(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】沸騰水型原子炉の上部格子板の検査に使用する装置
(51)【国際特許分類】
G21C 17/013 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
G21C17/013
(21)【出願番号】P 2020543476
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(86)【国際出願番号】 US2018057066
(87)【国際公開番号】W WO2019089278
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-14
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】フォーリー、ケヴィン、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】バレット、チャールズ、アール
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-66157(JP,A)
【文献】特開平1-195360(JP,A)
【文献】特開平10-90469(JP,A)
【文献】特開2002-90490(JP,A)
【文献】特表2014-503810(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0235767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C
G01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸騰水型原子炉(BWR)(6)に受け入れ可能で、BWRの上部格子板(8)の少なくとも一部の検査に使用できるように構成された装置(4)であって、当該上部格子板は格子状に配列された複数のビーム(10)と、多数の開口部(14)とを具備し、当該多数の開口部のうちの1つは隣接する第1の対のビームと第2の対のビームとより成る当該複数のビームの部分集合により画定され、当該複数のビームはそれぞれ上縁部(12)を有し、当該装置は、
基部(26)と当該基部上に位置する一対の支持部(28A、28B)とを具備し、当該一対の支持部はそれぞれ、当該第1の対のビームおよび当該第2の対のビームのうちの一方の対のビームの上縁部と嵌合するように構成された係合端縁部(32)を有することを特徴とするハウジング(16)と、
当該基部上に位置し、複数の脚部(34)とアクチュエータ(38)とを具備し、当該アクチュエータは複数の脚部を同時に収縮位置と拡張位置との間で移動させるように作動可能であり、当該収縮位置では当該複数の脚部のうちの少なくとも1つが当該部分集合のビームと係合せず、当該拡張位置では当該複数の脚部がすべて当該部分集合のビームと係合するように構成されていることを特徴とする整列アセンブリ(20)と、
当該基部上に位置して、少なくとも第1の検査装置(58)を具備し、当該少なくとも第1の検査装置(58)は、当該脚部が拡張位置にあり、当該係合端縁部が当該第1の対のビームおよび当該第2の対のビームのうちの当該一方の対のビームの上縁部と嵌合しているときに、当該第1の対のビームおよび当該第2の対のビームのうちのもう一方の対のビームの上縁部の近くに位置するように構成されていることを特徴とする検査システム(22)と
を具備する装置(4)。
【請求項2】
前記複数の脚部は前記基部上に移動自在に設置され、前記アクチュエータは前記基部上に位置し、前記整列アセンブリは前記アクチュエータと前記複数の脚部との間を延びる複数のリンク(56)を具備することを特徴とする、請求項1の装置。
【請求項3】
前記検査システムはさらに前記基部上に位置する駆動装置(64)を具備し、前記少なくとも第1の検査装置は前記駆動装置上に位置し、前記駆動装置は、前記少なくとも第1の検査装置を、検査経路(68)に沿って、前記一対の支持部のうちの第1の支持部に隣接する第1の位置と前記一対の支持部のうちの第2の支持部に隣接する第2の位置との間で並進させるように作動可能であることを特徴とする、請求項1の装置。
【請求項4】
