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特許7095057表面にトップコート層を塗布する硬化物を形成するための湿気硬化性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】表面にトップコート層を塗布する硬化物を形成するための湿気硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/06 20060101AFI20220627BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220627BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220627BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C09D183/06
B32B27/18 Z
B32B27/00 101
C09D171/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020191408
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080386
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】500004955
【氏名又は名称】旭化成ワッカーシリコーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田畑 卓哉
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-116976(JP,A)
【文献】特開2009-035711(JP,A)
【文献】特開平05-125271(JP,A)
【文献】特許第6527599(JP,B2)
【文献】国際公開第2021/246386(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 100/00-201/10
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にトップコート層を塗布する硬化物を形成するための湿気硬化性組成物であって、
(A) 下記 一般式(1)
Y-[CH-SiR (OR3-a (1)
(式中、
Yは、ポリオキシアルキレンであるポリマー鎖を有し、-O-C(=O)-NH-または-NH-C(=O)-NR’-によって基-[CH -SiR (OR 3-a ]に結合される基
であり、
は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
R’は、一価の、場合によって置換されているSiC-結合した炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
のシラン変性ポリマーAと、
(B)2個以上のアミノ基と、1個以上の炭素数2以上のアルコキシ基を有するアミノシランBと、
を含む湿気硬化性組成物。
【請求項2】
基材と、請求項1に記載の湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物と、前記硬化物の上に積層されるトップコート層とを含む、積層体。
【請求項3】
下記一般式(1)のシラン変性ポリマーAを含む湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物と、トップコート層とを接着させる方法であって、前記湿気硬化性組成物に2個以上のアミノ基と、1個以上の炭素数2以上のアルコキシ基を有するアミノシランBを配合することを特徴とする接着方法。
Y-[CH-SiR (OR3-a (1)
(式中、
Yは、ポリオキシアルキレンであるポリマー鎖を有し、-O-C(=O)-NH-または-NH-C(=O)-NR’-によって基-[CH -SiR (OR 3-a ]に結合される基
であり、
は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
R’は、一価の、場合によって置換されているSiC-結合した炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
【請求項4】
基材上に形成される、湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物と、トップコート層とを接着させて積層体を製造する方法であって、
前記湿気硬化性組成物は、
(A) 下記 一般式(1)
Y-[CH-SiR (OR3-a (1)
(式中、
Yは、ポリオキシアルキレンであるポリマー鎖を有し、-O-C(=O)-NH-または-NH-C(=O)-NR’-によって基-[CH -SiR (OR 3-a ]に結合される基
であり、
は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
R’は、一価の、場合によって置換されているSiC-結合した炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
のシラン変性ポリマーAと、
(B)2個以上のアミノ基と、1個以上の炭素数2以上のアルコキシ基を有するアミノシランBとを含む、前記積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、-CH-SiR (OR3-a で示される加水分解により架橋可能なシリル基を末端基とするシラン変性ポリマーと特定のアミノシランを含有する湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物、基材と該硬化物とトップコート層とを含む積層体、該硬化物とトップコート層の接着方法、および該積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種シーリング材としては、シリコーン系シーリング材、変成シリコーン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材等が知られている。
シリコーン(オルガノポリシロキサン)を主成分とするシリコーン系シーリング材は、一般にその表面への塗装適合性が低く、シリコーン系シーリング材の表面へのトップコート層の形成が難しい。
一方で、シリル基を末端に持つポリエーテルを主成分とする変成シリコーン系シーリング材は、シリコーン系シーリング材と比較して塗装適合性が高く、シーリング材表面へトップコート層形成が容易である場合が多く、工業的に有用である。特に、反応性ケイ素基(加水分解、縮合反応することによりシロキサン結合を形成し架橋しうる反応性ケイ素含有官能基)を有し、主鎖がオキシアルキレン系である重合体は、室温で液状であり、かつ硬化物が低モジュラスで高伸び特性があることから、シーリング材や接着剤、各種コーティング材等へ利用されている。
【0003】
末端に反応性ケイ素基を有する湿気硬化型の変成シリコーン(ポリオキシアルキレン重合体)系シーリング材は、例えば特許文献1に開示されている。当該シーリング材は、特定のエポキシ可塑剤と酸化防止剤を含有することにより、加熱硬化させた場合であっても硬化物と塗料(トップコート)の密着性を維持している。
ポリオキシアルキレン重合体を含むシーリング材とトップコートとの接着性をさらに向上させるため、アミノシラン系または該アミノシランとエポキシシラン系等を併用した接着向上剤が使用されることが一般的である。
末端に反応性ケイ素基を有する湿気硬化型の変成シリコーンとしては、反応性ケイ素基にメチレン基(-CH2-)が1つ直結するものや、メチレン基が3つ結合するものが広く知られている。特にメチレン基が1つ結合するものは、有害なスズを含有する触媒を使用せずに硬化させることができるため有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6527599号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、末端に反応性ケイ素基を有する湿気硬化型のポリオキシアルキレン重合体系シーリング材の一部においては、トップコート層との接着性が低いことが見出された。
