン、デクチン-1、デクチン-2、ミンクル(Mincle)、DDX41およびSTRINGの1つ以上のアゴニストから選択することができる。好ましくは、免疫刺激部分は、TLR7、TLR8およびNOD-2の少なくとも1つのアゴニストから誘導される。
【0020】
好ましくは、免疫刺激部分は、イミダゾピリシン部分、イミダゾキノリン部分、ムラミル-ジペプチド部分、ムラミル-トリペプチド部分、およびグルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸部分の少なくとも1つを含む。
【0021】
イミダゾピリシンベースの構造、また特にイミダゾキノリンベースの構造は、TLR7および/またはTLR8のアゴニストとしての活性を示した。例示的なイミダゾキノリンベースの免疫刺激剤としては、医薬化合物であるレシキモド、イミキモドおよびガーディキモドが挙げられる。
【0022】
ムラミルジペプチドおよびトリペプチドは、NOD2のアゴニストとしての活性を示した。例示的な免疫刺激剤としては、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、N-グリコリルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-グルタミンn-ブチルエステル(ムラブチド)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-リシン、N-アセチルムラミル-L-アラニル-γ-D-グルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸、N-アセチル-D-グルコサミニル-(β-1,4)-N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、6-O-ステアロイル-N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、ミファムルチド、およびN-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニンコレステロールエステルが挙げられる。
【0023】
グルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸ベースの構造は、NOD1のアゴニストとしての活性を示した。例示的な免疫刺激剤としては、γ-D-グルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸、L-アラニル-γ-D-グルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸、N-アセチルムラミル-L-アラニル-γ-D-グルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸およびラウロイル-γ-D-グルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸が挙げられる。
【0024】
好ましくは、免疫刺激部分は、式(I)、式(IIa)、式(IIb)、式(IIIa)、式(IIIb)または式(IV):
【化1】
(式中、R1、R4およびR5は、HまたはC1-C6分岐鎖もしくは直鎖アルキルもしくはアルケニルからそれぞれ独立して選択され、あるいはR4とR5は、それらが結合している炭素原子と共に4、5、6、7、または8員のシクロアルキル、シクロアルケニルまたは芳香族炭化水素環を形成し(ここでR1、R4、R5のそれぞれおよびR4とR5の組み合わせにおける2個以下の炭素原子は、それぞれO、NおよびSから選択されるヘテロ原子で置換可能である);かつ波線は、化合物の残りの部分への結合点を示す)の1つによる構造を有する。より好ましくは、免疫刺激部分は、式(I)、式(IIa)、式(IIIa)、および式(IV)のいずれか1つによる構造を有する。
【0025】
例えば、免疫刺激部分は、6-O-(N-アセチルムラミル-l-アラニル-D-イソグルタミン)-イル、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニル、または6-O-(N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン)-イルであり得る。
【0026】
特に、免疫刺激部分は、式(V):
【化2】
(式中、R1は、上記に定義されるとおりである)
による構造を有し得る。
【0027】
免疫刺激部分は、好ましくは式(VI):
【化3】
による構造を有する。
【0028】
ペプチド部分
本発明の化合物は、ペプチド部分を含む。本明細書中で使用される用語「ペプチド部分」は、ペプチドから誘導し得る化合物の一部分を指す。特に、ペプチド部分は、ペプチドから、1つ以上の水素原子および/またはC末端ヒドロキシル基を除去し、水素および/またはヒドロキシル基への共有結合(1つまたは複数)を免疫刺激化合物の1つ以上の他の部分への結合で置換することによって誘導することができる。従って、ペプチド部分は少なくとも2個のアミノ酸残基を含む。
【0029】
好ましくは、ペプチド部分は、100個以下のアミノ酸残基、または50個以下のアミノ酸残基を含む。例えば、ペプチド部分は、45個以下、35個以下、25個以下、20個以下、15個以下のアミノ酸残基を含み得る。代替的にまたは付加的に、ペプチド部分は、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、15個以上、20個以上または30個以上のアミノ酸残基を含み得る。任意のエンドポイントを任意の他のエンドポイントと組み合わせて、好適なペプチド長の範囲を提供することができる。例えば、ペプチド部分は、4~45個のアミノ酸残基、または10~35個のアミノ酸残基を含み得る。
【0030】
ペプチド部分を形成するアミノ酸は、アミノ基とカルボキシレート基の両方を有する任意の好適なアミノ酸であってよい。特に、アミノ酸は、天然アミノ酸(22個のタンパク質原性アミノ酸、好ましくは普遍的遺伝子コードによってコードされる20アミノ酸のいずれかを含む)および/または非天然アミノ酸であり得る。アミノ酸のアミノ基とカルボキシレート基は、単一の炭素原子(α-アミノ酸)、2個の炭素原子(β-アミノ酸)、または3個以上の炭素原子で分離されていてよい。アミノ酸が立体中心を含む場合、立体中心は、RまたはS立体化学を有し得る。キラルα炭素を有するα-アミノ酸の場合、アミノ酸は、DまたはL立体化学を有し得る。
【0031】
ペプチド部分を形成するアミノ酸残基は、ペプチド主鎖の共有結合に加えて、様々なアミノ酸残基の側鎖間に1つ以上の共有結合を有し得る。側鎖結合は、アミノ酸配列中で隣接しているアミノ酸残基の側鎖間にもあり得るし、より広く分離されているアミノ酸残基の側鎖間にもあり得る。共有結合の例としては、ジスルフィド結合、炭素-ヘテロ原子結合、および炭素-炭素結合が挙げられる。
【0032】
ペプチド部分は、75%以下、60%以下、50%以下、45%以下、または40%以下のアミノ酸残基が疎水性側鎖を有するアミノ酸配列を有し得る。特に、疎水性側鎖を有するアミノ酸は、側鎖が、水素、炭化水素側鎖、芳香族炭化水素環を含む側鎖、チオール側鎖、およびチオエーテル側鎖からなる群から選択されるアミノ酸であり得る。
【0033】
例えば、疎水性側鎖を有するアミノ酸は、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、アラニンおよびグリシン(W、Y、F、L、I、V、M、A、G)からなる群から選択されるアミノ酸であり得る。さらなる例において、疎水性側鎖を有するアミノ酸は、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、アラニン、プロリンおよびグリシンからなる群から選択されるアミノ酸であり得る。アセチル化リシンは、典型的には、疎水性アミノ酸であるとも考えられる。
【0034】
ペプチド部分は、非天然のアミノ酸配列を有し得る。特に、ペプチド部分は、任意の既知の天然ペプチド配列と100%未満、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、または50%以下の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。非天然配列は、天然アミノ酸のみを含んでいてもよいし、付加的にまたは代替的に、1つ以上の非天然アミノ酸を含んでいてもよい。
【0035】
好ましくは、ペプチド部分は、疾患関連抗原から誘導されたものではない。特に、ペプチド部分は、既知の疾患関連抗原と100%未満、99%以下、98%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、70%以下、60%以下、または50%以下の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。既知の疾患関連抗原の配列は容易に入手可能である。
【0036】
好ましくは、ペプチド部分は5以上の等電点を有する。特に、ペプチド部分は、5.0以上、5.2以上、5.4以上、5.6以上、5.8以上、6.0以上、6.5以上、または7.0以上の等電点を有し得る。等電点は、12.6以下、8.0以下、7.5以下、7.0以下、6.5以下、または6.0以下であり得る。任意の下限値を任意の上限値と組み合わせて好適値の範囲を規定することができる。このようにして、例えば、ペプチド部分は、5.0~12.6、もしくは5.0~7.0、または5.2~5.8の等電点を有し得る。
【0037】
好ましくは、ペプチド部分は、2以上、3以上、4以上の絶対正味正電荷を有する。好ましくは、ペプチド部分は、2:17~3:4の正味正電荷アミノ酸と総アミノ酸の比を有する。好ましくは、ペプチド部分は、少なくとも1個のヒスチジン残基を含む。
【0038】
好ましくは、ペプチド部分は、本明細書中で定義される75%以下、60%以下、50%以下、45%以下、または40%以下のアミノ酸残基が疎水性側鎖を有するアミノ酸配列と共に、本明細書中で定義される絶対正味正電荷および/または本明細書中で定義される正味正電荷アミノ酸と総アミノ酸の比を有する。
【0039】
好ましくは、ペプチド部分は低い固有免疫原性を有する。例えば、ペプチド部分は、既知または予測T細胞エピトープを含んでいなくてもよく、および/または既知または予測B細胞エピトープを含んでいなくてもよい。あるいは、ペプチド部分に存在するいずれのエピトープも、例えばヒト免疫系により許容されるヒトタンパク質中に見られるエピトープであるために免疫応答を誘導しないエピトープであってよい。
【0040】
好ましくは、ペプチド部分は、特定の種類の細胞受容体を標的とするおよび/もしくは特定の種類の細胞受容体に結合することが知られていないかまたは適合していないか、あるいは細胞膜を通過することが知られていないかまたは適合してい。
【0041】
ペプチド部分は、化合物の物理化学的特性を改変するために使用することができる。一般的には疎水性または親水性の側鎖を有するアミノ酸残基の包含の可能性は、様々な溶媒中で要求される溶解性を有するペプチド部分または化合物の創出を可能とする。さらに、アミノ酸残基は、酸性または塩基性の側鎖を有することが可能であり、且つ様々なpKa値を有するため、溶液のpHおよび/またはイオン濃度を変化させることによって溶解性を操作することができる。ペプチドのモジュラー性質は、広範囲のアミノ酸を組み込むことができるペプチド合成のための標準化技術と共に、容易にペプチド部分をこの目的に適したものとする。
【0042】
ペプチド部分の物理化学的特性は、単一化合物の周囲の溶媒との相互作用に関連するだけでなく、ペプチド部分の、それ自体との相互作用(例えばペプチドのフォールディング)、および他の近隣の化合物のペプチド部分との相互作用(例えば凝集)にも関連することが理解されるだろう。このため、ペプチド部分は、特定の条件下における特定の二次構造に有利なアミノ酸配列を有し得る。代替的にまたは付加的に、ペプチドは、医薬組成物中に存在する他の成分と相互作用することができる。例えば、ペプチド部分は、アルミニウムベースのアジュバント(例えば水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム)と会合することができる。このような相互作用は、ペプチド部分に存在する電荷によって誘発することができる。このような相互作用はいずれも、ペプチドを会合体にすることができる。
【0043】
このようにして、様々な条件下で望ましい特性を有する化合物を提供するためにペプチドを選択することができる。例えば、本化合物を医薬組成物中で製剤化することができるようにするため、本化合物が第1溶液(例えば、注射用水、ヒスチジンバッファー溶液(例えば、28mM L-ヒスチジンバッファー)、重炭酸ナトリウム、トリス-HCl、リン酸塩バッファーまたは酢酸バッファー)で可溶性であることが望ましいであろう。その後、本化合物が、第2溶液(例えば、血清、血漿、間質液または細胞培地(あるいはこのような生理的溶液を代表する溶液、例えば:塩化ナトリウム水溶液(例えば0.9%塩化ナトリウム溶液);塩化ナトリウムおよびヒスチジンの水溶液(例えば28mM L-ヒスチジン中9.%塩化ナトリウム);またはリン酸緩衝溶液(PBS)))中で比較的低い溶解性および/または会合体を有することが望ましいであろう。特に、可溶性化合物は、化合物の他の分子とは無関係に溶液全体にわたって自由に拡散することができるが、不溶性化合物は拡散の自由が制限されている。生理的液体(特に細胞外液)における溶解性の低下は、投与後に、化合物がヒトまたは動物の身体中に容易に運ばれるのを制限することができる。このようにして、望ましくない副作用の罹患率を低下させることができる。
【0044】