前記検査システムはさらに第2の検査装置(58)を具備し、前記駆動装置は、当該第2の検査装置を、別の検査経路(68)に沿って、前記第1の支持部に隣接する別の第1の位置と前記第2の支持部に隣接する別の第2の位置との間で並進させるように作動可能である、請求項3の装置。
【請求項5】
前記少なくとも第1の検査装置はホルダー(80)および検査要素(82)を具備し、当該ホルダーは前記駆動装置上に位置し、当該検査要素は当該ホルダー上に位置する、請求項3の装置。
【請求項6】
前記一対の支持部はそれぞれ、前記基部から離れる第1の方向(30)へ延びており、前記ホルダー上に位置する検査要素は前記基部から第1の方向へ離隔している、請求項5の装置。
【請求項7】
前記複数の脚部はそれぞれ、前記基部に隣接する第1の部分(50)と当該第1の部分から離れる第1の方向へ延びる第2の部分(52)とを有するL字形の構成である、請求項6の装置。
【請求項8】
前記複数の脚部のうちの前記一対の脚部の前記第1の部分は、概して前記アクチュエータから離れて前記一対の支持部へ向かう方向に延びており、前記一対の脚部の前記第2の部分は前記一対の支持部に隣接して延びている、請求項7の装置。
【請求項9】
前記複数の脚部のうちの別の一対の脚部の前記第1の部分は、概して前記アクチュエータから離れる方向に、概して前記一対の支持部の中間を延びており、前記一対の脚部の前記第2の部分は、概して前記一対の支持部の中間を延びている、請求項8の装置。
【請求項10】
前記ホルダーは、前記検査要素を、前記基部から第1の距離だけ離隔した第1の位置と前記基部から第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離隔した第2の位置との間で並進させるように構成された延伸機構(88)を具備する、請求項6の装置。
【請求項11】
沸騰水型原子炉(BWR)(6)に受け入れ可能で、BWRの上部格子板(8)の少なくとも一部の検査に使用できるように構成された装置(4)であって、当該上部格子板は格子状に配列された複数のビーム(10)と、多数の開口部(14)とを具備し、当該多数の開口部のうちの1つは隣接する第1の対のビームと第2の対のビームとより成る当該複数のビームの部分集合により画定され、当該複数のビームはそれぞれ上縁部(12)を有し、当該装置は、
基部(26)と当該基部上に位置する一対の支持部(28)とを具備し、当該一対の支持部はそれぞれ、当該第1の対のビームおよび当該第2の対のビームのうちの一方の対のビームの上縁部と嵌合するように構成された係合端縁部(32)を有することを特徴とするハウジング(16)と、
当該基部上に位置し、当該部分集合のビームと係合するように構成されている複数の脚部(34)を具備する整列アセンブリ(20)と、
当該基部上に位置して、少なくとも第1の検査装置(58)を具備し、当該少なくとも第1の検査装置(58)は、当該係合端縁部が当該第1の対のビームおよび当該第2の対のビームのうちの当該一方の対のビームの上縁部と嵌合しているときに、当該第1の対のビームおよび当該第2の対のビームのうちのもう一方の対のビームの上縁部の近くに位置するように構成されていることを特徴とする検査システム(22)とを具備し、
前記検査システムはさらに前記基部上に位置する駆動装置(64)を具備し、前記少なくとも第1の検査装置は前記駆動装置上に位置し、前記駆動装置は、前記少なくとも第1の検査装置を、検査経路(68)に沿って、前記一対の支持部のうちの第1の支持部に隣接する第1の位置と前記一対の支持部のうちの第2の支持部に隣接する第2の位置との間で並進させるように作動可能であることを特徴とする
装置(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願において開示し特許請求する発明は概して試験機器に関し、具体的には、沸騰水型原子炉の上部格子板の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関連する技術分野において、原子炉には多くのタイプがあることが知られている。そのタイプの一つである沸騰水型原子炉(BWR)は、水を沸騰させて生じた蒸気により発電を行う。そのようなBWRおよび他の原子炉は、構造健全性を保つために定期的な検査が必要であり、そのような検査は通常、原子炉の燃料交換作業時に行われる。
【0003】
