(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】接着フィルム、これを含む接着フィルム付き積層体、及びこれを含む金属箔積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20220627BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20220627BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220627BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20220627BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20220627BHJP
C09J 125/04 20060101ALI20220627BHJP
C09J 123/26 20060101ALI20220627BHJP
C09J 171/10 20060101ALI20220627BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220627BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20220627BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20220627BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20220627BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20220627BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220627BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C09J7/30
B32B27/38
B32B27/32 101
B32B15/08 J
C09J163/00
C09J125/04
C09J123/26
C09J171/10
C09J11/04
C08L23/26
C08L63/00 A
C08L71/12
C08L15/00
C08K3/36
C08L27/12
(21)【出願番号】P 2021032112
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】10-2020-0025609
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519204054
【氏名又は名称】イノックス・アドバンスト・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INNOX Advanced Materials Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】171,Asanvalley-ro,Dunpo-myeon,Asan-si,Chungcheongnam-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ソン・グン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジャミン・ク
(72)【発明者】
【氏名】ソン・チュ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ミン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ギュ・パク
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/131571(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/230445(WO,A1)
【文献】特開2018-135506(JP,A)
【文献】特開2018-141053(JP,A)
【文献】特開2016-166347(JP,A)
【文献】特開2018-150541(JP,A)
【文献】国際公開第98/056011(WO,A1)
【文献】国際公開第99/003903(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/172109(WO,A1)
【文献】特開2020-002217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
H05K 3/10-3/26,3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、エポキシ樹脂及びフィラーを含む組成物で形成される接着フィルムであって、前記バインダー樹脂は、カルボン酸変性スチレン系エラストマー、カルボン酸変性オレフィン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂を含み、
前記接着フィルムは、硬化後、1GHz~10GHz及び20℃~80℃で測定された誘電率(dielectric constant、Dk)が2.5以下、誘電損失(d
ielectric loss、Df)が0.003以下であり、前記接着フィルムは、硬化後の吸湿率が0.1%以下であ
り、
前記カルボン酸変性スチレン系エラストマーは、前記カルボン酸変性オレフィン系樹脂及び前記ポリフェニレンエーテル系樹脂に比べ、ガラス転移温度が低いものである、接着フィルム。
【請求項2】
前記組成物は、硬化剤を含まないものである、
請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項3】
前記カルボン酸変性オレフィン系樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無
水マレイン酸、無
水イタコン酸、無
水フマル酸のうち1種以上によって変性されたオレフィン系樹脂を含むものである、
請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂中のエポキシ基の総モル数に対する、前記バインダー樹脂中のカルボン酸基の総モル数の比([バインダー樹脂中のカルボン酸基の総モル数]/[エポキシ樹脂中のエポキシ基の総モル数])は、1~2である、
請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項5】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂と、前記カルボン酸変性オレフィン系樹脂とのガラス転移温度差は、100℃~250℃である、
