(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】炭素-硫黄複合体、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20220627BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
(21)【出願番号】P 2020514193
(86)(22)【出願日】2018-09-19
(86)【国際出願番号】 KR2018011064
(87)【国際公開番号】W WO2019066369
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2017-0125909
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】507175175
【氏名又は名称】インダストリー-アカデミック コーポレーション ファウンデーション,ヨンセイ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウンキョン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】センフン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ミョン・ジュン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】イル・ト・キム
(72)【発明者】
【氏名】クォンナム・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ド・キョン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジウォン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ム・ファン・シン
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】Xia Li et al.,Tunable porous structure of metal organic framework derived carbon and the application in lithium-sulfur batteries,Journal of Power Sources,2015年10月28日,Vol.302,p.174-179
【文献】Kai Xi et.al,Carbon with hierarchical pores from carbonized metal-organic frameworks for lithium sulphur batteries,Chemical Communication,2013年,vol.49,p.2192-2194
【文献】Weizhai Bao et al.,3D Metal Carbide@Mesoporous Carbon Hybrid Archtecture as a New Polysulfide Reservoir for Lithium-Sulfur Batteries,Advanced Functional Materials,2016年,Vol.26,p.8746-8756
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)と、
前記炭化された金属-有機構造体の外部表面及び内部の中の少なくとも一部に導入された硫黄化合物とを含み、
前記炭化された金属-有機構造体の比表面積が2000ないし2500m
2/gであり、
前記炭化された金属-有機構造体の気孔体積が2.2~3.0cc/gであり、
前記金属-有機構造体は、下記化学式1で表される構造単位を含む、炭素-硫黄複合体。
[化1]
[M
x(L)
y]
(前記化学式1において、
Mは
、亜鉛(Zn
)であり、
Lは、1,4-ベンゼンジカルボキシレート(1,4-benzenedicarboxylate:BDC
)であり、
xは、2ないし6の整数で、yは2ないし12の整数である。)
【請求項2】
前記炭素-硫黄複合体は、炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)と硫黄化合物が9:1ないし1:9の重量比で含まれる、請求項1に記載の炭素-硫黄複合体。
【請求項3】
(a)
溶媒熱合成により製造された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を950℃以上で炭化させ、炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を製造する段階と、
(b)前記(a)段階で炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を硫黄化合物と混合して炭素-硫黄複合体を製造する段階とを含み、
前記(a)段階で炭化された金属-有機構造体の比表面積が2000ないし2500m
2/gで、気孔体積が2.2~3.0cc/gであり、
前記金属-有機構造体は、下記化学式1で表される構造単位を含む、炭素-硫黄複合体の製造方法。
[化1]
[M
x(L)
y]
(前記化学式1において、
Mは
、亜鉛(Zn
)であり、
Lは、1,4-ベンゼンジカルボキシレート(1,4-benzenedicarboxylate:BDC
)であり、
xは、2ないし6の整数で、yは2ないし12の整数である。)
【請求項4】
前記(a)段階で金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を950ないし2,000℃で炭化させる、請求項3に記載の炭素-硫黄複合体の製造方法。
【請求項5】
前記(a)段階で金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を950ないし1,500℃で炭化させる、請求項3に記載の炭素-硫黄複合体の製造方法。
【請求項6】
前記(b)段階で、炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)と硫黄化合物を9:1ないし1:9の重量割合で混合する、請求項3から5のいずれか一項に記載の炭素-硫黄複合体の製造方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の炭素-硫黄複合体を含む、正極。
【請求項8】
前記正極はリチウム-硫黄電池用である、請求項7に記載の正極。
【請求項9】
