(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】医薬組成物、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20220627BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220627BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220627BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220627BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220627BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220627BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220627BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220627BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220627BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20220627BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220627BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220627BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220627BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220627BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K47/32
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/14
A61K47/40
A61K47/24
A61K47/20
A61K47/12
A61K9/20
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2020551317
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 CN2018080326
(87)【国際公開番号】W WO2019178868
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】518062510
【氏名又は名称】ウーシー ショアンリャン バイオテクノロジー カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】チアチュアン ウー
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/035753(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107176954(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)医薬物質3~70部、
(b)1種又は複数種の医薬希釈剤5~95部、
(c)1種又は複数種の医薬崩壊剤0.5~45部、
(d)1種又は複数種の医薬可溶化剤0~5部、及び
(e)1種又は複数種の医薬潤滑剤0.5~4部を含有する医薬組成物であって、
前記の部が重量部で、且つ(a)+(b)+(c)+(d)+(e)の合計が100であり、
前記医薬物質がN-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドのクエン酸塩であり、
前記錠剤が(i)前記医薬希釈剤、前記医薬崩壊剤、前記医薬可溶化剤、及び前記医薬潤滑剤を含む顆粒(内部添加部分)と、(ii)前記医薬希釈剤、前記医薬崩壊剤、及び前記医薬潤滑剤を含む外部添加部分とからなり、
前記内部添加部分及び前記外部添加部分における前記医薬崩壊剤が
それぞれ1つの成分からなる時、前記1つの成分はクロスポピドンであり、
前記内部添加部分及び前記外部添加部分における前記医薬崩壊剤が
それぞれ複数の成分からなる時、前記複数の成分の1つはクロスポピドンであり、
クロスポビドン以外の前記
医薬崩壊剤
は、アルギン酸、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、キトサン、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、クロスカルメロースナトリウム(CCNa)、ポビドン(PVP
)、グアーガム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、カルボキシメチルスターチナトリウム(CMS-Na)、コロイダルシリカ(微粉シリカゲルとも言われ、SiO2)、及びデンプンからなる群より選択され、
前記医薬希釈剤は、微結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、アセチルセルロース(醋酸セルロースとも言われ)、エチルセルロース、エリスリトール、フルクトース、イヌリン、イソマルチトール、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、ソルビトール、ポリデキストロース、ポリエチレングリコール、デンプン、スクロース、トレハロース、及びキシリトールからなる群より選択され、
前記可溶化剤は、塩化ベンザルコニウム、安息香酸ベンジル、塩化セチルピリジニウム(CPC)、シクロデキストリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、レシチン、オレイルアルコール、ポロキサマー、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ソルビタントリステアレート(ST)、及びトリオレイン酸グリセリルからなる群より選択され、
前記潤滑剤は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸、パルミチン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、及びタルクからなる群より選択される、錠剤。
【請求項2】
医薬物質(a)を5~60部含有することを特徴とする、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
1種又は複数種の医薬希釈剤(b)を10~85部含有することを特徴とする、請求項1に記載の錠剤。
【請求項4】
前記医薬希釈剤が1種の成分のみからなる場合、前記1種の成分が微結晶セルロースであり、前記医薬希釈剤が複数種の成分からなる場合、前記複数種の成分の1つが微結晶セルロースであり、且つ微結晶セルロースが前記医薬希釈剤(b)の10wt%~90wt%であることを特徴とする、請求項1又は3に記載の錠剤。
【請求項5】
クロスポビドンが前記医薬崩壊剤(c)の10wt%~90wt%であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
1種又は複数種の医薬可溶化剤(d)を0~3部含有することを特徴とする、請求項1に記載の錠剤。
【請求項7】
前記医薬可溶化剤が1種の成分のみからなる場合、前記1種の成分がラウリル硫酸ナトリウムであり、前記医薬可溶化剤が複数種の成分からなる場合、前記複数種の成分の1つがラウリル硫酸ナトリウムであり、且つラウリル硫酸ナトリウムが前記医薬可溶化剤(d)の10wt%~90wt%であることを特徴とする、請求項1又は6に記載の錠剤。
【請求項8】
がんを治療剤するための、請求項1~7のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項9】
コーティングされている、請求項1~7のいずれか1項に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬品製剤分野に属し、医薬組成物、当該医薬組成物の製造方法、及び当該医薬組成物の医学的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非小細胞肺がん(non-small cell lung cancer、NSCLC)は小細胞肺がん(small cell lung cancer、SCLC)以外のすべての肺上皮がんを指し、肺がんの80%を占めている。アメリカがん協会(ACS)の統計データによると、アメリカでは、毎年約20万のNSCLC患者が増え続けているという。そのうち、確定診断時、65%以上がステージIII、IVに至っている。一部の進行期NSCLCは、誘導療法を経て外科的に切除可能以外、その他のほとんどは放射線療法又は化学療法を用いる必要がある。しかし、特に留意すべきことは、化学療法では、薬物の全身への毒性副作用が大きく、患者に大きな痛みをもたらすことである。したがって、高効率かつ低毒性な標的治療薬を手に入れることは、抗腫瘍薬の必然的な発展方向になっている。
【0003】