具体的には、-CH-SiR (OR3-a で示される、アルコキシシラン末端基にメチレン基(-CH2-)が1つ直結するポリオキシアルキレン重合体を含有している湿気硬化性組成物をシーリング材として用いる場合に、溶剤系アクリルウレタンなどのトップコート層の接着性が低い場合があった。そこで、前記-CH-SiR (OR3-a で示されるアルコキシシランを末端基とするポリオキシアルキレン重合体を含有している湿気硬化性組成物の硬化物とトップコート層との密着性に優れた積層物を製造する方法が求められていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、上記に示す末端基を有するポリオキシアルキレン重合体を用いた場合でも、トップコート層との良好な接着性を硬化物を形成するための湿気硬化性組成物、その湿気硬化性組成物を硬化させた硬化物とトップコート層とを接着させる方法、基材と該硬化物とトップコート層とを含む積層体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、2個以上のアミノ基と、1個以上のエトキシ基を有するアミノシランを接着向上剤として使用すると、-CH-SiR (OR3-a で示されるアルコキシシランを末端基とするポリオキシアルキレン重合体を含有している湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物と、トップコート層との接着性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
表面にトップコート層を塗布する硬化物を形成するための湿気硬化性組成物であって、
(A) 下記 一般式(1)
Y-[CH-SiR (OR3-a (1)
(式中、
Yは、窒素、酸素、または硫黄を介して結合されたx価のポリマー基であり、
は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
のシラン変性ポリマーAと、
(B)2個以上のアミノ基と、1個以上の炭素数2以上のアルコキシ基を有するアミノシランBと、
を含む湿気硬化性組成物である。
【0009】
本発明はまた、基材と、上記湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物と、前記硬化物の上に積層されるトップコート層とを含む、積層体である。
【0010】
-CH-SiR (OR3-a で示されるアルコキシシランを末端基とするポリオキシアルキレン重合体(シラン変性ポリマーA)を含有している湿気硬化性組成物に接着向上剤としてメトキシ基を有するアミノシラン、アミノ基を1つ含むアミノシラン、またはエトキシ基とアミノ基をそれぞれ1つ含むアミノシランを添加すると、当該架橋組成物を硬化させて得られる硬化物の表面は塗装性が悪く、硬化物上にトップコート層を塗布してもはがれやすい。
しかし、2個以上のアミノ基と、1個以上の炭素数2以上のアルコキシ基を有するアミノシランを接着向上剤として添加した場合にのみ塗装性が向上し、硬化物の表面にトップコート層を塗布した場合にトップコート層との接着性が良好となる効果が得られる。
また、本発明の湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物と、トップコート層とを含む積層体は、硬化物とトップコート層との接着性が高く、トップコート層がはがれにくいという特性を有する。
【0011】
本発明の接着方法は、下記一般式(1)のシラン変性ポリマーAを含む湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物と、トップコート層とを接着させる方法であって、前記湿気硬化性組成物に2個以上のアミノ基と、1個以上の炭素数2以上のアルコキシ基を有するアミノシランBを配合することを特徴とする接着方法である。
Y-[CH-SiR (OR3-a (1)
(式中、
Yは、窒素、酸素、または硫黄を介して結合されたx価のポリマー基であり、
は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
【0012】
-CH-SiR (OR3-a で示されるアルコキシシランを末端基とするポリオキシアルキレン重合体(シラン変性ポリマーA)と、一般に使用されるアミノシラン系接着向上剤であるトリメトキシ基を有するアミノシラン、アミノ基を1つ含むアミノシラン、またはエトキシ基とアミノ基をそれぞれ1つ含むアミノシランを含む湿気硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の表面にトップコート層を塗布しても、接着性が悪くはがれやすい。
ここで接着向上剤を、2個以上のアミノ基と、1個以上の炭素数2以上のアルコキシ基を有するアミノシランを接着向上剤とすることにより、硬化物表面へのトップコート層の接着性を向上させることが可能となる。
【0013】
本発明の積層体の製造方法は、基材上に形成される、湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物と、トップコート層とを接着させて積層体を製造する方法であって、
前記湿気硬化性組成物は、
(A) 下記 一般式(1)
Y-[CH-SiR (OR3-a (1)
(式中、
Yは、窒素、酸素、または硫黄を介して結合されたx価のポリマー基であり、
は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
のシラン変性ポリマーAと、
(B)2個以上のアミノ基と、1個以上の炭素数2以上のアルコキシ基を有するアミノシランBとを含む、前記積層体の製造方法である。
【0014】
上記製造方法によれば、硬化物とトップコート層とが強固に接着した積層体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明の湿気硬化性組成物は、少なくとも1液以上の形態であって、湿気により硬化して最終的に組成物の硬化物が得られるものであれば、いかなる態様、形態であってもよい。 湿気硬化性組成物に含まれる-CH-SiR (OR3-a で示されるアルコキシシランを末端基とするポリオキシアルキレン重合体(シラン変性ポリマーA)は、湿気による加水分解でシラノールを生成する。このシラノール同士の脱水縮合反応によってシロキサン結合によるマトリックスが形成され、硬化する。
【0017】
<シラン変性ポリマーAについて>
本発明におけるシラン変性ポリマーAは、少なくとも1つの下記一般式(1)のアルコキシシリル基を含む。これは、ポリマー骨格の一端に連結したアルコキシシリル基であってもよい。好ましくは、少なくとも1つのポリオキシアルキレン構造単位を含むシラン変性ポリマーである。
Y-[CH-SiR (OR3-a (1)
(式中、
Yは、窒素、酸素、または硫黄を介して結合されたx価のポリマー基であり、
は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
【0018】
シラン変性ポリマーAは有機重合体であれば特に限定されず、例えばポリオキシプロピレン重合体、ポリオキシブチレン重合体、ポリイソブチレン重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、またはこれら重合体を複数用いた有機重合体等であってもよい。
【0019】
シラン変性ポリマーAの末端基のうち、少なくとも1つが、下記一般式(2)または一般式(3)で示す基であってもよい。
-O-C(=O)-NH-(CH)-SiR1 (OR3-a (2)
-NH-C(=O)-NR’-(CH)-SiR1 (OR3-a (3)
(式(2)、式(3)中、基および添字はそれらに対して上で特定された定義の一つを有し、
R’は、一価の、場合によって置換されているSiC-結合した炭化水素基である。)
【0020】
シラン変性ポリマーAは、湿気硬化型組成物の主成分であり、塗布後に湿気により硬化物を形成する成分である。