例示的なペプチド部分としては、表1および表2にリストされるアミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基を有する任意の配列を含むペプチド部分が挙げられる:
【表1】
【表2】
【0045】
このように、ペプチド部分は、1位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A)から選択され;2位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A)から選択され;3位がアミノ酸残基(L、H、Q、A)から選択され;4位がアミノ酸残基(L、H、Q、A)から選択され; 5位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A、L)から選択され;6位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A、L)から選択され;7位がアミノ酸残基(L、H、Q、A、W)から選択され;8位がアミノ酸残基(L、H、Q、A、W)から選択され;9位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A、L)から選択され;10位がアミノ酸残基(L、H、Q、A、W)から選択され;11位がアミノ酸残基(L、H、Q、A、W)から選択され;12位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A、L)から選択され;13位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A、L)から選択され;14位がアミノ酸残基(L、H、Q、A)から選択され;15位がアミノ酸残基(L、H、Q、A)から選択され;16位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A)から選択され;また17位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A)から選択される配列を有し(すなわち含み)得る。
【0046】
さらに、ペプチド部分は、1位がアミノ酸残基(R、K、H、L)から選択され;2位がアミノ酸残基(R、K、H)から選択され;3位がアミノ酸残基(L)であり;4位がアミノ酸残基(L)であり;5位がアミノ酸残基(H、K、R、L、A、P)から選択され;6位がアミノ酸残基(A)であり;7位がアミノ酸残基(H、K、R、L、A、P)から選択され;8位がアミノ酸残基(L)であり;9位がアミノ酸残基(A、K、R、H)から選択され;10位がアミノ酸残基(L)であり;11位がアミノ酸残基(H、K、R、L、A、P)から選択され;12位がアミノ酸残基(A)であり;13位がアミノ酸残基(H、K、R、L、A、P)から選択され;14位がアミノ酸残基(L)であり;15位がアミノ酸残基(L)であり;16位がアミノ酸残基(R、K、H)から選択され;また17位がアミノ酸残基(R、K、H、L)から選択される配列を含み得る。
【0047】
具体的には、ペプチド部分は、以下の配列のうちの1つを含み得る:
配列番号32:RRLLHAHLALHAHLLRR
配列番号1:RRLLAHLLHLLHALLRR
配列番号2:RRLLAHLLALLHALLRR
配列番号3:RALLAHLLALLHALLAR
配列番号4:RALLAHLLHLLHALLAR
配列番号5:RRLLRHLLHLLHRLLRR
配列番号6:RRLLRHLLALLHRLLRR
配列番号7:RHLLAHLLALLHALLHR
配列番号8:RHLLAHLLHLLHALLHR
配列番号9:AHLLAHLLHLLHALLHA
配列番号10:AHLLAHLLALLHALLHA
配列番号11:AHLLAHLLRLLHALLHA
配列番号12:RRLLRRLLRLLRRLLRR
配列番号13:KKLLKKLLKLLKKLLKK
配列番号14:RRLLRRLLALLRRLLRR
配列番号15:RRLLARLLALLRALLRR
配列番号16:RRLLRALLALLARLLRR
配列番号17:RRLLHALLALLAHLLRR
配列番号18:RRLLPAPLALPAPLLRR
配列番号19:RRLLPAALALAAPLLRR
配列番号20:RRLLPALLALLAPLLRR
配列番号21:RRLLLAPLALPALLLRR
配列番号22:RRLLAAPLALPAALLRR
配列番号23:LRLLHALLALLAHLLRL
配列番号24:LRLLHAPLALPAHLLRL
配列番号25:LRLLHAALALAAHLLRL
配列番号26:LRLLPAHLALHAPLLRL
配列番号27:LRLLAAHLALHAALLRL
配列番号28:RRLLHAPLALPAHLLRR
配列番号29:RRLLHAALALAAHLLRR
配列番号30:RRLLPAHLALHAPLLRR
配列番号31:RRLLAAHLALHAALLRR
配列番号33:RRLLHAKLALKAHLLRR
配列番号34:RRLLKAKLALKAKLLRR
配列番号35:RRLKKAKLKLKAKKLRR
【0048】
あるいは、ペプチド部分は、上記のペプチド配列のいずれか1つから選択される短縮配列を含み得る。例えば、ペプチド部分は、上記配列のいずれか1つから選択される9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、または16個の連続アミノ酸の短縮配列を含み得る。特に、短縮配列は、上記配列のいずれか1つのP5位~P13位に由来する9個の連続アミノ酸を含み得る。
【0049】
ペプチド部分は、上記配列の少なくとも1つと75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上の配列同一性を有する配列を含み得る。例えば、ペプチド部分は、配列番号1~配列番号35のいずれか1つのP5位~P13位に由来する9個の連続アミノ酸と少なくとも80%の同一性を有する配列を含み得る。
【0050】
さらに、ペプチド部分における1つ以上のロイシンアミノ酸(L)を、類似の物理化学的特性を有する脂肪族、芳香族またはチオエーテルアミノ酸で置換することができる。このような脂肪族、芳香族またはチオエーテルアミノ酸の例は、イソロイシン(I)、バリン(V)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、フェニルアラニン(F)およびメチオニン(M)である。例えば、ロイシンアミノ酸は、イソロイシンアミノ酸(I)およびバリンアミノ酸(V)で置換することができる。例えば、表1および表2の例示的ペプチド部分において、任意のLを、I、V、W、Y、FおよびMのいずれかで置換することができる(例えば、任意のLを、IまたはVで置換することができる)。
【0051】
なお、さらに、特に好ましいペプチド部分は、式RR、RK、KR、KK、HR、RH、HK、KHまたはHHで表される二塩基配列が配列のN末端およびC末端の一方または両方に存在するアミノ酸配列(ここで二塩基配列(1つまたは複数)は、より好ましくはRR、RK、KR、KKから選択され、より好ましくはさらにRRである)を有し得る。例えば、表1および表2の例示的なペプチド部分において、特に好ましいペプチド部分は、1位および2位において、または16位および17位において、あるいは1位、2位、16位および17位の全てにおいてこのような二塩基配列を有し得る。このような二塩基配列の存在は、製剤化の間、ペプチドの溶解性に有利に寄与し得る。
【0052】
表1および表2のとりわけ好ましいペプチド部分は、75%以下のアミノ酸残基が疎水性側鎖を有する(例えば、ここで疎水性側鎖を有するアミノ酸残基は、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、アラニンおよびグリシンからなる群から選択される)アミノ酸配列を有する。
【0053】
ペプチド部分は、配列のN末端またはC末端にさらなるアミノ酸残基を含み得る。特に、このような付加的アミノ酸は、ペプチド部分の製造または精製を助けるために組み込まれ得る。このような目的のために使用することができる付加的アミノ酸配列の例は、当技術分野において公知である。
【0054】
一態様において、本発明は、細胞外液における免疫刺激剤の溶解性を低下させるためのペプチド(ここでペプチドは免疫刺激剤に共有結合的に連結している)の使用に関する。誤解のないように述べておけば、上記のとおり、ペプチドおよび免疫刺激剤は、それぞれ化合物のペプチド部分および免疫刺激部分を形成する。細胞外液は、血液、血清または間質液であり得る。細胞外液における免疫刺激剤の溶解性の低下は、例えば、in vivo拡散/身体分布の低下、および/または局所投与部位エントラップメント、および/または比較的高い分子量構造もしくは超分子構造の形成を通じた炎症性サイトカイン応答の全身活性化の低下、および/または注射部位における分子または細胞との物理的接触、および/または免疫担当細胞もしくはリンパ器官によるエントラップメント/取り込みを含み得る。細胞外液における免疫刺激剤の溶解性の低下はまた、in vitro条件下の細胞外液における溶解性の低下(例えば、比較的高い分子量構造または超分子構造の形成)も含み得る。「溶解性の低下」は、免疫刺激剤自体(すなわちペプチドに共有結合的に連結していない場合)の溶解性と比較して低下することを意味する。
【0055】
別の態様において、本発明は、免疫刺激剤自体(すなわちペプチドに共有結合的に連結していない場合)と比較した、細胞外液における免疫刺激剤のワクチンアジュバント活性を増加させるためのペプチド(ここでペプチドは免疫刺激剤に共有結合的に連結している)の使用に関する。
【0056】
ペプチドの使用に関するこれらの態様において、好ましくは上記の使用は、細胞外液における免疫刺激剤の溶解性を低下させてアジュバント活性を増加させるための、ペプチド(ここでペプチドは免疫刺激剤に共有結合的に連結している)の使用である。
【0057】
ペプチドの免疫刺激剤への結合は、例えば、「遊離型」免疫刺激剤と比較して免疫刺激剤の発熱性を低下させ、および/または循環中のin vivo炎症性指示薬(例えばIL-1、TNF-α、IL-6および/またはIL-8)のレベルを低下させることができる。本発明の別の態様において、ペプチドは、免疫刺激剤が特異的免疫応答に及ぼす免疫刺激効果を、「遊離型」免疫刺激剤の効果と比較して改善するために使用される。例えば、免疫刺激剤ペプチド化合物は、共投与される抗原に対して「遊離型」免疫刺激剤よりも優れたin vivo細胞媒介性免疫応答および/または体液性応答を促進し得る。
【0058】
誤解のないように述べておけば、ペプチド部分が(a) 疾患関連免疫原ではなく;(b) 75%以下のアミノ酸残基が疎水性であるアミノ酸配列を有し;および/または (c) 5以上の等電点を有する場合、ペプチド部分は必然的に特徴(a)を有し、且つ特徴(b)および(c)の少なくとも1つを有する。好ましくは、前記ペプチド部分はいずれも、75%以下のアミノ酸残基が疎水性であり、5以上の等電点を有するアミノ酸配列を有する。
【0059】
ベクター部分
本発明の化合物は、ベクター部分を含み得る。本明細書中で使用される用語「ベクター部分」は、非水性環境との会合に適した化合物の一部分を指す。好ましくは、ベクターは、炭化水素、フルオロカーボン、および脂質から選択される1つ以上の部分を含み得る。
【0060】
炭化水素部分は、水素と炭素からなる任意の基であり得るが、典型的には、炭素鎖(例えば、3~30個の炭素原子、5~25個の炭素原子、または8~20個の炭素原子の鎖)を含むだろう。炭素鎖は、直鎖でも分岐鎖でもよいが、好ましくは直鎖であり、また飽和でも不飽和でもよいが、好ましくは飽和である。
【0061】
一部の実施形態において、上記の炭化水素部分は、以下の化学構造:
CyHx-
(式中、y = 3~30、x ≦ 2y+1である)
またはその誘導体を有し得る。典型的には、xおよびyは2y-1 ≦ x ≦ 2y+1の関係を満たし、好ましくはx = 2y+1である。好ましくは、CyHx部分は直鎖である。
【0062】
yが5~25、より好ましくは8~20であることが好ましい。CyHx部分が飽和(すなわちx = 2y+1)且つ直鎖であり、さらにy = 8~18または8~16であることが好ましい。
【0063】
炭化水素部分を含むベクターは、疎水性環境(例えば富炭化水素環境)との相互作用に特に好適であり得る。本発明の文脈において、炭化水素部分を、ベクターが依然として非水性環境と会合することができるように修飾することができる。例えば、炭化水素部分は、該炭化水素部分が非水性環境と会合する能力を除去することなく、1つ以上のヘテロ原子を含み得る。しかし、典型的には、炭化水素部分は、炭素元素と水素元素からなるだろう。
【0064】
フルオロカーボン部分は、1つ以上の水素原子がフッ素で置換されている、上記に定義される任意の炭化水素部分であり得る。特に、フルオロカーボン部分は過フッ素化されていてもよく、部分的にフッ素化されていてもよい。このように、フルオロカーボン部分は、典型的には、炭素鎖(例えば3~30個の炭素原子、5~25個の炭素原子、または8~20個の炭素原子の鎖)を含むだろう。炭素鎖は直鎖でも分岐鎖でもよいが、好ましくは直鎖であり、また飽和でも不飽和でもよいが、好ましくは飽和である。
【0065】
一部の実施形態において、フルオロカーボン部分は、以下の化学構造:
CmFn-CyHx-
(式中、m = 3~30、n ≦ 2m+1、y = 0~15、x ≦ 2y、および(m+y) = 3~30である)
またはその誘導体を有し得る。典型的には、mおよびnは、2m-1 ≦ n ≦ 2m+1の関係を満たし、好ましくはn = 2m+1である。典型的には、xおよびyは、2y-2 ≦ x ≦ 2yの関係を満たし、好ましくはx = 2yである。好ましくは、CmFn-CyHx部分は直鎖である。
【0066】
