(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】金属帯材および板材のマルチモード製造のためのプラントおよび方法
(51)【国際特許分類】
B21B 1/46 20060101AFI20220627BHJP
B21B 1/26 20060101ALI20220627BHJP
B21B 13/22 20060101ALI20220627BHJP
B21B 15/00 20060101ALI20220627BHJP
B21B 39/00 20060101ALI20220627BHJP
B21B 45/02 20060101ALI20220627BHJP
B22D 11/126 20060101ALI20220627BHJP
B22D 11/12 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
B21B1/46 B
B21B1/26 Z
B21B13/22
B21B15/00 B
B21B39/00 A
B21B39/00 E
B21B45/02 320S
B22D11/126
B22D11/12 A
(21)【出願番号】P 2020504467
(86)(22)【出願日】2018-04-09
(86)【国際出願番号】 IB2018052459
(87)【国際公開番号】W WO2018189652
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】102017000039423
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516372321
【氏名又は名称】アルヴェーディ スティール エンジニアリング ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルベディ、ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】ビアンキ、アンドレア テオドロ
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-538836(JP,A)
【文献】国際公開第2007/045988(WO,A2)
【文献】特表2008-534289(JP,A)
【文献】特表2000-512910(JP,A)
【文献】特表2016-516590(JP,A)
【文献】特開2011-235353(JP,A)
【文献】特表平06-506876(JP,A)
【文献】特表平11-511696(JP,A)
【文献】特表2001-525253(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0147484(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00-99/00
B22D 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.6mm~50mmの厚さ又は鋳造スラブの最大厚さの半分の厚さの熱間圧延鋼の帯材および板材のエンドレス製造、バッチ製造または複合製造のためのプラントであって、
連続鋳造機(1)であって、該連続鋳造機(1)の出口での最小のスラブ厚さが80mmである薄いスラブを作る未凝固圧下を用いた連続鋳造機(1)、
続いて、第1のシャー(3)を介して誘導加熱器(2)、
次に、圧延機(4)、
続いて、第2のシャー(5)、
冷却装置(6)及び板材用のプッシャー/パイラー(7)を有するランアウトテーブル、
次に、第3のシャー(8)および複数のコイラー(9)
を備える前記プラントにおいて、
前記プラントは、前記連続鋳造機(1)と前記第1のシャー(3)との間に配置された最小圧下圧延スタンド(10)をさらに備え、該最小圧下圧延スタンド(10)は、8mmの厚さ減少から開始して、圧下率が10%~20%の圧下を行うように設計されている、プラント。
【請求項2】
前記連続鋳造機(1)と前記最小圧下圧延スタンド(10)との間に配置された追加の誘導加熱器(11)およびデスケーラー(12)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載されたプラント。
【請求項3】
前記最小圧下圧延スタンド(10)は、前記圧延機(4)の第1のスタンドよりも直径の小さいワークロールを有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載されたプラント。
【請求項4】