請求項7に記載の正極と、負極と、電解質とを含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年9月28日付韓国特許出願第10-2017-0125909号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として含む。
本発明は、炭素-硫黄複合体、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、エネルギー貯蔵技術に対する関心がますます高まっている。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、ひいては電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡大され、電気化学素子の研究と開発に対する努力がますます具体化されている。
【0003】
電気化学素子は、このような側面で最も注目を浴びている分野で、その中でも充-放電可能な二次電池の開発は関心の的になっていて、最近はこのような電池を開発するにあたり、容量密度及びエネルギー効率を向上させるために新しい電極と電池の設計に対する研究開発に進められている。
【0004】
現在適用されている二次電池の中で1990年代初に開発されたリチウム二次電池は、水溶液電解液を使用するNi-MH、Ni-Cd、硫酸-鉛電池などの在来式電池に比べて作動電圧が高く、エネルギー密度が遥かに高いという長所で脚光を浴びている。
【0005】
特に、リチウム-硫黄(Li-S)電池は、S-S結合(Sulfur-Sulfur bond)を有する硫黄系物質を正極活物質で使用し、リチウム金属を負極活物質で使用する二次電池である。正極活物質の主材料である硫黄は資源がとても豊かで、毒性がなく、原子当たり低い重さを有している長所がある。また、リチウム-硫黄電池の理論放電容量は、1675mAh/g-sulfurで、理論エネルギー密度が2,600Wh/kgであって、現在研究されている他の電池システムの理論エネルギー密度(Ni-MH電池:450Wh/kg、Li-FeS電池:480Wh/kg、Li-MnO2電池:1,000Wh/kg、Na-S電池:800Wh/kg)に比べてとても高いため、現在まで開発されている電池の中で最も有望な電池である。
【0006】
リチウム-硫黄電池の放電反応の中で、負極(Anode)ではリチウムの酸化反応が発生し、正極(Cathode)では硫黄の還元反応が発生する。放電前の硫黄は環形のS8構造を有しているが、還元反応(放電)時にS-S結合が切れてSの酸化数が減少し、酸化反応(充電)時に再びS-S結合が形成され、Sの酸化数が増加する酸化-還元反応を利用して電気エネルギーを貯蔵及び生成する。このような反応中に硫黄は環形のS8で還元反応によって線形構造のリチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide、Li2Sx、x=8、6、4、2)に変換され、結局、このようなリチウムポリスルフィドが完全に還元されれば、最終的にリチウムスルフィド(Lithium sulfide、Li2S)が生成される。それぞれのリチウムポリスルフィドに還元される過程によって、リチウム-硫黄電池の放電挙動はリチウムイオン電池とは違って段階的に放電電圧を表すことが特徴である。
【0007】
しかし、このようなリチウム-硫黄電池の場合、硫黄の低い電気伝導度、充放電時のリチウムポリスルフィドの溶出及び体積膨脹問題と、これによる低いクーロン効率及び充放電による急激な容量減少問題を解決しなければならない。
【0008】
多孔性炭素素材は、リチウム硫黄電池の活物質である硫黄と複合化して伝導性を与える役目をしてリチウム硫黄電池に広く使われる。このような多孔性炭素素材の内部に形成される気孔の大きさと体積を調節して電池性能を向上させるための研究が続いている。その中でも金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)の場合、MOFを構成する有機分子や金属原子の種類に応じて様々な大きさの気孔を形成して1000~4000m2/gの高い比表面積を有する多孔性炭素素材を合成することができるという長所がある。しかし、Adv.Funct.Mater.2016、26、8746-8756でのように、既存のMOF素材を炭化してリチウム-硫黄電池に適用した技術の場合、実際の電池に適用する時に性能が良くないので、金属炭化物とともに適用しなければならない問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】「3D Metal Carbide@Mesoporous Carbon Hybrid Architecture as a New Polysulfide Reservoir for Lithium-Sulfur Batteries」、Weizhai Bao、DaweiSu、Wenxue Zhang、Xin Guo、and Guoxiu Wang、Adv.Funct.Mater.2016、26、8746-8756
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、多角的に研究した結果、炭化過程で温度を調節して炭化温度によるセル性能を確認し、炭化温度の重要度を確認した。炭化温度を高めて気孔構造をより発達させることがセル性能に重要な変数になることを確認した。ここで、本発明では、MOF-5誘導メソポーラスカーボン(derived mesoporous carbon)を活物質の硫黄と一緒に複合化してリチウム硫黄電池に適用すれば、リチウム-硫黄電池の初期放電容量、サイクル維持容量などの電気化学性能を改善することができるという事実を確認して本発明を完成した。
【0011】
よって、本発明の目的は、他の方法を導入せずに、炭化温度の調節だけでセル性能を向上することができる炭素-硫黄複合体及びこの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、
炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)と、
前記炭化された金属-有機構造体の外部表面及び内部の中の少なくとも一部に導入された硫黄化合物とを含み、前記炭化された金属-有機構造体の比表面積が2,000ないし3,500m2/gで、前記炭化された金属-有機構造体の気孔体積が2.2cc/g以上である、炭素-硫黄複合体を提供する。
【0013】