請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項6】
前記カルボン酸変性オレフィン系樹脂は、カルボン酸変性された線状ポリプロピレン系樹脂を含むものである、
請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項7】
前記バインダー樹脂総和100重量部のうち、前記カルボン酸変性スチレン系エラストマーは、1重量部~20重量部、前記カルボン酸変性オレフィン系樹脂は、50重量部~80重量部、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、5重量部~30重量部で含まれるものである、
請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項8】
前記フィラーは、無機ナノシリカとフッ素樹脂フィラーとの混合物を含むものである、
請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項9】
前記バインダー樹脂100重量部に対して、前記エポキシ樹脂を2重量部~18重量部、前記フィラーを1重量部~35重量部で含むものである、
請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項10】
前記接着フィルムは、同一周波数において、硬化後の誘電損失に対する硬化後の誘電率の比(硬化後の誘電率/硬化後の誘電損失)が900以上のものである、
請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項11】
前記接着フィルムは、硬化後のガラス転移温度が50℃~80℃である、
請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項12】
ポリイミド系樹脂フィルム、前記ポリイミド系樹脂フィルムの少なくとも一面に備えられた接着フィルムを備えて、前記接着フィルムは、請求項1~請求項1
1のうちいずれか一項の接着フィルムを含むものである、接着フィルム付き積層体。
【請求項13】
前記接着フィルム付き積層体は、カバーレイフィルムを含むものである、
請求項1
2に記載の接着フィルム付き積層体。
【請求項14】
ポリイミド系樹脂フィルム、前記ポリイミド系樹脂フィルムの少なくとも一面に備えられた接着フィルム、及び前記接着フィルムの一面に備えられた金属箔を備え、前記接着フィルムは、前記ポリイミド系樹脂フィルムと前記金属箔との間に備えられ、
前記接着フィルムは、請求項1~請求項1
1のうちいずれか一項の接着フィルムを備えるものである、金属箔積層体。
【請求項15】
前記金属箔は、銅箔を含むものである、
請求項1
4に記載の金属箔積層体。
【請求項16】
前記金属箔積層体は、軟性回路基板を含むものである、
請求項1
4に記載の金属箔積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着フィルム、これを含む接着フィルム付き積層体、及びこれを含む金属箔積層体に関する。より詳細に本発明は、広範囲な温度及び周波数における誘電率及び誘電損失が低く、吸湿率が低くて、接着性と耐熱性に優れた接着フィルム、これを含む接着フィルム付き積層体、及びこれを含む金属箔積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子製品の集積化、小型化、薄膜化、高密度化、高屈曲化の流れに伴い、より狭い空間でも内装が容易な印刷回路基板(printed circuit board、PCB)の必要性が増大してきた。特に最近、繰り返した屈曲性を有する軟性印刷回路基板(flexible printed circuit board、FPCB)が開発された。軟性印刷回路基板は、スマートフォン、携帯用モバイル電子機器などの技術の発展によって使用が急激に増加しつつ、需要が増えている。
【0003】
通常、軟性回路基板は、基材フィルムとしてポリイミド樹脂などからなる基材フィルムに、金属箔として銅箔が積層されている。基材フィルムと金属箔は、接着フィルムによって互いに接着される。従来の接着フィルムは、ポリイミド系接着剤、アクリロニトリルブタジエンラバー系接着剤などで形成された。しかし、ポリイミド系接着剤、アクリロニトリルブタジエンラバー系接着剤などでは、誘電率と吸湿率を低くするのに限界があった。
【0004】
本発明の背景技術は、韓国公開特許第2016-0083204号などに開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、誘電率、誘電損失及び吸湿率の低い接着フィルムを提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、接着力と耐熱性に優れた接着フィルムを提供することである。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、周波数変化及び温度変化による誘電率と誘電損失の変化率が低い接着フィルムを提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、最低溶融粘度の低い接着フィルムを提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、抵抗が低く、イオンの移動が適正範囲を確保することのできる接着フィルムを提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、本発明の接着フィルムを備える接着フィルム付き積層体及び金属箔積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の接着フィルムは、バインダー樹脂、エポキシ樹脂及びフィラーを含む接着フィルム用組成物で形成され、前記バインダー樹脂は、カルボン酸変性スチレン系エラストマー、カルボン酸変性オレフィン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂を含み、前記接着フィルムは、硬化後、1GHz~10GHz及び20℃~80℃で測定された誘電率(dielectric constant、Dk)が2.5以下、誘電損失(dielectric loss、Df)が0.003以下であり、前記接着フィルムは、硬化後の吸湿率が0.1%以下である。
【0012】
一具体例において、前記接着フィルム用組成物は、硬化剤を含まない。
【0013】
一具体例において、前記カルボン酸変性スチレン系エラストマーは、前記カルボン酸変性オレフィン系樹脂及び前記ポリフェニレンエーテル系樹脂に比べ、ガラス転移温度が低いことがある。
【0014】
一具体例において、前記カルボン酸変性オレフィン系樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無数マレイン酸、無数イタコン酸、無数フマル酸のうち1種以上によって変性されたオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。