スラブ幅を各側で最大50mm減少させるように設計されたエッジャー(14)をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたプラント。
【請求項5】
前記エッジャー(14)は、前記最小圧下圧延スタンド(10)または前記圧延機(4)のすぐ上流に配置されることを特徴とする請求項4に記載されたプラント。
【請求項6】
前記エッジャー(14)の前に配置された誘導エッジ加熱器(15)をさらに備えることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載されたプラント。
【請求項7】
前記最小圧下圧延スタンド(10)と前記誘導加熱器(2)との間に接続炉(16)をさらに備え、該接続炉(16)は、スラブ(S)の導入/取り出しおよび制御された前進を可能にするように設計され、前記接続炉(16)は、最終製品の帯材のコイルまたはバッチ生産サイクルで生産される板材の積層体の重量に対応する重量のスラブ(S)を入れるのに十分な長さを有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載されたプラント。
【請求項8】
前記接続炉(16)が、ガス加熱式ローラーハース炉またはウォーキングビーム炉であることを特徴とする請求項7に記載されたプラント。
【請求項9】
前記接続炉(16)の直前に第4のシャー(17)を備え、前記接続炉(16)は、前記接続炉(16)からスラブ(S)を取り出すためのパイラー(18)およびスラブ(S)を前記接続炉(16)に導入するためのローディングステーション(19)を備えることを特徴とする請求項7または請求項8に記載されたプラント。
【請求項10】
前記冷却装置(6)は、板材の急冷を行うことができる第1の冷却領域を有することを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載されたプラント。
【請求項11】
前記プッシャーまたはプッシャー/パイラー(7)によって取り出された板材の多段高圧冷却を行う板材専用のオフライン冷却装置(20)をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載されたプラント。
【請求項12】
前記冷却装置(6)の前記第1の冷却領域または前記板材専用のオフライン冷却装置(20)から板材を受け取る板材処理ラインをさらに備え、該板材処理ラインは、順に焼戻し炉(21)、制御冷却(22)、スキンパススタンド(23)およびローラーレベラー(24)を備えることを特徴とする、請求項10を引用する請求項11に記載されたプラント。
【請求項13】
前記冷却装置(6)が板材専用の設定に調整可能であり、追加のプッシャー/パイル(7’)が前記冷却装置(6)と前記コイラー(9)との間に配置されることを特徴とする請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載されたプラント。
【請求項14】
最初の2つの圧延スタンドの後の任意の位置で、前記圧延機(4)の圧延スタンドの間に位置する冷却または加熱装置をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載されたプラント。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載されたプラントにより、0.6mm~50mmの厚さ又は鋳造スラブの最大厚さの半分の厚さの熱間圧延鋼の帯材および板材のエンドレス又はバッチの製造方法であって、
最小のスラブ厚さが80mmである薄いスラブ(S)を未凝固圧下による連続鋳造(1)と、
その後に誘導加熱器(2)での加熱、仕上げ圧延(4)と、
その後、板材の製造の場合は最終せん断(5)、帯材の製造の場合は制御冷却(6)、最終せん断(8)および巻き取りと
を含む前記製造方法において、
前記誘導加熱器(2)での加熱の前に、8mmの厚さ減少から開始して、スラブ(S)の圧下率が10%~20%の圧下率の初期圧延(10)をさらに含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項16】
前記初期圧延(10)の前に、追加の誘導加熱器(11)による加熱および脱スケール(12)が先行することを特徴とする、請求項15に記載された製造方法。
【請求項17】
各側で最大50mmの幅減少が可能なスラブの狭側部の垂直圧延(14)をさらに含み、前記垂直圧延(14)は、前記初期圧延(10)または前記仕上げ圧延(4)の直前に行うことを特徴とする、請求項15または請求項16に記載された製造方法。