また、本発明は(a)金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を950℃以上で炭化させ、炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を製造する段階と、(b)前記(a)段階で炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を硫黄化合物と混合して炭素-硫黄複合体を製造する段階とを含む炭素-硫黄複合体の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記炭素-硫黄複合体を含む、正極を提供する。
また、本発明は、前記正極と、負極と、電解質とを含むリチウム-二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、他の方法を導入せずに炭化温度を調節するだけでリチウム-硫黄電池の初期放電容量、サイクル維持容量などの電気化学性能を改善することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例及び比較例による硫黄-炭素複合体のN
2吸着/脱着等温線を示すグラフである。
【
図2】本発明の実施例及び比較例による硫黄-炭素複合体のQuenched Solid Density Functional Theory分析結果を示すグラフである。
【
図3】本発明のまた別の比較例による硫黄-炭素複合体のN
2吸着/脱着等温線を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施例及び比較例による硫黄-炭素複合体のSEM写真を示す写真である。
【
図5】本発明の実施例及び比較例の硫黄-炭素複合体で製造されたリチウム-硫黄電池の初期充放電特性を示すグラフである。
【
図6】本発明のまた別の比較例の硫黄-炭素複合体で製造されたリチウム-硫黄電池の初期充放電特性を示すグラフである。
【
図7】本発明のまた別の比較例の硫黄-炭素複合体で製造されたリチウム-硫黄電池の初期充放電特性を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施例及び比較例の硫黄-炭素複合体のリチウム-硫黄電池の充放電効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように添付の図面を参照して詳しく説明する。しかし、本発明は幾つか異なる形態で具現されてもよく、本明細書に限定されない。
【0018】
図面では、本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分を省略し、明細書全体にわたって類似の部分に対しては類似の図面符号を付した。また、図面で表示された構成要素の大きさ及び相対的な大きさは実際の縮尺とは無関係であり、説明の明瞭性のために縮小又は誇張されたものであってもよい。
【0019】
本発明の炭素-硫黄複合体は、炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)と、前記炭化された金属-有機構造体の外部表面及び内部の中の少なくとも一部に導入された硫黄化合物とを含む。
【0020】
炭化された金属-有機構造体
本発明の炭素-硫黄複合体は、炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を含む。
【0021】
金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)は、無機節(金属イオンまたは金属酸化物クラスタ)及びマルチトピック有機リンカー(multitopic organic linker)の配位結合が交差して相互連結され、1次、2次または3次元骨格を形成している多孔性物質として、「多孔性配位高分子(porous coordination polymers)」または「多孔性有無機混成体」と称される。前記金属-有機構造体は、よく定義された気孔だけでなく、金属中心に空いている配位座を持って、ゲスト分子を捕集したり分子を分離するために使われ、吸着剤、気体貯蔵物質、センサー、メンブレーン、機能性薄膜、薬物伝達物質、触媒、触媒担体などに適用可能であるため、最近活発に研究されてきた。
【0022】
このような金属-有機構造体は、主に金属及び有機リガンド前駆体を適切な溶媒に溶解させた後、高温及び高圧で反応させる溶媒熱方法(solvothermal method)、前駆体が溶解されている溶媒の溶解度を下げることができる別の溶媒を拡散及び浸透させる蒸気拡散方法(vapor diffusion method)、相互異なる前駆体を含んだ二つの溶液の間に層を形成させて二つの層の間に拡散が起きるようにする層状拡散方法(layer diffusion method)などによって製造されることができる。
【0023】
本発明で使用する金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)は、下記化学式1で表される構造単位を含むことができる。
[化1]
[Mx(L)y]
(前記化学式1において、
Mは、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、スカンジウム(Sc)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)からなる群から選択された1種以上の金属であり、
Lは、1,4-ベンゼンジカルボン酸塩(1,4-benzenedicarboxylate:BDC)、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸塩(1、3、5-benzenetricarboxlate:BTC)、1,1'-ビフェニル-3,3',5,5'-テトラカルボン酸塩(1,1'-biphenyl-3,3',5,5'-tetracarboxylate:BPTC)及び2-(N,N,N',N'-テトラキス(4-カルボキシフェニル)-ビフェニル-4,4'-ジアミン(2-(N,N,N’,N’-tetrakis(4-carboxyphenyl)-biphenyl-4,4’-diamine:TCBTDA)からなる群から選択された1種以上の有機金属リガンドであり、
xは、2ないし6の整数で、yは2ないし12の整数である。)
【0024】
本発明では、前記金属-有機構造体を炭化させ、炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を使用する。前記金属-有機構造体を炭化させる方法は、金属-有機構造体に炭素を含ませることができる方法であれば特に制限せずに、好ましくは金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を950℃以上で炭化させる温度の条件で炭化させることができる。
