(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】搬送装置を備えるレーザー加工機及び成形体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B22F 12/84 20210101AFI20220627BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20220627BHJP
B29C 64/379 20170101ALI20220627BHJP
B29C 64/364 20170101ALI20220627BHJP
B29C 64/371 20170101ALI20220627BHJP
B29C 64/357 20170101ALI20220627BHJP
B29C 64/25 20170101ALI20220627BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20220627BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220627BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220627BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20220627BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20220627BHJP
B23K 26/34 20140101ALI20220627BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20220627BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20220627BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20220627BHJP
B22F 10/32 20210101ALI20220627BHJP
B22F 12/88 20210101ALI20220627BHJP
【FI】
B22F12/84
B29C64/153
B29C64/379
B29C64/364
B29C64/371
B29C64/357
B29C64/25
B29C64/264
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/20
B33Y40/00
B23K26/34
B23K26/21 Z
B28B1/30
B22F10/28
B22F10/32
B22F12/88
(21)【出願番号】P 2020561829
(86)(22)【出願日】2019-05-03
(86)【国際出願番号】 EP2019061461
(87)【国際公開番号】W WO2019211476
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】102018206825.9
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018208652.4
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】321000107
【氏名又は名称】デーエムゲー モリ アディティブ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】アルフレッド ガイスラー
(72)【発明者】
【氏名】カール レヒライター
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202013009787(DE,U1)
【文献】国際公開第2017/208234(WO,A1)
【文献】特開昭61-293603(JP,A)
【文献】特表2018-522134(JP,A)
【文献】特開2017-031505(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0099332(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00- 8/00
B22F 10/00-12/90
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放
射によって材料粉末を連続的な領域へと空間選択的に固化することにより、成形物体を層ごとに製造する加工機(1)であって、
プロセス空間(3)を包囲するプロセスチャンバー(2)と、
アンパック空間(5)を包囲するアンパックチャンバー(4)と、
材料粉末のためのワークテーブル(11a、12a)及び構築空間(11b、12b)をそれぞれ有する、第1の構築シリンダー(11)及び第2の構築シリンダー(12)であって、前記ワークテーブル(11a、12a)は、