【請求項18】
前記垂直圧延(14)の前に、誘導エッジ加熱器(15)によるスラブエッジの加熱を行うことを特徴とする、請求項17に記載された製造方法。
【請求項19】
板材の製造の場合、前記最終せん断(5)の後に、板材の急冷に相当する制御冷却(6)を含むことを特徴とする、請求項15から請求項18までのいずれか1項に記載された製造方法。
【請求項20】
板材の製造の場合、前記最終せん断(5)の後の板材の取り出し(7)、および板材専用のオフライン冷却装置(20)による板材の多段高圧冷却をさらに含むことを特徴とする請求項15から請求項18までのいずれか1項に記載された製造方法。
【請求項21】
前記急冷の後に、順に板材の焼き戻し(21)、制御冷却(22)、スキンパス(23)およびレベリング(24)をさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載された製造方法。
【請求項22】
前記多段高圧冷却の後に、順に板材の焼き戻し(21)、制御冷却(22)、スキンパス(23)およびレベリング(24)をさらに含むことを特徴とする、請求項20に記載された製造方法。
【請求項23】
板材の製造の場合、前記最終せん断(5)の後に、板材専用の設定に調整された前記制御冷却(6)を行い、前記制御冷却(6)の後に板材の取り出しを行なうことを特徴とする請求項15から請求項18までのいずれか1項に記載された製造方法。
【請求項24】
前記製造方法が請求項9に記載されたプラントにより実施され、
前記最小圧下圧延スタンド(10)と前記誘導加熱器(2)との間に設けられた接続炉(16)を使用して、前記接続炉(16)からのスラブ(S)を出発材料として使用するステップをさらに含み、該スラブは、周囲温度で前記ローディングステーション(19)により導入されたか、又はバッファとして使用する場合は、前記接続炉(16)で高温に保持されたスラブであることを特徴とする請求項15から請求項23までのいずれか1項に記載された製造方法。
【請求項25】
前記製造方法が請求項9に記載されたプラントにより実施され、
前記最小圧下圧延スタンド(10)と前記誘導加熱器(2)との間に設けられた接続炉(16)を使用し、前記接続炉(16)の下流のプラント部分に問題が発生した場合、第4のシャー(17)によりスラブ(S)を切断し、パイラー(18)によって前記接続炉(16)から取り出す工程をさらに含むことを特徴とする請求項15から請求項24までのいずれか1項に記載された製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント生産性および費用効果が大きく製品品質が高く寸法範囲の大きい熱間圧延帯材および板材の連続製造またはバッチ製造のためのプラントおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業界では、使用される原材料およびエネルギーコストの上昇、世界市場で求められる競争の激化、および汚染に関してますます厳しくなる規制を考慮すると、投資及び生産コストが低く生産の柔軟性の大きい特に高品質の熱間圧延鋼帯材および板材の製造方法に強い需要があることが知られている。その結果、エネルギー消費量の少ない最終製品の製造産業の競争力が大きくなる可能性があり、このようにして環境への悪影響を最小限に抑えることができる。
【0003】
従来技術は、実質的に、本発明者の以前の特許、とりわけ後に詳述する欧州特許第1558408号および欧州特許第1868748号に記載されている。欧州特許第1558408号では、いわゆる「鋳造圧延」技術が使用される。これは薄スラブの連続鋳造を未凝固圧下(LCR)に結合し、高圧下ミル(HRM)または粗圧下ミルによる第1粗圧延工程として、これにより中間製品を製造する。中間製品は、誘導加熱器での加熱段階とその後のスケール除去の後、仕上圧延の第2段階でさらに処理される。
【0004】
また、上記の欧州特許第1558408号では、粗圧延機の下流のプラント部分に問題がある場合に、連続鋳造処理およびそれによるライン生産の中断を防止するために、最初の粗圧延工程の後に、緊急システムとして粗圧延板を抜き出す可能性が予測されている。高品質板材の生産に必要な制御された冷却システムがないため、これらの板材は販売できず、必然的にスクラップに戻し、生産サイクルに再導入する必要がある。
【0005】
欧州特許第1558408号および従来技術の他のプラントの両方において、粗圧延機の出口と仕上圧延機の入口との間で、中間製品は約230℃の温度低下が生じるため、その温度低下を誘導加熱器によって補償して、粗圧延機の出口において製品のオーステナイト温度域の下限に相当する約820~850℃を超える温度にしなければならない。
