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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】キメラポリペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20220627BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220627BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20220627BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220627BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220627BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220627BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220627BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220627BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220627BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020516415
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 US2018052184
(87)【国際公開番号】W WO2019060695
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】62/562,223
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514266932
【氏名又は名称】カイト ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kite Pharma, Inc
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィルツィアス ジェド ジェイ.ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ジーベルス スチュアート エー.
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-531751(JP,A)
【文献】特表2014-526254(JP,A)
【文献】米国特許第06541610(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンセンサス配列BPXXXZを含むペプチドであって、Xはそれぞれ独立してグリシン(G)又はセリン(S)であり、Bは正電荷アミノ酸であり、Zはグリシン(G)又は負電荷アミノ酸であり、
前記ペプチドは6個~20個のアミノ酸長であり、
前記ペプチドがGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号1)、GSGKPGSGEG(配列番号13)、GKPGSGEG(配列番号14)、又はSGKPGSGE(配列番号15)ではなく、
前記ペプチドは、GGGSGKPGSGEGGGS(配列番号7)、GGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号8)、GGGGSGKPGSGEGGS(配列番号10)、GGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号11)、又はGGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号12)のアミノ酸配列を含む、
前記ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが10個~20個のアミノ酸を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドがGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号7)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドがGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号8)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドがGGGGSGKPGSGEGGS(配列番号10)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドがGGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号11)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドがGGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号12)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項8】
融合タンパク質であって、
a)第1のポリペプチドと、
b)請求項1~のいずれか一項に記載のペプチドと、
を含む、融合タンパク質。
【請求項9】
融合タンパク質であって、
a)第1のポリペプチドと、
b)第2のポリペプチドと、
c)請求項1~のいずれか一項に記載のペプチドと、
を含む、融合タンパク質。
【請求項10】
前記融合タンパク質が抗原結合分子である、請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記抗原結合分子がscFvである、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記第1のポリペプチドが軽鎖可変ドメインであり、前記第2のポリペプチドが重鎖可変ドメインである、請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
請求項1~のいずれか一項に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項9~12のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項16】
請求項13又は14に記載のポリヌクレオチドを含む組み換え細胞。
【請求項17】
請求項15に記載の発現ベクターを含む組み換え細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年9月22日に出願された米国仮特許出願第62/562,223号に対する優先権を主張するものであり、この内容全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
[配列表]
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。2018年9月20日付けで作成された上記ASCIIコピーの名前はKPI-005WO_ST25.txtであり、9531バイトのサイズである。
【0003】
本開示は、新規ペプチド及びかかるペプチドを含むポリペプチド組成物(例えば、リンカー、キメラポリペプチド、抗原結合分子)、並びにそれらを使用及び作製する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
抗体を含む抗原結合分子は、免疫療法、並びにバイオセンサー、アフィニティークロマトグラフィー及びイムノアッセイ等の固相ベースの用途に使用される。これらの抗体及び抗原結合分子は、それらの標的を特異的に結合する能力のために有用性を得る。
【0005】
融合タンパク質はリンカー配列を必要とすることがあり、リンカー配列はバイオテクノロジー及び生物療法用途に用いられる場合にペプチドベースであることが多く、様々な科学的に関連した用途に役立つ可能性がある。例えば、リンカーは、より大きな分子に対して所望の構造特性及び/又は機能特性を与えるためにスペーサー部分として使用することができる。別の例では、リンカーは、より大きな分子に対して構造特性又は機能特性を殆ど又は全く与えることができないが、単により大きな分子を独自に特定する特徴的な特徴部(例えば、「マーカー」又は「バイオマーカー」又は「タグ」)として使用することができる。更に別の例では、リンカーは、ペプチド配列を含むより大きな分子に対する抗体の結合部位として働くことができる認識可能な特徴部を与えるために使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、とりわけ、融合タンパク質の適切な発現、フォールディング、同定及び活性を可能にする新規ペプチド配列を提供する。本明細書に記載される新規ペプチドは、個々のペプチドドメインの柔軟性を促進する融合タンパク質(例えば、scFv)内のドメインを接続するために使用され得る。scFvは、ほとんどのCARコンストラクトの結合ドメインを含む。scFvは、IgG可変軽鎖及び重鎖と、これら2つのドメインを接続する柔軟なペプチド(例えば、リンカー)とを含む。リンカーは、ドメインを単一のタンパク質コンストラクトに接続するのに十分な長さでなくてはならない。さらに、リンカー又はタグコンストラクトが免疫原性の潜在的な原因にならないことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的に使用されるリンカーは、グリシン-グリシン-グリシン-グリシン-セリン(G4S)(配列番号32)のリピートを含み、それらの固有の柔軟性及び側鎖の単純性により、治療用途において免疫原性が低くなる可能性がある。18残基のWhitlowリンカーGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号1)は、Whitlow et al.によって1993年に最初に記載された。本明細書に記載されるペプチドはまた、ペプチドタグとしても使用され得る。幾つかの実施の形態では、融合タンパク質は、本明細書に記載されるペプチド(例えば、リンカー)に融合されたポリペプチドを含む。
【0008】
コンセンサス配列BPXXXZを含む本明細書に記載される新規キメラポリペプチドは、治療的処置に有用な融合タンパク質への組み込みに適した望ましい属性(例えば、柔軟性及び低減された免疫原性)を併せ持つ。
【0009】
1つの態様においては、本発明は、6個~20個のアミノ酸とコンセンサス配列BPXXXZとを含むペプチドを提供し、ここで、Xはグリシン(G)又はセリン(S)であり、Bは正電荷アミノ酸であり、Zはグリシン(G)又は負電荷アミノ酸である。一実施の形態では、本発明は、コンセンサス配列がKPGSGE(配列番号4)であるペプチドを提供する。別の実施の形態では、コンセンサス配列はGKPGSGE(配列番号5)又はGKPGSGG(配列番号6)である。
【0010】
1つの態様においては、本発明は、6個~20個のアミノ酸とコンセンサス配列BPXXXZとを含むペプチドを提供し、ここで、Xはグリシン(G)又はセリン(S)であり、Bは正電荷アミノ酸であり、Zはグリシン(G)又は負電荷アミノ酸であり、前記ペプチドがGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号1)、GSGKPGSGEG(配列番号13)、GKPGSGEG(配列番号14)、又はSGKPGSGE(配列番号15)ではない。
【0011】
1つの態様においては、本発明は、8個~20個のアミノ酸とコンセンサス配列XBPXXXZXとを含むペプチドを提供し、ここで、Xはそれぞれ独立してグリシン(G)又はセリン(S)であり、Bは正電荷アミノ酸であり、Zはグリシン(G)又は負電荷アミノ酸であり、Pはプロリンである。
【0012】
1つの態様においては、本発明は、8個~20個のアミノ酸とコンセンサス配列XBPXXXZXとを含むペプチドを提供し、ここで、Xはそれぞれ独立してグリシン(G)又はセリン(S)であり、Bは正電荷アミノ酸であり、Zはグリシン(G)又は負電荷アミノ酸であり、Pはプロリンであり、前記ペプチドがGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号1)、GSGKPGSGEG(配列番号13)、GKPGSGEG(配列番号14)、又はSGKPGSGE(配列番号15)ではない。
【0013】
幾つかの実施の形態では、本発明は、8個~20個のアミノ酸とコンセンサス配列XBPXXXZXとを含むペプチドを提供し、ここで、Xはそれぞれ独立してグリシン(G)又はセリン(S)であり、Bはリジン(K)又はアルギニン(R)であり、Zはグリシン(G)又は負電荷アミノ酸であり、Pはプロリンである。
【0014】
幾つかの実施の形態では、本発明は、8個~20個のアミノ酸とコンセンサス配列XBPXXXZXとを含むペプチドを提供し、ここで、Xは独立してグリシン(G)又はセリン(S)であり、Bはリジン(K)であり、Zはグリシン(G)又は負電荷アミノ酸であり、Pはプロリンである。
【0015】
幾つかの実施の形態では、本発明は、8個~20個のアミノ酸とコンセンサス配列XBPXXXZXとを含むペプチドを提供し、ここで、Xはそれぞれ独立してグリシン(G)又はセリン(S)であり、Bは正電荷アミノ酸であり、Zはグリシン(G)であり、Pはプロリンである。
【0016】
幾つかの実施の形態では、Zは、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)から選択される負電荷アミノ酸である。幾つかの実施の形態では、Zはグルタミン酸(E)である。
【0017】
幾つかの実施の形態では、本発明は、コンセンサス配列がGKPGSGE(配列番号5)又はGKPGSGG(配列番号6)であるペプチドを提供する。幾つかの実施の形態では、コンセンサス配列は、GKPGSGE(配列番号5)である。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、コンセンサス配列GSGKPGSGEGG(配列番号31)を含む。
【0018】