シラン変性ポリマーAは、商業的な製品として購入することができ、また、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。シラン変性ポリマーAは単体であってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
シラン変性ポリマーAは、メチレンスペーサーを介して隣接するウレタン単位に結合している反応性アルコキシシリル基を有するいわゆるα‐シラン末端のポリマーであってもよい。このような構造を有するシラン変性ポリマーAは空気と接触した際に高い硬化速度を達成することから、有毒なスズ触媒の配合の必要がない点で安全性が高く、環境負荷も少ない。市販のα―シラン末端ポリマーは、Wacker―Chemie AGからのGENIOSIL(登録商標)STP-E10またはSTP-E30である。
【0021】
基Rは、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基である。
【0022】
基Rの例は、アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-n-ブチル、2-n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル基;ヘキシル基、例えばn-ヘキシル基;ヘプチル基、例えば、n-ヘプチル基;オクチル基、例えばn-オクチル基、イソオクチル基および2,2,4-トリメチルペンチル基;ノニル基、例えば、n-ノニル基;デシル基、例えば、n-デシル基;ドデシル基、例えば、n-ドデシル基;オクタデシル基、例えば、n-オクタデシル基;シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、例えば、ビニル、1-プロペニルおよび2-プロペニル基;アリール基、例えば、フェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル基;アルカリール基、例えば、o-、m-、p-トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基、ならびにアラルキル基、例えば、ベンジル基、α-およびβ-フェニルエチル基である。
【0023】
置換された基Rの例は、ハロアルキル基、例えば、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロイソプロピル基およびヘプタフルオロイソプロピル基、ならびにハロアリール基、例えば、o-、m-およびp-クロロフェニル基である。
【0024】
好ましくは、Rは、好ましくは場合によってハロゲン原資によって置換されており1から6個の炭化水素原子を有している一価の炭化水素基を、より好ましくは1個または2個の炭素原子を有するアルキル基、より特定的にはメチル基を含む。
【0025】
基Rの例は、基Rに対して特定した基である。
基Rは、好ましくは、水素原子、または場合によってハロゲン原子によって置換されており、1から10個までの炭素原子を有するアルキル基、より好ましくは1から4個までの炭素原子を有するアルキル基、より特定的にはメチルおよびエチル基である。
【0026】
ポリマー基Yのベースとなるポリマーは、本発明においては、主鎖中の全結合の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%が炭素-炭素、炭素-窒素、または炭素-酸素結合である全てのポリマーであることが理解されるべきである。
【0027】
ポリマー基Yは、有機ポリマー基を好ましくは含み、それは、ポリマー鎖として、ポリオキシアルキレン、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーおよびポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレンコポリマー;炭化水素ポリマー、例えば、ポリイソブチレン、ポリエチレン、またはポリプロピレンおよびポリイソブチレンのイソプレンとのコポリマー;ポリイソプレン;ポリウレタン;ポリエステル、ポリアミド;ポリアクリレート;ポリメタクリレート;およびポリカーボネートを含み、それらは、好ましくは、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)O-、-NH-C(=O)-NH-、-NR’-C(=O)-NH-、NH-C(=O)-NR’-、-NHC(=O)-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-S-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-S-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-S-C(=O)-S-、-C(=O)-、-S-、-O-および-NR’-によって1つの基または複数の基-[(CR )b-SiR(OR3-a]に結合さる。
【0028】
ここでR’は、同じであっても異なってもよく、アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-n-ブチル、2-n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル基;ヘキシル基、例えばn-ヘキシル基;ヘプチル基、例えば、n-ヘプチル基;オクチル基、例えばn-オクチル基、イソオクチル基および2,2,4-トリメチルペンチル基;ノニル基、例えば、n-ノニル基;デシル基、例えば、n-デシル基;ドデシル基、例えば、n-ドデシル基;オクタデシル基、例えば、n-オクタデシル基;シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、例えば、ビニル、1-プロペニルおよび2-プロペニル基;アリール基、例えば、フェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル基;アルカリール基、例えば、o-、m-、p-トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基、ならびにアラルキル基、例えば、ベンジル基、α-およびβ-フェニルエチル基である。
【0029】
置換された基R’の例は、ハロアルキル基、例えば、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロイソプロピル基およびヘプタフルオロイソプロピル基、ならびにハロアリール基、例えば、o-、m-およびp-クロロフェニル基である。
基R’は、好ましくは場合によってハロゲン原子によって置換されており1から6個の炭素原子を有している一価の炭化水素基を、より好ましくは1個または2個の炭素原子を有するアルキル基、より特定的にはメチル基を含む。
【0030】
基R’は、-CH(COOR”)-CH-COOR”であってもよい。ここでR”は同じであっても異なってもよく、R’に対して与えられた定義を有する。
【0031】
基R”は、好ましくは1から10個までの炭素原子を有するアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、またはプロピル基である。
【0032】
より好ましくは、式(1)中の基Yは、メタアクリル酸エステル基、ウレタン基およびポリオキシアルキレン基を、より好ましくはポリオキシプロピレン含有ウレタン基またはポリオキシプロピレン基を含む。
【0033】
ここでシラン変性ポリマーAは、ポリマー中の任意の望ましい位置、例えば、鎖内および/または末端に、好ましくは鎖内および末端に、より好ましくは末端に、記載されている様式で結合している基-[(CH)-SiR (OR3-a]を有することができる。
【0034】
本発明の1つの特に好ましい実施形態において、シラン変性ポリマーAは、いずれの場合も、-O-C(=O)-NH-(CR )基または-NH-C(=O)-NR’-(CR )基(R’およびRは、上で特定した定義の1つを有する。)によって結合されているジメトキシメチルシリル末端基を有するシラン末端ポリエーテルおよびシラン末端ポリウレタン、より特定的にはシラン末端ポリプロピレングリコールおよびシラン末端ポリウレタンを含む。
