IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーエスエム アイピー ホールディング ビー.ブイ.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】レニウム含有薄膜の原子層堆積
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20220627BHJP
   C23C 16/06 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C23C16/455
C23C16/06
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021157797
(22)【出願日】2021-09-28
(62)【分割の表示】P 2017231579の分割
【原出願日】2017-12-01
(65)【公開番号】P2022000544
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】62/429,527
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/448,211
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/516,282
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512144771
【氏名又は名称】エーエスエム アイピー ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(72)【発明者】
【氏名】ハマライネン ヤニ
(72)【発明者】
【氏名】リタラ ミッコ
(72)【発明者】
【氏名】レスケラ マルック
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05577263(US,A)
【文献】米国特許第05169685(US,A)
【文献】特開2004-346401(JP,A)
【文献】特開2007-046105(JP,A)
【文献】特開平04-340254(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0101130(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 - 16/56
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にレニウム元素薄膜を堆積する方法であって、
前記方法は、2つ以上の逐次堆積サイクルを含み、各堆積サイクルは、前記基材を気相レニウム前駆体及び気相第2の反応物質と接触させることであって、前記気相レニウム前駆体の種が前記基材の表面上に吸着し、前記気相第2の反応物質が前記基材の表面上に吸着された前記気相レニウム前駆体からのレニウム含有種と反応して、レニウム元素を形成するように接触させることを含み、
前記方法は、原子層堆積(ALD)プロセスであり、
前記第2の反応物質は、カルコゲンを含まず、
前記基材を前記気相レニウム前駆体と接触させる場合、前記基材は、他の金属、半金属、メタロイド前駆体と接触させない、
及び、前記薄膜は、10~500マイクロオームcmの抵抗率を有するレニウム元素薄膜である、方法。
【請求項2】
前記レニウム前駆体は、ハロゲン化レニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の反応物質は、水素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の反応物質は、窒素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の反応物質は、NH、N、NO、及びNのうちの1つ以上を含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の反応物質は、プラズマ反応物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の反応物質は、各堆積サイクルの間、連続的に流れる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
2つ以上の前記堆積サイクルは、300~500℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記薄膜は、不純物として20at%未満の水素及び5at%未満のCを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記薄膜は、不純物として5at%未満のClを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記薄膜は、90%を超えるステップカバレッジで三次元構造上に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記薄膜は、ゲートスタックの仕事関数金属として機能する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記薄膜は、金属キャッピング層として機能する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記薄膜は、三次元構造の充填層として機能する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
反応チャンバー内の基材上にレニウム元素薄膜を堆積させる、1つ又は複数の堆積サイクルを含む周期的蒸着方法であって、前記方法は、
前記基材を第1の気相レニウム前駆体と接触させること、及び
前記基材を第2の気相反応物質と接触させることであって、前記第2の気相反応物質はカルコゲンを含まないこと、を含み、
前記方法は、前記基材を前記第1の気相レニウム前駆体及び前記第2の気相反応物質と交互に逐次接触させる原子層堆積(ALD)プロセスであり、
1つ又は複数の前記堆積サイクルは、それぞれレニウム元素を堆積し、
前記レニウム元素薄膜は、10~500マイクロオームcmの抵抗率を有する、方法。
【請求項16】
前記薄膜は、不純物として20at%未満の水素及び5at%未満のCを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1つ又は複数の前記堆積サイクルは、300~500℃の温度で実施される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2016年12月2日に出願された米国特許出願第62/429,527号、2017年1月19日に出願された第62/448,211号、及び2017年6月7日に出願された第62/516,282号の優先権を主張し、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、概ね、金属性レニウム及び二硫化レニウム等のレニウム含有薄膜を形成する等の原子層堆積方法に関する。
【背景技術】
【0003】
レニウム薄膜は、様々な異なる用途に使用される。例えば、金属性レニウム膜は、触媒、高温超合金、超電導用途及びマイクロエレクトロニクス用途において使用され得る。対照的に、二硫化レニウムは、3Dバルク形態においてさえ、2D材料と同様に働くことが示されている。したがって、二硫化レニウムは、トライボロジー、他の低摩擦用途、太陽電池用途、並びに量子コンピューティング及び超高速データ処理における用途を見出すことができる。
【発明の概要】
【0004】
レニウム含有薄膜を、蒸着プロセス、例えば、原子層堆積(ALD)又は逐次若しくはパルス化学蒸着(CVD)プロセス等、により堆積させることができる。いくつかの実施形態では、金属性レニウム含有薄膜が堆積される。いくつかの実施形態では、硫化レニウム薄膜が堆積される。いくつかの実施形態では、窒化レニウムを含む薄膜を堆積させる。例えば、ハロゲン化レニウム前駆体を用いて、周期的蒸着プロセスによりレニウム含有薄膜を堆積させることができる。レニウム含有薄膜は、例えば、2D材料として、論理デバイス内のチャネル材料として、ゲートスタック内の仕事関数金属として、金属キャッピング層、例えば銅、コバルト若しくはタングステンキャッピング層等として、又はビア、トレンチ若しくは他の構造等の3D構造のコンタクト金属層として若しくは充填層として使用されることができる。
【0005】
一態様によれば、基材上にレニウムを含む薄膜を堆積させる方法が提供される。この方法は、各サイクルが反応空間内において基材を気相レニウム前駆体及び気相の第2の反応物質と接触させることを含む、1つ又は複数の堆積サイクルを含み得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の堆積サイクルが逐次実施される。この方法は、原子層堆積法、又はパルス若しくは逐次化学蒸着法であってもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、第2の反応物質はカルコゲンではない。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は酸素も硫黄も含まない。
【0007】
いくつかの実施形態では、基材を、気相レニウム前駆体と接触させる場合、基材を他の金属前駆体とも、半金属前駆体とも、メタロイド前駆体とも全く接触させない。
【0008】
いくつかの実施形態では、基材を、単一のレニウム化合物を含むレニウム前駆体と接触させ、かつ基材を、金属、半金属及び金属元素を含むいずれの他の化合物とも同時には接触させない。
【0009】
いくつかの実施形態では、基材を、混合物ではないレニウム前駆体と接触させ、かつ基材を、金属、半金属及び金属元素を含むいずれの他の反応物質とも同時には接触させない。
【0010】
いくつかの実施形態では、堆積させる薄膜は、レニウム元素又は窒化レニウム(ReN)を含む。いくつかの実施形態では、堆積させる薄膜は、レニウム元素及び窒化レニウムの両方を含む。しかし、いくつかの実施形態では、薄膜は窒化レニウムを含まない。いくつかの実施形態では、薄膜は不純物として20at%未満の水素及び5at%未満のCを含む。いくつかの実施形態では、薄膜は90%を超えるステップカバレッジで三次元構造上に堆積される。
【0011】
いくつかの実施形態では、レニウム前駆体は、ハロゲン化レニウム、例えばReCl又はReF等である。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は窒素を含み、例えば、NH、NO又はNを含み得る。いくつかの実施形態では、第2の反応物質はプラズマ反応物質である。例えば、第2の反応物質は、H及び/又は希ガス等の反応ガス中で生成されたプラズマを含み得る。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は酸素を含まない。
【0012】
