(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】新規なリチウムイオン電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/131 20210101AFI20220627BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20220627BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220627BHJP
H01M 10/0563 20100101ALI20220627BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20220627BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220627BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20220627BHJP
【FI】
H01M50/131
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/0563
H01M50/204 401Z
H01M10/613
H01M10/6563
(21)【出願番号】P 2020541582
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 CN2019088968
(87)【国際公開番号】W WO2020224016
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】201910373491.7
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520274378
【氏名又は名称】国网江蘇省電力有限公司電力科学研究院
(73)【特許権者】
【識別番号】520274389
【氏名又は名称】江蘇省電力試験研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】朱 洪斌
(72)【発明者】
【氏名】張 暁琴
(72)【発明者】
【氏名】余 翔
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-96799(JP,A)
【文献】中国実用新案第207834423(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第109585730(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0323420(US,A1)
【文献】実開昭61-24955(JP,U)
【文献】実開昭50-39727(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/
H01M 10/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性ガスを満充填した密閉筐体と、
前記密閉筐体内に設けられる新規なリチウムイオン電池であって、正極、負極及び電解液が設置され、一部の領域が可融性材料で製作されるケースを含み、前記新規なリチウムイオン電池の底部と密閉筐体の底部の間に距離がある新規なリチウムイオン電池と、を含み、
前記ケースの上部及び下部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、
前記ケース内の温度が特定閾値を超えると、前記ケースの上部における可融性材料で製作された領域が貫かれて連結通路が形成され、前記ケースの下部における可融性材料で製作された領域が貫かれて放出通路が形成され、
前記難燃性ガスが前記連結通路を経由してケース内部に入り、
前記電解液が前記放出通路から密閉筐体内に流れ込んで前記正極及び負極から分離されることを特徴とする新規なリチウムイオン電池モジュール
であって、
前記密閉筐体に第1の貫通孔及び第2の貫通孔が設けられ、その外部にガス循環回路が設けられ、前記ガス循環回路の両端がそれぞれ前記第1の貫通孔及び第2の貫通孔に接続され、
前記ケース内には、前記第1の貫通孔とケースの間に設置され、ケースの上部における可融性材料で製作された領域に対応する排気孔を含む給気部材が更に設けられ、
前記ケースにおける可融性材料で製作された領域にセンサーが設けられており、ケースにおける可融性材料で製作された領域が貫かれたことが検出されると、直ちに起動信号をガス循環回路に送信して前記ガス循環回路を起動し、
