(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】熱伝導性グリース及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20220627BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20220627BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C09K5/14 101E
C08L23/08
C08K3/22
(21)【出願番号】P 2022530649
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2021015687
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2020153182
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237422
【氏名又は名称】富士高分子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】片石 拓海
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-278115(JP,A)
【文献】特開2014-122307(JP,A)
【文献】特開2013-071990(JP,A)
【文献】特開2018-145025(JP,A)
【文献】特開2021-080316(JP,A)
【文献】特表2017-530220(JP,A)
【文献】特開2006-096973(JP,A)
【文献】国際公開第2021/084787(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/14
C08L 23/08
C08K 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状オレフィン系重合体と熱伝導性粒子を含む熱伝導性グリースであって、
前記液状オレフィン系重合体は、40℃における動粘度が10,000mm
2/s以下のエチレン・α-オレフィン共重合体であり、
前記液状オレフィン系重合体は、40℃における動粘度が1,000mm
2
/s未満と、40℃における動粘度が1,000mm
2
/s以上の、少なくとも2種の動粘度のエチレン・α-オレフィン共重合体の混合物であり、
前記液状オレフィン系重合体100質量部に対して
前記熱伝導性粒子を400~2000質量部含み、
前記熱伝導性粒子を100質量%としたとき、5~80質量%は中心粒径0.1~5μmのアルミナ粒子であり、20~95質量%はその他の熱伝導性粒子であり、
前記熱伝導性グリースは、B型粘度計で回転速度5rpm、T-Eスピンドルを用いて測定した23℃における絶対粘度が300~7000Pasの範囲である、熱伝導性グリース。
【請求項2】
前記中心粒径0.1~5μmのアルミナ粒子の形状は不定形である請求項
1に記載の熱伝導性グリース。
【請求項3】
前記その他の熱伝導性粒子は、中心粒径が5μmを超える熱伝導性粒子である請求項1
又は2に記載の熱伝導性グリース。
【請求項4】
前記中心粒径が5μmを超える熱伝導性粒子は、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム及び親水性ヒュームドシリカ以外のシリカから選ばれる少なくとも一つの粒子である請求項
3に記載の熱伝導性グリース。
【請求項5】
前記中心粒径0.1~5μmのアルミナ
粒子は、R
aSi(OR')
4-a(Rは炭素数6~12の非置換または置換有機基、R'は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物、またはその部分加水分解物で
あるシランカップリング剤で表面処理されている請求項1~
4のいずれか1項に記載の熱伝導性グリース。
【請求項6】
前記熱伝導性粒子100質量部に対し、前記シランカップリング剤は0.01~10質量部添加されて表面処理されている請求項
5に記載の熱伝導性グリース。
【請求項7】
前記熱伝導性グリースの熱伝導率は、2W/mk以上である請求項1~
6のいずれか1項に記載の熱伝導性グリース。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の熱伝導性グリースの製造方法であって、
液状オレフィン系重合体と熱伝導性粒子とを混合する工程を含み、
前記液状オレフィン系重合体は、40℃における動粘度が10,000mm
2/s以下のエチレン・α-オレフィン共重合体であり、
前記液状オレフィン系重合体は、40℃における動粘度が1,000mm
2
/s未満と、40℃における動粘度が1,000mm
2
/s以上の、少なくとも2種の動粘度のエチレン・α-オレフィン共重合体の混合物であり、
前記液状オレフィン系重合体100質量部に対して
前記熱伝導性粒子を400~2000質量部を加え、
前記熱伝導性粒子を100質量%としたとき、5~80質量%は中心粒径0.1~5μmのアルミナ粒子とし、20~95質量%はその他の熱伝導性粒子とし、
前記熱伝導性グリースは、B型粘度計で回転速度5rpm、T-Eスピンドルを用いて測定した23℃における絶対粘度が300~7000Pasの範囲である、熱伝導性グリースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子部品等の発熱部と放熱体の間に介在させるのに好適な熱伝導性グリース及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のCPU等の半導体の性能向上はめざましくそれに伴い発熱量も膨大になっている。そのため発熱するような電子部品には放熱体が取り付けられ、半導体などの発熱体と放熱体との密着性を改善する為に熱伝導性シリコーングリースが使われている。機器の小型化、高性能化、高集積化に伴い熱伝導性シリコーングリースには高熱伝導性とともに耐落下性が求められている。特許文献1には、熱伝導性充填剤と、分子内に硬化性官能基を一つ有するポリシロキサンを少なくとも1種含むポリオルガノシロキサン樹脂と、アルコキシシリル基及び直鎖状シロキサン構造を有するシロキサン化合物とを含み、ブリードアウトを防止した組成物が提案されている。特許文献2には、液状シリコーンと熱伝導性充填剤と疎水性球状シリカ微粒子を含み、放熱性を向上した熱伝導性シリコーン組成物が提案されている。特許文献3には、液状エチレン・プロピレン共重合体ゴムと、有機過酸化物架橋剤と、金属水酸化物フィラーを含む組成物を成形し架橋することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-104714号公報
【文献】特開2016‐044213号公報
【文献】特開2010-077220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の液状オルガノポリシロキサンをベースとしたグリース状組成物は、低分子シロキサンが発生するという問題がある。前記低分子シロキサンは、組成物から脱落ないしは揮散し、電気接点障害を起こす問題がある。また、特許文献3の組成物では、難燃性を出すために水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物フィラーを所定量加える必要があることから、熱伝導性はそれほど高くならないという問題がある。
【0005】
本発明は前記従来の問題を解決するため、低分子シロキサンが発生せず、TIM用途に好適な絶対粘度と熱伝導性とが両立された熱伝導性グリースを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱伝導性グリースは、液状オレフィン系重合体と熱伝導性粒子を含む熱伝導性グリースであって、前記液状オレフィン系重合体は、40℃における動粘度が10,000mm2/s以下のエチレン・α-オレフィン共重合体であり、前記液状オレフィン系重合体100質量部に対して熱伝導性粒子を400~2000質量部含み、前記熱伝導性粒子を100質量%としたとき、5~80質量%は中心粒径0.1~5μmのアルミナ粒子であり、20~95質量%はその他の熱伝導性粒子であり、前記熱伝導性グリースは、B型粘度計で回転速度5rpm、T-Eスピンドルを用いて測定した23℃における絶対粘度が300~7000Pasの範囲である。
【0007】
本発明の熱伝導性グリースの製造方法は、前記の熱伝導性グリースの製造方法であって、
液状オレフィン系重合体と熱伝導性粒子とを混合する工程を含み、
前記液状オレフィン系重合体は、40℃における動粘度が10,000mm2/s以下のエチレン・α-オレフィン共重合体であり、
前記液状オレフィン系重合体100質量部に対して熱伝導性粒子を400~2000質量部を加え、
前記熱伝導性粒子を100質量%としたとき、5~80質量%は中心粒径0.1~5μmのアルミナ粒子とし、20~95質量%はその他の熱伝導性粒子とし、
前記熱伝導性グリースは、B型粘度計で回転速度5rpm、T-Eスピンドルを用いて測定した23℃における絶対粘度が300~7000Pasの範囲である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、液状オレフィン系重合体と熱伝導性粒子を含み、前記液状オレフィン系重合体は、40℃における動粘度が10,000mm2/s以下のエチレン・α-オレフィン共重合体であり、液状オレフィン系重合体100質量部に対して熱伝導性粒子を400~2000質量部含み、熱伝導性粒子を100質量%としたとき、5~80質量%は中心粒径0.1~5μmのアルミナ粒子であり、20~95質量%はその他の熱伝導性粒子であり、熱伝導性グリースは、B型粘度計で回転速度5rpm、T-Eスピンドルを用いて測定した23℃における絶対粘度が300~7000Pasの範囲であることにより、低分子シロキサンが発生せず、TIM用途に好適な絶対粘度と熱伝導性とが両立された熱伝導性グリースを提供できる。低分子シロキサンが発生しないのは、もともとマトリックス樹脂としてオルガノポリシロキサンを使用していないからである。また、本発明の熱伝導性グリースの製造方法によれば、前記の熱伝導性グリースを、効率よく合理的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1A-Bは本発明の一実施例における試料の熱伝導率の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱伝導性グリース(以下「グリース」と略称する場合もある。)は、マトリックス樹脂として液状オレフィン系重合体を使用し、熱伝導性粒子を含む熱伝導性グリースである。前記液状オレフィン系重合体は、40℃における動粘度が10,000mm2/s以下のエチレン・α-オレフィン共重合体である。エチレン・α-オレフィン共重合体は、一例としてエチレン・プロピレン共重合体がある。このものは極性基を含まない炭化水素系合成油であり、三井化学社製、商品名”ルーカント”シリーズとして市販されている。液状オレフィン系重合体の、40℃における動粘度は、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。
【0011】
前記液状オレフィン系重合体は、少なくとも2種の動粘度のエチレン・プロピレン共重合体の混合物であってもよい。また、前記液状オレフィン系重合体は、40℃における動粘度が1,000mm2/s未満と、同1,000mm2/s以上の少なくとも2種の動粘度のエチレン・プロピレン共重合体の混合物であってもよい。このようにすると、全体の絶対粘度を所定の絶対粘度に調整し易い。40℃における動粘度が10,000mm2/sを超えると、熱伝導性フィラーとの混合が困難となる。また全体の絶対粘度が高くなりやすく、グリースの塗布が困難になる等、使用上の問題が発生しやすい。
【0012】
熱伝導性粒子は、前記液状オレフィン系重合体100質量部に対して、400~2000質量部添加する。400質量部未満では熱伝導性が好ましくなく、2000質量部を超えると、液状オレフィン系重合体との混合が困難となる。また全体の絶対粘度が高くなりやすく、グリースの塗布が困難になる等、使用上の問題が発生しやすい。
【0013】
前記熱伝導性粒子のうち、5~80質量%は中心粒径0.1~5μmのアルミナ(酸化アルミニウム)粒子であり、20~95質量%はその他の熱伝導性粒子である。中心粒径0.1~5μmのアルミナ粒子の形状は不定形が好ましい。アルミナ粒子の形状が不定形であると、全体の絶対粘度が低くなりやすく、高熱伝導率を発現しやすい。
【0014】
その他の熱伝導性粒子は、中心粒径0.1~5μm以外の粒子が好ましい。とくに中心粒径が5μmを超える熱伝導性粒子が好ましい。前記中心粒径5μmを超える熱伝導性粒子は、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム及び親水性ヒュームドシリカ以外のシリカから選ばれる少なくとも一つの粒子であるのが好ましい。前記親水性ヒュームドシリカ以外のシリカとは、沈降シリカ(湿式シリカ)、疎水性煙霧質シリカ(ヒュームドシリカ)、結晶性シリカ、非晶質シリカ等が挙げられる。
【0015】
中心粒径0.1~5μmのアルミナ(酸化アルミニウム)を5~80質量%とし、中心粒径5μmを超える熱伝導性粒子を20~95質量%とすることにより、大粒子の間に小粒子が存在し、最密充填に近い状態で充填され、熱伝導性は高くなる。尚、本願において、中心粒径は、レーザー回折光散乱法により、体積基準による累積粒度分布のD50(メジアン径)である。この測定器としては、例えば堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950S2がある。
【0016】
本発明の熱伝導性グリースの、B型粘度計で回転速度5rpm、T-Eスピンドルを用いて測定した23℃における絶対粘度は300~7000Pasの範囲であり、好ましくは500~6500Pasであり、より好ましくは600~6000Pasである。絶対粘度が前記の範囲であれば、半導体などの発熱体と放熱体との密着性を改善するグリースとして好適である。このような熱伝導性グリースはTIM(Thermal Interface Material)用途に好適である。
【0017】
前記中心粒径0.1~5μmのアルミナは、RaSi(OR’)4-a(Rは炭素数6~12の非置換または置換有機基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物、またはその部分加水分解物で表面処理されているのが好ましい。好ましいシランカップリング剤としては、例えば、ヘキシルトリメトキシシラン,ヘキシルトリエトキシシラン,オクチルトリメトキシシラン,オクチルトリエトキシシラン,デシルトリメトキシシラン,デシルトリエトキシシラン,ドデシルトリメトキシシラン,ドデシルトリエトキシシラン等のシラン化合物があげられる。前記シラン化合物は、一種又は二種以上混合して使用することができる。ここでいう表面処理とは共有結合のほか吸着なども含む。表面処理されていると、マトリックス樹脂と熱伝導性粒子との混合性が良好となる。
【0018】
シランカップリング剤は予め熱伝導性粒子と混合して前処理しておいてもよく(前処理法)、マトリックス樹脂と熱伝導性粒子を混合する際に添加してもよい(インテグラルブレンド法)。両処理法の場合、熱伝導性粒子100質量部に対し、シランカップリング剤は0.01~10質量部添加するのが好ましい。表面処理することでマトリックス樹脂に充填されやすくなる効果がある。
【0019】
本発明のグリースには、必要に応じて前記以外の成分を配合することができる。例えば、ベンガラ、酸化チタン、酸化セリウムなどの耐熱向上剤、難燃剤、難燃助剤などの添加剤を添加してもよい。着色、調色の目的で有機或いは無機粒子顔料を添加しても良い。