上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor、EGFR)はErbB受容体ファミリーの一員であり、当該ファミリーは抗がん薬物開発で大きな注目を集めている標的となっている。臨床データによると、EGFRの一部の突然変異形態は最終的に、ゲフィチニブ及びエルロチニブ等薬物による治療に対して薬剤耐性を示す。このような突然変異の、EGFRを標的とする療法に対する耐性における重要性に鑑みれば、突然変異型EGFRを阻害できる薬物はがんの治療において有用であると考えられる。また、突然変異型EGFRに対して比較的高い阻害効果を示すが、野生型(WT)EGFRへの阻害効果が顕著でない化合物はがん(特にNSCLC)の治療剤に一層適するものであり、ニーズが依然として高い状況にある。アストラゼネカ社より開発され、販売されているAZD9291は、最初の第3世代の経口投与で不可逆的選択性EGFR突然変異阻害剤であり、活性化型及び耐性突然変異型EGFRへの阻害に有用である。第3世代EGFR阻害剤はユニークな治療効果を有し、且つ現在販売されている製品は非常に少ないため、新薬の競争が極めて激しい。
【0004】
PCT/CN2015/088643には、同様に比較的高いEGFR阻害活性を示しながら、WT EGFRに対して比較的低い阻害活性を示す一連の2-アリールアミノピリジン、ピリミジン又はトリアジン誘導体が開示されている。当該特許出願の明細書には、「C-005」と呼ばれ、化学名が「N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミド」である式Iで表される化合物が記載されている。C-005は上記一連の2-アリールアミノピリジン、ピリミジン又はトリアジン誘導体の1つであり、活性化型及び耐性突然変異型EGFRを阻害できると共に、WT EGFRに対して比較的低い阻害活性を示す。また、PCT/CN 2018/070011には、C-005の複数種の塩及び結晶形の製造及び特徴付けが開示されている。上記の技術情報に基づいてC-005以降の製剤を研究開発することは、重要な臨床的意義があり、将来広く利用されることに繋がると考えられる。
【0005】
【発明の概要】
【0006】
周知のように、経口投与薬物は投与後に消化管(胃、十二指腸、空腸、回腸、結腸を含む)に沿って数多くの異なる部位で吸収される。胃(pH1~3.5)から小腸(pH4~8)のpH値の顕著な変化に伴い、上記の吸収部位でのpH値も異なる。C-005の物理化学的特性からすれば、顕著なpH依存性溶解度及び透過性を有する。例えば、水溶液(pH7)に比べ、模擬人工胃液(pH1.2)では、遊離型C-005は約40倍高い溶解度を有し、C-005メタンスルホン酸塩はさらに200倍よりも高い溶解度を有する。このような場合、薬物の溶解度はpHに応じて変化し、且つ酸性条件下で最も高くなるが、アルカリ性条件下で最も低くなるため、消化管を通すときに、薬物が溶液から沈殿する可能性がある。薬物が溶液中でしか吸収されないため、このような沈殿の存在によって、当該薬物の吸収度合い及び/又は速度が変わる可能性がある。このように、薬物が患者の体循環に到達する量は、投与された患者に1つの投与量と次の投与量の間で顕著に変化する可能性もある。さらに、薬物が患者の体循環に到達する量は、患者と患者の間で顕著に変化する可能性もある。原則上、生体内で投与をモニタニング又は制御することでこのばらつきを調整できるが、これが原因で薬物の有効性が低減し、又は安全面のリスクが高まり、さらに経済的負担が重くなり、患者の臨床体験も悪くなる。
【0007】
C-005クエン酸塩は、腸内のpH条件下での溶解度が遊離塩基の形態に比べて顕著に高いものである。形成されたら、C-005クエン酸塩の溶液は少なくとも24時間が経っても沈殿せず、安定しているようである。このため、C-005クエン酸塩と微結晶セルロースから形成された簡単な「ブレンド・イン・カプセル」は、上記すべての問題を避けるように、生理学的pH範囲内での素早く完全な溶解を含む有利な特性を有することが想定される。しかし、残念ながら、「ブレンド・イン・カプセル」は、カプセルシェルの破壊に関連すると想定される場合、長い時間制限があり、その結果、pH6.8下で30分間後に37%の放出のみとなり、60分間後には75%の放出、120分間後になってから85%程度の放出となる。したがって、患者間の吸収変動性及び/又は投薬量間の吸収変動性という上記問題のリスク及び/又は重篤度を低減/回避すべきである、薬物の患者への投与の改善方法を提供することには依然として問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題の1つ又は複数への解決案を提供し、且つ当該医薬物質を含有する新規医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物形態として、生理的に適切な条件下での改善された溶出特性、および/または、生理的に適切な時間規模での作用剤の高い総放出を示す錠剤が挙げられる。当該医薬物質のより高い初期溶解速度及び/又はより高い総放出を達成することは、例えばC-005が示したpH依存性溶解度を有する薬物の吸収量の変動性及び患者間の変動性のリスクを低減すると考えられる。また、複数種のレシピをスクリーニングした結果、pH6.8、pH4.5、水及びpH1.2といった4種の溶出媒体のうち、pH6.8条件下での溶出効果が最悪のため、通常最も厳しいpH6.8及び中程度のpH4.5という2種の媒体を溶出効果の考察用媒体として選択する。通常、溶出時間が短いほど良く、溶出プラトーが高いほど良く、少なくとも「ブレンド・イン・カプセル」より優れた効果を有することを満たす必要がある。
【0009】
本発明の医薬組成物は、pH6.8の溶液中で15、30、60分間後に顕著に改善された薬物溶解レベルを示す。中国薬局方2015通則0931の第2法のパドル法の一般的な手順に従って、pH6.8で3つの溶出値の平均値を求め、データを下表に示す。
【表1】
【0010】
上表から分かるように、15分間以内では、実例1A、1B、2、3A及び3Cを除き、他の実例は溶出率がすべて80%の溶出値に近く、又はそれに達し、30分間以内では、実例2も溶出率が80%の溶出値に近く、又はそれに達し、60分間内では、1A及び1Bも溶出率が80%の溶出値に近く、又はそれに達した。また、上記実例のほとんどは「ブレンド・イン・カプセル」よりも優れた溶出効果を奏した。
【0011】
第一の側面では、本発明は、
(a)医薬物質3~70部(原薬とも言われ、英略語:API、Active Pharmaceutical Ingredient)、
(b)1種又は複数種の医薬希釈剤5~95部、
(c)1種又は複数種の医薬崩壊剤0~50部、
(d)1種又は複数種の医薬可溶化剤0~5部、及び
(e)1種又は複数種の医薬潤滑剤0~5部を含有する医薬組成物であって、
前記の部が重量部で、且つ(a)+(b)+(c)+(d)+(e)の合計が100であり、
前記医薬物質がN-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩である、医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明において、「wt%」とは、「重量百分率」であり、且つ所属する技術分野における通常の意味を有する。したがって、「wt%」とは、成分Xの、それを含む成分Yにおける割合を意味し、それぞれ成分X及び成分Yの重量に基づいて算出される(例えば、存在する体積又はモル数等ほかの物理的パラメータとは異なる。)。例えば、20gの成分Yに2gの成分Xが含まれる場合、成分Xが成分Yの10wt%である。
【0013】
本発明において、「前記の部が重量部で」とは、「部」で医薬組成物における各成分の使用量を表記することを意味する。このような文言は、相対重量に基づいてこれらの成分の割合を定義するものと(例えば、存在する体積又はモル数等ほかの物理的パラメータとは異なる。)理解されるべきである。例えば、1つの混合物に1gの成分X及び4gの成分Zが含まれる場合、成分X及び成分Zの合計を100部と定義すると、当該混合物は成分X20部及び成分Z80部を含むと言える。
【0014】
医薬物質
さらに、上記の医薬組成物では、前記医薬物質はN-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドの薬学的に許容される塩であり、前記薬学的に許容される塩は酸付加塩であり、前記酸は塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、ギ酸、酢酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸から選択されるいずれか1種又は複数種であり、好ましくは塩酸、リン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸から選択されるいずれか1種又は複数種である。
【0015】
さらに、上記の医薬組成物では、前記医薬物質は、PCT/CN2018/070011に開示されているN-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドのクエン酸塩であり、結晶形Eを有し、そのX線粉末回折(X-ray powder diffraction、XRPD)パターンにおいて、5.4°±0.2°、12.0°±0.2°、21.2°±0.2°の2θ値の少なくとも1つに特徴ピークを有し、好ましくは10.8°±0.2°、17.5°±0.2°、24.9°±0.2°、25.4°±0.2°の2θ値の少なくとも1つにも特徴ピークを有し、より好ましくは9.0°±0.2°、12.4°±0.2°、13.3°±0.2°、16.0°±0.2°、20.4°±0.2°の2θ値の少なくとも1つにも特徴ピーク有する。
【0016】
さらに、前記医薬組成物は、下記例示されている範囲のいずれかの量の医薬物質(a)を含む。
重量部で3~70部;