前記ケース内の温度が特定閾値を超えると、前記ケースの上部における可融性材料で製作された領域が貫かれて連結通路が形成され、前記難燃性ガスが前記排気孔及び連結通路を経由してケース内部に入り、前記ケースの下部における可融性材料で製作された領域が貫かれて放出通路が形成され、前記電解液が前記放出通路から密閉筐体内に流れ込んで正極及び負極から分離されることを特徴とする、
新規なリチウムイオン電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池技術分野に属するものであり、新規なリチウムイオン電池及び電池モジュールに関し、より具体的には、電解液が電極から分離可能なリチウムイオン電池及び難燃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力業界の発電、送電及び電力使用システムの重要な特徴は電気エネルギーを蓄積できないことであり、そのために、電力負荷と発電のバランスを取るための大規模な電気エネルギー蓄積システムを導入して、電気ネットワークの作動の最適な経済的効率を図る。リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、汚染が発生しない等のメリットで、電気エネルギー蓄積システムに最も広く応用されている電池種類となっている。電解液はリチウムイオン電池の血液として、その熱安定性がリチウムイオン電池の安全性を制約する最も重要な要素となっている。電解液に使用される溶剤は一般に有機炭酸エステル類化合物で、活性が高く、非常に燃焼しやすく、それ自身が可燃物にも相当する。リチウムイオン電池が充電状態にある時に、正極材料が強い酸化性の化合物であり、負極材料が強い還元性の化合物であり、過度に使用された場合に、強い酸化性の正極材料の安定性が悪く、酸素ガスを放出しやすく、炭酸エステルが酸素ガスと反応すると大量の熱及びガスを放出して、更に正極の分解を加速して、より多い放熱反応が発生する。また、高い還元性の負極は活性が金属リチウムに近く、酸素ガスと接触すると直ちに燃焼し且つ電解液、隔膜等を発火させて、リチウムイオン電池の熱暴走を引き起こして、リチウムイオン電池の燃焼や爆発を招いてしまう。従って、リチウムイオン電池の熱暴走を回避するために、電池の安全安定性の向上は電力システムの大規模電気エネルギー蓄積電池の使用にとって非常に重要である。従来技術では、この問題を解決するために、リチウムイオン電池内部のガスの濃度、含有量及び電池の温度等を監視し、リチウムイオン電池に消火降温処理を行うことが多いが、リチウムイオン電池の熱暴走を根本的に解決することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記問題に鑑みて、本発明は、電池セルの燃焼や爆発を効果的に回避すると共に、温度が異常に上昇した電池セルによる連鎖反応で周辺の他の電池セルの損傷を引き起こすことを回避することができる新規なリチウムイオン電池及び電池モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の技術的目的を実現して上記の技術的効果を達成するために、本発明は下記の技術的解決手段によって実現される。
【0005】
第1の態様では、本発明は、正極、負極及び電解液が設置され、一部の領域が可融性材料で製作されるケースを含み、
ケース内の温度が特定閾値を超えると、ケースにおける可融性材料で製作された領域が貫かれ、電解液が貫通箇所から流れ出て正極及び負極から分離される新規なリチウムイオン電池を提供する。
【0006】
好ましくは、ケースの上部及び下部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、
ケース内の温度が特定閾値を超えると、ケースの上部における可融性材料で製作された領域が貫かれて、難燃性ガスの注入のための連結通路が形成され、ケースの下部における可融性材料で製作された領域が貫かれて放出通路が形成され、電解液が放出通路から流れ出て正極及び負極から分離される。
【0007】
好ましくは、ケースの頂部及び底部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、
ケース内の温度が特定閾値を超えると、ケースの頂部における可融性材料で製作された領域が貫かれて、難燃性ガスの注入のための連結通路が形成され、ケースの底部における可融性材料で製作された領域が貫かれて放出通路が形成され、電解液が放出通路から流れ出て正極及び負極から分離される。
【0008】
好ましくは、ケースが上下に設置される第1の部分と第2の部分に分けられ、第1の部分と第2の部分との間の連結領域が可融性材料で製作され、
ケース内の温度が特定閾値を超えると、可融性材料で製作された連結領域が貫かれて第2の部分と第1の部分が分離され、電解液が流れ出て正極及び負極から分離される。
【0009】
好ましくは、ケースの側壁の全部又は一部が可融性材料で製作され、