mが5~15、より好ましくは8~12であることが好ましい。yが0~8、より好ましくは0~6または0~4であることも好ましい。CmFn-CyHx部分が、飽和(すなわち、n = 2m+1且つx = 2y)且つ直鎖であり、さらにm = 8~12且つy = 0~6または0~4であることが好ましい。
【0067】
特定の例において、フルオロカーボン部分は、以下の式:
【化4】
で表される2H,2H,3H,3H-ペルフルオロウンデカン酸から誘導される。
【0068】
このように、好ましいフルオロカーボン部分は、直鎖飽和部分C8F17(CH2)2-である。
【0069】
フルオロカーボン部分のさらなる例は、以下の式:C6F13(CH2)2-、C7F15(CH2)2-、C9F19(CH2)2-、C10F21(CH2)2-、C5F11(CH2)3-、C6F13(CH2)3-、C7F15(CH2)3-、C8F17(CH2)3-およびC9F19(CH2)3-を有し、これらはC6F13(CH2)2COOH、C7F15(CH2)2COOH、C9F19(CH2)2COOH、C10F21(CH2)2COOH、C5F11(CH2)3COOH、C6F13(CH2)3COOH、C7F15(CH2)3COOH、C8F17(CH2)3COOHおよびC9F19(CH2)3COOHからそれぞれ誘導される。
【0070】
フルオロカーボンベクター部分に好適な構造の好ましい例は、以下の式:
【化5】
(式中、Spは本明細書中で定義されるスペーサーであり、波線は分子の残りの部分への結合点を示す)を有する。好ましくは、Spはリシン残基から誘導され、式-CONH-(CH2)4-CH(NH2)-CO-を有する。ペプチド(例えば本発明の化合物のペプチド部分またはペプチド抗原のペプチド部分)のN末端アミノ酸のアミノ基は、このようにして、式-CONH-(CH2)4-CH(NH2)-CO-で表されるスペーサーのC末端カルボキシ基とアミド結合を形成することができる。
【0071】
フルオロカーボン部分を含むベクターは、含フッ素環境(例えばフルオロカーボンリッチ環境)との相互作用に特に好適であり得る。従って、フルオロカーボン部分を含むベクター部分を有する化合物は、極性(プロトン性および非プロトン性)溶媒ならびに非極性溶媒の両方において、自己会合して多分子のフルオロカーボンベースのミセルを形成することができる。
【0072】
フルオロカーボンベースのベクターは、抗原の送達の改善において有用であることが知られている。フルオロカーボン連結ペプチドの例は、WO 2005/099752およびWO 2009/027688に示されており、これらの文献には、ペプチドに対する免疫応答の増強においてフルオロカーボン結合によって与えられる利点が示されている。このようなフルオロカーボン連結ペプチドの溶解性を改善するため、WO 2012/090002(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、フルオロカーボン連結ペプチドを処理して多分子のフルオロカーボンベースのミセル様構造の形成を促進するための方法について記載している。従って、本発明の化合物におけるフルオロカーボンベクター部分の使用は、本化合物をこのようなミセルに組み込むことを可能とする。
【0073】
本発明の文脈において、フルオロカーボンベクター部分を、ベクターが依然として含フッ素環境と会合することができるように修飾することができる。例えば、フルオロカーボン部分は、フルオロカーボンの非水性環境と会合する能力を除去することなく、1つ以上のヘテロ原子を含み得る。同様に、1つ以上のフッ素原子を、フルオロカーボンの含フッ素環境と会合する能力を除去することなく他のハロゲン原子(例えば塩素、臭素またはヨウ素)で置換することができる。しかし、典型的には、フルオロカーボン部分は、炭素元素、フッ素元素、および場合により水素元素からなるだろう。
【0074】
脂質部分は、水素原子の除去によって脂質から誘導することができる任意の好適な基であり得る。脂質は任意の好適な脂質であってよく、天然であっても非天然であってもよい。好適な脂質としては、例えば、脂肪、ワックス、ステロール、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドおよびリン脂質が挙げられる。好適な脂質は、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、ポリケチド、ステロール脂質およびプレノール脂質に分類することができる。ステロール脂質が好ましい。特に、脂質部分はコレステロールから誘導することができる。
【0075】
脂質部分を含むベクターは、脂質環境との相互作用に特に好適であり得る。
【0076】
化合物構造
本発明の化合物は、免疫刺激部分とペプチド部分を含み、ベクター部分をさらに含み得る。免疫刺激部分は、ペプチド部分のアミノ酸配列中の任意の位置でペプチド部分に連結することができるが、好ましくは配列の一端から5位以下、4位以下、3位以下もしくは2位以下のアミノ酸残基にそれぞれ連結しているか、または末端アミノ酸残基に連結している。
【0077】
特に、化合物は、本質的に免疫刺激部分、ペプチド部分およびベクター部分で構成されていてもよく、免疫刺激部分、ペプチド部分およびベクター部分で構成されていてもよい。
【0078】
ベクター部分が存在する場合、免疫刺激部分とベクター部分とが、アミノ酸配列中で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の配列長で分離されているアミノ酸残基に独立して連結されていることが好ましい。特に好ましくは、免疫刺激部分とベクター部分は、ペプチド部分配列の異なる末端アミノ酸残基にそれぞれ連結している。このため、例えば、免疫刺激部分をC末端アミノ酸残基に連結し、および/またはベクター部分をN末端アミノ酸残基に連結することができる。
【0079】
免疫刺激部分、およびベクター部分は、存在する場合、単一共有結合によってペプチド部分に直接連結されていてもよいし、1つ以上の中間原子を介した共有結合によって連結されていてもよい。免疫刺激部分は、スペーサー部分によってペプチド部分に連結することができる。好ましくは、スペーサー部分は親水性である。例えば、スペーサー部分は、β-アラニン、アミノ酪酸、アミノ吉草酸、およびアミノカプロン酸の1つ以上を含み得る。
【0080】
代替的にまたは付加的に、スペーサー部分は、少なくとも3個のモノマー単位のポリマー部分(例えばポリエチレングリコール部分)を含み得る。例えば、スペーサー部分は、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、または9個以上のモノマー単位を有するポリエチレングリコール部分を含み得る。ポリエチレングリコール部分は、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、または8個以下のモノマー単位を有し得る。任意のエンドポイントを任意の他のエンドポイントと組み合わせて、好適なポリマー長の範囲を規定することができる。例えば、ポリエチレングリコール部分は、5~15個のモノマー単位を有し得る。
【0081】
スペーサー部分を有することにより、免疫刺激部分に、ペプチド部分に対する自由度を与えることができる。このため、特定の環境中でペプチド部分が不溶性である場合、スペーサー部分は、免疫刺激部分が溶媒和され、好適な細胞上の受容体に対して提示され得ることを可能にする。
【0082】
好ましくは、スペーサー部分は切断可能なリンカーを含む。リンカーは、例えば、酸で切断可能なリンカーでもよいし、酵素的に切断可能なリンカーでもよい。例示的な酸で切断可能なリンカーとしては、イミン、ヒドラゾン、ケタールまたはアセタール、アシルヒドラゾン、cis-アコニット酸(cis-aconity)、およびトリチルが挙げられる。例示的な酵素的に切断可能なリンカーとしては、ペプチド配列ALALX(カテプシンBにより切断可能)、β-D-グルコロン酸エステル、(β-グルクロニダーゼにより切断可能)、アゾベンゼン、例えばアゾベンゼン-2-カルボキシレート(アゾレダクターゼにより切断可能)、エステル(エステラーゼにより切断可能)、リン酸塩エステル(酸性ホスファターゼにより切断可能)、ならびにγ-グルタミルアミド(γ-グルタミルトランスぺプチダーゼにより切断可能)が挙げられる。
【0083】
本化合物は、標準的な合成化学経路を用いて調製することができる。例えば、ペプチド部分は、好適な樹脂ビーズサポート上の固相ペプチド合成(SPPS)を用いて調製することができる。一旦ペプチド部分の合成が完了すると、ペプチド部分をサポートに結合させたまま、化合物の第2の部分を、ペプチド鎖の末端を介して、またはアミノ酸残基の側鎖を介して、ペプチド部分の遊離端にまたはその近くに結合させることができる。化合物の第3の部分は、アミノ酸残基の側鎖を介して、または樹脂からのペプチド部分の同時切断により、ペプチド部分の結合端にまたはその近くに結合させることができる。あるいは、ペプチド部分を、溶液中で行われる第2の部分の結合、および第3の部分の結合の後に樹脂から切断することもできる。
【0084】
好ましくは、ペプチド部分を好適な樹脂サポート上でC末端からN末端へと成長させ、その後ベクター部分を脱保護したN末端に結合させる。次いで、先に調製した免疫刺激剤を、場合により結合したスペーサーと共に、C末端アミノ酸残基の側鎖に結合させる。最後に、ペプチドを樹脂サポートから切断する。
【0085】
免疫刺激剤部分および、存在する場合、化合物の他の部分を、共有結合の形成をもたらす任意の好適な化学反応を用いてペプチド部分に結合させることができる。好ましくは、上記の部分を、求核試薬とカルボキシル基との反応を用いて結合させる。例えば、1つの部分上のアミンを、第2の部分上のカルボキシレートと反応させてアミドを形成することができる。
【0086】
本化合物は、少なくとも1000Da、好ましくは少なくとも1700Da、より好ましくは少なくとも2100Da(例えば少なくとも2500Da)の分子量を有し得る。本化合物は、10000Da以下、好ましくは8000Da以下、より好ましくは6500Da以下(例えば5000Da以下)の分子量を有し得る。任意のエンドポイントを任意の他のエンドポイントと組み合わせて、好適な分子量の範囲を規定することができる。例えば、本化合物は、1700~8000Da、または2100Da~6500Daの分子量を有し得る。
【0087】
医薬組成物
本発明の化合物は、製薬上許容される担体または希釈剤と組み合わせて、医薬組成物として製剤化することができる。
【0088】
あるいは、本発明の化合物は、免疫原と共に、場合により製薬上許容される担体または希釈剤と組み合わせて、医薬組成物として製剤化することができる。
【0089】
本化合物は、本医薬組成物の環境において可溶性であり得る。従って、一部の実施形態において、本医薬組成物の投与後に、投与環境における本化合物の溶解性が低下し、これによりヒトまたは動物の身体の、投与部位から離れた場所に本化合物を運ぶ能力が低下する。
【0090】
希釈剤は、効率的な凍結乾燥に必要とされる安定剤または増量剤を含み得る。例としては、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルピロリドンおよびそれらの混合物(好ましくはマンニトール)が挙げられる。存在し得る他の賦形剤としては、保存剤(例えば、当技術分野において周知の抗酸化剤、滑沢剤、凍結保存剤および結合剤)が挙げられる。
【0091】
本医薬組成物は、2つ以上の免疫刺激化合物、例えば2つ以上の本発明の化合物を含み得る。異なる免疫刺激化合物は、異なる免疫刺激活性を有していてよく、例えば異なる受容体に対するアゴニストとして作用し得る。本化合物は、TLR、TLEおよびNODから選択される2つ以上の受容体に対するアゴニストとして作用し得る。例えば、本医薬組成物は、TLR7に対するアゴニストである免疫刺激部分を含む第1の化合物と、TLR8および/またはNOD2に対するアゴニストである免疫刺激部分を含む第2の化合物とを含み得る。このようにして、本組成物の免疫原性を改善し、および/または免疫原性応答を特定の細胞種(例えばTh1および/またはTh17など)に対して極性化することができる。
【0092】
本医薬組成物は、1つ以上のアジュバントをさらに含み得る。アジュバントは、共投与される抗原に対する免疫応答を調節することができるが、それ自体で投与される場合には直接的影響があるとしてもわずかな影響である薬剤である。このようなアジュバントは、免疫応答を、大きさおよび/またはサイトカインプロファイルについて増強することができる。アジュバントの例としては、以下のもの:天然のまたは合成的に誘導された天然の細菌成分の精製物(例えば、フロイントアジュバント&その誘導体、ムラミルジペプチド(MDP)誘導体、CpG、モノホスホリルリピドA);他の公知のアジュバントまたは増強剤(例えばサポニン、アルミニウム塩およびサイトカイン);水中油アジュバント、油中水アジュバント、免疫刺激複合体(ISCOM)、リポソーム、製剤化ナノおよびマイクロ粒子;細菌性毒素およびトキソイド;イヌリン(特にガンマイヌリン);ならびにTLRアゴニストが挙げられる。
【0093】