それぞれの前記構築空間(11b、12b)内にそれぞれ変位可能である、第1の構築シリンダー(11)及び第2の構築シリンダー(12)と、
前記プロセス空間(3)内の動作位置と前記アンパック空間(5)内のアンパック位置との間で前記構築シリンダー(11、12)を移送する搬送装置(6)と、
を備え、
前記搬送装置(6)は、シール面(14a)を有するガイド(14)を備え、
前記搬送装置(6)は、前記第1の構築シリンダー(11)を前記動作位置から前記アンパック位置に、及び前記第2の構築シリンダー(12)を前記アンパック位置から前記動作位置に、同時に移送するように構成され、
前記プロセスチャンバー(2)及び前記アンパックチャンバー(4)は、実質的に気密に閉鎖することができ、前記動作位置及び前記アンパック位置のそれぞれにおける前記第1の構築シリンダー(11)の前記構築空間(11b)及び前記第2の構築シリンダー(12)の前記構築空間(12b)は、それぞれ、前記プロセスチャンバー(2)及び前記アンパックチャンバー(4)のそれぞれに対して実質的に気密に接続され
、
前記第1の構築シリンダー(11)及び前記第2の構築シリンダー(12)は、前記第1の構築シリンダー(11)及び前記第2の構築シリンダー(12)のそれぞれの上縁部に周方向に配置された膨張可能なシール(13a)をそれぞれ備え、
各膨張可能なシール(13a)は、圧縮空気によって動作して、前記ガイド(14)の前記シール面(14a)に対する圧力によって各構築シリンダー(11、12)を実質的に気密にシールするように構成され、
各膨張可能なシール(13a)は、前記動作位置と前記アンパック位置との間での前記
第1の構築シリンダー(11)及び前記第2の構築シリンダー(12)の同時移送のために圧縮空気を放出するように構成されることを特徴とする、加工機。
【請求項2】
請求項1に記載の加工機(1)であって、前記第1の構築シリンダー(11)及び前記第2の構築シリンダー(12)は、前記搬送装置(6)のキャリア(7)上に配置され、該キャリア(7)は、前記第1の構築シリンダー(11)及び前記第2の構築シリンダー(12)
の対称軸(B1、B2)に対して平行に向けられた回転軸(D)を有する、加工機。
【請求項3】
請求項2に記載の加工機(1)であって、前記搬送装置(6)の前記キャリア(7)は、前記回転軸(D)に対して平行に変位可能である、加工機。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の加工機(1)であって、前記プロセスチャンバー(2)及び前記アンパックチャンバー(4)は、保護ガス雰囲気を生成する手段を備える、加工機。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の加工機(1)であって、前記プロセスチャンバー(2)及び/又は前記アンパックチャンバー(4)は
、負圧を生成する
ための吸引システムを備える、加工機。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の加工機(1)であって、前記アンパックチャンバー(4)は、未固化の材料粉末を回収及び/又はリサイクルする手段を備える、加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射又は粒子放射、特に集束レーザー放射によって、材料粉末を空間選択的に固化することで、連続的な領域を形成することにより、成形体を層ごとに製造する加工機及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な種類の加工機は、特に、選択的レーザー溶融又は選択的レーザー焼結の原理に従って成形体を製造する加工機である。特に、金属、金属合金、プラスチック、又はセラミック材料から作製される材料粉末を、使用及び加工することができる。レーザー放射を用いてワーク又は成形体を加工/製造/生産する様々なタイプの加工機を総括して、「レーザー加工機」又は単に「加工機」という用語を以下で用いる。
【0003】
選択的レーザー溶融又はレーザー焼結の方法により、機械部品、工具、補綴物、宝飾品等の成形体を、対応する成形体の幾何学的記述データに従って、金属製若しくはセラミック材料粉末又はプラスチック粉末から層ごとに構築することによって製造することができる。製造プロセス中、融合される材料粉末が、ワークテーブルに層ごとに塗布(apply:適用、施す)され、幾何学的記述データに応じて、電磁放射又は粒子放射、特に集束レーザー放射に曝露される。この放射は、加熱を生じ、その結果、粉末層の材料粉末の融合又は焼結をもたらし、粉末層の或る特定の領域が固化するようになっている。固化した領域は、塗布された材料粉末層の製造される成形体の断面に対応する。成形体の断面が材料層において固化した後、ワークテーブルは、層厚の分だけ下降され、新たな材料粉末層が塗布される。ここでも再び、成形体の断面を固化することができる。このプロセスは、成形体が層ごとに完全に構築され終わるまで繰り返される。レーザー溶融又はレーザー焼結の動作原理のより正確な記載は、例えば、特許文献1又は特許文献2において見ることができる。