【0020】
本発明の熱伝導性グリースの熱伝導率は2W/mk以上が好ましく、より好ましくは2~15W/mkであり、さらに好ましくは2.2~10W/mkである。熱伝導率が前記であるとTIM用途に好適である。
【0021】
本発明の熱伝導性グリースの製造方法では、液状オレフィン系重合体と熱伝導性粒子とを混合し、必要に応じてよりその他の添加剤を加え、全体を混合して、B型粘度計で回転速度5rpm、T-Eスピンドルを用いて測定した23℃における絶対粘度300~7000Pasの熱伝導性グリースとする。前記液状オレフィン系重合体は、40℃における動粘度が10,000mm2/s以下のエチレン・α-オレフィン共重合体であり、前記液状オレフィン系重合体100質量部に対して前記熱伝導性粒子を400~2000質量部を加え、前記熱伝導性粒子を100質量%としたとき、5~80質量%は中心粒径0.1~5μmのアルミナ粒子とし、20~95質量%はその他の熱伝導性粒子とする。
【0022】
本発明の熱伝導性グリースは、ディスペーサー、ビン、缶、チューブなどに充填して製品とすることができる。
【実施例】
【0023】
以下実施例を用いて本発明の一例を説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。各種パラメーターについては下記の方法で測定した。
【0024】
<熱伝導率>
熱伝導性グリースの熱伝導率は、ホットディスク(ISO/CD 22007-2準拠)により測定した。この熱伝導率測定装置1は
図1Aに示すように、ポリイミドフィルム製センサ2を2個の試料3a,3bで挟み、センサ2に定電力をかけ、一定発熱させてセンサ2の温度上昇値から熱特性を解析する。センサ2は先端4が直径7mmであり、
図1Bに示すように、電極の2重スパイラル構造となっており、下部に印加電流用電極5と抵抗値用電極(温度測定用電極)6が配置されている。熱伝導率は以下の式(数1)で算出する。
【数1】
【0025】
<エチレン・プロピレン共重合体の動粘度>
粘度はメーカーカタログ等に記載されているが、ウベローデ粘度計により測定した40℃における動粘度である。
【0026】
<グリースの絶対粘度>
グリースの絶対粘度はB型粘度計(ブルックフィールド社製HBDV2T)で測定した。スピンドルはT-Eスピンドルを使用し、回転速度5rpm、23℃における絶対粘度を測定した。ただし、比較例1についてはT-Eスピンドルにおける測定上限粘度を超えてしまうため、T-Fスピンドルを使用した。
【0027】
(実施例1~4、比較例1~2)
1.原料成分
(1)液状オレフィン系重合体
・40℃における動粘度が400mm2/sのエチレン・プロピレン共重合体:三井化学社製、商品名"ルーカントLX004"
・40℃における動粘度が9850mm2/sのエチレン・プロピレン共重合体:三井化学社製、商品名"ルーカントLX100"
・40℃における動粘度が37500mm2/sのエチレン・プロピレン共重合体:三井化学社製、商品名"ルーカントLX400"
(2)熱伝導性粒子
・中心粒径2.3μmの不定形アルミナ:デシルトリメトキシシラン前処理品(アルミナ100gに対してデシルトリメトキシシラン1.1gを吸着させたもの)
・中心粒径0.3μmの不定形アルミナ:オクチルトリメトキシシラン前処理品(アルミナ100gに対してオクチルトリメトキシシラン2.4gを吸着させたもの)
・中心粒径20μmの球状アルミナ(表面処理無し)
・中心粒径35μmの球状アルミナ(表面処理無し)
・中心粒径20μmの不定形シリカ(非晶質シリカ、表面処理無し)
・中心粒径20μmの水酸化アルミニウム(表面処理無し)
【0028】
2.混合方法
上記液状オレフィン系重合体に熱伝導性粒子を混合し、熱伝導性グリースとした。
以上のようにして得たグリースを評価した。条件と結果を次の表1にまとめて示す。
【0029】
【0030】
以上の結果から、実施例1~4はグリース状であり、低分子シロキサンが発生せず、TIM用途に好適な絶対粘度と熱伝導性とが両立された熱伝導性グリースであることが確認できた。低分子シロキサンが発生しないのは、もともとマトリックス樹脂としてオルガノポリシロキサンを使用していないからである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の熱伝導性グリースは、電気・電子部品等の発熱部と放熱体の間に介在させるTIM(Thermal Interface Material)用途に好適である。
【符号の説明】
【0032】
1 熱伝導率測定装置
2 センサ
3a,3b 試料
4 センサの先端
5 印加電流用電極
6 抵抗値用電極(温度測定用電極)
【要約】
本発明の熱伝導性グリースは、液状オレフィン系重合体と熱伝導性粒子を含み、液状オレフィン系重合体は、40℃における動粘度が10,000mm2/s以下のエチレン・α-オレフィン共重合体であり、液状オレフィン系重合体100質量部に対して熱伝導性粒子を400~2000質量部含み、熱伝導性粒子を100質量%としたとき、5~80質量%は中心粒径0.1~5μmのアルミナ粒子であり、20~95質量%はその他の熱伝導性粒子であり、B型粘度計で回転速度5rpm、T-Eスピンドルを用いて測定した23℃における絶対粘度が300~7000Pasの範囲である。