【0025】
このように製造された、炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)は、MOF内の炭素を除いた元素が炭化工程を通じて取り除かれることができる。
【0026】
前記のように製造された本発明の炭化された金属-有機構造体は、比表面積が1000ないし4000m2/gであってもよく、好ましくは1500ないし3000m2/gであってもよく、最も好ましくは2,000ないし2,500m2/gであってもよい。前記比表面積の範囲が4000m2/gを超えると、比表面積を達成するために必要以上の工程時間及び費用が発生する問題があり、1,000m2/gより少なければ硫黄を充分に担持することができないという問題がある。
【0027】
また、前記のように炭化された金属-有機構造体は、気孔の体積が0.1~10cc/g以上であってもよく、好ましくは2.2ないし3.0cc/gであってもよく、最も好ましくは2.2ないし2.5cc/gであってもよい。前記気孔体積の範囲が0.1cc/gより少なければ硫黄が担持される空間が充分でない問題があり、10cc/gより大きれば比表面積が減る問題がある。前記気孔体積は、当業界で測定する通常の方法で測定することができ、好ましくはBJH法(barrett-joyner-halenda)、あるいは密度汎関数理論(density functional theory(DFT))法などを用いて測定することができる。
【0028】
炭素-硫黄複合体
本発明の炭素-硫黄複合体は、前記炭化された金属-有機構造体の外部表面及び内部の中の少なくとも一部に導入された硫黄化合物を含む。
【0029】
前記硫黄化合物で使用可能なものとしては、リチウム-硫黄電池で使用する多様な硫黄化合物が使われてもよく、硫黄元素(Elemental sulfur、S8)、硫黄系化合物またはこれらの混合物を含む。前記硫黄系化合物は具体的に、固体Li2Sn(n≧≧1)が溶解されたカソライト(Catholyte)、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー[(C2Sx)n、x=2.5ないし50、n≧≧2]からなる群から選択されるものであってもよい。
【0030】
前記炭素-硫黄複合体は、構造体内で多様な大きさの気孔及び3次元的に相互連結され、規則的に整列された気孔によって硫黄を高い含量に担持することができる。これによって、電気化学反応で溶解性があるポリスルフィドが生成されても炭素-硫黄複合体の内部に位置するようになれば、ポリスルフィドが溶出する時も3次元で絡んでいる構造が維持され、正極構造が崩壊する現象を抑制することができる。その結果、前記硫黄-炭素複合体を含むリチウム-硫黄電池は、高ローディング(high loading)でも高容量を具現することができるという長所がある。本発明による炭素-硫黄複合体の硫黄ローディング量は1~20mg/cm2になってもよい。
【0031】
前記炭素-硫黄複合体で炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)と硫黄化合物の重量比は9:1ないし1:9、好ましくは5:5ないし1:9であってもよい。硫黄または硫黄化合物の含量が前記範囲未満であれば、炭素-硫黄複合体の含量が多くなるし、炭素含量が増加するにつれ、スラリーを製造する時にバインダー添加量を増加しなければならない。バインダー添加量の増加は、結局電極の面抵抗を増加させることになるし、電子の移動を妨げる絶縁体の役目をして、セルの性能を低下することがある。硫黄または硫黄化合物の含量が前記範囲を超えると、複合体と結合できなかった硫黄または硫黄化合物がそれ同士で集まったり、複合体の表面に再溶出されて電子を受けにくくなって、電極反応に直接参加できなくなることがある。
【0032】
炭化された金属-有機構造体を含む炭素-硫黄複合体の製造方法
本発明の炭素-硫黄複合体は、(a)金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を950℃以上で炭化させ、炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を製造する段階;及び(b)前記(a)段階で炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を硫黄化合物と混合して炭素-硫黄複合体を製造する段階;を通じて製造される。
【0033】
先ず、本発明の炭素-硫黄複合体の製造方法は、(a)金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を950℃以上で炭化させ、炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を製造する段階を含む。
【0034】
前記(a)段階では、金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を950℃以上で炭化させることができ、好ましくは950ないし2,000℃で炭化させることができ、より好ましくは950ないし1,500℃で炭化させることができる。
【0035】
前記金属-有機構造体を炭化させる方法は、金属-有機構造体に炭素を含ませることができる方法であれば特に制限しないが、好ましくはアルゴン、窒素などのような雰囲気下で加熱して炭化させることができる。
【0036】
前記(a)段階のように、金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を950℃以上で炭化させれば、気孔構造がより発達した炭素が製造され、このような炭素をリチウム-硫黄電池に適用する時、初期容量が向上し、かつサイクル維持容量が向上する長所がある。
【0037】
このように製造された本発明の炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)は、比表面積が1000ないし4000m2/gであってもよく、好ましくは1500ないし3000m2/gであってもよく、最も好ましくは2,000ないし2,500m2/gであってもよい。前記比表面積の範囲が4000m2/gを超えると、比表面積を達成するために必要以上の工程時間及び費用が発生する問題があり、1,000m2/gより少なければ硫黄を充分に担持することができないという問題がある。
【0038】