【0035】
シラン変性ポリマーAの数平均分子量Mnは、好ましくは、少なくとも400、より好ましくは、少なくとも600、より特定的には少なくとも800であり、好ましくは30,000未満、より好ましくは19,000未満である。
【0036】
シラン変性ポリマーAの粘度は、いずれの場合にも20℃で測定されて、好ましくは少なくとも0.2Pa・s、より好ましくは少なくとも1Pa・s、非常に好ましくは少なくとも5Pa・sであり、好ましくは1,000Pa・s以下、より好ましくは700Pa・s以下である。
【0037】
本発明の第一の特に好ましい実施形態の場合において、シラン変性ポリマーAは、ポリマー基Yとして、線状のまたは分枝したポリオキシアルキレン基、より好ましくはそれらの鎖末端が、好ましくは-O-C(=O)-NH-によって、1つの基または複数の基-[(CH)-SiR (OR3-a]に結合されているポリオキシプロピレン基を含む。ここでは、全鎖末端の好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より特定的には少なくとも95%が、-O-C(=O)-NH-によって基-[(CH)-SiR (OR3-a]に結合されている。
このポリオキシアルキレン基Yは、200から30,000、好ましくは1,000から20,000のMn(数平均分子量)を有する。そのようなシラン変性ポリマー(A)を調製するための適切な製造方法およびシラン変性ポリマー(A)の例それ自体も、既知であり、本明細書の開示内容に含まれるEP1535940B1またはEP1896523B1を含めた出版物に記載されている。対応するシラン末端ポリマーは、例えば、Wacker Chemie AGからGENIOSIL(登録商標)STP-Eの名称の下で市販されてもいる。
【0038】
シラン変性ポリマーAを化学的に合成する場合は、例えば、ヒドロシリル化、マイケル付加、ディールス-アルダー付加のような付加反応、またはイソシアネート官能性化合物とイソシアネート反応性の基を含む化合物との間の反応等のさまざまな既知の製造方法によって合成することができる。
【0039】
組成物全体に対するシラン変性ポリマーAの含有量は特に限定されず、例えば5~90質量部の範囲が好ましい。5質量部以上であれば、ポリマーマトリックスを形成する成分以外の成分が大量に組成物に残存することがなく、組成物としての十分な性能が発揮され、形成するポリマーマトリックスの量が十分で、求められる引張強さや伸び、引裂強度などの機械的特性が十分になり、接着不良、皮膜の割れ、など硬化物としての欠陥発生が少なく、かつ、他成分による弊害を起す可能性が低くなるからである。より好ましくは、10~60質量部の範囲である
【0040】
<アミノシランBについて>
アミノシランBは、2個以上のアミノ基と、1個以上の炭素数2以上のアルコキシ基を有する接着向上剤であり、同時に硬化触媒としても機能する場合もある。
アミノシランBは、下記一般式(4)で表す構造であってもよい。
S i ( O R ( 4 - f - g - h ) / 2 (4)
(式中、
は、同一であってもよく、又は異なっていてもよい、一価の任意選択的に置換されたS i C 結合した窒素を含まない炭化水素基であり、
は、同一であってもよく、又は異なっていてもよい、炭素数2~18の任意選択的に置換された炭化水素基であり、
D は、同一であってもよく、又は異なっていてもよく、少なくとも1個の窒素原子を有する、一価のS i C 結合した基を表し、1個または複数あるDに含まれる窒素原子の数は2以上であり、 f は、0 、1 、2 又は3 、好ましくは0または1であり、
g は、1 、2 又は3 、好ましくは2 又は3であり、
h は、1 、2 、又は3 、好ましくは1 であり、
但し、f + g + h の合計は4 以下である。)
【0041】
本発明で使用されるアミノシランBは、シラン( すなわち、f + g + h = 4 である式(4)の化合物) 又はシロキサン( すなわち、f + g + h≦ 3 である式(4) の化合物) のいずれかであってもよく、シランが好ましい。
【0042】
基R は、好ましくは、炭素数1~18の任意選択的にハロゲン置換された炭化水素基、特に好ましくは、炭素数1~5個の炭化水素基、特にメチルを表す。
【0043】
基R は、好ましくは、炭素数2~18の任意選択的にハロゲン置換された炭化水素基、特に好ましくは、炭素数2~10個の炭素原子を含む炭化水素基、特にエチル基である。
【0044】
基D の例は、式HN(CH-、HN(CHNH(CH-、HN(CHNH(CHNH(CH-、HCNH(CH-、CNH(CH-、CNH(CH-、CNH(CH-、C11NH(CH-、C13NH(CH-、C15NH(CH-、HN(CH-、HN-CH-CH(CH)-CH-、HN(CH-、シクロ-CNH(CH-、シクロ-C11NH(CH-、フェニル-NH(CH-、(CHN(CH-、(CN(CH-、(CN(CH-、(CN(CH-、(C11N(CH-、(C13N(CH-、(C15N(CH-、HN(CH)-、HN(CHNH(CH)-、HN(CHNH(CHNH(CH)-、HCNH(CH)-、CNH(CH)-、CNH(CH)-、CNH(CH)-、C11NH(CH)-、C13NH(CH)-、C15NH(CH)-、シクロ-CNH(CH)-、シクロ-C11NH(CH)-、フェニル-NH(CH)-、(CHN(CH)-、(CN(CH)-、(CN(CH)-、(CN(CH)-、(C11N(CH)-、(C13N(CH)-、(C15N(CH)-、の基及び上述の一級アミノ基と、一級アミノ基に対して反応性の二重結合又はエポキシ基を含有する化合物との反応生成物である。
【0045】
基D は、好ましくは、HN(CHNH(CH-又はHN(CHNH(CH)-である。
【0046】
本発明に従って使用される(4)のシランの例は、HN(CHNH(CH-Si(OC 、HN(CHNH(CH-Si(OCCH、HN(CHNH(CHNH( C H - S i(OC 、及びそれらの部分的な加水分解物であり、HN(CHNH(CH-Si(OC、HN(CH)2NH(CH-Si(OCCH又はそれぞれの場合にそれらの部分的な加水分解物である。
【0047】
本発明におけるアミノシランBは、上記式(4)のアミノシランのモノマーやこれら加水分解物に限らず、同様のメカニズムで効果を発現するアミノ変性シリコーンであっても良い。
【0048】
本発明のアミノシランBは、本発明に係る湿気硬化性組成物中で、接着促進剤及び/ 又は水捕捉剤として作用してもよく、さらに硬化性触媒又は共触媒の機能も発揮してもよい。
本発明に従って使用されるアミノシランBは、市販製品であり、化学で一般的に使用される方法によって製造可能である。
【0049】
組成物全体に対するアミノシランBの含有量は特に限定されず、例えば0.1~10質量部の範囲が好ましい。0.1質量部以上であれば、シラン変性ポリマーの加水分解および縮合反応を促進することが可能となる。一方で0.1質量部を下回ると加水分解および縮合反応を触媒する効果が低下すると同時に、接着性も低下する。また10質量部以上だと、湿気硬化型組成物の貯蔵中に加水分解および縮合反応が進行し、貯蔵中にゲル化・硬化するなど貯蔵安定性が悪くなる可能性がある。より好ましくは、0.5~5質量部の範囲である。
【0050】
エトキシ基をはじめとする、炭素数2以上のアルコキシ基を有するアミノシランの加水分解速度は、-CH-SiR (OR3-a で示されるアルコキシシランを末端基とするシラン変性ポリマーAの加水分解速度よりも遅い。このため、シラン変性ポリマーAとアミノシランBを含む湿気硬化性組成物に湿分(例えば、空気中の湿気や、湿気硬化性組成物を塗布する基材に由来する水分である)が供給されると、まずシラン変性ポリマーAのアルコキシ基が加水分解することによりシラノール基を生成し、これらシラノール基同士の脱水縮合反応によってマトリックスが形成され、硬化する。その後、反応速度が遅いことによりシラン変性ポリマーAのマトリックスに取り込まれなかったアミノシランBは、経時的に硬化物の表面へと移行する。すると、硬化物表面近傍に、アミノシランBに由来するアミノ基が配向し、表面に塗布されるトップコート層と相互作用する結果、硬化物とトップコート層との接着性が向上する。硬化物表面に露出するアミノシランBに由来するアミノ基の量が多ければ、接着性はより向上する。このため、アミノシランBはアミノ基を2個以上有することが好ましい。またアミノシランBは、シラン変性ポリマーAよりも加水分解速度が遅いものの、シラン変性ポリマーA同様に加水分解することによりシラノール基を生成し、これらシラノール基とシラン変性ポリマーAの残存シラノール基との縮合反応により、最終的にシラン変性ポリマーAのマトリックスに取り込まれるため、硬化物とトップコート層との接着耐久性が向上すると考えられる。