幾つかの実施の形態では、ペプチドは、コンセンサス配列の1つ以上のリピートを含む。幾つかの実施の形態では、リピートは連続している。幾つかの実施の形態では、ペプチドリピートは、1個~4個のアミノ酸によって隔てられている。幾つかの実施の形態では、ペプチドはxxxGKPGSGExxxGKPGSGExxx(配列番号3)であり、ここで、Xはグリシン(G)又はセリン(S)である。
【0019】
幾つかの実施の形態では、ペプチドは、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号1)、GSGKPGSGEG(配列番号13)、GKPGSGEG(配列番号14)、又はSGKPGSGE(配列番号15)ではない。或る特定の実施の形態では、ペプチドはGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号1)ではない。或る特定の実施の形態では、リンカーはGSGKPGSGEG(配列番号13)ではない。或る特定の実施の形態では、ペプチドはGKPGSGEG(配列番号14)ではない。或る特定の実施の形態では、ペプチドはSGKPGSGE(配列番号15)ではない。
【0020】
幾つかの実施の形態では、ペプチドは、6個~20個のアミノ酸を含む。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、10個~20個のアミノ酸を含む。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、14個~19個のアミノ酸を含む。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、15個~17個のアミノ酸を含む。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、15個又は16個のアミノ酸を含む。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、16個のアミノ酸を含む。
【0021】
幾つかの実施の形態では、ペプチドは、GGGSGKPGSGEGGGS(配列番号7)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、GGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号8)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、GGGGSGKPGSGGGGS(配列番号9)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、GGGGSGKPGSGEGGS(配列番号10)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、GGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号11)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、GGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号12)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、STSGSGKPGSGEGST(配列番号17)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号18)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、GGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施の形態では、ペプチドは、GGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号20)のアミノ酸配列を含む。
【0022】
1つの態様においては、本発明は、8個~20個のアミノ酸と、GGGSGKPGSGEGGGS(配列番号7)、GGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号8)、GGGGSGKPGSGGGGS(配列番号9)、GGGGSGKPGSGEGGS(配列番号10)、GGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号11)、GGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号12)、STSGSGKPGSGEGST(配列番号17)、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号18)、GGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)、又はGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号20)のいずれか1つに対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列とを含むペプチドを提供する。
【0023】
幾つかの実施の形態では、ペプチドは、GGGSGKPGSGEGGGS(配列番号7)、GGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号8)、GGGGSGKPGSGGGGS(配列番号9)、GGGGSGKPGSGEGGS(配列番号10)、GGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号11)、GGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号12)、STSGSGKPGSGEGST(配列番号17)、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号18)、GGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)、又はGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号20)のいずれか1つに対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0024】
1つの態様においては、本発明は、8個~20個のアミノ酸と、GGGSGKPGSGEGGGS(配列番号7)、GGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号8)、GGGGSGKPGSGGGGS(配列番号9)、GGGGSGKPGSGEGGS(配列番号10)、GGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号11)、GGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号12)、STSGSGKPGSGEGST(配列番号17)、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号18)、GGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)、又はGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号20)のいずれか1つに見られる10個の連続するアミノ酸のうち少なくとも6個のアミノ酸が同一である(いずれか1つに見られる10個の連続するアミノ酸のうち少なくとも6個の同一アミノ酸を含む)アミノ酸配列とを含むペプチドを提供する。
【0025】
幾つかの実施の形態では、ペプチドのアミノ酸配列は、GGGSGKPGSGEGGGS(配列番号7)、GGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号8)、GGGGSGKPGSGGGGS(配列番号9)、GGGGSGKPGSGEGGS(配列番号10)、GGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号11)、GGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号12)、STSGSGKPGSGEGST(配列番号17)、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号18)GGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)、又はGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号20)のいずれか1つに見られる10個の連続するアミノ酸のうち少なくとも7個、少なくとも8個、又は少なくとも9個のアミノ酸が同一である。
【0026】
幾つかの実施の形態では、ペプチドは、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号18)、GGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)、又はGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号20)のアミノ酸配列を含む。
【0027】
1つの態様においては、本発明は、第1のポリペプチドと、第2のポリペプチドと、本明細書に記載されるペプチドリンカーとを含む融合タンパク質を提供する。幾つかの態様においては、融合タンパク質は抗原結合分子である。幾つかの実施の形態では、抗原結合分子はscFvである。幾つかの実施の形態では、第1のポリペプチドは軽鎖可変ドメインであり、第2のポリペプチドは重鎖可変ドメインである。幾つかの実施の形態では、融合タンパク質はキメラ抗原受容体である。
【0028】
1つの態様においては、本発明は、本明細書に記載されるペプチド(例えば、リンカー、タグ)をコードするポリヌクレオチドを提供する。幾つかの実施の形態では、本発明は、本明細書に記載される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0029】
1つの態様においては、本発明は、本明細書に記載されるペプチド(例えば、リンカー又は融合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。幾つかの実施の形態では、本発明は、本明細書に記載されるペプチド(例えば、リンカー又は融合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドを含む組み換え細胞を提供する。幾つかの実施の形態では、組み換え細胞は、本明細書に記載されるペプチド(例えば、リンカー又は融合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。
【0030】
本明細書に記載される任意の態様又は実施の形態は、本明細書に開示される任意の他の態様又は実施の形態と組み合わせられ得る。本発明はその詳細な説明と併せて記載されているが、上述の記載は解説を意図するものであって、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではない。他の態様、利点、及び変更形態は、添付の特許請求の範囲に含まれる。
【0031】
本明細書で言及される特許及び科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書で引用される米国特許、及び公開又は未公開の米国特許出願はいずれも、引用することにより本発明の一部をなす。本明細書で引用される公開された外国の特許及び特許出願はいずれも引用することにより本明細書の一部をなす。本明細書で引用される他の公開された参照文献、辞書、文書、原稿及び科学文献はいずれも、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0032】
本発明の他の特徴及び利点は、図面、及び実施例を含む以下の詳細な説明、並びに特許請求の範囲から明らかとなる。
【0033】
添付の図面と併せて考慮された場合、上記及び更なる特徴は以下の詳細な説明からより明確に理解される。しかしながら、図面は限定ではなく、解説の目的であるにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】例示的なペプチド(例えば、リンカー)配列のアミノ酸配列アラインメントを示す図である。
図2】それぞれ配列番号1、配列番号21~配列番号25、配列番号1及び配列番号26~配列番号30を含むペプチドのエピトープマッピングELISA実験の結果の棒グラフを示す図である。
図3】それぞれ配列番号32、配列番号9~配列番号11及び配列番号17を含むポリペプチドリンカーの抗体結合プロファイルの結果の棒グラフを示す図である。
図4】ペプチドKL2(配列番号10)、KL3(配列番号11)、KL4(配列番号7)、KL5(配列番号12)、KL6(配列番号8)、及びG4S2(配列番号18)を含むキメラ抗原受容体(CAR)を提示する細胞を用いて行ったフローサイトメトリー実験の結果を示す一連のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
定義
本発明がより容易に理解されるように、まず或る特定の用語を以下に定義する。以下の用語及び他の用語に対する更なる定義は、本明細書を通して記載される。
【0036】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、数量を特定していないもの(the singular forms "a," "an" and "the")は、文脈より別段の明確な指示がない限り複数の指示対象を含む。
【0037】
具体的に述べられない又は文脈より明らかでない限り、本明細書で使用される「又は」の用語は「又は」と「及び」の両方を含み、それらを包含すると理解される。
【0038】
本明細書において使用される場合、「及び/又は」の用語は、2つの指定される特徴又は成分の各々ともう一方とを含む、又はもう一方を含まない具体的な開示として理解される。したがって、本明細書において「A及び/又はB」等の句で使用される「及び/又は」の用語は、A及びB;A又はB;A(単独);及びB(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」等の句において使用される「及び/又は」の用語は、A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)の態様の各々を包含することが意図される。