また、このように製造された本発明の炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)は、気孔体積が0.1~10cc/g以上であってもよく、好ましくは2.2ないし3.0cc/gであってもよく、最も好ましくは2.2ないし2.5cc/gであってもよい。前記気孔体積の範囲が0.1cc/gより少なければ、硫黄が担持される空間が充分でない問題があり、10cc/gより大きければ、比表面積が減る問題がある。前記気孔体積は当業界で測定する通常の方法で測定することができ、好ましくはBJH法(barrett-joyner-halenda)法、あるいは密度汎関数理論(density functional theory(DFT))法などを用いて測定することができる。
【0039】
この他、前記(a)段階で使われる前記金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)の特徴は、前述した内容と同様である。
【0040】
以後、本発明の炭素-硫黄複合体は、(b)前記(a)段階で炭化された金属-有機構造体(Metal-organic framework:MOF)を硫黄化合物と混合して炭素-硫黄複合体を製造する段階を含む。
【0041】
前記(b)段階で、硫黄化合物の混合方法は本発明で特に限定しないし、公知の方法が用いられることができる。
【0042】
前記硫黄化合物を混合する方法の一例で、炭化された金属-有機構造体と硫黄化合物粉末を均一に混合した後、混合物を加熱して溶融された硫黄化合物を炭化された金属-有機構造体に含浸させて行うことができる。
【0043】
この時、毛細管現象によって硫黄化合物が周りにある炭化された金属-有機構造体の内部に流れ込んで混合されることができる。
【0044】
前記加熱温度は115~180℃、より具体的に150~160℃であってもよい。一実施例によれば、硫黄が炭化された金属-有機構造体の間の空隙よりは炭化された金属-有機構造体の周りで均一にコーティングされることもできる。
【0045】
前記加熱時間は、硫黄化合物と炭化された金属-有機構造体の含量によって調節することができ、例えば、10秒以上、30秒以上であってもよく、2時間以下、1時間以下、30分以下、10分以下であってもよい。
【0046】
前記溶融温度が115℃未満の場合、硫黄化合物粒子が溶融されないため、硫黄化合物が炭化された金属-有機構造体に十分に含浸されないこともある。
【0047】
前記硫黄化合物を含浸させる段階は、有機溶媒に硫黄化合物を溶かした後、炭化された金属-有機構造体を添加して硫黄化合物を成長させて行うことができる。
【0048】
前記有機溶媒は、エタノール、トルエン、ベンゼン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン及び塩化メチレンからなる群から選択される一つ、または二つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0049】
前記硫黄化合物を含浸させる段階は、炭化された金属-有機構造体と硫黄化合物粉末を混合した後、ボールミル方法で含浸させて行うことができる。
【0050】
前記混合方法は、一定時間パウダーミキサーに入れて行うことができる。この時、混合時間は10分以上、30分以上であってもよく、10時間以下、5時間以下、2時間以下であってもよい。
【0051】
炭化された金属-有機構造体と硫黄化合物を混合する時、炭化された金属-有機構造体と硫黄化合物の重量比は9:1ないし1:9、好ましくは5:5ないし1:9であってもよい。硫黄または硫黄化合物の含量が前記範囲未満であれば炭素-硫黄複合体の含量が多くなるし、炭素含量が増加することにつれ、スラリーを製造する時にバインダー添加量を増加しなければならない。バインダー添加量の増加は、結局電極の面抵抗を増加させ、電子移動を防ぐ絶縁体の役目をするので、セルの性能を低下することがある。硫黄または硫黄化合物の含量が前記範囲を超えると、複合体と結合できなかった硫黄または硫黄化合物がそれ同士で集まったり、複合体の表面に再溶出されて電子を受けにくくなって、電極反応に直接参加しにくくなることがある。
【0052】
正極
本発明で提示する炭素-硫黄複合体は、リチウム二次電池の正極活物質で使われ、好ましくはリチウム-硫黄電池の正極活物質として使用可能である。
【0053】
リチウム-硫黄電池は、正極活物質として硫黄を含むが、これは充放電の時にリチウムポリスルフィドが溶出する問題がある。ここで、本発明による炭素-硫黄複合体は構造体内の硫黄が均一に分布し、様々な大きさの気孔及び3次元的に相互連結されて規則的に整列された気孔によって高い含量で硫黄を担持することができる。これによって、リチウムポリスルフィドが溶出する時も3次元で絡まっている構造が維持され、正極構造が崩壊する現象を抑制することができる。その結果、前記炭素-硫黄複合体を含むリチウム-硫黄電池は、高ローディング(high loading)でも高容量を具現することができる長所がある。
【0054】
前記正極は、正極集電体上に正極活物質層形成用組成物を塗布及び乾燥して製作される。前記正極活物質層形成用組成物は、上述した炭素-硫黄複合体、導電材、バインダー及び溶媒を混合して製造されてもよい。
【0055】
具体的に、前記製造された炭素-硫黄複合体にさらに導電性を与えるために、前記正極組成物には導電材が加えられることがある。前記導電材は電子が正極内で円滑に移動できるようにする役目をするもので、電池に化学的変化を引き起こさずに、導電性に優れて広い表面積を提供することができるものであれば特に制限しないが、好ましくは炭素系物質を使用する。
【0056】
前記炭素系物質では、天然黒鉛、人造黒鉛、膨脹黒鉛、グラフェン(Graphene)のような黒鉛(Graphite)系、活性炭(Active carbon)系、チャンネルブラック(Channel black)、ファーネスブラック(Furnace black)、サーマルブラック(Thermal black)、コンタクトブラック(Contact black)、ランプブラック(Lamp black)、アセチレンブラック(Acetylene black)のようなカーボンブラック(Carbon black)系;炭素繊維(Carbon fiber)系、炭素ナノチューブ(Carbon nanotube:CNT)、フラーレン(Fullerene)のような炭素ナノ構造体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種を使用することができる。
【0057】
前記炭素系物質以外も、目的によって金属メッシュなどの金属性繊維;銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)などの金属性粉末;またはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料も使用することができる。前記導電性材料は単独または混合して使用してもよい。
【0058】
また、前記正極活物質に集電体に対する付着力を提供するために、前記正極組成物にはバインダーがさらに含まれてもよい。前記バインダーは溶媒によく溶解しなければならず、正極活物質と導電材との導電ネットワークをよく構成しなければならないし、なお電解液の含浸性も適当に持たなければならない。
【0059】
本発明に適用可能なバインダーは、当該業界で公知された全てのバインダーであってもよく、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride、PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブチジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー、ポリエステル系バインダー、シラン系バインダー;からなる群から選択された1種または2種以上の混合物や共重合体であってもよいが、これに制限されないことは勿論である。
【0060】
前記バインダー樹脂の含量は、前記リチウム-硫黄電池用正極の総重量を基準にして0.5~30重量%であってもよいが、これのみに限定されることではない。前記バインダー樹脂の含量が0.5重量%未満の場合は、正極の物理的性質が低下して正極活物質と導電材が脱落することがあるし、30重量%を超える場合は、正極で活物質と導電材の割合が相対的に減少して電池容量が減少されることがある。
【0061】
リチウム-硫黄電池用正極組成物をスラリー状態で製造するための溶媒は乾燥が容易でなければならず、バインダーをよく溶解しなければならないし、正極活物質及び導電材は溶解せずに分散状態で維持できるものが最も好ましい。溶媒が正極活物質を溶解させる場合は、スラリーで硫黄の比重(D=2.07)が高いので、硫黄がスラリーで沈むようになって、コーティングする時に集電体に硫黄が集まって導電ネットワークに問題が生じ、電池の作動に問題が発生する傾向がある。
【0062】
本発明による溶媒は水または有機溶媒が可能であり、前記有機溶媒はジメチルホルムアミド、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン群から選択される1種以上を含む有機溶媒が適用可能である。
【0063】
前記正極組成物の混合は、通常の混合器、例えばレイトスミキサー、高速せん断ミキサー、ホモミキサーなどを利用して通常の方法で撹拌することができる。
【0064】
前記正極組成物を集電体に塗布し、真空乾燥してリチウム-硫黄電池用正極を形成することができる。前記スラリーは、スラリーの粘度及び形成しようとする正極の厚さに応じて適切な厚さで集電体にコーティングすることができるし、好ましくは10ないし300μmの範囲内で適切に選択することができる。
【0065】
この時、前記スラリーをコーティングする方法として制限することはなく、例えば、ドクターブレードコーティング(Doctor blade coating)、ディップコーティング(Dip coating)、グラビアコーティング(Gravure coating)、スリットダイコーティング(Slit die coating)、スピンコーティング(Spin coating)、コンマコーティング(Comma coating)、バーコーティング(Bar coating)、リバースロールコーティング(Reverse roll coating)、スクリーンコーティング(Screen coating)、キャップコーティング(Cap coating)方法などを行って製造することができる。
【0066】
前記正極集電体では、一般に3~500μmの厚さで作ることができ、電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を有するものであれば特に制限しない。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、銅、チタンなどの伝導性金属を使用することができ、好ましくはアルミニウム集電体を使用することができる。このような正極集電体は、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体または不織布体など様々な形態が可能である。
【0067】
リチウム-二次電池
本発明の一実施例として、リチウム-二次電池は上述した正極;負極活物質としてリチウム金属またはリチウム合金を含む負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び前記負極、正極及び分離膜に含浸され、リチウム塩と有機溶媒を含む電解質を含むことができる。
【0068】
前記負極は、負極活物質としてリチウムイオン(Li+)を可逆的にインターカレーション(Intercalation)またはデインターカレーション(Deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を使用することができる。前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーションまたはデインターカレーションすることができる物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。前記リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成できる物質は、例えば、酸化スズ、窒化チタンまたはシリコンであってもよい。前記リチウム合金は、例えば、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Al及びSnからなる群から選択される金属の合金であってもよい。
【0069】
また、リチウム-硫黄電池を充・放電する過程で、正極活物質で使用される硫黄が非活性物質に変化され、リチウム負極表面に付着されてもよい。このように非活性硫黄(Inactive sulfur)は、硫黄が様々な電気化学的または化学的反応を経て正極の電気化学反応にこれ以上参加できない状態の硫黄を意味し、リチウム負極表面に形成された非活性硫黄は、リチウム負極の保護膜(Protective layer)としての役目をする長所もある。よって、リチウム金属とこのリチウム金属の上に形成された非活性硫黄、例えば、リチウムスルフィドを負極で使用することもできる。
【0070】
本発明の負極は、前記負極活物質以外にリチウムイオン伝導性物質からなる前処理層及び前記前処理層上に形成されたリチウム金属保護層をさらに含むことができる。