好ましくは、アジュバントは、以下からなる群から選択することができる:ペプチドグリカン(例えばTDM、MDP、ムラミルジペプチド、ムラブチド);ミョウバン溶液(例えば水酸化アルミニウム、ADJUMER(商標)(ポリホスファゼン)またはリン酸アルミニウムゲル);グルカン;アルガムリン;サーファクタント(例えばスクアラン、Tween 80、プルロニックまたはスクアレン);リン酸カルシウムゲル;細菌性毒素またはトキソイド(例えばコレラホロ毒素、コレラ-毒素-A1-タンパク質-A-D-断片融合タンパク質、コレラ毒素のサブユニットB、またはブロックコポリマー);サイトカイン含有リポソーム;油中水アジュバント(例えばフロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバントまたはモンタニド(例えばISA 51もしくはISA 720));水中油アジュバント(例えばMF-59);イヌリンベースのアジュバント;サイトカイン(例えばインターフェロン-ガンマ;インターロイキン-1ベータ;インターロイキン-2;インターロイキン-7またはインターロイキン-12);ISCOM(例えばイスコマトリックス);任意の組成のミクロスフェアおよびマイクロ粒子;ならびにToll様受容体アゴニスト(例えばCpG、ヒトTLR1-10のリガンド、マウスTLR1-13のリガンド、ISS-1018、IC31、イミダゾキノリン、ポリ(I:C)、モノホスホリルリピドA、Ribi529、コレラ毒素、易熱性毒素、Pam3Cysまたはフラジェリン)。
【0094】
本医薬組成物は、連続相に懸濁された不連続相を含み得る。あるいは、本組成物は、投与用に調製される場合、連続相に懸濁された不連続相を含む固体または液体を含み得る。例えば、本医薬組成物は、油中水エマルションまたは水中油エマルションなどのエマルションを含み得る。代替的にまたは付加的に、本医薬組成物は、ミセルまたはリポソームを含み得る。
【0095】
特に、連続相は水性であってよく、不連続相は非水性であってよい。このような場合、本化合物は不連続相に局在化していてよく、また従って、本化合物は、不連続相とは無関係に連続相を通して自由に拡散することはできない。例えば、化合物の少なくとも一部は、不連続相の表面に付着していてもよいし、不連続相に組み込まれていてもよい。この配置は、化合物の上記部分の、不連続相の成分による溶媒和によって安定化させることができる。それと同時に、本化合物のさらなる部分は、連続相に曝されていてもよいし、連続相に位置していてもよい。特に、免疫刺激部分は、免疫刺激部分が一般的には連続相に囲まれるように連続相中に位置し得る。
【0096】
特に、本化合物がベクター部分を含む場合、ベクター部分は、不連続相の表面に付着していてもよいし、不連続相に組み込まれていてもよい。例えば、ベクター部分が炭化水素部分を含む場合、不連続相は、ベクター部分が少なくとも部分的に疎水性相に組み込まれるように、疎水性相を含み得る。ベクター部分がフルオロカーボン部分を含む場合、不連続相は、ベクター部分が少なくとも部分的にフルオロカーボン相に組み込まれるように、含フッ素相を含み得る。ベクター部分が脂質部分を含む場合、不連続相は、ベクター部分が少なくとも部分的に脂質相に組み込まれるように、脂質相を含み得る。いずれの場合も、本化合物の免疫刺激部分およびペプチド部分は、連続相(水性連続相であってよい)に曝され得る。
【0097】
医学的用途
本発明は、医学的処置において使用するための本発明の化合物および組成物を提供する。
【0098】
このように、本発明は、本発明の化合物または医薬組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含む、免疫原に対する免疫応答を刺激する方法を提供する。この方法は、免疫原を、本化合物または本医薬組成物と同時にまたは連続して投与するステップを含み得る。例えば、本医薬組成物は、本発明の化合物のみならず免疫原も含み得る。好ましくは、免疫原と本化合物または本医薬組成物とは、ヒトまたは動物の身体上の同一部位に投与される。
【0099】
あるいは、上記の方法は、免疫原を伴わずに本化合物または本医薬組成物を投与するステップを含み得る。本発明の化合物は、非特異的な抗ウイルス療法、抗腫瘍療法および/または抗炎症療法において有用であり得る。
【0100】
このように、本発明はまた、疾患の治療における同時使用、個別使用または連続使用のための、本発明の化合物と免疫原とを含む製品も提供する。
【0101】
また上記の方法は、本化合物または本医薬組成物と同時にまたは連続して、さらなる免疫刺激化合物を投与するステップも含み得る。さらなる免疫刺激化合物は、本発明の第2の化合物であり得る。これらの化合物は、上記に示されるとおり、異なる免疫刺激活性を有し得る。例えば、本医薬組成物は、2つの免疫刺激化合物(例えば、2つの本発明の化合物)を含み得る。これらの化合物は、1つ以上の特徴、また特に免疫刺激部分の性質において異なり得る。好ましくは、さらなる免疫刺激化合物と、本化合物または本医薬組成物は、ヒトまたは動物の身体上の同一部位に投与される。
【0102】
このように、本発明はまた、疾患の治療における同時使用、個別使用または連続使用のための、本発明の化合物とさらなる免疫刺激化合物とを含む製品も提供する。
【0103】
本明細書中で使用される用語「免疫応答を刺激する」は、免疫原に対する免疫応答が以前には存在していなかった場合、個体においてこのような免疫応答を開始することを指し得る。代替的にまたは付加的に、この用語は、既存の免疫応答を誘発することを指し得る。いずれの場合も、免疫系が免疫原に反応する能力が強化され、その結果、当該免疫原に対する後続の免疫応答(本発明の化合物の投与に関連していない場合でも)がより効果的になることが期待される。免疫応答は、疾患の治療または予防において効果的であり得る。
【0104】
疾患は、典型的には、感染性疾患、自己免疫疾患、アレルギー、ホルモン病または癌である。本化合物または本医薬組成物が免疫原と共に投与される場合、免疫原は、感染性疾患を引き起こす病原体、自己免疫疾患またはホルモン病に関与する自家タンパク質、アレルギーの原因となるアレルゲン、または癌細胞上で発現される腫瘍抗原に由来する1つ以上のエピトープを含むように選択される。
【0105】
本発明の化合物または組成物を用いて治療または予防することができる感染性疾患の例としては、限定するものではないが、以下のウイルス、細菌、マイコバクテリウム、寄生生物および菌類:インフルエンザ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、日本脳炎ウイルス(JEV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ヘルペスウイルス(HSV-1またはHSV-2)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デングウイルス、西ナイルウイルスおよび黄熱病ウイルス、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis))、レジオネラ菌(Legionella)、リケッチア菌(Rickettsiae)、クラミジア菌(Chlamydiae)およびリステリア菌(リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes))、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)およびマラリア原虫の科(Plasmodial family)の他の種、カンジダ菌(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))、クリプトコッカス菌(Cryptococcus)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ロドトルラ菌(Rhodotorula)ならびにニューモシスティス菌(Pneumocystis)によって引き起こされる感染が挙げられる。
【0106】
本発明の化合物または組成物を用いて治療または予防することができる癌の例としては、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、鼻咽頭癌、バーキットリンパ腫および他のヒト癌が挙げられる。
【0107】
本発明の化合物または組成物は、インフルエンザを治療するため、またはインフルエンザに対して予防接種するために使用することができる。インフルエンザワクチン製剤は、抗ウイルス治療用組成物(例えば、アマニジン、リマンチジン、ザナミビルまたはオセルタミビルなどのノイラミニダーゼ阻害剤治療)と組み合わせて投与することができる。インフルエンザワクチン製剤は、従来の抗体産生インフルエンザワクチンなどの他のインフルエンザワクチンと組み合わせて投与することができる。他のインフルエンザワクチンは、好ましくは季節性インフルエンザワクチンである。
【0108】
投与は同時でもよく、時間的に分離していてもよい。本発明の化合物または組成物は、抗ウイルス治療用組成物および/または他のインフルエンザワクチンの前に、一緒にまたは後に投与することができる。
【0109】
上記の方法は、上記に定義される治療的適用または予防的適用を有し得る。
【0110】
患者に投与される予防用または治療用組成物の適切な用量は臨床で決定される。しかし、参考として、好ましい投与経路に応じて決定され得る好適なヒト用量は、1~1000μg(例えば約100μg、200μgまたは500μg)であり得る。免疫学的効果または臨床的効果を達成するため、複数回投与が必要とされる場合があり、必要であれば、これらは典型的には2~12週間離して投与される。比較的長期間にわたる免疫応答のブーストが必要とされる場合、1ヶ月~5年間離した反復投与が適用され得る。
【0111】
第2の治療剤または予防剤を本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用する場合、投与は同時でもよいし、時間的に分離していてもよい。本発明の組成物は、第2の治療剤の前に、一緒にまたは後に投与することができる。このように、本発明はまた、癌、病原性感染、または自己免疫疾患の治療において同時使用、個別使用または連続使用するための、本発明の化合物と免疫原とを含む製品も提供する。
【0112】
本発明の組成物は、様々な公知の経路および技術を用いて、ヒトまたは動物である対象にin vivoで投与することができる。例えば、本組成物を、注射可能な溶液、懸濁液またはエマルションとして提供し、従来の針およびシリンジを用いて、または液体ジェット注射システムを用いて、非経口、皮下、経口、表皮、皮内、筋肉内、動脈内、腹腔内、静脈内注入を介して投与することができる。本組成物は、皮膚または粘膜組織に(例えば経鼻的に、気管内に、腸管内に、舌下に、直腸内にもしくは膣内に)局所的に投与してもよいし、呼吸投与または経肺投与に好適な微細スプレーとして提供してもよい。好ましくは、本組成物は筋肉内投与される。
【0113】
本組成物は、剤形組成物(dosage composition)に適合し、かつ予防的および/または治療的に有効な量で対象に投与することができる。本発明の組成物の投与は、「予防」目的または「治療」目的のいずれのためであってもよい。本明細書中で使用される用語「治療的」または「治療」は、以下のいずれか1つ以上を包含する:感染または再感染の予防;症状の低減または除去;および病原体の低減または完全な除去。治療は、予防的(感染前)に行ってもよいし、治療的(感染後)に行ってもよい。
【0114】
必要な場合、担体の選択は、本組成物の送達経路に応じたものである場合が多い。この発明の範囲内で、任意の好適な投与経路および投与手段のために組成物を製剤化することができる。製薬上許容される担体または希釈剤としては、経口、点眼、直腸、経鼻、局所(口腔および舌下を含む)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、経皮を含む)投与に適した組成物において使用される、製薬上許容される担体または希釈剤が挙げられる。
【0115】
本組成物は、任意の好適な形態で、例えば、液体、固体またはエアロゾルとして投与することができる。例えば、経口製剤は、エマルション剤、シロップ剤もしくは液剤、または活性成分を胃内分解から保護するために腸溶的にコーティングされ得る錠剤もしくはカプセル剤の形態を採ることが可能である。経鼻製剤は、スプレー剤であっても液剤であってよい。経皮製剤は、それらの特定の送達系に適合させることが可能であり、パッチ剤を含み得る。注射用製剤は、蒸留水または別の製薬上許容される溶媒もしくは懸濁剤中の溶液または懸濁液であり得る。
【0116】
免疫原
免疫原は、単独で投与される場合、あるいは好適なアジュバントおよび/または免疫刺激剤と組み合わせて投与される場合に、動物(例えばヒト)において免疫応答を誘導することができる抗原またはアレルゲンである。従って、ヒトまたは動物に対する本医薬組成物の投与は、ヒトまたは動物の身体に、免疫原と、その免疫原に対するヒトまたは動物の身体の免疫応答を刺激し得る免疫刺激剤の両方を提供する。
【0117】
免疫原は、典型的には特定の病態(例えば病原性疾患または新生物)に関連している。このため、本医薬組成物の投与は、その病態に対するヒトまたは動物の身体の免疫応答を誘発または増強することができる。このような場合、本発明の化合物のペプチド部分は、同病態に関連する免疫原以外のペプチドであり得る。例えば、ペプチド部分は、非免疫原性であってもよいし、上記病態に関連していない免疫原であってもよい。あるいは、免疫原は、免疫刺激剤およびベクターに共有結合的に連結しているペプチドであり得る。
【0118】
免疫原は、感染性因子(病原体)(例えば、ウイルス、細菌、マイコバクテリウム、寄生生物もしくは菌類)、自家タンパク質(例えば癌抗原(腫瘍細胞から誘導されるタンパク質))、またはアレルゲンから誘導することができる。
【0119】
従って、本発明は、それを必要とする対象における免疫応答を刺激しおよび/または病原性感染、癌または自己免疫疾患を治療する方法を提供する。対象は、ヒトであっても動物であってもよいが、好ましくはヒトである。動物は、典型的には脊椎動物(例えば有顎脊椎動物)である。
【0120】
ウイルスの例としては、限定するものではないが、動物およびヒトのウイルス、例えば:インフルエンザ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、日本脳炎ウイルス(JEV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ヘルペスウイルス(HSV-1またはHSV-2)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デングウイルス、西ナイルウイルスおよび黄熱病ウイルス、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)が挙げられる。
【0121】
細菌およびマイコバクテリウムの例としては、限定するものではないが、結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis))、レジオネラ菌(Legionella)、リケッチア菌(Rickettsiae)、クラミジア菌(Chlamydiae)、およびリステリア菌(リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes))が挙げられる。
【0122】
寄生生物の例としては、限定するものではないが、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)およびマラリア原虫の科(Plasmodial family)の他の種が挙げられる。
【0123】
菌類の例としては、限定するものではないが、カンジダ菌(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))、クリプトコッカス菌(Cryptococcus)、ロドトルラ菌(Rhodotorula)およびニューモシスティス菌(Pneumocystis)が挙げられる。
【0124】
自家または自己抗原としては、限定するものではないが、癌に関連する以下の抗原、P53、MAGE-A3、NY-ESO-1、SURVIVIN、WT1、HER-2/neu、MUC 1、hTERT、MAGE-1、LAGE-1、PAP、T21、TRP-2、PSA、Livin、HAGE、SSX-1、PRAME、PASD1、IMP-3、SSX-4、CDCA-1および/またはBAGEが挙げられる。
【0125】
アレルゲンとしては、限定するものではないが、ハチに対する重篤な反応に関連するホスホリパーゼA2(API m1)、チリダニ(デルマトファゴイデス・プテロニッシヌス(Dermatophagoides pteronyssinus))に対する反応に関連するDerp-2、Der p 2、Der f、Der p 5およびDer p 7、ゴキブリアレルゲンBla g 2および主要なカバノキ花粉アレルゲンBet v 1が挙げられる。
【0126】
一実施形態において、免疫原は、インフルエンザウイルスから誘導されるペプチドである。インフルエンザペプチド抗原は、インフルエンザA型タンパク質、インフルエンザB型タンパク質またはインフルエンザC型タンパク質に由来する1つ以上のエピトープを含み得る。インフルエンザA型およびB型の両方に由来するインフルエンザウイルスタンパク質の例としては:ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、マトリクス(M1)タンパク質、M2、核タンパク質(NP)、PA、PB1、PB2、NS1またはNS2の任意のこのような組み合わせが挙げられる。インフルエンザペプチド抗原の例は、WO 2009/027688およびWO 2012/090002に示されており、これらのいずれも、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0127】
本明細書において使用される用語「免疫原」はT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCRもしくは抗体)などの免疫学的受容体によって認識される能力を有する分子を指す。免疫原は、少なくとも1つのエピトープ(例えば、T細胞および/またはB細胞エピトープ)を提示するのであれば、天然であっても非天然であってもよい。T細胞エピトープおよびB細胞エピトープは、免疫原の活性部分であり、適応免疫系によって認識されるのはこれらのエピトープである。本ペプチドは、1つ以上のT細胞エピトープ(例えばTヘルパー細胞エピトープおよび/もしくは細胞毒性Tリンパ球(CTL)エピトープなど)、ならびに/または1つ以上のB細胞エピトープ、あるいはT細胞エピトープとB細胞エピトープとの組み合わせ(例えば、MHCクラスIエピトープまたはMHCクラスIIエピトープ)を含み得る。エピトープを同定するための方法は、当技術分野において周知である。エピトープは重複直鎖エピトープであってよく、その結果、ペプチドは密集した多重特異性エピトープのクラスターを含む。
【0128】
本医薬組成物は2つ以上の免疫原を含んでいてよく、または本方法は2つ以上の免疫原の投与を含んでいてよい。免疫原は、同じ病態に関連するものであってもよいし、異なる病態に関連するものであってもよく、同じまたは異なる種類の免疫学的活性を有し得る。例えば、免疫原は、T細胞応答、およびB細胞抗原を刺激することができるペプチド免疫原であり得る。ワクチン設計者であれば、より広い予防効果または免疫治療効果を提供するためには、2つ以上の免疫原が必要とされ得ることを理解するだろう。このような多成分製品は、これらが、適切な免疫応答の誘発により有効である可能性が高いため望ましい。例えば、インフルエンザワクチンの最適な製剤は、異なるインフルエンザタンパク質に由来する多数のペプチドエピトープを含んでいてよく、HBV免疫治療薬の最適な製剤は、異なるHBVタンパク質に由来する多数のエピトープを含んでいてよい。あるいは、様々な病原体に対する免疫を与えるため、製剤に複数のエピトープを組み込むことができる。例えば、呼吸器感染症ワクチンは、インフルエンザウイルスおよび呼吸器合胞体ウイルスに由来するエピトープを含み得る。
【0129】
本発明の医薬組成物は複数の免疫原性ペプチドを含んでいてよく、本発明の方法は、複数の免疫原性ペプチドの投与を含んでいてよい。典型的には、各ペプチドは異なるエピトープを含む。
【0130】
免疫原は、当技術分野で公知の任意の好適な免疫原であり得る。好ましくは、免疫原はペプチド抗原である。ペプチド抗原は、15~60アミノ酸の長さの少なくとも1つのペプチドを含み得る。従って、ペプチドは、典型的には15または20~60アミノ酸、例えば25~50アミノ酸、好ましくは30~40アミノ酸(例えば、31、32、33、34、35、36、37、38または39アミノ酸)の長さを有する。
【0131】
ペプチド抗原は少なくとも1つのエピトープを含んでいなければならないが、付加的アミノ酸を含んでいてもよい。付加的アミノ酸は、ペプチドの製造または製剤化を容易にすることもできるし、ペプチドの安定性を増強することもできる。例えば、ペプチドは、ペプチドの正味正電荷を高めおよび/またはペプチドの疎水性を低下させるため、典型的にはN末端および/またはC末端に1つ以上の付加的アミノ酸を含み得る。ペプチドが7以上の等電点を有するように正味正電荷を増加させることができる。
【0132】
ペプチド抗原は、Nおよび/またはC末端に付加された1つ以上(例えば2つまたは3つ)の正電荷アミノ酸(アルギニンおよび/またはリシン)を有し得る。例えば、3つのリシン残基を1つ以上のペプチドのNおよび/またはC末端に付加することができる。陽性アミノ酸は、典型的には、65%超の総疎水性、ゼロ未満の正味電荷を有し、および/または疎水性アミノ酸のクラスターを含むペプチドの末端(1つまたは複数)に付加される。
【0133】
ペプチド抗原は、短い最小エピトープを包含する1つ以上の長い(約35マー)ペプチドを含み得る。これらのペプチドは、典型的には、最小エピトープからなるペプチドより有効な免疫原である。ペプチド抗原は、エクソペプチダーゼ媒介性分解からペプチドを保護し得る三次構造を有する可能性があり、またHLA上に直接提示されるには長すぎる可能性があるため、プロフェッショナルAPC(抗原提示細胞)により内在化され、提示のためにプロセシングされなければならない。ペプチド抗原は、それぞれ少なくとも1つのCD8+T細胞(HLAクラスI)および少なくとも1つのCD4+T細胞(HLAクラスII)エピトープを含み得る。
【0134】
短ペプチドとは異なり、このような長ペプチドは、マウスにおいて反復ワクチン接種の際に劇的にブーストされるメモリーCD8+T細胞応答を誘導し、また短ペプチドによるワクチン接種と比較して実質的に改善された腫瘍抑制を誘導する。長ペプチド中のエピトープに対して反応性のCD4+ヘルパーT細胞の誘導は、長期T細胞記憶にも必要である。ワクチン、および好ましくはワクチン中の各ペプチドは、様々なHLAバックグラウンドを有する個体においてCD8+およびCD4+T細胞応答を活性化させるエピトープを含む。このようにして、本発明のワクチンは、広範な集団範囲を有し、腫瘍抗原に対して永続的な免疫応答を誘導する。
【0135】
ペプチド抗原は、無差別Tヘルパーエピトープが(場合によりポリペプチドリンカーまたはスペーサーを介して)抗原性コンセンサス配列に共有結合的に連結している融合ペプチドを含み得る。例として、無差別Tヘルパーエピトープは、PADREペプチド、破傷風トキソイドペプチド(830-843)またはインフルエンザヘマグルチニン、HA(307-319)であり得る。
【0136】
免疫原は、さらなる非免疫原性部分を含み得る。例えば、免疫原は(ペプチド性抗原部分に基づくか、非ペプチド性抗原部分に基づくかに関わらず)、1つ以上の非ペプチド部分をさらに含み得る。任意のペプチド部分のアミノ酸残基は(免疫原性であるか免疫原性でないかに関わらず)、免疫原の物理化学的特性を改変するように修飾することができる。特に、末端アミノ酸が付加または修飾され得る。所望のペプチドがぺプチダーゼによる切断に対して感受性である場合、正常なペプチド結合を、切断不可能なペプチドミメティックで置換することができる。このような結合および合成方法は、当技術分野において周知である。
【0137】
免疫原は、ベクター部分(例えば、本発明の化合物について上記されるベクター部分)を含み得る。特に、免疫原は、上記のフルオロカーボンベクター部分を有する1つ以上のペプチド免疫原を含み得る。フルオロカーボンベクター部分は、結果として得られた化合物が依然として上記ペプチドを抗原提示細胞に送達し得るように修飾することができる。このようにして、例えば、多数のフッ素原子を他のハロゲン原子(例えば塩素、臭素またはヨウ素)と置換することができる。さらに、多数のフッ素原子をメチル基と置換し、さらに本明細書中に記載される分子の特性を保持したままにすることが可能である。
【0138】
本医薬組成物が、連続相に懸濁された不連続相を含む場合、免疫原を不連続相に局在化させることができる。例えば、免疫原は、本発明の化合物について上記される様式と類似の様式で不連続相の表面に付着しているか、または不連続相に組み込まれたベクター部分を含み得る。
【0139】
各ペプチドは、一般的なフルオロカーボンベクター部分に連結することができる。より実際的には、本発明の製剤中にフルオロカーボン連結ペプチドの組み合わせ(異なるペプチドがフルオロカーボン鎖に独立して連結されている)が存在し得る。フルオロカーボン連結ペプチドの混合物において、各ペプチドは、単一構造の1つのフルオロカーボン鎖に連結されていてよい。あるいは、上記混合物は、異なる構造を有するフルオロカーボン鎖(複数)に連結されたペプチドを含んでいてもよい。
【0140】
好ましくは、免疫原がフルオロカーボン連結ペプチドである場合、免疫原に対する免疫応答を増強するために使用される免疫刺激剤は、フルオロカーボンベクターも含む。
【0141】
本医薬組成物中の化合物および免疫原の濃度は、各例の不連続相が、少なくとも1つの本発明の化合物および少なくとも1つの免疫原と会合する濃度であっり得る。このようにして、本化合物と免疫原とをヒトまたは動物に一緒に送達し、投与後、それらの不連続相との相互会合により、ヒトまたは動物の身体中で接近して維持することができる。同時に、免疫原と化合物との間には共有結合が存在しないため、各レシピエントまたはレシピエント群の要求に従って、免疫原と免疫刺激剤との様々な相対量を有する医薬組成物を製剤化することが可能であり得る。
【0142】
調製
本発明の医薬組成物物は、当技術分野で公知の任意の標準的な様式で調製することができる。例えば、本医薬組成物の成分を可溶化して成分を分散し、透明な均一溶液を形成することができる。この溶液を、例えば濾過により滅菌し、その後乾燥させてもよい。
【0143】
「可溶化」という用語は、本明細書中、滅菌濾過の際に材料を損失しない視覚的に透明な溶液を形成するための、溶媒における本化合物、および場合により本組成物の他の成分の分散を意味するために用いられる。「分散」は、粒子を破壊して溶解性を得るための、本化合物および場合により本組成物の他の成分の溶解を意味する。
【0144】
上記溶液中の本化合物の濃度は、典型的には約0.1mM~約10mM(例えば、約0.5mM、1mM、2mM、2.5mMまたは5mM)である。好適な濃度の例は、約10mg/mLである。
【0145】
本医薬組成物のための投入成分を、任意の分散した会合体と共に所望の比に均一にブレンドし、滅菌して投与に適した形式で提供することができる。このような例は、可溶化を容易にするための、ブレンディング段階後または希釈段階後のボルテックス処理および/または超音波処理の導入を含み得る。製造プロセスフローの他の並べ替えは、上記プロセスの初期段階で実施される滅菌濾過、または、液剤での最終的な提供を可能にするための凍結乾燥の省略を含み得る。
【0146】
上記ブレンド中で本化合物を分散させるために使用し得る溶媒の例としては、リン酸塩バッファー生理食塩水(PBS)、プロパン-2-オール、tert-ブタノール、アセトン、酢酸および他の有機溶媒が挙げられる。
【0147】
製造プロセスにおいて2種以上の溶媒が使用される場合、使用される各溶媒は、典型的には:上記成分を可溶化することが可能であり、比較的高い濃度(例えば10ミリモル以下(例えば2ミリモル以下))で可溶化するために用いられ;凍結乾燥前の水での希釈を容易にするために水混和性であり;製造プロセス中で使用し得る凍結乾燥安定剤(例えばマンニトール)に適合し;医薬品規制当局に許容される安全性プロファイルを有し、例えば、ICH Q3Cの要件(不純物:残留溶媒に関するガイドラインの注(Note for Guidance on Impurities: Residual Solvent))およびUSP残留溶媒<467>によって規定されるクラスIII溶媒の要件(最終製品中50mg/日の残留溶媒限界値、または5000ppmすなわち0.5%未満)を満たし;凍結乾燥しやすく、すなわち、凍結乾燥の際に安全レベルまで除去されるのに十分に揮発性であり;滅菌グレード濾過の際の収率損失が最小化されるように、再現性があり且つ均一な様式で成分分子を効率的に分散させることが可能であり;本化合物または成分と反応することができないか、または本化合物または成分の分解を促進することができず;および/または医薬製品製造において日常的に使用される材料(容器/濾過膜/配管等)に適合性がある。
【0148】
本化合物と別の成分(例えば免疫原)を、例えば異なる溶媒中で、または異なる酢酸濃度で別々に可溶化させる場合、可溶化化合物と他の可溶化成分とをブレンドして混合物を創出する。
【0149】
本化合物は、典型的には乾燥させる。20アミノ酸より短く、および/または50%未満の疎水性残基を有するペプチド部分を含む化合物は、一般的に、酢酸以外の溶媒中で可溶化することができる。酢酸は、典型的には、ペプチド部分が20個超のアミノ酸を有し、および/または50%超の疎水性残基を有する場合に使用される。
【0150】
可溶化およびブレンディングの後、本化合物および場合により他の成分の溶液を希釈することができる。例えば、上記のブレンドを水中で希釈することができる。
【0151】
本化合物を含む溶液は、好ましくは滅菌される。滅菌は、製剤が全身性使用に意図される場合に特に好ましい。UV滅菌またはフィルター滅菌などの任意の好適な滅菌方法を使用することができる。好ましくは、フィルター滅菌が使用される。滅菌濾過は、0.45μmフィルターとその後の0.22μm滅菌グレードフィルタートレインを含み得る。滅菌は、任意の賦形剤および/またはアジュバントの添加の前または後に行われる。
【0152】
本医薬組成物は、乾燥(例えば凍結乾燥)形態であり得る。本発明の組成物は、水溶液、例えば、凍結乾燥物または他の乾燥製剤を水性媒体に溶解することによって形成される水溶液であり得る。この水溶液は、典型的にはpH中性である。
【0153】
本製剤の乾燥は、長期保存を容易にする。任意の好適な乾燥方法を使用することができる。凍結乾燥が好ましいが、他の好適な乾燥方法(バキュームドライ、スプレードライ、スプレーフリーズドライまたは流動床ドライ)を使用してもよい。乾燥手順は、本発明の化合物が組み込まれる非晶質ケーキの形成を生じ得る。
【0154】
長期保存のため、滅菌組成物を凍結乾燥させてもよい。凍結乾燥は、フリーズドライによって達成することができる。フリーズドライは、典型的には、凍結ステップと、その後の乾燥ステップとを含む。例えば、本組成物成分混合物を、-80℃で2時間凍らせ、さらにフリーズドライ機で24時間フリーズドライすることができる。
【0155】
当業者に知られているとおり、同じ結果として得られる製品特性を得るため、プロセスフローの変更が許容される;すなわち、投入成分を任意の分散した会合体と共に所望の比に均一にブレンドし、滅菌して投与に適した形式で提供する。このような例は、可溶化を容易にするための、ブレンディング段階後または希釈段階後のボルテックス処理および/または超音波処理の導入を含み得る。製造プロセスフローの他の並べ替えは、上記プロセスの初期段階で実施される滅菌濾過、または液剤での最終的な提供を可能とするための凍結乾燥の省略を含み得る。
【0156】
本発明の製薬上許容される組成物は、固体組成物であってもよい。本組成物は、乾燥粉末形態で得ることができる。凍結乾燥によって生じるケーキを、粉砕して粉末形態にすることができる。このようにして、本発明による固体組成物は、自由流動粒子の形態を採り得る。上記の固体組成物は、典型的には、密封されたバイアル、アンプルまたはシリンジ中の粉末として提供される。吸入用の場合、粉末をドライパウダー吸入器で提供することができる。固体マトリクスは、代替的にパッチ剤として提供することもできる。粉末を圧縮して錠剤形態にしてもよい。
【0157】
乾燥(例えば、凍結乾燥)組成物は、投与前に再構成することができる。本明細書中で使用される用語「再構成」は、使用前の乾燥ワクチン製品の溶解を意味すると理解されたい。乾燥(例えば凍結乾燥)後、本化合物は、好ましくは再構成されて等張性、pH中性、均一懸濁液を形成する。製剤は、典型的には、例えば注射用水、ヒスチジンバッファー溶液(例えば28mM L-ヒスチジンバッファー)、重炭酸ナトリウム、トリス-HClまたはリン酸塩バッファー生理食塩水(PBS)を添加することにより、水相中で再構成される。再構成製剤は、典型的には、滅菌容器(例えばバイアル、シリンジ、または任意の他の保存または投与に適した形式)中に分注される。
【0158】
本組成物は、使用前に滅菌バイアルまたはシリンジなどの容器中に保存することができる。
【0159】
本組成物がフルオロカーボンを含む場合、フルオロカーボン含有化合物は、多分子ミセル構造で存在し得る。フルオロカーボン含有化合物は、本発明の化合物(例えばフルオロカーボンベースのベクター部分を有する)、もしくはフルオロカーボン含有免疫原、またはその両方であり得る。ミセル形成を促進するため、これらの成分を酢酸中で可溶化することができる。特に、本化合物がフルオロカーボン部分を含むベクターを含む場合の、(例えば関連)フルオロカーボンベクター-ペプチドコンジュゲートを可溶化するためのアプローチは、WO 2012/090002に記載されている。
【実施例
【0160】
以下の実施例は、本発明を説明する。
【0161】
実施例1
免疫刺激剤は、スキーム1の反応スキームに従って調製される:
【化6】
【0162】
次いで、スペーサー部分を、スキーム2に従って免疫刺激部分に結合させる:
【化7】
【0163】
スキーム3:
【化8】
に示されるとおり、固相ペプチド合成を用いてペプチド部分を調製し、N末端をフルオロカーボンベクター部分で官能化し、C末端を上記の免疫刺激剤-スペーサー部分で官能化し、その後樹脂から切断して本発明の化合物を与える。
【0164】
本化合物を、フルオロカーボンベクター部分が多分子ミセル様構造へと自己集合するように酢酸中で可溶化する。この溶液を水で希釈し、滅菌のため濾過し、その後凍結乾燥してドライパウダーを与える。
【0165】
実施例2
材料および方法
免疫刺激剤
化合物「R848」は、以下の構造:
【化9】
を有する1-[4-アミノ-2-(エトキシメチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-2-メチル-2-プロパノール, HClである。
【0166】
以下の化合物において、「FA1」はC8F17(CH2)2CO-であり、「Ac」=CH3CO-、「PEG」は-CO((CH2)2O)3NH-であり、また「FIM」は1-[4-アミノ-2(エトキシメチル)1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-プロパンアミノ-ジグリコリル-である。
【0167】
化合物「PEG-FIM-01」は、以下の構造:
【化10】
を有するK(Ac)RRLLHAHLALHAHLLRRLK(PEG-FIM)-NH2である。
【0168】
化合物「FA-PEG-FIM-01」は、以下の構造:
【化11】
を有するK(FA1)RRLLHAHLALHAHLLRRLK(PEG-FIM)-NH2である。
【0169】
化合物「FA-FIM-01」は、以下の構造:
【化12】
を有するK(FA1)RRLLHAHLALHAHLLRRLK(FIM)-NH2である。
【0170】
化合物「RLK-PEG-FIM-01」は、以下の構造:
【化13】
を有するRLK(PEG-FIM)-NH2である。
【0171】
ヘマグルチニン抗原
昆虫細胞中で産生された組み換えヘマグルチニン抗原HA(インフルエンザA/カリフォルニア/07/2009 H1N1配列)を、Protein Sciences Corporation社から得た(Protein Sciences社、Cat# IT-003-SW12DTMp)。この抗原は90%超の純度を有し、無菌性および発熱性について試験される。上記のHA抗原を、注射前に28mMヒスチジン中で再構成した。
【0172】
FP-02.2ワクチン組成物および製造
FP-02.2は、9つの、32~41アミノ酸にわたる長いペプチドからなるワクチンである(表3)。各ペプチドを、Fmoc(フルオレニルメチルオキシカルボニルクロリド)固相ペプチド合成を用いて製造した。樹脂上のペプチド伸長の完了後、フルオロカーボンベクターを付加的N末端リシンのイプシロン側鎖に結合した。切断および脱保護の後、各ペプチドをRP-HPLCで精製した。アセテート交換後、各ペプチドをフリーズドライし、-20℃で保存した。全てのペプチドを純度>95%で作製した。FP-02.2の製造のため、各ペプチドを水+酢酸中に再懸濁した。ブレンディングおよびマンニトール/水溶液による希釈後、0.22μmフィルターを用いて製剤を濾過した。濾過した溶液を、フリーズドライ前にガラスバイアルに分割した。FP-02.2ワクチンを、(別段の規定がない限り)注射前に28mM L-ヒスチジン中で再構成した。
【表3】
【0173】
in vitro再刺激に使用したペプチド抗原
表4に記載される各ペプチドを、Fmoc固相化学を用いて合成した。樹脂から切断して脱保護した後、RP-HPLCによりペプチド精製を実施した。アセテート交換後、各ペプチドをフリーズドライし、-20℃で保存した。全てのペプチドを純度>90%で作製した。
【表4】
【0174】
動物免疫化、血液サンプリングおよび脾臓回収
雌BALB/cマウスに、25mcg/ペプチドFP-02.2もしくは12.5mcgの組み換えタンパク質±試験アジュバントを含む50μLワクチン、またはビヒクルのみを、後脚の内側に筋肉内接種した。血清サイトカイン分析のため、接種の1時間後または4時間後に尾静脈穿刺または心臓穿刺により血液サンプルを採取し、その後頸椎脱臼させた。凝固した血液サンプルを14000rpmで10分間遠心分離することによって血清を単離し、-20℃で保存した。免疫原性分析のため、最後の接種の11日後または14日後にマウスを選別し、脾臓を回収して単一脾細胞懸濁液を107細胞/mLの密度に調製した。全ての動物手順は、英国内務省規則(Home Office regulations)に従って実施した。
【0175】
IFN-ガンマELISpotアッセイ
5x105脾細胞を、10mcgの各FP-02.2成分ペプチドまたは5mcgのHA抗原を用いて、IFN-γ ELISpotアッセイ(BD Biosciences社)において、37℃/5% CO2にて18時間in vitroで再刺激した。IFN-γスポット形成細胞(SFC)の数を、自動プレート計数システム(CTL Europe社)を用いて計数し、SFC/106脾細胞に対して正規化した。
【0176】
抗体力価
血漿HA特異的総IgG、IgG1またはIgG2aを、ELISAにより測定した。マキシソルブ(nunc)プレートを、0.22mg/mLのA/California/7/2009由来のrHA(Protein Sciences社、Cat# IT-003-SW12DTMp)で、4℃にて一晩コーティングした。プレートを、2% FCS/PBSで、室温にて2時間ブロックした。個々のマウス血漿について、1:100の希釈から開始して、1%BSA/PBS中で血漿の7倍1:10連続希釈を実施した。希釈した血漿を室温で4時間インキュベートした。プレートを洗浄し、1:4000希釈のヤギ抗マウスIgG1-HRPもしくはIgG2a-HRP(いずれもAbD Serotech社)またはIgG-HRP(KPL社)を室温で1.5時間適用した。プレートを洗浄し、100mLの基質溶液を加えた(1ステップ 超TMB-ELISA、Thermo Scientific社)。3分後、50mLの2M硫酸を加え、450nmで吸光度を読みとった。
【0177】
サイトメトリックビーズアレイ(Cytometric Bead Array)および血清サンプルのサイトカイン分析のためのELISA
血清サンプルを、PBS中で1:4に希釈し、可溶性サイトカイン濃度(IFN-ガンマ、TNF-アルファ、MCP-1、IL-6およびIL-10)を、サイトメトリックビーズアレイ(BD Biosciences社)を用いて測定した。IFN-アルファをELISAによって測定した(eBioscience社、Platinum ELISA)。
【0178】
ヒトTLR7およびTLR8レポーター遺伝子アッセイ
異なるTLR-7またはTLR-8アゴニストの活性を、ヒトTLR-特異的HEK-Blue(商標)レポーター遺伝子アッセイ(Invivogen社、フランス)を用いて試験した。HEK-Blue(商標)-hTLR7細胞およびHEK-Blue(商標)-hTLR8細胞を、ヒトTLR7遺伝子またはヒトTLR8遺伝子と誘導性SEAP(分泌型アルカリホスファターゼ)レポーター遺伝子の、HEK293細胞への共トランスフェクションによって得た。SEAP遺伝子は、5つのNF-カッパB結合部位およびAP-1-結合部位に融合したIFN-β最小プロモーターの制御下に配置される。TLRリガンドによる刺激は、SEAPの産生を誘導するNF-カッパBおよびAP-1を活性化させる。細胞を、ブラスチシジン、ゼオシンおよびノルモシンを含むHEK-Blue(商標)選択培地中で維持した。HEK-Blue(商標)細胞を、96ウェルプレート中で、200μlの体積で105細胞/mLの密度でインキュベートした。HEK-Blue(商標)検出培地の存在下、SEAPの分泌(NF-カッパB誘導に比例する)を620nMで定量した。
【0179】
結果
様々な免疫刺激剤-ペプチドコンジュゲートと組み合わせた組み換えタンパク質の免疫原性の改善
雌BALB/cマウス(1群当たりn = 6または7)に、12.5mcg HA単独(群1)を2回(2週間離して)、またはさらに13.2μgのPEG-FIM-01(群2)もしくは15μgのPEG-FIM-01(群3)(等モル用量に対応)を接種した。接種の11日後、脾細胞を回収し、IFN-ガンマELISpotアッセイにより免疫応答を測定する前に、HA抗原によりin vitroで再刺激した。結果は図1に示される。
【0180】
組み換えヘマグルチニン(インフルエンザ-A H1N1由来)とFA-PEG-FIM-01またはPEG-FIM-01との共製剤化は、組み換えヘマグルチニン単独と比較して、免疫原性をそれぞれ25.2倍および15.3倍と有意に増強した[P値:p = 0.0316(群2:群1);p < 0.0001(群3:群1)]。この結果は、ペプチド部分に共有結合的に連結しているイミダゾキノリン部分の強い免疫刺激特性を示す。さらに、免疫刺激ペプチドコンジュゲート(FA-PEG-FIM-01)のN末端上の疎水性ベクター(FA1)の存在は、PEG-FIM-01と比較して、細胞媒介性免疫応答の71%の改善をもたらした。
【0181】
血漿HA特異的総IgG、IgG1またはIgG2aも測定した(図2)。結果は、FA-PEG-FIM-01またはPEG-FIM-01と共に投与された場合の、HA抗原に対する体液性応答の有意な改善を示した。
【0182】
いずれの免疫刺激ペプチドコンジュゲートも、HA抗原に結合するとは予測されない。免疫刺激ペプチドコンジュゲートと抗原を共製剤化したとき、外観の変化は観察されなかった。このことは、Wille-Reeceら, Proc Natl Acad Sci U S A. 2005年10月18日;102(42):15190-4により先に仮定されたとおり、両免疫刺激コンジュゲートが、免疫刺激剤と抗原との間の物理的相互作用の不存在下で免疫応答を改善することを示す。
【0183】
様々な免疫刺激ペプチドコンジュゲートと組み合わせたペプチドワクチンの免疫原性の改善
雌BALB/cマウス(1群当たりn = 6)に、FP-02.2(25mcg/ペプチド)単独(群1)、FP-02.2(25mcg/ペプチド) + FA-FIM-01(5mcg)(群2)、FP-02.2(25mcg/ペプチド) + FA-PEG-FIM-01(5mcg)(群3)を、単一機会で接種した。接種の14日後、脾細胞を回収し、IFN-ガンマELISpotアッセイにより免疫応答を測定する前に、FP-02.2ペプチド抗原によりin vitroで再刺激した。結果は図3に示される。
【0184】
FP-02.2と組み合わせたFA-PIM-01およびFA-PEG-PIM-01はいずれも、FP-02.2単独に対して、応答の大きさをそれぞれ2.4倍および3.1倍高めた。FA-FIM-01と比較して、FA-PEG-FIM-01構築物中のペグ化部分の存在は、全免疫応答をさらに26%増強した。より具体的には、ペグ化部分の存在は、ペプチドP113、P151、P376、P856およびP1266(K)のそれぞれについて、免疫応答を40、9、117、41および60%増加させた。
【0185】
様々な用量の免疫刺激剤-ペプチドコンジュゲートの存在下のワクチン免疫原性の改善
雌BALB/cマウス(1群当たりn = 6)に、FP-02.2(25mcg/ペプチド)単独(群1)を、または0.5、1.58、5、15.8および50mcgの様々な用量のFA-PEG-FIM-01と組み合わせて(それぞれ群2、3、4、5および6)、単一機会で接種した。接種の14日後、脾細胞を回収し、IFN-ガンマELISpotアッセイにより免疫応答を測定する前に、FP-02.2ペプチド抗原によりin vitroで再刺激した。結果は図4に示される。
【0186】
様々な用量のFA-PEG-FIM-01の、FP-02.2への添加は、FP-02.2単独と比較して、全ワクチン免疫原性を有意に増加させた。[P値:p = 0.0191 (群2:群1);p = 0.0409 (群3:群1);p = 0.004 (群4:群1);p < 0.0001 (群5:群1);p = 0.0004 (群6:群1)]。応答の大きさは、15.8μg FA-PEG-PIM-01においてピークに達した。この15.8μg FA-PEG-PIM-01は、非アジュバント化FP-02.2に対して、応答の大きさの全5.9倍の増加を与えた。また免疫刺激剤の存在は、FP02.2単独における3つの免疫原性ペプチドからより高い用量のFA-PEG-PIM-01における6つの免疫原性ペプチドまで、応答の幅も増加させた。
【0187】
遊離免疫刺激剤R848と比較した、免疫刺激ペプチドコンジュゲートの優れたアジュバント活性
雌BALB/cマウス(1群当たりn = 4)に、FP-02.2 25mcg/ペプチド単独(群1)を、またはFA-PEG-FIM-01 15mcg(群2)、R848 1.5mcg(群3)、R848 10mcg(群4)およびR848 50mcg(群5)と組み合わせて、単一機会で接種した。接種の14日後、脾細胞を回収し、IFN-ガンマELISpotアッセイにより免疫応答を測定する前に、FP-02.2ペプチド抗原によりin vitroで再刺激した。結果は図5に示される。
【0188】
驚くべきことに、R848とは対照的に、FP-02.2へのFA-PEG-FIM-01の付加は、FP-02.2単独と比較して全ワクチン免疫原性を有意に増加させた。遊離免疫刺激剤に対する免疫刺激ペプチドコンジュゲートの優位性は、等モル用量で観察されたが、より高い用量でも観察された。
【0189】
免疫刺激ペプチドコンジュゲートのワクチンアジュバント活性においてペプチド部分が果たす重要な役割
雌BALB/cマウス(1群当たりn = 8)に、FP-02.2 25mcg/ペプチド単独(対照群)を、またはFA-PEG-FIM-01 15mcg(群1)、PEG-FIM-01 13.15mcg(群2)、(3) RLK-PEG-FIM-01 4.3mcg(群3)または(4) R848 1.5mcg(群4)(等モル用量に対応)と組み合わせて、単一機会で接種した。結果は図6に示される。
【0190】
FA-PEG-PIM-01およびPEG-FIM-01はいずれも、-PEG-PIM-01およびPEG-FIM-01と比較して、FP-02.2に対する応答の大きさを高める。このことは、免疫刺激ペプチドコンジュゲートのアジュバント活性においてペプチド部分が果たす重要な役割を証明する。図6において観察されるとおり、免疫刺激ペプチドコンジュゲート(FA-PEG-FIM-01)のN末端上の疎水性ベクター(FA1)の存在は、PEG-FIM-01と比較して、細胞媒介性免疫応答の改善をもたらした。
【0191】
遊離免疫刺激剤対応物R848とは対照的な、免疫刺激ペプチドコンジュゲートによる全身性炎症応答の不存在
雌BALB/cマウス(1群当たりn = 4)に、(1) 28mM L-ヒスチジンビヒクルのみ、(2) 28mM L-ヒスチジン中R848(1.5mcg)、(3) 28mM L-ヒスチジン中FA-PEG-FIM-01(15mcg)、(4) リン酸塩10mM中FA-PEG-FIM-01(15mcg)(1群当たりn = 4)(等モル用量に対応)を、単一機会で注射した。血液サンプルを1時間および4時間で採取した。血清サイトカイン濃度を、サイトメトリックビーズアレイ(MCP-1、IL-6、TNF-アルファ、IFN-ガンマ、IL-10およびIL-12p70)またはELISA(IFN-アルファ)を用いて測定した。結果は図7に示される。
【0192】
驚くべきことに、炎症性サイトカインは、R848の接種を受けた動物において、1時間または4時間においてのみ観察された。IFN-アルファ(8851±2641pg/mL)、IL-6(15±7pg/mL)およびTNF-α(9±10pg/mL)産生は1時間でピークに達したが、MCP-1(4749±2083pg/mL)およびIFN-ガンマ(20±13pg/mL)産生は4時間でピークに達した。IL-10およびIL-12p70は、いずれの時点でも、いずれの群においても検出されなかった。R848による炎症性サイトカインの誘導は、小分子の迅速な全身性拡散を反映する。
【0193】
免疫刺激ペプチドコンジュゲートの存在下のワクチン誘導性CTL応答の改善
雌BALB/cマウス(1群当たりn = 8)に、FP-02.2 25mcg/ペプチド単独を、またはFA-PEG-FIM-01 15mcgと組み合わせて、単一機会で接種した。接種の14日後、脾細胞を回収し、IFN-ガンマELISpotアッセイにより免疫応答を測定する前に、CTLエピトープ151によりin vitroで再刺激した。結果は図8に示される。結果は、FA-PEG-PIM-01の、FP-02.2によって誘導されるCTL応答を増強する能力を示す。
【0194】
TLR-7およびTLR-8に対する免疫刺激ペプチドコンジュゲートの特異性
FA-PEG-FIM-01、FA-FIM-01、RLK-PEG-FIM-01およびPEG-FIM-01を、それらがTLR-7を発現するHEK-293細胞およびTLR-8を発現するHEK-293細胞においてNF-カッパB活性化を誘導する能力について、R848と比較して試験した(図9参照)。予想どおり、R848はいずれの細胞株においても高活性であった。FA-PEG-FIM-01、FA-FIM-01、RLK-PEG-FIM-01およびPEG-FIM-01もまた、TLR-7およびTLR-8細胞株において活性であったが、R848と比較するとかなり程度が低かった。これらの結果は、ペプチドコンジュゲートにより、R848と比較して実質的に改善されたin vivoアジュバント活性が得られたことを示した上記のin vivoアジュバント活性データの観点からは、驚くべきことであった。
【0195】
結論
この実施例は、免疫刺激剤-ペプチドコンジュゲートのアジュバント活性が、ペプチドまたはタンパク質ベースのワクチンに対する免疫応答を有意に増強し得ることを示す。
【0196】
この効果は、免疫刺激剤-ペプチドコンジュゲートと抗原との間の物理的相互作用の不存在下で達成される。
【0197】
本実施例はまた、免疫刺激剤-ペプチドコンジュゲートのアジュバント活性が、主にペプチド部分全体の存在によって駆動されることも示す。
【0198】
このアジュバント活性は、疎水性ベクターがペプチドの末端に結合している場合、および/またはPEGスペーサーがペプチドと免疫刺激部分との間に導入されている場合にさらに増強され得る。
【0199】
驚くべきことに、免疫刺激剤-ペプチドコンジュゲートは、非アジュバント活性特性に対してほとんど何も提供しない遊離小免疫刺激分子(R848)よりも有意に優れている。
【0200】
さらに、免疫刺激剤-ペプチドコンジュゲートは、遊離小免疫刺激分子(R848)とは対照的に、全身性炎症性サイトカインの誘導を促進しない。小さな免疫刺激剤による全身性炎症性サイトカインの誘導は、ヒトにおける重篤な有害事象に関連していた。
【0201】
免疫刺激剤-ペプチドコンジュゲートに組み込むために選択されるペプチド部分は、投与部位における構築物の保持を支援する。この効果は、再構成条件と比較して、増加pHおよび/またはイオン強度条件下で会合体の形成を駆動するペプチド部分の物理化学的特性によって提供され得る。
【0202】
本免疫刺激剤-ペプチドコンジュゲートに関連するアジュバント活性の改善および全身性炎症応答の欠如は、ワクチンアジュバントとしてのみならず、局所的に作用する免疫調節因子(腫瘍内投与、肺投与、鼻腔内投与または膀胱内投与を通じて送達される)としての、動物およびヒトにおけるそれらの使用を支援する。
【0203】
ペプチド部分の物理化学的特性(疎水性、電荷)の結果として、免疫刺激剤-ペプチドコンジュゲートは、再構成条件において優れた溶解性を有する。
【0204】
実施例3 - pH変化およびイオン強度変化の結果として、ペプチドの一次配列が会合体の形成に及ぼす影響
材料および方法
ペプチドおよびペプチドコンジュゲート
この実施例において使用される化合物は、以下の表5に示される。ペプチド16および16′は、実施例2のコンジュゲートに組み込まれるペプチドに対応する。ペプチド6、8および10は、75%以上のアミノ酸残基が疎水性であるアミノ酸配列を有する。
【表5】
【0205】
全てのペプチドを、固相合成(Fmoc化学)を用いて製造し、RP-HPLCで精製した。ペプチドは、TFAにより対イオンとして生成した。平均純度は97%(92.3~99.5%の範囲)であった。全てのペプチドについてアミノ酸分析を実施し、その結果から正味質量を計算した。全てのペプチドを-20℃で保存した。
【0206】
ペプチド溶液の調製
全ての溶液およびサンプルを、層流フードキャビネット中で調製した。水、28mM L-ヒスチジンバッファー(HIST)、0.9%塩化ナトリウム(NaCl)、28mM L-ヒスチジン中0.9%塩化ナトリウム(NaCl/HIST)および1X リン酸塩バッファー生理食塩水(PBS)を、分析の前日に調製した。水溶液を、0.22mcmフィルターを用いて2回濾過し、30分間超音波処理して室温で保持した。ペプチド溶液の調製に使用した全てのホウケイ酸ガラス容器は、濾過水で3回洗浄した。ペプチドを様々な水溶液で再懸濁して2mg正味質量/mlの濃度を得て、30秒ボルテックスした。全てのペプチド溶液から得たサンプルについて、pHを測定した。ペプチド/水溶液のpHは3.1~4.1であった。様々なペプチド/28mM L-ヒスチジン溶液のpHは5.9~6.4であった。ペプチド/0.9%塩化ナトリウム溶液のpHは3.3~4.2であった。ペプチド/28mM L-ヒスチジン中0.9%塩化ナトリウム溶液のpHは5.9~6.3であった。ペプチド/PBS溶液のpHは6.9~7.5であった。ペプチド溶液を室温で30分間平衡化し、不溶性会合体の存在を目視で確認した。視覚的に透明なペプチド溶液を、滅菌0.45mcm PVDFフィルターを用いて濾過した(ファーストドロップは廃棄した)。150mcLのペプチド溶液を、個別に包んだ使い捨てマイクロキュベット(ウルトラマイクロz 8.5mm、Brandtech社、ロット412806)に注意深く送り、蓋をして室温で30分間放置した。