ケース内の温度が特定閾値を超えると、ケースにおける可融性材料で製作された全部又は一部の側壁が自動的に崩壊し、電解液が流れ出て正極及び負極から分離される。
【0010】
第2の態様では、本発明は、
難燃性ガスを満充填した密閉筐体と、
密閉筐体内に設けられる新規なリチウムイオン電池であって、正極、負極及び電解液が設置され、一部の領域が可融性材料で製作されるケースを含み、新規なリチウムイオン電池の底部と密閉筐体の底部の間に距離がある新規なリチウムイオン電池と、を含み、
ケース内の温度が特定閾値を超えると、ケースにおける可融性材料で製作された領域が貫かれ、電解液が前記貫通箇所から密閉筐体内に流れ込んで正極及び負極から分離される新規なリチウムイオン電池モジュールを提供する。
【0011】
好ましくは、ケースの上部及び下部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、
ケース内の温度が特定閾値を超えると、ケースの上部における可融性材料で製作された領域が貫かれて連結通路が形成され、ケースの下部における可融性材料で製作された領域が貫かれて放出通路が形成され、
難燃性ガスが前記連結通路を経由してケース内部に入り、
電解液が前記放出通路から密閉筐体内に流れ込んで正極及び負極から分離される。
【0012】
好ましくは、ケースの頂部及び底部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、
ケース内の温度が特定閾値を超えると、ケースの頂部における可融性材料で製作された領域が貫かれて連結通路が形成され、ケースの底部における可融性材料で製作された領域が貫かれて放出通路が形成され、
難燃性ガスが前記連結通路を経由してケース内部に入り、
電解液が前記放出通路から密閉筐体内に流れ込んで正極及び負極から分離される。
【0013】
好ましくは、ケースが上下に設置される第1の部分と第2の部分に分けられ、第1の部分と第2の部分との間の連結領域が可融性材料で製作され、
ケース内の温度が特定閾値を超えると、可融性材料で製作された連結領域が貫かれて第2の部分と第1の部分が分離され、且つ第2の部分が密閉筐体内に落下し、
電解液が密閉筐体内に流れ込んで正極及び負極から分離される。
【0014】
好ましくは、ケースの側壁の全部又は一部が可融性材料で製作され、
ケース内の温度が特定閾値を超えると、ケースにおける可融性材料で製作された全部又は一部の側壁が自動的に崩壊し、且つ密閉筐体内に落ち込み、電解液が密閉筐体内に流れ込んで正極及び負極から分離される。
【0015】
好ましくは、新規なリチウムイオン電池モジュールが密閉筐体の外側に設けられたガス循環回路を更に含み、
密閉筐体に第1の貫通孔及び第2の貫通孔が設けられており、
ガス循環回路の両端がそれぞれ記第1の貫通孔及び第2の貫通孔に接続されて、難燃性ガスの循環を実現する。
【0016】
好ましくは、ケースにおける可融性材料で製作された領域にセンサーが設けられており、
ケースにおける可融性材料で製作された領域が貫かれたことが検出されると、直ちに起動信号をガス循環回路に送信して前記ガス循環回路を起動する。
【0017】
好ましくは、センサーは、温度センサー、距離測定センサー、速度測定センサーのいずれか1種である。
【0018】
好ましくは、ガス循環回路には順に設置された第1の電磁弁、バッファタンク、熱交換器、第2の電磁弁及び圧縮機を含み、
第1の電磁弁におけるバッファタンクから離れた弁口が第1の貫通孔に接続され、圧縮機における第2の電磁弁から離れた弁口が第2の貫通孔に接続される。
【0019】
好ましくは、第1の貫通孔が密閉筐体の上部に設けられ、第2の貫通孔が密閉筐体の下部に設けられる。
【0020】
好ましくは、ケースの上部及び下部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、
密閉筐体に第1の貫通孔及び第2の貫通孔が設けられ、その外部にガス循環回路が設けられ、ガス循環回路の両端がそれぞれ第1の貫通孔及び第2の貫通孔に接続され、
ケース内には、第1の貫通孔とケースの間に設置され、ケースの上部における可融性材料で製作された領域に対応する排気孔を含む給気部材が更に設けられ、
ケース内の温度が特定閾値を超えると、ケースの上部における可融性材料で製作された領域が貫かれて連結通路が形成され、難燃性ガスが排気孔及び連結通路を経由してケース内部に入り、ケースの下部における可融性材料で製作された領域が貫かれて放出通路が形成され、電解液が前記放出通路から密閉筐体内に流れ込んで正極及び負極から分離される。
【0021】
従来技術と比べると、本発明は下記の有用な効果を有する。
【0022】
(1)本発明はリチウムイオン電池セルの温度が異常に上昇した時に、リチウムイオン電池中の電解液を直ちに分離することをうまく実現でき、電解液の発火又は分解を効果的に回避し、リチウムイオン電池セルの発火や爆発を防止する。
【0023】