【0039】
本明細書で使用される「例えば」及び「すなわち」の用語は、限定を意図せずに例として使用されるにすぎず、本明細書において明らかに列挙されるそれらの項目のみを指すものと解釈されるべきではない。
【0040】
「以上」、「少なくとも」、「それよりも多く」等の用語、例えば「少なくとも1つ」は、限定されないが、示される値よりも少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149又は150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000以上多い値を含むと理解される。また、任意のより大きな数、又はその間の分数も含まれる。
【0041】
逆に、「以下」の用語は示される値よりも小さい各値を含む。例えば、「100ヌクレオチド以下」は、100個、99個、98個、97個、96個、95個、94個、93個、92個、91個、90個、89個、88個、87個、86個、85個、84個、83個、82個、81個、80個、79個、78個、77個、76個、75個、74個、73個、72個、71個、70個、69個、68個、67個、66個、65個、64個、63個、62個、61個、60個、59個、58個、57個、56個、55個、54個、53個、52個、51個、50個、49個、48個、47個、46個、45個、44個、43個、42個、41個、40個、39個、38個、37個、36個、35個、34個、33個、32個、31個、30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、1個及び0個のヌクレオチドを含む。また、任意のより小さな数、又はその間の分数も含まれる。
【0042】
「複数」、「少なくとも2つ」、「2以上」、「少なくとも第2の」等の用語は、限定されないが、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149又は150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000以上を含むと理解される。また、任意のより大きな数、又はその間の分数も含まれる。
【0043】
明細書を通して、「含んでいる、含む(comprising)」の文言、又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる(comprising)」等の変化形は、示される要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を含むことを含意するが、任意の他の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を排除しないと理解される。本明細書において「含んでいる、含む」の言葉と共に態様が記載される場合はいつでも、「からなる」及び/又は「から本質的になる」の用語で記載される他の類似の態様も提供されると理解される。
【0044】
具体的に述べられておらず又は文脈より明らかでない限り、本明細書で使用される「約」の用語は、当業者によって決定される特定の値又は組成に対する許容可能な誤差範囲に含まれる値又は組成を指し、その値又は組成がどのように測定され又は決定されるのか、すなわち測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」又は「を本質的に含む、を本質的に含んでいる(comprising essentially of)」は、当該技術分野における1回の実施当たりの1以上の標準偏差の範囲内を意味し得る。「約」又は「を本質的に含む、を本質的に含んでいる」は、最大10%(すなわち±10%)の範囲を意味し得る。したがって、「約」は、示される値よりも10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、又は0.001%大きい又は小さい範囲に含まれると理解され得る。例えば、約5mgは、4.5mg~5.5mgの間の任意の量を含み得る。さらに、特に生物学的なシステム又はプロセスに関して、上記用語は、或る値の最大10倍(an order of magnitude)又は最大5倍を意味する場合がある。特定の値又は組成が本開示で提供される場合、別段の指示がない限り、「約」又は「を本質的に含む、を本質的に含んでいる」の意味は、その特定の値又は組成に対する許容可能な誤差の範囲に含まれるとされる。
【0045】
本明細書に記載されるように、任意の濃度範囲、パーセンテージの範囲、比率範囲、又は整数の範囲は、別段の指示がない限り、述べられる範囲に含まれる任意の整数、また適切な場合には、その分数(或る整数の10分の1、及び100分の1等)の値を含むものと理解される。
【0046】
本明細書で使用される単位、接頭辞及び記号は、それらの国際単位系(SI:Systeme International de Unites)の容認される形態で提示される。数値範囲は、その範囲を規定する数字を含む。
【0047】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、この開示が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Juo, "The Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology", 2nd ed., (2001), CRC Press、"The Dictionary of Cell & Molecular Biology", 5th ed., (2013), Academic Press、及び"The Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology", Cammack et al. eds., 2nd ed, (2006), Oxford University Pressは、この開示で使用される多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供する。
【0048】
「投与すること、投与する(Administering)」は、当業者に知られている様々な方法及び送達システムのいずれかを使用する、被験体に対する薬剤の物理的な導入を指す。本明細書に開示される製剤に対する例示的な投与経路として、例えば注射又は点滴による静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊柱又は他の非経口的な(parenteral:腸管外)投与経路が挙げられる。本明細書で使用される「非経口投与」の句は、経腸及び局所の投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内の注射及び点滴、また同様にin vivo電気穿孔を含む。幾つかの実施形態では、上記製剤は、非経口的ではない経路、例えば経口で投与される。他の非経口的ではない経路として、局所、表皮、又は粘膜の投与経路、例えば、鼻腔内、経膣的、直腸、舌下又は局所的なものが挙げられる。また、投与は、例えば1回、複数回、及び/又は1以上の延長された期間に亘って行われ得る。
【0049】
本明細書で使用されるように、抗原と、第1の結合分子、抗体又はその抗原結合分子との相互作用が、参照結合分子、参照抗体又はその抗原結合分子の抗原と相互作用する能力を遮断する、制限する、阻害する、或いは減少させる場合、抗原結合分子、抗体又はその抗原結合分子は、参照抗体又はその抗原結合分子と「交差競合する」。交差競合は、完全なものであってもよく、例えば、抗原に対する結合分子の結合が、参照結合分子の抗原に結合する能力を完全に遮断するか、又は交差競合は、部分的であってもよく、例えば、抗原に対する結合分子の結合が、参照結合分子の抗原に結合する能力を減少させる。或る特定の実施形態では、参照抗原結合分子と交差競合する抗原結合分子は、参照抗原結合分子と同じ、又はそれと重複するエピトープを結合する。他の実施形態では、参照抗原結合分子と交差競合する抗原結合分子は、参照抗原結合分子とは異なるエピトープを結合する。多くの種類の競合結合アッセイ、例えば、固相直接又は間接ラジオイムノアッセイ(RIA);固相直接又は間接酵素免疫定量法(EIA);サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al., 1983, Methods in Enzymology 9:242-253);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Kirkland et al., 1986, J. Immunol. 137:3614-3619);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane, 1988, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press);I-125標識を使用する固相直接標識RIA(Morel et al., 1988, Molec. Immunol. 25:7-15);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Cheung, et al., 1990, Virology 176:546-552);及び直接標識RIA(Moldenhauer et al., 1990, Scand. J. Immunol. 32:77-82)を使用して、或る一つの抗原結合分子が他方と競合するかどうかを判断することができる。
【0050】
「抗原」は、免疫応答を誘発する、又は抗体若しくは抗原結合分子によって結合されることが可能な任意の分子を指す。免疫応答は、抗体産生若しくは特定の免疫適格細胞(immunologically-competent cells)の活性化のいずれか、又はそれらの両方を含み得る。当業者は、実質的に全てのタンパク質又はペプチドを含む任意の高分子が抗原としての役割を果たし得ることを容易に理解する。抗原は内因性に発現され得て、すなわちゲノムDNAによって発現され得るか、又は組み換えによって発現され得る。抗原は、癌細胞等の特定の組織に特異的となり得るか、又は広く発現され得る。さらに、より大きな分子のフラグメントが抗原として作用し得る。一実施形態では、抗原は腫瘍抗原である。
【0051】
「同種異系」の用語は、一個体に由来する任意の材料を指し、該材料はその後、同種の別の個体に導入される(例えば同種異系T細胞移植)。
【0052】
「形質導入」及び「形質導入された」の用語は、外来DNAがウイルスベクターによって細胞へと導入されるプロセスを指す(Jones et al., "Genetics: principles and analysis," Boston: Jones & Bartlett Publ. (1998)を参照されたい)。幾つかの実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクター、DNAベクター、RNAベクター、アデノウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタイン-バールウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルス随伴ベクター、レンチウイルスベクター、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0053】
「癌」は、身体における異常な細胞の制御されていない増殖を特徴とする、幅広い各種疾患のグループを指す。制御されていない細胞の分裂及び増殖は、隣接する組織に侵入して、リンパ系又は血流によって身体の離れた部分へと転移し得る、悪性腫瘍の形成をもたらす。「癌」又は「癌組織」は、腫瘍を含む場合がある。本発明の方法によって治療され得る癌の例として、限定されないが、リンパ腫、白血病、骨髄腫、及び他の白血球の悪性腫瘍(leukocyte malignancies)を含む免疫系の癌が挙げられる。幾つかの実施形態では、本発明の方法は、例えば、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC:primary mediastinal large B cell lymphoma)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse large B cell lymphoma)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換後濾胞性リンパ腫(transformed follicular lymphoma)、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL:splenic marginal zone lymphoma)、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、慢性又は急性の白血病、急性骨髄白血病、慢性骨髄白血病(chronic myeloid leukemia)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、幼少期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍(spinal axis tumor)、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、石綿によって誘導されるものを含む、環境によって誘導される癌、他のB細胞悪性腫瘍、及び上記癌の組み合わせに由来する腫瘍の腫瘍サイズを減少するため使用され得る。特定の一実施形態では、癌は多発性骨髄腫である。特定の癌は、化学療法又は放射線療法に反応性となり得るが、そうでなければその癌は難治性となり得る。難治性癌は、外科的処置に適用できない癌を指し、その癌は最初に化学療法若しくは放射線療法に無反応であるか、又はその癌は経時的に無反応となるいずれかである。
【0054】
本明細書に使用される「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、転移の数の減少、全体生存期間又は無増悪生存期間の増加、平均余命の増加、又は腫瘍と関係する様々な生理学的症状の改善として提示され得る、生物学的効果を指す。また、抗腫瘍効果は、腫瘍の発生の予防、例えばワクチンを指す場合がある。