BWRにおいて、核分裂性物質を加工した燃料の束である燃料集合体は、一般的に、下端部を炉心板上に、また、上端部を上部格子板によって支持される。上部格子板は一般的に、複数のビームを格子状に配列して、隣接するビームにより複数の開口部が画定されるようにしたものであり、各開口部は通常4つの燃料集合体を受け入れる。
【0004】
従来、上部格子板8について超音波検査や他の類似の検査を行う際には、一般的に、全部ではないにせよ大部分の燃料集合体を開口部から取り出す必要があった。燃料集合体を開口部から取り出すときの一般的な慣行は、開口部内の対角線上の対向位置にある一対の燃料集合体を取り出したあと、同じ位置に、取り出した燃料集合体とほぼおなじサイズおよび形状の、細長く、矩形の一対のダミーを配置してその空間を埋めるようにする。燃料集合体を取り出して空いた空間を埋めるそのような一対のダミーは、残り2体の燃料集合体が開口部から抜け落ちるのを防ぐ。この一対のダミーは典型的には柄部によって互いに連結されるが、これは残り2体の燃料集合体を開口部から取り出した後に一緒に取り出せるようにするためである。
【0005】
また、従来の検査方法では、開口部から燃料集合体と一対のダミーを取り出した後に、上部格子板の全体ではないにせよ大きな領域を占拠する大型の検査機を上部格子板の上に配置して上部格子板を検査する。そのような検査装置は、高価で操作が難しく、BWRで行われる他の作業の妨げになることがあった。したがって、改善策が望まれる。
【発明の概要】
【0006】
よって、BWRの上部格子板のビームを検査するための改良型装置は、ハウジング、整列アセンブリおよび検査システムを含む。当該ハウジングは、上部格子板の開口部に隣接する第1の対のビームの上縁部と嵌合することができる。当該ハウジングを当該第1の対のビームの当該上縁部と嵌合し易くする整列アセンブリは、収縮位置と拡張位置との間を同時に移動する複数の脚部を含む。当該収縮位置では、1つ以上の脚部が上部格子板の当該開口部内のビームと係合しないが、当該拡張位置では、すべての脚部が当該開口部内のビームと係合する。当該検査システムは、当該開口部に隣接するが当該上縁部が当該ハウジングと嵌合していない第2の対のビームの上方を並進する一対の検査要素を含む。当該開口部に隣接する第2の対のビームを検査した後に、整列アセンブリを当該収縮位置へ移動させて、当該装置を90°回転させ、当該整列アセンブリを当該拡張位置に戻すことができるが、そうすることによって、当該開口部に隣接するセグメントの検査を終了したばかりの当該第2の対のビームに当該ハウジングを嵌合させ、当該検査システムを作動すると、当該開口部に隣接する当該第1の対のビームの上縁部を検査することができる。当該装置は、当該開口部から燃料集合体または一対のダミーを取り出さなくても、そのような検査を行えるが、当該開口部から燃料を取り出した場合でも、開口部に隣接するビームのセグメントを検査することができる。当該装置は上部格子板の上方にわずかな空間を必要とするに過ぎないため、当該装置が所与の開口部のビームのさまざまなセグメントを検査する間に、BWRの他の部分で作業を行うことが可能である。
【0007】
したがって、本願において開示し特許請求する発明の一局面は、BWRの上部格子板のビームに対して超音波(UT)検査や他の類似の検査を実施できる装置を提供することである。
【0008】
本願において開示し特許請求する発明の別の局面は、当該上部格子板の開口部に隣接するビームのセグメントの上縁部と嵌合可能であり、整列アセンブリがかかるビームの上縁部との嵌合を可能にする装置を提供することである。
【0009】
本願において開示し特許請求する発明の別の局面は、BWRの上部格子板上方の比較的小さな領域を占拠するに過ぎない装置を提供することである。
【0010】
本願において開示し特許請求する発明の別の局面は、BWRの上部格子板を検査するために容易に展開し作動できる検査装置を提供することである。
【0011】