(2)本発明はガス循環回路を導入し、且つ自動起動モードに設定されており、リチウムイオン電池の温度の異常上昇を抑え、リチウムイオン電池セルの熱暴走を防止すると共に、あるリチウムイオン電池セルの温度が高過ぎて周辺のリチウムイオン電池の温度異常上昇を招くことを回避し、周辺の他のリチウムイオン電池セルへの影響を最も低くし、リチウムイオン電池に連鎖反応が発生するのを防止することができる。
【0024】
(3)従来技術において密閉筐体内に満充填された空気の代わりに、本発明において密閉筐体内に降温難燃性ガスが常に満充填されており、電池モジュール全体を効果的に安全に保護し、燃焼を避けることができる。
【0025】
(4)本発明で提供された新規なリチウムイオン電池は、温度に敏感な可融性材料を導入することで電池保護モードを自動的に起動することができ、電気エネルギーを別に消費する必要がなく、電気エネルギー蓄積電池の電気エネルギー蓄積の経済性に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例の新規なリチウムイオン電池及び電池モジュールの構造模式図である。
【
図2】本発明のもう1つの実施例の新規なリチウムイオン電池及び電池モジュールの構造模式図である。
【
図3】本発明の第3の実施例の新規なリチウムイオン電池及び電池モジュールの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の目的、技術的解決手段及びメリットをより明瞭にするために、以下、実施例を参照しながら本発明を更に詳細に説明する。ここで記述される具体的な実施例は、本発明の保護範囲を限定することがなく、単に本発明を解釈するためのものであることを理解されたい。
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の応用原理を詳述する。
【0029】
従来技術において、リチウムイオン電池の熱暴走を回避するために、電池の安全安定性の向上は電力システムの大規模電気エネルギー蓄積電池の使用にとって非常に重要であり、リチウムイオン電池内部のガスの濃度、含有量及び電池温度等を監視し、リチウムイオン電池に消火降温処理を行うことが多いが、このような方法はリチウムイオン電池の熱暴走を根本的に解決することができない。従って、本発明は、新規なリチウムイオン電池セルの温度が異常に上昇した時に、新規なリチウムイオン電池セル中の電解液を直ちに分離することを実現し、電解液の発火又は分解を効果的に回避し、新規なリチウムイオン電池セルの発火爆発を防止し、温度が異常に上昇した新規なリチウムイオン電池セルによる連鎖反応で周辺の他の新規なリチウムイオン電池セルの損傷を引き起こすことを回避する新規なリチウムイオン電池及び電池モジュールを提供し、それらは電気エネルギー蓄積電池の安全且つ安定的な作動の保証にとって革新的な意義を有し、市場に登場させれば、なかなか将来性がある。
【0030】
(実施例1)
本発明の実施例は、ケース15を含む新規なリチウムイオン電池を提供し、ケース15には正極401、負極402及び電解液5が設置され、ケース15の一部の領域が可融性材料で製作され、正極401、負極402及び電解液5の設計原理として従来技術が利用されたので、本発明では詳細な説明が省略され、正極401及び負極402がいずれもケース15の頂壁に接続され、
ケース15内の温度が特定閾値を超えると、ケース15における可融性材料で製作された領域が貫かれて、電解液5が貫通箇所から流れ出て正極401及び負極402から完全に分離され、降温難燃性ガスにより隔離されているので、電解液5が分解反応してH2を生成することがなく、温度が高過ぎて発火することもなく、電解液5の発火や分解が効果的に回避され、電池セルの発火爆発が防止される。特定閾値は実際に応じて設定され、本発明で多くの制限を加えられていない。
【0031】
本発明の実施例の具体的な実施形態では、
図1に示すように、ケース15の上部及び下部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、好ましくは、ケース15の頂部及び底部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作される。可融性材料は温度敏感型可融性材料であり、直接市場から入手可能である。可融性材料そのものの構造及び成分が本発明の革新点とならないので、その具体的な構造及び成分が限定されない。温度が特定閾値を超えたことを検出すると(即ち、新規なリチウムイオン電池の温度が異常に上昇すると)、自動的に融化できる温度敏感型可融性材料であれば、本発明の実施例における新規なリチウムイオン電池に適用可能である。
【0032】
ケース15内の温度が正常範囲にある時に、ケース15の上部及び下部における可融性材料で製作された領域がケース15における他の部分と共同で密閉空間を形成し、ケース15内の温度が特定閾値を超えると、ケース15の上部における可融性材料で製作された領域が貫かれ(即ち、材料が自動的に融化)、難燃性ガスの注入のための連結通路12が形成され、ケース15の下部における可融性材料で製作された領域が貫かれ(即ち、材料が自動的に融化)、放出通路13が形成され、電解液5が前記放出通路13から流れ出て正極及び負極から分離される。
【0033】
本発明の実施例の別の具体的な実施形態では、
図2に示すように、ケース15が上下に設置される第1の部分と第2の部分に分けられ、第1の部分と第2の部分の間の連結領域16が可融性材料で製作され、好ましくは、
図2に示すように、第1の部分がケース15の頂壁であり、第2の部分がケース15の側壁及びケース15の底壁により形成される部分であり、
ケース15内の温度が正常範囲にある時に、前記ケース15の上部における可融性材料で製作された連結領域16が第1の部分及び第2の部分と共同で密閉空間を形成し、ケース15内の温度が特定閾値を超えると(即ち、新規なリチウムイオン電池の温度が異常に上昇すると)、可融性材料で製作された連結領域16が貫かれ(即ち、材料が自動的に融化)、第2の部分と第1の部分が分離され、電解液5が流れ出て正極及び負極から分離される。
【0034】
本発明の実施例の第3の具体的な実施形態では、
図3に示すように、ケース15の側壁の全部又は一部が可融性材料で製作され、
ケース15内の温度が正常範囲にある時に、ケース15の上部における可融性材料で製作された全部の側壁(1501、1502)又は一部の側壁がケース15における他の部分と共同で密閉空間を形成し、ケース15内の温度が特定閾値を超えると(即ち、新規なリチウムイオン電池の温度が異常に上昇すると)、ケース15における可融性材料で製作された全部の側壁(1501、1502)又は一部の側壁領域が自動的に崩壊し、前記電解液5が流れ出て正極及び負極から分離される。
【0035】
(実施例2)
実施例1と同じ発明構想により、本発明の実施例は密閉筐体1及び新規なリチウムイオン電池2を含む新規なリチウムイオン電池モジュールを提供し、
密閉筐体1は難燃性ガスが満充填されており、
新規なリチウムイオン電池2は、密閉筐体1内に設けられ、正極401、負極402及び電解液5を設置したケース15を含み、その底部と密閉筐体1の底部の間にケース15内から流れ出た電解液5を蓄積するための電解液蓄積領域3となる距離があり、記新規なリチウムイオン電池2の底部と密閉筐体1の底部の間の距離はケース15内から流れ出た電解液5が必ず完全に正極401、負極402から分離されることを確保しなければならず、ケース15の一部の領域が可融性材料で製作され、新規なリチウムイオン電池の数量が具体的に限定されず、各新規なリチウムイオン電池の具体的な分布も具体的に限定されず、各新規なリチウムイオン電池2の底部全体と密閉筐体1の底部の間に距離が存在することを満たせばよく、具体的な実施に際して、新規なリチウムイオン電池2がブラケットによって密閉筐体1内に取り付けられてもよく、正極401及び負極402がいずれもケース15の頂壁に接続され、
ケース15内の温度が特定閾値を超えると(即ち、新規なリチウムイオン電池の温度が異常に上昇すると)、ケース15における可融性材料で製作された領域が貫かれ(即ち、材料が自動的に融化)、電解液5が貫通箇所から密閉筐体1内、即ち電解液蓄積領域3内に流れ込んで、正極及び負極から分離される。
【0036】
本発明の実施例の具体的な実施形態では、
図1に示すように、ケース15の上部及び下部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、好ましくは、ケース15の頂部及び底部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、
ケース15の上部及び下部における可融性材料で製作された領域がケース15における他の部分と共同で密閉空間を形成し、ケース15内の温度が特定閾値を超えると、ケース15の上部における可融性材料で製作された領域が貫かれて連結通路12が形成され、ケース15の下部における可融性材料で製作された領域が貫かれて放出通路13が形成され、
難燃性ガスが前記連結通路12を経由してケース15内部に入って、難燃性を更に高めることができ、
電解液5が放出通路13から密閉筐体1内に流れ込んで正極及び負極から分離される。
【0037】
本発明の実施例の具体的な実施形態では、
図2に示すように、ケース15が上下に設置される第1の部分と第2の部分に分けられ、第1の部分と第2の部分の間の連結領域16が可融性材料で製作され、好ましくは、
図2に示すように、第1の部分がケースの頂壁であり、第2の部分がケースの側壁(1501、1502)及びケースの底壁により形成される部分であり、
ケース15内の温度が正常範囲にある時に、ケース15の上部における可融性材料で製作された連結領域16が第1の部分及び第2の部分と共同で密閉空間を形成し、ケース15内の温度が特定閾値を超えると、可融性材料で製作された連結領域16が貫かれ、前記第2の部分と第1の部分が分離され、第2の部分が密閉筐体1内に落下し、
電解液5が密閉筐体1内に流れ込んで正極及び負極から分離される。
【0038】
本発明の実施例の具体的な実施形態では、
図3に示すように、ケース15の側壁の全部(1501、1502)又は一部が可融性材料で製作され、
ケース15内の温度が正常範囲にある時に、ケース15の上部における可融性材料で製作された全部の側壁(1501、1502)又は一部の側壁がケース15における他の部分と共同で密閉空間を形成し、ケース15内の温度が特定閾値を超えると、ケース15における可融性材料で製作された全部の側壁又は一部の側壁領域が自動的に崩壊し、密閉筐体1内に落ち込み、電解液5が密閉筐体1内に流れ込んで正極及び負極から分離される。
【0039】
(実施例3)
実施例2によれば、本発明の実施例は実施例2と比べて以下のことで相違する。
難燃性ガスの密閉筐体1内での持続的な循環を実現し、新規なリチウムイオン電池及び密閉筐体1内の温度をより好適に低下させるために、新規なリチウムイオン電池モジュールは密閉筐体1の外側に設けられるガス循環回路を更に含み、
密閉筐体1に第1の貫通孔6及び第2の貫通孔7が設けられ、好ましくは、第1の貫通孔6が密閉筐体1の上部に設けられ、第2の貫通孔7が密閉筐体1の下部に設けられ、
ガス循環回路の両端がそれぞれ第1の貫通孔6及び第2の貫通孔7に接続されて難燃性ガスの循環を実現し、本発明の実施例の具体的な実施形態では、ガス循環回路は順に設置される第1の電磁弁801、バッファタンク9、熱交換器10、第2の電磁弁802及び圧縮機11を含み、第1の電磁弁801におけるバッファタンク9から離れた弁口が第1の貫通孔6に接続され、圧縮機11における第2の電磁弁802から離れた弁口が第2の貫通孔7に接続され、本発明の実施例の他の実施形態では、ガス循環回路は他の構造であってもよく、密閉筐体内の難燃性ガスの循環及び降温を実現できればよく、
本発明の実施例の好ましい実施形態では、ケース15における可融性材料で製作された領域にセンサーが設置されており、センサーは可融性材料で製作された領域が貫かれたことを検出すると、起動信号をガス循環回路へ送信してガス循環回路を起動させ、難燃性ガスを自動的に循環させる。実際の応用に際して、センサーは温度センサー、距離測定センサー又は速度測定センサーであってもよい。
【0040】
要約すれば、本発明の実施例における難燃装置の具体的な作動過程は以下のとおりである。
【0041】
モジュール中のある新規なリチウムイオン電池の内部温度が温度Tまで上昇すると、この新規なリチウムイオン電池のケース15における温度敏感型の可融性材料で製作された領域が融化したり崩壊して、電解液5が正負電極から完全に分離されることになり、それと同時に、可融性材料に設けられたセンサーがトリガ信号をガス循環回路へ送信し、バッファタンク9内の難燃性ガスが管路及び密閉筐体1における第1の貫通孔6を経由して密閉筐体1に入ってから密閉筐体1における第2の貫通孔7を経由して密閉筐体1から出て圧縮機11に入って圧縮され、圧縮後の難燃性ガスが熱交換器10に入って降温した後バッファタンク9に供給され、次の循環を開始し、この過程は繰り返して行われる。この温度が異常に上昇した新規なリチウムイオン電池はガス循環回路によって段階的に降温するので、温度が新規なリチウムイオン電池の正常作動温度範囲に低下すると、オフ信号をガス循環回路へ送信して、ガス循環回路中の第1の電磁弁801、第2の電磁弁802、熱交換器10及び圧縮機11をオフにする。
【0042】
(実施例4)
実施例2によれば、本発明の実施例は実施例2と比べて以下のことで相違する。
ケース15の上部及び下部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、好ましくは、ケース15の頂部及び底部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、
密閉筐体1に第1の貫通孔6及び第2の貫通孔7が設けられ、その外部にガス循環回路が設けられ、ガス循環回路の両端がそれぞれ第1の貫通孔6及び第2の貫通孔7に接続され、
ケース15内には、第1の貫通孔6とケース15の間に設置され、ケース15の上部における可融性材料で製作された領域に対応する排気孔14を含む給気部材が更に設けられ、それによって難燃性ガスを強制的にリチウムイオン電池の連結通路12を経由してケース15に進入させると同時に、電解液を放出通路13から排出し、そのようにして、リチウムイオン電池がガス循環回路に十分に参与可能であり、リチウムイオン電池を効果的に降温させ難燃にすることができ、
ケース15内の温度が特定閾値を超えると、ケース15の上部における可融性材料で製作された領域が貫かれて連結通路12が形成され、難燃性ガスが排気孔14及び連結通路12を経由してケース15の内部に入り、ケース15の下部における可融性材料で製作された領域が貫かれて放出通路13が形成され、電解液5が放出通路13から密閉筐体1内に流れ込んで正極及び負極から分離される。
【0043】
要約すると、
(1)本発明はリチウムイオン電池セルの温度が異常に上昇した時に、リチウムイオン電池中の電解液を直ちに分離することをうまく実現でき、電解液の発火又は分解を効果的に回避し、リチウムイオン電池セルの発火や爆発を防止する。
【0044】
(2)本発明はガス循環回路を導入し、且つ自動起動モードに設定されており、リチウムイオン電池の温度の異常上昇を抑え、リチウムイオン電池セルの熱暴走を防止すると共に、あるリチウムイオン電池セルの温度が高過ぎて周辺のリチウムイオン電池の温度異常上昇を招くことを回避し、周辺の他のリチウムイオン電池セルへの影響を最も低くし、リチウムイオン電池に連鎖反応が発生するのを防止することができる。
【0045】
(3)従来技術において密閉筐体内に満充填された空気の代わりに、本発明において密閉筐体内に降温難燃性ガスが常に満充填されており、電池モジュール全体を効果的に安全に保護し、燃焼を避けることができる。
【0046】
(4)本発明で提供された新規なリチウムイオン電池は、温度に敏感な可融性材料を導入することで電池保護モードを自動的に起動することができ、電気エネルギーを別に消費する必要がなく、電気エネルギー蓄積電池の電気エネルギー蓄積の経済性に寄与する。
【0047】
以上、本発明の基本的な原理、主要な特徴及び本発明のメリットを明示、説明した。当業者であれば、本発明が上記実施例によって限定されるものではなく、上記実施例及び明細書が本発明の原理を説明するものに過ぎず、本発明の主旨及び範囲から逸脱しない限り、本発明に様々な変更や改良を加えることもでき、これらの変更や改良が全て本発明の保護範囲内に含まれることを理解すべきである。本発明の保護範囲は添付された特許請求の範囲及びそれと同等なものによって限定される。
【0048】
(付記)
(付記1)
正極、負極及び電解液が設置され、一部の領域が可融性材料で製作されるケースを含み、
前記ケース内の温度が特定閾値を超えると、前記ケースにおける可融性材料で製作された領域が貫かれ、前記電解液が前記貫通箇所から流れ出て前記正極及び負極から分離されることを特徴とする新規なリチウムイオン電池。
【0049】
(付記2)
前記ケースの上部及び下部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、
前記ケース内の温度が特定閾値を超えると、前記ケースの上部における可融性材料で製作された領域が貫かれて、難燃性ガスの注入のための連結通路が形成され、前記ケースの下部における可融性材料で製作された領域が貫かれて放出通路が形成され、前記電解液が前記放出通路から流れ出て正極及び負極から分離されることを特徴とする付記1に記載の新規なリチウムイオン電池。
【0050】
(付記3)
前記ケースの頂部及び底部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、
前記ケース内の温度が特定閾値を超えると、前記ケースの頂部における可融性材料で製作された領域が貫かれて、難燃性ガスの注入のための連結通路が形成され、前記ケースの底部における可融性材料で製作された領域が貫かれて放出通路が形成され、前記電解液が前記放出通路から流れ出て前記正極及び負極から分離されることを特徴とする付記2に記載の新規なリチウムイオン電池。
【0051】
(付記4)
前記ケースが上下に設置される第1の部分と第2の部分に分けられ、前記第1の部分と第2の部分との間の連結領域が可融性材料で製作され、
前記ケース内の温度が特定閾値を超えると、前記の可融性材料で製作された連結領域が貫かれて前記第2の部分と第1の部分が分離され、前記電解液が流れ出て前記正極及び負極から分離されることを特徴とする付記1に記載の新規なリチウムイオン電池。
【0052】
(付記5)
前記ケースの側壁の全部又は一部が可融性材料で製作され、
前記ケース内の温度が特定閾値を超えると、前記ケースにおける可融性材料で製作された全部又は一部の側壁が自動的に崩壊し、前記電解液が流れ出て前記正極及び負極から分離されることを特徴とする付記1に記載の新規なリチウムイオン電池。
【0053】
(付記6)
難燃性ガスを満充填した密閉筐体と、
前記密閉筐体内に設けられる新規なリチウムイオン電池であって、正極、負極及び電解液が設置され、一部の領域が可融性材料で製作されるケースを含み、前記新規なリチウムイオン電池の底部と密閉筐体の底部の間に距離がある新規なリチウムイオン電池と、を含み、