【0055】
本明細書で使用される「サイトカイン」は、特異抗原との接触に反応して1つの細胞によって放出される非抗体タンパク質を指し、ここで、サイトカインは第2の細胞と相互作用して、第2の細胞における反応を媒介する。サイトカインは、細胞によって内因性に発現され得るか、又は被験体に投与され得る。サイトカインは、マクロファージ、B細胞、T細胞、及び肥満細胞を含む免疫細胞によって放出されて、免疫応答を伝播し得る。サイトカインは、レシピエント細胞において様々な反応を誘導し得る。サイトカインは、ホメオスタシスサイトカイン(homeostatic cytokines)、ケモカイン、炎症誘発性サイトカイン、エフェクター及び急性期タンパク質を含み得る。例えば、インターロイキン(IL)7及びIL-15を含むホメオスタシスサイトカインは、免疫細胞の生存及び増殖を促進し、炎症誘発性サイトカインは炎症反応を促進し得る。ホメオスタシスサイトカインの例として、限定されないが、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-12p70、IL-15及びインターフェロン(IFN)ガンマが挙げられる。炎症誘発性サイトカインの例として、限定されないが、IL-1a、IL-1b、IL-6、IL-13、IL-17a、腫瘍壊死因子(TNF)-アルファ、TNF-ベータ、線維芽細胞成長因子(FGF)2、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、可溶性細胞間接着分子1(sICAM-1)、可溶性血管接着分子1(sVCAM-1)、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGF-C、VEGF-D及び胎盤増殖因子(PLGF)が挙げられる。エフェクターの例として、限定されないが、グランザイムA、グランザイムB、可溶性Fasリガンド(sFasL)及びパーフォリンが挙げられる。急性期タンパク質の例として、限定されないが、C反応性タンパク質(CRP)及び血清アミロイドA(SAA)が挙げられる。
【0056】
「ケモカイン」は細胞走化性又は指向性運動を媒介するサイトカインの一種である。ケモカインの例として、限定されないが、IL-8、IL-16、エオタキシン、エオタキシン-3、マクロファージ由来ケモカイン(MDC又はCCL22)、単球走化性タンパク質1(MCP-1又はCCL2)、MCP-4、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α、MIP-1a)、MIP-1β(MIP-1b)、ガンマ誘導性タンパク質10(IP-10)、並びに胸腺及び活性化制御ケモカイン(TARC又はCCL17)が挙げられる。
【0057】
「治療的有効量」、「有効用量」、「有効量」又は「治療的に有効な投薬量」の治療剤、例えば操作されたCAR T細胞は、単独で又は別の治療剤と組み合わせて使用された場合に、疾患の発症から被験体を保護する、又は疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度及び持続期間の増加、若しくは疾患の罹患に起因する機能障害若しくは身体障害の予防によって明示される疾患の退縮を促進する、任意の量である。治療剤の疾患の退縮を促進する能力は、熟練した医師に知られている様々な方法を使用して、例えば、臨床試験中のヒト被験体において、ヒトにおける効能を予測する動物モデル系において、又はin vitroアッセイにおいて薬剤の活性をアッセイすることによって評価され得る。
【0058】
本明細書で使用される「リンパ球」の用語は、ナチュラルキラー(NK:natural killer)細胞、T細胞、又はB細胞を含む。NK細胞は、生得免疫系の主な成分を占める細胞傷害性(細胞毒性)リンパ球の一種である。NK細胞は腫瘍及びウイルスによって感染された細胞を拒絶する。NK細胞は、アポトーシス又はプログラム細胞死のプロセスによって作用する。NK細胞は、細胞を死滅させるために活性化を必要としないことから、「ナチュラルキラー」と名付けられた。T細胞は、細胞媒介免疫(抗体が関与しない)において主な役割を果たす。そのT細胞受容体(TCR)は、他の種類のリンパ球からそれら自体を分化させる。免疫系の特殊化された器官である胸腺は、主としてT細胞の成熟を担う。6種類のT細胞、すなわち、ヘルパーT細胞(例えばCD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(TC、細胞傷害性Tリンパ球、CTL、T-キラー細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+T細胞又はキラーT細胞としても知られる)、メモリーT細胞((i)ナイーブ細胞のようなステムメモリーTSCM細胞は、CD45RO-、CCR7+、CD45RA+、CD62L+(L-セレクチン)、CD27+、CD28+及びIL-7Rα+であるが、それらは、大量のCD95、IL-2Rβ、CXCR3及びLFA-1を発現し、メモリー細胞に特有の多数の機能的な属性を示す);(ii)セントラルメモリーTCM細胞は、L-セレクチン及びCCR7を発現し、IFNγ又はIL-4ではなくIL-2を分泌する;並びに(iii)エフェクターメモリーTEM細胞はLセレクチンもCCR7も発現しないものの、IFNγ及びIL-4のようなエフェクターサイトカインを産生する)、調節性T細胞(Treg、サプレッサーT細胞又はCD4+CD25+調節性T細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)及びガンマデルタT細胞が存在する。一方、B細胞は、液性免疫(抗体が関与する)で最も重要な役割を果たす。B細胞は抗体及び抗原を作り、抗原提示細胞(APC)の役割を発揮し、抗原相互作用による活性化後にメモリーB細胞となる。哺乳動物において、未成熟B細胞は骨髄中で形成される。
【0059】
用語「遺伝子操作された」、「操作された」又は「改変された」は、限定されるものではないが、コーディング領域若しくは非コーディング領域若しくはそれらの一部を欠失させることによる、又はアンチセンス技術による、又はコーディング領域若しくはそれらの一部を導入しているタンパク質の発現の増加による、遺伝子中の欠損の生成を含む細胞の改変方法を指す。幾つかの実施形態では、改変される細胞は、患者又はドナーのいずれかから取得することができる、幹細胞(例えば、造血幹細胞(HSC)、胚性幹細胞(ES)、人工多能性幹(iPS)細胞)、リンパ球(例えば、T細胞)である。細胞を改変して、細胞のゲノムに組み込まれ得る、外因性コンストラクト、例えば、プレTCRαタンパク質、キメラ抗原受容体(CAR)、又はT細胞受容体(TCR)等を発現させてもよい。
【0060】
「免疫応答」は、侵入病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、癌性若しくは他の異常な細胞、又は自己免疫若しくは病理学的炎症の場合、正常なヒトの細胞若しくは組織の選択的な標的化、それらへの結合、それらに対する損傷、それらの破壊、及び/又は脊椎動物の身体からのそれらの排除をもたらす、免疫系の細胞(例えばTリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞、及び好中球)及びこれらの細胞のいずれか又は肝臓によって産生される可溶性高分子(Ab、サイトカイン、及び補体を含む)の作用を指す。
【0061】
「免疫療法」の用語は、免疫応答を誘導する、増強する、抑制する、或いは変更することを含む方法による、疾患に冒された、又は疾患にかかる若しくは疾患の再発を患うリスクがある被験体の治療を指す。免疫療法の例として、限定されないが、T細胞療法が挙げられる。T細胞療法は、養子T細胞療法(adoptive T cell therapy)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)免疫療法、自己細胞治療、操作された自己細胞療法(eACT(商標))、及び同種異系T細胞移植を含み得る。しかしながら、当業者は、本明細書に開示されるコンディショニング法(conditioning methods)が任意の移植T細胞療法の有効性を増強し得ることを認識するであろう。T細胞療法の例は、米国特許出願公開第2014/0154228号及び同第2002/0006409号、米国特許第5,728,388号及び国際公開第2008/081035号に記載される。
【0062】
免疫療法のT細胞は、当該技術分野において知られている任意の起源に由来し得る。例えば、T細胞は、in vitroで造血幹細胞集団、人工多能性幹細胞(iPS)、胚性幹細胞(ES)から分化させることもでき、又はT細胞は被験体から得ることもできる。T細胞を、例えば末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸水、脾臓組織及び腫瘍から得ることができる。さらに、T細胞は、当該技術分野において利用可能な1以上のT細胞系統に由来してもよい。また、T細胞は、FICOLL(商標)分離及び/又はアフェレーシス(apheresis)等の当業者に知られている任意の多くの技術を使用して被験体から収集された血液単位から得ることもできる。T細胞療法用のT細胞を単離する更なる方法は、米国特許出願公開第2013/0287748号に開示され、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0063】
「eACT(商標)」と略記することができ、養子細胞移植としても知られる「操作された自己細胞療法」の用語は、患者自身のT細胞を収集し、続いて1以上の特定の腫瘍細胞又は悪性腫瘍の細胞表面上に発現される1つ以上の抗原を認識して標的とするように遺伝的に変更するプロセスである。本明細書で使用される「患者」は、癌(例えばリンパ腫又は白血病)に冒された任意のヒトを含む。「被験体」及び「患者」の用語は、本明細書では区別なく使用される。
【0064】
本明細書で使用される「in vitro細胞」の用語は、ex vivoで培養される任意の細胞を指す。特に、in vitro細胞はT細胞を含み得る。
【0065】
「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」の用語は区別なく使用され、ペプチド結合によって共有結合的に連結されたアミノ酸残基で構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含み、タンパク質又はペプチドの配列を含み得るアミノ酸の最大数に制限はない。本明細書で使用される場合に、本発明のペプチドは、リンカーとして機能し得る(例えば、2つのペプチド又はポリペプチドを結合する)。本明細書中で使用される場合に、本発明のペプチドは、バイオマーカー又はタグとして機能し得る。ペプチド、タグ、又はリンカーの用語は区別なく使用される。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いにつながれた2個以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書で使用されるように、上記用語はまた、当該技術分野において、例えばペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーと一般的に称される短い鎖と、当該技術分野において一般的にはタンパク質と称され、多くの種類が存在する、より長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」として、例えば、特に、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同性のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、改変ポリペプチド、誘導体、類縁体、融合タンパク質が挙げられる。ポリペプチドは、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、又はそれらの組み合わせを含む。
【0066】
本明細書で使用される「刺激」は、その同族のリガンドと刺激分子を結合することによって誘導される一次応答を指し、ここで、その結合はシグナル伝達事象を媒介する。「刺激分子」は、T細胞上の分子、例えば、抗原提示細胞上に存在する同族の刺激リガンドと特異的に結合するT細胞受容体(TCR)/CD3複合体である。「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、APC、樹状細胞、B細胞等)上に存在する場合、T細胞上の刺激分子と特異的に結合することができ、それによって、限定されないが活性化、免疫応答の開始、増殖等を含むT細胞による一次応答を媒介するリガンドである。刺激リガンドとして、限定されないが、抗CD3抗体、ペプチドがロードされたMHCクラスI分子、スーパーアゴニスト抗CD2抗体、及びスーパーアゴニスト抗CD28抗体が挙げられる。
【0067】
本明細書で使用される「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーション等の一次シグナルと組み合わせて、限定されないが増殖及び/又は主要な分子の上方制御若しくは下方制御等のT細胞の応答をもたらすシグナルを指す。
【0068】
