(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20220627BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C3/00 J
(21)【出願番号】P 2021079440
(22)【出願日】2021-05-10
(62)【分割の表示】P 2017115751の分割
【原出願日】2017-06-13
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 大志
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-190315(JP,A)
【文献】米国特許第05963631(US,A)
【文献】特開2013-192685(JP,A)
【文献】特開平08-066491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内の壁面に設置される消火栓装置であって、
内巻きされたホースを収納するホース収納部を有する本体部と、該本体部の前面に設けられた前面パネルとを有する筐体を備え、
前記本体部の背面の全体又は所定高さより下の部分が、上方から下方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部になっており、
該傾斜面部の内面にホースを載置できるサポート部材を1段又は複数段設けたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
トンネル内の壁面に設置される消火栓装置であって、
内巻きされたホースを収納するホース収納部を有する本体部と、該本体部の前面に設けられた前面パネルとを有する筐体を備え、
前記本体部の背面の全体又は所定高さより下の部分が、上方から下方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部になっており、
前記本体部の背面の内面側に、前記内巻きされたホースの下辺部の一列分を載置できるサポート部材を1段又は複数段設けたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項3】
トンネル内の壁面に設置される消火栓装置であって、
内巻きされたホースを収納するホース収納部を有する本体部と、該本体部の前面に設けられた前面パネルとを有する筐体を備え、
前記本体部の背面の全体又は所定高さより上の部分が、下方から上方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部になっており、
該傾斜面部の内面にホースを押し付けることができるサポート部材を1段又は複数段設けたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項4】
トンネル内の壁面に設置される消火栓装置であって、
内巻きされたホースを収納するホース収納部を有する本体部と、該本体部の前面に設けられた前面パネルとを有する筐体を備え、
前記本体部の背面の全体又は所定高さより上の部分が、下方から上方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部になっており、
前記本体部の背面の内面側に、前記内巻きされたホースの上辺部の一列分を押し付けることができるサポート部材を1段又は複数段設けたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項5】
前記サポート部材は、前記本体部の背面の内面に取り付けた板状体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等に設置される消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル等に設置される消火栓装置は、例えば特許文献1に開示されたように、消火栓本体を「トンネル壁面に形成された箱抜き部分」に設置していた。
しかしながら、最近の大口径のトンネルはシールド工法によって構築されることが多く、この場合、トンネルの壁面がトンネルの掘削と同時に鋼製のセグメントで構築されるため、特許文献1に開示されているような箱抜きをすることができない。
【0003】
そのため、シールドトンネルに消火栓装置を設置する場合、トンネル壁面に取り付けることになるが、この場合監視員通路から操作ができる高さに取り付けられる。
ところが、シールドトンネルの壁面は、セグメントがむき出しになっており、湾曲した状態になっている。そのため、矩形箱形の筐体を有する消火栓装置をシールドトンネルの壁面に取り付けようとすると、筐体の下部がシールド壁面と干渉して、消火栓装置が監視員通路側に突出せざるを得なくなり、監視員通路の通行の妨げになる。