いくつかの実施形態では、堆積サイクルは約100~600℃又は約250~約500℃の堆積温度で実施される。
【0013】
いくつかの実施形態では、薄膜は、約10~500マイクロオームcmの抵抗率を有する金属性レニウム薄膜である。
【0014】
別の態様によれば、反応チャンバー内の基材上にレニウム含有薄膜を堆積させる周期的蒸着方法が提供される。1つ又は複数の堆積サイクルは、基材を第1の気相レニウム前駆体及び第2の気相反応物質と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、基材を第1の気相レニウム前駆体及び第2の反応物質と、交互に逐次接触させる原子層堆積法である。過剰の前駆体又は反応物質は、接触工程の間に、任意の反応副生成物と共に反応空間から除去され得る。いくつかの実施形態では、所望の厚さのレニウム含有薄膜が基材上に堆積されるまで、2回以上の逐次堆積サイクルが実施される。いくつかの実施形態では、レニウム含有薄膜は、金属性レニウム、窒化レニウム、硫化レニウム、酸化レニウム又はそれらの混合物を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、この方法は、原子層堆積法、又は逐次若しくはパルス化学蒸着法である。
【0016】
いくつかの実施形態では、この方法は約250~約500℃の堆積温度で実施される。気相レニウム前駆体は、例えば、ハロゲン化レニウム、例えばReCl又はReF等、を含み得る。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は、反応ガス、例えば、H又はHと希ガスとの組み合わせ等、の中でプラズマを生成することにより形成された1つ又は複数の反応種を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、レニウム含有薄膜はReS等の硫化レニウム膜であり、第2の反応物質は硫黄を含む。いくつかの実施形態では、硫黄前駆体は、水素及び硫黄を含む。いくつかの実施形態では、硫黄前駆体はアルキル硫黄化合物である。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は、1つ又は複数の硫黄元素、HS、(CHS、(NHS、((CHSO)、及びHを含む。いくつかの実施形態では、硫化レニウム薄膜は二次元材料である。いくつかの実施形態では、硫化レニウム薄膜は、論理デバイス内の高移動度チャネル材料として機能し得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、硫化レニウム薄膜は、約10nm未満、又は更に約5nm未満の厚さを有する。いくつかの実施形態では、ReSの20分子層以下、又はReSの10分子層以下を形成するために、堆積サイクルを逐次繰り返す。いくつかの実施形態では、ReSの約3分子層未満が堆積する。
【0019】
いくつかの実施形態では、硫化レニウムを、0.2~1オングストローム/秒の成長速度で堆積させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、ALDにより金属性レニウム膜を堆積する方法を一般的に例示するプロセスフロー図である。
図2図2は、ALDにより二硫化レニウム膜を堆積する方法を一般的に例示するプロセスフロー図である。
図3図3は、Si基材上に150℃~500℃の堆積温度で成長させた金属性レニウム膜のGIXRDパターンを示す。総計1000サイクル行った。
図4図4は、Si基材上に300℃~500℃の堆積温度で成長させた金属性レニウム膜のFESEM画像を示す。総計1000サイクル行った。
図5図5は、Si基材上に300℃~400℃の堆積温度で成長させた金属性レニウム膜のFESEM画像を示す。総計100サイクル行った。
図6図6は、レニウム膜の成長速度を堆積温度の関数として例示する。各堆積において1000サイクル行った。
図7図7は、400℃におけるAl上のを、ReClのパルス長の関数として例示する。
図8図8は、400℃におけるAl上のレニウム薄膜の成長速度を、NHのパルス長の関数として例示する。
図9図9は、400℃でAl上に成長させたレニウム薄膜の成長速度を、NHの流量の関数として例示する。
図10図10は、400℃でAl上に成長させたレニウム薄膜の膜厚を例示する。
図11図11は、Al上に成長させたレニウム薄膜の成長速度を、堆積温度の関数として例示する。
図12図12は、400℃でAl膜上に成長させたレニウム薄膜の成長速度及び抵抗率を、ReClのパルス長の関数として例示する。
図13図13は、400℃でAl上に成長させたレニウム含有薄膜の成長速度及び抵抗率を、NHのパルス長の関数として例示する。
図14図14は、400℃でAl上に成長させたレニウム薄膜の成長速度及び抵抗率を、NHの流量の関数として例示する。
図15図15は、400℃でReCl及びNHを用いてAl上に成長させたレニウム薄膜の厚さ及び抵抗率を、堆積サイクル数の関数として例示する。
図16図16は、400℃でReCl及びNHを用いてAl上に成長させたレニウム薄膜のGIXRDパターンを、堆積サイクル数の関数として示す。
図17図17は、図15に示すような様々な堆積サイクル数において、ReCl及びNHを用いて400℃でAl上に成長させたレニウム薄膜のFSEM画像を示す。
図18図18は、Al上に成長させた窒化レニウム及びレニウム金属膜の成長速度及び抵抗率を、堆積温度の関数として示す。
図19図19は、Al上に成長させた窒化レニウム及びレニウム金属膜のGIXRDパターンを、堆積温度の関数として示す。
図20図20は、250℃~500℃で堆積させたレニウム金属及び窒化レニウム膜の膜厚(EDX)及び表面粗さ(AFM)を示す。
図21-1】図21は、Al上に成長させたレニウム金属及び窒化レニウム膜のAFM画像(2ミクロン×2ミクロン)を、温度の関数として示す。
図21-2】同上。
図22図22は、様々な堆積温度でAl上に成長させたレニウム含有膜のFESEM画像を示す。
図23図23は、TOF-ERDAにより分析された250℃~500℃で堆積させたレニウム含有膜の元素組成、不純物含有量及び化学量論を示す。
図24図24は、Si基材上に150~500℃で成長させた硫化レニウム膜のGIXRDパターンを示す。総計1000サイクル行った。
図25図25は、プラスチック袋の表面との接触による外観の変化後に150℃で堆積させた硫化レニウム膜のFESEM画像を示す。
図26図26は、硫化レニウム膜の成長速度を堆積温度の関数として例示する。各堆積において1000サイクル行った。
図27図27は、1000サイクルでSi基材上に150~500℃で成長させた硫化レニウム膜のFESEM画像を示す。
図28図28は、自然酸化物で覆われたSi上及びALD成長させたAlの出発表面基材上に、300℃で成長させた硫化レニウム膜のGIXRDパターンを示す。総計1000サイクル行った。
図29図29は、1000サイクルで、自然酸化物で覆われたSi上及びALD成長させたAlの表面上に、300℃で堆積させた硫化レニウム膜のFESEM画像を示す。
図30図30は、400℃におけるAl上の硫化レニウム膜の成長速度を、ReClのパルス長の関数として例示する。
図31図31は、Al上の硫化レニウム膜の成長速度を、HSのパルス長の関数として例示する。
図32図32は、様々なHSのパルス長を用いて堆積させた膜のFESM画像を示す。
図33図33は、ReCl及びHSの1秒パルス並びに1秒パージで、400℃でAl上に堆積させた硫化レニウム膜の厚さの増加を示す。
図34図34は、図33のように堆積サイクル数を変えて、400℃でAl上に堆積させた硫化レニウム膜のGXIRDパターンを示す。
図35図35は、図33のように堆積サイクル数を変えて、400℃でAl上に堆積させた硫化レニウム膜のFSEM画像を示す。
図36図36は、様々な堆積サイクル数で堆積させたレニウム膜の(EDXにより算出された)膜厚及び(AFMにより算出された)表面粗さを示す。
図37図37は、Al膜上に成長させた硫化レニウム膜の成長速度を、堆積温度の関数として示す。
図38図38は、図37のように堆積させた硫化レニウム膜のGXIRDパターンを、堆積温度の関数として示す。
図39図39は、図37のように堆積させた硫化レニウム膜のFSEM画像を、堆積温度の関数として示す。
図40図40は、TOF-ERDAにより測定された120℃~500℃で堆積させた硫化レニウム膜の元素組成、不純物含有量及び化学量論を示す。
図41図41は、XPSにより測定された、120℃~500℃で堆積させた硫化レニウム膜の元素組成、不純物含有量及び化学量論を示す。
図42図42は、ALD ReS膜のFESEM画像である。
図43図43は、図42のALD ReS膜のTEM画像である。
図44図44A~Dは、トレンチ構造内に堆積させた硫化レニウム膜のFSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
レニウム含有薄膜を、気相堆積プロセス、例えば原子層堆積(ALD)タイプのプロセス及び化学蒸着(CVD)タイプのプロセス等、により基材上に堆積させることができる。いくつかの実施形態では、蒸着プロセスは、レニウム含有材料、例えば金属性レニウム、窒化レニウム(ReN)、二硫化レニウム(ReS)等の硫化レニウム、酸化レニウム、又はそれらの混合物、を堆積させることができる。いくつかの実施形態では、レニウム含有薄膜は、窒化レニウム、又はレニウムとReNとの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、レニウム含有薄膜は、窒化レニウムを含まない。
【0022】
いくつかの実施形態では、堆積プロセスは、本明細書に記載の第1の気相レニウム前駆体を、本明細書に記載の第2の気相反応物質と組み合わせて使用する。いくつかの実施形態では、第2の気相反応物質は酸素を含まない。いくつかの実施形態では、第2の気相反応物質は、NH等の窒素、又はHS等の硫黄を含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、蒸着プロセスは、基材を、ハロゲン化レニウム等の気相レニウム前駆体、及び1つ又は複数の追加の気相反応物質と接触させることを含む。例えば、いくつかの実施形態では、金属性レニウム薄膜等のレニウム含有薄膜を、基材をハロゲン化レニウム等の気相レニウム前駆体及び第2の気相反応物質と交互に逐次接触させることを含むALDプロセスにより、堆積させることができる。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は酸素を含まない。いくつかの実施形態では、第2の反応物質はカルコゲンを含まない。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は、NH等の窒素を含み得る。いくつかの実施形態では、レニウム金属膜が堆積される。いくつかの実施形態では、窒化レニウム(ReN)、又はReと窒化レニウムとの混合物が堆積され得る。いくつかの実施形態では、二硫化レニウム膜等の硫化レニウム膜が堆積される。このような膜を、例えば、基材をReCl等の気相ハロゲン化レニウム及びHS等の気相硫黄含有反応物質と、交互に逐次接触させることを含むALDプロセスにより、堆積させることができる。いくつかの実施形態では、酸化レニウム膜を堆積させることができる。