上記および他の局面は、沸騰水型原子炉(BWR)に受け入れ可能で、BWRの上部格子板の少なくとも一部の検査に使用できるように構成された装置であって、当該上部格子板は格子状に配列された複数のビームと、多数の開口部とを具備し、当該多数の開口部のうちの1つは隣接する第1の対のビームと第2の対のビームとより成る当該複数のビームの部分集合により画定され、当該複数のビームはそれぞれ上縁部を有する改良型装置により提供される。当該装置は概して、基部と当該基部上に位置する一対の支持部とを具備し、当該一対の支持部はそれぞれ、当該第1の対のビームおよび当該第2の対のビームのうちの一方の対のビームの上縁部と嵌合するように構成された係合端縁部を有すると一般的に言えるハウジングと、当該基部上に位置し、複数の脚部とアクチュエータとを具備し、当該アクチュエータは複数の脚部を同時に収縮位置と拡張位置との間で移動させるように作動可能であり、当該収縮位置では当該複数の脚部のうちの少なくとも1つが当該部分集合のビームと係合しないが、当該拡張位置では当該複数の脚部がすべて当該部分集合のビームと係合するように構成されていると一般的に言える整列アセンブリと、当該基部上に位置して、少なくとも第1の検査装置を具備し、当該少なくとも第1の検査装置は、当該脚部が拡張位置にあり、当該係合端縁部が当該第1の対のビームおよび当該第2の対のビームのうちの当該一方の対のビームの上縁部と嵌合しているときに、当該第1の対のビームおよび当該第2の対のビームのうちのもう一方の対のビームの上縁部の近くに位置するように構成されていると一般的に言える検査システムとより成ると一般的に言える。
【0012】
本願において開示し特許請求する発明の他の局面は、沸騰水型原子炉(BWR)に受け入れ可能で、BWRの上部格子板の少なくとも一部の検査に使用できるように構成された装置であって、当該上部格子板は格子状に配列された複数のビームと、多数の開口部とを具備し、当該多数の開口部のうちの1つは隣接する第1の対のビームと第2の対のビームとより成る当該複数のビームの部分集合により画定され、当該複数のビームはそれぞれ上縁部を有する改良型装置により提供される。当該装置は概して、基部と当該基部上に位置する一対の支持部とを具備し、当該一対の支持部はそれぞれ、当該第1の対のビームおよび当該第2の対のビームのうちの一方の対のビームの上縁部と嵌合するように構成された係合端縁部を有すると一般的に言えるハウジングと、当該基部上に位置し、当該部分集合のビームと係合するように構成されている複数の脚部を具備すると一般的に言える整列アセンブリと、当該基部上に位置して、少なくとも第1の検査装置を具備し、当該少なくとも第1の検査装置は、当該係合端縁部が当該第1の対のビームおよび当該第2の対のビームのうちの当該一方の対のビームの上縁部と嵌合しているときに、当該第1の対のビームおよび当該第2の対のビームのうちのもう一方の対のビームの上縁部の近くに位置するように構成されていると一般的に言える検査システム(22)とより成り、前記検査システムはさらに前記基部上に位置する駆動装置を具備し、前記少なくとも第1の検査装置は前記駆動装置上に位置し、前記駆動装置は、前記少なくとも第1の検査装置を、検査経路に沿って、前記一対の支持部のうちの第1の支持部に隣接する第1の位置と前記一対の支持部のうちの第2の支持部に隣接する第2の位置との間で並進させるように作動可能であると一般的に言える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本願で開示および特許請求する発明の詳細を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0014】
【
図1】BWRの上部格子板の検査に使用される改良型装置の斜視図である。
【0015】
【0016】
【
図3】検査システムが第1の位置にある、
図1の装置の正立面図である。
【0017】
【
図4】検査システムが第2の位置にある点を除き、
図3に類似する図である。
【0018】
【
図5】
図1の装置を2台配置したBWRの上部格子板の斜視図である。
【0019】
【0020】
【
図7】
図5に例示するように2つの装置を配置した上部格子板の上部平面図である。
【0021】
【
図8】
図1の装置の整列アセンブリが収縮位置にある、
図7の線8-8に沿う断面図である。
【0022】
【
図9】整列アセンブリが収縮位置にある、
図7の線9-9に沿う断面図である。
【0023】
【
図10】整列アセンブリが拡張位置にある点を除き、
図8に類似する図である。
【0024】
【
図11】整列アセンブリが拡張位置にあり、検査システムが上部格子板の一つのビームの上方の第1の位置にある点を除き、
図9に類似する図である。
【0025】
【
図12】検査システムが第1の位置より上部格子板のビームに近い第2の位置にある点を除き、
図11に類似する図である。
【0026】
同じ参照番号は、本明細書を通して同じ部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本願において開示し特許請求する発明の改良型装置4を
図1~7に、また、この装置の断面図を
図8~12に示す。装置4は、
図5に略示するように、沸騰水型原子炉(BWR)6の検査に使用できる検査装置である。具体的には、装置4は、沸騰水型原子炉6の上部格子板8(
図5、7)の超音波(UT)検査のような検査を行うように構成されている。
図5、7からわかるように、上部格子板8は複数のビームを格子状に配列したものである。参照番号10A、10B、10C、10D、10E、10Fで示すビームは、集合的または個別に参照番号10で表わすことがある。参照番号10は、特に番号を付したビーム以外の上部格子板8のビームを指す。以下に詳述するように、装置4は、各ビーム10の上縁部12に嵌合可能である。
【0028】
上部格子板8にはさらに、複数の開口部があるが、うち2つの開口部を参照番号14A、14Bで示す(集合的または個別に参照番号14で表すことがある)。同様に、特に番号を付した開口部以外の開口部を参照番号14で表す。
図6、7からわかるように、開口部14Aは、ビーム10A、10B、10C、10Dに隣接し、さらに詳しく言うと、これら4つのビームの隣接するセグメントによって画定される。ビーム10A、10Bは互いに平行であって第1の対のビームを形成し、ビーム10C、10Dも互いに平行であって同様に第2の対のビームを形成すると言える。したがって、開口部14Aは、第1の対および第2の対のビーム10A、10B、10C、10Dの隣接するセグメントによって画定される。同様に、開口部14Bは、ビーム10B、10E、10D、10Fの隣接するセグメントによって画定される。別の第1の対を形成するビーム10B、10Eと別の第2の対を形成するビーム10D、10Fの隣接するセグメントは、開口部14Bを画定する。また、開口部14Aと14Bとは、ビーム10によって構成される格子の対角線方向において互いに隣接する位置にあると言える。
【0029】
図6は、一対の燃料集合体13と、一対のダミー15とが収まる開口部14Aを示す。この一対のダミー15は、取り出された別の一対の燃料集合体が占めていた対角線方向の対向位置にある。本願の別の箇所でも記述するが、装置4は、一部又は全部の燃料集合体が取り出された状態か、あるいは、かかる燃料集合体の代わりにダミーが配置されているかに関係なく、任意の開口部14に使用できる。このことは、燃料集合体の取り出しが終わっていることや、同様に取り出した燃料集合体を別の適切な場所に保管することがこの装置4の使用条件でないから、時間、労力およびコストが節約され、非常に有利である。
【0030】
装置4は概して、ハウジング16、ハウジング16上に位置する整列アセンブリ20、同様にハウジング16上に位置する検査システム22を含むと理解することができる。ハウジング16は、基部26および一対の支持部28A、28B(集合的または個別に参照番号28で表すことがある)を含むと言うことができる。支持部28は、基部26に取り付けられて、基部26から離れる第1の方向30へ延びる。各支持部28の基部26とは反対側の端部には、係合端縁部32がある。以下に詳述するように、係合端縁部32は、一対のビーム10の上縁部12と嵌合可能であり、さらに詳しく言うと、開口部14の1つに隣接して当該開口部を画定する一対の平行なビーム10の一対のセグメントの上縁部12と嵌合することができる。
【0031】
整列アセンブリ20は、参照番号34A、34B、34C、34Dで示す(集合的または個別に参照番号34で表すことがある)4つの脚部を含むと言える。各脚部は、添付図面からわかるようにほぼL字形である。整列アセンブリ30は、基部26上に位置するアクチュエータ38(例えば
図8~12に示す)をさらに含む。以下に詳述するように、アクチュエータ38は、基部26に固着された静置部40と、静置部40に対して移動可能であり脚部34に接続された従動体44とを含むと言える。アクチュエータ38は、多種多様な機械式アクチュエータ装置のうちの任意のものでよく、非限定的な例として、空気圧式、液圧式、電気式などがある。
【0032】
整列アセンブリ20はさらに、
図2に略示するように、基部26の下側に固着されたハブ46を含む。各脚部34は、ハブ46に枢着されている。さらに詳しく言うと、各脚部34は、ハブ46に枢着され、概してハブ46から離れる方向へ延びる第1の部分50を含む。各脚部34はさらに、第1の部分50に接続され、概して、対応する第1の部分50から離れる第1の方向30へ延びる第2の部分52を含む。添付図面からわかるように、脚部34A、34Bの第1の部分50は、ハブ46から支持部28へ向かう方向へ延びる。脚部34A、34Bの第2の部分52は、支持部28に隣接し当該支持部28に沿うように延びる。脚部34C、34Dの第1の部分50は、ハブ46から離れる方向へ延びるが、両支持部28のほぼ中間に位置する。脚部34C、34Dの第2の部分52も同様に、第1の部分50から離れる第1の方向30へ延びるが、両支持部28のほぼ中間に位置する。
【0033】
整列システム20はさらに、それぞれ脚部34A、34B、34C、34Dと、従動体44に固着されたコネクタ48との間を延びる4つのリンク(参照番号56A、56B、56C、56Dで表す)を含む。リンク56A、56B、56C、56Dを、集合的または個別に参照番号56で表すことがある。一般的に、各リンク56は、一方の端部がコネクタ48に枢着され、もう一方の端部が対応する脚部34に枢着されている。例示の実施態様において、各リンク56は、対応する脚部34との間にヨーク形接続部を有する。
【0034】
検査システム22は、参照番号58A、58Bで示す(集合的または個別に参照番号58で表すことがある)一対の検査装置を含むと言える。検査システム22はさらに、基部26上に移動自在に取り付けられた牽引装置62を含むが、当該牽引装置には検査装置58が配置されている。検査システム22はさらに、基部26上にあって牽引装置62に接続された駆動装置64を含む。駆動装置64は、支持部28Aに隣接する基部26の一方の端部のところの第1の位置(
図1~3に略示)と、支持部28Bに隣接する基部26のもう一方の端部のところの第2の位置(
図4に略示)との間で、牽引装置62を移動させるように作動可能である。そのように基部26の両端部にある第1の位置と第2の位置との間で検査システム22を移動させると、検査装置58Aは検査経路68Aに沿って、また、検査装置58Bは検査経路68Bに沿って移動する。
図3では、検査装置58Aの背後に検査装置58Bがあることを示すために、検査装置58Bを検査装置58Aより若干下方に、すなわち、両装置の垂直位置を若干ずらせてある。しかし
図4では、両検査装置58の垂直位置は同じである。
【0035】
添付図面に示すように、牽引装置62は、プレート70およびプレート70に取り付けられた多数のホイール74を含み、当該ホイールは基部26の内面に回転自在に係合している。本願で用いる表現「多数の」およびその変化形は、広義には、ゼロを除き1を含む任意の数量を指す。駆動装置64は、基部26に取り付けられプレート70に作動的に接続された細長いシリンダ76を含むと言える。例示の実施態様において、シリンダ76は空気圧式シリンダであり、シリンダ76内の磁気要素がシリンダ内部の異なる領域の空気圧の違いによって、シリンダ76内を並進する。シリンダ76内の磁石は、プレート70上に配置された強磁性構造体に磁気的に結合する。ただし、シリンダ76は、非限定的な例として液圧式や電動式など、空気圧式以外の多種多様な構成のうちの任意のものでよい。
【0036】
検査装置58は、ホルダー80および検査要素82を含むと言える。ホルダー80は、牽引装置62のプレート70上に設置されている。検査要素82は、基部26から第1の方向30へ離隔するように、ホルダー80上のプレート70とは反対側のホルダー80の端部に設置されている。さらに詳しく言うと、ホルダー80は、プレート70に固着されたプラットフォーム86を含み、さらに、プラットフォーム86上に設置された延伸機構88を含むと言える。ホルダー80はさらに、延伸機構88上に設置され検査要素82を保持する取り付け台を含むと言える。延伸機構88は、取り付け台92およびその上に取り付けられた検査要素82を、例えば第1の位置(例えば
図8~11略示)と第2の位置(例えば
図12に略示)との間で移動させるように作動可能であり、当該第2の位置は当該第1の位置より、基部26から遠く、1つのビーム10の上縁部12に近い。一般的に、例えば超音波(UT)検査要素などの検査要素82は繊細な装置である。延伸機構88は、例えば、装置を一対のビーム10上にセットする際に、検査要素82が例えば燃料集合体13やビーム10と衝突するのを避けるために、検査要素82を基部26に近い収縮位置に移動できるようにする。また、ビーム10の検査を行う際に、検査要素82は必ずしも
図12の第2の位置にある必要はない。検査要素82が検査経路に沿って移動する際に検査要素が検査対象のビーム10に対して所定の近い距離(一定の距離)に保たれている限り、検査要素82がたとえ
図8~11に略示する位置にあっても検査を行うことができる。
【0037】
図8~12からわかるように、整列アセンブリ20は、収縮位置(例えば
図8~9に略示)と拡張位置(例えば
図10~12略示)との間で移動可能である。収縮位置では、従動体44とその上のコネクタ48は、
図10~12の収縮位置より静置部44から離れたところにある。従動体44とコネクタ48を第1の方向30へ(
図8~12において下向き)拡張位置から収縮位置へ移動させると、それと同時にリンク56により脚部34が概して内側へ引き寄せられ、第2の部分52同士が互いに近づく方向へ移動して、1つ以上の脚部34が、係合していた、開口部14Aのビーム10のセグメントから離れる。一方、従動体44とコネクタ48を静置部44に近づく方向(
図8~12において上向き)へ移動させると、それと同時に脚部34が概して外方へ枢動し、第2の部分52同士が概して互いに離れる方向へ移動して、脚部34が開口部14Aのビーム10の隣接するセグメントと係合するようになる。例えば
図8、9からわかるように、収縮位置では、脚部34Aはビーム10Cから離隔し、脚部34Bはビーム10Dから離隔し、脚部34Cはビーム10Bから離隔し、脚部34Dはビーム10Aから離隔している。一方、アクチュエータ38を作動させて、従動体44とその上のコネクタ48を、静置部40に近づくように
図8~12の視点で上向きに移動させると、脚部34は同時に概して外方へ枢動し、脚部34Aはビーム10Cに係合し、脚部34Bはビーム10Dに係合し、脚部34Cはビーム10Bに係合し、脚部34Dはビーム10Aに係合するようになる。
【0038】
このように脚部34を
図8、9の収縮位置と
図10~12の拡張位置との間で同時に枢動させると、例えば、ハウジング16が開口部14のビーム10と自律的に整列するようになる。例えば、装置4がビーム10Bよりもビーム10Aの近ければ、脚部34を同時に拡張位置の方へ移動させると、脚部34Cが開口部14A内のビーム10Bのセグメントと係合する前に、脚部34Dが開口部14A内のビーム10Aのセグメントと係合する。脚部34Cがビーム10Bと係合していない状態で、脚部34Dをそのようにビーム10Aと係合したままさらに拡張位置の方へ移動させると、装置4は概してビーム10Bの方へ(
図8の視点で上部格子板8に対して概して右方へ)移動し、やがて脚部34Cがビーム10Bに係合するようになる。これが、装置4をビーム10A、10Bの上方においてセンタリングする「整列」移動である。装置4がビーム10C、10Dのうちのいずれか一方に片寄っている場合は、
図9の視点で左右の方向に沿った同様の整列移動が同時に起きる。同時的なこの2つの整列移動により、本願の例では、装置4が開口部14Aの上方でビーム10A、10B、10C、10Dのセグメントに対してセンタリングされ、支持部28A、28Bもビーム10C、10Dのセグメントと整列するようになる。
【0039】
図8、9は、収縮位置と拡張位置の間における脚部の動きをわかりやすく説明するために、ビーム10A、10B、10C、10Dに対して整列済みのハウジング16を示す。ただし実際の操作では、一般的に、支持部28の係合端縁部32はビーム10の上縁部12から上方に或る距離だけ離隔するが、脚部の第2の部分52は開口部14内に延入するように、装置4を位置決めする。この状態で、整列アセンブリ20を付勢すると、脚部34が同時に収縮位置から拡張位置へ枢動して、ハウジング16をビーム10A、10B、10C、10Dに対して整列させる。その時点で、装置4を、
図8、9の視点で下方へさらに移動させると、係合端縁部32が、隣接する開口部14Bを画定するビーム10の上縁部12と嵌合する。この点に関して、
図6からわかるように、脚部34は燃料集合体13と一対のダミー15の間、または一対の燃料集合体13同士の間、若しくは一対のダミー15同士の間の狭い空間を移動可能であり、また、第2の部分52の自由端部は第1の部分50より細いため、そのような燃料集合体13の間を移動できる。また、支持部28の自由端部は基部26に直接接続する部分より細いため、支持部28の端部を、隣接する開口部14の一対の燃料集合体13と一対のダミー15の間、または一対の燃料集合体13同士の間、若しくは一対のダミー15同士の間に容易に挿入できることがわかる。