本明細書で使用される「共刺激リガンド」は、T細胞上の同族の共刺激分子を特異的に結合する抗原提示細胞上の分子を含む。共刺激リガンドの結合は、限定されないが、増殖、活性化、分化等を含むT細胞応答を媒介するシグナルを提供する。共刺激リガンドは、一次シグナルに加えて、刺激分子によって、例えば、ペプチドがロードされた主要組織適合複合体(MHC)分子とのT細胞受容体(TCR)/CD3複合体の結合によって提供されるシグナルを誘導する。共刺激リガンドとして、限定されないが、3/TR6、4-1BBリガンド、Tollリガンド受容体に結合するアゴニスト又は抗体、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、CD30リガンド、CD40、CD7、CD70、CD83、ヘルペスウイルスエントリーメディエーター(HVEM:herpes virus entry mediator)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、ILT4、免疫グロブリン様転写物(ILT:immunoglobulin-like transcript)3、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、B7-H3と特異的に結合するリガンド、リンフォトキシンベータ受容体、MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)、MHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)、OX40リガンド、PD-L2、又はプログラム細胞死(PD)L1が挙げられ得る。共刺激リガンドとして、限定されないが、4-1BB、B7-H3、CD2、CD27、CD28、CD30、CD40、CD7、ICOS、CD83と特異的に結合するリガンド、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、ナチュラルキラー細胞受容体C(NKG2C)、OX40、PD-1、又は腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14又はLIGHT)等のT細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体が挙げられる。
【0069】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合することにより、限定されないが増殖等のT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族の結合パートナーである。共刺激分子としては、限定されないが、を含む、「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合することにより、限定されないが増殖等のT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族の結合パートナーである。共刺激分子として、限定されないが、4-1BB/CD137、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD33、CD45、CD100(SEMA4D)、CD103、CD134、CD137、CD154、CD16、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD22、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3(アルファ;ベータ;デルタ;イプシロン;ガンマ;ゼータ)、CD30、CD37、CD4、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD5、CD64、CD69、CD7、CD80、CD83リガンド、CD84、CD86、CD8アルファ、CD8ベータ、CD9、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、ICOS、Igアルファ(CD79a)、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、インテグリン、ITGA4、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、LIGHT、LIGHT(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14;TNFSF14)、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1(CD11a/CD18))、MHCクラスI分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX40、PAG/Cbp、PD-1、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子、SLAM(SLAMF1;CD150;IPO-3)、SLAMF4(CD244;2B4)、SLAMF6(NTB-A;Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNF、TNFr、TNFR2、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1若しくはVLA-6、又はそれらのフラグメント、短縮物(truncations)、若しくは組み合わせが挙げられる。
【0070】
「減少する、減少させる(reducing)」及び「減じる(decreasing)」の用語は、本明細書において区別なく使用され、本来よりも少ない、あらゆる変化を示す。「減少する、減少させる」及び「減じる」は測定前と測定後との比較を必要とする、相対的な用語である。「減少する、減少させる」及び「減じる」は完全な欠乏を含む。
【0071】
被験体の「治療(Treatment)」又は被験体を「治療する、治療すること(treating)」は、症状、合併症若しくは病状の発症、進行、発現、重症度若しくは再発、又は疾患と関連する生化学的指標の転換、緩和、改善、阻害、遅延又は予防の目的で、被験体に対して行われる任意の種類の処置若しくはプロセス、又は被験体に対する有効成分の投与を指す。一実施形態では、「治療」又は「治療する、治療すること」は部分寛解を含む。別の実施形態では、「治療」又は「治療する、治療すること」は完全寛解を含む。
【0072】
パーセント同一性を計算するため、典型的には、配列間の最も大きな一致を与える方法で比較される配列をアラインメントさせる。パーセント同一性を特定するために使用され得るコンピュータープログラムの一例は、GAP(Devereux et al., 1984, Nucl. Acid Res. 12:387、ウィスコンシン州マディソンのウィスコンシン大学、Genetics Computer Group)を含むGCGプログラムパッケージである。コンピューターアルゴリズムであるGAPを使用して、パーセント配列同一性が特定される2つのポリペプチド又はポリヌクレオチドをアラインメントさせる。配列を、それらの各アミノ酸又はヌクレオチドの最適なマッチング(アルゴリズムによって特定される、「一致スパン(matched span)」)についてアラインメントさせる。また或る特定の実施形態では、上記アルゴリズムによって、標準的な比較マトリクス(Dayhoff et al., 1978, Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345-352 for the PAM 250 comparison matrix、Henikoff et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:10915-10919 for the BLOSUM 62 comparison matrixを参照されたい)が使用される。
【0073】
本発明の様々な態様が以下の小節に更に詳細に記載される。
【0074】
詳細な説明
キメラポリペプチド又は融合ポリペプチドを作製する(例えば、設計、操作する)手段を提供する組成物が本明細書に記載される。本明細書に記載されるペプチド(例えば、リンカー)配列は、融合タンパク質の適切な発現、フォールディング及び活性を可能にする。本発明は、とりわけ、新規ポリペプチド(例えば、リンカー)及びそれを含む融合タンパク質を提供する。幾つかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるペプチド(例えば、リンカー、タグ)又は融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド組成物を提供する。幾つかの実施形態では、本発明は、ペプチド(例えば、リンカー、タグ)又は融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。他の実施形態では、本発明は、ペプチド(例えば、リンカー、タグ)又は融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド及び/又は発現ベクターを含む細胞を提供する。本明細書に記載されているのは、ペプチドリンカーを含む新規組成物、ペプチドリンカーによって結合されたポリペプチドを含むポリペプチド組成物、並びに関連するポリヌクレオチド、ベクター、細胞及び医薬組成物である。幾つかの実施形態では、ペプチド(例えば、リンカー、タグ)は、1つ以上のポリペプチドに融合される。記載されるリンカー配列は、リンカーによって接続されたポリペプチドの発現及び活性(例えば、抗原結合)が永続的かつ最適であるように、目的の2つのペプチド/ポリペプチドを制御可能に結合する。ペプチドリンカー又はタグは、C末端、N末端、又はポリペプチド内のどこにでも融合して、所望の機能を達成し得る。
【0075】
ペプチドリンカー
コンセンサス配列XYPXXXZXを含む本明細書に記載される新規キメラポリペプチドリンカーは、治療的処置に有用な融合タンパク質への組み込みに適した望ましい属性を併せ持つ。1つの態様においては、本発明は、8個~20個のアミノ酸とコンセンサス配列XYPXXXZXとを含むリンカーを提供し、ここで、Xはグリシン(G)又はセリン(S)であり、Bは正電荷アミノ酸であり、Zはグリシン(G)又は負電荷アミノ酸である。本発明者らは、コンセンサス配列におけるアミノ酸残基の間隔と電荷の両方が、リンカー配列の抗体認識に加えて、リンカーの機能性に寄与することを発見した。
【0076】
1つの態様においては、本発明は、6個~20個のアミノ酸とコンセンサス配列BPXXXZとを含むリンカーを提供し、ここで、Xはグリシン(G)又はセリン(S)であり、Bはリジン(K)又はアルギニン(R)であり、Zはグリシン(G)又は負電荷アミノ酸であり、Pはプロリンである。
【0077】
幾つかの実施形態では、本発明は、8個~20個のアミノ酸とコンセンサス配列XBPXXXZXとを含むリンカーを提供し、ここで、Xはグリシン(G)又はセリン(S)であり、Bはリジン(K)又はアルギニン(R)であり、Zはグリシン(G)又は負電荷アミノ酸であり、Pはプロリンである。
【0078】
幾つかの実施形態では、本発明は、8個~20個のアミノ酸とコンセンサス配列XBPXXXZXとを含むリンカーを提供し、ここで、Xはグリシン(G)又はセリン(S)であり、Bはリジン(K)であり、Zはグリシン(G)又は負電荷アミノ酸であり、Pはプロリンである。
【0079】
幾つかの実施形態では、本発明は、8個~20個アミノ酸とコンセンサス配列XBPXXXZXとを含むリンカーを提供し、ここで、Xはグリシン(G)又はセリン(S)であり、Bは正電荷アミノ酸であり、Zはグリシン(G)であり、Pはプロリンである。
【0080】
幾つかの実施形態では、Zは、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)から選択される負電荷アミノ酸である。幾つかの実施形態では、Zはグルタミン酸(E)である。
【0081】
幾つかの実施形態では、本発明は、コンセンサス配列がGKPGSGE(配列番号5)又はGKPGSGG(配列番号6)であるリンカーを提供する。幾つかの実施形態では、コンセンサス配列は、GKPGSGE(配列番号5)である。
【0082】
幾つかの実施形態では、ペプチドは、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号18)のアミノ酸配列を含む。
【0083】
リンカーペプチド配列は、目的の1つ以上のタンパク質を接続するために任意の適切な長さとすることができ、接続するペプチドの一方又は両方の適切なフォールディング及び/又は機能及び/又は活性を可能にするように十分柔軟に設計されることが好ましい。したがって、リンカーペプチドは、10個以下、11個以下、12個以下、13個以下、14個以下、15個以下、16個以下、17個以下、18個以下、19個以下、又は20個以下の長さのアミノ酸を有し得る。幾つかの実施形態では、リンカーペプチドは、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、又は少なくとも20個の長さのアミノ酸を有し得る。幾つかの実施形態では、リンカーは、少なくとも7個かつ20個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ19個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ18個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ17個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ16個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ15個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ14個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ13個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ12個以下のアミノ酸、又は少なくとも7個かつ11個以下のアミノ酸を含む。或る特定の実施形態では、リンカーは、15個~17個のアミノ酸を含み、特定の実施形態では、16個のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態では、リンカーは、10個~20個のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態では、リンカーは、14個~19個のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態では、リンカーは、15個~17個のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態では、リンカーは、15個又は16個のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態では、リンカーは、16個のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態では、リンカーは、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個のアミノ酸を含む。
【0084】