【0015】
一具体例において、前記エポキシ樹脂中のエポキシ基の総モル数に対する、前記バインダー樹脂中のカルボン酸基の総モル数の比([バインダー樹脂中のカルボン酸基の総モル数]/[エポキシ樹脂中のエポキシ基の総モル数])は、1~2であってもよい。
【0016】
一具体例において、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂と、前記カルボン酸変性オレフィン系樹脂とのガラス転移温度差は、100℃~250℃であってもよい。
【0017】
一具体例において、前記カルボン酸変性オレフィン系樹脂は、カルボン酸基に変性された線状ポリプロピレン系樹脂を含んでいてもよい。
【0018】
一具体例において、前記バインダー樹脂の総和100重量部のうち、前記カルボン酸変性スチレン系エラストマーは、1重量部~20重量部、前記カルボン酸変性オレフィン系樹脂は、50重量部~80重量部、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、5重量部~30重量部で含まれていてもよい。
【0019】
一具体例において、前記フィラーは、無機ナノシリカとフッ素樹脂フィラーとの混合物を含んでいてもよい。
【0020】
一具体例において、前記バインダー樹脂100重量部に対して、前記エポキシ樹脂を2重量部~18重量部、前記フィラーを1重量部~35重量部で含んでいてもよい。
【0021】
一具体例において、前記接着フィルムは、同一周波数において、硬化後の誘電損失に対する硬化後の誘電率の比(誘電率/誘電損失)が900以上であってもよい。
【0022】
一具体例において、前記接着フィルムは、硬化後のガラス転移温度が50℃~80℃であってもよい。
【0023】
本発明の接着フィルム付き積層体は、ポリイミド系樹脂フィルム及び前記ポリイミド系樹脂フィルムの少なくとも一面に備えられた本発明の接着フィルムを備える。
【0024】
本発明の金属箔積層体は、ポリイミド系樹脂フィルム、前記ポリイミド系樹脂フィルムの少なくとも一面に備えられた接着フィルム、及び前記接着フィルムの一面に備えられた金属箔を備え、前記接着フィルムは、前記ポリイミド系樹脂フィルムと前記金属箔との間に備えられ、前記接着フィルムは、本発明の接着フィルムを備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、誘電率、誘電損失及び吸湿率の低い接着フィルムを提供した。
【0026】
本発明は、接着力と耐熱性に優れた接着フィルムを提供した。
【0027】
本発明は、周波数変化及び温度変化による誘電率と誘電損失の変化率が低い接着フィルムを提供した。
【0028】
本発明は、最低溶融粘度の低い接着フィルムを提供した。
【0029】
本発明は、抵抗が低く、イオンの移動が適正範囲を確保することのできる接着フィルムを提供した。
【0030】
本発明は、本発明の接着フィルムを備える接着フィルム付き積層体及び金属箔積層体を提供した。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施例の接着フィルム付き積層体の断面図。
【
図3】実施例1、比較例1、比較例2の接着フィルムの周波数変化による誘電率と誘電損失を示した図面。
図3における△は実施例1、◇は比較例1、□は比較例2の結果である。
【
図4】実施例1、比較例2の接着フィルムの温度変化による誘電率と誘電損失を示した図面。
図4における○は実施例1、□は比較例2の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を下記の実施例によって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳説する。本発明は、複数の異なる形態に具現することができ、ここで説明する実施例に限定されるものではない。図面における本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分は省略しており、全明細書における同一又は類似の構成要素に対しては、同じ図面符号を付している。図面における各構成要素の長さ、厚さなどは、本発明を説明するために示されたものであり、本発明は、図面に記載の長さ、厚さなどに限定されるものではない。
【0033】
本明細書における数値範囲を記載する際、「X~Y」は、「X以上Y以下(X≦かつ≦Y)」を意味する。
【0034】
本発明の発明者は、バインダー樹脂、エポキシ樹脂及びフィラーを含む接着フィルム用組成物で形成される接着フィルムにおいて、前記バインダー樹脂としてカルボン酸変性スチレン系エラストマー、カルボン酸変性オレフィン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂を必ず含ませることにより、接着フィルムの硬化後の誘電率(dielectric constant、Dk)、誘電損失(dielectric loss、Df)及び吸湿率が著しく低くなることを確認したうえで本発明を完成した。
【0035】
本明細書における「誘電率」、「誘電損失」は、1GHz~10GHz及び20℃~80℃で測定された値を意味する。好ましくは、誘電率、誘電損失は、10GHz及び25℃で測定された値である。
【0036】
下記に詳述するが、本発明の接着フィルムは、半硬化状態(Bステージ)である。
【0037】
本明細書で特に記述しない限り、「硬化後」における「硬化」は、接着フィルムを150℃~200℃で45分~90分間硬化させることを意味する。すなわち、例えば、「硬化後の誘電率」は、接着フィルムを上述した条件で硬化させた後に測定された誘電率を意味する。
【0038】
本発明の接着フィルムは、広範囲な周波数及び広範囲な温度範囲でも、硬化後の誘電率及び誘電損失が低くて、下記に詳述する金属箔積層時、信頼性を高めることができる。
【0039】
一具体例において、接着フィルムは、硬化後の誘電率が2.5以下、例えば、0.1~2.50であってもよい。上記範囲で、接着フィルムが付着する素子に対する静電気又は電気の移動を最小限にすることにより、接着フィルムに対する電気的影響を最小限にすることができる。
【0040】
一具体例において、接着フィルムは、硬化後の誘電損失が0.003以下、例えば、0.0001~0.003であってもよい。上記範囲で、接着フィルムが付着する素子に対する静電気又は電気の移動を最小限にすることにより、接着フィルムに対する電気的影響を最小限にすることができる。
【0041】
本発明の接着フィルムは、上述した誘電率と誘電損失を確保しながらも、周波数変化及び温度変化による誘電率の変化率と誘電損失の変化率が低いことを特徴とする。その結果、広範囲な周波数内でも、均一な誘電率と誘電損失を確保することによって、実用可能性を高めることができ、広範囲な温度内でも、均一な誘電率と誘電損失を確保することによって、接着フィルムの温度変化による信頼性を確保するようにすることができる。