【0207】
粒径測定(動的光散乱)
0.6nm~6ミクロンの粒子の測定を可能とするZetasizer Nano S (Malvern Instruments社、イギリス)を用いて、粒径をモニターした。測定は、20 +/- 0.1°Cで行った。Dispersion Technology Software (Malvem Instruments社、イギリス)を用いて分析を実施した。平衡化時間は2分に設定した。レーザー減衰は、Zetasizer Nano Sにより自動的に設定した。相関時間は1ラン当たり10秒をベースとし、サンプルの性質に応じて1測定当たり合計10~40ラン行った。測定は3回まで繰り返した。キャリブレーションは、60nMキャリブレーションラテックスビーズおよび2%ウシ血清アルブミン/PBS溶液を用いて行った。粒径測定は、優れた明らかな溶解性を有するペプチド溶液についてのみ試験した。目視可能な不溶性会合体の存在を示すサンプルは、INSとして示される。測定可能な粒子を有さないサンプルは、0(ゼロ)として示される。
【0208】
結果
粒径測定の結果は、表6に示される。疎水性>75%を有する全てのペプチド(ペプチド6、8および10)は、疎水性度>75%を有する他の全てのペプチドとは対照的に、水、28mM L-ヒスチジンおよび0.9%NaClを含む5種の異なる水溶液の全てにおいて不溶性であることが見出された。
【0209】
ペプチド1~5、7、9および11~19は、疎水性度<75%、等電点>5、ならびに水、28mM L-ヒスチジンおよび究極的には増加した比較的高いイオン強度および/またはpHを有する他の水溶液中で明らかな溶解性を有していた。
【表6】
【0210】
予想どおり、ペプチド16、ペプチド16′および免疫刺激ペプチド構築物PEG-FIM-01およびFA-PEG-FIM-01(いずれもペプチド16またはペプチド16′を含む)は、この粒径アッセイにおいて同様に挙動し、水、28mM L-ヒスチジンおよび0.9%NaCl中で明らかな溶解性を示し、28mM L-ヒスチジン/NaClまたはPBS中で比較的大きな粒子または不溶性会合体を形成した。
【0211】
実施例2において、PEG-FIM-01およびFA-PEG-FIM-01が、全身性炎症応答の不存在下でペプチドまたは組み換え抗原ワクチンと組み合わせた場合に、遊離小免疫刺激剤とは対照的に、生物学的効果(特に抗体またはT細胞応答の改善を促進する能力)を発揮したことが示された。実施例3は、上記の表5に示される他の試験したペプチドから誘導される免疫刺激ペプチドコンジュゲートが、ペプチド16から誘導されるPEG-FIM-01と同様の生物学的効果を有することを示唆している。
【0212】
正電荷残基(R、KおよびH)は、それらの各pKaより低いpHでは親水性であり、ペプチド配列におけるそれらの位置および他のアミノ酸の寄与に応じてペプチド溶解性に寄与し得る。この実施例は、N末端側およびC末端側に存在する二塩基配列(RR)が、ペプチドの溶解性に寄与することを示す。例えば、ペプチド11、13および15における1位および17位のアルギニン(R)の、ロイシン残基(L)による置換は、それぞれペプチド6、8および10を生じ(以下参照)、総疎水性が>75%である場合、それらのペプチドを、水ならびにより高いpHおよびイオン強度を有する他の水溶液中で不溶性にする。
【0213】
ペプチド11:RRLLHALLALLAHLLRRL-RLLHALLALLAHLLR-L
ペプチド6:LRLLHALLALLAHLLRLL
ペプチド13:RRLLHAALALAAHLLRRL-RLLHAALALAAHLLR-L
ペプチド8:LRLLHAALALAAHLLRLL
ペプチド15:RRLLAAHLALHAALLRRL-RLLAAHLALHAALLR-L
ペプチド10:LRLLAAHLALHAALLRLL
本願は、以下の実施形態を含む。
[項1]
免疫刺激部分とペプチド部分とを含む免疫刺激化合物であって、該ペプチド部分が:
(a) 疾患関連免疫原ではなく;
(b) 75%以下のアミノ酸残基が疎水性であるアミノ酸配列を有し;および/または
(c) 5以上の等電点を有する、
前記免疫刺激化合物。
[項2]
ベクター部分をさらに含む、項1に記載の化合物。
[項3]
免疫刺激部分、ペプチド部分、およびベクター部分を含む免疫刺激化合物。
[項4]
前記ベクター部分が、炭化水素、フルオロカーボンまたは脂質を含む、項2または項3に記載の化合物。
[項5]
前記フルオロカーボン部分が、以下:
CmFn-CyHx-
(式中、m = 3~30、n ≦ 2m+1、y = 0~15、x ≦ 2y、および(m+y) = 3~30である)
で表される化学構造を有する、項4に記載の化合物。
[項6]
前記ペプチド部分の75%以下のアミノ酸残基が、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、バリン、メチオニン、アラニン、プロリン、およびグリシンからなる群から選択される、項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
[項7]
前記免疫刺激部分が第1のアミノ酸残基において前記ペプチド部分に結合しており、前記ベクター部分が第2のアミノ酸残基において前記ペプチド部分に結合しており、該第1のアミノ酸残基と第2のアミノ酸残基が、前記ペプチド部分の少なくとも50%のアミノ酸配列により分離されている、項2~5のいずれか1項に記載の化合物。
[項8]
前記ペプチド部分が100以下のアミノ酸残基からなる、項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
[項9]
前記免疫刺激部分と前記ペプチド部分との間にさらにスペーサー部分を含む、項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
[項10]
前記スペーサー部分が切断可能な結合を含む、項9に記載の化合物。
[項11]
前記免疫刺激部分が5000Da未満の分子量を有する、項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
[項12]
前記免疫刺激部分が、Toll様受容体(TLR)アゴニスト、NOD様受容体(NLR)アゴニスト、ならびにDC-サイン、デクチン-1、デクチン-2、ミンクル、DDX41およびSTRINGの1つ以上のアゴニストから選択される、項1~11のいずれか1項に記載の化合物。
[項13]
前記免疫刺激部分が、TLR7および/またはTLR8のアゴニストから選択される、項12に記載の化合物。
[項14]
前記免疫刺激部分が、イミダゾピリシン部分、イミダゾキノリン部分、ムラミルジペプチド部分、ムラミルトリペプチド部分、およびγ-D-グルタミル-メソ-ジアミノピメリン酸部分の少なくとも1つを含む、項1~13のいずれか1項に記載の化合物。
[項15]
前記免疫刺激部分が、式(I)、(IIa)、(IIb)、(IIIa)、(IIIb)または(IV):
【化14】
(式中、R1、R4およびR5は、HまたはC1-C6分岐もしくは非分岐アルキルもしくはアルケニルからそれぞれ独立して選択され、あるいはR4とR5は、それらが結合している炭素原子と共に4、5、6、7または8員のシクロアルキル、シクロアルケニルまたは芳香族炭化水素環を形成し、
ここでR1、R4、およびR5のそれぞれ、またはR4とR5の組み合わせにおける2個以下の炭素原子は、O、NおよびSから選択されるヘテロ原子と置換可能であり;また
波線は、化合物の残りの部分への結合点を示す)
のいずれか1つによる構造を有する、項14に記載の化合物。
[項16]
前記免疫刺激部分が、式(VI):
【化15】
による構造を有する、項15に記載の化合物。
[項17]
前記ペプチド部分が、75%以下のアミノ酸残基が疎水性であるアミノ酸配列を有し、またここで該アミノ酸配列が、以下の配列:
(I) 1位がアミノ酸残基(R、K、H、L)から選択され;2位がアミノ酸残基(R、K、H)から選択され;3位がアミノ酸残基(L)であり;4位がアミノ酸残基(L)であり;5位がアミノ酸残基(H、K、R、L、A、P)から選択され;6位がアミノ酸残基(A)であり;7位がアミノ酸残基(H、K、R、L、A、P)から選択され;8位がアミノ酸残基(L)であり;9位がアミノ酸残基(A、K、R、H)から選択され;10位がアミノ酸残基(L)であり;11位がアミノ酸残基(H、K、R、L、A、P)から選択され;12位がアミノ酸残基(A)であり;13位がアミノ酸残基(H、K、R、L、A、P)から選択され;14位がアミノ酸残基(L)であり;15位がアミノ酸残基(L)であり;16位がアミノ酸残基(R、K、H)から選択され;また17位がアミノ酸残基(R、K、H、L)から選択される配列;または
(II) 1位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A)から選択され;2位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A)から選択され;3位がアミノ酸残基(L、H、Q、A)から選択され;4位がアミノ酸残基(L、H、Q、A)から選択され;5位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A、L)から選択され;6位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A、L)から選択され;7位がアミノ酸残基(L、H、Q、A、W)から選択され;8位がアミノ酸残基(L、H、Q、A、W)から選択され;9位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A、L)から選択され;10位がアミノ酸残基(L、H、Q、A、W)から選択され;11位がアミノ酸残基(L、H、Q、A、W)から選択され;12位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A、L)から選択され;13位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A、L)から選択され;14位がアミノ酸残基(L、H、Q、A)から選択され;15位がアミノ酸残基(L、H、Q、A)から選択され;16位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A)から選択され;また17位がアミノ酸残基(K、R、H、Q、A)から選択される配列
を含む、項1~16のいずれか1項に記載の化合物。
[項18]
細胞外液における免疫刺激剤の溶解性を低下させるためのペプチドの使用であって、該ペプチドが免疫刺激剤に共有結合的に連結している、前記使用。
[項19]
前記使用が、前記細胞外液における前記免疫刺激剤のアジュバント活性を増加させるためでもある、項18に記載の使用。
[項20]
項1~17のいずれか1項に記載の化合物と、製薬上許容される担体または希釈剤とを含む医薬組成物。
[項21]
第2の化合物をさらに含む項20に記載の医薬組成物であって、該第2の化合物が免疫刺激部分を含む、前記医薬組成物。
[項22]
免疫原をさらに含む、項20または21に記載の医薬組成物。
[項23]
前記化合物がフルオロカーボンベクター部分を含み、前記免疫原がフルオロカーボンに共有結合している抗原性ペプチドを含む、項22に記載の医薬組成物。
[項24]
前記免疫原が、腫瘍抗原、病原体に対する抗原、および自己抗原から選択される、項22または23に記載の医薬組成物。
[項25]
治療法によりヒトまたは動物の身体を治療する方法において使用するための、項1~17のいずれか1項に記載の化合物、または項20~24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項26]
免疫応答を刺激する方法において使用するための、項1~17のいずれか1項に記載の化合物、または項20~24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項27]
癌、病原性感染、または自己免疫疾患を治療する方法において使用するための、項1~17のいずれか1項に記載の化合物、または項20~24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項28]
項20~24のいずれか1項に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、免疫応答を刺激する方法。
[項29]
項20~24のいずれか1項に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、癌、病原性感染、または自己免疫疾患を治療する方法。
[項30]
免疫応答を刺激するための医薬の製造において使用するための、項1~17のいずれか1項に記載の化合物。
[項31]
項27に記載の使用、項28に記載の免疫応答を刺激する方法のための項20~24のいずれか1項に記載の医薬組成物、または項30に記載の使用のための項1~17のいずれか1項に記載の化合物であって、前記免疫応答が、疾患関連免疫原に対する免疫応答である、前記医薬組成物または化合物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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