本明細書中で使用される、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性又は正に帯電した側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性又は負に帯電した側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。或る特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリペプチドリンカー、融合タンパク質、CDR(複数の場合もある)内の又は抗体若しくは抗原結合分子(又はそのフラグメント)のフレームワーク領域(複数の場合もある)内の1つ以上のアミノ酸残基を、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えてもよい。
【0085】
本開示に包含される保存的アミノ酸置換は、非天然起源のアミノ酸残基を包含してもよく、これは、典型的には、生体システムにおける合成ではなく化学的ペプチド合成により組み込まれる。これらには、ペプチド模倣物、及びその他のリバース形態又は反転形態のアミノ酸部分が含まれる。天然起源の残基は、共通する側鎖の特性に基づいて下記のクラスに分類され得る。
疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
酸性(負電荷):Asp、Glu;
塩基性(負電荷):His、Lys、Arg;
鎖の向きに影響を与える残基:Gly、Pro;及び、
芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0086】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーの別のクラスのメンバーへの交換を含み得る。かかる置換残基は、例えば、非ヒト抗体と相同であるヒト抗体の領域、又は分子の非相同領域に導入され得る。例示的な保存的アミノ酸置換を以下の表Aに述べる。
【0087】
【表1】
【0088】
幾つかの実施形態では、リンカーは、GGGSGKPGSGEGGGS(配列番号7)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、リンカーは、GGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号8)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGKPGSGGGGS(配列番号9)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGKPGSGEGGS(配列番号10)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号11)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号12)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、リンカーは、STSGSGKPGSGEGS(配列番号17)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、ペプチドは、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号18)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、ペプチドは、GGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、ペプチドは、GGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号20)のアミノ酸配列を含む。
【0089】
1つの態様においては、本発明は、6個~20個のアミノ酸と、GGGSGKPGSGEGGGS(配列番号7)、GGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号8)、GGGGSGKPGSGGGGS(配列番号9)、GGGGSGKPGSGEGGS(配列番号10)、GGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号11)、GGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号12)、STSGSGKPGSGEGST(配列番号17)、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号18)、GGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)又はGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号20)のいずれか1つに対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列とを含むリンカーを提供する。
【0090】
幾つかの実施形態では、リンカーのアミノ酸配列は、GGGSGKPGSGEGGGS(配列番号7)、GGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号8)、GGGGSGKPGSGGGGS(配列番号9)、GGGGSGKPGSGEGGS(配列番号10)、GGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号11)、GGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号12)、STSGSGKPGSGEGST(配列番号17)、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号18)、又はGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)、又はGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号20)のいずれか1つに見られる10個の連続するアミノ酸のうち少なくとも5個、6個、7個、8個、又は少なくとも9個のアミノ酸が同一である。
【0091】
1つの態様においては、本発明は、8個~20個のアミノ酸と、GGGSGKPGSGEGGGS(配列番号7)、GGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号8)、GGGGSGKPGSGGGGS(配列番号9)、GGGGSGKPGSGEGGS(配列番号10)、GGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号11)、GGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号12)、STSGSGKPGSGEGST(配列番号17)、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号18)、GGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)、又はGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号20)のいずれか1つに見られる10個の連続するアミノ酸のうち少なくとも6個のアミノ酸が同一であるアミノ酸配列と含むリンカーを提供する。
【0092】
幾つかの実施形態では、リンカーのアミノ酸配列は、GGGSGKPGSGEGGGS(配列番号7)、GGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号8)、GGGGSGKPGSGGGGS(配列番号9)、GGGGSGKPGSGEGGS(配列番号10)、GGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号11)、又はGGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号12)、STSGSGKPGSGEGST(配列番号17)、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号18)、GGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)、又はGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号20)のいずれか1つに見られる10個の連続するアミノ酸のうち少なくとも7個、少なくとも8個、又は少なくとも9個のアミノ酸が同一である。
【0093】
融合タンパク質
1つの態様においては、本発明は、第1のポリペプチドと、第2のポリペプチドと、本明細書に記載されるリンカーとを含む融合タンパク質を提供する。ポリペプチド組成物及び該ポリペプチド組成物をコードするポリヌクレオチドが本明細書に記載されており、ポリペプチド組成物は、本明細書に開示されるリンカー配列によって接続された第1及び第2のペプチド/ポリペプチドを含む。本発明者らは、驚くべきことに、本発明によるリンカーが、第1及び第2のペプチドの最適な柔軟性と長さの両方を提供して、立体障害を回避し、正しいフォールディングを可能にすることを見出した。
【0094】
このようにして生成されたポリペプチド組成物は、一般に、融合又はキメラタンパク質/ポリペプチドと称され、典型的には、適切な系でのポリペプチド組成物をコードする核酸配列の発現(例えば、転写、翻訳)によって作製される。融合及び/又はキメラポリペプチドを作製するための手段は、当技術分野においてよく知られている(例えば、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory, 1992) New Yorkを参照されたい)。
【0095】
本明細書に記載されるポリペプチド組成物において、2つのポリペプチド(例えば、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチド)は、上に記載されるリンカーポリペプチドのいずれかによって組み換えにより結合され得て、該リンカーは2つのポリペプチドの間に配置されている。例えば、或る特定の実施形態では、ポリペプチド又は組成物は、GGGSGKPGSGEGGGS(配列番号7)、GGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号8)、GGGGSGKPGSGGGGS(配列番号9)、GGGGSGKPGSGEGGS(配列番号10)、GGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号11)、GGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号12)、STSGSGKPGSGEGST(配列番号17)、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号18)、GGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)、又はGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号20)を含むリンカーによって組み換えにより結合された第1及び第2のポリペプチドを含む。2つのポリペプチドは、2つの異なるタンパク質又は同じタンパク質のいずれかの全長タンパク質、タンパク質フラグメント又は部分、機能的タンパク質フラグメント又は部分、機能的タンパク質ドメイン等を含む任意のアミノ酸配列であり得る。
【0096】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」又は「ペプチド」の用語は、天然の(例えば、単離された、本質的に精製された又は精製された)又は合成(例えば、化学合成によって)生成され得る、典型的にはペプチド結合のみによって結合されたアミノ酸残基のポリマーを指す。非宿主DNA分子の発現により生成されるポリペプチドは、「異種」ペプチド又はポリペプチドである。ポリペプチドを構成する「アミノ酸残基」は、ペプチド結合及び/又はペプチド結合とは異なる結合によって連結された天然又は非天然のアミノ酸残基であり得る。アミノ酸残基は、D-配置又はL-配置であり得る。幾つかの態様では、本明細書で言及されるポリペプチドは、組み換え核酸の発現により生成されるタンパク質、ペプチド又はそれらのフラグメントである。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチド組成物は、リンカー配列によって接続された2つのポリペプチドを含む。
【0097】
本明細書で使用される場合、「機能的フラグメント」又は「部分」は、成熟又は天然のタンパク質の所望の生物学的活性の1つ以上を保持するのに十分な(例えば、治療される障害に関する治療的又は改善的な生物学的活性を保持するのに十分な)成熟又は天然タンパク質全体よりも小さいものを指すことが意図される。したがって、アミノ酸配列又はポリペプチドは改変されてもよく、例えば、該改変が機能的物質をコードするポリペプチドの能力を実質的に妨げないように、ポリペプチド配列にアミノ酸が挿入、欠失及び/又は置換されている。
【0098】
本明細書に記載されるリンカー又はポリペプチドリンカーは、2つのタンパク質配列を接続(例えば、結合、連結)するように設計されたペプチド配列を指し、該リンカーペプチド配列は、通例、天然には通常2つのタンパク質配列の間には配置されていない。本発明の文脈において、「連結された」又は「結合された」又は「接続された」という語句は、一般に、天然には通常存在しないポリペプチドを生成するための2つの連続する又は隣接するアミノ酸配列間の機能的連結を指す。或る特定の実施形態では、連結は、例えば、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチド(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖)のアミノ酸配列の共有結合を指すために使用され得る。一般に、連結されたタンパク質は互いに連続しているか又は隣接しており、結合された場合にそれぞれの操作性及び機能を保持する。本明細書に開示されるキメラポリペプチドを含むペプチドは、1つ以上のアミノ酸を含む挿入されたペプチドリンカーによって連結される。かかるリンカーは、キメラポリペプチドの所望の発現、活性及び/又は立体配座の位置決めを可能にする望ましい柔軟性を提供し得る。典型的なアミノ酸リンカーは、一般に、柔軟であるように、又は2つのタンパク質部分の間にアルファ-ヘリックス等の構造を挿入するように設計される。リンカーは、ポリペプチドのN末端若しくはC末端に融合されてもよく、又は内部に挿入されてもよい。