【0042】
一具体例において、接着フィルムは、下記式1の周波数変化量による誘電率の変化率が0.6%以下、例えば、0%~0.6%であってもよくし、下記式2の周波数変化量による誘電損失の変化率が0.01%以下、例えば、0%~0.01%であってもよい。上記範囲で、上述した実用可能性と信頼性を確保することができる:
【0043】
[式1]
誘電率の変化率=|Dk(@10GHz)-Dk(@1GHz)|/|10-1|×100
【0044】
(上記式1において、
Dk(@10GHz)は、硬化後、接着フィルムの周波数10GHzにおける誘電率、
Dk(@1GHz)は、硬化後、接着フィルムの周波数1GHzにおける誘電率)
【0045】
[式2]
誘電損失の変化率=|Df(@10GHz)-Df(@1GHz)|/|10-1|×100
【0046】
(上記式2において、
Df(@10GHz)は、硬化後、接着フィルムの周波数10GHzにおける誘電損失、
Df(@1GHz)は、硬化後、接着フィルムの周波数1GHzにおける誘電損失)
【0047】
通常、接着フィルムの誘電率は、測定周波数が高くなるほど、その値が低くなり、接着フィルムの誘電損失は、測定周波数が高くなるほど、その値が増加するのが一般的である。本発明の接着フィルムは、上述した低い誘電率と誘電損失を確保しながらも、周波数変化における誘電率の変化率と誘電損失の変化率を低くすることにより、下記に詳述する積層体における実用可能性と信頼性を高めることができた。
【0048】
一具体例において、接着フィルムは、下記式3の温度変化量による誘電率の変化率が0.3%以下、例えば、0%~0.3%であってもよく、下記式4の温度変化量による誘電損失の変化率が0.001%以下、例えば、0%~0.001%であってもよい。上記範囲で、上述した実用可能性と信頼性を確保することができる:
【0049】
[式3]
誘電率の変化率=|Dk(@80℃)-Dk(@20℃)|/|80-20|×100
【0050】
(上記式3において、
Dk(@80℃)は、硬化後、接着フィルムの80℃における誘電率、
Dk(@20℃)は、硬化後、接着フィルムの20℃における誘電率)
【0051】
[式4]
誘電損失の変化率=|Df(@80℃)-Df(@20℃)|/|80-20|×100
【0052】
(上記式4において、
Df(@80℃)は、硬化後、接着フィルムの周波数80℃における誘電損失、
Df(@20℃)は、硬化後、接着フィルムの周波数20℃における誘電損失)
【0053】
通常、接着フィルムの誘電率と誘電損失は、測定温度値が高くなるほど、その値が高くなるのが一般的である。本発明の接着フィルムは、上述した誘電率と誘電損失を確保しながらも、温度変化における誘電率の変化率と誘電損失の変化率を低くすることにより、上述した積層体における実用可能性と信頼性を高めることができた。
【0054】
一実施例において、接着フィルムは、同一周波数において、硬化後の誘電損失に対する硬化後の誘電率の比(硬化後の誘電率/硬化後の誘電損失)が900以上、例えば、900~1200であってもよい。上記範囲で、接着フィルムを下記に詳述する積層体に適用する際、接着信頼性を高めて、被着体間に接着性、電気特性を改善することができる。
【0055】
本明細書における「吸湿率」は、接着フィルムに対して、IPC-TM-650 2.6.2.1によって、25℃で24時間浸水(immersion)させて測定された値を意味する。通常、基材フィルムと金属箔を接着させる接着フィルムにおいて、透湿度が測定される。透湿度は、当業者に知られたように、高温高湿の条件で、接着フィルムを放置した後、接着フィルムを通る水分の度合いを測定したものである。他方、本発明の接着フィルムは、接着フィルムを完全に浸水した状態で測定された吸湿率を著しく低くしたことを特徴とする。
【0056】
一具体例において、接着フィルムは、硬化後の吸湿率が0.1%以下、例えば、0%~0.06%であってもよい。上記範囲における部品実装時、大気中から材料内へ流入した水分による悪影響を減らして、各材料間の接着性や電気特性に問題が生じることを防ぐことができる。
【0057】
接着フィルムは、上述した範囲で誘電率、誘電損失及び吸湿率を同時に満たすことができる。よって、接着フィルムを下記に詳述する金属箔積層体に適用する際、接着信頼性を高めて、被着体間に接着性、電気特性を改善することができる。例えば、接着フィルムは、金属箔積層体のように、基材フィルムと金属箔を接着させる用途に使用することができる。これについては、下記に詳述する。
【0058】
本発明の接着フィルムは、上述した電気特性、バリアー特性のほかも、柔軟性を確保することによって、下記に詳述する積層体における基材フィルムと金属板の接着に使用され、特に、軟性印刷回路基板の製造を容易にすることができる。
【0059】
本発明の接着フィルムは、下記に詳述する金属箔積層体に適用されるほど、基材フィルム、例えば、ポリイミドフィルムと金属箔、例えば、銅板に対する剥離強度(peel strength)に優れ、接着信頼性にも優れる。
【0060】
一具体例において、接着フィルムは、ポリイミドフィルム、接着フィルム、ポリイミドフィルムが順次に積層された積層体に対して測定された硬化後の剥離強度が1000gf/cm以上であってもよい。上記範囲で、接着フィルムを下記に詳述する積層体に適用する際、接着信頼性を高めることができる。例えば、前記剥離強度は、2000gf/cm~3000gf/cmであってもよい。
【0061】
他の具体例において、接着フィルムは、ポリイミドフィルム、接着フィルム、金属箔が順次に積層された積層体に対して測定された硬化後の剥離強度が1000gf/cm以上であってもよい。上記範囲で、接着フィルムを下記に詳述する積層体に適用する際、接着信頼性を高めることができる。例えば、前記剥離強度は、1000gf/cm~3000gf/cmであってもよい。本明細書における「剥離強度」は、IPC-TM-650 2.4.8C基準に従って測定された値を意味する。
【0062】
接着フィルムは、硬化後の溶融粘度が最小となる温度は、120℃~150℃、例えば、125℃~135℃であり、このときの溶融粘度は、30000Pa.s~55000Pa.s、例えば、39,000Pa.s~46,500Pa.sであってもよい。上記範囲で、安定した充填性を示し得る。
【0063】
接着フィルムは、硬化後のガラス転移温度(Tg)が50℃~80℃、例えば、50℃~70℃であってもよい。上記範囲で、優れた屈曲性を示し得る。
【0064】
接着フィルムは、下記式5による質量損失比率が5%起こる温度が300℃~500℃、例えば、330℃~450℃であってもよい。上記範囲で、接着フィルムは、耐熱性に優れ、下記に詳述する積層体に使用することができる。
【0065】
[式5]
質量損失比率=|硬化後、接着フィルムの加温後の質量-硬化後、接着フィルムの最初質量|/硬化後、接着フィルムの最初質量×100(%)