【0071】
前記正極と負極の間に介在される分離膜は、正極と負極を相互分離または絶縁させ、正極と負極の間にリチウムイオンを輸送できるようにすることで多孔性非伝導性または絶縁性物質からなってもよい。このような分離膜は、高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁体であって、薄膜またはフィルムのような独立的な部材であってもよく、正極及び/または負極に付加されたコーティング層であってもよい。また、電解質としてポリマーなどの固体電解質が使われる場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0072】
前記分離膜の気孔直径は、一般に0.01~10μmで、厚さは一般に5~300μmが好ましく、このような分離膜では、ガラス電解質(Glass electrolyte)、高分子電解質またはセラミックス電解質などが使われてもよい。例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス繊維またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布、クラフト紙などが使われる。現在市販中の代表的な例としては、セルガード系(CelgardR2400、2300 Hoechest Celanese Corp。製品)、ポリプロピレン分離膜(Ube Industries Ltd。製品またはPall RAI社製品)、ポリエチレン系(TonenまたはEntek)などがある。
【0073】
固体状態の電解質分離膜は、約20重量%未満の非水性有機溶媒を含むこともでき、この場合は有機溶媒の流動性を減らすために適切なゲル形成化合物(Gelling agent)をさらに含むこともできる。このようなゲル形成化合物の代表的な例では、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0074】
前記負極、正極及び分離膜に含浸されている電解質は、リチウム塩を含有する非水系電解質としてリチウム塩と電解液で構成され、電解液では非水系有機溶媒、有機固体電解質及び無機固体電解質などが使われる。
【0075】
本発明のリチウム塩は、非水系有機溶媒に溶解されやすい物質として、例えば、LiSCN、LiCl、LiBr、LiI、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiB10Cl10、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiClO4、LiAlCl4、Li(Ph)4、LiC(CF3SO2)3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(SFO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド及びこれらの組み合わせからなる群から一つ以上が含まれてもよい。
【0076】
前記リチウム塩の濃度は、電解質混合物の正確な組成、塩の溶解度、溶解された塩の伝導性、電池の充電及び放電条件、作業温度及びリチウムバッテリー分野に公知された他の要因のような多くの要因によって、0.2~2M、具体的に0.6~2M、より具体的に0.7~1.7Mであってもよい。0.2M未満で使用すれば電解質の伝導度が低くなって電解質の性能が低下されることがあるし、2Mを超えて使用すれば電解質の粘度が増加してリチウムイオン(Li+)の移動性が減少されることがある。
【0077】
前記非水系有機溶媒は、リチウム塩をよく溶解しなければならないし、本発明の非水系有機溶媒では、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキセン、ジエチルエーテル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ホルム酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、ピロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使われてもよく、前記有機溶媒は一つまたは二つ以上の有機溶媒の混合物であってもよい。
【0078】
前記有機固体電解質では、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテイションリシン(Agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使われてもよい。
【0079】
前記無機固体電解質では、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLi窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使われてもよい。
【0080】
本発明の電解質には、充・放電特性、難燃性などの改善を目的として、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエチルアルコールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を与えるために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含んでもよく、高温保存特性を向上させるために二酸化炭素ガスをさらに含んでもよく、FEC(フルオロエチレンカーボネート:Fluoro-ethylene carbonate)、PRS(プロペンスルトン:Propene sultone)、FPC(フルオロプロピレンカーボネート:Fluoro-propylene carbonate)などをさらに含んでもよい。
【0081】
前記電解質は、液状電解質で使用してもよく、固体状態の電解質セパレーター形態でも使用することができる。液状電解質で使用する場合は、電極を物理的に分離する機能を有する物理的な分離膜として多孔性ガラス、プラスチック、セラミックスまたは高分子などからなる分離膜をさらに含む。
【0082】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものであって、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明なことであり、このような変形及び修正が添付の特許請求範囲に属することも当然である。
【0083】
[実施例]
硫黄-炭素複合体の製造
[実施例1]