【0099】
リンカーを含むポリペプチド組成物において、リンカーペプチド配列(例えば、アミノ酸配列)の5’端(例えば、末端)は、1つのタンパク質配列(第1のペプチド)(例えば、全長タンパク質、又はタンパク質のドメイン、フラグメント若しくはバリアント)の3’端に隣接して共有結合され、さらに、リンカーアミノ酸配列の3’端は、別のタンパク質配列(第2のペプチド)の5’端に隣接して共有結合される。
【0100】
抗原結合分子
幾つかの態様において、融合タンパク質は抗原結合分子である。幾つかの実施形態では、第1のポリペプチドは軽鎖可変ドメインであり、第2のポリペプチドは重鎖可変ドメインである。幾つかの実施形態では、抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を結合するための本明細書に記載されるリンカーの使用は、立体障害を回避し、抗原結合ドメインの正しいフォールディングを可能にする最適な柔軟性及び長さを可能にするという利点を提供する。第1及び第2のペプチドの適切な立体配座は、抗原の認識及び結合に不可欠である。
【0101】
本明細書で使用される場合、「可変領域」又は「可変ドメイン」の用語は区別なく使用され、抗体の一部、一般的には、軽鎖又は重鎖の一部、典型的には抗体のアミノ末端を意味し、重鎖中の約100個~130個のアミノ酸及び軽鎖中の約90個~115個のアミノ酸を含み、それらは、抗体間で配列が広範囲に異なり、特定の抗原に対する特定の抗体の結合及び特異性において使用される。配列における可変性は、相補性決定領域(CDR)と称される領域に濃縮されるのに対し、可変ドメイン中のより高度に保存された領域はフレームワーク領域(FR)と称される。軽鎖及び重鎖のCDRは、抗体の抗原との相互作用及び特異性を主として担うものである。
【0102】
或る特定の実施形態では、抗原結合分子の可変領域はヒト可変領域である。更なる実施形態では、可変領域は、齧歯類、ヒト又はマウスのCDR、及びヒトのフレームワーク領域(FR)を含む。更なる実施形態では、可変領域は霊長類(例えば非ヒト霊長類)の可変領域である。また更なる実施形態では、可変領域はウサギ可変領域である。他の実施形態では、可変領域は、ヒトCDR及び非ヒト(例えばウサギ、マウス、ラット又は非ヒト霊長類)フレームワーク領域(FR)を含む。他の実施形態では、可変領域は非ヒト(例えばウサギ、マウス、ラット又は非ヒト霊長類)CDR及びヒトフレームワーク領域(FR)を含む。
【0103】
「VH」、「VHドメイン」及び「VH鎖」の用語は区別なく使用され、抗原結合分子、抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域を意味する。本明細書で使用される場合、抗体に関して使用される際の「重鎖」の用語は、任意の異なるタイプ、例えば定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてアルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)及びミュー(μ)を指す場合があり、IgGのサブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMのクラスの抗体をそれぞれ生じる。
【0104】
「VL」、「VLドメイン」及び「VL鎖」の用語は区別なく使用され、抗原結合分子、抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域を意味する。本明細書で使用される場合、抗体に関して使用される際の「軽鎖」の用語は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、任意の異なるタイプ、例えばカッパ(κ)又はラムダ(λ)を指す場合がある。軽鎖アミノ酸配列は、当技術分野でよく知られている。特定の実施形態では、軽鎖はヒト軽鎖である。
【0105】
「抗原結合分子」、「抗原結合部分」、又は「抗体フラグメント」は、その分子が由来する抗体の抗原結合部分(例えば、CDR)を含む任意の分子を指す。抗原結合分子は、抗原相補性決定領域(CDR)を含み得る。抗体フラグメントの例としては、限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFvフラグメント、dAb、直鎖状抗体、scFv抗体、並びに抗原結合分子から形成された多重特異性抗体が挙げられる。ペプチボディ(すなわち、ペプチド結合ドメインを含むFc融合分子)は、適切な抗原結合分子の別の例である。幾つかの実施形態では、抗原結合分子は腫瘍細胞上の抗原に結合する。幾つかの実施形態では、抗原結合分子は、過剰増殖性疾患に関与する細胞上の抗原、又はウイルス抗原若しくは細菌抗原に結合する。更なる実施形態では、抗原結合分子は、その相補性決定領域(CDR)の1つ以上を含む抗体又はそのフラグメントである。更なる実施形態では、抗原結合分子は一本鎖可変フラグメント(scFv)である。
【0106】
本明細書で使用される場合、「一本鎖抗体」及び「一本鎖可変フラグメント(scFv)」の用語は区別なく使用され、VL及びVH領域が連続タンパク質鎖を形成するようにリンカーによって結合され、タンパク質鎖がそれ自体に折り重なり、一価抗原結合部位を形成するようにリンカーが十分に長い抗原結合分子を意味する(例えば、Bird et al., (1988) Science 242:423-26及びHuston et al., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:5879-83 (1988)を参照されたい)。FMC63(Nicholson et al., (1997) Mol. Immunol. 34:(16-17) 1157-65)がscFvの具体例であり、CD19に特異的である。
【0107】
幾つかの実施形態では、抗原結合分子はscFvである。
【0108】
幾つかの実施形態では、本発明は、コンセンサス配列BPXXXZ、XBPXXXZX、又は本明細書に記載される例示的なリンカー配列(例えば、KPGSGE(配列番号4)、GKPGSGE(配列番号5)、GKPGSGG(配列番号6)、GGGSGKPGSGEGGGS(配列番号7)、GGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号8)、GGGGSGKPGSGGGGS(配列番号9)、GGGGSGKPGSGEGGS(配列番号10)、GGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号11)、GGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号12)、STSGSGKPGSGEGST(配列番号17)、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号18)、GGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)又はGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号20)を含む、scFvを含む抗原結合分子を提供する。幾つかの実施形態では、これらの配列を含む分子及びかかる分子を提示する細胞、抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドも提供され、本開示の態様を形成する。
【0109】
本明細書で使用される場合、「結合親和性」の用語は、分子(例えば、抗体等の抗原結合分子)の単一の結合部位と、その結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合的な相互作用の合計の強さを意味する。別段の指示がない限り、本明細書で使用される「結合親和性」は、結合ペアのメンバー(例えば抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する、固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的には、解離定数(K)によって表され得る。親和性は、限定されないが、平衡解離定数(K)及び平衡会合定数(K)を含む、当該技術分野で知られている多くの方法で測定され得る及び/又は表され得る。Kはkoff/konの商から計算されるが、Kはkon/koffの商から計算される。konは、例えば抗原に対する抗体の会合速度定数を指し、koffは、例えば抗原に対する抗体の解離を指す。kon及びkoffは、BIAcore(商標)又はKinExA又は表面プラズモン共鳴等の当業者に知られている標準的な技法によって決定され得る。
【0110】
或る特定の実施形態では、抗原結合分子は一本鎖を含み、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が本明細書に記載されるリンカーによって接続されてscFv(例えば、本開示の抗原結合分子)を形成する。幾つかの実施形態では、VHはリンカーのN末端に位置し、VLはリンカーのC末端に位置する。他の実施形態では、VLはリンカーのN末端に位置し、VHはリンカーのC末端に位置する。幾つかの実施形態では、リンカーは、少なくとも約5個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約25個、少なくとも約30個、少なくとも約35個、少なくとも約40個、少なくとも約45個、少なくとも約50個、少なくとも約60個、少なくとも約70個、少なくとも約80個、少なくとも約90個、又は少なくとも約100個のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態では、リンカーは、約8個のアミノ酸~約18個のアミノ酸(例えば、16個のアミノ酸)を含む。
【0111】
キメラ抗原受容体
抗原結合分子は、CAR又はTCRのコンポーネントを形成し得て、CAR又はTCRに目的の標的を認識するように指示する役割を果たす場合がある。CAR又はTCRの文脈に関連して、本明細書で使用される場合、抗原結合分子は、CAR又はTCRを所望の標的に向け、その標的と会合するCAR又はTCRの任意のコンポーネントを意味する。特定の実施形態では、CAR又はTCRの抗原結合分子コンポーネントは、本明細書に記載されるリンカーによって結合された重鎖及び軽鎖の可変領域を含むscFvを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、同じ抗体又は2つの異なる抗体に由来し得る。CAR又はTCRで使用される抗原結合分子は、目的の標的に結合することが知られているか又はそれが疑われる抗体に由来し得る。
【0112】
T細胞は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)を発現するように操作され得る。CAR陽性(CAR+)T細胞はCARを発現するように操作されている。CARは、例えば、特定の腫瘍抗原に対する特異性を有する細胞外一本鎖可変フラグメント(scFv)を含んでもよく、scFvは、少なくとも1つの共刺激ドメインを含む細胞内シグナル伝達部分に直接的又は間接的に連結され、少なくとも1つの活性化ドメインに直接的又は間接的に連結されて、コンポーネントは任意の順序で配置され得る。共刺激ドメインは、例えば、CD28又は4-1BBに由来し得て、活性化ドメインは、例えば、任意の形態のCD3-ゼータに由来し得る。或る特定の実施形態では、CARは、2個、3個、4個、又はそれ以上の共刺激ドメインを有するように設計される。CAR scFvは、例えば、全ての正常なB細胞、並びにNHL、CLL、及び非T細胞ALL等のB細胞悪性腫瘍を含む、B細胞系統の細胞によって発現される膜貫通タンパク質であるCD19等を標的とするように設計され得る。幾つかの実施形態では、CARは、共刺激ドメインが別個のポリペプチド鎖として発現されるように操作される。CAR T細胞療法及びそのコンストラクトの例は、あらゆる目的で引用することによりそれらの全体が本明細書の一部をなす、米国特許出願公開第2013/0287748号、同第2014/0227237号、同第2014/0099309号、及び同第2014/0050708号に記載されている。
【0113】
本開示の抗原結合分子はまた、完全にヒトのモノクローナル抗体であってもよく、そこからscFvが生成され得て、次いで、本明細書で提供されるCAR又はTCRのコンポーネントを形成し得る。完全にヒトのモノクローナル抗体は、当業者が精通している数々の手法によって生成され得る。かかる方法としては、限定されないが、ヒト末梢血細胞(例えば、Bリンパ球を含む)のエプスタインバーウイルス(EBV)形質転換、ヒトB細胞のin vitro免疫、挿入されたヒト免疫グロブリン遺伝子を保有する免疫化トランスジェニックマウスに由来する脾臓細胞の融合、ヒト免疫グロブリンV領域ファージライブラリからの単離、又は当技術分野で知られている本明細書の開示に基づく他の手順が挙げられる。
【0114】
非ヒト動物においてヒトモノクローナル抗体を生成する手順が開発されている。例えば、1つ以上の内在性免疫グロブリン遺伝子を様々な手段によって不活性化したマウスが作製された。ヒト免疫グロブリン遺伝子をマウスに導入し、不活性化マウス遺伝子を置き換えた。この技法では、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子座の要素を、内在性重鎖及び軽鎖遺伝子座の標的破壊を含有する胚性幹細胞系に由来するマウスの株に導入する(Bruggemann et al., (1997) Curr. Opin. Biotechnol. 8:455-58も参照されたい)。
【0115】
必要に応じて、本明細書に記載される様々なドメイン及び領域は、いわゆる「トランス」配置で、抗原結合分子(例えば、scFv)及び活性化ドメインとは別の鎖で発現され得ることが更に理解される。したがって、一実施形態では、活性化ドメインは1つの鎖で発現され得るのに対して、抗原結合分子、及び/又は細胞外ドメイン、及び/又は膜貫通ドメイン及び/又は共刺激ドメイン(CAR又はTCRの望ましい構築に応じて)は別々の鎖で発現され得る。
【0116】
さらに、本開示のCARのコンポーネントのN末端からC末端への、又は細胞外から細胞内への順序は、必要に応じて変更されてもよい。抗原結合分子(scFv)は、標的抗原と会合するために細胞外にあり、細胞膜から最も遠位のscFvのN末端にリーダー又はシグナルペプチドを含めることができる。
【0117】
ポリヌクレオチド
1つの態様において、本発明は、本明細書に記載されるリンカーをコードするポリヌクレオチドを提供する。幾つかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。本開示はまた、本明細書に記載されるリンカーを含む、抗体及びscFv等の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド、この配列を含む分子、並びにかかる分子を提示する細胞に関する。
【0118】
発現ベクター
1つの態様においては、本発明は、本明細書に記載されるリンカー又は融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。或る特定の態様では、本開示のポリヌクレオチドを含むベクターが本明細書で提供される。幾つかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるリンカー又は融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター又はベクターのセットに関する。他の実施形態では、本開示は、本明細書に開示される、抗体又はその抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含むベクター又はベクターのセットに関する。
【0119】
当該技術分野で既知の任意のベクターは、本開示に適切であり得る。幾つかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。幾つかの実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクター、DNAベクター、マウス白血病ウイルスベクター、SFGベクター、プラスミド、RNAベクター、アデノウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタインバーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルス関連ベクター(AAV)、レンチウイルスベクター、又はそれらの任意の組み合わせである。本開示の幾つかの実施形態では、1つ、2つ、又はそれ以上のベクターを利用することができる。
【0120】
組み換え細胞
幾つかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるリンカー又は融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組み換え細胞を提供する。幾つかの実施形態では、組み換え細胞は、本明細書に記載されるリンカー又は融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。幾つかの態様においては、本開示のポリヌクレオチド又はベクターを含む細胞が本明細書で提供される。幾つかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるリンカー又は融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むin vitro細胞等の宿主細胞に関する。幾つかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞、例えばin vitro細胞に関する。
【0121】
適切な宿主細胞は、哺乳動物、植物、鳥(例えば、鳥類の系)、昆虫、酵母、及び細菌を含むがこれらに限定されない様々な生物に由来し得る。幾つかの実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。細胞培養及びポリペプチドを発現しやすい任意の哺乳動物細胞を、本発明に従って宿主細胞として用いることができる。本発明に従って使用され得る哺乳動物細胞の非限定的な例としては、ヒト胎児腎臓293細胞(HEK293)、HeLa細胞;BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/l、ECACC番号85110503);ヒト網膜芽細胞(PER.C6(オランダ国ライデンのCruCell));SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト線維肉腫細胞株(例えば、HT-1080);ヒト胎児腎臓株(293細胞又は懸濁培養での増殖のためサブクローン化された293細胞、Graham et al., J. Gen Virol., 36:59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/-DHFR(CHO、Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1 587);ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC 5細胞;FS4細胞;ヒト肝細胞癌株(Hep G2)、ヒト細胞株CAP及びAGE1.HN、並びにGlycotopeのパネルが挙げられる。
【0122】
本発明に適した宿主細胞の非限定的な例としては、酵母の場合、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア・アンガスタ(Pichia angusta)、シゾサッカロミセス・ポンベ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、及びヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica);昆虫の場合、スポドプテラ・フルギペルダ、トリコプルシア・ニ、ドロソフィラ・メラノガスター、及びマンデュカ・セキタ(Manduca sexta);並びに細菌の場合、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、クロストリジウム・パーフリンジェンス、クロストリジウム・ディフィシル;並びに両生類の場合、ゼノパス・レイヴィス(Xenopus Laevis)に由来する細胞及び細胞株が挙げられる。
【0123】
さらに、本発明に従って、数々の入手可能なハイブリドーマ細胞株を用いることができる。当業者は、ハイブリドーマ細胞株が最適な増殖のためと、ポリペプチド又はタンパク質発現のためとで、異なる栄養要件を有する可能性があり、及び/又は異なる培養条件を必要とする可能性があり、また必要に応じて条件を修正してもよいことを理解する。
【実施例
【0124】
本発明の或る特定の化合物、組成物及び方法を、或る特定の実施形態に従って具体的に記載したが、以下の実施例は、本発明の化合物を例示するためだけの役割を果たし、本発明を限定することを意図しない。
【0125】
実施例1:リンカーのコンセンサス配列を同定するためのエピトープマッピング
GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号1)のリンカー配列を含むCARに対して生じた抗体クローン8及びクローン16の特異的結合を、完全長の配列番号1、及びN末端又はC末端のいずれかで切断され、N末端にビオチン部分又はC末端にビオチン部分を持つリジン残基のいずれかを含むバリアント(配列番号21~配列番号30)のエピトープマッピングELISA実験に使用した。
【0126】
プロテインG(Pierce)でプレコートされたプレートを使用して、抗体を96ウェルプレートフォーマットで捕捉した。プレートをPBSTバッファーで6回洗浄した後、標的ペプチドとインキュベートした。PBSTで更に6回洗浄し、抗体をストレプトアビジン-HRPと共に更にインキュベートした。PBSTで最後に6回洗浄して、シグナルを検出し、増強化学発光キット(enhanced chemiluminescense kit)(GE Healthcare製のECL)及びVarioskan Flashプレートリーダー(Thermo Fisher)により定量した。図2に示すエピトープマッピングELISA実験の結果は、いずれの抗体も完全長の18mer(配列番号1)に結合するが、クローン8は7merサブシーケンスGKPGSGE(配列番号5)に特異的に結合し、クローン16は5merサブシーケンスKPGSG(配列番号16)に特異的に結合することを実証する。まとめると、これらのデータを、クローン8及びクローン16に対する最小結合エピトープに基づいてコンセンサス配列を生成するために使用した。
【0127】
実施例2:例示的なリンカー配列の抗体結合プロファイル
GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号1)のリンカー配列、リンカー配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号2)、又は抗CD19 scFvクローンFMC63を含むCARに対して生成された抗体パネルの特異的結合を、本明細書に記載されるように、それぞれKIP-1抗体、KIP-4抗体、及びKIP-3抗体からの例示的なリンカー配列の抗体結合プロファイルを決定するために使用した。このアッセイには、図1に記載される、リンカー配列KL1(配列番号9)、KL2(配列番号10)、KL3(配列番号11)、及び切断型Whitlowリンカー(配列番号17)を含むペプチドも含まれていた。プロテインG(Pierce)でプレコートされたプレートを使用して、抗体を96ウェルプレートフォーマットで捕捉した。プレートをPBSTバッファーで6回洗浄した後、標的ペプチドとインキュベートした。PBSTで更に6回洗浄し、抗体をストレプトアビジン-HRPと共に更にインキュベートした。PBSTで最後に6回洗浄して、シグナルを検出し、増強化学発光キット(GE Healthcare製のECL)及びVarioskan Flashプレートリーダー(Thermo Fisher)により定量した。図3に示す抗体プロファイルELISA実験の結果は、本発明によるリンカーの抗体結合の幅を実証している。
【0128】
実施例3:キメラリンカーを含むCAR発現細胞のフローサイトメトリーの結果
プロテインLを対照として使用するフローサイトメトリーによりCAR T細胞をアッセイし、配列番号1(FMC63 WT)又は配列番号2(FMC63 G4S)のリンカー配列を含む各CARコンストラクトの発現を確認した。これらの結果は、T細胞の表面でのCARコンストラクトの発現を確認する。図4に示すように、CAR T細胞をscFv FMC63及び24C1 scFvのコンテキストで生成した。KL2(配列番号10)、KL3(配列番号11)、KL4(配列番号7)、KL5(配列番号12)、KL6(配列番号8)、及びG4S2(配列番号18)のリンカーを使用して、scFvのVLドメインとVHドメインとを連結した。
【0129】
配列及び配列番号
本開示は、幾つかの核酸及びポリペプチド配列を含む。便宜上、下記表Bは、各配列をその適切な配列番号と関連付ける。
【0130】
【表2】
【0131】
等価物
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識し、又は日常的な実験のみを使用して確認することができる。本発明の範囲は、上記の明細書に限定することが意図されるものではなく、添付の特許請求の範囲に述べられる通りである。
【0132】
請求項の要素を修飾する、特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」等の序数の使用は、それ自体で、1つの請求項の要素の別の請求項の要素に対する優先順位も、優位性も、順序も暗示するものでもなければ、方法の動作が実行される時間的な順序も暗示するものでもなく、請求項の要素を区別するために、単に、或る特定の名称を有する1つの請求項の要素を、同じ(序数の用語の使用を除く)名称を有する別の要素と区別するラベルとして用いられているにすぎない。
【0133】
数量を特定していない冠詞(The articles "a" and "an")は本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、明らかに反対の指示がない限り、複数の指示対象を含むと理解されるものとする。1つ以上の群の成員の間に「又は」を含むクレーム又は記載は、反対の指示がない限り又は文脈から明らかでない限り、群の成員の1つ、2つ以上又は全てが所与の生成物又はプロセスに存在する、それに用いられる又は他の形で関連する場合に満たされるとみなされる。本発明は、正確に1つの群の成員が所与の生成物又はプロセスに存在する、それに用いられる又は他の形で関連する実施形態を含む。本発明は、2つ以上又は全ての群の成員が所与の生成物又はプロセスに存在する、それに用いられる又は他の形で関連する実施形態も含む。さらに、他に指定のない限り又は矛盾若しくは不一致が生じ得ることが当業者に明らかでない限り、本発明が1つ以上の限定、要素、条項、記述用語等が記載の1つ以上のクレームから同じ基本クレームに従属する別のクレーム(又は適切な場合に、任意の他のクレーム)へと導入される全ての変更、組合せ及び置換を包含することが理解される。要素が(例えば、マーカッシュ群又は同様のフォーマットで)リストとして提示される場合、各々の要素の部分群も開示され、任意の要素(複数の場合もある)を群から除外することができることが理解される。概して、本発明又は本発明の態様が特定の要素、特徴等を含むと称される場合、或る特定の本発明の実施形態又は本発明の態様が、かかる要素、特徴等からなるか又はそれらから本質的になることを理解されたい。簡潔さを目的として、これらの実施形態はいずれの場合も具体的に文字通り規定されていない。具体的な除外が本明細書に列挙されるかに関わらず、本発明の任意の実施形態又は態様が明示的に特許請求の範囲から除外され得ることも理解されたい。本発明の背景を説明し、その実施に関する付加的な詳細を与えるために本明細書で言及される刊行物、ウェブサイト及び他の参考資料は引用することにより本明細書の一部をなす。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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