【0006】
欧州特許第1868748号は、プラントの小型化および省エネの観点からいくつかの改善を教示しており、連続性を解決することなく連続鋳造を圧延工程に直接接続して単一の製造工程にしている。実際には、粗圧延および仕上圧延の独立した2つの圧延工程ではなく単一の圧延工程であり、連続鋳造の出口と圧延機の最初のスタンドとの間の距離は、スラブの温度低下を制限するために50mを超えないようにされる。欧州特許第1868748号は、「エンドレス」モードのみで、コイルに使用される冷却システムを使用した板材の製造も行う。この方法は、板材の製造には最適ではないとこがわかっている「エンドレス」モードはコイル製造によく適合しており、板材の冷却条件はコイルのものとは大きく異なるからである。
【0007】
他の従来技術の鋳造および圧延プラントは、国際公開第2007/045988号および独国特許出願公開第102011004245号(DE102011004245)に記載されている。国際公開第2007/045988号の場合、鋳造スラブは、未凝固圧下前の最大厚さが50mmであり、未凝固圧下により40mmにされる。鋳造機のすぐ下流にあるピンチロールにより最大3mmの厚さ減少が行われる。独国特許出願公開第102011004245号では、粗圧延機が鋳造機のすぐ下流に配置され、スラブの厚さを最大70%減少させる。しかし、後続の圧延ラインに問題がある場合、この厚さの減少は一時的にゼロまで減少され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許第1558408号明細書
【文献】欧州特許第1868748号明細書
【文献】国際公開第2007/045988号
【文献】独国特許出願公開第102011004245号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許の教示でこれまでに得られた結果は、製品、特に鋼帯の品質に関しては最適であるが、技術、プラント、生産性および生産の柔軟性に関してまだ改善の余地があることを示している。以下、改善の必要な事項を示す。
【0010】
1.鋳造機と圧延機との間の鋳造スラブの中断を伴う「バッチ」モードまたは「複合」モードでの生産の可能性を導入する。換言すると、圧延機に入るスラブは、連続鋳造機での速さと別の異なる速さを有する。この可能性は、次の理由から、プラントおよび生産の重要な柔軟性を提供する。
・厚さが3mmを超えるコイルの製造においては、「エンドレス」モードの代わりに「バッチ」モードを使用することにより、生産計画により、異なる厚さを持っている連続する2つのコイル間の許容範囲外の相当の重量の鋼帯片が排除される。
・1.5~2.0mmを超える厚さのコイルの製造では、鋳造機での質量流量が圧延機の質量流量よりも小さくなる可能性があり、「バッチ」モードによりエネルギー消費を削減できる。特に誘導加熱器では、圧延速度が速いために熱損失が減少する。
・高品質の板材の製造において、鋳造される鋼の種類に必要な鋳造速度を低く維持する必要があるため、鋳造機での質量流量は圧延機の質量流量よりも低くしなければならない。
・連続する2つのコイルの厚さが大きく異なるコイルの製造では、通過する材料がないときに圧延スタンドのギャップの設定を変更する必要がある。「複合」モードでは、第1のコイルをほぼエンドレスモードで製造するが、その最後の部分は、スラブを切断して「バッチ」モードで製造する。これにより、加速してより速く圧延し、圧延機を空にして異なる厚さの第2のコイルの再設定に必要な時間をつくる。
【0011】
2.圧延工程を行う前のスラブ表面品質を改善する。
【0012】
3.連続鋳造機と「バッチ」技術を採用するプラントで使用されるペンデュラム型シャーとの間へ「メカニカルフィルター」を導入する。これにより、ペンデュラム型シャーによるスラブの切断が、鋳造機の金型のメニスカスに摂動を引き起こす場合に発生する問題を回避する。
【0013】
4.修理により圧延機が利用できない場合、従来技術のプラントのように板材を廃棄する代わりに、加熱および圧延の可能なスラブを製造することによりプラントの収益性を高める。
【0014】
5.以下のスラブの圧延の可能性を導入することによるプラントの収益性の向上。
溶解プラント、特に上記4で述べたスラブが利用できない場合、同じ作業で生産されて生産ラインに導入される圧延スラブ、および/または
特定のシナリオで市場で有利な価格で購入した圧延スラブ。
【0015】