【0024】
レニウム含有膜を堆積し得る適切な基材材料は、絶縁材料、誘電材料、導電材料、金属性材料、結晶材料、エピタキシャル、ヘテロエピタキシャル、及び/又は酸化物のような単結晶材料を含み得る。例えば、基材は、Al、サファイア、シリコン、酸化シリコン、又はAlN等の絶縁窒化物を含み得る。更に、基材材料及び/又は基材表面は、当業者によって選択され、その上に二次元結晶成長を強化、増加、又は最大化することができる。いくつかの実施形態では、レニウム含有薄膜又は材料を堆積させる基材の表面は、Si、Ge、III-V化合物、例えばGaAs及びInGaAs、並びにII-VI化合物等の半導体材料を含まない。いくつかの実施形態では、レニウム含有薄膜又は材料を堆積させる基材の表面は、絶縁材料以外の材料を含んでもよく、又は絶縁材料以外の材料のみからなってもよい。
【0025】
レニウム含有膜を堆積させる蒸着プロセスは、典型的には、例えばALDタイプ又はCVDタイプのプロセスにおいて、2つ以上の反応物質の連続的な供給を含む。ALDタイプのプロセスは、前駆体化学物質の制御された、典型的には自己制御的な表面反応に基づいている。気相反応は、前駆体を交互に逐次反応チャンバーに供給することにより回避される。気相反応物質は、例えば反応物質パルス間の反応チャンバーから過剰の反応物質及び/又は反応副生成物を除去することにより、反応チャンバー内で互いに分離される。これは、排気工程及び/又は不活性ガスパルス若しくはパージを用いて達成することができる。いくつかの実施形態では、基材を、不活性ガス等のパージガスと接触させる。例えば、過剰の反応物質及び反応副生成物を除去するために、反応物質パルス間で基材をパージガスと接触させることができる。
【0026】
CVDタイプのプロセスは、典型的には、2つ以上の反応物質間の気相反応を含む。反応物質は、反応空間若しくは基材に、又は部分的に若しくは完全に分離されたパルスで、同時に供給され得る。基材及び/又は反応空間を加熱して、ガス状反応物質間の反応を促進し得る。いくつかの実施形態では、反応物質は、所望の厚さを有する薄膜が堆積されるまで提供される。いくつかの実施形態では、所望の厚さを有する薄膜を堆積させるために、周期的CVDタイプのプロセスを複数のサイクルで使用することができる。周期的CVDタイプのプロセスでは、反応物質を、重なり合わないか、又は部分的に若しくは完全に重なり合うパルスで反応チャンバーに供給し得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、レニウム含有薄膜の堆積プロセスは、自己制御的ではない1つ又は複数の工程を有する。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反応物質は、基材の表面上で少なくとも部分的に分解される。したがって、いくつかの実施形態では、プロセスは、CVD条件に近いプロセス条件方式で、又は場合によっては完全にCVD条件で動作し得る。いくつかの実施形態では、逐次又はパルスCVDプロセスが利用される。いくつかの実施形態では、レニウムを含む材料は、反応物質が基材の表面から除去されるパージ又は除去工程によって、レニウム前駆体及び1つ又は複数の追加の反応物質の複数のパルスが分離されるパルスCVDプロセスにより堆積される。例えば、基材は、反応物質パルス間にパージガスに曝されてもよい。いくつかの実施形態では、基材を、レニウム前駆体パルスと後続の反応物質パルスとの間にパージガスと接触させる。いくつかの実施形態では、基材を、各反応物質パルスの後にパージガスと接触させる。
【0028】
いくつかの実施形態では、ALDプロセスを、少なくとも部分的なCVDプロセスであるように変更することができる。いくつかの実施形態では、部分的なCVDプロセスは、1つ又は複数の前駆体の少なくとも部分的な分解及び/又は2つ以上の反応物質の少なくとも部分的な重なりを含み得る。いくつかの実施形態では、ALDプロセスを、逐次又はパルスCVDプロセスに変更することができる。逐次又はパルスCVDプロセスは、対応するALDプロセスとして、同じ前駆体及び同じ反応条件、例えば温度及び圧力等を利用し得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、ALDプロセスは、反応物質の重複パルス又は部分的に重なり合うパルスを使用するように変更される。いくつかの実施形態では、(反応器に応じて)0.1秒未満等の極めて短いパージ又は除去時間を使用するようにALDプロセスを変更する。いくつかの実施形態では、非常に長いパルス時間又は連続パルス時間を使用するようにALDプロセスが変更される。例えば、いくつかの実施形態では、ALDプロセスは、少なくとも1つの反応物質パルスの後に、パージも除去も全く行わないように変更される。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体パルスの後にパージしない。いくつかの実施形態では、第2の反応物質パルスの後にパージしない。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体パルスの後にも第2の前駆体パルス後にも、パージしない。
【0030】
要するに、レニウム含有膜が堆積される基材は、反応チャンバー内に装填され、一般的に減圧下で適切な堆積温度に加熱される。ALDタイプのプロセスの場合、堆積温度は前駆体の熱分解温度未満に維持されるが、反応物質の凝縮を回避し、所望の表面反応のための活性化エネルギーを提供するのに十分高いレベルに維持される。もちろん、任意の所定の堆積プロセスの適切な温度ウィンドウは、レニウム含有膜が堆積される表面及び関与する反応物質種を含む様々な要因に依存するであろう。いくつかの実施形態では、以下により詳細に説明するように、堆積温度は約500℃未満又は約450℃未満である。
【0031】
いくつかの実施形態では、いくつかのCVDタイプのプロセスのように、堆積温度は、1つ又は複数の反応物質の分解温度よりも高くてもよい。いくつかの実施形態では、堆積温度は、レニウム前駆体の分解温度より高いが、膜の合理的な表面制御成長を維持するのに十分に更に低い。例えば、いくつかのこのような実施形態では、レニウム含有膜の成長速度は、1堆積サイクル当たりで材料の約1単層以下である。いくつかの実施形態では、堆積サイクル成長速度は、1サイクル当たり堆積される材料の約1単層の約50%以下、好ましくは約25%未満、より好ましくは約10%未満とすることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、第2の前駆体が堆積プロセス全体にわたって、連続的に又は実質的に連続的に反応空間を通って流れることができる間、レニウム前駆体を間欠的に基材に接触させることができる。例えば、基材がレニウム前駆体と接触している間、反応空間を通る第2の前駆体の流量を減少させ得る。第2の前駆体が連続的に流れることができるいくつかの実施形態では、レニウム前駆体のパルス当たりの膜の成長速度は、堆積される材料の約1単層以下である。第2の前駆体が連続的に流れるいくつかの実施形態では、レニウム前駆体のパルス当たりの成長速度は、堆積される材料の1単層の約50%以下、好ましくは約25%未満、より好ましくは約10%未満である。
【0033】
ALDタイプのプロセスのいくつかの実施形態では、基材の表面を気相の第1のレニウム前駆体と接触させる。いくつかの実施形態では、気相の第1のレニウム前駆体のパルスが、基材を含む反応空間に供給される。いくつかの実施形態では、基材は、気相の第1のレニウム前駆体を含む反応空間に移動される。好ましくは、第1のレニウム前駆体の種の約1単層以下が自己制御で基材の表面上に吸着されるように、条件を選択する。適切な接触時間は、特定の状況に基づいて当業者が容易に決定することができる。過剰な第1の反応物質及び反応副生成物がある場合には、不活性ガスでパージすることにより、又は第1の反応物質の存在から基材を移動することにより、それらを基材の表面から除去する。
【0034】
過剰な反応物質の除去は、反応空間の内容物の一部を排気すること、及び/又は反応空間をヘリウム、窒素、又は他の不活性ガスでパージすることを含み得る。いくつかの実施形態では、パージすることは、不活性キャリアガスを反応空間に流し続けながら、反応性ガスの流れを止めることを含み得る。
【0035】
パージとは、例えば、真空ポンプを用いて反応チャンバーを排気することにより、及び/又は反応チャンバー内のガスをアルゴン若しくは窒素等の不活性ガスで置換することにより、気相前駆体及び/又は気相副生成物を基材の表面から除去することを意味する。典型的なパージ時間は約0.05~20秒であり、約0.2~10秒、又は約0.5~5秒であることもできる。しかし、非常に高いアスペクト比の構造若しくは複雑な表面形態を有する他の構造が必要な場合、又は高度な共形ステップカバレッジが必要な場合、又はバッチ反応器等の異なる反応器タイプが使用される場合等、必要に応じて他のパージ時間が利用され得る。
【0036】
基材の表面は、その後、気相の第2の気体反応物質と接触する。第2の反応物質は、基材上に吸着された第1の反応物質からのレニウム含有種と反応して、レニウム含有材料を形成する。
【0037】
いくつかの実施形態では、第2の気体反応物質のパルスが、基材を含む反応空間に供給される。気相の第2の気体反応物質は、反応チャンバーの入口から出口まで実質的に連続した流れで反応チャンバー内に供給され得る。いくつかの実施形態では、反応チャンバーからの出口流、例えばポンプラインは閉じられていない。いくつかの実施形態では、反応チャンバーからの出口流、例えば、反応チャンバーからポンプラインへの流れ、更にポンプの前のポンプラインを通る流れを、実質的に止めないが、制限することができる。いくつかの実施形態では、基材は、気相の第2の反応物質を含む反応空間に移動される。所望の曝露期間の後、基材を、反応物質を含む空間から移動することができる。
【0038】
表面反応の過剰な第2の反応物質及び気体の副生成物がある場合には、これらを基材の表面から除去する。いくつかの実施形態では、反応物質の滞留時間は存在しない。
【0039】
接触させる工程及び除去する工程は、各サイクルが典型的にレニウム含有材料の約1単分子層以下を残しながら、所望の組成と厚みのレニウム含有薄膜が基材上に選択的に形成されるまで繰り返される堆積サイクルを形成する。
【0040】
第1の気相レニウム前駆体を接触させる工程及び除去する工程を、第1の前駆体段階、レニウム前駆体段階、又はレニウム段階ということができる。第2の気相反応物質を接触させる工程及び除去する工程を、第2の前駆体段階、又は第2の反応物質段階ということができる。全体として、これらの2つの段階は、堆積サイクルを構成することができる。より複雑な材料、例えば三元材料を形成するために、基材の表面を他の反応物質と交互に逐次接触させることを含む追加の段階を含み得る。
【0041】
