(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】マタニティブラジャー
(51)【国際特許分類】
A41C 3/04 20060101AFI20220627BHJP
A41C 3/12 20060101ALI20220627BHJP
A41C 3/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
A41C3/04 Z
A41C3/12 A
A41C3/12 D
A41C3/00 A
(21)【出願番号】P 2020186973
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】520439782
【氏名又は名称】加藤 千香子
(74)【代理人】
【識別番号】100216965
【氏名又は名称】河辺 幸代
(72)【発明者】
【氏名】加藤千香子
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205052903(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0271675(US,A1)
【文献】中国実用新案第212212715(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 3/04
A41C 3/12
A41C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
右カップ、左カップ、右肩紐、左肩紐及びバック部を有するブラジャーであって、前記右カップと前記左肩
紐とが連結し、前記左カップと前記右肩
紐とが連結し、前記右カップ上部と左カップ上部とが、前面中心部で交差して、前記右カップと前記左カップとを前記中心部で連結
し、前記左カップと前記右カップの下縁に位置して前記右カップと前記左カップを繋ぐフロント部を有しないことを特徴とする、ブラジャー。
【請求項2】
前記中心部が、バージスラインより上部に位置し、前記右カップと前記左カップとを、前記中心部で固着し、前記左肩紐が前記右カップを支持し、前記右肩紐が前記左カップを支持することを特徴とする、請求項1に記載のブラジャー。
【請求項3】
乳房全体を覆う左右外布が、着脱手段を介して着脱自在に接続されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のブラジャー。
【請求項4】
前記左右カッ
プが、伸縮性を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のブラジャー。
【請求項5】
前記左右外布が、伸縮性を有することを特徴とする、請求項3に記載のブラジャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産前産後の女性がより快適に妊娠期間や育児期間を過ごす事のできる、着け心地の良いマタニティ用ブラジャーに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラジャー装着時のアンダーバスト付近、特にみぞおち付近の締め付けによる不快感を軽減するためのブラジャーは、従来から提案されている。例えば、特許文献1には、カップに縫合されている、伸縮素材を使ったテープ部と逆V字状に構成される上部連結部とを有するブラジャーが、圧迫感を生じないようにすることが記載されている。また、特許文献2には、みぞ落よりやや上部に、カップを連結するクロス部分が位置するブラジャーが、みぞ落ち近傍の過度な圧迫を軽減することが記載されている。
【0003】
しかしながら、妊婦期間中、特に妊娠初期には吐き気等と伴う悪阻がひどくなり、意識障害等で入院が必要な場合もある。また、多くの妊婦が情緒不安定になり、神経が過敏になるため、普段より締め付け感に敏感になりやすい。さらに、妊娠後期にかけて、ますます子宮が大きくなり、子宮底がみぞおちの辺りまで高くなり、胃や心臓などを圧迫してしまう。このような身体や心の変化が著しい妊婦にとっては、従来用いられてきた、アンダーバスト付近に少しでも締め付けが感じられるブラジャーでは、不快感が強く、約10か月もの妊娠期間を通して、長い時間快適に使用できるものではなかった。
【0004】
また、妊娠期間中は乳房やアンダーバストのサイズが著しく大きくなり、加えて、育児期間中は、授乳前後で乳房サイズに大きな変化がある。また、育児期間中は、赤ちゃんのお世話のため体勢を変えてよく動く必要があり、また、頻繁な授乳が必要となる。そのため、乳房やアンダーバストのサイズ変化にも対応可能で、肩紐のズレを気にする必要がなく、授乳が容易にできる、妊娠期間中にも、育児期間中にも快適に身に着けられるブラジャーが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-297740
【文献】特開2000-34605
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を解決すべく、産前産後の女性が、アンダーバストの締め付け、特にみぞおち付近の締め付けを無くすブラジャーを提供することを目的とする。また、本発明は、妊娠や授乳により著しく変わる乳房やアンダーバストのサイズ変化に対応でき、乳房の下垂れ、横流れ、型崩れを防止する。さらに、育児期間中の肩紐のずれ落ちを防ぎ、容易に授乳ができるため、妊娠期間中でも、育児期間中でも、より快適に過ごすことのできるブラジャーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、右カップ、左カップ、右肩紐、左肩紐及びバック部を有するブラジャーであって、前記右カップと前記左肩とが連結し、前記左カップと前記右肩とが連結し、前記右カップ上部と左カップ上部とが前面中心部で交差して、前記右カップと前記左カップとを前記中心部で連結することを特徴とする、ブラジャーである。