【0066】
前記質量損失比率が5%起こる温度は、TGA(thermogravimetric analysis)によって測定することができる。具体的には、接着フィルムの最初質量10mgに対して、最初温度25℃で始めて、昇温速度10℃/分の速度に加温させて測定することができる。
【0067】
接着フィルムは、硬化後の表面抵抗(surface resistivity)が1×106~10×109MΩ、例えば、2×106~10×109MΩであってもよい。接着フィルムは、硬化後の体積抵抗(volume resistivity)が1×107~10×109MΩ.cm、例えば、2×107~10×109MΩ.cmであってもよい。上記範囲で、最適な絶縁効果があり得る。本明細書における表面抵抗、体積抵抗は、それぞれIPC-TM-650 2.5.17.1によって測定することができる。
【0068】
接着フィルムは、厚さが10~200μm、例えば、20~100μmであってもよい。上記範囲で、下記に詳述する積層体に使用することができる。
【0069】
接着フィルムは、85℃、85%相対湿度、500時間下で50Vの電圧印加時、イオンの移動(ion migration)が1×1011Ω以上、例えば、1×1011~1×1013Ωであってもよい。上記範囲で、回路間の耐絶縁効果があり得る。
【0070】
本発明の接着フィルムは、下記に詳述する接着フィルム用組成物によって具現することができる。以下では、本発明の接着フィルム用組成物について説明する。
【0071】
前記組成物は、バインダー樹脂、エポキシ樹脂及びフィラーを含み、前記バインダー樹脂は、カルボン酸変性スチレン系エラストマー、カルボン酸変性オレフィン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂を含む。組成物は、バインダー樹脂としてカルボン酸変性スチレン系エラストマー、カルボン酸変性オレフィン系樹脂及びポリフェニレンエーテル樹脂を必ず含まなければならない。カルボン酸変性スチレン系エラストマー、カルボン酸変性オレフィン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂のうちいずれか一つでもないか、いずれか一つでも、下記に詳述する樹脂のほか、他の種類の樹脂に置換される場合、本発明の効果を十分に具現することができない。
【0072】
一具体例において、バインダー樹脂は、カルボン酸変性スチレン系エラストマー、カルボン酸変性オレフィン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂の3種樹脂のみからなってもよい。
【0073】
本発明の接着フィルム用組成物は、カルボン酸変性スチレン系エラストマー、カルボン酸変性オレフィン系樹脂のそれぞれに含まれたカルボン酸基とエポキシ樹脂の間の反応によって接着フィルムを形成する。これによって、接着フィルム用組成物は、硬化剤を含まない。
【0074】
カルボン酸変性スチレン系エラストマーは、接着フィルム用組成物のうち一成分であって、接着フィルムの接着性と柔軟性及び電気特性を付与する。カルボン酸変性スチレン系エラストマーは、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物のランダム共重合体(random copolymer)、ブロック共重合体(block copolymer)又は交互共重合体(alternating copolymer)を不飽和カルボン酸に変性させたものである。
【0075】
共役ジエン化合物は、炭素数4~炭素数10の共役ジエン化合物が挙げられる。例えば、共役ジエン化合物は、ブタジエン、イソプレン、1、3-ペンタジエン、2、3-ジメチル-1、3-ブタジエンなどが挙げられる。好ましくは、共役ジエン化合物は、ブタジエンが挙げられる。芳香族ビニル化合物は、スチレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジフェニルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無数マレイン酸、無数イタコン酸、無数フマル酸などが挙げられる。
【0076】
一具体例において、カルボン酸変性スチレン系エラストマーは、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体のうち1種以上を含んでいてもよい。好ましくは、カルボン酸変性スチレン系エラストマーは、カルボン酸変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体であってもよく、下記に詳述するカルボン酸変性オレフィン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂と共に含むとき、本発明の効果を良好に具現することができる。
【0077】
カルボン酸変性スチレン系エラストマーは、酸価が5.0~15.0mgCH3ONa/g、例えば、5.0~13.0mgCH3ONa/gであってもよい。上記範囲で、良好な接着性、耐熱性を具現することができる。前記「酸価」は、ASTM D 1613方法により測定することができる。
【0078】
カルボン酸変性スチレン系エラストマーは、前記カルボン酸変性オレフィン系樹脂及び前記ポリフェニレンエーテル系樹脂に比べ、ガラス転移温度が低くてもよい。これによって、上述した本発明の接着フィルムのガラス転移温度に至ることができる。
【0079】
一具体例において、カルボン酸変性オレフィン系樹脂と、カルボン酸変性スチレン系エラストマーとのガラス転移温度差は、50℃~120℃、例えば、50℃~100℃であってもよい。ポリフェニレンエーテル系樹脂と、カルボン酸変性スチレン系エラストマーとのガラス転移温度差は、150℃~300℃、例えば、150℃~250℃であってもよい。
【0080】
カルボン酸変性スチレン系エラストマーは、ガラス転移温度が-80℃~-50℃、例えば、-70℃~-50℃であってもよい。上記範囲で、接着剤を製造した後、柔軟性効果があり得る。
【0081】
カルボン酸変性スチレン系エラストマーは、バインダー樹脂総和100重量部のうち1重量部~20重量部、好ましくは、5重量部~20重量部、さらに好ましくは、5重量部~15重量部で含まれていてもよい。上記範囲で、本発明の誘電率と吸湿率に至ることができ、優れた屈曲性効果があり得る。
【0082】
カルボン酸変性オレフィン系樹脂は、接着フィルム用組成物のうち一成分であって、接着フィルムの接着性と柔軟性及び電気特性を付与する。
【0083】