【0051】
シラン変性ポリマーを含む湿気硬化性組成物から得られる多くの硬化物では、トップコート層との接着性は、一般に良好であるとされていた。これはスズ触媒を用いてシラン変性ポリマーを加水分解・脱水縮合させる系(通常、-(CH-SiR (OR3-a で示されるアルコキシシランを末端基とするポリマーである)においては、その反応速度が種々のアミノシランとの比較において十分に早かったことに起因すると推定される。加水分解されたシラン変性ポリマーのシラノール基同士の脱水縮合によるマトリックスが先に形成され、アミノシランはその種類(特にアルコキシ基の種別)によらず、硬化物の表面に露出してトップコート層との接着性を向上する効果を発揮し得たと考えられるのである。
【0052】
ところが、-CH-SiR (OR3-a で示されるアルコキシシランを末端基とするポリオキシアルキレン重合体(シラン変性ポリマーA)は、スズ触媒により加水分解・脱水縮合反応する他のシラン変性ポリマーよりも反応速度が比較的遅く、かつ、多くのアミノシラン系接着向上剤(メトキシ基を有する比較的加水分解速度の速いアミノシランである)と同等程度の反応速度であるという条件に合致したことで、接着性が悪くなるというシラン変性ポリマーAに特有の問題が生じたと推定される。これらアミノシラン系接着向上剤を含む湿気硬化性組成物の場合、シラン変性ポリマーAでは、シラン変性ポリマーA表面に移行する前にシラン変性ポリマーAマトリックスにアミノシランが取り込まれた状態で硬化する。すると硬化物表面にアミノシランが移行できず、接着性を向上する効果が発揮できない状態となるのである。
【0053】
<トップコート層>
トップコート層は、例えば塗膜層の耐候性、耐光性、耐水性、耐汚染性付与等を目的として硬化物の上(表面)に塗料として塗布される。
トップコート層の種類は特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルブチラール樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂塗料であってもよく、ボイル油や乾性油、油ワニスなどを主成分とした油性塗料や、ニトロセルロース(硝化綿)を主成分としたセルロース塗料等を用いることができる。これらのトップコートは、例えば、強溶剤形、弱溶剤形、及び水系形等であってもよい。
アクリルウレタンのイソシアネート基とアミノシランのアミノ基との反応によりウレア結合が形成されることにより、シラン変性ポリマー硬化物とアクリルウレタン系トップコート層との接着性が向上すると考えられる。またアミノシランとアクリルウレタンの分子間力も接着性向上の一つの要因と考えられる。
【0054】
トップコート層用組成物の添加物としては、紫外線吸収材、光安定材、遮光材、造膜助剤、耐汚染親水性付与材などを例示することができる。また、補修部分の色調を揃えるために、顔料をトップコート層用組成物の塗工液に混合することができる。
遮光材としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、タルク、クレー、などを使用することができる。
造膜助剤としては、テキサノール、ブチルセルソルブ、ブチルセルソルブアセテート、カルビトール、トリエチレングリコールなどを使用することができる。
耐汚染を目的とした親水性付与材料としては、オルガノシリケート、フッ素系界面活性剤、光触媒酸化チタンなどを使用することができる。
溶剤としては、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素化合物を使用することができる。
【0055】
<湿気硬化性組成物に含まれるその他の原料>
上記のシラン変性ポリマーAとアミノシランBを含有する湿気硬化性組成物を、各種用途において各種基材のシーリング材として用いる場合の形態、組成物内容は限定されない。
典型的な用途である、建築建材や工業構造物などの基材適合するシーリング材であって、かつ、硬化物表面にトップコート層を塗布するための組成物としては、下記の組成であることが好ましい。
シラン変性ポリマーA: 5~90質量部
アミノシランB: 0.1~10量部
チキソ調整剤C:0~20質量部
可塑剤D:0~50質量部
脱水剤E: 0~10質量部
安定化剤F: 0.01~5質量部
充填剤G: 0~80質量部
硬化触媒H: 0~5質量部
ただし、各成分の質量部は、湿気硬化型組成物全体を100質量部とした場合の質量部である。
【0056】
任意で配合されるチキソ調整剤Cは、本発明の湿気硬化型組成物に対して、それらのファンデルワールス力により系内でネットワークを形成して系全体を増粘させることで、一定以上のチキソ性を付与するものである。
【0057】
チキソ調整剤Cの原料として用いられる無機粒子としては、例えばシリカ、二酸化チタン、ベントナイト、酸化亜鉛、タルク、カオリン、雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、金属石鹸等の無機粒子が挙げられる。 また、粒子に金属酸化物等を被覆させて得られる複合粒子や、粒子表面を化合物等で処理した改質粒子を用いてもよい。
【0058】
通常これらの粒子の表面はシラノール基、カルビノール基、あるいはその他の水酸基等の親水基で覆われている部分と、それらの基をアルキル基等で疎水化処理した基、ないしは、別の疎水性の基で覆われている部分が存在する。
その親水性基と疎水性基の比率を調整することにより、系における無機粒子の凝集性や溶解性を制御できる。
【0059】
前記無機粒子の中では、シリカを用いることが好ましい。シリカはフュームドシリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカ等の種類があるが、いずれの種類のシリカの粒子においても表面には親水性であるシラノールが存在することと、そのシラノール基を任意の割合でアルキル基等による疎水化処理を行うことができるために、表面の親水基と疎水基のモル比を設定することが容易である。また、シリカは、凝集構造を取ること、各種油分との親和性が高く、入手容易性や経済性等の観点から、広汎な用途を与えることとなるため好ましい。
【0060】
本発明において最も好ましいシリカはフュームドシリカである。
フュームドシリカ粒子は、多次の凝集構造を取っている。そのため、凝集レベルに応じて表面の親水基と疎水基のバランスを制御したり、凝集単位を組み換えたりすることができる。
また、フュームドシリカ粒子は、多孔質構造を有しているので、表面積が大きくなり、より会合や吸着の機能が大きくなるため、系をより安定、均一に生成できるからである。
【0061】
フュームドシリカ粒子は、最小単位である1次粒子は、通常、5~30ナノメートル程度の大きさであり、1次粒子が凝集して1次凝集体、すなわち2次粒子を形成している。
1次凝集体の大きさは、通常、100~400ナノメートル程度である。1次粒子同士は化学結合により融合しているので、1次凝集体を分離するのは通常困難である。さらに、1次凝集体同士が凝集構造を形成しており、これを2次凝集体、すなわち3次粒子と称する。2次凝集体の大きさは概ね10μm程度である。2次凝集体における1次凝集体間の凝集形態は、通常、化学結合ではなく、水素結合やファンデルワールス力によるものである。
【0062】