【0040】
整列アセンブリ20を拡張位置にして支持部28の係合端縁部32をビーム10C、10Dの上縁部12に嵌合させると、検査システム22は、開口部14Aのビーム10A、10Bの隣接するセグメントを検査する準備が整った状態にある。所与の用途の必要性によるが、検査要素82は、
図10、11に示すように、ビーム10A、10Bの上縁部12から上方に一定の距離離隔させた位置に保つことができる。この状態で、駆動装置64を付勢し、牽引装置62によって検査装置58を第1の位置(例えば
図8~12に略示)と第2の位置(例えば
図4に略示)の間で移動させる。このように検査装置を第1の位置と第2の位置の間で移動させると、検査要素82が一対の検査経路68A、68Bに沿って移動するため、下方にあるビーム10のセグメントを検査要素82によって検査することができる。
【0041】
第1の対のビーム10のセグメント(本願の例ではビーム10A、10Bのセグメント)の検査を終えたら、整列アセンブリ20を拡張位置から収縮位置に戻し、必要であれば装置4を垂直に引き上げて、上部格子板8の上方で90°回転させた後、整列アセンブリ20を付勢して脚部34を同時に拡張位置に戻すことにより、装置4を再度、開口部14の他の対のビーム10に整列させることができる。そのような状況において、係合端縁部32を、検査システム22による検査を終えたばかりのビーム10A、10Bのセグメントの上縁部12に整列して係合させ、検査システム22を、ビーム10C、10D(すなわちそれまで支持部28が載っていたビーム)のセグメントを検査するように位置決めする。検査を行うには、駆動装置を付勢して、検査要素82を
図4に示す第2の位置から
図1~3に示す第1の位置へ戻るように移動させる。あるいは、次の検査を行う前に、検査要素82を
図1~3に示す第1の位置に戻す必要があるかもしれない。再度の検査は、検査要素82を
図8~11に略示するようにビーム10の上縁部12から一定の距離離隔させて行うか、または延伸機構88を作動して検査要素82をビーム10により近い第2の位置へ移動させるか、必要であれば、ビーム10の上縁部12に接触させることにより、所与の用途の要求事項に応じた検査を行う。
【0042】
開口部14Aに隣接するビーム10A、10B、10C、10Dのセグメントの検査を完了した後、装置4を開口部14Aから取り出して隣接する開口部(例えば開口部14B)へ移動することができる。本願の別の箇所に記述したように、開口部14A、14Bは対角線上で対向する位置関係にある。この点に関して、前述の例示的な一連の操作によって検査システム22が検査したビーム10A、10B、10C、10Dの4つのセグメントは、開口部14Aに隣接する他の4つの開口部14との共有部分であることがわかる。例えば、前述の手順で検査したビーム10Aのセグメントは、
図7における開口部14Aの左隣りの開口部14との共有部分である。同様に、前述の手順で検査したビーム10Cのセグメントは、
図7の開口部14Aの上隣りの開口部14との共有部分である。したがって、開口部の検査を
図7の視点で対角線の方向に次々に行うのが有利であり、さらには、ビーム10のセグメントは隣接する開口部14同士の共有部分であるので、装置4の受け入れが必要な開口部は全体の約半分で済むことがわかる。
【0043】
したがって、装置4は上部格子板8のビーム10の検査を容易に行えることがわかる。装置4は比較的小型で、基部26の上方のほぼ中央に設けられた取っ手96は、BWR6の環境の垂直上方の位置から手動で保持できる棒状体と協働することができる。装置4は軽量で、上部格子板8の比較的小さな領域を占拠するに過ぎないため、BWRの上部格子板8の他の場所の他の部分に対して行われる他の作業を妨げることがない。また、上部格子板8のさまざまな部分を検査するために複数の装置4を展開できることがわかる。このことは、
図5、7から示唆される。さらに、検査システム22は十分な距離にわたって移動可能であり、このため、望ましいことに、ビーム10の縁を、上部格子板8の円形の枠98ギリギリまで全長にわたって検査できる。他の恩恵も自明である。
【0044】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。