【0004】
そこで、本願の出願人は先願である特願2017-83459において、例えばシールドトンネルのようにトンネル壁面が箱抜き出来ないような場合でも、設置状態で前面側に突出するのを抑制できる消火栓装置を得ることを目的として、ホースを収納するホース収納部を有する本体部と、該本体部の前面に設けられた前面パネルとを有する筐体を備え、前記本体部の背面の全体又は所定高さより下の部分が、上方から下方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部になっていることを特徴とする消火栓装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本体部の背面の全体又は所定高さより下の部分が傾斜面部になっており、本体部内に設けられるホース収納部の背面が筐体の背面と共用される場合、ホース収納部の背面も傾斜した形状になり、このようなホース収納部にホースが内巻きされて収納されることになる。内巻きとは、ホース収納部という枠の内側に、枠に対してホースを内側から押し付けるようにして巻いて行く巻き方であり、ホース収納部の背面側から順に最外周を前面側に向かって巻いてゆき、最も前面側にくると、次に、最外周から一段内側に入って、前面側から背面側に向かって巻いてゆき、さらに、最も背面側まで到達すると、さらに内側に入って背面側から前面側に向かって巻いてゆくというのを繰り返す。
【0007】
一般的なホース収納部の背面は垂直壁であり、底部は背面まで延出しているので、ホースの内巻きの開始位置は、最も後方の背面に近接した底部からとなる。
しかしながら、ホース収納部51の背面側が前側に傾斜した傾斜面部53になっている場合には、
図12に示すように、最も後方の背面に近い場所は底面から浮いた状態となり、ホース55の巻き始めの位置が不安定であり、かつ巻き始めの開始位置も定まらない。他方、底面の位置から巻き始めるとすれば、それよりも後方側がデッドスペースとなり、その分だけ筐体の厚みを厚くしなければならず、消火栓装置が監視員通路側に突出することになり、筐体の背面側に傾斜面部を設ける趣旨に反することになる。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、例えばシールドトンネルのようにトンネル壁面が箱抜き出来ないような場合でも、設置状態で前面側に突出するのを抑制でき、かつホース収納部のスペースを有効に活用してホースを収納できる消火栓装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1-1)本発明に係る消火栓装置は、トンネル内の壁面に設置されるものであって、
内巻きされたホースを収納するホース収納部を有する本体部と、該本体部の前面に設けられた前面パネルとを有する筐体を備え、
前記本体部の背面の全体又は所定高さより下の部分が、上方から下方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部になっており、
該傾斜面部の内面にホースを載置できるサポート部材を1段又は複数段設けたことを特徴とするものである。
(1-2)また、トンネル内の壁面に設置される消火栓装置であって、
内巻きされたホースを収納するホース収納部を有する本体部と、該本体部の前面に設けられた前面パネルとを有する筐体を備え、
前記本体部の背面の全体又は所定高さより下の部分が、上方から下方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部になっており、
前記本体部の背面の内面側に、前記内巻きされたホースの下辺部の一列分を載置できるサポート部材を1段又は複数段設けたことを特徴とするものである。
(1-3)また、トンネル内の壁面に設置される消火栓装置であって、
内巻きされたホースを収納するホース収納部を有する本体部と、該本体部の前面に設けられた前面パネルとを有する筐体を備え、
前記本体部の背面の全体又は所定高さより上の部分が、下方から上方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部になっており、
該傾斜面部の内面にホースを押し付けることができるサポート部材を1段又は複数段設けたことを特徴とするものである。
(1-4)また、トンネル内の壁面に設置される消火栓装置であって、
内巻きされたホースを収納するホース収納部を有する本体部と、該本体部の前面に設けられた前面パネルとを有する筐体を備え、
前記本体部の背面の全体又は所定高さより上の部分が、下方から上方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部になっており、
前記本体部の背面の内面側に、前記内巻きされたホースの上辺部の一列分を押し付けることができるサポート部材を1段又は複数段設けたことを特徴とするものである。
(1-5)また、上記(1-1)~(1-4)のいずれかに記載のものにおいて、前記サポート部材は、前記本体部の背面の内面に取り付けた板状体であることを特徴とするものである。
(1)また、本発明に係る消火栓装置は、トンネル内の壁面に設置されるものであって、
ホースを収納するホース収納部を有する本体部と、該本体部の前面に設けられた前面パネルとを有する筐体を備え、
前記本体部の背面の全体又は所定高さより下の部分が、上方から下方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部になっており、
前記本体部の背面の内面側に、ホースを載置できるサポート部材を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、トンネル内の壁面に設置されるものであって、
ホースを収納するホース収納部を有する本体部と、該本体部の前面に設けられた前面パネルとを有する筐体を備え、
前記本体部の背面の全体又は所定高さより上の部分が、下方から上方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部になっており、
前記本体部の背面の内面側に、ホースを押し付けることができるサポート部材を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記サポート部材は、前記本体部の背面の内面に取り付けた板状体であることを特徴とするものである。
【0012】
(4)また、トンネル内の壁面に設置される消火栓装置であって、
ホースを収納するホース収納部を有する本体部と、該本体部の前面に設けられた前面パネルとを有する筐体を備え、
前記本体部の背面の所定高さより下の部分が、背面側から前面側に向かって凹陥して内部に段部が形成され、該段部よりも下方の奥行きが該段部より上方の奥行きよりも短い形状になっており、
前記段部にホースを載置してホースを巻き回できることを特徴とするものである。
【0013】
(5)また、トンネル内の壁面に設置される消火栓装置であって、
ホースを収納するホース収納部を有する本体部と、該本体部の前面に設けられた前面パネルとを有する筐体を備え、
前記本体部の背面の所定高さより上の部分が、背面側から前面側に向かって凹陥して内部に段部が形成され、該段部よりも上方の奥行きが該段部より下方の奥行きよりも短い形状になっており、
前記段部にホースを押し付けてホースを巻き回できることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る消火栓装置は、前記本体部の背面の全体又は所定高さより下の部分が、上方から下方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部になっていることにより、トンネル壁面に箱抜きしないで取り付けた場合でも、設置状態でトンネル壁面より前面側に突出するのを抑制でき、監視員通路の脇に設置した場合には、監視員通路に要求される通行幅を確保することができる。
また、傾斜面部の内面側に、ホースを載置できるサポート部材を設けたことにより、ホース収納部にホースを内巻きする際に、サポート部材にホースを載置して巻き始めることができる。このため、ホース収納部の内部空間を有効利用可能となり、ホース収納部の厚みを薄くでき、ひいては筐体を薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る消火栓装置の斜視図である。
【
図3】
図1に示した消火栓装置の背面側の斜視図である。
【
図4】
図1に示した消火栓装置のホース収納部を説明する説明図である。
【
図5】
図1に示した消火栓装置の設置状態を説明する斜視図である。
【
図6】
図1に示した消火栓装置の設置状態を説明する側面図である。
【
図7】本発明の実施の形態2に係る消火栓装置のホース収納部の説明図である。
【
図8】本発明の実施の形態3に係る消火栓装置の側面図である。
【
図9】
図8に示した消火栓装置の設置状態を説明する側面図である。
【
図10】
図8に示した消火栓装置のホース収納部を説明する説明図である。
【
図11】実施の形態3に係る消火栓装置のホース収納部の他の態様の説明図である。
【
図12】本発明が解決しようとする課題を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る消火栓装置1は、
図1~
図6に示すように、シールドトンネル内のトンネル壁面81(
図5、
図6参照)に設置されるものであって、ホース3を収納するホース収納部5を有する本体部7及び本体部7の前面に設けられた前面パネル9を有する筐体11を備えている。
以下、消火栓装置1を構成する各部について詳細に説明する。
【0017】
<筐体>
本実施の形態における筐体11は、上述のように本体部7と前面パネル9を有し、全体形状は、
図1~
図3に示すように、奥行きの方向の長さが短い(薄い)略直方体形状をしている。
筐体11を奥行きの長さが短い形状にしているのは、シールドトンネルのトンネル壁面81(
図5、
図6参照)に、直接設置した際に、トンネル壁面81より前方への突出を小さくするためである。
【0018】
《本体部》
本体部7は、
図2、
図3に示すように、その背面が、所定高さより下の部分が、上方から下方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部13になっている。
本実施の形態では、所定高さは、背面の下側の1/4~1/3程度であり、これよりも下の部分が、傾斜面部13であり、これより上の部分は垂直面になっている。言い換えれば、本体部7の背面側の上方から所定距離は垂直壁であり、その下方が傾斜面部13となっている。また、本実施の形態の傾斜面部13は平面である。平面にすることで、製作が容易であるという効果がある。
【0019】
本体部7の背面側に傾斜面部13を設けることで、シールドトンネルのトンネル壁面81に壁掛け式で設置するときに、シールドトンネルのトンネル壁面81との干渉を避けて、消火栓装置1のトンネル壁面81からの突出をできるだけ小さくすることができる(
図5、
図6参照)。
【0020】
本体部7の内部には、内巻きに巻き回されたホース3を収納するホース収納部5(
図4参照)及び図示しない消火器収納部が設けられている。
なお、本体部7の内部に設けられる他の主な部品としては、消火栓弁を操作するための操作レバーや、ホース3の先端に設けられた消火ノズルを所定の位置に保持するためのノズルホルダ等がある(図示なし)。操作レバー及びノズルホルダは、後述する筐体11の前面扉15から操作者が操作等できる位置に設ける。
【0021】
《ホース収納部》
ホース収納部5は、
図4に示すように、背面が本体部7の背面パネル7aと共用され、底部5a、天板部5b、前壁部5c及び側壁部(図示なし)からなる枠形状をしている。
そして、ホース収納部5の背面、すなわち本体部7の背面パネル7aの内面側における傾斜面部13には、最も奥側のホース3を載置できるサポート部材としての板状体17を設けている。つまり、板状体17は、傾斜面部13の内面に取り付けられている。
【0022】
板状体17を設けることにより、ホース収納部5にホース3を内巻きする際に、板状体17にホース3を載置して巻き始めることができる。これによって、傾斜面部13の内側からホース3を巻き始めることができ、当該部位もホース収納空間とすることができる。このため、ホース収納部5の厚みを薄くでき、ひいては筐体11を薄くすることができる。
なお、上記ではサポート部材の例として板状体17を例に挙げて説明したが、サポート部材は板状でなくてもよく、その形状は特に限定されずホース3の巻き回をサポートできるものであればよく、例えば棒状の部材でもよい。
【0023】
《前面パネル》
前面パネル9の外形は、本体部7の開口部よりも大きく設定され、前面パネル9の外周部には、本体部7側に向かって屈曲して、本体部7の開口端の周縁を覆う屈曲片部19が全周に亘って設けられている。
屈曲片部19を設けることで、雨水等が本体内部に浸入するのを防止できる。
【0024】
また、前面パネル9には、ホース収納部5の前面側には前面開口部21が設けられ、前面開口部21には前面扉15が設けられている。
また、消火器収納部の前面側には消火器箱前面開口部23が設けられ、消火器箱前面開口部23には横開き式の消火器箱前面扉25が設けられている。
【0025】
前面扉15を開扉することで、操作レバーの操作が可能で、かつノズルホルダに保持されている消火ノズルを取り外してホース3を引き出すことが可能になっている。
また、消火器箱前面扉25を開扉することで、内部に載置されている消火器を取り出すことが可能になっている。
【0026】
なお、前面扉15、消火器箱前面扉25の開放方式は特定のものに限定されるものではなく、前面扉15を引戸式や回動式、あるいは消火器箱前面扉25を下降式(シャッター式)や回動式等種々の方式を採用することができる。
【0027】
また、前面パネル9には、赤色表示灯27、非常時を監視員に知らせるための非常ボタン29、非常ボタン29を押したときに点灯する非常ランプ31が設けられている。
【0028】
次に、上記のように構成された本実施の形態の消火栓装置1の設置方法及び設置状態について
図5、
図6に基づいて説明する。
消火栓装置1は、
図5、
図6に示すように、トンネル壁面81における、車道85に併設された監視員通路83上から操作可能な高さ位置に、ブラケット等の取り付け部材によって固定する。本実施の形態の例では、消火栓装置1の底面を支持する底面支持ブラケット33と、消火栓装置1の背面の上部を支持する背面ブラケット35によって取り付けられている。
なお、底面支持ブラケット33及び背面ブラケット35は、シールドトンネルのトンネル壁面81側に設けて、消火栓装置1の本体部7を固定してもよいし、消火栓装置1側に設けて、シールドトンネル側に固定するようにしてもよい。
【0029】
消火栓装置1をトンネル壁面81に取り付けた状態では、
図6に示すように、監視員通路83とシールドトンネルとの境界部分から消火栓装置1がほとんど突出しない状態に設置することができる。
すなわち、本体部7の下部を傾斜面部13とすることで、シールドトンネルのトンネル壁面81との干渉を避けて消火栓装置1の監視員通路83側への突出を小さくすることができ、監視員通路83に要求される通行幅を確保することができる。
【0030】
また、ホース収納部5の背面、すなわち本体部7の背面パネル7aの内面側における傾斜面部13に板状体17を設けたことにより、ホース収納部5にホース3を内巻きする際、板状体17にホース3を載置して巻き始めることができる。これによって、ホース収納部5の内部空間を有効利用でき、ホース収納部5の厚み、ひいては筐体11を薄くすることができる。
【0031】
なお、上記の説明では、本体部7の背面の下部側の一部を傾斜面部13にした例を示したが、背面の上端から下端に至る全体を傾斜面部13にしてもよい。
このようにすることで、設置状態において、シールドトンネルのトンネル壁面81に沿って設置が可能になる。
また、上記の説明では、傾斜面部13が平面であったが、シールドトンネルのトンネル壁面81の湾曲に沿うような湾曲面にしてもよい。
湾曲面とすることで、設置状態でシールドトンネルのトンネル壁面81との干渉をより効果的に避けることができる。
【0032】
また、上記の例では、傾斜面部13の内面に板状体17を設けているが、その取付位置が背面パネル7aの垂直壁の内面であってもよく、本体部7の背面の内面側の適切な位置に板状体17を設けることで、同様の効果を得ることができる。
さらに、板状体17の数、すなわち高さ方向の段数は1段に限られず、複数段を設けるようにしてもよい。傾斜面部13の長さが長く、その結果傾斜面部13の奥行き方向の長さが長い場合には、板状体17を複数段設けるのが好ましく、これによってホース収納空間の有効利用ができる。
【0033】
なお、実施の形態1では、シールドトンネルのトンネル壁面81に消火栓装置1を設けるものとして説明したが、本発明の消火栓装置1はシールドトンネル以外のトンネル壁面に取り付けることもできる。例えば、シールド工法によらないトンネルの施工方法としては、山岳工法等が挙げられ、この場合、一般的には消火栓装置を埋め込む箱抜きを設けることが多いが、本発明の消火栓装置1であれば、箱抜きを設けなくても設置することができるので、トンネルの施工の手間が省ける。
また、竣工時に消火栓装置を設けなかったトンネルに後から消火栓装置を監視員通路83上に設置する場合でも、監視員通路83の歩行スペースを確保しつつ、消火栓装置を設置することができる。
【0034】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、本体部7の背面の下側の一部を傾斜面部13にしたものであったが、本実施の形態2では、
図7に示すように、本体部7の背面パネル7aの所定高さより下の部分が、背面側から前面側に向かって凹陥して内部のホース収納部37に段部39が形成されるようにしたものである。段部39よりも下方の奥行き方向の長さが段部39よりも上方よりも短い形状になっているため、本体内部のホース収納部37において、段部39に最も奥側のホース3を載置してホース3の巻き始めることができる。
【0035】
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、消火栓装置をトンネル壁面81に取り付けた状態で、監視員通路83とシールドトンネルとの境界部分から消火栓装置がほとんど突出しない状態に設置することができ、かつ最も奥側のホース3を載置できる段部39を設けたことにより、ホース収納部37にホース3を内巻きする際に、段部39にホース3を載置して巻き始めることができる。このため、ホース収納部37の内部空間を有効利用することが可能となり、ホース収納部37の厚みを薄くでき、ひいては筐体11を薄くすることができる。
また、段部39は本体部7の背面パネル7aによって形成されているので、別途サポート部材を設ける必要がなく、製作が容易であるという効果もある。
【0036】
なお、段部39を設ける場合においても、実施の形態1で説明した板状体17の場合と同様に複数段設けるようにしてもよく、これによってホース収納部37の内部空間をより有効利用できる。
【0037】
[実施の形態3]
実施の形態1、2においては、本体部7の背面の全体又は所定高さより下の部分が傾斜面部13又は段部39になっているものを示したが、本実施の形態の消火栓装置41は、
図8、
図9に示すように、本体部7の背面の所定高さより上の部分が、下方から上方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部13になっているものである。
つまり、
図8、
図9のものは、本体部7における背面側の下端から所定距離は垂直壁であり、その上方が傾斜面部13になっている。
【0038】
背面の形状をこのようにすることで、
図8に示すように、トンネル壁面81が監視員通路83から垂直に立ちあがって、その後湾曲するような場合において、設置状態でトンネル壁面81との干渉を効果的に避けることができる。
【0039】
本体部7の背面の形状を
図8、
図9に示すようにした場合、ホース収納部43は、
図10に示すように、サポート部材としての板状体17を、背面パネル7aの内面側における傾斜面部13の下端及び高さ方向中程に設けている。
板状体17を設けることで、ホース3を巻く際に、矩形状に巻き回される上辺となる部分を板状体17に押しつけやすくなるので、ホース3を巻く作業を容易にすることができる。
板状体17を設ける位置が限定されないのは、実施の形態1と同様である。
【0040】
なお、本実施の形態の消火栓装置41においても、傾斜面部13を平面のみならず湾曲面にしてもよい。
また、
図8、
図9に示す例は、本体部7の背面の所定高さより上の部分を傾斜面部13にしたものであるが、本体部7の背面の全体を下方から上方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部13にしてもよい。この態様のものは、例えばトンネル壁面81が監視員通路83から内側に湾曲して立ち上がるような場合に好適である。
この場合においても、傾斜面部13は平面でも湾曲面でもよい。
【0041】
さらに、本体部7の背面の形状は、上下から所定範囲の部分において、上側では上方に向かう方向でかつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部13になっており、下側では下方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部13になっているようにしてもよい(
図11参照)。
背面の形状をこのようにすることで、例えばトンネル径が小さい、あるいは消火栓装置の高さ方向の長さが長い等の場合であっても、消火栓装置の背面の上下部とトンネル壁面81との干渉を効果的に避けることができる。
【0042】
本体部7の背面の形状を上記のようにした場合、
図11に示すように、ホース収納部45はサポート部材としての板状体17を、例えば背面パネル7aの内面側における傾斜面部13の下端及び高さ方向中程に設けるようにすればよい。
【0043】
なお、本体部7の背面の形状を、所定高さより上の部分が、背面側から前面側に向かって凹陥して内部に段部が形成され、該段部よりも上方の奥行きが該段部より下方の奥行きよりも短い形状にしてもよく、この場合、段部にホースを押し付けるようにして巻き回することでホースの巻き回が容易になる。
また、本体部7の背面の形状を、高さ方向の中央に垂直壁を有し、垂直壁の上端に背面側から前面側に向かって凹陥して内部に段部が形成され、垂直壁の下端にも背面側から前面側に向かって凹陥して内部に段部が形成されるような形状にしてもよく、この場合、段部に載せてホースを巻き始め、また段部にホースを押し付けるようにして巻き回することでホースの巻き回が容易になる。
【0044】
上記の実施の形態1~3においては、ホース収納部5、37、43、45の背面が本体部7の背面パネル7aと共用するものであったが、ホース収納部5、37、43、45を本体部7とは独立したホースバケットによって構成してもよい。この場合、ホースバケットの背面側の形状は、本体部7の背面側の形状に沿うような形状にしてもよく、あるいは本体部7の背面形状が実施の形態1、3で示したような傾斜面部13の場合において、ホースバケットの背面側を実施の形態2で示したような段部39を有する形状にしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
<実施の形態1>
1 消火栓装置
3 ホース
5 ホース収納部
5a 底部
5b 天板部
5c 前壁部
7 本体部
7a 背面パネル
9 前面パネル
11 筐体
13 傾斜面部
15 前面扉
17 板状体
19 屈曲片部
21 前面開口部
23 消火器箱前面開口部
25 消火器箱前面扉
27 赤色表示灯
29 非常ボタン
31 非常ランプ
33 底面支持ブラケット
35 背面ブラケット
<実施の形態2>
37 ホース収納部
39 段部
<実施の形態3>
41 消火栓装置
43、45 ホース収納部
<従来例>
51 ホース収納部
53 傾斜面部
55 ホース
<監視員通路>
81 トンネル壁面
83 監視員通路
85 車道