重量部で4~70部;
重量部で4~65部;
重量部で5~60部;
重量部で6~60部;
重量部で7~50部;
重量部で8~45部;
重量部で9~45部;
重量部で10~45部。
【0017】
医薬希釈剤
さらに、上記の医薬組成物では、前記医薬希釈剤は、微結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、アセチルセルロース(醋酸セルロースとも言われる)、エチルセルロース、エリスリトール、フルクトース、イヌリン、イソマルチトール、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、ソルビトール、ポリデキストロース、ポリエチレングリコール、デンプン、スクロース、トレハロース、キシリトールのいずれか1種又は複数種を含み、好ましくは微結晶セルロース、イソマルチトール、ラクチトール、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、ポリデキストロースのいずれか1種又は複数種を含み、より好ましくは微結晶セルロース、マンニトール、ラクトースのいずれか1種又は複数種を含む。
【0018】
さらに、前記医薬組成物は、下記例示されている範囲のいずれかの量の医薬希釈剤(b)を含む。
重量部で5~95部;
重量部で10~90部;
重量部で10~85部;
重量部で15~80部;
重量部で15~70部;
重量部で20~70部;
重量部で30~70部;
重量部で40~70部。
【0019】
さらに、上記の医薬組成物では、前記医薬希釈剤が1種の成分のみからなる場合、前記1種の成分が微結晶セルロースであり、前記医薬希釈剤が複数種の成分からなる場合、前記複数種の成分の1つが微結晶セルロースであり、残りの成分がイソマルチトール、ラクチトール、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、ポリデキストロースのいずれか1種又は複数種を含み、且つ微結晶セルロースが前記医薬希釈剤(b)の10wt%~90wt%であり、好ましくは15wt%~90wt%であり、より好ましくは20wt%~90wt%である。
【0020】
薬物崩壊剤
さらに、上記の医薬組成物では、前記崩壊剤は、アルギン酸、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、キトサン、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、クロスカルメロースナトリウム(CCNa)、ポビドン(PVP)、クロスポビドン(クロスポリビニルピロリドンとも言われ、PVPP)、グアーガム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、カルボキシメチルスターチナトリウム(CMS-Na)、コロイダルシリカ(微粉シリカゲルとも言われ、SiO2)、デンプンのいずれか1種又は複数種を含み、好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、コロイダルシリカのいずれか1種又は複数種を含む。
【0021】
さらに、前記医薬組成物は、下記例示されている範囲のいずれかの量の医薬崩壊剤(c)量を含む。
重量部で0~50部;
重量部で0.5~45部;
重量部で0.5~40部;
重量部で0.5~30部;
重量部で0.5~20部;
重量部で0.5~15部;
重量部で1~15部;
重量部で2~15部。
【0022】
さらに、上記の医薬組成物では、前記医薬崩壊剤が1種の成分のみからなる場合、前記1種の成分がクロスポビドンであり、前記医薬崩壊剤が複数種の成分からなる場合、前記複数種の成分の1つがクロスポビドンであり、残りの成分が低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コロイダルシリカのいずれか1種又は複数種を含み、且つクロスポビドンが前記医薬崩壊剤(c)の10wt%~90wt%であり、好ましくは15wt%~90wt%であり、より好ましくは20wt%~90wt%である。
【0023】
さらに、上記の医薬組成物では、前記医薬崩壊剤が1種の成分のみからなる場合、前記1種の成分が低置換度ヒドロキシプロピルセルロースであり、前記医薬崩壊剤が複数種の成分からなる場合、前記複数種の成分の1つが低置換度ヒドロキシプロピルセルロースであり、残りの成分がクロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コロイダルシリカのいずれか1種又は複数種を含み、且つ低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが前記医薬崩壊剤(c)の10wt%~90wt%であり、15wt%~90wt%であり、より好ましくは20wt%~90wt%である。
【0024】
さらに、上記の医薬組成物では、前記医薬崩壊剤が1種の成分のみからなる場合、前記1種の成分がカルボキシメチルスターチナトリウムであり、前記医薬崩壊剤が複数種の成分からなる場合、前記複数種の成分の1つがカルボキシメチルスターチナトリウムであり、残りの成分がクロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、コロイダルシリカのいずれか1種又は複数種を含み、且つカルボキシメチルスターチナトリウムが前記医薬崩壊剤(c)の10wt%~50wt%であり、好ましくは15wt%~50wt%であり、より好ましくは20wt%~50wt%である。
【0025】
さらに、上記の医薬組成物では、前記医薬崩壊剤が1種の成分のみからなる場合、前記1種の成分がコロイダルシリカであり、前記医薬崩壊剤が複数種の成分からなる場合、前記複数種の成分の1つがコロイダルシリカであり、残りの成分がクロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウムのいずれか1種又は複数種を含み、且つコロイダルシリカが前記医薬崩壊剤(c)の10wt%~50wt%であり、好ましくは15wt%~50wt%であり、より好ましくは20wt%~50wt%である。
【0026】
薬物可溶化剤
さらに、上記の医薬組成物では、前記可溶化剤が塩化ベンザルコニウム、安息香酸ベンジル、塩化セチルピリジニウム(CPC)、シクロデキストリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、レシチン、オレイルアルコール、ポロキサマー、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ソルビタントリステアレート(ST)、トリオレイン酸グリセリルのいずれか1種又は複数種を含み、好ましくはラウリル硫酸ナトリウム、塩化セチルピリジニウム、ソルビタントリステアレートのいずれか1種又は複数種を含み、より好ましくはラウリル硫酸ナトリウムを含む。
【0027】
さらに、前記医薬組成物は、下記例示されている範囲のいずれかの量の医薬可溶化剤(d)を含む。
重量部で0~5部;
重量部で0~3部;
重量部で0~2部;
重量部で0~1部;
重量部で0~0.5部。
【0028】
さらに、上記の医薬組成物では、前記医薬可溶化剤が1種の成分のみからなる場合、前記1種の成分がラウリル硫酸ナトリウムであり、前記医薬可溶化剤が複数種の成分からなる場合、前記複数種の成分の1つがラウリル硫酸ナトリウムであり、残りの成分が塩化セチルピリジニウム、ソルビタントリステアレートのいずれか1種又は複数種を含み、且つラウリル硫酸ナトリウムが前記医薬可溶化剤(d)の10wt%~90wt%であり、好ましくは15wt%~90wt%であり、より好ましくは20wt%~90wt%である。
【0029】
薬物潤滑剤
さらに、上記の医薬組成物では、前記潤滑剤は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸、パルミチン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルクのいずれか1種又は複数種を含み、好ましくはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸、パルミチン酸、フマル酸ステアリルナトリウムのいずれか1種又は複数種を含み、より好ましくはステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウムのいずれか1種又は複数種を含む。
【0030】
さらに、前記医薬組成物は、下記例示されている範囲のいずれかの量の医薬潤滑剤(e)を含む。
重量部で0~5部;
重量部で0~4部;
重量部で0.5~4部;
重量部で0.8~3部;
重量部で1~2部。
【0031】
さらに、上記の医薬組成物では、前記医薬潤滑剤が1種の成分のみからなる場合、前記1種の成分がフマル酸ステアリルナトリウムであり、前記医薬潤滑剤が複数種の成分からなる場合、前記複数種の成分の1つがフマル酸ステアリルナトリウムであり、残りの成分がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸、パルミチン酸のいずれか1種又は複数種を含み、且つフマル酸ステアリルナトリウムが前記医薬潤滑剤(e)の10wt%~90wt%であり、好ましくは15wt%~90wt%であり、より好ましくは20wt%~90wt%である。
【0032】
さらに、上記の医薬組成物では、当前記医薬潤滑剤が1種の成分のみからなる場合、前記1種の成分がステアリン酸マグネシウムであり、前記医薬潤滑剤が複数種の成分からなる場合、前記複数種の成分の1つがステアリン酸マグネシウムであり、残りの成分がフマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸、パルミチン酸のいずれか1種又は複数種を含み、且つステアリン酸マグネシウムが前記医薬潤滑剤(e)の10wt%~90wt%であり、好ましくは15wt%~90wt%であり、より好ましくは20wt%~90wt%である。
【0033】
第二の側面では、本発明は、医薬物質、希釈剤、崩壊剤、可溶化剤、潤滑剤を混合するステップを含む上記医薬組成物の製造方法を提供する。
【0034】
第三の側面では、本発明は、上記医薬組成物の、がん治療剤としての使用を提供する。
【0035】
さらに、上記の使用では、前記がんが肺がんであり、好ましくは非小細胞肺がんであり、より好ましくは進行非小細胞肺がんである。
【0036】
第四の側面では、本発明は、がん治療剤として用いられる上記医薬組成物を提供する。
【0037】
さらに、上記の医薬組成物では、前記がんが肺がんであり、好ましくは非小細胞肺がんであり、より好ましくは進行非小細胞肺がんである。
【0038】
第五の側面では、本発明は、上記医薬組成物の、がんを治療するための医薬製剤を製造するための使用を提供する。
【0039】
さらに、上記の使用では、前記がんが肺がんであり、好ましくは非小細胞肺がんであり、より好ましくは進行非小細胞肺がんである。
【0040】
第六の側面では、本発明は、コアを含む薬物錠剤であって、前記コアが上記医薬組成物を含有し、好ましくは、前記コアがコーティングを含有する薬物錠剤を提供する。
【0041】
第七の側面では、本発明は、前記医薬組成物に含まれる各成分を混合し、乾式造粒、整粒、打錠及びコーティングを経た後に、薬物錠剤を得るステップを含む上記薬物錠剤の製造方法を提供する。
【0042】
第八の側面では、本発明は、上記薬物錠剤の、がん治療剤としての使用を提供する。
【0043】
さらに、上記の使用では、前記がんが肺がんであり、好ましくは非小細胞肺がんであり、より好ましくは進行非小細胞肺がんである。
【0044】
第九の側面では、本発明は、がん治療剤として用いられる上記薬物錠剤を提供する。
【0045】
さらに、上記の医薬品製剤では、前記がんが肺がんであり、好ましくは非小細胞肺がんであり、より好ましくは進行非小細胞肺がんである。
【0046】
第十の側面では、本発明は、治療有効量の上記医薬組成物又は上記薬物錠剤をがん患者に投与するステップを含む、がんを治療するための方法を提供する。
【0047】
さらに、上記の方法では、前記がんが肺がんであり、好ましくは非小細胞肺がんであり、より好ましくは進行非小細胞肺がんである。
【0048】
さらに、上記の方法では、前記投与は経口投与である。
【0049】
さらに、上記の方法では、前記患者は哺乳類患者であり、好ましくは霊長目哺乳類患者であり、より好ましくはヒト患者である。
【0050】
本発明の医薬組成物及びそれから製造される薬物錠剤は、突然変異型EGFRを効果的に阻害できながら、野生型EGFRに対して比較的低い阻害活性を示し、より高い選択性を有し、医薬品投与の安全性を高めた。本発明の薬物錠剤は望ましい崩壊時間(ほとんどは10分間以内に崩壊でき、一部が1~3分間で崩壊することさえある。)及び溶出状況(ほとんどは溶出百分率が80%程度、一部が90%に達することもあり、且つほとんどは溶出プラトーが約15~20分間で現れ、一部が約10分間で現れることもある。)を有し、がん(好ましくは肺がん、特に非小細胞肺がん)を治療するための薬物として開発されることに適し、重要な社会的及び経済的価値を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は本発明の医薬組成物又は薬物錠剤におけるC-005クエン酸塩結晶のXRPDパターンである。
【
図2】
図2は素錠1Aの4種の溶出媒体における溶出曲線である。
【
図3】
図3は素錠1Bの4種の溶出媒体における溶出曲線である。
【
図4】
図4は素錠1Cの4種の溶出媒体における溶出曲線である。
【
図5】
図5は素錠2の4種の溶出媒体における溶出曲線である。
【
図6】
図6は素錠3A~3CのpH4.5の溶出媒体における溶出曲線である。
【
図7】
図7は素錠3A~3CのpH6.8の溶出媒体における溶出曲線である。
【
図8】
図8は素錠4の4種の溶出媒体における溶出曲線である。
【
図9】
図9は素錠5A~5CのpH4.5の溶出媒体における溶出曲線である。
【
図10】
図10は素錠5A~5CのpH6.8の溶出媒体における溶出曲線である。
【
図11】
図11は素錠6A~6C及び5CのpH4.5の溶出媒体における溶出曲線である。
【
図12】
図12は素錠6A~6C及び5CのpH6.8の溶出媒体における溶出曲線である。
【
図13】
図13は素錠7の4種の溶出媒体における溶出曲線である。
【
図14】
図14はコーティング錠8A~8CのpH4.5の溶出媒体における溶出曲線である。
【
図15】
図15はコーティング錠8A~8CのpH6.8の溶出媒体における溶出曲線である。
【
図16】
図16はブレンド・イン・カプセルのpH4.5及びpH6.8の溶出媒体における溶出曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
第一の側面では、本発明は、
(a)医薬物質3~70部、
(b)1種又は複数種の医薬希釈剤5~95部、
(c)1種又は複数種の医薬崩壊剤0~50部、
(d)1種又は複数種の医薬可溶化剤0~5部、及び
(e)1種又は複数種の医薬潤滑剤0~5部を含有する医薬組成物であって、
前記の部が重量部で、且つ(a)+(b)+(c)+(d)+(e)の合計が100であり、
前記医薬物質がN-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩である、医薬組成物を提供する。
【0053】
医薬物質
本明細書では、「医薬物質」とは、前記の式Iで表されるC-005又はその薬学的に許容される塩であり、上皮成長因子受容体(EGFR)に対して阻害活性を生じることができ、EGFR阻害剤に属する。
【0054】
薬学的に許容される塩
本明細書では、「薬学的に許容される塩」とは、薬物有効成分と酸を反応させて形成した非毒性酸付加塩を指す。当該酸付加塩を形成する酸は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等)のみならず、有機酸(例えば、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、ギ酸、酢酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等)も含む。
【0055】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬物質はC-005の塩酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩から選択されるいずれか1種又は複数種である。
【0056】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬物質はC-005のクエン酸塩である。当該クエン酸塩は非晶質形態又は結晶質形態で存在することができる。
【0057】
結晶質形態で存在するC-005のクエン酸塩は、結晶形Eを有し、当該結晶形EのXRPDパターンにおいて、5.4°±0.2°、12.0°±0.2°、21.2°±0.2°の2θ値の少なくとも1つに特徴ピークを有し、好ましくは10.8°±0.2°、17.5°±0.2°、24.9°±0.2°、25.4°±0.2°の2θ値の少なくとも1つにも特徴ピークを有し、より好ましくは9.0°±0.2°、12.4°±0.2°、13.3°±0.2°、16.0°±0.2°、20.4°±0.2°の2θ値の少なくとも1つにも特徴ピーク有する。
【0058】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物は、下記例示されている範囲のいずれかの量の医薬物質(a)を含んでもよい。
重量部で3~70部;
重量部で4~70部;
重量部で4~65部;
重量部で5~60部;
重量部で6~60部;
重量部で7~50部;
重量部で8~45部;
重量部で9~45部;
重量部で10~45部。
【0059】
医薬希釈剤
本明細書では、「医薬希釈剤」(又は「医薬充填剤」)とは、打錠を容易にするために、錠剤の重量又は体積を充填する医薬補助剤を指す。慣用の医薬希釈剤は、デンプン系、糖及び糖アルコール系、セルロース系、無機塩系等を含む。
【0060】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬希釈剤は、微結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、アセチルセルロース、エチルセルロース、エリスリトール、フルクトース、イヌリン、イソマルチトール、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、ソルビトール、ポリデキストロース、ポリエチレングリコール、デンプン、スクロース、トレハロース、キシリトールのいずれか1種又は複数種を含む。
【0061】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬希釈剤は1種の成分のみからなり、即ち微結晶セルロースである。
【0062】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬希釈剤は複数種の成分からなり、その1つは微結晶セルロースであり、残りの成分はイソマルチトール、ラクチトール、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、ポリデキストロースのいずれか1種又は複数種を含み、且つ微結晶セルロースが医薬希釈剤(b)の10wt%~90wt%である。
【0063】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は15wt%~90wt%である。
【0064】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は20wt%~90wt%である。
【0065】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物は、下記例示されている範囲のいずれかの量の医薬希釈剤(b)を含んでもよい。
重量部で5~95部;
重量部で10~90部;
重量部で10~85部;
重量部で15~80部;
重量部で15~70部;
重量部で20~70部;
重量部で30~70部;
重量部で40~70部。
【0066】
医薬崩壊剤
本明細書では、「医薬崩壊剤」とは、錠剤を消化管で速やかに分解して微粒子となり、薬物有効成分を胃腸液で速やかに溶解して被験者に吸収させる医薬補助剤である。慣用の医薬崩壊剤は、デンプン又はその塩系、セルロース又はその塩系、アルギン酸又はその塩系、ポビドン系等を含む。
【0067】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬崩壊剤は、アルギン酸、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、キトサン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン、クロスポビドン、グアーガム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、コロイダルシリカ、デンプンのいずれか1種又は複数種を含む。
【0068】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬崩壊剤は1種の成分のみからなり、即ちクロスポビドンである。
【0069】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬崩壊剤は複数種の成分からなり、その1つはクロスポビドンであり、残りの成分は低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コロイダルシリカのいずれか1種又は複数種を含み、且つクロスポビドンが医薬崩壊剤(c)の10wt%~90wt%である。
【0070】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は15wt%~90wt%である。
【0071】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は20wt%~90wt%である。
【0072】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬崩壊剤は1種の成分のみからなり、即ち低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0073】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬崩壊剤は複数種の成分からなり、その1つは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースであり、残りの成分はクロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コロイダルシリカのいずれか1種又は複数種を含み、且つ低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが医薬崩壊剤(c)の10wt%~90wt%である。
【0074】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は15wt%~90wt%である。
【0075】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は20wt%~90wt%である。
【0076】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬崩壊剤は1種の成分のみからなり、即ちカルボキシメチルスターチナトリウムである。
【0077】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬崩壊剤は複数種の成分からなり、その1つはカルボキシメチルスターチナトリウムであり、残りの成分はクロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、コロイダルシリカのいずれか1種又は複数種を含み、且つカルボキシメチルスターチナトリウムが医薬崩壊剤(c)の10wt%~50wt%である。
【0078】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は15wt%~50wt%である。
【0079】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は20wt%~50wt%である。
【0080】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬崩壊剤は1種の成分のみからなり、即ちコロイダルシリカである。
【0081】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬崩壊剤は複数種の成分からなり、その1つはコロイダルシリカであり、残りの成分はクロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウムのいずれか1種又は複数種を含み、且つカルボキシメチルスターチナトリウムが医薬崩壊剤(c)の10wt%~50wt%である。
【0082】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は15wt%~50wt%である。
【0083】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は20wt%~50wt%である。
【0084】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物は、下記例示されている範囲のいずれかの量の医薬崩壊剤(c)を含んでもよい。
重量部で0~50部;
重量部で0.5~45部;
重量部で0.5~40部;
重量部で0.5~30部;
重量部で0.5~20部;
重量部で0.5~15部;
重量部で1~15部;
重量部で2~15部。
【0085】
医薬可溶化剤
本明細書では、「医薬可溶化剤」という技術用語は、難溶性薬物有効成分の溶液(生理的条件、通常は胃腸液)での溶解度を高めることで、澄んだ溶液を最大限に形成するための医薬補助剤である。慣用の医薬可溶化剤は、アルキル硫酸又はその塩系、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム系、ハロゲン化アルキルピリジニウム系、シクロデキストリン系、ポリエチレングリコールモノエーテル系、高級脂肪アルコール系、糖アルコール又はその脂肪酸エステル系、グリセリン又はその脂肪酸エステル系等を含む。
【0086】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬可溶化剤は、塩化ベンザルコニウム、安息香酸ベンジル、塩化セチルピリジニウム、シクロデキストリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、レシチン、オレイルアルコール、ポロキサマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタントリステアレート、トリオレイン酸グリセリルのいずれか1種又は複数種を含む。
【0087】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬可溶化剤は1種の成分のみからなり、即ちラウリル硫酸ナトリウムである。
【0088】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬可溶化剤は複数種の成分からなり、その1つはラウリル硫酸ナトリウムであり、残りの成分は塩化セチルピリジニウム、ソルビタントリステアレートのいずれか1種又は複数種を含み、且つラウリル硫酸ナトリウムが医薬可溶化剤(d)の10wt%~90wt%である。
【0089】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は15wt%~90wt%である。
【0090】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は20wt%~90wt%である。
【0091】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物は、下記例示されている範囲のいずれかの量の医薬可溶化剤(d)を含んでもよい。
重量部で0~5部;
重量部で0~3部;
重量部で0~2部;
重量部で0~1部;
重量部で0~0.5部。
【0092】
医薬潤滑剤
本明細書では、「医薬潤滑剤」は狭義上の潤滑剤であり、錠剤(又は顆粒)と打錠機のダイ壁及び/又はパンチとの間の摩擦力を低減することで、打錠の困難さを解消し、且つ錠剤の密度を均一に、表面を平滑にするための医薬補助剤である。慣用の医薬潤滑剤は、高級脂肪酸系、高級脂肪酸塩系、高級脂肪酸グリセリド系、多塩基酸のモノ脂肪アルコールエステル又はその塩系、タルク等を含む。
【0093】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬潤滑剤は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸、パルミチン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルクのいずれか1種又は複数種を含む。
【0094】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬潤滑剤は1種の成分のみからなり、即ちフマル酸ステアリルナトリウムである。
【0095】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬潤滑剤は複数種の成分からなり、その1つはフマル酸ステアリルナトリウムであり、残りの成分はステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸、パルミチン酸のいずれか1種又は複数種を含み、且つフマル酸ステアリルナトリウムが医薬潤滑剤(e)の10wt%~90wt%である。
【0096】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は15wt%~90wt%である。
【0097】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は20wt%~90wt%である。
【0098】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬潤滑剤は1種の成分のみからなり、即ちステアリン酸マグネシウムである。
【0099】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物における医薬潤滑剤は複数種の成分からなり、その1つはステアリン酸マグネシウムであり、残りの成分はフマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸、パルミチン酸のいずれか1種又は複数種を含み、且つステアリン酸マグネシウムが医薬潤滑剤(e)の10wt%~90wt%である。
【0100】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は15wt%~90wt%である。
【0101】
本発明の一つの実施形態においては、上記の範囲は20wt%~90wt%である。
【0102】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物は、下記例示されている範囲のいずれかの量の医薬潤滑剤(e)を含んでもよい。
重量部で0~5部;
重量部で0~4部;
重量部で0.5~4部;
重量部で0.8~3部;
重量部で1~2部。
【0103】
第二の側面では、本発明は、医薬物質、希釈剤、崩壊剤、可溶化剤、潤滑剤を混合するステップを含む上記医薬組成物の製造方法を提供する。
【0104】
第三の側面では、本発明は、上記医薬組成物の、がん治療剤としての使用を提供する。
【0105】
がん及びがん治療剤
本明細書では、「がん」とは、脳腫瘍、鼻咽頭がん、食道がん、胃がん、結腸直腸がん、肝がん、膵臓がん、肺がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、骨腫瘍、血液がん(白血病、リンパ腫、骨髓がん)等を含むすべての悪性腫瘍を指す。「がん治療剤」とは、がんを治療するための医薬組成物又は医薬製剤を言う。
【0106】
本発明の一つの実施形態においては、上記使用におけるがんが肺がんである。
【0107】
一つの好ましい実施形態においては、上記使用におけるがんが非小細胞肺がんである。
【0108】
一つのより好ましい実施形態においては、上記使用におけるがんが進行非小細胞肺がんである。
【0109】
第四の側面では、本発明は、がん治療剤として用いられる上記医薬組成物を提供する。
【0110】
本発明の一つの実施形態においては、上記医薬組成物は肺がんの治療剤として用いられる。
【0111】
一つの好ましい実施形態においては、上記医薬組成物は非小細胞肺がんの治療剤として用いられる。
【0112】
一つのより好ましい実施形態においては、上記医薬組成物は進行非小細胞肺がんの治療剤として用いられる。
【0113】
第五の側面では、本発明は、上記医薬組成物の、がんを治療するための医薬製剤を製造するための使用を提供する。
【0114】
本発明の一つの実施形態においては、上記使用におけるがんが肺がんである。
【0115】
一つの好ましい実施形態においては、上記使用におけるがんが非小細胞肺がんである。
【0116】
一つのより好ましい実施形態においては、上記使用におけるがんが進行非小細胞肺がんである。
【0117】
第六の側面では、本発明は、コアを含む薬物錠剤であって、前記コアが上記医薬組成物を含有し、好ましくは、前記コアがコーティングを含有する薬物錠剤を提供する。
【0118】
コーティング
本明細書では、「コーティング」とは、中間体顆粒又はコア(又は素錠)の外表面に形成された多機能保護層を指す。
【0119】
一つの好ましい実施形態においては、上記薬物錠剤におけるコーティングは、オパドライTM(Opadry(商標))シリーズのフィルムコーティング材料を用いて製造される。
【0120】
第七の側面では、本発明は、上記医薬組成物に含まれる各成分を混合し、乾式造粒、整粒、打錠及びコーティングを経た後に、薬物錠剤を得るステップを含む上記薬物錠剤の製造方法を提供する。
【0121】
第八の側面では、本発明は、上記薬物錠剤の、がん治療剤としての使用を提供する。
【0122】
本発明の一つの実施形態においては、上記使用におけるがんが肺がんである。
【0123】
一つの好ましい実施形態においては、上記使用におけるがんが非小細胞肺がんである。
【0124】
一つのより好ましい実施形態においては、上記使用におけるがんが進行非小細胞肺がんである。
【0125】
第九の側面では、本発明は、がん治療剤として用いられる上記薬物錠剤を提供する。
【0126】
本発明の一つの実施形態においては、上記薬物錠剤は肺がんの治療剤として用いられる。
【0127】
一つの好ましい実施形態においては、上記薬物錠剤は非小細胞肺がんの治療剤として用いられる。
【0128】
一つのより好ましい実施形態においては、上記薬物錠剤は進行非小細胞肺がんの治療剤として用いられる。
【0129】
第十の側面では、本発明は、治療有効量の上記医薬組成物又は上記薬物錠剤をがん患者に投与するステップを含む、がんを治療するための方法を提供する。
【0130】
治療有効量
本明細書では、「治療有効量」とは、(1)特定の疾患、病状又は障害の予防又は治療;(2)特定の疾患、病状又は障害の1種又は複数種の症状の低減、改善又は解消;或いは(3)特定の疾患、病状又は障害の1種又は複数種の症状の発症の予防又は遅延といった効果のいずれか1つを達成できる生物活性物質の使用量を指す。
【0131】
投与
本明細書では、「投与」とは、患者(被験者、生体内/生体外/生体外の細胞、組織又は臓器を含む)に薬物有効成分、プロドラッグ、医薬組成物又は医薬製剤(例えば、本発明の医薬組成物又は医薬製剤)を投与する行為を指す。慣用の投与方法(又は投与経路)は、経口投与、皮膚投与(局所投与、経皮投与等を含む)、経眼投与、経鼻投与、経肺投与、経粘膜投与(口腔内投与、耳投与、経膣投与、経直腸投与等を含む)、注射投与(静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与等を含む)等を含む。
【0132】
本発明の一つの実施形態においては、上記方法における投与が経口投与である。
【0133】
本発明の一つの実施形態においては、上記方法におけるがんが肺がんである。
【0134】
一つの好ましい実施形態においては、上記方法におけるがんが非小細胞肺がんである。
【0135】
一つのより好ましい実施形態においては、上記方法におけるがんが進行非小細胞肺がんである。
【0136】
患者
本明細書では、「患者」とは、特定の疾患を罹患している又は罹患するおそれがある対象(例えば、被験者等全体/マクロな対象と、例えば、生体内/生体外/生体外の細胞、組織又は臓器等局所/ミクロの対象の両方を含む。)を指す。本発明において、患者はヒト患者のみならず、ほかの動物(例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)の患者も含む。
【0137】
本発明の一つの実施形態においては、上記方法における患者は哺乳類患者である。
【0138】
一つの好ましい実施形態においては、上記方法における患者は霊長目哺乳類患者である。
【0139】
一つのより好ましい実施形態においては、上記方法における患者はヒト患者である。
【0140】
以下、具体的な実施例を用いて本発明の構成をさらに説明する。以下の実施例は本発明を解釈・説明するためのものにすぎず、本発明の権利範囲を限定するものではないと理解されるべきである。特に断りのない限り、下記の実施例で使用される装置(例えば、表1に示すもの)、材料及び試薬等はすべて一般の商業ルートを通じて入手できるものである。
【0141】
【0142】
実施例1:規格50mgの一般錠剤
表2に示すレシピで1A~1Cを打錠し、素錠1A~1Cを得た。
【0143】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
a:50mgのC-005遊離塩基に相当。
b:原薬又は原料、又は医薬物質、以下は同じ。
【0144】
プロセス1A~1C:
(1)原料を80メッシュのふるいにかけ、すべての補助剤を60メッシュのふるいにかけておいた。