上述のように、各ALDサイクルの各段階は自己制御することが可能である。反応を受ける構造表面を飽和させるために、過剰の反応物質前駆体が各段階において供給される。表面飽和により、(例えば、物理的サイズ又は「立体障害」の制限に曝されている)ほとんどの又はすべての利用可能な反応部位においての反応物質の占有を確実にし、したがって優れたステップカバレッジ及び均一性を確実にもたらす。典型的には、各サイクルで材料の1分子層未満が堆積されるが、いくつかの実施形態では、各サイクル中に1層を超える分子層が堆積される。
【0042】
堆積プロセスで使用される前駆体は、前駆体が基材の表面と接触する前に気相であれば、標準的な条件(室温及び大気圧)下で固体、液体又は気体の材料であってもよい。基材表面を気化した前駆体と接触させることは、前駆体蒸気が所定の時間、基材表面と接触することを意味する。典型的には、接触時間は約0.05~20秒、より好ましくは約0.2~10秒、更により好ましくは約0.5~5秒である。いくつかの実施形態では、接触時間は約1秒である。いくつかの実施形態では、気相の第2の反応物質の接触時間は、気相の第1の気体反応物質の接触時間と同じオーダーの長さが好ましい。いくつかの実施形態では、第2の反応物質の接触時間は、約60秒未満、好ましくは約30秒未満、より好ましくは約10秒未満、最も好ましくは約5秒未満である。いくつかの実施形態では、気相の第2の気体反応物質の接触時間は、気相の第1の気体反応物質の接触時間よりも約100倍以下長いことが好ましい。
【0043】
しかし、基材のタイプ及びその表面積に応じて、接触時間は20秒よりも更に長くてもよい。接触時間は、場合によっては数分のオーダーである場合がある。当業者は、特定の状況に基づいて接触時間を決定し得る。
【0044】
当業者は、反応物質の質量流量を決定することもできる。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体の流量は、好ましくは約1~1000sccm、より好ましくは約100~500sccmである。
【0045】
レニウム含有薄膜を堆積中の反応チャンバー内の圧力は、典型的には約0.01~約50ミリバール、又は約0.1~約10ミリバールである。しかし、特定の状況が与えられるのならば当業者が圧力を決定し得るので、場合によっては、圧力はこの範囲よりもより高い又はより低いであろう。
【0046】
膜の堆積を開始する前に、基材を典型的には適切な堆積温度に加熱する。堆積温度は、形成される薄膜の種類、前駆体の物理的特性等に応じて異なる。いくつかの実施形態では、堆積温度は、約20℃~約1200℃、約50℃~約800℃、又は約100℃~約600℃であってもよい。いくつかの実施形態では、堆積温度は、約50℃より高く、約100℃より高く、約200℃より高く、約300℃より高く、約400℃より高く、約500℃より高く、又は約600℃より高いが、1200℃以下である。いくつかの実施形態では、堆積温度は約300℃~約500℃である。いくつかの実施形態では堆積温度は約300℃~約400℃である。いくつかの実施形態では堆積温度は約300℃~約450℃である。
【0047】
上記のように、いくつかの実施形態では、各反応は自己制御的であり、単層成長により単層が達成される。これらを、「真のALD」反応ということができる。いくつかのこのような実施形態では、レニウム前駆体は、自己制御的に基材の表面上に吸着し得る。次に、第2の反応物質は、吸着したレニウム前駆体と反応して、基材上にレニウム含有材料を最大で単層まで形成する。
【0048】
しかし、いくつかの実施形態では、前駆体は僅かに分解し得るが、成長が飽和するALDタイプの反応が提供される。即ち、いくつかの実施形態では、いくつかの堆積温度でレニウム前駆体の熱分解により、ある程度の膜成長が引き起こされ得るが、第2の反応物質が利用される場合、飽和成長が達成されることが好ましい。このような反応は、ALDタイプの反応の一例である。このようなALDタイプの反応では、良好な均一性及び比較的少量の不純物を有する膜を堆積させることができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、レニウム前駆体のような1つ又は複数の反応物質の熱分解が生じる。このような場合、成長速度は、反応物質パルス時間の増加と共に完全には飽和状態に達し得ない。パルス時間が更に増加すると、成長速度はよりゆっくりと増加することができるが、成長速度は、むしろパルス時間の増加と共に上昇し続けることができる。したがって、いくつかの実施形態では、反応物質が交互にかつ別々に供給されるが、いくらかの気相反応が起こり得るパルスCVDタイプの堆積プロセスが使用される。表面制御された分解が、良好な均一性及び良好なステップカバレッジをもたらす分解のメカニズムであるように、条件が選択されることが好ましい。反応の良好な制御が維持され、不純物が少ない良質の膜が得られるように反応条件を選択することもできる。
【0050】
従って、いくつかの実施形態では、堆積温度は、レニウム前駆体(又は本明細書に記載の他の反応物質)の熱分解温度よりも低く、他の実施形態では、堆積温度は、熱分解温度以上であってもよい。
【0051】
上記のように、いくつかの実施形態では、薄いレニウム含有膜が、気相レニウム前駆体が間欠的に基材を含む反応空間に送り出され、反応空間からパージされるパルスCVDプロセスにより基材の表面上に堆積される。基材を、例えば逐次パルスで、第2の気相前駆体と接触させることができる。レニウム前駆体及び第2の前駆体のパルスは、少なくとも部分的に重なり得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、堆積させたレニウム含有薄膜は、任意の堆積後処理プロセスを受けることができる。いくつかの実施形態では、例えば、堆積後処理プロセスは、アニールプロセス、例えばフォーミングガスアニールプロセスを含み得る。いくつかの実施形態では、堆積後処理プロセスは、レニウム含有薄膜をプラズマに曝すことを含み得る。いくつかの別の実施形態では、堆積後処理プロセスは、レニウム含有薄膜をプラズマに曝すことを含まない。
【0053】
処理時間は、生成される層の厚さ及び膜の成長速度に依存する。ALDタイプのプロセスでは、薄膜の成長速度は、1サイクル当たりの厚さの増加として決定される。1サイクルは、前駆体のパルス注入工程及びパージ工程からなり、1サイクルの持続時間は、典型的には約0.2~30秒、より好ましくは約1~10秒であるが、場合によっては、分又はそれ以上のオーダーであることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、約10分子層未満の厚さを有するレニウム含有膜を堆積させるために堆積プロセスは繰り返される。いくつかの実施形態では、約5分子層未満の厚さを有するレニウム含有膜を堆積させるために堆積プロセスは繰り返される。いくつかの実施形態では、約3分子層未満の厚さを有するレニウム含有膜を堆積させるために堆積プロセスが繰り返される。
【0055】
いくつかの実施形態では、堆積プロセスは、約10000サイクル以下、約5000サイクル以下、約1000サイクル以下、約500サイクル以下、約250サイクル以下、約100サイクル以下、約50サイクル以下、又は約25サイクル以下であり、サイクルは少なくとも1回、又は少なくとも2回以上繰り返される。
【0056】
いくつかの実施形態では、レニウム含有膜は、約10nm未満、又は約5nm未満の厚さを有する。
【0057】
レニウム含有薄膜の堆積に使用され得る適切な反応器の例としては、市販のALD装置、例えば、アリゾナ州フェニックス ASM America, Inc製のF-120(登録商標)反応器、Pulsar(登録商標)反応器、及びEmerALD(商標)反応器等が挙げられる。本明細書に開示の様々な実施形態を実施するために、これらのALD反応器に加えて、適切な装置を備えたCVD反応器及び前駆体をパルス注入する手段を含む、薄膜の堆積が可能な多くの他の種類の反応器を使用することができる。好ましくは、反応物質は、前駆体のための共有ラインが最小化されるように、反応チャンバーに到達するまで別々に保持される。
【0058】
いくつかの実施形態では、適切な反応器はバッチ式反応器であってもよく、約25より多い基材、約50より多い基材、又は約100より多い基材を含み得る。いくつかの実施形態では、適切な反応器はミニバッチ式反応器であってもよく、約2~約20の基材、約3~約15の基材、又は約4~約10の基材を含み得る。
【0059】
場合によっては、クラスターツールに接続された反応器内又は反応空間内で成長プロセスを実施することができる。クラスターツールでは、各反応空間が1つのタイプのプロセス専用であるため、各モジュール内の反応空間の温度を一定に保つことができ、これにより各運転の前に基材をプロセス温度まで加熱する反応器と比較してスループットが明らかに向上する。
【0060】
レニウムを含む薄膜の堆積
上述のように、レニウム含有材料から形成される薄膜を、基材をレニウム反応物質及び第2の反応物質と接触させる蒸着プロセスにより堆積させることができる。いくつかの実施形態では、基材を、例えばALDプロセス又はパルスCVDプロセス等で、反応物質と逐次接触させる。反応物質及び反応条件は、金属性レニウム、酸化レニウム、窒化レニウム、硫化レニウム、及びそれらの混合物を堆積するように選択され得る。以下により詳細に説明するように、いくつかの実施形態では、金属性レニウム、窒化レニウム及びそれらの混合物を、レニウム前駆体及び窒素反応物質を用いて堆積させることができる。いくつかの実施形態では、硫化レニウム薄膜を、レニウム前駆体及び硫黄反応物質を用いて堆積させることができる。
【0061】
より典型的には、いくつかの実施形態によれば、図1に例示するように、レニウム含有薄膜は、少なくとも1回の堆積サイクル10を含むALDタイプのプロセスにより基材上に形成され、堆積サイクルは、
工程20において、基材の表面を気化したレニウム前駆体と接触させて、基材上にレニウム含有種の最大で1単分子層を形成することと、
工程30において、過剰なレニウム前駆体及び反応副生成物がある場合には、これらを表面から除去することと、
第2の反応物質が基材の表面上のレニウム含有種と反応してレニウム含有物質を形成するように、工程40において、基材の表面を気化した第2の反応物質と接触させることと、
工程50において、レニウム種と第2の反応物質との間の反応において形成される過剰な第2の反応物質及び任意の気体副生成物を表面から除去することと、を含む。
【0062】
接触させる工程及び除去する工程60は、所望の厚さのレニウム含有薄膜が形成されるまで繰り返されることができる。
【0063】
例示の堆積サイクルは、基材の表面をレニウム前駆体と接触させることから始まるが、別の実施形態では、堆積サイクルは、基材の表面を第2の反応物質と接触させることから始まる。基材の表面を第1の反応物質と接触させ、その反応物質が反応しない場合には、次の反応物質が提供されるときにプロセスが効果的に始まることは、当業者には理解されるであろう。
【0064】