6.専用の冷却システム及びその後続の専用の板材処理ラインを設置することにより、生産される板材の品質を向上させる。
【0016】
7.鋳造速度を9m/minに増大させ、その結果、相対質量流量を8ton/minに上げることにより、生産量を年4,000,000トンに増大させる。
【0017】
8.鋼帯の幅交差を更に向上させる。
【0018】
9.連続鋳造の金型内の側面の位置を変えることなく帯材の幅を縮小させる。これにより金型幅、ひいては質量流量が変わらないため、生産性が向上する。
【0019】
10.帯材および板材の両方の端面品質をさらに向上させる。
【0020】
したがって、本発明の目的は、熱間圧延帯材または板材の連続した製造のための解決手段を提供することであり、帯材の厚さが0.6mm~12mm、板材の厚さが12mm~50mmまたはいずれの場合でも未凝固圧下を用いた連続鋳造機の出口でのスラブの厚さの半分であり、そのスラブ厚さは最小80mm、最大幅は少なくとも2100mm、または予測される最大金型幅である。この解決手段は、上記の従来技術と比較して、帯材または板材の品質は同等以上であり、エネルギー消費が少なく、環境への影響が少なく、生産性および柔軟性が高いものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この結果は、先行技術の教示に従って建設されたプラントには見られない生産の柔軟性を実現するために、鋳造スラブを中断することのない「エンドレス」生産技術と、鋳造機と圧延機との間の鋳造スラブを中断する「バッチ」または「複合」生産技術の両方を使用して得られる。
【0022】
プラントおよび方法を改善するために本発明で採用される有利な手段には以下が含まれる。
a)連続鋳造機と誘導加熱器との間に、以下を達成できる最小圧延スタンド(いわゆる「キスパス」スタンド)を導入する。
・スラブの結晶組織の最適化。連続鋳造機の出口でスラブ表面を構成する粗い結晶粒を再結晶化して、後続の圧延ステップで容易に分離しにくい細かな結晶粒を得る。
・「バッチ」技術を使用する先行技術のプラントで発生する上記の問題を回避するために、鋳造機と後続のシャー切断機との間に「機械的フィルター」を形成する。
【0023】
b)狭面垂直圧延スタンド(エッジャー)を導入する。これは、次の目的で、好ましくは最初の圧延スタンド(すなわち、「キスパス」スタンド)の上流に配置される。
・最も冷えた部分であり、クラック形成に最も敏感な部分であるスラブのエッジを再結晶させる。
・スラブエッジを成形して、後続の圧延ステップでの引張応力を最小限に抑える。
・最終顧客が必要とする、ますます厳しくなる幅の許容公差を改善する。
・プラントの生産性を低下させることなく、スラブ幅の縮小を各側で最大50mmにする。
【0024】
c)「キスパス」スタンドと誘導加熱器の間に、以下を可能にする接続ローラー炉またはウォーキングビーム炉を導入する。
・圧延機が使用できない場合、スラブを退避させる。スラブは、廃棄される可能性のある板材にされるのではなく、生産のために再び導入される可能性がある。
・「エンドレス」(薄い帯材の生産に最適)または「複合」および「バッチ」(より厚い帯材の生産および板材の生産に最適)の3つの生産動作モードから選択する。
・周囲温度で炉に導入されたスラブから生産サイクルを開始する
・圧延機修理のためのバッファとして使用される炉内に生産された高温スラブを保管し圧延機が再び使用可能になると供給する。
【0025】
d)圧延機の下流の板材用に特定の冷却装置を導入し、場合によっては後続に専用の板材処理ラインを導入する。
【0026】
本発明によるプラントおよび方法のさらなる利点および特徴は、
図1として添付された唯一の図面を参照した実施形態の以下の詳細かつ非限定的な説明から当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】最も完全な実施形態であるプラントの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照すると、本発明によるプラントは、従来通り、連続鋳造機1を含み、一定の距離で誘導加熱器2が続き、その間にペンデュラム型シャー3との間へ「メカニカルフィルター」を導入する。これにより、ペンデュラム型シャー3があり、次いで圧延機4が続き、ロータリーシャー5、冷却装置6を有するランアウトテーブル、板材用のプッシャーまたはプッシャー/パイラー7が続き、最後にダウンコイラー9の前の高速シャー8がある。
【0029】
より具体的には、鋳造機1は、金型を含み、湾曲した未凝固圧下領域が続き、最小厚さが80mm、例えば100mm×2100mmmのスラブを最大で9m/minの鋳造速度で製造する。次いで、スラブは、仕上圧延機4に入る前に、図示の例では4つのコイルを含む誘導加熱器2によって加熱される。仕上圧延機4は、図示の例では最大7台のスタンドを含み、スラブは順次厚さが減少させられ、圧下率は例えば、58%、52%、47%、43%、40%、35%、30%にように順次減少される。最初のスタンド(図示の例では最初の2つ)のワークロール直径が大きい。
【0030】
仕上圧延機4は、最初の2台のスタンドの後の任意の位置での圧延スタンド間に配置された冷却装置および/または加熱装置(例えば、ガスヒーターまたは誘導ヒーター)を含み、特定の特性およびニーズによる圧延材料の温度に適合させることにより、圧延条件をより良く制御できる。
【0031】
次に、得られた帯材は、冷却装置6によって冷却され、最終的にダウンコイラー9によって巻き取られ、コイルが意図した重量に達したときに高速シャー8によって切断される。あるいは、スラブが板材の厚さに圧下される場合、ロータリーシャー5によって板に切断され、プッシャーまたはプッシャー/パイラー7によって板がラインから移動される。その移動は冷却装置6の第1領域で冷却された後であり得る。
【0032】
本発明の第1の新規な態様は、連続鋳造機1とペンデュラム型シャー3との間にいわゆる「キスパス」スタンド10が存在することである。「キスパス」スタンド10は、約10%の圧下を実行し、いかなる場合も20%以下である。そのため、約8mmの厚さ減少から開始する。それは機械的な目的ではなく冶金的な目的を有する。実際、上記のように、この最小の圧下率により、鋳造機1から出たスラブ表面の粗い結晶粒を再結晶化して、圧延機4で実施される圧延工程中に分離する可能性の低い小さな結晶粒としてスラブ表面結晶組織を最適化することを目的とする。好ましくは、プラントは、鋳造機1とスタンド10との間に、図示の例では2つのコイルを有する追加の誘導加熱器11およびデスケーラー12をも備え、a)延性ドラフト温度範囲の回避、b)偏析要素の固溶の維持、およびc)「キスパス」圧下の結果の改善(同様に、さらにデスケーラー13を圧延機4の前に設置することが好ましい)を行う。
【0033】
さらに、鋳造合金には、結晶粒の縁部に集まる傾向のある低融点元素(たとえばEAFスクラップを原料とする鋼の場合には銅および錫)が存在するため、結晶粒の縁部がさらに弱くなり、上記の低融点元素の濃度につれて問題が大きくなることが明らかである。「軽い」圧下パスによって達成される結晶粒の再構成および微細化により、次の二重の利点が得られる。a)表面材料を破壊することなく、後続の第1の実際の圧延工程でより大きい圧下率を適用できる。b)安価で低品質のスクラップ、すなわち銅や錫などの不純物を高濃度で含むスクラップを使用しても、同じ高品質の帯材/板材を得ることができる。
【0034】
「キスパス」スタンド10は、圧延機4の第1のスタンドよりも直径の小さいワークシリンダーを有することが好ましいことに留意されたい。なぜなら、スラブの冷却を可能な限り少なくしながら最小の圧下を与えなければならず、接触弧長は小さくて十分であり、圧延材の表面の引張応力が最小限に抑えられるという利点があるからである。
【0035】
連続鋳造機1とペンデュラム型シャー3との間にいわゆる「キスパス」スタンド10を配置することによって得られる別の利点は、上記のとおり、2つの構成の間に「機械フィルター」を形成することである。すなわち、緊急時にシャー3の下流のプラント部分で修理を行うときにシャー3によりスラブが切断される場合の鋳造機1への乱れを回避する。
【0036】
本発明の第2の新規な観点によれば、エッジャー14、すなわち狭面垂直圧延スタンドが存在する。エッジャー14は、好ましくは「キスパス」スタンド10のすぐ上流に配置され、好ましくは誘導エッジ加熱器15、すなわちスラブのエッジのみを加熱するC型コイルを備えたヒーターが先に配置される。しかし、エッジャー14は、対応する誘導エッジ加熱器15と共に圧延機4のすぐ上流に配置されてもよく、誘導加熱器2の任意の側に隣接して配置できる。
【0037】
上記のとおり、エッジャー14の追加により、最も冷却される部分であるために割れ形成に最も敏感なスラブエッジを再結晶させ、後続の圧延工程での引張応力を最小限に抑えるために成形を行い、幅公差を改善することができる。さらに、エッジャー14は、各側のスラブ幅を最大50mmまで縮小させることができ、それにより、金型を介入させることなく、したがってプラントの生産性を低下させることなく、より狭い帯材/板材を得ることができる。