(2)レシピ量のAPI(C-005は、PCT/CN2015/088643明細書における実施例12に記載された方法に従って製造され、結晶形Eを有するクエン酸塩は、PCT/CN2018/070011明細書における実施例6に記載された方法に従って製造される。)、希釈剤、崩壊剤を秤量し、同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(3)レシピ量の潤滑剤を秤量し、内部添加部分の潤滑剤を上記のジップロックに入れ、均一に混合した。
(4)乾式造粒し、圧力を3MPaとし、フィード速度を10rpmとした。
(5)Comil U5で整粒し、B040G03122*(1016)篩いを使用し、回転速度を2191rpmとした。
(6)顆粒と外部添加部分の潤滑剤を同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(7)φ9mm浅いアーク形パンチで打錠した。プロセス1A中の錠剤の重量が260mg、硬度が30N、メイン圧が8.8KN、回転速度が10rpmであった。プロセス1B中の錠剤の重量が257mg、硬度が30N、メイン圧が9.7KN、回転速度が10rpmであった。プロセス1C中の錠剤の重量が250mg、硬度が30N、メイン圧が9.5KN、回転速度が10rpmであった。錠剤の厚さ、摩損度、崩壊時間を測定した。
【0145】
【0146】
AZD9291と同じように、C-005も顕著なpH依存性溶解度を示すため、複数種の媒体でその溶出状況を考察する必要がある。水、pH1.2の溶液(以下、pH1.2という)、pH4.5の溶液(以下、pH4.5という)及びpH6.8の溶液(以下、pH6.8という)といった4種の媒体を選択して考察した。そのうち、pH6.8は医薬物質が生体内で吸収される際の溶出環境に近く、pH4.5及びpH6.8の条件下での薬物錠剤が15、30、60分間で顕著に改善された薬物溶出レベルを示すため、この2種の媒体での溶出状況はより参考になる。溶出データは、中国薬局方(CP)に記載されたパドル法、具体的にCP2015通則0931の第2方法に従って得られた。
【0147】
溶出媒体の調製方法は下記の通りである。
(1)pH1.2の溶液:45.9mLの塩酸を秤量して6Lの脱気水に入れ、攪拌して均一に混合して得られたもの。(2)pH4.5の溶液:17.8gの醋酸ナトリウムを秤量して6Lの脱気水に入れ、溶解後に、さらに9.5mLの醋酸を加え、攪拌して均一に混合して得られたもの。(3)pH6.8の溶液:40.83gのリン酸二水素カリウム及び5.4gの水酸化ナトリウムを秤量して6Lの脱気水に入れ、攪拌して均一に混合して得られたもの。(4)水:精製水。
【0148】
溶出方法
溶出測定を37℃で実施した。溶解媒体の5.0mlサンプルを0/5/10/15/20/30/45/60/90/120分の時点で回収し、グラスウールシリンジフィルター(AcrodiscグラスウールGxFパーツNo.4529又は同等物)でろ過し、最初の2.5mlを捨てた。312nm波長条件下でのUV分析により定量化した(ACE C18、4.6*250 5um)。通常、溶解結果は3回の繰返し測定数値の平均値とする。水、pH1.2、pH4.5及びpH6.8といった4種の媒体で上記素錠1A~1Cの溶出状況を測定し、その結果を表4及び
図2~4に示す。
【0149】
【0150】
実施例2:規格240mgの一般錠剤
表5に示すレシピ2で打錠し、素錠2を得た。
【0151】
【表6】
a:240mgのC-005遊離塩基に相当。
【0152】
プロセス2(100錠/バッチ):
(1)原料を80メッシュのふるいにかけ、すべての補助剤を60メッシュのふるいにかけておいた。
(2)レシピ量のAPI、可溶化剤、内部添加部分の崩壊剤を秤量し、同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(3)乾式造粒し、圧力を3MPaとし、フィード速度を10rpmとし、ローリング速度を10rpmとした。
(4)24メッシュのふるいを使用して乾燥させて整粒した。
(5)顆粒と希釈剤、外部添加部分の崩壊剤を同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(6)さらに、潤滑剤を同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(7)φ20*10mmカプセル形パンチで打錠した。錠剤の重量が999mg、硬度が130.1Nであった。錠剤の厚さ、摩損度、崩壊時間を測定した。
【0153】
【0154】
水、pH1.2、pH4.5及びpH6.8といった4種の媒体で上記素錠2の溶出状況を測定し、その結果を表7及び
図5に示す。
【0155】
【0156】
表7の結果から分かるように、pH6.8の媒体中で30分間後に溶出プラトーに達し、溶出率が80%程度に達したが、その他の3種の媒体中では同様に30分間後に溶出プラトーに達し、溶出率が85%以上に達した。
【0157】
実施例3:異なる崩壊剤を含有する規格240mgの一般錠剤
表8に示すレシピ3A~3Cで打錠し、素錠3A~3Cを得た。
【0158】
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
a:240mgのC-005遊離塩基に相当。
【0159】
プロセス3A~3C:
(1)原料を80メッシュのふるいにかけ、すべての補助剤を60メッシュのふるいにかけておいた。
(2)レシピ量のAPI、内部添加部分の崩壊剤、内部添加部分の希釈剤を秤量し、同じジップロックに入れ、均一に混合した。次に、60メッシュのふるいを使用し、ふるいに3回かけた。
(3)レシピ量の内部添加部分の潤滑剤を秤量し、(2)でふるいにかけられたものと同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(4)乾式造粒し、圧力を3MPaとし、フィード速度を17rpmとし、ローリング速度を10rpmとした。
(5)24メッシュのふるいにかけた。
(6)レシピ量の外部添加部分の崩壊剤、外部添加部分の希釈剤を秤量し、両者を乾燥顆粒と同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(7)レシピ量の外部添加部分の潤滑剤を秤量し、同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(8)φ20*10mmカプセル形パンチで打錠した。プロセス3A中の錠剤の重量が1000mg、硬度が154.2Nであった。プロセス3B中の錠剤の重量が1000mg、硬度が155.3Nであった。プロセス3C中の錠剤の重量が1000mg、硬度が166.4Nであった。錠剤の厚さ、摩損度、崩壊時間を測定した。
【0160】
【0161】
水、pH1.2、pH4.5及びpH6.8といった4種の媒体で上記素錠3A~3Cの溶出状況を測定し、その結果を表10及び
図6~7に示す。
【0162】
【0163】
表10の結果から分かるように、素錠3A~3Cが4種の媒体においてほとんど20分間後に溶出プラトーに達した。そのうち、素錠3BがpH4.5媒体では15分間で91%溶出し、pH6.8の媒体では20分間で85%溶出し、その後、同様に溶出プラトーに達し、水及びpH1.2媒体では20分間後にもそれぞれ溶出プラトーに達した。
【0164】
実施例4:異なる希釈剤を含有する規格240mgの一般錠剤
本実施例のレシピ4では、レシピ3B中のMCC PH102の代わりに、MCC PH200を希釈剤として用いた。表11に示すレシピ4で打錠し、素錠4を得た。
【0165】
【表12】
a:240mgのC-005遊離塩基に相当。
【0166】
プロセス4:
(1)原料を80メッシュのふるいにかけ、すべての補助剤を60メッシュのふるいにかけておいた。
(2)レシピ量のAPI、内部添加部分の希釈剤、内部添加部分の崩壊剤を秤量し、同じジップロックに入れ、均一に混合した。次に、60メッシュのふるいを使用し、ふるいに3回かけた。
(3)レシピ量の内部添加部分の潤滑剤を秤量し、(2)でふるいにかけられたものと同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(4)乾式造粒し、圧力を3MPaとし、フィード速度を19rpmとし、ローリング速度を20rpmとした。
(5)24メッシュのふるいにかけた。
(6)レシピ量の外部添加部分の崩壊剤、外部添加部分の希釈剤を秤量し、両者を乾燥顆粒と同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(7)レシピ量の外部添加部分の潤滑剤を秤量し、同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(8)φ20*10mmカプセル形パンチで打錠した。錠剤の厚さ、摩損度、崩壊時間を測定した。
【0167】
【0168】
水、pH1.2、pH4.5及びpH6.8といった4種の媒体で上記素錠4の溶出状況を測定し、その結果を表13及び
図8に示す。
【0169】
【0170】
表12及び13の結果から分かるように、素錠3Bに比べ、希釈剤をMCC PH200に変更した素錠4は顆粒の流動性がより高く、より迅速に(約11minから約4minに短縮された。)崩壊した。また、溶出状況も顕著に改善され、4種の媒体でいずれも迅速且つ完全に溶出できた(10min後に溶出プラトーに達することができた。)。
【0171】
実施例5:規格240mgの一般錠剤
表14に示すレシピ5A~5Cで打錠し、素錠5A~5Cを得た。
【0172】
【表15-1】
【表15-2】
【表15-3】
a:240mgのC-005遊離塩基に相当。
【0173】