Zn(NO3)2.6H2O 0.8g及び1,4-ベンゼンジカルボキシル酸(H2BDC)0.149g(molar ratio=3:1)をDMF30mLとともに50mL容器に入れた。反応溶液を120℃オーブンで1日間加熱した。結晶形の生成物をDMF及びMCで2回洗浄した。結晶形の生成物を無水DMF及び無水MCで数回洗浄した。生成物を150℃真空オーブンで一晩中乾燥して金属-有機構造体(MOF-5)を製造した(0.28g、収率=91%)。
【0084】
前記得られた金属-有機構造体をオーブンに入れた後、1,000℃で6時間炭化させた。前記得られた炭化された金属-有機構造体を使用して、硫黄:炭化された金属-有機構造体の重量の割合が7:3になるように混合した後、155℃で30分間熱処理して硫黄-炭素複合体を製造した。
【0085】
[比較例1]
炭化された金属-有機構造体の代わりに活性炭(activated carbon)を使用して、硫黄-炭素複合体を製造したことを除いては、実施例1と同様の方法で硫黄-炭素複合体を製造した。
【0086】
[比較例2]
炭化された金属-有機構造体の代わりに「Adv.Funct.Mater.2016、26、8746-8756」の方法で製造したTi3C2Tx@Meso-C/S複合体を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で硫黄-炭素複合体を製造した。
【0087】
[比較例3]
金属-有機構造体をオーブンに入れた後、900℃で炭化させたことを除いては、実施例1と同様の方法で硫黄-炭素複合体を製造した。
【0088】
実験例1:炭化された金属-有機構造体の物性評価
(表面撮影分析)
また、実施例1で製造された硫黄-炭素複合体(MOF-5(1000))と比較例3で製造された硫黄-炭素複合体(MOF-5(900))に対して、SEM写真を撮影(HITACHIS-4800)し、
図4のa(実施例1)及び
図4のb(比較例3)に示す。
【0089】
(N
2吸着/脱着等温線分析)
実施例1で製造された、炭化された金属-有機構造体(MOF-5(1000))と比較例3で製造された炭化された金属-有機構造体(MOF-5(900))に対して、室温で2時間真空を加えた後、N
2吸着/脱着等温線(N
2 adsorption/desorption isotherm)を測定(AUTOSORB-iQ-MP instrument、Quantachrome社製造)して
図1に示し、比較例1で製造された活性炭に対するN
2吸着/脱着等温線を
図3に示す。
【0090】
前記
図1を通じて実施例1で製造された、炭化された金属-有機構造体(MOF-5(1000))が比較例3で製造された炭化された金属-有機構造体(MOF-5(900))に比べて比表面積が相対的に大きいということが分かった。また、
図3を通じて比較例1で製造された活性炭に比べて比表面積が相対的に小さいということが分かった。
【0091】
(Quenched Solid Density Functional Theory分析)
また、実施例1で製造された、炭化された金属-有機構造体(MOF-5(1000))と比較例3で製造された炭化された金属-有機構造体(MOF-5(900))に対して、Quenched Solid Density Functional Theory(QSDFT)方法(slit/cylindrical/sphere pores)を使用(AUTOSORB-iQ-MP instrument、Quantachrome社製造)して、気孔大きさ分布(Pore size distribution)を
図2に示す。
【0092】
前記
図2を通じて実施例1で製造された、炭化された金属-有機構造体(MOF-5(1000))が比較例3で製造された炭化された金属-有機構造体(MOF-5(900))に比べてメソサイズの気孔をもっと多く含んでいることが分かった。
前記結果を通じて炭化温度によるBETを求めて、その結果を表1に示す。
【0093】
【0094】
実験例2:電池性能評価
製造された硫黄-炭素複合体を利用して硫黄-炭素複合体:導電材:バインダーを90:5:5の重量比でスラリーを製造した後、20μm厚さのアルミニウムホイルの集電体にコーティングして電極を製造した。この時、導電材にはカーボンブラックを、バインダーにはスチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースを使用し、ローディング量は3mAh/cm2であった。
【0095】
(電池性能評価)
実施例1で製造された硫黄-炭素複合体(MOF-5(1000))と比較例1ないし3で製造された硫黄-炭素複合体(MOF-5(900))を使用して製造されたリチウム-硫黄電池に対して、充放電測定装置を使用して充放電特性変化を試した。得られた電池を利用して、初期放電/充電は2.5サイクルの間は0.1C/0.1Cで進行し、3サイクルの間は0.2C/0.2Cで進行し、以後は0.5C/0.3Cで10サイクル、0.2C/0.2Cで3サイクルずつ繰り返して進めた。前記結果を測定して
図5ないし
図8に示す。
【0096】
図5は実施例1及び比較例3で製造されたリチウム-硫黄電池の初期充放電特性を示すグラフで、
図6は比較例1で製造されたリチウム-硫黄電池の初期充放電特性を示すグラフで、
図7は比較例2で製造されたリチウム-硫黄電池の初期充放電特性を示すグラフである。
【0097】
図5を参照すれば、実施例1の硫黄-炭素複合体で製造されたリチウム-硫黄電池は、金属-有機構造体(MOF)の炭化温度を1000℃に高めることによって、気孔構造がさらに発達した炭素が製造され、これをリチウム硫黄電池に適用したものなので、気孔構造が少し発達されてる比較例3より初期容量が向上及びサイクル維持容量が向上されることが分かった。
【0098】
これに比べて
図6を参照すれば、比較例1の硫黄-炭素複合体で製造されたリチウム-硫黄電池は、放電過電圧が大きくかかって初期放電容量が発現されないことが分かった。これは炭素が有するBETと細孔体積(pore volume)だけでなく、その細孔分布がセル性能に重要な影響を及ぼすことを示す。すなわち、活性炭の場合、マイクロポア(micro pore)が主な分布を有するためである。
【0099】
また、
図7を参照すれば、比較例2の硫黄-炭素複合体は、実施例1と類似の方法により製造されたが、1000mAh/g程度の初期容量を有し、これは実施例1より低いことが分かった。
【0100】
図8は実施例1及び比較例3で製造されたリチウム-硫黄電池の充放電効率を示すグラフである。
図8を参照すれば、実施例1の硫黄-炭素複合体で製造されたリチウム-硫黄電池がサイクルを進める時、放電維持容量がより高いことが分かった。