フュームドシリカ粒子は、粉末状では2次凝集体が多くの場合の最も大きな凝集状態である。しかし、湿気硬化型組成物内では2次凝集体がさらに凝集することができる。すなわち、本発明において疎水化シリカがシラン末端変性ポリマーおよび反応性を有する材料(反応性希釈剤)の疎水部分に対してファンデルワールス力により有効にネットワークを形成している場合が、その一つの例である。その凝集を分離させる力は、2次凝集体を分離させる力よりも弱い力で分離できる。すなわち、本発明における湿気硬化型組成物において、施工時にくし目ごてなどで施工した際、その凝集を分離させることで作用時の粘度が低粘度化することが、その一つの例である。
【0063】
前記フュームドシリカ粒子は、疎水化されている場合が好ましく、疎水化に用いられる成分は特に限定されない。疎水化に用いられる成分は、例えばメチルトリクロロシランのようなハロゲン化有機ケイ素やジメチルジアルコキシシランのようなアルコキシシラン類、シラザン、低分子量のメチルポリシロキサンで、処理する公知の方法によって疎水化することができる。
【0064】
任意で配合されるチキソ調整剤Cは、有機系では例えば、水素添加ひまし油系、アマイド系、酸化ポリエチレン系、植物油重合油系、界面活性剤系などである。チキソ調整剤Cは単一成分でもよくまたはこれらを2種以上併用しても良い。
【0065】
組成物全体に対するチキソ調整剤Cの含有量は、含まれなくてもよいが、0.1~20質量部が望ましく、20質量部を超えると系全体の粘度が増加し、湿気硬化型組成物の製造時の撹拌不良による不均一化、施工時の作業性が著しく低下する可能性があるからである。より好ましくは1~10質量部、さらに好ましくは2~5質量部の範囲である。
【0066】
可塑剤Dは、本発明の湿気硬化型組成物に対し、粘度・粘性調整の機能を有し、引張強さや伸びなどの物性調整剤、また硬化物の柔軟性や耐候性を改良する添加剤として作用することもできる成分である。この成分は、上記の機能や作用を必要とされない場合は、本発明の湿気硬化型組成物にとっては必須成分ではない。可塑剤Dは商業的な製品として購入することができ、または化学的な一般的な方法によって調整することもできる。
【0067】
可塑剤Dの例は、フタル酸エステル、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソオクチル及びフタル酸ジウンデシル; ペルヒドロ化フタル酸エステル、例えば、ジイソノニル 1 , 2 - シクロヘキサンジカルボキシレート及びジオクチル 1 , 2 - シクロヘキサン- ジカルボキシレート; アジピン酸エステル、例えば、アジピン酸ジオクチル; 安息香酸エステル; グリコールエステル; 飽和アルカンジオールのエステル、例えば、2 ,2 , 4 - トリメチル- 1 , 3 - ペンタンジオールモノイソブチレート及び2 , 2 , 4 - トリメチル- 1 , 3 - ペンタンジオールジイソブチレート; リン酸エステル; スルホン酸エステル; ポリエステル; ポリエーテル、例えば、モル質量が好ましくは1 0 0 0 ~ 1 0 00 0 g / m o l のポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール; ポリスチレン; ポリブタジエン; ポリイソブチレン; パラフィン系炭化水素; 及び高分子量の分岐炭化水素である。
【0068】
組成物全体に対する可塑剤Dの含有量は、含まれなくてもよいが、0~50質量部の範囲かが好ましい。50質量部を超えると、塗膜の物性を劣化させるなどの弊害を起す可能性があるのと、施工後に硬化不良、未硬化を起こす可能性があるからである。より好ましくは、0~30質量部の範囲である。
【0069】
脱水剤Eは、本発明の湿気硬化型組成物に対し、水捕捉を行うことにより、脱水せしめる成分である。
脱水剤Eは、商業的な製品として購入することができ、または、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。
脱水剤Eは単体であっても、2種類以上の混合物のいずれでも構わない。
【0070】
脱水剤Eの例は、シラン、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、O-メチルカルバメートメチル-メチルジメトキシシラン、O-メチルカルバメートメチル-トリメトキシシラン、O-エチルカルバメートメチル-メチルジエトキシシラン、O-エチルカルバメートメチル-トリエトキシシランおよび/またはそれらの部分縮合物、およびまた、オルトエステル、例えば、1,1,1-トリメトキシエタン、1,1,1-トリエトキシエタン、トリメトキシメタンおよびトリエトキシメタンである。
【0071】
組成物全体に対する脱水剤Eの含有量は、含まれなくてもよいが、0.01~10質量部の範囲が好ましい。0.01質量部未満だと、脱水の効果が十分でなく、製造中および保存中に増粘、ゲル化、硬化などの不具合が生じる可能性があり、10質量部を超えると、塗膜の物性を劣化させるなどの弊害を起す可能性があるのと、施工後に硬化不良、未硬化を起こす可能性があるからである。より好ましくは、0.5~3.0質量部の範囲である。
【0072】
安定化剤Fは、本発明の湿気硬化型組成物に対し、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤や光安定剤の機能を有し、ポリマー劣化の安定化剤として作用することもできる成分である。
安定化剤Fは、商業的な製品として購入することができ、または、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。
安定化剤Fは単体であっても、2種類以上の混合物のいずれでも構わない。
【0073】
安定化剤Fは、上記機能、作用を示すものでればよく、限定されないが、好ましくは、酸化防止剤、紫外線安定剤、HALSである。
【0074】
組成物全体に対する安定化剤Fの含有量は、0.01~5質量部の範囲が好ましい。0.01質量部未満だと、紫外線や熱、酸化などによる塗膜劣化が起きる可能性があり、5質量部を超えると、予期せぬ不具合、例えば透明の製品であれば色調変化等、を起す可能性があるからである。より好ましくは、0.5~2.0質量部の範囲である。
【0075】
任意で配合される充填剤Gは、本発明の湿気硬化型組成物に対し、増量材、粘度・粘性調整や引張強さや伸びなどの物性調整の機能を有し、含有する水分によってコーティング材の硬化促進剤として作用することもできる成分である。この成分は、上記の機能や作用を必要とされない場合は、本発明のコーティング材組成物にとっては必須成分ではない。
充填剤Gは、商業的な製品として購入することができ、または、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。
充填剤Gは単体であっても、2種類以上の混合物のいずれでも構わない。
【0076】
充填剤Gは、上記機能、作用を示すものでればよく、限定されないが、例としては、非補強性充填剤、好ましくは、最大50m2/gのBET表面積を有する充填剤、例えば、石英、珪砂、珪藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、タルク、カオリン、ゼオライト、金属酸化物粉末、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、または酸化亜鉛および/またはそれらの混合酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、セッコウ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ガラス粉末およびポリマー粉、例えば、ポリアクリロニトリル粉末;補強性充填剤、50m2/gを超えるBET表面積を有する充填剤、例えば、熱分解により調製されたシリカ、沈降シリカ、沈降炭酸カルシウム、カーボンブラック、例えばファーネスブラックおよびアセチレンブラックおよび高いBET表面積の混合ケイ素/アルミニウム酸化物;三水酸化アルミニウムの中空ビーズの形の充填剤、例えば、ドイツ、ノイスの3M Deutschland GmbHから商標名Zeeospheres(商標)の下で入手できるものが例である磁性マイクロビーズ、例えば、スウェーデン、スンツバルのAKZONOBEL,Expancelから商標名EXPANCEL(登録商標)の下で入手できるその種の弾性ポリマービーズ、またはガラスビーズ;繊維形状の充填剤、例えば、アスベストおよびまたポリマー繊維である。
上記の充填剤は、例えば、オルガノシランおよび/もしくはオルガノシロキサンによる、または、ステアリン酸による処理によって、またはヒドロキシル基のアルコキシ基へのエーテル化によって疎水化されていてもよい。
【0077】
充填剤Gは、好ましくは、炭酸カルシウム、タルク、水酸化アルミニウムおよびシリカであり、炭酸カルシウムが特に好ましい。好ましい炭酸カルシウムのグレードは、粉砕または沈降であり、ステアリン酸等の脂肪酸またはそれらの塩により場合によって表面処理されている。好ましいシリカは、好ましくは、熱分解された(ヒュームド)シリカである。
【0078】
充填剤Gは、好ましくは1質量部未満、より好ましくは0.5質量部未満の水分含量を有する。
【0079】
組成物全体に対する充填剤Gの含有量は、0~80質量部の範囲が好ましい。より好ましくは、0~60質量部の範囲である。前記範囲内では、接着不良、皮膜の割れ、などコーティング材としての欠陥が発生する可能性が低く、また、製造時の粘度が適しているため均一に撹拌することができるからである。
【0080】
硬化触媒Hは、本発明の湿気硬化型組成物に対し、硬化触媒の機能を有する成分である。この成分は、上記の機能や作用を必要とされない場合は、本発明の湿気硬化型組成物にとっては必須成分はないが、シラン末端変性ポリマー(A)の反応性が低い場合には有効となる成分である。
硬化触媒Hは、商業的な製品として購入することができ、または、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。
硬化触媒Hは単体であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
【0081】
硬化触媒Hは、上記機能、作用を示すものでればよく、限定されないが、金属を含む成分Hの例は、有機チタンおよび有機スズ化合物であり、例は、チタン酸エステル、例えば、チタン酸テトラブチル、チタン酸テトラプロピル、チタン酸テトライソプロピルおよびチタンテトラアセチルアセトネート;スズ化合物、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクタノエート、ジブチルスズアセチルアセトネート、ジブチルスズオキシドおよび対応するジオクチルスズ化合物である。
【0082】
金属を含まない硬化触媒Hの例は、塩基性化合物、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、N,N-ビス-(N,N-ジメチル-2-アミノエチル)メチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミンおよびN-エチルモルホリニン(ethylmorpholinine)である。
【0083】
硬化触媒Hとして、酸性化合物、例えば、リン酸およびそのエステル、トルエンスルホン酸、硫酸、硝酸、またはその他の有機カルボン酸、例えば、酢酸および安息香酸を使用することが同様に可能である。
【0084】
組成物全体に対する硬化触媒Hの含有量は、0~5質量部の範囲が好ましい。5質量部を超えると、可使時間が短くなることによる施工不良が起き、皮膜表面にしわが発生する可能性があり、保存中に増粘、ゲル化、硬化などの不具合が生じる可能性があるからである。より好ましくは、0~0.2質量部の範囲である。
【0085】
本発明の湿気硬化型組成物は、上述した成分以外にも、本発明の目的を達する限りにおいて、任意成分を含有することができる。例えば、消泡剤、硬化速度調整材、添加剤、接着向上剤および補助剤等の全てのその他の物質を含むことができる。場合により、接着性を向上させる成分、例えばエポキシシラン等、を添加することもできる。
【0086】
本発明に係る積層体は、基材上に上記湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物が形成され、前記硬化物の表面上に、トップコート層が配置される構成であり、基材と硬化物、硬化物とトップコート層とがそれぞれ密着されている。
【0087】
上記の湿気硬化性組成物は、常温での水分との反応により、マトリックス(三次元的な網状組織)を形成し、硬化物へと硬化する。 このような湿気硬化性組成物は、建築用シーリング材の他、バス・トラック・乗用車、鉄道など車輛、船舶、コンテナなどのシーリング材、接着剤、コーティング剤、密封剤などとして使用される。特に自動車、鉄道車両への使用は工業上重要である。
【0088】
自動車の製造工程は、大別すると、車体組立工程、塗装工程、組立工程などからなる。これらの工程のうち、上記の湿気硬化性組成物は特に塗装工程で使用される。
上記の湿気硬化性組成物は、自動車等の車輛、船舶、コンテナ等の修理工程においても使用される。
【0089】
塗装工程や修理工程において、硬化性組成物は、防水、防錆などの目的で基材(例えば車体である)に塗布され、常温での養生により硬化させる。その後、車体および硬化した湿気硬化性組成物の上にトップコート層を塗装し、硬化物とトップコート層とを接着させる。
【0090】
すわなち、以下の工程1~3を含む方法において上記の湿気硬化性組成物を用いて積層体を製造する。
【0091】
(工程1)
工程1は、上記のシラン変性ポリマーAとアミノシランBを含む湿気硬化性組成物を基材に塗布する工程である。
【0092】
基材としては、ガラス、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、銅、モルタル、車体用フレーム、車体用パネルなどの無機基材、および有機基材などの各種基材をあげることができる。有機基材としては、塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどがあげられる。
【0093】
塗布される湿気硬化性組成物は、1液型硬化性組成物であってもよく、2液型組成物を混合して調製された組成物であってもよい。
塗布方法としては、特に制限はなく、公知の方法で行うことができる。
【0094】
(工程2)
工程2は、工程1で塗布された硬化性組成物を常温で養生して硬化させる工程である。
【0095】
硬化温度としては、特に制限はなく、常温が好ましく、0℃~40℃がより好ましく、10℃~35℃がさらに好ましく、15℃~30℃がもっとも好ましい。
【0096】
硬化時間としては、特に制限はなく、少なくとも湿気硬化性組成物の表面が硬化していればよく、1~48時間が好ましく、2~36時間がより好ましく、5~24時間がさらに好ましく、12~24時間がもっとも好ましい。
【0097】
(工程3)
工程3は、工程2で硬化させた硬化性組成物の硬化物の上にトップコート層を塗装する工程である。トップコート層を塗布したのち、必要に応じて加熱硬化の工程を実施することもできる。加熱硬化の温度は硬化性組成物およびトップコート層の特性に応じて適宜選択することができ、例えば100℃以上であればよく、100℃~200℃であってもよい。
また、塗料を短時間で硬化させる観点からは、硬化温度は、例えば160℃~230℃が好ましく、180℃~220℃がより好ましい。
硬化時間としては10分間~5時間が好ましく、10分間~3時間がより好ましく、10分間~1時間がさらに好ましい。
【実施例
【0098】
実施例、比較例を示し、表1に結果を記載した上で本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0099】
<上塗り材との接着性評価試験体作成方法>
実施例、比較例で得られた湿気硬化型組成物について、アルミニウム基材に膜厚約2mmになるように塗布し、標準条件下(23±2℃、50±5%RH)で1日間養生する。硬化したこれら湿気硬化型組成物に上塗り材(すなわちトップコート層である)としてアクリルウレタン塗料(関西ペイント社製、レタンPGエコディープブラック)を刷毛で塗布(塗布量約100g/m)15分後、60℃で30分間乾燥させ、さらに標準条件下で1日間養生する。
【0100】
<上塗り材との接着性評価方法>