プロセス5A~5C:
(1)原料を80メッシュのふるいにかけ、すべての補助剤を60メッシュのふるいにかけておいた。
(2)レシピ量のAPI、内部添加部分の崩壊剤、内部添加部分の希釈剤を秤量し、同じジップロックに入れ、均一に混合した。次に、60メッシュのふるいを使用し、ふるいに3回かけた。
(3)レシピ量の内部添加部分の潤滑剤を秤量し、(2)でふるいにかけられたものと同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(4)乾式造粒し、プロセス5A中の圧力を3MPaとし、フィード速度を12rpmとし、ローリング速度を18rpmとし、プロセス5B中の圧力を3MPaとし、フィード速度を22rpmとし、ローリング速度を18rpmとし、プロセス5C中の圧力を3MPaとし、フィード速度を12rpmとし、ローリング速度を18rpmとした。
(5)24メッシュのふるいにかけた。
(6)レシピ量の外部添加部分の崩壊剤、外部添加部分の希釈剤を秤量し、両者を乾燥顆粒と同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(7)φ20*10mmカプセル形パンチで打錠した。錠剤の厚さ、摩損度、崩壊時間を測定した。
【0174】
【0175】
pH4.5及びpH6.8といった2種の媒体中で上記素錠5A~5Cの溶出状況を測定し、その結果を表16及び
図9~10に示す。
【0176】
【0177】
レシピ5A及び5Bに比べ、レシピ5Cには崩壊剤の外部添加部分であるL-HPC及び流動促進剤であるコロイダルシリカが含まれない。表15及び表16の結果から分かるように、レシピ5Cは崩壊時間がレシピ5A及び5Bより少し長かったが、3種の素錠はいずれも10分間後に溶出プラトーに達することができ、三者は溶出状況に顕著な差がなかった。
【0178】
実施例6:異なる使用量の崩壊剤を含む一般錠剤のレシピプロセスに関する研究
表17に示すレシピ6A~6Cで打錠し、素錠6A~6Cを得た。
【0179】
【表18-1】
【表18-2】
【表18-3】
a:240mgのC-005遊離塩基に相当。
【0180】
プロセス6A~6C:
(1)原料を80メッシュのふるいにかけ、すべての補助剤を60メッシュのふるいにかけておいた。
(2)レシピ量のAPI、崩壊剤、内部添加部分の希釈剤を秤量し、同じジップロックに入れ、均一に混合した。次に、60メッシュのふるいを使用し、ふるいに3回かけた。
(3)レシピ量の内部添加部分の潤滑剤を秤量し、(2)でふるいにかけられたものと同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(4)乾式造粒し、プロセス6A中の圧力を3MPaとし、フィード速度を13rpmとし、ローリング速度を18rpmとし、プロセス6B中の圧力を3MPaとし、フィード速度を13rpmとし、ローリング速度を18rpmとし、プロセス6C中の圧力を3MPaとし、フィード速度を12rpmとし、ローリング速度を18rpmとした。
(5)24メッシュのふるいにかけた。
(6)レシピ量の外部添加部分の希釈剤を秤量し、乾燥顆粒と同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(7)レシピ量の外部添加部分の潤滑剤を秤量し、同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(8)国薬龍立製ZP-10A打錠機を用いて、φ20*10mmカプセル形パンチで打錠した。錠剤の厚さ、摩損度、崩壊時間を測定した。
【0181】
【0182】
表18の結果から分かるように、レシピにおける崩壊剤の使用量の増加に伴い、素錠の崩壊時間が徐々に短縮されたが、崩壊剤の使用量が5%以上になった場合、素錠の崩壊時間の変化が徐々に小さくなった。
【0183】
pH4.5及びpH6.8といった2種の媒体中で上記素錠6A~6Cの溶出状況を測定し、その結果を表19及び
図11~12に示す。
【0184】
【0185】
表19の結果から分かるように、pH4.5媒体では、崩壊剤の使用量が8%以上になった場合、素錠は10分間後に溶出プラトーに達し、且つ95%程度溶出したが、pH6.8の媒体では、崩壊剤の使用量が8%以上になった場合、素錠も10分間後に溶出プラトーに達し、同様に85%程度溶出した。
【0186】
実施例7:潤滑剤の添加方法が異なる一般錠剤
表20に示すレシピ7で打錠し、素錠7を得た。
【0187】
【表21】
a:240mgのC-005遊離塩基に相当。
【0188】
プロセス7:
(1)原料を80メッシュのふるいにかけ、すべての補助剤を60メッシュのふるいにかけておいた。
(2)レシピ量のAPI、崩壊剤、内部添加部分の希釈剤を秤量し、同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(3)レシピ量の内部添加部分の潤滑剤を秤量し、(2)でふるいにかけられたものと同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(4)乾式造粒し、圧力を3MPaとし、フィード速度を13rpmとし、ローリング速度を18rpmとした。
(5)24メッシュのふるいにかけた。
(6)レシピ量の外部添加部分の希釈剤を秤量し、乾燥顆粒と同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(7)レシピ量の外部添加部分の潤滑剤を秤量し、同じジップロックに入れ、均一に混合した。
(8)国薬龍立製ZP-10A打錠機を用いて、φ20*10mmカプセル形パンチで打錠した。錠剤の厚さ、摩損度、崩壊時間を測定した。
【0189】
【0190】
表21の結果から分かるように、潤滑剤の内部添加部分の使用量が外部添加部分の使用量に等しい素錠5Cに比べ、素錠7の崩壊時間が2分間程度長くなった。このことから、潤滑剤の内部添加部分が外部添加部分の4倍であるレシピでは、崩壊過程が長くなると分かる。
【0191】
水、pH1.2、pH4.5及びpH6.8といった4種の媒体で上記素錠7の溶出状況を測定し、その結果を表22及び
図13に示す。
【0192】
【0193】
表22の結果から分かるように、潤滑剤の内部添加部分の使用量が外部添加部分の使用量に等しい素錠5Cに比べ、素錠7が4種の媒体でいずれも15分間前後に溶出プラトーに達し、85%以上放出することができ、且つ素錠5Cよりも明らかに優れた溶出効果を示した。
【0194】
実施例8:コーティング錠剤
表23に示すレシピ8A~8Cで製造し、コーティング錠8A~8Cを得た。
【0195】
【表24-1】
【表24-2】
【表24-3】
a:240mgのC-005遊離塩基に相当。
【0196】
プロセス8A~8C:
(1)原料を80メッシュのふるいにかけ、すべての補助剤を60メッシュのふるいにかけておいた。
(2)レシピ量のAPI、崩壊剤、内部添加部分の希釈剤を秤量し、混合機に投入し、回転速度を15rpmとし、10min混合した。
(3)レシピ量の内部添加部分の潤滑剤を秤量し、混合機に投入し、回転速度を15rpmとし、5min混合した。
(4)乾式造粒し、圧力を3MPaとし、フィード速度を9rpmとし、ローリング速度を22rpmとした。1.0mmのスクリーンで整粒し、整粒速度を50rpmとした。
(5)レシピ量の外部添加部分の希釈剤を秤量し、乾燥顆粒とともに混合機に投入し、回転速度を15rpmとし、10min混合した。
(6)レシピ量の外部添加部分の潤滑剤を秤量し、混合機に投入し、回転速度を15rpmとし、5min混合した。
(7)国薬龍立製ZP-10A打錠機を用いて、プロセス8A及び8Bにおいて、φ20*10mmカプセル形パンチで打錠し、プロセス8Cにおいては、φ9mm浅いアーク形パンチで打錠し、素錠8A~8Cを得た。摩損度、崩壊時間を測定した。
(8)オパドライ85G640044型コーティング材料(Colorcon社製、バッチNo.:THL46201、固形分量:15%)を用いて素錠8A~8Cをコーティングした。目標となるコーティング重量増加が3%であり、コーティング錠8Aを得た。溶出状況を測定した。
【0197】
【0198】
pH4.5及びpH6.8といった2種の媒体中で上記コーティング錠8A~8Cの溶出状況を測定し、その結果を表25及び
図14~15に示す。
【0199】
【0200】
表25の結果から分かるように、コーティング錠8A~8Cが2種の媒体のいずれにおいても10~15分間程度で溶出プラトーに達し、少なくとも85%放出することができ、より優れた溶出挙動を示した。
【0201】
比較例:ブレンド・イン・カプセル
最初の研究では、C-005のクエン酸塩と微結晶セルロースを1:2の重量比でブレンドし、不透明で白色、サイズが0#のHPMCカプセルシェルに充填し、ブレンド・イン・カプセルを調製した。カプセル当たり約60mgのC-005遊離塩基を含むように充填し、そのレシピリストを表26に示す。
【0202】
【表27】
a:60mgのC-005遊離塩基に相当
【0203】
pH4.5及びpH6.8といった2種の媒体中で上記ブレンド・イン・カプセルの溶出状況を測定し、その結果を表27及び
図16に示す。
【0204】
【0205】
表27の結果から分かるように、pH6.8の媒体では、30分間後に37%だけの放出となり、60分間後には75%の放出、120分間後になってから85%程度の放出となり、pH4.5媒体では、45分間後に75%の放出、60分間後になってから93%程度の放出となった。上記の実施例中の錠剤に比べ、ブレンド・イン・カプセルの溶出状況が理想的でなく、薬物吸収の吸収量変動及び/又は患者間の変動におけるリスクを低減又は回避できなかった。これに対して、本発明の薬物錠剤は上記の問題を解決でき、その後の医薬品の開発に適している。