いくつかの実施形態では、不活性キャリアガス、例えば窒素又はアルゴン等の流れを継続しながら反応物質の流れを止めることにより、反応物質及び反応副生成物を基材の表面から除去することができる。しかし、いくつかの実施形態では、異なる反応物質が所望の順序で所望の時間、基材の表面に交互に逐次接触するように、基材を移動する。いくつかの実施形態では、除去する工程は実施されない。いくつかの実施形態では、反応チャンバーの様々な部分から反応物質は全く除去されない。いくつかの実施形態では、基材を、第1の反応物質又は前駆体を含む反応器又は反応チャンバーの一部から、第2の反応物質を含む反応器又は反応チャンバーの別の部分へ移動させる。いくつかの実施形態では、基材を、第1の反応物質を含む第1の反応チャンバーから、第2の反応物質を含む第2の異なる反応チャンバーへ移動させる。
【0065】
いくつかの実施形態では、基材を気相レニウム前駆体と接触させる場合、基材を他の金属にも、半金属にも、メタロイド前駆体にも全く接触させない。即ち、いくつかの実施形態では、基材を気相レニウム前駆体と接触させるが、基材を金属、半金属又はメタロイドを含む異なる反応物質にも全く接触させない。
【0066】
いくつかの実施形態では、基材をレニウム前駆体以外の別の金属、半金属、及びメタロイド前駆体と接触させない。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1回の堆積サイクルにおいて、基材を別の金属、半金属、及びメタロイド前駆体と接触させない。いくつかの実施形態では、全ての堆積サイクルにおいて、基材を別の金属、半金属、及びメタロイド前駆体と接触させない。
【0067】
いくつかの実施形態では、気相レニウム前駆体は単一のレニウム化合物を含む。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体はレニウム化合物を含み、別の金属、半金属、及びメタロイド元素を含む化合物を含まない。
【0068】
いくつかの実施形態では、気相レニウム前駆体は混合物ではない。例えば、いくつかの実施形態では、気相レニウム化合物は、他の金属、半金属又はメタロイド元素を含む混合物ではない。
【0069】
いくつかの実施形態では、気相レニウム前駆体は溶媒を含まない。
【0070】
いくつかの実施形態では、レニウム含有膜は、1つ又は複数の不純物、例えば、C、H、O又はCl等を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、約3at%未満の炭素、好ましくは約2at%未満の炭素、及び最も好ましくは約1at%未満の炭素を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、0.5at%以下の炭素、0.3at%以下の炭素、又は更に0.1at%以下の炭素を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、約12at%未満の水素、約3at%未満の水素、好ましくは約2at%未満の水素、及び最も好ましくは約1at%未満の水素を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、約0.6at%以下の水素、約0.4at%以下の水素、約0.3at%以下の水素、又は約0.2at%以下の水素を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、約60at%未満の酸素、約20at%未満の酸素、約10at%未満の酸素、又は約5at%未満の酸素を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、2at%以下の酸素、1at%以下の酸素、0.6at%以下の酸素、又は0.2at%以下の酸素を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、約20at%未満のCl、約10at%未満のCl、約5at%未満のCl、約2at%未満のCl、又は約1at%未満のClを含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、約0.6at%以下のCl、又は約0.3at%以下のClを含み得る。上記の不純物を含有するレニウム含有膜は、2D材料のような様々な用途に依然として適し得ることに留意されたい。
【0071】
当業者は、適切なレニウム前駆体を選択し得る。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体はハロゲン化レニウムである。いくつかの実施形態では、ハロゲン化レニウムは塩化物を含む。いくつかの実施形態において、レニウム前駆体は、少なくとも1つのRe-X結合、少なくとも2つのRe-X結合、少なくとも3つのRe-X結合、少なくとも4つのRe-X結合、少なくとも5つのRe-X結合、又は少なくとも6つのRe-X結合を有し、各Xは、独立して、ハロゲン、例えば、塩素、フッ素、臭素若しくはヨウ素等である。レニウム前駆体が2つ以上のRe-X結合を含むいくつかの実施形態では、各Xは同じハロゲンである。レニウム前駆体が2つ以上のRe-X結合を含むいくつかの実施形態では、2つ以上のXは異なるハロゲンである。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体はReClである。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体は塩素又は塩化物配位子を含む。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体は、ReF等のフッ化レニウムである。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体は臭化レニウムである。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体はヨウ化レニウムである。
【0072】
いくつかの実施形態では、レニウム前駆体は有機配位子を含まない。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体は水素を含まない。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体は炭素を含まない。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体は酸素を含まない。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体は窒素を含まない。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体は硫黄を含まない。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体はレニウム以外の金属を含まない。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体は他の半金属もメタロイドも含まない。
【0073】
上述したように、堆積プロセスに用いられるレニウム前駆体は、反応チャンバー内に導かれて基材の表面と接触する前にレニウム前駆体が気相である場合、固体、液体又は気体物質であってもよい。
【0074】
堆積される所望のレニウム含有膜に応じて、任意の数の第2の反応物質を、本明細書に開示の蒸着プロセスにおいて使用し得ることは、当業者に理解されるであろう。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は、少なくとも1つの水素原子を含む。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は、窒素前駆体、又はNH等の窒素含有反応物質であってもよい。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は、HS等の硫黄反応物質であってもよい。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は、HS等の硫黄反応物質を含まない。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は硫黄を含まない。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は酸素を含まない。いくつかの実施形態では、第2の反応物質はカルコゲンを含まない。
【0075】
いくつかの実施形態では、第2の反応物質は、堆積させる材料又は最終形成される膜に材料をそれほど提供しない。いくつかの実施形態では、第2の反応物質はレニウム含有膜に材料を提供する。例えば、窒素反応物質は、窒化レニウム膜又はレニウム及び窒化レニウムを含む膜に窒素を提供し得る。同様に、硫黄反応物質は、硫化レニウム膜に硫黄を提供し得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、レニウム含有膜は、硫化レニウム膜でも硫黄を含む他の膜でもない。しかし、いくつかの実施形態では、このような膜は、少量の不純物として硫黄を含み得る。いくつかの実施形態では、レニウム含有膜は、酸化レニウム膜でも酸素を含む他の膜でもない。しかし、いくつかの実施形態では、このような膜は、少量の不純物として酸素を含み得る。いくつかの実施形態では、レニウム含有膜は、レニウムカルコゲン化物膜でも(少量の不純物として以外に)カルコゲンを含む膜でもない。
【0077】
いくつかの実施形態において、窒素反応物質は、窒素及び少なくとも1つの水素を含み得る。いくつかの実施形態では、窒素反応物質は、例えば、N、NO、NH、N及び/又は他の窒素含有化合物を含み得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、硫黄反応物質が利用される。いくつかの実施形態では、硫黄反応物は、例えばHS、アルキル硫黄化合物、例えば(CHS、(NHS、ジメチルスルホキシド((CHSO)、S元素若しくはS原子、若しくはH等、又は式R-S-H(式中、Rは、置換又は非置換の炭化水素、好ましくはC1~C8アルキル又は置換アルキル、例えばアルキルシリル基、より好ましくは直鎖又は分枝鎖C1~C5アルキル基であることができる)を有する他の反応物質であることができる。いくつかの実施形態において、硫黄前駆体は、H(式中、nは4~10である)を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、プロセスは、いかなるプラズマ反応物質も利用しない熱プロセスであってもよい。いくつかの実施形態では、プロセスはプラズマを利用し得る。例えば、プラズマプロセスにおいて、窒素、水素、硫黄若しくは酸素含有プラズマ、ラジカル、励起種又は原子を使用することができる。プラズマは、希ガス、例えばAr若しくはHe等、又は2つ以上の希ガスの組み合わせ、を含み得る。プラズマはまた、それらの混合物、例えば、希ガスだけでなく窒素及び水素含有プラズマ等も含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、プラズマは、N、H及び希ガスの混合物中で生成され得る。
【0080】
2D材料
本明細書に記載の蒸着プロセスは、レニウム、例えばReS 2D材料等、を含む2D材料を堆積させるのに使用され得る。単層材料とも称される2D材料は、単一の連結された単分子層からなる材料である。2D材料は、単一の連結された単分子層を形成するが、本明細書に開示の堆積プロセスにより複数の単層を堆積し得る。例えば、2D ReSの場合、2D材料は、Re原子の1つの層がS原子の2つの層の間に挟まれるように配置された、共有結合したReS分子の単一層を含む。しかし、ReSは、より厚い層を有する2D層としても機能することができる。したがって、上記のように、複数の単層を堆積させて2D材料を形成することができる。
【0081】
そのような特殊な特徴により、2Dレニウム含有材料は、例えば、光電子、スピントロニクス、及びバレートロニクス(valleytronics)において潤滑として、THzの生成及び検出において触媒、化学及び生物センサとして使用するために、スーパーキャパシタ、LED、太陽電池、リチウムイオン電池、並びにMOSFETチャネル材料として等の幅広い用途に有用である。
【0082】
本明細書に開示の方法により堆積させた2次元レニウム含有薄膜は、半導体デバイスの小型化に有用な電子特性を有する。例えば、2D硫化レニウム膜は、直接的なバンドギャップを有し、ゲートスタック又はトランジスタにおけるチャネル材料として使用され得る。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、レニウムを含む2D材料を、本明細書で開示の方法による蒸着により堆積させることができる。いくつかの実施形態では、レニウムを含む2D材料は、レニウムを含む化合物の10単分子層以下、5単分子層以下、又は3単分子層以下を含み得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、基材上にレニウムを含む2D材料を堆積させる方法は、本明細書に開示のように、少なくとも1堆積サイクルであるが1000堆積サイクル以下、500堆積サイクル以下、200堆積サイクル以下、又は100堆積サイクル以下を含む、堆積プロセス含み得る。
【0085】
特定の前駆体、基材及びプロセス条件に応じて当業者が選択できるように、基材上にレニウムを含む2D材料を堆積させる方法は、少なくとも1堆積サイクルであるが1000堆積サイクル以下、500堆積サイクル以下、200堆積サイクル以下、100堆積サイクル以下、50堆積サイクル以下、25堆積サイクル以下、15堆積サイクル以下、又は10堆積サイクル以下を含む、本明細書に開示のALDプロセスを含み得る。いくつかの実施形態では、ALDサイクルは、本明細書に記載のように、基材をレニウム前駆体及び第2の反応物質と交互に逐次接触させることを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、レニウムを含む堆積させた2D材料は、100nm以下、50nm以下、25nm以下、10nm以下、5nm以下、3nm以下、2nm以下、1.5nm以下、又は1.0nm以下、1単分子層又は更には不完全な1分子層までであることができる。
【0087】
金属性レニウム薄膜
いくつかの実施形態によれば、金属性レニウム薄膜は、基材を気相レニウム前駆体及び気相第2の反応物質と逐次的に接触させる1つ又は複数の堆積サイクルを含む蒸着プロセスにより基材の表面上に堆積される。いくつかの実施形態では、蒸着プロセスは、基材を2つ以上の気相反応物質と繰り返し接触させる周期的堆積プロセス、例えば、原子層堆積(ALD)プロセス、逐次化学蒸着(CVD)プロセス又はパルスCVDプロセス、である。いくつかの実施形態では、堆積サイクルを2回以上繰り返して、所望の厚さの金属性レニウム膜を形成する。
【0088】
いくつかの実施形態では、蒸着プロセスは、基材を気相レニウム前駆体及び気相第2の反応物質と交互に逐次接触させるALDタイプのプロセスである。いくつかの実施形態では、ALDプロセスは、1つ又は複数の堆積サイクルを含み、各サイクルは、気化したレニウム前駆体を基材に接触し、基材の第1の表面上にレニウム前駆体種の最大1分子層を形成する反応チャンバー内にパルス注入することと、過剰なレニウム前駆体及び反応副生成物がある場合には、これらを反応チャンバーから除去することと、アンモニア含有ガス等の第2の反応物質のパルスを反応チャンバーに供給して基材の第1の表面と接触させることであって、第2の反応物質は表面上のレニウム種と反応して金属性レニウム物質を形成する、接触させることと、過剰の第2の反応物質と、基材の第1の表面上のレニウム前駆体種と第2の反応物質との間の反応で形成された任意の気体副生成物を除去することと、所望の厚さの金属性レニウム薄膜が形成されるまで堆積サイクルを繰り返すことと、を含む。いくつかの実施形態では、堆積サイクルは2回以上繰り返される。
【0089】
いくつかの実施形態では、金属性レニウム膜はレニウム元素である。このような実施形態では、金属性レニウム薄膜は、典型的には、レニウム元素の複数の単層を含む。しかし、別の実施形態では、薄膜は、レニウム化合物、又はレニウムと1つ又は複数の異なる金属とを含む合金を含み得る。いくつかの実施形態において、追加の材料は、基材を1つ又は複数の追加の反応物質と接触させることにより提供され得る。
【0090】
レニウム前駆体は、上記の通りであってもよい。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体はレニウム及びハロゲンを含み得る。レニウム含有前駆体は、ハロゲン化レニウム前駆体であってもよい。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体は、レニウム及び塩化物配位子等の1つ又は複数のハロゲン化物を含み得る。いくつかの実施形態において、レニウム反応物質は、1つ又は複数のRe-Cl結合を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、レニウム前駆体はReClであってもよい。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体は、ReF等のフッ化レニウム、臭化レニウム、又はヨウ化レニウムであってもよい。
【0091】
第2の反応物質は、基材上のレニウム種と反応し、選択された堆積条件下で所望の金属性レニウム材料を形成することができるものである。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は、窒素前駆体、又は窒素含有反応物質であってもよい。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は、最終形成される膜に材料をそれほど提供しない。いくつかの実施形態では、第2の反応物質はレニウム含有膜に材料を提供する。
【0092】
いくつかの実施形態では、第2の反応物質は、上記のような窒素前駆体、例えば、N、N、NO、NH、及び/又は他の窒素含有化合物である。しかし、いくつかの実施形態では、金属性レニウム薄膜は窒化レニウム薄膜ではない。
【0093】
いくつかの実施形態では、第2の反応物質は、水素種、例えば分子状水素(H)、水素原子種、水素ラジカル種又は水素プラズマ種等、を含む。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は、上記のように、反応ガス中にプラズマを生成することにより形成された1つ又は複数の反応種を含む。例えば、プラズマは、H、希ガス、N、又はガス混合物、例えば、希ガスと窒素(N)を含む混合物等、の中で生成され得る。いくつかの実施形態では、第2の反応物質は、プラズマの形成がない場合は、分子状水素を含まない。
【0094】
いくつかの実施形態では、レニウムを含む金属性膜等のレニウムを含む膜を、約450℃未満の堆積温度で堆積させる。いくつかの実施形態では、堆積温度は約120℃~約500℃、又は約250℃~約500℃である。いくつかの実施形態では、堆積温度は、約20℃~約1200℃、約50℃~約800℃、又は約100℃~約600℃である。いくつかの実施形態では、堆積温度は、約50℃より高く、約100℃より高く、約200℃より高く、約300℃より高く、約400℃より高く、約500℃より高く、又は約600℃より高いが、1200℃以下である。いくつかの実施形態では、堆積温度は約300℃~約500℃である。いくつかの実施形態では、堆積温度は約300℃~約400℃である。いくつかの実施形態では、堆積温度は約300℃~約450℃である。
【0095】
いくつかの実施形態では、金属性レニウム薄膜を、約0.01Å/サイクル~約5Å/サイクル、約0.1Å/サイクル~約2Å/サイクル、又は約0.2Å/サイクル~約0.4Å/サイクルの成長速度で堆積させる。いくつかの実施形態では、金属性レニウム薄膜を、約0.01Å/サイクル、約0.05Å/サイクル、約0.1Å/サイクル、約0.2Å/サイクル、又は約0.4Å/サイクルより速い成長速度で堆積させる。
【0096】
いくつかの実施形態では、基材上に金属性レニウム膜を堆積させる方法は、1~1000堆積サイクル、1~500堆積サイクル、1~200堆積サイクル、1~100堆積サイクル、1~50サイクル、1~25サイクル、1~15サイクル、又は1~10サイクルを含み得る。いくつかの実施形態では、ALDサイクルは、上記のように、基材をレニウム前駆体及び第2の反応物質と交互に逐次接触させることを含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、金属性レニウム膜は、100nm以下、50nm以下、25nm以下、10nm以下、5nm以下、3nm以下、2nm以下、1.5nm以下、又は1.0nm以下、1単分子層又は更には不完全な1分子層までの厚さを有し得る。
【0098】
金属性レニウム薄膜を、三次元構造上に堆積させることができる。いくつかの実施形態では、レニウム薄膜のステップカバレッジは、約50、約80、約90、約95、約98、又は約99%以上であることができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、金属性レニウム膜は、1つ又は複数の不純物、例えば、Cl、H、O、及びC等を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、約3at%未満の炭素、好ましくは約2at%未満の炭素、及び最も好ましくは約1at%未満の炭素を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、0.5at%以下の炭素、0.3at%以下の炭素、又は更に0.1at%以下の炭素を含み得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、膜は約20at%未満の水素、好ましくは約10at%未満の水素、最も好ましくは約5at%未満の水素を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、約12at%未満の水素、約3at%未満の水素、好ましくは約2at%未満の水素、及び最も好ましくは約1at%未満の水素を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、約0.6at%以下の水素、約0.4at%以下の水素、約0.3at%以下の水素、又は約0.2at%以下の水素を含み得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、膜は、約60at%未満の酸素、約20at%未満の酸素、約10at%未満の酸素、又は約5at%未満の酸素を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、2at%以下の酸素、1at%以下の酸素、0.6at%以下の酸素、又は0.2at%以下の酸素を含み得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、膜は、約20at%未満のCl、約10at%未満のCl、約5at%未満のCl、約2at%未満のCl、又は約1at%未満のClを含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、約0.6at%以下のCl、又は約0.3at%以下のClを含み得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、N:Reの元素比は、約0.01~約1、又は約0.01~約0.6、又は約0.05~約0.8、又は約0.1~約0.7である。
【0104】
いくつかの実施形態では、金属性レニウム膜は、約10~約500マイクロオームcm、又は約15~約200マイクロオームcmの抵抗率を有する。いくつかの実施形態では、金属性レニウム膜は、約1000マイクロオームcm未満、約500マイクロオームcm未満、約200マイクロオームcm未満、約100マイクロオームcm未満、約50マイクロオームcm未満、約30マイクロオームcm未満、又は約25マイクロオームcm未満の抵抗率を有する。
【0105】
いくつかの実施形態では、金属性レニウム薄膜は、仕事関数設定層、例えばpmosトランジスタにおけるようなゲートスタック内のp型仕事関数層として働くことができる。いくつかの実施形態では、金属性レニウム薄膜は、銅キャッピング層として働くことができる。いくつかの実施形態では、金属性レニウム薄膜は、コンタクト金属層として働くことができる。
【0106】
硫化レニウム薄膜
いくつかの実施形態では、二硫化レニウム薄膜等の硫化レニウム薄膜を、蒸着プロセスにより基材上に堆積させる。硫化レニウムは、二次元材料であってもよい。いくつかの実施形態では、蒸着プロセスは、基材を2つ以上の気相反応物質と繰り返し接触させる周期的堆積プロセス、例えば、原子層堆積(ALD)プロセス、又はCVDプロセス、例えば逐次化学蒸着(CVD)プロセス若しくはパルスCVDプロセス、である。
【0107】
堆積プロセスは、所望の厚さの硫化レニウム膜が堆積するまで続けられる。実際の厚さは、特定の状況に応じて選択される得る。いくつかの実施形態では、硫化レニウム膜を、約10nm未満、又は約5nm未満の厚さに堆積させる。いくつかの実施形態では、硫化レニウム膜は、10nm以下、5nm以下、3nm以下、2nm以下、1.5nm以下、1.0nm以下、1単分子層又は更には不完全な1分子層までの厚さを有し得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、堆積プロセスにより、非常に薄い硫化レニウム層を堆積させることができる。いくつかの実施形態では、ReSを、約20分子層未満、約10分子層未満、約5分子層未満、又は約3分子層未満、不完全な1分子層までの厚さに堆積させる。
【0109】
いくつかの実施形態では、基材上に硫化レニウム膜を堆積させる方法は、1~1000堆積サイクル、1~500堆積サイクル、1~200堆積サイクル、1~100堆積サイクル、1~50サイクル、1~25サイクル、1~15サイクル、又は1~10サイクルを含み得る。いくつかの実施形態では、上記のように、ALDサイクルは、基材をレニウム前駆体及び硫黄反応物質と交互に逐次接触させることを含む。
【0110】
硫化レニウム薄膜を、三次元構造上に堆積させることができる。いくつかの実施形態では、レニウム薄膜のステップカバレッジは、約50、約80、約90、約95、約98、又は約99%以上であることができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、基材をレニウム含有反応物質及び硫黄含有反応物質と接触させて、硫化レニウム膜を堆積させる。いくつかの実施形態では、二硫化レニウム(ReS)薄膜を堆積させる。
【0112】
いくつかの実施形態では、硫黄含有反応物質は、硫黄元素を含み得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、蒸着プロセスは、基材を気相レニウム前駆体及び気相第2の反応物質と交互に逐次接触させるADLタイプのプロセスである。図2に例示するように、いくつかの実施形態では、ALDプロセスは、1つ又は複数の堆積サイクル100を含み、各サイクルは、反応チャンバー内の基材を気化したレニウム前駆体200と接触させて、基材の第1の表面上にレニウム前駆体種の分子層を形成することと、過剰のレニウム前駆体及び反応副生成物300がある場合には、これらを除去することと、基材の表面をHS等の第2の硫黄含有反応物質400と接触させ、それにより第2の反応物質が基材の表面上でレニウム前駆体種と反応して二硫化レニウムを形成することと、過剰の第2の反応物質及び基材の表面上のレニウム前駆体種と第2の反応物質との間の反応で形成された任意の気体副生成物を除去すること500と、所望の厚さの二硫化レニウム薄膜が形成されるまでサイクルを繰り返すこと600と、を含む。
【0114】
上記のように、基材は様々なタイプの材料を含み得る。いくつかの実施形態では、基材は、様々な化学的及び物理的特性を有する多数の薄膜を含み得る。更に、基材の表面はパターン化されていてもよく、ノード、ビア及びトレンチ等の構造を含んでもよい。
【0115】
上記のように、いくつかの実施形態では、レニウム前駆体はレニウム及びハロゲン化物を含み得る。レニウム含有反応物質は、ハロゲン化レニウム前駆体であってもよい。いくつかの実施形態では、レニウム反応物質は、レニウム及び1つ又は複数の塩化物配位子を含み得る。いくつかの実施形態において、レニウム反応物質は、1つ又は複数のRe-Cl結合を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、レニウム前駆体はReClを含み得る。いくつかの実施形態では、レニウム前駆体は、ReF等のフッ化レニウム、臭化レニウム、又はヨウ化レニウムを含み得る。
【0116】
上記のように、いくつかの実施形態では、硫黄含有反応物質は水素及び硫黄を含み得る。いくつかの実施形態では、硫黄含有反応物質は、H-S結合を含み得る。いくつかの実施形態では、硫黄含有反応物質は、HSであることができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、レニウムを含む膜、例えば硫化レニウムを、約400℃未満又は約450℃未満の堆積温度で堆積させる。いくつかの実施形態では、堆積温度は、約100℃~約500℃、又は約120℃~約500℃、又は約100℃~400℃である。いくつかの実施形態では、堆積温度は約150℃~約350℃である。いくつかの実施形態では、堆積温度は約200℃~約350℃である。いくつかの実施形態では、堆積温度は約200℃~約300℃である。いくつかの実施形態では、堆積温度は約20℃~約1000℃、約50℃~約750℃である。いくつかの実施形態では、堆積温度は、約1000℃未満、約750℃未満、約600℃未満、約500℃未満である。
【0118】
いくつかの実施形態では、レニウムを含む膜を、約0.2~約1.0Å/サイクルの成長速度で堆積させる。いくつかの実施形態では、レニウムを含む薄膜を、約0.01Å/サイクル~約5Å/サイクル、約0.1Å/サイクル~約2Å/サイクル、又は約0.2Å/サイクル~約0.4Å/サイクルの成長速度で堆積させる。いくつかの実施形態では、レニウムを含む膜を、約0.01Å/サイクル、約0.05Å/サイクル、約0.1Å/サイクル、約0.2Å/サイクル、又は約0.4Å/サイクルより速い成長速度で堆積させる。
【0119】
いくつかの実施形態では、硫化レニウム薄膜を、約0.2~約1.0Å/サイクルの成長速度で堆積させる。いくつかの実施形態では、硫化レニウム薄膜を、約0.01Å/サイクル~約5Å/サイクル、約0.1Å/サイクル~約2Å/サイクル、又は約0.2Å/サイクル~約0.4Å/サイクルの成長速度で堆積させる。いくつかの実施形態では、硫化レニウム薄膜を、約0.01Å/サイクル、約0.05Å/サイクル、約0.1Å/サイクル、約0.2Å/サイクル、又は約0.4Å/サイクルより速い成長速度で堆積させる。
【0120】
いくつかの実施形態では、硫化レニウム膜は、1つ又は複数の不純物、例えば、Cl、H、O、及びC等、を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は約3at%未満の炭素、好ましくは約2at%未満の炭素、及び最も好ましくは約1at%未満の炭素を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は約20at%未満の水素、好ましくは約10at%未満の水素、及び最も好ましくは約5at%未満の水素を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、約20at%未満の酸素、約10at%未満の酸素、又は約5at%未満の酸素を含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、約10at%未満のCl、約5at%未満のCl、又は約2at%未満のClを含み得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、S:Reの元素比は、約0.5~約3、約1~約2.5、約1.5~約2.3、約1.8~約2.2、又は約1.9~約2.1である。いくつかの実施形態では、S:Reの元素比は約0.8~約1.9である。
【0122】
いくつかの実施形態では、硫化レニウム薄膜は、集積回路、半導体デバイス又は光学デバイスでの用途に使用され得る。いくつかの実施形態では、硫化レニウム膜は、集積回路デバイス内のチャネル材料として、例えば論理デバイス内の高移動度チャネル材料として、使用される。いくつかの実施形態では、2D材料は、超薄型、連続型及び場合によってはピンホールのない錫膜が利用される用途で、例えば導電性又は半導電性の薄膜が望まれる用途等で、使用される。
【実施例
【0123】
薄いレニウム含有膜を、約10ミリバールの窒素圧力下において、市販のクロスフローF-120ALDリアクター(フィンランド ASM Microchemistry Ltd.)内で成長させた。窒素ガスは液体窒素タンクから供給され、キャリア及びパージガスとして使用された。いくつかの実験では、上に自然酸化物を有するSi(100)の5×5cm基材上、又はソーダ石灰ガラスの5×5cm基材上に堆積した。いくつかの実施形態では、Al膜上に堆積した。
【0124】
膜の結晶構造を、PANalytical X’Pert Pro X線回折計を用いて斜入射入射モード(GIXRD)で測定したX線回折(XRD)パターンから同定した。膜の表面形態を、日立S-4800電界放出形走査電子顕微鏡(FESEM)により調べた。膜の厚さは、FESEMに接続されているOxford INCA 350マイクロ分析システムを用いて測定されたエネルギー分散型X線分光法(EDX)データから決定された。EDXの結果を、GMR電子プローブ薄膜微量分析プログラムを用いて解析した。
【0125】
いくつかの実験では、厚さ20nmのレニウム金属膜を、0.2Å/サイクルの成長速度で、その場(in-situ)で成長させたAl上に400℃で成長させた。膜は約24μΩcmの抵抗率を有した。
【0126】
金属性レニウム及び窒化レニウムの堆積
前駆体としてReCl及びNHを用いて金属性レニウムの堆積を実施した。ReCl(99.9%Re、Strem)を、110℃で反応器内に保持されたオープンボートから昇華させ、不活性ガスバルブを用いて反応チャンバー内にパルス注入した。質量流量計及びニードルバルブを介して連続フローの間、HS(99.5%、Linde)及びNH(99.9999%、Linde)の流量を10sccmに設定した。全ての前駆体のパルス長はそれぞれ2秒であったが、パージはそれぞれ1~2秒であった。
【0127】
図3は、150℃~500℃の堆積温度においてSi基材上の堆積から得られたGIXRDパターンを示す。300~500℃で堆積させた膜は外観が金属的であり、一方、より低い堆積温度での基材上への堆積は不均一で色が濃かった。図3に示すように、400℃及び500℃で成長させた膜は金属性Reであると同定された。更に、低角度のパターンには、いくつかの未同定ピークが現れた。また、FESEM画像にも、これらの未同定ピークに関連している可能性があるいくつかのより大きな粒子が見られた(図4)。300℃と400℃の堆積温度で堆積させた膜は、膜の一部がSi表面から剥離された(300℃)か、又は亀裂パターン(400℃)を示したかのいずれかであることを明らかにした(図5)。
【0128】
種々の堆積温度におけるレニウム膜の成長速度を図6に示す。300~500℃の堆積温度において、成長速度は約0.2~0.3Å/サイクルであった。ALD AlN表面に堆積させた膜は、300℃でSi基材上に堆積させた膜と比較して、わずかに高い成長速度を有していた。
【0129】
他の実験では、反応物質としてReCl及びNHを用いるALDにより、ALD堆積させた酸化アルミニウム表面上にレニウム膜を堆積させた。ALDプロセスは、基材をReClのパルスと接触させ、反応空間を第1の時間パージし、基材をNHのパルスと接触させ、及び反応空間を第2の時間パージした複数の堆積サイクルを含んでいた。図7は、レニウム薄膜の成長を、400℃でのALDプロセスを1000サイクル行った場合のReClのパルス長の関数として例示する。ReClのパルス長を0.5秒から4秒まで変化させたが、NHパルス長は2秒に維持した。パージ長は1秒であった。図8は、NHパルス長を0.25秒から4秒まで変化させ、ReCl5のパルス長を2秒に維持した場合のレニウム薄膜の成長速度を示す。
【0130】
図9は、酸化アルミニウム上のレニウム薄膜の成長速度を、NH流量の関数として例示する。前駆体のパルス長は2秒であり、パージは1秒であった。再度、400℃の温度で総計1000堆積サイクルを実施した。
【0131】
図10は、レニウム薄膜の厚さの増加を、堆積サイクルの数の関数として示す。上記の実験のように、ReCl及びNH パルスを2秒、並びにパージをそれぞれ1秒で、400℃で酸化アルミニウム膜上に堆積させた。
【0132】
図11は、酸化アルミニウム上のレニウム薄膜の成長速度を、反応物質のパルス長2秒、パージ長1秒で1000堆積サイクルの場合の堆積温度の関数として示す。
【0133】
図12は、400℃においてAl膜上に成長させたレニウム薄膜の成長速度及び抵抗率を、第2の反応物質としてNHを用いたReClのパルス長の関数として例示する。NHのパルス長は2秒であり、全てのパージは1秒であった。総計1000堆積サイクルを行った。
【0134】
図13は、400℃においてAl上に成長させたレニウム含有薄膜の成長速度及び抵抗率を、NHのパルス長の関数として例示する。ReClのパルス長は2秒であり、全てのパージはそれぞれ1秒であった。総計1000堆積サイクルを行った。
【0135】
図14は、400℃においてAl上に成長させたレニウム薄膜の成長速度及び抵抗率を、NHの流量の関数として例示する。前駆体及びパージのパルス長はそれぞれ2秒及び1秒であった。総計1000堆積サイクルを行った。
【0136】
図15は、400℃においてReCl及びNHを用いてAl上に成長させたレニウム薄膜の厚さ及び抵抗率を、堆積サイクル数の関数として例示する。前駆体及びパージのパルス長はそれぞれ2秒及び1秒であった。図16は、400℃においてReCl及びNHを用いてAl上に成長させたレニウム薄膜のGIXRDパターンを、堆積サイクル数の関数として示す。図17は、膜のFSEM画像を示す。
【0137】
窒化レニウム及びレニウム金属膜を、ReCl及びNHを用いてAl上にALDにより成長させた。図18は、膜の成長速度及び抵抗率を、堆積温度の関数として示す。パルス長及びパージ長はそれぞれ1秒であり、総計1000堆積サイクルを行った。図19は、窒化レニウム及びレニウム金属膜のGIXRDパターンを示す。図20は、250℃~500℃で堆積させたレニウム金属及び窒化レニウム膜の膜厚及び表面粗さを示す。図21は、Al上に成長させたレニウム金属及び窒化レニウム膜のAFM画像(2ミクロン×2ミクロン)を、温度の関数として示す。
【0138】
図22は、市販のホットウォールフロー型F-120 ALDリアクター(ASM Microchemistry Ltd)において250℃~500℃の堆積温度でAl膜上に成長させたレニウム及び窒化レニウム膜のFESEM画像を示す。その場(in-situ)で5~10nmのAl被覆した5×5cmSi(100)基材を使用した。上記の実験のように、ReCl及びNHパルスを2秒、並びにパージをそれぞれ1秒用いた。各温度での堆積サイクルの総数は1000であった。
【0139】
図23は、TOF-ERDAにより分析された、250℃~500℃で堆積させたレニウム金属/窒化レニウム膜の元素組成、不純物含有量及び化学量論を示す。Al膜は最も薄いReNの試料の構造から測定され、各場合においてAl層は同一であると仮定して、試料からAl層を減じた。従って、O含有量は指標のみである。
【0140】
硫化レニウムの堆積
前駆体としてReCl及びHSを用いてALDにより硫化レニウムを堆積させた。図24は、150~500℃の堆積温度でSi基材上に成長させた膜から得られたGIXRDパターンを示す。200~500℃で成長させた膜は、三斜晶系のReS(00-024-0922、未知の鉱物、syn [NR])として同定されることができたが、パターンには多数のピークが存在した。パターンの最高強度は14~15°近傍に現れ、ReS(001)であるのに対して、その隣の300℃で現れる低強度ピークは、ReS(100)である。200℃及び300℃で成長させた膜の32°近傍に現れる主ピークは、ReSの(200)[32.113°]、(0-21)[32.364]、(-220)[32.766]、又は(-201)[32.915]のいずれかに属するであろう。150℃で成長させた膜は、パターンが測定される前にプラスチック袋の表面と反応したが、ほぼX線的非晶質であった。図25に見られるように、目に見える反応は膜の亀裂に関連している可能性がある。
【0141】
Si基材上の硫化レニウム薄膜の成長速度を図26に示す。150℃で成長させた膜は約0.8Å/サイクルの成長速度を有していたが、200℃で成長させた膜の成長速度は約1.2Å/サイクルに増加した。成長速度は堆積温度が増加するにつれて、200℃で1.2Å/サイクルから500℃で約0.4Å/サイクルに減少した。膜の表面形態を図27に示す。自然酸化物で覆われたSiの出発表面とALDで成長させたAlの出発表面とを比較すると、300℃では硫化レニウムの成長に差は全く見られなかった(図28及び29)。
【0142】
様々な堆積温度でALD成長させたAl膜上に、ReCl及びHSを用いてALDにより硫化レニウムを堆積させた。ALDプロセスは、基材をReClのパルスと接触させ、反応空間を第1の時間パージし、基材をHSのパルスと接触させ、反応空間を第2の時間パージした複数の堆積サイクルを含んでいた。図30は、400℃におけるAl上の硫化レニウム膜の成長速度を、ReClのパルス長の関数として例示する。HSのパルス長は2秒であり、一方パージ長はそれぞれ1秒であった。総計1000堆積サイクル実施した。図31は、Al上の硫化レニウム膜の成長速度を、ReClのパルス長1秒及びパージ長1秒で、HSのパルス長の関数として示す。ここでも、400℃の堆積温度で総計1000堆積サイクル実施した。図32は、様々なHSのパルス長で堆積させた膜のFSEM画像を示す。
【0143】
図33は、ReCl及びHSの1秒パルス、並びに1秒パージで、400℃でAl上に堆積させた硫化レニウム膜の厚さの増加を示す。図36は、様々な堆積サイクル数で堆積させたレニウム膜の(EDXにより算出された)膜厚及び(AFMにより算出された)表面粗さを示す。これらの硫化レニウム膜のGXIRDパターンを図34に示し、硫化レニウム膜のFSEM画像を図35に示す。
【0144】
図37は、Al上に成長させた硫化レニウム膜の成長速度を、堆積温度の関数として示す。総計1000堆積サイクルで、ReCl及びHSのパルス長は1秒であり、パージ長もそれぞれ1秒であった。これらの硫化レニウム膜のGXIRDデータを図38に示し、膜のFSEM画像を図39に示す。図40は、TOF-ERDAにより測定された120℃~500℃で堆積させた硫化レニウム膜の元素組成、不純物含有量及び化学量論を示す。図41は、XPSにより測定された同じ膜の元素組成、不純物含有量及び化学量論を示す。120℃以上では、レニウムの80%がRe(IV)である。これらの膜を、研究用反応器内で最適化せずに堆積させ、ReS膜を堆積させ得ることを示している。更なる最適化は、特定の状況に対して所望されるように、不純物を低減し組成を調整することができる。
【0145】
ReS膜を、その場(in-situ)で成長させたAl上に、500℃までの堆積温度で、ReCl及びHSを用いてALDにより堆積させた。これらのALD ReS膜の1つのFESEM画像を図42に示す。同じALD ReS膜のTEM画像を図43に示す。トレンチ構造内に堆積させた硫化レニウム膜のFSEM画像を図44A~Dに示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21-1】
図21-2】
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44