JIS K5600-5-6 クロスカット法に準拠し評価し、評価分類が0、1の場合、接着性を合格とした。
試験片の表面の塗膜を1mm間隔100マスの碁盤目状にカットし、その上に粘着テープを貼付し、続けてその粘着テープを剥離したときの剥離の程度から、以下の基準で密着性を評価した。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥離がない。
分類1:クロスカット部分に0%超5%以下の剥離がある。
分類2:クロスカット部分に5%超15%以下の剥離がある。
分類3:クロスカット部分に15%超35%以下の剥離がある。
分類4:クロスカット部分に35%超65%以下の剥離がある。
分類5:剥離の程度が分類4を超える。
【0101】
<実施例1>
湿気硬化型組成物として次の各成分を用いた。
シラン変性ポリマーAとして、Wacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標) STP-E30(粘度が25℃において30、000 mPa・s、上述の一般式(1)においてYはポリマー鎖としてオキシアルキレン基を含むウレタン基を介して結合されている2価の有機ポリマー基であり、R1、R2はいずれもメチル基であり、a=1であり、x=2である)を25.0質量部に対して、可塑剤Dとして、富士フイルム和光純薬社製のポリプロピレングリコール(ジオール型、分子量2000)を23.5質量部、、ビニルシラン系脱水剤EとしてWacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標)XL10(ビニルトリメトキシシラン)を2.0質量部、安定化剤Fとして、BASFジャパン社製のTinuvin B75を1.0質量部、充填剤Gとして、備北粉化工業社製のソフトン2200を22.0質量部、また白石カルシウム社製の白艶華CCRを22.0質量部、チキソ調整剤Cとして、Wacker Chemie AG社製のHDK(登録商標)H18を2.0質量部、アミノシランBとして、同社製のGENIOSIL(登録商標)GF94(3-(2-アミノメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン)を2.5質量部を添加し均一に撹拌し、湿気硬化型組成物1を調整した。
Y-[CH-SiR (OR3-a (1)
【0102】
湿気硬化型組成物1の上塗り接着性評価の結果、評価分類が0であるため、上塗り材との接着性は合格とした。
【0103】
<実施例2>
可塑剤DとしてBASFジャパン社製のHexamoll(登録商標) DINCH(登録商標)(1、2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル)を23.5質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化型組成物2を得て、同様の評価を行った。
【0104】
湿気硬化型組成物2の上塗り接着性評価の結果、評価分類が1であるため、上塗り材との接着性は合格とした。
【0105】
<比較例1>
アミノシランBとして、同社製のGENIOSIL(登録商標)GF93(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)を2.5質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化型組成物3を得て、同様の評価を行った。
【0106】
湿気硬化型組成物3の上塗り接着性評価の結果、評価分類が5であるため、上塗り材との接着性は不合格とした。
【0107】
<比較例2>
アミノシランBとして、同社製のGENIOSIL(登録商標)GF93(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)を2.5質量部用いた他は、すべて実施例2と同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化型組成物4を得て、同様の評価を行った。
【0108】
湿気硬化型組成物4の上塗り接着性評価の結果、評価分類が5であるため、上塗り材との接着性は不合格とした。
【0109】
<比較例3>
アミノシランBとして、同社製のGENIOSIL(登録商標)GF91(N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)を2.5質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化型組成物5を得て、同様の評価を行った。
【0110】
湿気硬化型組成物5の上塗り接着性評価の結果、評価分類が5であるため、上塗り材との接着性は不合格とした。
【0111】
<比較例4>
アミノシランBとして、同社製のGENIOSIL(登録商標)GF95(N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)を2.5質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化型組成物6を得て、同様の評価を行った。
【0112】
湿気硬化型組成物6の上塗り接着性評価の結果、評価分類が5であるため、上塗り材との接着性は不合格とした。
【0113】
<比較例5>
アミノシランBとして、同社製のGENIOSIL(登録商標)GF96(3-アミノプロピルトリメトキシシラン)を2.5質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化型組成物7を得て、同様の評価を行った。
【0114】
湿気硬化型組成物7の上塗り接着性評価の結果、評価分類が5であるため、上塗り材との接着性は不合格とした。
【0115】
<比較例6>
可塑剤DとしてBASFジャパン社製のHexamoll(登録商標) DINCH(1、2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル)を23.5質量部用いた他は、すべて比較例5と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化型組成物8を得て、同様の評価を行った。
【0116】
湿気硬化型組成物8の上塗り接着性評価の結果、評価分類が5であるため、上塗り材との接着性は不合格とした。
【0117】
<比較例7>
シラン変性ポリマーとして、反応性ケイ素基にメチレン基が3個直結するWacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標) STP-E35(粘度が25℃において30、000 mPa・s、以下一般式(5)においてYはポリマー鎖としてオキシアルキレン基を含むウレタン基を介して結合されている2価の有機ポリマー基であり、R1、R2はいずれもメチル基であり、a=0であり、x=2である)を25.0質量部、硬化触媒(J)として、日東化成社製のネオスタンU810(ジオクチルスズジラウレート)を0.2重量部用いた他は、すべて比較例5と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化型組成物9を得て、同様の評価を行った。
Y-[(CH-SiR (OR3-a (5)
【0118】
湿気硬化型組成物9の上塗り接着性評価の結果、評価分類が0であるため、上塗り材との接着性は良好であった。メチレン基を3個有するシラン変性ポリマーを用いる場合には、アミノシランがアミノ基を1つ含み、メトキシ基を含む化合物であっても良好な接着性を示すものの、有害なスズを含有する硬化触媒を使用しなければ硬化させることができない点が問題となる。
【0119】
(まとめを追記しました)
以上の結果から、アルコキシシラン末端基にメチレン基が1つ直結するポリオキシアルキレン重合体を含有している湿気硬化性組成物をシーリング材として用いる場合に、2個以上のアミノ基と、1個以上のエトキシ基を有するアミノシランを配合するとトップコート層との接着性が、JIS K5600-5-6クロスカット法における分類0または分類1が得られる程度にまで接着性評価結果が向上することが確認できた。
【0120】
【表1】