【0008】
肩紐と連結した、右カップ上部と左カップ上部とが、前面で交差することにより、人体前面中心側の斜め上方向に乳房を吊り上げることができ、妊娠中に大きくなる乳房をしっかりと支持し、乳房の下垂れや横流れを防止することができる。また、肩紐と連結した、左右カップ上部が前面で交差して、中心部で縫着等されることにより、肩紐のズレが軽減され、特に、赤ちゃんのお世話で多様な動きの必要な産後の育児期間であっても快適に過ごすことができる。
【0009】
本発明のブラジャーは、例えば、カップの下縁部やバージスラインに沿ってワイヤーを挿入する、もしくは生地に厚みを持たせることで、乳房の支持力が向上する。また、例えば、肩紐にエイト管やZ管などの長さ調節部や、バック部にホックやスナップ等の調整部を備えて多段階に調節可能にすることで、妊娠初期から後期、産後までのバストサイズの変化や体型変化に対応できる。
【0010】
本発明のブラジャーは、前記中心部が、バージスラインより上部に位置し、前記右カップと前記左カップとを、前記中心部で固着し、前記左肩紐が前記右カップを支持し、前記右肩紐が前記左カップを支持することを特徴とするブラジャーである。本発明は、中心部がみぞおち部分より上部にくることで、アンダーバストの締め付けや、みぞおち付近の締め付けが全く無くなり、例えば、妊娠初期の悪阻の酷い妊婦や、妊娠後期の子宮の大きい妊婦であっても、妊娠期間中を快適に過ごすことができる。
【0011】
また、従来用いられてきたような、人体前面中央ライン付近に位置し、カップの下縁やバージスライン下側付近に存在するフロント部を介して、右カップと左カップとを連結する手段を取らないため、フロント部のアンダーバストの締め付けによる不快感を無くすことができる。本発明は、右カップと左カップとが、前面で交差して中心部で固着し、肩紐へ連結することにより、左右肩紐が左右カップを支持するため、従来のブラジャーで用いられてきたアンダーバストを一周するベルトや左右カップを繋ぐフロント部がなくてもカップがずれることがなく、乳房をしっかりと支持することができる。
【0012】
本発明は、乳房全体を覆う外布が、着脱手段を介して着脱自在に接続されていることを特徴とするブラジャーである。着脱手段は、例えば、スナップ、ホック、留め金などの係止具を用いることができる。例えば、肩紐前部と外布上部に係止具を取り付けることで、外布上部が肩紐前部から着脱可能となり、外布の上部を開くことで、ブラジャーを装着した状態で乳頭を出し、容易に授乳をすることができる。
【0013】
本発明は、前記左右カップ又は乳房全体を覆う外布が、伸縮性を有することを特徴とするブラジャーである。例えば、編み方や伸縮性の糸を使用することにより伸縮性がある生地を用いて、妊娠期間中に次第に大きくなるバストサイズの変化や、授乳によるバストサイズの変化に対応することができる。また、伸縮性を利用して、カップ又は外布を下へ下げることにより、ブラジャーを装着したまま、乳頭を出すことが容易となり、すぐに授乳をすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、アンダーバスト部分、特にみぞおち付近の締め付けがなく、妊娠期間中であっても快適にブラジャーを装着して過ごすことができる。特に、悪阻の酷い妊娠初期や、子宮がより大きくなる妊娠後期であっても、より快適に妊娠期間を過ごすことができる。
【0015】
また、妊娠や授乳によって、サイズの変化が著しい乳房の下垂れ、横流れ、型崩れを防ぐことができる。妊娠初期から後期、産後までのバストサイズの変化や体型変化に対応できる。
【0016】
さらに、赤ちゃんのお世話で動作の多い育児期間中においても、肩紐のずれを気にすることなく快適にすごせる。また、ブラジャーを装着したまま容易に授乳が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態で、正面を例示した図である。
【0020】
図1に示すように、本実施例のブラジャー1は、右カップ10、左カップ20、右肩紐30、左肩紐40、サイド部50、バック部60により構成されている。
【0021】
右カップ10は、右乳房全体を支える右カップ下部12と右乳房から左鎖骨方向へ延びる右カップ上部11により構成され、左カップ20は、左乳房全体を支える左カップ下部22と左乳房から右鎖骨方向へ延びる左カップ上部21により構成される。
左右カップ上部は、中心部70で交差して縫着し、延伸して、右カップ上部端は、左肩紐40と縫着し、左カップ上部端は右肩紐30と縫着している。
左右カップ下部12、22は、少なくとも乳房の下側を覆って支持するものであり、
図1に示すように乳房全体を覆っても良く、また、
図2、3に示すように、乳房の下側だけを覆っても良い。左右カップは、伸縮性を有しても良く、伸縮性によりカップを下にめくることで乳頭が露出し、授乳をすることができる。
【0022】
中心部70は、人体前面の中央付近であり、みぞおちより上部、好ましくはバージスラインより上部で、胸骨直上部付近に位置する。右カップ上部と左カップ上部とが交差する部分の全てが縫着されても良く、また交差する部分の一部が縫着されても良い。