【0038】
本発明の第3の新規な観点によれば、「キスパス」スタンド10と誘導加熱器2との間に、スラブSの導入/除去および制御された前進を可能にするのに適した接続炉16が存在する。その典型的な例は、ガス加熱式ローラーハース炉またはウォーキングビーム炉であり、通常は約30mの長さであるが、他の同等のタイプの炉も使用できまることは明らかである。
【0039】
接続炉16の直前には追加のペンデュラム型シャー17があり、上記のとおり、このプラントは、圧延機4が利用できない場合に再利用可能なスラブ18を退避させることを可能にするだけでなく、「エンドレス」操業モード及び「バッチ/複合」操業モードのいずれかを選択し、市場で購入したスラブを周囲温度で接続炉16に(ローディングステーション19を介して)装入する。接続炉16はバッファとしても機能し、圧延機4の修理の場合に、製造された高温スラブを炉内で保持し、再び利用可能になると貯蔵されたスラブを圧延ラインに流す。
【0040】
「キスパス」スタンド10は、連続鋳造機1と追加のペンデュラム型シャー17との間に位置するため、上記のとおり、「機械的フィルター」として機能し、「バッチ/複合」モードが選択されてスラブがシャー17で切断されたときの鋳造機1での乱れが回避される。
【0041】
スラブの幅が変わらないので、スラブの厚さが所定の割合で減少すると、対応して長さが伸張する。このことを考慮すると、「キスパス」スタンド10は、まさに炉16の上流の最初の圧延パスとして使用できることに留意されたい。「キスパス」スタンド10は、約10%の厚さを減少させ、いずれの場合も20%以下の厚さを減少させるからである。この圧下率は、先行技術による粗圧延機または仕上げ圧延機の最初のスタンドにおける圧下率50~70%よりもはるかに小さい。先行技術の圧下率では、許容できない程の長さの炉16が必要になる。実際、炉は、帯材のコイルまたはバッチ生産サイクルで生産される板材の積層体の重量に対応する重量のスラブを保持する寸法にする必要があり、スラブが薄いと許容できない長さになり必要な重量を得ることができない。
【0042】
これは、上記の20%圧下率の限界の理論的根拠である。「キスパス」スタンド10で大幅な圧下をすると、圧延機4で望ましい最終厚さをより簡単に達成するのに役立つことは明らかであり、スタンドが少なくてすむであろう。しかし、合金組成に依存する「冶金学的限界」もあるので、「キスパス」スタンド10は、スラブ表面の破壊を引き起こすことなく、必要な結晶粒の再結晶を得るのに適した最大圧下のみを行う。
【0043】
本発明の第4の新規な観点によれば、冷却装置6が、急冷に相当する板材の高速冷却を行うことのできる第1の冷却領域を備えることができる。その後の作業工程における焼き戻しにより、従来技術のプラントで生産されたものよりも高品質の板材が提供される。従来技術のプラントでは、冷却領域は帯材のみに最適化されているからである。
【0044】
あるいは、板材専用の冷却装置20をオフラインで配置することができる。プッシャーまたはプッシャー/パイラー7によって除去された板材に多段高圧冷却を行う。すなわち、その各冷却の後には、板材が実質的に均一になる時間をおいて、続く冷却が行われる。このようにして、各鋼種の所望の冷却パターンを得ることができ、(特定の冷却装置20または上記の冷却装置6の超高速冷却部で冷却された)板材の処理を完成させるために、板材の処理冷却装置20の後に、焼戻し炉21、さらに制御冷却22、スキンパススタンド23およびローラーレベラー24が続く。
【0045】
他の可能性は、板材特有の設定に簡単に調整できる冷却装置6を提供することである。その場合、プッシャー/パイラー7または追加のプッシャー/パイラー7'が冷却装置の間に配置できることは明らかである。このようにして、冷却装置6は、高品質の帯材および高品質の板材の両方の冷却に適切に使用できる。
【0046】
したがって、上記の本発明によるプラントは、鋳造機1と圧延機4との間のスラブの連続性の解決策を伴わない「エンドレス」モード(すなわち、圧延機4の入口速度は、キスパススタンドでの速度増加を介して鋳造速度に連結している)、または圧延機4に入るスラブが鋳造機1のスラブから切り離された「バッチ/複合」モードの両方において、高品質帯材および高品質板材の両方を製造するのに適している。
【0047】
さらに、このプラントは、接続炉16から流れ来るスラブも出発材料として使用できる。そのスラブは、ローディングステーション19を通して周囲温度で装入されたものか、炉16がバッファとして使用されて炉16内で高温に保持されたものである。