【0004】
ワークテーブルが位置するとともに、材料粉末層がワークテーブルに塗布される空間は、構築空間と呼ばれる。ワークテーブルは、構築空間の床面を形成する。構築空間又はワークテーブルは、通常、丸い又は矩形の断面を有する円筒形状を有する。ワークテーブルを構築シリンダー内に、製造される成形体の断面に対して垂直に下降させることができる最大距離は、成形体の最大高さを決定付ける。
【0005】
材料粉末の複数の層による成形体の製造プロセスが完了した後、成形体を取り出さなければならない。このとき、未固化の材料粉末が成形体から分離し、構築空間から除去される。未固化の材料粉末を除去する際、材料粉末が加工機から出ないようにすることが好ましい。さらに、材料粉末は、高価な材料からなる場合があり、そのため、未固化の材料粉末は可能な限り再使用すべきである。したがって、一般的な種類の加工機は、未固化の材料粉末をリサイクルする装置を備える。
【0006】
多くの加工機に関して、アンパックプロセス(unpacking process:取出しプロセス)は、プロセス空間自体において実行される。このために、プロセス空間は、プロセス空間内にシール状態で到達するためにグローブが取り付けられたアクセス開口を有するプロセスチャンバーによって囲まれ、それにより、加工機の操作者は、グローブを用いて、材料粉末が外部に出ることを不可能にしながら、又は汚染物が外部からプロセス室内に入ることを不可能にしながら、プロセス空間内に到達することができる。しかしながら、アンパックプロセスは、多くの作業時間がかかる場合があり、そのため、加工機をこの時間中に別の成形体の製造のために用いることができなくなる。
【0007】
特許文献3は、ワークの製造のためのワーク製造セクションと、後処理セクションとを有するレーザー溶融のシステムを開示している。ワーク製造セクションのプロセスチャンバー内において、構築チャンバー内に移動することができるワークテーブル(キャリア)が配置される。構築チャンバーは、ワーク製造セクションから取り出し、後処理セクションに移送することができる。後処理セクションは、複数のステーションを備え、搬送装置によって、それらのステーション間で構築チャンバーを搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第98/24574号
【文献】独国特許出願公開第19905067号
【文献】独国実用新案第202013009787号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、電磁放射又は粒子放射によって、材料粉末を空間選択的に固化することで、連続的な領域を形成することにより、成形体を層ごとに製造する、改善された加工機及び改善された方法を提供するという目的に基づく。特に、アンパックプロセスを製造プロセスと同時に実行することを可能にする加工機を提供するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、請求項1に記載の、電磁放射又は粒子放射によって、材料粉末を空間選択的に固化することで、連続的な領域を形成することにより、成形体を層ごとに製造する加工機によって達成される。本発明によれば、本加工機は、第1の構築シリンダーを動作位置からアンパック位置まで移送するとともに、第2の構築シリンダーをアンパック位置から動作位置まで移送するように構成された搬送装置を備える。
【0011】
本加工機は、プロセス空間を包囲するプロセスチャンバーと、アンパック空間を包囲するアンパックチャンバーとを備える。さらに、本加工機は、第1の構築シリンダー及び第2の構築シリンダーを備え、第1の構築シリンダー及び第2の構築シリンダーのそれぞれは、材料粉末のためのワークテーブル及び構築空間を有し、ワークテーブルは、構築空間内にそれぞれ変位可能である。さらに、本加工機は、プロセス空間内の動作位置とアンパック空間内のアンパック位置との間で構築シリンダーを移送する搬送装置を備える。
【0012】
また、本発明による上記目的は、成形体を製造する方法であって、第1の構築シリンダーの構築空間をプロセス空間に接続するステップと、第1の構築空間内に配置されたワークテーブルに材料粉末層を塗布するステップと、電磁放射又は粒子放射によって、材料粉末層の領域を空間選択的に固化するステップと、ワークテーブルを材料粉末層の厚さの分だけ第1の構築空間内に下降させるステップと、成形体が完成するまで、塗布するステップ、固化するステップ、及び下降させるステップを繰り返すステップと、プロセス空間から第1の構築シリンダーを取り出すために、並進運動を行うステップと、第1の構築シリンダーの対称軸に対して平行な回転軸の周りに、第1の構築シリンダーの回転運動を行うステップと、第1の構築空間をアンパック空間に接続するために並進運動を行うステップと、未固化の材料粉末(P)を除去し、リサイクルするステップと、完成した成形体(W)を第1の構築シリンダーから取り出すステップとを含む、方法によって達成される。本発明によれば、第1の構築シリンダーは、プロセス室からアンパック室に移送されると同時に、第2の構築室を有する第2の構築シリンダーは、アンパック室からプロセス室に移送され、それにより、成形体が第1の構築シリンダーから取り出される間に、第2の構築シリンダー内で更なる製造プロセスを実行することができる。
【0013】
個別に又は互いに組み合わせて用いることができる有利な実施形態及び更なる発展形態は、従属請求項の主題である。
【0014】
第1の構築シリンダー及び第2の構築シリンダーは、搬送装置のキャリア上に配置されることが好ましい。キャリアは、例えば、回転式プレート又は回転式本体として構成することができる。特に、キャリアは、第1の構築シリンダー又は第2の構築シリンダーの対称軸に対して平行に向けられた回転軸を有する。したがって、第1の構築シリンダー及び第2の構築シリンダーは、キャリアを回転させることにより、動作位置とアンパック位置との間で同時に移送することができる。したがって、構築シリンダーをキャリア上に共通して配置することにより、構築シリンダーの移送を同時に行う技術的に特に単純かつ効率的な解決策が可能になる。
【0015】
回転軸は、キャリアの中心に配置され、構築シリンダーは、回転軸から等距離に配置されるため、回転軸は、実質的にキャリアの質量中心に配置され、したがって、不均衡を回避することができることが好ましい。
【0016】
搬送装置のキャリアは、特に、回転軸に対して平行に変位可能とすることができる。したがって、キャリア上に配置された構築シリンダーは、回転軸に沿って同時に変位することができ、特に上昇又は下降することができる。これにより、プロセス空間又はアンパック空間に対する構築シリンダーの構築空間の気密接続が可能になる。なぜなら、並進運動により、プロセスチャンバー又はアンパックチャンバーの基部におけるシールされた受取り位置に向かって、構築シリンダーの変位をもたらすことができるためである。構築シリンダーを移送するために、レセプタクルから遠ざかる反対方向におけるキャリアの並進を、最初に行わなければならない。好ましい回転運動に伴って、動作位置とアンパック位置との間の構築シリンダーの移送は、キャリアの下降、回転、及び上昇運動の組合せとして実行することができ、そのため、動作位置とアンパック位置との間の構築シリンダーの移送は、技術的に単純であるが効率的な運動パターンを用いて実行することができる。プロセスチャンバー及びアンパックチャンバーは、実質的に気密に閉鎖可能とすることができる。ここでは、「実質的に(substantially)」という用語は、プロセスチャンバー及びアンパックチャンバーが、当該技術分野において一般的な保護ガスの供給速度よりも保護ガスの拡散速度が著しく低くなるようにシールされることを意味する。さらに、動作位置又はアンパック位置における第1の構築シリンダーの構築空間及び第2の構築シリンダーの構築空間は、それぞれ、プロセスチャンバーに対して実質的に気密に接続することができる。このために、加工機は、特に、プロセスチャンバー又はアンパックチャンバーとの構築空間の気密接続を可能にする好適なシール手段を備える。
【0017】
第1の構築シリンダーの構築空間、第2の構築シリンダーの構築空間、プロセス空間、及びアンパック空間は、それぞれ、構築シリンダーが動作位置とアンパック位置との間で移送される際に、実質的に気密に閉鎖される。このことは、特に、構築シリンダーが動作位置とアンパック位置との間で移送される際に、外気とのガス交換が起こらず、すなわち、外気への保護ガスの損失が起こらないことを意味する。
【0018】
プロセスチャンバー及び/又はアンパックチャンバーは、保護ガス雰囲気を生成する手段を備えることが好ましい。この手段は、例えば、ガス供給ラインを含むことができる。保護ガス雰囲気を生成することにより、材料粉末又は成形体の、大気中の酸素又は他の空気成分との望ましくない反応を防ぐことができる。大気中の酸素との反応は、特にレーザー溶融又はレーザー焼結中に不利となり得る。そのような望ましくない反応は、例えば、純粋な窒素若しくはアルゴン又は別の好適な不活性ガスによる保護ガス雰囲気を構築することによって回避することができる。
【0019】
プロセスチャンバー及び/又はアンパックチャンバーは、正圧又は負圧を生成する手段をそれぞれ備えることができる。「正圧(overpressure)」及び「負圧(underpressure)」という用語は、加工機の近位の通常の大気圧に対するものとして理解される。プロセスチャンバー又はアンパックチャンバー内に正圧を生成することで、周囲空気が入ることによる望ましくない汚染を防ぐことができる。例えば、プロセスチャンバー又はアンパックチャンバーが開放される場合に、埃又は他の粒子がプロセスチャンバー又はアンパックチャンバーに入ることを回避すべきである。一方で、プロセスチャンバー及び/又はアンパックチャンバー内に負圧を生成することができる。これは、粒子、例えば、有害な溶接煙又は材料粉末が、加工機のプロセス空間又はアンパック空間から外部に漏れることを確実にするのに用いることができることが有利である。
【0020】
アンパックチャンバーは、未固化の材料粉末を回収及び/又はリサイクルする手段を備えることが好ましい。この手段は、未固化の材料粉末の吸引装置を含むことができ、この吸引装置によって、成形体を取り出す際に未固化の材料粉末を吸い上げることができる。その後、未固化の材料粉末は再使用することができる。このため、例えば、材料粉末を濾過及び/又は篩分け及び/又は洗浄するプロセスを実行することにより、材料粉末をまずリサイクルすることが必要となり得る。
【0021】
更なる有利な実施形態を、図面に示されている例示的な一実施形態を参照して、以下により詳細に記載する。本発明はこの実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る、集束レーザー放射によって成形体を製造するレーザー加工機の第1の実施形態の斜視図である。
【
図2a】第1の例示的な実施形態に係るレーザー加工機の、構築シリンダーの対称軸及び搬送装置の回転軸を通る断面図である。
【
図2b】
図2aの断面に対して垂直な、
図2aに示されている搬送装置の回転軸を通る断面図である。
【
図3a】第2の例示的な実施形態に係るレーザー加工機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施形態に関する以下の記載では、同じ参照符号は、同じ又は同種の構成部品を表す。
【0024】
図1は、レーザー放射によって材料粉末を連続的な領域へと空間選択的に固化することにより、成形体を製造する加工機1の概略図を示している。加工機1は、加工機フレーム8を備え、加工機フレーム8の上に、プロセス空間3を包囲するプロセスチャンバー2と、アンパック空間5を包囲するアンパックチャンバー4とが配置される。レーザービームを生成するレーザービーム源9が、プロセスチャンバー2上に配置される。プロセスチャンバー2内では、特にレーザー溶融又はレーザー焼結によって材料粉末を空間選択的に固化することにより、成形体を層ごとに構築することができる。レーザー溶融又はレーザー焼結の動作原理は、従来技術において、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0025】
吸引システムによって、閉鎖可能なプロセスチャンバー2内に負圧を生成することができ、それにより、加工機1及びその使用者の周囲を、成形体の製造中に生じる溶接煙又は他の粒子、例えば材料粉末による汚染から保護することができる。プロセスチャンバー2は、プロセス空間3を包囲し、プロセス空間3には、プロセスチャンバードア10を介し
てアクセス可能とすることができる。
【0026】
プロセスチャンバードア10は、加工プロセスに応じて作動させることができるロック機構を備えることができる。これにより、プロセスチャンバードア10が加工プロセスの進行中に開放されることを防ぐことができる。負圧の代わりに、正圧を有する保護ガス雰囲気をプロセスチャンバー2内に構築することもできる。このために、窒素又はアルゴン等の不活性ガスを用いることができる。このため、プロセスチャンバー2は、実質的に気密に閉鎖可能である。
【0027】
一般的なレーザー溶融の加工機において、プロセスチャンバーは、通常、アクセス開口を有し、これにより、使用者が、シールされたグローブによってプロセス空間3内に到達することを可能にする。シールされたグローブによるプロセス空間3内への到達は、特に、完成形状の部片を取り出す際に行われる。しかしながら、
図1に示されている加工機1は、アクセス開口を有せず、2つの覗き窓(viewing windows)のみを有する。本発明によれば、アンパックのプロセスステップは、アンパックチャンバー4内で行われる。このために、より詳細に後述するように、完成形状の部片を伴う構築シリンダーを、アンパックのためにアンパックチャンバー4内に移送する。
【0028】
加工機1は、粉末リサイクル装置を更に備えることができるが、粉末リサイクル装置は、
図1には示されていない。未固化の材料粉末は、粉末リサイクル装置によって、製造プロセス後に再使用されるようにリサイクルすることができる。このために、粉末リサイクル装置は、特に材料粉末吸引装置によって、アンパックチャンバーに動作的に接続することができる。粉末リサイクル装置は、材料粉末用の交換可能な保管容器を備えることができる。
【0029】
搬送装置6は、加工機フレーム8内で、プロセスチャンバー2及びアンパックチャンバー4の下に配置される。搬送装置6は、プロセスチャンバー2内の動作位置からアンパックチャンバー4内のアンパック位置まで、又はその逆に、構築シリンダー11、12を運ぶように機能する。搬送装置6の動作モードは、
図2a及び
図2bを参照してより詳細に後述する。
【0030】
図2aは、本発明に係る加工機1において用いることができる、本発明に係る搬送装置6の第1の例示的な実施形態の断面図を示している。この断面は、搬送装置6の回転軸D並びに構築シリンダー11、12の対称軸B1及びB2を通るものである。また、
図2aは、プロセス空間3への粉末給送部17と、プロセスチャンバー2及びアンパックチャンバー4のそれぞれからの粉末戻り部18とを示している。粉末戻り部18は、戻された材料粉末をリサイクルする粉末リサイクル装置に接続することができる。
【0031】
図2bは、
図2aにおける断面に対して垂直な断面図を示している。回転軸Dは、断面平面にある。昇降装置16は、構築シリンダー11、12に対して回転軸Dの周りに90度オフセットされて配置される2つのばね昇降シリンダー16aを備える。このようにして構成された昇降装置16は、搬送装置のキャリア7が加工機フレーム8に対して均一に昇降されることを可能にする。キャリア7と昇降装置16との間に配置された複数のリニアガイド16bにより、昇降シリンダー16aによってもたらされるキャリア7の昇降運動をガイドする。
【0032】
搬送装置6は、第1の構築シリンダー11及び第2の構築シリンダー12が配置されるキャリア7を備える。ここでは、キャリア7は、いくつかの高さを有する足場様の本体として構成され、構成要素、特に構築シリンダー11、12の精密な機械的配置を可能にする。回転ユニット15は、キャリア7の周りに周方向に配置され、キャリア7の円滑で信
頼性のある回転を可能にする。キャリア7を回転させるために、回転駆動部を回転ユニット15に動作的に接続することができる。回転ユニット15は、静止した加工機フレーム8に対して、回転軸受を介して取り付けることができる。構築シリンダー11、12と(略)同じ高さにおける昇降装置16の配置により、搬送装置6の均一な質量分布ももたらされる。したがって、回転ユニット15の回転軸受に対する機械的応力を小さくすることができる。
【0033】
構築シリンダー11、12は、構築空間11b、12bをそれぞれ包囲する。ワークテーブル11a、12aは、構築シリンダー11、12のそれぞれの中に配置され、構築空間11b、12b内に変位可能である。構築空間11b、12b内でワークテーブル11a、12aを昇降させるために、構築シリンダー11、12は、昇降装置11c、12cをそれぞれ備える。昇降装置11c、12cは、例えば、液圧式駆動部又はボールねじ駆動部を含むことができる。
図2a及び
図2bに示されている第1の例示的な実施形態では、昇降装置11c及び12cは、キャリア7の中央平面上に配置される。
【0034】
図2a及び
図2bの図において、第1の構築シリンダー11は、プロセスチャンバー2内の動作位置に配置されている。第2の構築シリンダー12は、アンパックチャンバー4内のアンパック位置に配置されている。プロセス空間3及びアンパック空間5は、それぞれ、
図2aにおいて断面で示されている。
図2bにおいて、断面平面は、プロセスチャンバー2とアンパックチャンバー4との間に延在し、そのため、アンパックチャンバー4の後壁のみが示されている。第1の構築シリンダー11の場合、ワークテーブル11aは、初期位置に配置されている。
【0035】
最初に、材料粉末の層を、ワークテーブル11aに塗布することができる。このために、加工機は、粉末層を塗布する装置を備え、この装置は、プロセス空間3内に配置され、粉末給送部17に接続される。材料粉末が塗布された後、材料粉末層の領域が集束レーザービームによって固化される。この領域は、構築される成形体の断面に対応する。固化の後、ワークテーブル11aは、材料粉末層の高さの分だけ構築空間11b内に下降される。材料粉末層を塗布する方法ステップ、領域を固化する方法ステップ、及びワークテーブル11aを下降させる方法ステップを繰り返すことにより、成形体を構築することができる。
【0036】
製造プロセスの最後には、未固化の材料粉末に取り囲まれた成形体が、第1の構築シリンダー11の構築空間11b内に位置する。このとき、ワークテーブル11aの位置は、
図2a及び
図2bに示されている第2の構築シリンダー12の位置に対応する。成形体を取り出すために、第1の構築シリンダー11は、搬送装置6によってアンパックチャンバー4内に移送される。
【0037】
第1の構築シリンダー11をアンパックチャンバー4内に移送するために、まず、構築シリンダー11、12が配置されたキャリア7を、昇降装置16によって下降させる。昇降装置16は、例えば、数ミリメートル~数センチメートルのストロークを実行するように構成することができる。キャリア7が下降した後、キャリア7を180度回転させる。このために、搬送装置6は、回転ユニット15による回転が行われる回転軸Dを有する。キャリア7は、回転軸Dの周りに回転可能に取り付けられる。回転軸Dは、構築シリンダー11、12の対称軸B1、B2に対して平行である。回転の後、キャリア7を昇降装置16によって再び上昇させ、構築シリンダー11、12が、プロセス空間3及びアンパック空間5においてこのために設けられた開口と再び同一平面になるようにする。したがって、搬送装置は、第1の構築シリンダー11を動作位置からアンパック位置に、及び第2の構築シリンダー12をアンパック位置から動作位置に、同時に移送することができる。
【0038】
本発明に係る加工機1は、プロセス空間3とは別個のアンパック空間5を有するため、プロセスチャンバー2内で更なる生産プロセスが既に実行されているうちに、完成した成形体を取り出すことができる。アンパックプロセスには多くの時間がかかる場合があるため、そのような加工機の生産性は、別個のアンパック位置を有しない加工機と比較して、著しく増大することができる。さらに、プロセス空間3は、大幅に小さい寸法にすることができ、その結果、より小さなレーザー焦点距離で十分となり得るため、レーザーのために比較的複雑でない光学系を用いることができる。より小さなプロセス空間3は、プロセス空間3内の向上したガスの流れを可能にすることもできる。このガスの流れは、その一方で、有害な溶接煙の除去及び窒素又はアルゴン等の保護ガスの供給を含む。
【0039】
搬送装置6自体の周囲は、外気からシールされない。それにもかかわらず、構築空間11b、12b、プロセス空間3、又はアンパック空間5は、移送中に外気に接触しないものとする。これを確実にするために、搬送装置6は、シール13と、このシールに動作的に接続される側方ガイド14とを備え、シール13及び側方ガイド14はともに、構築空間11b、12b、プロセス空間3、及びアンパック空間5がシールされることを確実にする。第1の例示的な実施形態では、ガイド14は、プロセス空間3及びアンパック空間5の底部を閉鎖する表面の底側に配置される円形フランジとして構成される。シール13は、ガイド14によって摺動可能に支持される。このために、シール13は、例えば、テフロン(登録商標)製の滑り軸受を備えることができる。円形ガイド14により、キャリア7が360度回転することが可能である。
【0040】
ワークテーブル11a、12aは、シールによって構築シリンダー11、12の内壁からシールされることが好ましい。これにより、材料粉末又は保護ガスが外部に漏出することを防ぐことができ、又は、外部からの空気若しくは汚染物が構築空間11b、12b内に入ることを防ぐことができる。
【0041】
図には示されていなくても、加工機1は、加工機1を制御するように構成された制御装置を備えることを理解されたい。特に、制御装置は、粉末層を塗布する装置、粉末リサイクル装置、搬送装置6、及び昇降装置11c、12cを制御する。
【0042】
第1の実施形態では、2つの構築シリンダー11、12は、円形断面を有し、したがって、円形ワークテーブル11a、12aをそれぞれ備える。代替的な実施形態において、この断面は、矩形、特に正方形、多角形、長円形、楕円形とすることもでき、又は非対称の形状とすることもできる。構築空間11b、12bの寸法は、製造される成形体の最大サイズを決定付けることを理解されたい。構築空間の典型的な寸法は、直径又は高さにおいて数百ミリメートルである。
【0043】
図2a及び
図2bに示されている搬送装置6では、回転ユニット15は、周方向の回転軸受を備える。キャリア7の回転は、回転駆動部によって行うことができる。回転ユニット15及びキャリア7は、互いに固定して接続することができる。
【0044】
キャリア7自体は、特に構築シリンダー11、12及び昇降装置16の支持フレームとして機能する本体として構成される。昇降装置16は、キャリア7上で、構築シリンダー11、12とおおよそ同じ高さに配置され、構築シリンダー11、12に対してオフセットされる。回転ユニット15及び昇降装置16のこの配置により、加工機1の操作がより容易になるように、加工機1の作業高さを低減することができる。搬送装置6の機能にとって、軸Dの周りの回転、2つの構築シリンダー11、12のワークテーブル11a、12aの昇降、及び昇降装置16による昇降を互いに独立して行うことができることが重要である。
【0045】
第2の例示的な実施形態、すなわち第1の実施形態の変形が、
図3a及び
図3bに示されている。第2の例示的な実施形態に係る加工機1の主な構成要素は、第1の例示的な実施形態に係る加工機1の構成要素と実質的に対応する。したがって、全ての参照符号を重ねて記載すること、及び同一の構成要素を繰り返し説明することは省略する。
【0046】
第2の実施形態と第1の実施形態との相違点は、第1の構築シリンダー11が動作位置からアンパック位置に移送され、同時に、第2の構築シリンダー12がアンパック位置から動作位置に移送される場合の昇降運動が実質的に不要になることである。これは、構築シリンダー11、12とプロセスチャンバー2との間、又は構築シリンダー11、12とアンパックチャンバー4との間に、開閉可能なシール13aを配置することによって達成される。閉鎖可能なシール13aの好ましい一実施形態は、圧縮空気を印加することによって閉鎖することができる膨張可能なシール13aである。膨張可能なシール13aを開放するには、圧縮空気を制御された状態で放出することができる。このために、シール13aは、例えば、制御可能な弁を備えることができる。
【0047】
図3bは、
図3aに破線で描かれた矩形Aによって識別される領域の詳細図を示している。第1の構築シリンダーの第1のワークテーブル11aの一部を、
図3bの左縁部において見ることができる。第1の例示的な実施形態とは対照的に、構築シリンダー11の壁は、ワークテーブル11aの移動経路よりも短く、それにより、第1のワークテーブル11aは、構築シリンダー11から突出し、
図3bに示されている動作位置において、プロセスチャンバー2の底部と同一平面にある。圧縮空気によって動作することができる膨張可能なシール13aは、ガイド14のシール面14aに対する圧力によってシール13aが構築シリンダー11を実質的に気密にシールするように、構築シリンダー11の上縁部に配置される。第2の構築シリンダー12も同じ様式でシールされる。膨張可能なシール13aは、構築シリンダー11、12の上縁部に沿って周方向に配置され、構築空間11b、12bは、プロセス空間3又はアンパック空間5とともに外部からシールされた空間を提供するために、それぞれシールすることができるようになっている。
【0048】
動作位置とアンパック位置との間での構築シリンダーの交換は、最初に、膨張可能なシール13aから圧縮空気を放出することによって達成することができる。これにより、膨張可能なシール13aの体積を低減し、シール13aとシール面14aとの間の接触を断つようにする。圧縮空気は、例えば、制御可能な弁(図示せず)を介して放出することができる。
【0049】
その後、構築シリンダー11、12又はキャリア7全体を、第1の例示的な実施形態と同様に、回転軸の周りに180度回転させることができる。回転前及び/又は回転後の搬送装置6の昇降動作はもはや必要とされない。したがって、第2の例示的な実施形態の加工機1は、昇降装置16を必要とせず、移送プロセスは、比較的複雑でなくなり、時間節約的に行うことができる。
【0050】
図3bから見て取ることができるように、回転を可能にするためには、ワークテーブル11a及び12aを構築シリンダー11、12の上縁部よりも下に下降させることのみが必要となり得る。この上縁部は、
図3bに詳細に示されているシール面14aの下縁部から僅かな距離にある。回転が行われた後、構築シリンダー11、12を再びシールするために、圧縮空気を用いて膨張可能なシール13aを再び動作させる。
【0051】
回転プロセス中、膨張可能なシール13aは実質的に開放している。周囲環境との空気又はガスの交換を回避するために、回転ユニット15とシール面14aとの間に摺動シール13bを設けることもできる。この摺動シール13bは、回転運動に際してもシール13bの十分な密封性を保証する好適な材料から作製される。
【0052】
第2の例示的な実施形態では、回転ユニット15は、構築シリンダー11、12に固定して接続することができる。回転ユニット15は、更なるシール、例えば、周囲に延在するOリング15aによって、構築シリンダー11、12又はキャリア7に対してシールされる。周方向シール15aは、膨張可能なシール13a及び摺動シール13bの効果を更に向上させることができる。
【0053】
図3bに示されているように、回転ユニット15は、周方向に配置された回転軸受15bによって、ガイド14に対して取り付けられる。例えば、ころ軸受、特にワイヤころ軸受を、回転軸受15bとして用いることができる。これにより、特に、容易な運動、高度なダイナミクス、及び小型の設計を組み合わせることが可能になる。
【0054】
図3bに詳細に示されている回転ユニット15は、図に示されていない回転駆動部に対する機械的な接点として機能する、周方向に延在する環状突出部15cも有する。回転駆動部は、キャリア7全体の回転、したがって構築シリンダー11及び12の回転をもたらすことができる。
【0055】
上記説明、請求項及び図面に開示された特徴は、個々及び任意の組合せの両方において、本発明をその様々な構成で実行する際に意義深くなり得る。
【符号の説明】
【0056】
1 レーザー加工機
2 プロセスチャンバー
3 プロセス空間
4 アンパックチャンバー
5 アンパック空間
6 搬送装置
7 搬送装置のキャリア
8 加工機フレーム
9 レーザービーム源
10 プロセスチャンバードア
11 第1の構築シリンダー
11a 第1のワークテーブル
11b 第1の構築空間
12 第2の構築シリンダー
12a 第2のワークテーブル
12b 第2の構築空間
13 シール
13a 膨張可能なシール
13b 摺動シール
14 ガイド
14a シール面
15 回転ユニット
15a Oリング
15b 回転軸受
15c 環状突出部
16 昇降装置
16a ばね昇降シリンダー
16b リニアガイド
17 粉末給送部
18 粉末戻り部
D 回転軸
B1 第1の構築シリンダーの対称軸
B2 第2の構築シリンダーの対称軸