右肩紐30は、片端が人体前面で左カップ上部と縫着し、他端が人体背中面でバック部60と縫着している。左肩紐40は、片端が人体前面で右カップ上部と縫着し、他端が人体背中面でバック部60と縫着している。
【0023】
サイド部50は、カップ下部の脇側に縫着して背中側に延在してバック部60と縫着する。バック部60は、サイド部50の背中側と縫着して背中に延伸おり、ホック等の調節部90を備え、多段階に調節可能にして良い。
左右肩紐30,40は、肩紐の長さを調節するための、長さ調節部80を有しても良く、好ましくは、伸縮性を有する。
左右カップと左右肩紐、左右カップ上部と左右カップ下部、および、サイド部とバック部は、縫着などにより連結してもよく、また、1枚仕立ての布地で一体成型されてもよい。
【0024】
次に、授乳機能について、さらに説明する。
図2は、本発明の第2実施形態で、正面を例示した図である。
【0025】
図2に示すように、本実施例のブラジャー1は、右カップ10、右外布15、左カップ20、左外布25、右肩紐30、左肩紐40、サイド部50、バック部60により構成されている。
右カップ10は、右乳房下側を支える右カップ下部12と右乳房から左鎖骨方向へ延びる右カップ上部11により構成され、左カップ20は、左乳房下側を支える左カップ下部22と左乳房から右鎖骨方向へ延びる左カップ上部21により構成される。
左右カップ10、20は、乳頭を避けて乳房の下縁部分を支える形状が好適である。
左外布は、左カップと一緒に左乳房を二重に覆うように構成されており、好ましくは、左外布は左乳房全体を覆っている。左外布の上部には、フック等の着脱手段100が設けられており、右肩紐前部と着脱自在に連結している。右外布は、右カップと一緒に右乳房を二重に覆うように構成されており、好ましくは、右外布は右乳房全体を覆っている。右外布の上部には、フック等の着脱手段100が設けられており、左肩紐前部と着脱自在に連結している。左右カップは、好ましくは、左右外布より小さく、左右外布の2分の1~8分の1の大きさがより好ましい。
図2は、左外布上部に設置されたフックを外した状態図であり、外布上部を肩紐から着脱して、乳頭を出すことで、授乳が可能となる。
図2に示すように、左外布上部と右外布上部とは、中心部で縫着されることなく人体前面で交差しているが、乳頭を出すことができれば、中心部で縫着されていても良い。
また、外布の形態は、授乳可能に着脱できる形態であれば良く、例えば、左右外布は、人体前面で交差せずに、左外布と左肩紐前部とを着脱可能に連結し、右外布と右肩紐前部とを着脱可能に連結しても良い。また、左外布と中心部とを着脱可能に連結し、右外布と中心部とを着脱可能に連結しても良い。
【0026】
図3は、本発明の第3実施形態で、正面を例示した図である。
【0027】
図3に示すように、本実施例のブラジャー1は、右カップ10、右外布15、左カップ20、左外布25、右肩紐30、左肩紐40、サイド部50、バック部60により構成されている。右カップ10は、右乳房下側を支える右カップ下部12と右乳房から左鎖骨方向へ延びる右カップ上部11により構成され、左カップ20は、左乳房下側を支える左カップ下部22と左乳房から右鎖骨方向へ延びる左カップ上部21により構成される。
左右カップ10、20は、乳頭を避けて乳房の下縁部分を支える形状が好適である。
左外布は、左カップと一緒に左乳房を二重に覆うように構成されており、好ましくは、左外布は左乳房全体を覆っている。左外布の上部は、右肩紐前部と縫着している。右外布は、右カップと一緒に右乳房を二重に覆うように構成されており、好ましくは、右外布は右乳房全体を覆っている。右外布の上部は、左肩紐前部と縫着している。左右カップは、好ましくは、左右外布より小さく、左右外布の2分の1~8分の1の大きさがより好ましい。左右外布は、伸縮性を有する素材で構成されており、外布を下にめくるだけで、容易に乳頭を出して授乳が可能となるように構成されている。
図3に示すように、左外布上部と右外布上部とは、中心部で縫着されることなく人体前面で交差しているが、下に下げることにより乳頭を出すことができれば、中心部で縫着されていても良い。
また、外布の形態は、授乳可能な形態であれば良く、例えば、左外布と右外布とを、肩紐に連結させずに中心部で連結させても良い。
【0028】
図1~3に示す実施形態において、好適な実施の形態として、各部分が縫着により連結されているが、各部分を連結する手段は、縫着に限定されず、係止具を用いて連結しても良く、また一枚仕立ての布地で一体成型しても良い。また、長さ調節部80や調節部90が備えられているが、これらは好適な実施の形態に過ぎず、本発明のブラジャーは、長さ調節部や調節部のいずれか又は両方が備えられていない形態であってもよい。
【0029】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、他の用途にも適用できる。例えば、本発明のブラジャーは、妊産婦用に限定されず、ティーンエージャー又は成人用であってもよく、また、一般的に広く使用されるブラジャーであってよい。また、上記背開きタイプのブラジャーの他、被りタイプのブラジャーにも適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1.ブラジャー
10.右カップ
11.右カップ上部
12.右カップ下部
15.右外布
20.左カップ
21.左カップ上部
22.左カップ下部
25.左外布
30.右肩紐
31.右肩紐前部
40.左肩紐
41.左肩紐前部
50.サイド部
60.バック部
70.中心部
80.長さ調節部
90.調節部
100.着脱手段