カルボン酸変性オレフィン系樹脂は、カルボン酸変性された線状ポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。このとき、線状は、直線状又は分岐状ポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよく、好ましくは、直線状ポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。一具体例において、オレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブチレン系樹脂のうち1種以上を含んでいてもよい。好ましくは、オレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂を含んでいてもよく、これは、上述したポリフェニレンエーテル系樹脂と共に含むとき、本発明の効果を容易に具現することができる。
【0084】
カルボン酸変性オレフィン系樹脂は、所定の変性物質、例えば、不飽和カルボン酸又はその無水物によって変性されたポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。不飽和カルボン酸又はその無水物は例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無数マレイン酸、無数イタコン酸、無数フマル酸のうち1種以上を含んでいてもよい。好ましくは、前記変性物質は、マレイン酸無水物であってもよい。
【0085】
カルボン酸変性オレフィン系樹脂は、酸価が0.5~1.5mgCH3ONa/g、例えば、0.51~1.5mgCH3ONa/gであってもよい。上記範囲で、良好な接着性、耐熱性を具現することができる。前記「酸価」は、ASTM D 1613方法により測定することができる。
【0086】
カルボン酸変性オレフィン系樹脂は、ガラス転移温度が5℃~100℃、例えば、10℃~50℃であってもよい。上記範囲で、優れた屈曲性効果があり得る。
【0087】
カルボン酸変性オレフィン系樹脂は、バインダー樹脂総和100重量部のうち50重量部~80重量部、好ましくは、60重量部~80重量部で含まれていてもよい。上記範囲で、本発明の誘電率と吸湿率に至ることができ、接着力効果があり得る。
【0088】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、接着フィルム用組成物のうち一成分であって、接着フィルムの接着性と柔軟性及び電気特性を付与する。
【0089】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、非変性ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテルのうち1種以上を含んでいてもよい。好ましくは、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、非変性ポリフェニレンエーテルを含んでいてもよい。
【0090】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、カルボン酸変性オレフィン系樹脂に比べ、ガラス転移温度の高い種類を使用することができる。これによって、本発明の効果を容易に具現することができる。ポリフェニレンエーテル系樹脂と、カルボン酸変性オレフィン系樹脂とのガラス転移温度差は、100℃~250℃、例えば、100℃~150℃であってもよい。ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ガラス転移温度が100℃超300℃以下、例えば、110℃~200℃であってもよい。上記範囲で、耐熱性効果があり得る。
【0091】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、バインダー樹脂総和100重量部のうち5重量部~30重量部、好ましくは、5重量部~20重量部、10重量部~20重量部で含まれていてもよい。上記範囲で、本発明の誘電率と吸湿率に至ることができ、耐熱性効果があり得る。
【0092】
エポキシ樹脂は、上述したバインダー樹脂、特に、カルボン酸変性オレフィン系樹脂のカルボン酸基と反応して、接着性、耐熱性を高めることができる。
【0093】
エポキシ樹脂は、バインダー樹脂の総和100重量部に対して、2重量部~18重量部、好ましくは、2重量部~10重量部で含まれていてもよい。上記範囲で、本発明の誘電率と吸湿率に至ることができ、接着力効果があり得る。
【0094】
エポキシ樹脂は、2個以上のエポキシ基を有する、当業者に知られた通常のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。例えば、エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、低塩素型エポキシ樹脂、シラン変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多官能性ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂などを含んでいてもよいが、これらに制限されるものではない。好ましくは、エポキシ樹脂は、クレゾールノボラックエポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0095】
エポキシ樹脂は、EEW(epoxide equivalent weight)が100g/eq~300g/eqであってもよい。上記範囲で、本発明の効果を良好に具現することができる。
【0096】
一方、本発明の接着フィルム用組成物は、硬化剤を含まない。本発明の接着フィルムは、エポキシ樹脂のエポキシ基と、上述したバインダー樹脂のうちカルボン酸の反応のみによって接着フィルムを製造することにより、さらなる硬化剤を必要としない。
【0097】
これのために、エポキシ樹脂中のエポキシ基の総モル数に対する、バインダー樹脂中のカルボン酸基の総モル数の比([バインダー樹脂中のカルボン酸基の総モル数]/[エポキシ樹脂中のエポキシ基の総モル数])は、1~2であってもよい。上記範囲で、硬化剤なく、本発明の接着フィルムを具現することができる。
【0098】
フィラーは、無機フィラー、有機フィラーのうち1種以上を含んでいてもよい。好ましくは、フィラーは、無機フィラーと有機フィラーとの混合物を使用することができる。これによって、上述したバインダー樹脂、エポキシ樹脂と組み合わせ時、本発明の吸湿率、誘電率に容易に至ることができる。
【0099】
無機フィラーは、金属、非金属、金属酸化物、非金属酸化物のうち1種以上を含んでいてもよい。例えば、無機フィラーは、シリカ、チタニア、アルミナ、酸化亜鉛、銅、銀のうち1種以上を含んでいてもよい。好ましくは、無機フィラーは、シリカ、例えば、無機ナノシリカを含んでいてもよい。無機フィラーは、平均粒径(D50)が10nm~1000nm、好ましくは、10nm~500nmであってもよい。上記範囲で、耐熱性と接着力が上昇する効果があり得る。
【0100】