前記ケース内の温度が特定閾値を超えると、前記ケースにおける可融性材料で製作された領域が貫かれ、前記電解液が前記貫通箇所から密閉筐体内に流れ込んで前記正極及び負極から分離されることを特徴とする新規なリチウムイオン電池モジュール。
【0054】
(付記7)
前記ケースの上部及び下部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、
前記ケース内の温度が特定閾値を超えると、前記ケースの上部における可融性材料で製作された領域が貫かれて連結通路が形成され、前記ケースの下部における可融性材料で製作された領域が貫かれて放出通路が形成され、
前記難燃性ガスが前記連結通路を経由してケース内部に入り、
前記電解液が前記放出通路から密閉筐体内に流れ込んで正極及び負極から分離されることを特徴とする付記6に記載の新規なリチウムイオン電池モジュール。
【0055】
(付記8)
前記ケースの頂部及び底部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、
前記ケース内の温度が特定閾値を超えると、前記ケースの頂部における可融性材料で製作された領域が貫かれて連結通路が形成され、前記ケースの底部における可融性材料で製作された領域が貫かれて放出通路が形成され、
前記難燃性ガスが前記連結通路を経由してケース内部に入り、
前記電解液が前記放出通路から密閉筐体内に流れ込んで前記正極及び負極から分離されることを特徴とする付記7に記載の新規なリチウムイオン電池モジュール。
【0056】
(付記9)
前記ケースが上下に設置される第1の部分と第2の部分に分けられ、前記第1の部分と第2の部分との間の連結領域が可融性材料で製作され、
前記ケース内の温度が特定閾値を超えると、前記の可融性材料で製作された連結領域が貫かれて前記第2の部分と第1の部分が分離され、且つ前記第2の部分が密閉筐体内に落下し、
前記電解液が密閉筐体内に流れ込んで正極及び負極から分離されることを特徴とする付記6に記載の新規なリチウムイオン電池モジュール。
【0057】
(付記10)
前記ケースの側壁の全部又は一部が可融性材料で製作され、
前記ケース内の温度が特定閾値を超えると、前記ケースにおける可融性材料で製作された全部又は一部の側壁が自動的に崩壊し、且つ密閉筐体内に落ち込み、前記電解液が密閉筐体内に流れ込んで正極及び負極から分離されることを特徴とする付記6に記載の新規なリチウムイオン電池モジュール。
【0058】
(付記11)
前記密閉筐体の外側に設けられたガス循環回路を更に含み、
前記密閉筐体に第1の貫通孔及び第2の貫通孔が設けられており、
前記ガス循環回路の両端がそれぞれ前記第1の貫通孔及び第2の貫通孔に接続されて、難燃性ガスの循環を実現することを特徴とする付記6~10のいずれか一つに記載の新規なリチウムイオン電池モジュール。
【0059】
(付記12)
前記ケースにおける可融性材料で製作された領域にセンサーが設けられており、
ケースにおける可融性材料で製作された領域が貫かれたことが検出されると、直ちに起動信号をガス循環回路に送信して前記ガス循環回路を起動することを特徴とする付記11に記載の新規なリチウムイオン電池モジュール。
【0060】
(付記13)
前記センサーは、温度センサー、距離測定センサー、速度測定センサーのいずれか1種であることを特徴とする付記12に記載の新規なリチウムイオン電池モジュール。
【0061】
(付記14)
前記ガス循環回路には順に設置された第1の電磁弁、バッファタンク、熱交換器、第2の電磁弁及び圧縮機を含み、
前記第1の電磁弁におけるバッファタンクから離れた弁口が第1の貫通孔に接続され、前記圧縮機における第2の電磁弁から離れた弁口が前記第2の貫通孔に接続されることを特徴とする付記11に記載の新規なリチウムイオン電池モジュール。
【0062】
(付記15)
前記第1の貫通孔が前記密閉筐体の上部に設けられ、前記第2の貫通孔が前記密閉筐体の下部に設けられることを特徴とする付記11に記載の新規なリチウムイオン電池モジュール。
【0063】
(付記16)
前記ケースの上部及び下部のそれぞれの一部の領域が可融性材料で製作され、
前記密閉筐体に第1の貫通孔及び第2の貫通孔が設けられ、その外部にガス循環回路が設けられ、前記ガス循環回路の両端がそれぞれ前記第1の貫通孔及び第2の貫通孔に接続され、
前記ケース内には、前記第1の貫通孔とケースの間に設置され、ケースの上部における可融性材料で製作された領域に対応する排気孔を含む給気部材が更に設けられ、
前記ケース内の温度が特定閾値を超えると、前記ケースの上部における可融性材料で製作された領域が貫かれて連結通路が形成され、前記難燃性ガスが前記排気孔及び連結通路を経由してケース内部に入り、前記ケースの下部における可融性材料で製作された領域が貫かれて放出通路が形成され、前記電解液が前記放出通路から密閉筐体内に流れ込んで正極及び負極から分離されることを特徴とする付記6に記載の新規なリチウムイオン電池モジュール。