有機フィラーは、フッ素樹脂フィラーを含んでいてもよい。フッ素樹脂フィラーは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレンのうち1種以上を含んでいてもよい。好ましくは、有機フィラーは、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィラーを含んでいてもよい。有機フィラーは、平均粒径が1~100μm、好ましくは、5~50μmであってもよい。上記範囲で、収縮率が安定する効果があり得る。
【0101】
無機フィラーと有機フィラーは、本発明の接着剤組成物のうち、特定の含量比率で含まれていてもよい。例えば、無機フィラー100重量部に対して、有機フィラーは200重量部~800重量部、例えば、300重量部~600重量部で含まれていてもよい。上記範囲で、最適な体積収縮効果があり得る。
【0102】
フィラーは、バインダー樹脂100重量部に対して、1重量部~35重量部、例えば、10重量部~30重量部で含まれていてもよい。上記範囲で、誘電率が低くなり得る。
【0103】
本発明の接着フィルム用組成物は、必要に応じてか焼剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、難燃剤などの添加剤、増粘剤のうち1種以上をさらに含んでいてもよいが、これらに制限されるものではない。
【0104】
本発明の組成物は、溶剤をさらに含むことにより、接着フィルムの塗布性を高めることができる。前記溶剤は、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミドのうち1種以上を含んでいてもよいが、これに制限されるものではない。
【0105】
接着フィルムは、上述した接着フィルム用組成物を基材フィルム又は離型フィルムに所定の厚さに塗布して、乾燥及び熱処理することにより、半硬化状態に製造することができる。例えば、接着フィルムは、50℃~170℃で1分~60分間熱処理することにより、半硬化状態に製造することができる。
【0106】
以下では、本発明の一実施例の接着フィルム付き積層体を説明する。
【0107】
本発明の接着フィルム付き積層体は、基材フィルム、基材フィルムの少なくとも一面に備えられた接着フィルムを備えて、前記接着フィルムは、本発明の接着フィルムを含む。本発明の接着フィルム付き積層体は、カバーレイフィルムを含んでいてもよいが、これに制限されるものではない。
【0108】
図1を参照すれば、接着フィルム付き積層体は、基材フィルム10、基材フィルム10の一面に備えられた第1の接着フィルム20及び基材フィルム10の他の一面に備えられた第2の接着フィルム30を備えて、第1の接着フィルム20、第2の接着フィルム30のうち1種以上は、本発明の接着フィルムを含んでいてもよい。
【0109】
基材フィルム10は、ポリイミド樹脂で形成されたフィルムを含む。ポリイミド樹脂は、高耐熱性を提供する樹脂であって、接着フィルム付き積層体をカバーレイフィルムの用途に使用するのに好適であるようにすることができる。基材フィルム10の厚さは、5~100μm、好ましくは、5~50μmであってもよい。上記範囲で、カバーレイフィルムの基材フィルムとして使用することができ、軟性と剛性をいずれも具現することができる。
【0110】
第1の接着フィルム20、第2の接着フィルム30は、それぞれ上述した本発明の接着フィルムであってもよく、第1の接着フィルム20、第2の接着フィルム30のうちいずれか一つのみ本発明の接着フィルムであってもよい。第1の接着フィルム20、第2の接着フィルム30は、半硬化状態、すなわち、Bステージ状態の接着フィルムであってもよい。
【0111】
第1の接着フィルム20、第2の接着フィルム30は、互いに厚さが同一であるか相違してもよく、例えば、上述した本発明の接着フィルムの厚さ範囲であってもよい。
【0112】
以下では、本発明の一実施例の金属箔積層体を説明する。
【0113】
本発明の金属箔積層体は、基材フィルム、基材フィルムの少なくとも一面に備えられた接着フィルム、及び前記接着フィルムの一面に備えられた金属箔を備えて、前記接着フィルムは、本発明の接着フィルムを含む。本発明の金属箔積層体は、印刷回路基板、例えば、軟性回路基板を含んでいてもよい。
【0114】
図2を参照すれば、金属箔積層体は、基材フィルム10、基材フィルム10の一面に備えられた第1の接着フィルム20、第1の接着フィルム20の一面に備えられた第1の金属箔40、基材フィルム10の他の一面に備えられた第2の接着フィルム30、第2の接着フィルム30の一面に備えられた第2の金属箔50、とを備えることができる。
【0115】
基材フィルム10、第1の接着フィルム20、第2の接着フィルム30に対する説明は、上記
図1で説明したとおりである。第1の金属箔40、第2の金属箔50は、銅箔、銀箔、アルミニウム箔、ステンレス箔のうち1種以上を含み、好ましくは、銅箔を含んでいてもよい。第1の金属箔40、第2の金属箔50は同様、銅箔であってもよく、いずれかは、銅箔、他の一つは、銅箔のほか、金属箔であってもよい。第1の金属箔40、第2の金属箔50それぞれの厚さは、同一であるか相違してもよく、例えば、5~200μm、例えば、10~150μmであってもよい。
【実施例】
【0116】
以下では、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、かかる実施例は、単に説明するための目的であり、本発明を制限するものに解釈してはならない。
【0117】
実施例1
カルボン酸変性スチレン系エラストマー(SM300A、東洋紡、酸価:10mgCH3ONa/g)8重量部、カルボン酸変性ポリプロピレン系樹脂(SM040A、酸価:1.0mgCH3ONa/g、東洋紡)64重量部、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPO、-OH値:800mg/KOH/g、サビック)16重量部を混合し、クレゾールノボラックエポキシ樹脂(YDCN1P、EEW:200g/eq、kukdo化学)2.5重量部、無機フィラーとして無機ナノシリカ(R972、平均粒径(D50):17nm、エボニック)5重量部、有機フィラーとしてフッ素樹脂フィラー(PFA、平均粒径(D50):10μm、AGC)20重量部を混合し、溶剤メチルエチルケトン150重量部をさらに添加して、組成物を製造した。下記表1における「-」は、該成分が含まれていないことを意味する。
【0118】
製造した組成物をポリイミドフィルムに所定の厚さでコーティングし、130℃で3分間乾燥及び熱処理して、半硬化状態の接着フィルム(厚さ:25μm)を製造した。
【0119】
実施例2~実施例3
実施例1における各成分の含量を、下記表1のように変更したことを除いては、実施例1と同じ方法により半硬化状態の接着フィルムを製造した。
【0120】
比較例1
ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPO、-OH値:800mg/KOH/g、サビック)6重量部、非ハロゲンエポキシとしてp-Amino Phenol型(jER630、EEW:100g/eq、Mitsubishi Chemical)43重量部、ビフェニルエポキシ樹脂(NC3000H、EEW:290g/eq、日本化薬)21重量部、カルボン酸基含有のアクリロニトリルブタジエンゴム(Nipol1072、-COOH含量:8重量%、日本ゼオン)21重量部、エポキシ樹脂用硬化剤として4、4-ジアミノジフェニルスルホン(DDS、EEW:64g/eq、Sigma-Aldrich)8重量部、硬化促進剤としてウンデシルイミダゾール(C11Z、四国化成)0.2重量部を混合し、溶剤メチルエチルケトン130重量部をさらに添加して、組成物を製造した。
【0121】
製造した組成物をポリイミドフィルムに所定の厚さでコーティングし、130℃で3分間乾燥及び熱処理して、半硬化状態の接着フィルム(厚さ:25μm)を製造した。
【0122】
比較例2
非ハロゲンエポキシp-Amino Phenol型(jER630、EEW:100g/eq、Mitsubishi Chemical)5重量部、非ハロゲン変性ポリイミドアマイド(PIAD200、アラカワ)60重量部、非ハロゲン変性ポリイミドアマイド(PIAD150L、アラカワ)25重量部、エステル変性硬化剤(HPC-8150、DIC)10重量部、硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成)0.05重量部を混合し、溶剤メチルエチルケトン130重量部をさらに添加して、組成物を製造した。
【0123】
製造した組成物をポリイミドフィルムに所定の厚さでコーティングし、130℃で3分間乾燥及び熱処理して、半硬化状態の接着フィルム(厚さ:25μm)を製造した。
【0124】
比較例3
カルボン酸変性スチレン系エラストマー(SM300A、酸価:10mgCH3ONa/g、東洋紡)7重量部、カルボン酸変性されていないポリプロピレン系樹脂(JSS-395N、酸価:0mgCH3ONa/g、湖南石油化学)55重量部、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPO、-OH値:800mg/KOH/g、サビック)14重量部を混合し、クレゾールノボラックエポキシ樹脂(YDCN1P、EEW:200g/eq、kukdo化学)2重量部、無機ナノシリカ(R972、平均粒径(D50):17nm、エボニック)4重量部、フッ素樹脂フィラー(PFA、平均粒径(D50):10μm、AGC)17重量部を混合し、硬化剤(DDS、Sigma-Aldrich)1重量部を混合し、溶剤メチルエチルケトン120重量部をさらに添加して、組成物を製造した。
【0125】
製造した組成物をポリイミドフィルムに所定の厚さでコーティングし、130℃で3分間乾燥及び熱処理して、半分硬化状態の接着フィルム(厚さ:25μm)を製造した。
【0126】
実施例と比較例の接着フィルムを160℃で60分間熱処理して、硬化状態の接着フィルムを製造した。硬化状態の接着フィルムに対して下記物性を評価し、その結果を下記表2、表3、
図3及び
図4に示した。
【0127】
(1)剥離強度(単位:gf/cm):剥離強度は、IPC-TM-650 2.4.8Cに従って評価した。ポリイミド(PI)フィルム/接着フィルム/ポリイミド(PI)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム/接着フィルム/銅箔(Cu)に対して、25℃、剥離角度90゜、剥離速度50mm/minによって剥離強度を評価した。
【0128】
(2)半田付け抵抗(単位:℃/超):半田付け抵抗は、IPC-TM-650 2.4.13Fに従って測定した。ポリイミド(PI)フィルム/接着フィルム/ポリイミド(PI)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム/接着フィルム/銅箔(Cu)に対して、半田付け抵抗を測定した。
【0129】
(3)誘電率(単位:なし)と誘電損失(単位:なし):25℃で周波数10GHzにおけるNetwork Analyzer(MS4642B 36585K、Anritsu Co.)を用いて誘電率と誘電損失を評価した。
【0130】
(4)溶融粘度(単位:Pa.s、@130℃):接着フィルムに対して、硬化後の溶融粘度が最小となる温度である130℃における溶融粘度をARESで評価した。
【0131】
(5)熱膨脹係数(単位:ppm/℃):IPC-TM-650 2.4.41.3によって、TMA(thermomechanical analyzer)を用いてα1、α2を分析した。
【0132】
(6)ガラス転移温度(Tg、単位:℃):接着フィルムに対して、DMA(dynamic mechanical analyzer)を用いて、tanδモジュラスが最大になる温度をガラス転移温度とした。
【0133】
(7)5%質量損失温度(単位:℃):接着フィルムに対して、5%質量損失は、TGA(thermogravimetric analysis)によって分析した。
【0134】
(8)表面抵抗と体積抵抗(各々の単位:MΩ、MΩ.cm):接着フィルムに対して、表面抵抗と体積抵抗は、IPC-TM-650 2.5.17に従って評価した。
【0135】
(9)イオンの移動(ion-migration、単位:Ω):接着フィルムに対して、イオンの移動の特性は、85℃/85RH%/1000時間、50V、L/S=50μm/50μmと評価した。
【0136】
(10)吸湿率(単位:%):接着フィルムに対して、吸湿率は、IPC-TM-650 2.6.2.1Aに従って測定した。
【0137】
(11)周波数変化による誘電率と誘電損失:(3)と同じ方法により誘電率と誘電損失を測定するものの、25℃における周波数を1GHz、3GHz、5GHz、10GHzに変更しながら、誘電率と誘電損失を測定した。
【0138】
(12)温度変化による誘電率と誘電損失:(3)と同じ方法により誘電率と誘電損失を測定するものの、10GHzにおける測定温度を20℃、40℃、60℃、80℃に変更しながら、誘電率と誘電損失を測定した。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
上記表2のように、本発明の接着フィルムは、誘電率と吸湿率が低かったし、上述した本発明の効果をいずれも具現することができる。また、上記表3、
図3、
図4のように、接着フィルムは、誘電率が低い、かつ、周波数、温度変化による誘電率の変化率が低かった。
【0143】
他方、従来のアクリロニトリルブタジエン系接着フィルムである比較例1、ポリイミド系接着フィルムである比較例2、カルボン酸変性されていないオレフィン系樹脂と硬化剤を含む比較例3は、本発明の効果を得ることができなかった。
【0144】
本発明の単純変形ないし変更は、この分野における通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるといえる。