IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東京メディカルテープの特許一覧

<>
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図1
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図2
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図3
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図4
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図5
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図6
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図7
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図8
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図9
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図10
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図11
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図12
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図13
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図14
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図15
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図16
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図17
  • 特許-粘着シート及び粘着シート付き物品 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】粘着シート及び粘着シート付き物品
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220628BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220628BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20220628BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20220628BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20220628BHJP
   A61B 5/25 20210101ALI20220628BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J5/00
A61F13/02 A
A61F13/02 D
A61F13/02 310J
A61F13/02 310M
A61N1/04
A61B5/25
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018097768
(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2019203054
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】520449758
【氏名又は名称】株式会社東京メディカルテープ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】力久 弘昭
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-077451(JP,A)
【文献】特開平09-220187(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107714290(CN,A)
【文献】実公昭48-036133(JP,Y1)
【文献】特開2018-076450(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0096478(US,A1)
【文献】特開平07-136143(JP,A)
【文献】特開平10-272110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
A61F 13/02
A61N 1/04
A61B 5/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着面を有するシート部材と,
前記シート部材の粘着面に剥離可能に設けられたメッシュ部材とを備え,
前記シート部材の粘着面が前記メッシュ部材の網目を通じて対象物に付着するものであって,
前記メッシュ部材は,前記シート部材が取り付けられていない部位を有し,
前記シート部材は,開口が形成されているか,又は開口を形成可能な切離し線が設けられており,
前記メッシュ部材は,前記開口を覆うように前記シート部材が取り付けられている
粘着シート。
【請求項2】
前記開口は,主開口と,当該主開口と前記シート部材の端縁を結ぶ副開口,ミシン目線,又はスリット線とを含む
請求項に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記シート部材は,前記開口によって複数に分割されている
請求項に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記シート部材と前記メッシュ部材の間に切開テープをさらに備え,
前記切開テープを引っ張ることで,それに沿って前記シート部材が引き裂かれる
請求項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記切開テープは,前記シート部材の端縁から前記開口に達する位置に設けられている
請求項に記載の粘着シート。
【請求項6】
請求項に記載の粘着シートと,
前記開口と重なる位置に設けられた物品とを備える
粘着シート付き物品。
【請求項7】
前記物品は前記メッシュ部材の下層側に設けられている
請求項に記載の粘着シート付き物品。
【請求項8】
前記物品は前記シート部材と前記メッシュ部材の間に介在する
請求項に記載の粘着シート付き物品。
【請求項9】
前記物品は人の身体に取り付けて使用されるものである
請求項に記載の粘着シート付き物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えば人の身体に物品を固定するための粘着シート(本願明細書ではシート状及びテープ状のものを含めて「粘着シート」という)に関する。また,本発明は,粘着シートを備えた物品に関するものである。物品の種類は特に限定されないが,一例としては人の身体に取り付けて使用される医療機器を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
従来から,例えば心電図測定用の電極を人に皮膚上に固定するための粘着シートが知られている(特許文献1,特許文献2)。電極が皮膚から離脱すると正確に心電図を測定することが困難になるため,粘着シートには電極を皮膚上に強固に固定できる性能が求められる。
【0003】
近年,医療の現場では,従来よりも厳しく皮膚状況を管理して,皮膚創傷を回避することが求められている。例えば,圧迫された皮膚に生じる圧迫創傷や,高齢者や乳幼児など皮膚の弱い患者で発生するスキンテアを防止することが求められている。
【0004】
第一に,医療関連機器圧迫創傷(Medical device related pressure ulcer)が問題となっている。ここで,日本褥瘡学会では,一般によく使われる医療機器に加えて,抑制帯などの看護支援用具等も含めたものを「医療関連機器」と定義している。また,この医療関連機器の装着時に,患者の身体に対して加わる局所的な外力によって発生する創傷を「医療関連機器圧迫創傷」と称している。第二に,スキンテア(Skin Tear:皮膚裂傷)も問題になっている。ここで,日本創傷・オストミー・失禁管理学会ではスキンテアを摩擦・ずれによって皮膚が裂けて生じる真皮深層までの損傷(部分創傷)と定義している。そして,絆創膏をはがすときに皮膚が裂けることをスキンテアの具体例としてあげている。
【0005】
このような医療関連機器圧迫創傷やスキンテアは,皮膚疾患患者・乳幼児・高齢者といった皮膚が弱い患者に発生しやすい。また,粘着力の強い皮膚用粘着シートを用いた場合に,特に発生しやすい。例えば,心電図測定用の電極や,人工呼吸器の気管チューブ,血管留置カテーテル,尿道留置用カテーテル,経鼻胃管チューブ,経鼻酸素カニューレなどを,皮膚の弱い患者の皮膚にシートで固定する場合を考える。心電図測定用の電極や,カテーテル,気管チューブを皮膚用粘着シートで患者に固定するときには,これらが外れないように比較的粘着力の強い皮膚用粘着シートが選択される。一方で,尿道留置用カテーテル・経鼻胃管チューブ・経鼻酸素カニューレは清浄を行うために定期的に取り換える必要がある。つまり,患者の皮膚から粘着シートを剥がす必要がある。しかし,粘着シートを剥がすときに,この粘着シートから患者の皮膚に強い力が加わってしまう。すると,患者の皮膚が弱い場合,粘着シートが剥離されるときに,強い力の加わった部位に,創傷が発生するおそれがある。さらに,医療チューブを繰り返し取り換える場合には,皮膚の同じ部分に強い力が加わる。その結果,一度発生した創傷がより悪化するという問題がある。そこで,これを回避するために別の部位にシートを貼るなど工夫をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-136143号公報
【文献】特開平10-272110号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Bryan Laulicht, Robert Langer, and Jeffrey M. Karp, “Quick-release medical tape”, PNAS, vol. 109, No. 46, 18803-18808 (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来から,上述した皮膚用粘着シートの剥離時に発生する創傷,痛みを減らすために,いくつかの手法が用いられてきた。例えば,粘着シートの剥離時に患者の皮膚に加わる外力を低下させるために,粘着シートの粘着力を弱くすることが考えられる。例えば,粘着性の低い粘着剤を利用することが考えられる。あるいは,粘着剤を,粘着シートの一面に塗布するのではなく,粘着シートの一部分に限定して粘着剤を塗布したり,粘着シートの一面に塗った粘着剤から部分的に粘着剤を除去したりすることで,粘着剤の面積を少なくする方法が考えられる。しかし,このような手法では,皮膚用粘着シートの剥離時以外でも,皮膚への粘着力が低下してしまう。そのため,医療チューブなどの固定が不十分になってしまう。
【0009】
また,非特許文献1に示すように,粘着シートの粘着力を維持したまま皮膚に強い力が加わるのを避けるための手法として,粘着シートの粘着層と基材層との間に,両者の分離を容易にする中間層を設ける手法が知られている。この手法では,粘着シートを剥がすときに,粘着層と基材層とが中間層で分離する。そのため,粘着層を接着面に残したまま,基材層のみを取り除くことができる。すると,粘着シートの粘着力を維持しながら,基材層を取り除くときに対象物に強い力が加わることを回避できる。このような中間層を用いる手法を医療用シートに用いた場合,シートを剥がすときに発生する皮膚創傷の危険性は低下する。しかし,基材層を取り除いた後に,皮膚に粘着層が残る。そして,皮膚に残った粘着層は皮膚に刺激を与える。一方で,刺激に弱い患者の皮膚には,粘着層を長時間残すことができない。このため,粘着層も患者の皮膚から早期に剥がす必要がある。すると,この粘着層を剥がすときに皮膚に強い力が加わることとなる。結局のところ,皮膚に創傷が発生するおそれがある。
【0010】
また,絆創膏を剥がす直前に溶剤を粘着シートに塗布して,粘着力を弱めてから粘着シートを剥がして創傷を減らす手法(リムーバ法)も知られている。しかし,このようなリムーバ法では,処置後に溶剤が皮膚に残ることとなる。すると,その状態で,新しく粘着シートを固定し直した場合には,再度固定した粘着シートの粘着力が落ちてしまうという問題がある。さらに,防水性シートではシート部材に溶剤がしみこまないため,まず,部材を少し剥がし,それから,粘着層と皮膚の間に直接溶剤をしみこませながら剥がす必要があり,シートを剥がす際に手間がかかるという問題がある。
【0011】
さらに,従来の粘着シートは,医療関連機器を皮膚に固定する場合に,皮膚との粘着面が広くなることがあった。そして,このような粘着シートを剥がすときには,大きな力が必要であった。その結果,細かい作業や精度が求められる作業を,粘着シートを剥がす時に,同時に行うことが困難となっていた。そして,このことが,以下のような問題を生じていた。
【0012】
例えば,中心静脈カテーテルを頚部に留置して粘着シートで皮膚へ固定した状態において,そのカテーテルを頚部に留置したまま粘着シートのみを交換する場合を考える。この場合に,粘着シートを交換するときには,カテーテルの位置はなるべく動かさずに,皮膚に粘着している粘着シートのみを剥離する必要がある。つまり,点滴用の注射針が動かないように,指でカテーテルを押さえつけておくなど,カテーテルの位置を高い精度で維持する作業が求められる。しかし,粘着シートを剥離するときには,皮膚に大きな力が加わる。そのため,このような状態でカテーテルの位置を高い精度で維持することが困難であった。
【0013】
また,従来,絆創膏の剥離時に患者の皮膚を傷つけないようにするためには,例えば絆創膏の粘着力を弱くして,皮膚の表面の角質を保護し,絆創膏の剥離時に伴って角質が剥離しないようにすることが考えられていた。ただし,粘着力の弱い絆創膏を皮膚に強固に貼り付けるためには,その面積を広げて皮膚に貼り付ける必要がある。しかしながら,絆創膏の貼付面積を広げると,皮膚(皮)と皮下組織(肉)の結びつきの弱い部分や,表皮に傷がある元々部分に絆創膏が貼られる可能性が高まる。そして,絆創膏を剥がすときに,そのような部分が破れて皮膚が皮下組織から剥がれてしまう。つまり,粘着力を弱めて角質を保護する従来の絆創膏(シリコン系)は,粘着力を強固にするために貼付面積を広く取る必要があり,その場合には患者の角質を保護できたとしても,皮膚が皮下組織から剥がれるという損傷を必ずしも防ぐことができないという問題があった。
【0014】
また,従来,体毛のある患者の皮膚に粘着性のあるシールを介して心電図用電極等を付着した際,十分に粘着性のある材料が必要となるため,電極の剥離時に患者の皮膚から毛が抜けてしまうとともに,患者に痛みが生じるため,電極を付着する前に患者の体毛を剃毛する必要があった。
【0015】
そこで,本発明は,皮膚に対する粘着力を維持しつつも,粘着シートの剥離時に皮膚に創傷が発生するのを防止することを主たる目的とする。より具体的には,本発明は,皮膚が皮下組織から剥がれる損傷を防ぐことを目的とするものである。好ましくは,本発明は,医療機器などの物品を人の身体に固定するのに適した粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の発明者は,上記の従来技術が抱えていた課題の解決手段について鋭意検討した結果,シート部材の粘着面にメッシュ部材を設けておき,接着時にはメッシュ部材の網目を通じて粘着面が患者の皮膚に付着させ,剥離時にはメッシュ部材を皮膚表面に押さえ付けながらシート部材を剥離することで,シート部材の剥離部分に創傷が発生するのを防止できるという知見を得た。その上,本発明者は,メッシュ部材上にシート部材が取り付けられていない部位を部分的に形成することで,その部位をきっかけとしてシート部材とメッシュ部材を剥離しやすくなるという構造を見出した。さらに,シート部材の一部に開口を形成し,その開口を覆うようにメッシュ部材を取り付けておくことで,その開口部分に医療機器などの物品を固定することが可能になるという構成を発案した。そして,本発明者は,上記知見に基づけば従来技術の問題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0017】
本発明の第1の側面は,粘着シートに関する。本発明に係る粘着シートは,主に,医療機器などの物品を人の身体に固定する用途で用いられる。粘着シートは,比較的短尺なシート状であって,四角形状やその他多角形状,又は円形状に成型され一又は複数枚ずつ包装された形態で販売されるものであってもよい。また,粘着シートは,比較的長尺なテープ状であって巻回された状態で販売され,必要な長さ分だけ引き出して使用されるものであってもよい。
【0018】
本発明に係る粘着シートは,粘着面を有するシート部材と,シート部材の粘着面に剥離可能に設けられたメッシュ部材とを備える。粘着シートは,シート部材の粘着面がメッシュ部材の網目を通じて対象物に付着するように構成されている。そして,メッシュ部材は部分的にシート部材が取り付けられていない部位を有する。「シート部材が取り付けられていない部位」を形成するためには,シート部材に開口を形成することとしてもよいし,メッシュ部材をシート部材から延出させることとしてもよいし,それ以外の方法でもよい。
【0019】
上記構成によれば,接着時にはシート部材の粘着面がメッシュ部材の網目を通じて皮膚に付着するため,粘着シート全体の粘着力を維持できる。他方,剥離時にはメッシュ部材を皮膚表面に押さえ付ける方向に力を加えつつ,この反対の方向に向かってシート部材を引っ張ることとなる。このとき,シート部材を引っ張る力がメッシュ部材を押さえ付ける力によって緩和あるいは相殺される。これにより,シート部材の剥離するときに,皮膚に大きな外力が加わることを回避できる。その結果,シート部材を剥離しやすくなり,シート部材の剥離時に皮膚に創傷が発生することを防止できる。さらに,毛の生えた皮膚表面にシート部材を貼付させる場合であっても,メッシュ部材が毛を押さえ付けるように作用するため,体毛のある皮膚表面においてもしっかりと粘着され,また,シート部材の剥離時に毛が抜けることを防止できる。その結果,シート部材の剥離時の痛みが回避されると共に剃毛が不要となる。さらに,メッシュ部材に部分的にシート部材が取り付けられていない部位(すなわちメッシュ部材が露出する部位)が存在することで,その部位をきっかけとしてシート部材とメッシュ部材を剥離しやすくなる。その結果,患者に痛みを殆ど与えずに,シート部材を剥離可能となる。また,本発明の粘着シートによれば,貼付面積を広く取らなくても十分な粘着力を得ることができるため,皮膚が皮下組織から剥がれるという損傷を防ぐことが可能である。
【0020】
本発明に係る粘着シートにおいて,シート部材は,開口が形成されているか,又は開口を形成可能な切離し線が設けられていることとしてもよい。切離し線には,例えばミシン目線やスリット線が含まれる。また,メッシュ部材は,この開口を覆うようにしてシート部材に取り付けられている。なお,メッシュ部材は,シート部材の粘着面全面に取り付けられていることが好ましいが,少なくともシート部材の開口を覆う範囲に取り付けられていればよい。また,メッシュ部材は,シート部材の端縁の全周又は一部から延出した状態で,シート部材の粘着面に取り付けられたものであってもよい。
【0021】
上記構成のように,シート部材に開口を形成し,その開口の下にメッシュ部材を取り付けておくことで,その開口が形成された部分(例えば直下)に心電図測定用の電極などの物品を設置することができる,これにより,本発明に係る粘着シートを利用して当該物品を人の身体に固定することが可能となる。また,粘着シートを剥離する際には,シート部材の開口を通じてメッシュ部材及び物品を下方に向かって押さえつけながら,シート部材を上方に引っ張ることができるため,シート部材をメッシュ部材から簡単に剥離することができる。また,シート部材の開口に物品を配置することで,物品の全面にシート部材の粘着層が付着することを回避できる。このため,物品に粘着剤が付着して汚れる事態を抑制でき,物品の繰り返しの使用が容易になる。また,物品と粘着層の間にメッシュ部材を介在させることで,粘着層を物品から剥離し易くなる。さらに,シート部材の開口を通じて人の皮膚等に固定された物品を視認することができるため,物品の固定状態を確認が容易になる。その結果,物品の固定状態の確認のためだけに粘着シートを繰り返し取り外しする作業が不要になる。
【0022】
本発明に係る粘着シートにおいて,シート部材の開口は,比較的広幅の主開口と,当該主開口とシート部材の端縁を結ぶ比較的狭幅の副開口,ミシン目線,又はスリット線とを含むことが好ましい。主開口は,電極などの物品の固定部として利用される。また,主開口からシート部材の端縁まで延びるように,副開口,ミシン目線,又はスリット線を形成しておくことで,シート部材をメッシュ部材から剥離する操作を行いやすくなる。また,固定対象となる物品が,例えば電極本体とケーブルとを備える物品である場合に,シート部材の主開口と電極本体の位置を合わせるとともに,シート部材の副開口等とケーブルの位置を合わせることで,人の皮膚上における物品の固定状態が安定する。
【0023】
本発明に係る粘着シートにおいて,シート部材は開口によって複数に分割されていることとしてもよい。つまり,一枚のメッシュ部材上に複数のシート部材が設けられていることとなる。このようにすることで,メッシュ部材からシート部材を部分的に剥離することができる。これにより,粘着シートの利便性が向上する。
【0024】
本発明に係る粘着シートは,シート部材とメッシュ部材の間に切開テープをさらに備えることとしてもよい。粘着シートは,切開テープを引っ張ることで,この切開テープに沿ってシート部材が引き裂かれるように構成されている。特に,切開テープは,シート部材の端縁から開口に達する位置に設けられていることが好ましい。これにより,シート部材の一部を簡単に切開することができる。
【0025】
本発明において,メッシュ部材は,シート部材の端縁から延出した延出部を有することとしてもよい。特に,メッシュ部材は,シート部材の粘着面全面に設けられており,かつ,当該粘着面の端縁から延出した延出部を有することが好ましい。なお,上述のとおり,シート部材に開口を形成するとともに,メッシュ部材に延出部を形成することも当然に可能である。
【0026】
メッシュ部材の面積がシート部材の面積と完全に同じであるかそれよりも小さいものであると,メッシュ部材からシート部材を剥離するときに,メッシュ部材を皮膚表面側に押さえ付けにくくなる。これに対して,上記構成のように,メッシュ部材が,シート部材の粘着面端縁から少なくとも部分的に演出した延出部を有することで,この延出部を指腹で押さえながら,シート部材を剥離するという操作が可能となる。これにより,シート部材による粘着性を維持しつつ,このシート部材をメッシュ部材から剥離しやすくなる。
【0027】
本発明の第2の側面は,粘着シート付きの物品に関する。本発明に係る粘着シート付きの物品は,前述した第1の側面に係る粘着シートと,シート部材の開口と重なる位置に設けられた物品とを備える。本発明において物品の種類は特に制限されないが,物品は人の身体に取り付けて使用されるものを好適に採用することができる。特に,物品は,人の身体に取り付けて使用される医療機器であることが好ましい。
【0028】
本発明に係る粘着シート付きの物品において,物品はメッシュ部材の下層側に設けられていることとしてもよい。これにより,物品がシート部材の粘着層に直接接することを防止できるため,シート部材を物品から剥離しやすくなるとともに,物品に粘着剤が残留してそれ自体が汚れてしまうことを抑制できる。
【0029】
本発明に係る粘着シート付きの物品において,物品はシート部材とメッシュ部材の間に介在することとしてもよい。これにより,物品が人の皮膚に直接接することを防止できる。また,物品をシート部材とメッシュ部材の間に挟み込むことで,物品をより安定的に身体に対して固定することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば,医療機器などの物品を人の身体に固定する際に利用される粘着シートを改善することができる。すなわち,皮膚に対する粘着シートの粘着力を維持しつつ剥がれにくいものであり身体への固定を安定させ,一方で,粘着シートを剥がすときには,粘着面を剥離しやすくなるものであり,粘着シートの剥離時に皮膚に創傷が発生するのを防止することができる。特に本発明によれば皮膚が皮下組織から剥がれる損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は,第1の実施形態に係る粘着シート付き物品の構成要素を示した分解斜視図である。
図2図2は,第1の実施形態に係る粘着シート付き物品を示した平面図である。
図3図3は,図2に示したIII-IIIにおける断面図である。
図4図4は,粘着シートの断面の一例を一部拡大して示している。
図5図5は,粘着シートの断面の変形例を一部拡大して示している。
図6図6は,粘着シートを皮膚から剥離する作業の例を示した斜視図である。
図7図7は,第2の実施形態に係る粘着シート付き物品を示した平面図である。
図8図8は,図7に示したVIII-VIIIにおける断面図である。
図9図9は,第3の実施形態に係る粘着シート付き物品の構成要素を示した分解斜視図である。
図10図10は,第3の実施形態に係る粘着シート付き物品について構成要素の配置例を示した断面図である。
図11図11は,第4の実施形態に係る粘着シートの構成要素を示した分解斜視図である。
図12図12は,第4の実施形態に係る粘着シートの断面を一部拡大して示している。
図13図13は,第5の実施形態に係る粘着シート付き物品の構成要素を示した分解斜視図である。
図14図14は,第6及び第7の実施形態に係る粘着シート付き物品を示した平面図である。
図15図15は,第8及び第9の実施形態に係る粘着シート付き物品を示した平面図である。
図16図16は,第10の実施形態に係る粘着シート付き物品の構成要素を示した分解斜視図である。
図17図17は,第11の実施形態に係る粘着シート付き物品の構成要素を示した分解斜視図である。
図18図18は,第12の実施形態に係る粘着シートの構成要素を示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
なお,本願明細書において「A~B」とは「A以上B以下」であることを意味する。
【0033】
[第1の実施形態]
図1から図6を参照して,本発明に係る粘着シート付き物品の第1の実施形態を説明する。図1に示されるように,本発明は,粘着シート100と物品200を備える。粘着シート100は,例えば物品200を人の身体(特に皮膚)に固定するためのものである。また,物品200の例は,人の身体に固定して利用される物である。
【0034】
物品200の例としては,電気信号伝達用の物品,光信号伝達用の物品,液体輸送用の物品,空気輸送用の物品,及びその他の物品を挙げることができる。電気信号伝達用の物品の例は,心電図測定用の電極,筋電図測定用の電極,脳波測定電極,その他,体表用に貼り付けられる電極,カメラ(光センサ),サーミスタ,血圧モニタ,COセンサ,Oセンサ,バイタルセンサ,血流計,脳波センサ,及び感圧センサである。光信号伝達用の物品の例は,レンズ,光プローブ,及び光ファイバである。液体輸送用物品の例は,留置針,注射針,尿取り出しゴム,点滴チューブ,カニューレ,ドレーンチューブ及びカテーテルである。空気輸送用の物品の例は,気管チューブ及び空気供給用マスクである。また,伝達及び輸送を伴わないその他の物品としては,貼り薬,吸水パッド,人工内耳,マーカー,磁気治療装置,名札,及びアクセサリーを挙げることができる。例えば,これらの物品が,医療電子機器などに接続することで,電気信号伝達,光信号伝達,液体輸送,空気輸送などの機能を実現する。ただし,本発明の物品200は上記したものに限られない。
【0035】
本願図に示した例では,物品200として心電図測定用の電極が利用されている。電極200は,患者の皮膚上に取り付けられて電位を検出する本体部210と,この本体部210に接続されたケーブル220を備える。なお,本体部210で取得した電気信号はケーブル220を通じて心電図計(不図示)に伝達される。本願では,このような電極200を例に挙げて,電極200を患者の身体に固定するための粘着シート100の構成について詳しく説明する。
【0036】
図1に示されるように,粘着シート100は,粘着面を持つシート部材10と,この粘着面に取り付けられたメッシュ部材20とを備える。粘着シート100は,比較的短尺で個包装されるシート状であってもよいし,比較的長尺で巻回可能なテープ状のものであってもよい。粘着シート100の形状(平面視)は,四角形状に限られず,三角形状,五角形状,その他多角形状,あるいは円形状であってもよい。本実施形態では,メッシュ部材20の下面側(つまりメッシュ部材20と患者の皮膚の間)に電極200が配置される。このため,粘着シート100は,シート部材10の粘着面によって患者の皮膚に接着され,粘着シート100と患者の皮膚の間に電極200が挟み込まれるかたちとなる。
【0037】
シート部材10は,少なくとも片面に粘着面を有する部材である。また,メッシュ部材20は,複数の網目21を有する部材である。メッシュ部材20は,シート部材10の粘着面に取り付けられており,シート部材10から人手によって剥離することが可能である。メッシュ部材20は,シート部材10の粘着面の略全体に亘って取り付けられていることが好ましい。例えば,メッシュ部材20がシート部材10に取り付けられている面積は,シート部材10の粘着面の面積に対して,70%以上,80%以上,又は90%以上であることが好ましく,またメッシュ部材20がシート部材10の端縁から延出する部位を有してもよい。
【0038】
シート部材10は,基本的に,基材層11と粘着層12とから構成される。なお,基材層11と粘着層12は解離不能に固着している。シート部材10は,基材層11の片面側に粘着層12が積層された積層構造をなし,この粘着層12によって粘着面が形成されている。
【0039】
基材層11は,一般的な医療シートの基材に用いられる材料で形成すればよい。例えば,基材層11は,伸縮性を有する織布や不織布,あるいは軟質フィルム等によって構成できる。具体的には,基材層11としては,ポリ塩化ビニルフィルム,ポリエチレンフィルム,ポリエステルフィルム,ポリプロピレンフィルム,エチレン-プロピレン共重合体フィルム,エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム,ポリウレタンフィルム等の種々のものを使用できる。
【0040】
粘着層12は,皮膚に対して粘着する層であって,基本的には粘着性のポリマーを主成分としてなる。粘着層12を構成する粘着剤の材質としては,例えばスチレン-イソブチレン-スチレン共重合体を主成分とする合成ゴム系粘着剤,ポリウレタン系粘着剤,ポリシロキサン系粘着剤,天然ゴム系粘着剤,ポリエーテル系粘着剤,シリコーン系粘着剤,アクリル系粘着剤等が挙げられ,これらを単独で又は2種以上混合して使用できる。また,粘着層12を構成する粘着剤の状態としては,高い粘度の液体状態の他に,高粘度で流動性を失った分散系物質のゲル状がある。
【0041】
ここで,図4に示した厚み方向断面図では,粘着層12をゲル状の粘着剤によって構成した場合の一例を示している。図4に示されるように,粘着層12が変形するゲル状の粘着剤によって構成されている場合,粘着シート100が患者の皮膚に対して圧着されたときに,粘着層12が,メッシュ部材20の網目21から滲出して皮膚表面に密着する。「ゲル」とは,一般的に高粘度で流動性を失った分散系物質をいう。特に,本願明細書において,「ゲル」は,水やシリコーンオイル等を分散媒とし,3次元の網目状となった高分子を分散質として含む分散系物質を意味する。すなわち,本発明における「ゲル」とは,分散質のひとつである高分子の持つ網目構造中に分散媒が含まれることで流動性を失いながらも,変形可能な柔軟性を併せ持つ。
【0042】
このようなゲル状の粘着層12としては,例えばパップ剤などの貼付剤に使用されている公知の粘着剤を用いることができる。一例として挙げると,粘着層12には,天然ゴム等を主成分とするゴム系粘着剤や,ポリジメチルシロキサンゴム等を主成分とするシリコーン系粘着剤(シリコーンゲル),n-ブチルアクリレート等を主成分とするアクリル系粘着剤,ウレタン系粘着剤,ポリエチレングリコール系粘着剤,ポリビニルアルコール系粘着剤を好適に用いることができる。特に,粘着剤は医療用のものであることが好ましい。ゲル状の粘着層12の厚みは,特に制限されないが,例えば0.03~2.0mm程度とすればよく,メッシュ部材20の厚みよりも大きいことが特に好ましい。
【0043】
他方,図5に示した厚み方向断面図では,粘着層12を非ゲル状の粘着剤によって構成した場合の別例を示している。図5に示されるように,粘着層12を非ゲル状のものとした場合であっても,それに積層された基材層11が伸縮性を有していれば問題ない。この場合には,粘着シート100が患者の皮膚に対して圧着されたときに,基材層11が伸縮することで,粘着層12がメッシュ部材20の網目21を通して皮膚に密着する。このように,基材層11を伸縮性材料で形成することによっても,粘着シート100の粘着力を維持することが可能である。伸縮性材料の例は,織布,不織布,又は多孔性フィルムである。また,例えばポリプロピレンやポリエチレン,ポリエステル,ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。不織布としては,エアスルー不織布,ポイントボンド不織布,スパンボンド不織布,メルトブロー不織布などを挙げることができる。
【0044】
基材層11が伸縮性材料で形成されている場合,これを備えるシート部材10の伸縮率は,例えば110%以上又は150%以上であることが好ましく,特に110~300%であることが好ましい。なお,「伸縮率」とは,自然状態における伸長方向の長さに対する最大伸長状態における伸長方向の長さの比率(百分率)である。本発明において,伸縮率は,例えば次のように測定されるものとする。第1に,測定対象を10℃±2℃で相対湿度60%±5%RHの雰囲気下において60分間放置し,この自然状態における伸長方向の長さ(A)を測定する。第2に,自然状態における測定対象を伸長方向に破断する直前の状態(すなわち最大伸長状態)まで延伸させ,その最大伸長状態における伸縮方向の長さ(B)を測定する。そして,(B/A)×100を求めて,これを伸縮率とする。
【0045】
また,図1から図3に示されるように,シート部材10には開口30が形成されている。すなわち,この開口30は,シート部材10を構成する基材層11及び粘着層12を厚み方向に貫通して形成された貫通孔である。なお,メッシュ部材20には,シート部材10の開口30に対応する開口は形成されていない。このため,メッシュ部材20は,少なくともシート部材10の開口30を粘着面側から覆うように,シート部材10に対して取り付けられていることとなる。また,シート部材10とメッシュ部材20の間に他の部材(例えば後述する遮水シート40)が介在しない場合,シート部材10の開口30を通じてメッシュ部材20が露出するようになる。
【0046】
図2に示されるように,本実施形態において,シート部材10の開口30は,シート部材10の中心(重心)を含む位置に形成された主開口31と,この主開口31からシート部材10の端縁を繋ぐように形成された2つの副開口32とからなる。主開口31は,副開口32と比較して幅広に形成されている。主開口31は,例えば円形状又は楕円形状に形成することが好ましいが,三角形状や四角形状,その他多角形状とすることも可能である。主開口31の下方には電極200の本体部210が配置されるため,主開口31の形状や大きさは,固定対象となる電極200の本体部210に合わせて設計すればよい。本実施形態では,主開口31は電極200の本体部210よりも大きく形成されている。このため,電極200の本体部210が主開口31内に収まり,この本体部210をシート部材10の粘着層12に接触させずに,メッシュ部材20を介して患者の身体に固定することが可能となっている。
【0047】
また,副開口32は,それぞれ主開口31からシート部材10の端縁に向かって延びる直線状に形成されている。副開口32の最大幅は,主開口31の最大幅に対して幅狭とすればよい。また,2つの副開口32は,主開口31を挟んで一直線上に形成されている。このため,主開口31と2つの副開口32が一直線上に繋がることとなる。その結果,シート部材10は,これらの開口31,32)が形成されていることによって,第1シート部10aと第2シート部10bの2つの部位に分割された状態となっている。換言すると,一枚のメッシュ部材20上に,開口30を介して互いに分離した第1シート部10a及び第2シート部10bからなるシート部材10が設けられていることとなる。
【0048】
また,図2に示されるように,シート部材10の主開口31の下部には電極200の本体部210が位置し,副開口32の下部には電極200のケーブル220が位置している。これにより,本体部210とケーブル220がそれぞれシート部材10の粘着層12に接触せずに,電極200が患者の身体に固定される。
【0049】
メッシュ部材20は,糸状物あるいは繊維状物が交差するように織り込まれることで複数の網目21が画定された構造を持つ部材である。あるいは,メッシュ部材20は,プラスチックなどを格子状に成形されている。本発明において,メッシュ部材20は,シート部材10の粘着層12に付着するように配置される。メッシュ部材20としては,シート部材10の粘着層12がそのメッシュ部材20の網目21を通じて,皮膚などの対象物に付着可能なものが採用される。このような条件を満たす物であれば,メッシュ部材20の材料や構造は公知のものを採用することができ特に制限はない。例えば,メッシュ部材20は,ポリエステル,ナイロン,サラン,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル,エチレン-アクリル酸エチル共重合体,ポリテトラフルオロエチレン,サーリン,金属箔などの一種類又は2種類以上からなる糸状物あるいは繊維状物を網目状に編み込んだものとすればよい。特に高密度ポリエチレンが望ましい。あるいは,格子状に成形すればよい。また,メッシュ部材20は縦糸と横糸を編み込むことで構成することとが可能であるが,縦糸を形成する材料と横糸を形成する材料は,同じ材料を利用してもよいし,異なる材料を利用してもよい。
【0050】
また,メッシュ部材20は,シート部材10の粘着面(粘着層12)から剥離可能に構成されている。メッシュ部材20は,メッシュ部材20及びシート部材10の双方に破損や裂損を生じさせることなく,人手によってシート部材10の粘着面から剥離可能なものであればよい。例えば,24mm四方のシート部材10に対する24mm四方のメッシュ部材20の剥離強度は,15000mN/20mm以下であることが好ましく,7500mN/20mm以下であることがより好ましく,1500mN/20mm以下であることが特に好ましい。例えば,3M社が「しっかり固定タイプ」として販売している,3MTM マルチポアTM 高通気性撥水シート EX 伸縮性綿布(ライトブラウン)25 4733EP-25にメッシュ部材を張り付けてからそのメッシュ部材を剥がす場合と同等の剥離強度,あるいはそれ以下であることが望ましい。剥離強度の下限値は,メッシュ部材20がシート部材10に貼着している状態が維持される程度であれば特に制限されない。剥離強度の下限値は,例えば,20mN/20mm以上,又は50mN/20mm以上とすればよい。例えば,3M社が「肌にやさしい低刺激タイプ」として販売している,3MTM やさしくはがせるシリコーンシート不織布(ライトブルー)19 2775EP-0にメッシュ部材を張り付けてからそのメッシュ部材を剥がす場合と同等の剥離強度,あるいはそれ以上であることが望ましい。ここで,本願明細書において「剥離強度」とは,シート部材と剥離紙の間にメッシュ部材をはさみ,メッシュ部材をシート部材の粘着面に2kgローラを用いて貼り付けて,その30分後の剥離力を,剥離紙を取り除いた後に,シートピール試験として,剥離角度180°,かつ剥離速度0.3m/minの条件で測定したときの粘着力とする。
【0051】
また,メッシュ部材20は,網目21の面積が4mm以上であることが好ましく,4~40mm,5~35mm,又は6~30mmとすることもできる。なお,異なる面積を持つ網目21が複数存在する場合には,一定範囲(例えば20mm×20mm四方の範囲)に存在する網目の面積の平均が,上記した値の範囲に属していればよい。このように,メッシュ部材20の網目21を4~40mmの範囲内とすることで,シート部材10の粘着性を維持しつつ,またシート部材10を皮膚から剥離するときに創傷が発生することを効果的に防止できる。また,メッシュ部材20は,目開き度が20~80%程度のものを採用することが好ましい。また,ストランド数は,インチあたり5本から100本が好ましい。特に強度と粘着性を両立するためにインチあたり10本から30本が好ましい。縦と横でストランド数を変えても良い。
また,メッシュ部材20の網目21の形状は,三角形状,四角形状,五角形状,六角形状,その他多角形状とすることができる。また,メッシュ部材20は蜘蛛の巣のように網目21が放射状に広がる構造であってもよい。さらに,メッシュ部材20を構成する縦糸は等間隔で配置する一方で,横糸は非等間隔で配置するなどとして,メッシュ部材20の網目の形状を不定形とすることも可能である。また,メッシュ部材20は,これらの複数種類の多角形状の網目21が組み合わさってなるものであってもよい。また,メッシュ部材20の厚みは特に制限はないが,0.01mm~1.0mmであることが好ましい。皮膚に跡が残らないようにするには,メッシュ部材20の厚みは0.01mm~0.3mmであることが好ましい。特に,強度も維持する場合には,0.08mm~0.2mmであることが望ましい。
【0052】
本発明において,メッシュ部材20の伸縮率は,前述したシート部材10の伸縮率よりも低いことが好ましい。例えば,メッシュ部材20の伸縮率は,100~200%の範囲であって,上記シート部材10の伸縮率より低い値であることが好ましい。また,例えば,メッシュ部材20の伸縮率を100%としたときに,シート部材10の伸縮率は,110~300%又は150~250%とすることが好適である。このように,メッシュ部材20の伸縮率をシート部材10より低くすることで,シート部材10をメッシュ部材20から剥離しやすくなる。
【0053】
また,メッシュ部材20は,縦方向(一定方向)と横方向(前記一定方向と直交する方向)とで伸縮率や強度が異なっていてもよい。すなわち,メッシュ部材20は異方性を有する網目構造となっていてもよい。例えば,メッシュ部材20を構成する縦糸と横糸の太さや材料を異ならせたり,網目21を異方的な形状としたりすることで,メッシュ部材20に異方性を持たせることが可能である。粘着シートの用途によっては,メッシュ部材20をシート部材10から剥離する方向が決まっている場合がある。この場合,異方性を有するメッシュ部材20を利用することで,一定方向からシート部材10を引っ張るとシート部材10がメッシュ部材20から剥離しやすくなり,それに直交する方向からシート部材10を引っ張るとシート部材10がメッシュ部材20から剥離しにくくなるといった様に,粘着シートの用途に応じてシート部材10を剥離しやすい方向を設定することが可能になる。
【0054】
また,メッシュ部材20は,難粘着材料で形成されていることが好ましい。難粘着材料は,極性及び表面エネルギーが低いことが特徴である。具体的に,メッシュ部材20は,表面エネルギーが50dyn/cm以下の材料(難粘着材料)で形成されていることが好ましい。なお,メッシュ部材20にシート部材10を一時的に接着できれば,メッシュ部材20を形成する材料の表面エネルギーの下限は特に制限されないが,例えば表面エネルギーは1dyn/cm以上又は5dyn/cm以上であることが好ましい。難粘着材料の例としては,フッ素系樹脂材料及びシリコーン系樹脂材料を挙げることができる。例えば,メッシュ部材20を構成する難粘着材料は,ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリウレタン,シリコーンゴム,ポリアセタール,フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン・商品名テフロン(登録商標)など)から選択することができる。このように,メッシュ部材20を難粘着材料で形成することで,シート部材10の肌に対する接着力を維持しながら,シート部材10をメッシュ部材20から剥離しやすくなる。
【0055】
上述したメッシュ部材20とシート部材10を備えた本発明の粘着シート100を皮膚への張り付けて剥がした場合の強度(剥離強度)は,既存の粘着シートと同程度が望ましい。例えば,3M社が「しっかり固定タイプ」として販売している,3MTM マルチポアTM 高通気性撥水シート EX 伸縮性綿布(ライトブラウン)25 4733EP-25を皮膚に張り付けて剥がす場合と同等の強度,あるいはそれ以下であることが望ましい。さらに望ましくは,3M社が「肌にやさしい低刺激タイプ」として販売している,3MTM やさしくはがせるシリコーンシート不織布(ライトブルー)19 2775EP-0にメッシュ部材を皮膚に張り付けてから剥がす場合と同等の強度,あるいはそれ以上であることが望ましい。また,本発明の粘着シートをJIS Z 0237 (2009)「粘着シート・粘着シート試験方法(10.4引きはがし粘着力の測定)」に一部準拠した測定した場合の強度として,本発明の24mm四方の粘着シートを24mm四方のSUS304鋼板「表面仕上げBA(冷間圧延後,光輝熱処理・表面粗さはJISB0601に規定)」に貼り付けて,剥がした場合の強度は,15000mN/20mm以下であることが好ましく,7500mN/20mm以下であることがより好ましく,1500mN/20mm以下であることが特に好ましい。粘着シート100の剥離強度の下限値は,例えば,20mN/20mm以上,又は50mN/20mm以上とすればよい。
【0056】
また,シート部材10をメッシュ部材20から剥離するための剥離力を“α”とし,粘着シート100全体を対象物から剥離するための剥離強度(すなわちシート部材10とメッシュ部材20を同時に対象物から剥離する強度)を“β”とした場合に,剥離力αは剥離強度β未満であることが好ましい(α<β)。例えば,24mm四方の粘着シート100の試験片を2つ用意し,試験片の全体を上記SUS304鋼板に2kgローラを用いて貼り付けて30分間放置する。その後,JIS Z 0237 (2009)「粘着シート・粘着シート試験方法(10.4引きはがし粘着力の測定)」に従い,一方の試験片についてはシート部材10をメッシュ部材20から剥離し,他方の試験片については粘着シート100全体を鋼板から剥離する。その際に,シート部材10をメッシュ部材20から剥離するのに必要な力(剥離力α)が,粘着シート100全体を鋼板から剥離するのに必要な力(剥離強度β)よりも小さければ,「α<β」であるとみなす。
【0057】
図6は,粘着シート100の使用方法の一例を示している。図6に示されるように,シート部材10の粘着面にメッシュ部材20を付着させた状態で,粘着シート100を対象となる患者の皮膚などに付着させる。その際に,電極200をシート部材10の開口30と重なるように位置決めし,メッシュ部材20と患者の皮膚の間に電極200を挟み込んで固定する。そして,粘着シート100を皮膚表面から取り外すときには,まず,シート部材10をメッシュ部材20から剥離する。このとき,例えば,一方の手でシート部材10の開口30を介して電極200及びメッシュ部材20を上から押さえながら,他方の手でシート部材10を引っ張るようにするとよい。これにより,電極200の位置を固定しながら,患者の皮膚を傷つけたり,あるいは皮膚表面に生えている毛がシート部材10の粘着面に引っ張られたりすることなく,シート部材10を皮膚から剥離できる。なお,メッシュ部材20自体は粘着力を持たないため,シート部材10を取り外した後は,このメッシュ部材20は簡単に取り外すことができる。このため,皮膚に対するシート部材10の粘着力を維持しつつも,シート部材10を剥離しやすくして,シート部材10の剥離時に皮膚に創傷が発生するのを防止できる。また,皮膚表面上の毛をメッシュ部材20で抑えることで,その毛がシート部材10に巻き込まれることを防止できるため,殆ど痛みを与えることなくシート部材10を剥離できる。
【0058】
また,粘着層12の粘着力では不足している場合には,粘着シート100の表面(つまりメッシュ部材20上)に,さらに医療用の粘着剤又は接着剤を塗布することもできる。ここで使用される粘着剤とは,粘性を有し再度の接着が可能なものであり,他方で接着剤とは,空気に触れたときに固形化して対象物を固定するものである。医療用の粘着剤と接着剤としては,一般的に入手できるものを適宜採用できる。予め,粘着シート100の表面(つまりメッシュ部材20上)に医療用の粘着剤や接着剤を塗布しておいてもよいが,粘着シート100を皮膚に付着させるときに,塗布してもよい。前者の場合は,乾燥を防ぐように密閉した容器や袋に粘着シートを格納してもよい。このような袋としては,パップ剤などの貼付剤を格納している使公知の袋を用いることができる。また,プラスチックフィルムと金属箔を多層に合わせた袋を用いることができる。
【0059】
続いて,図7から図16を参照して,本発明の他の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態については,上述した第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し,この第1の実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。
【0060】
[第2の実施形態]
図7及び図8は,第2の実施形態に係る粘着シート付き物品を示している。図7及び図8に示されるように,第2の実施形態は,主に,粘着シート100を構成するシート部材10とメッシュ部材20の間に電極200(物品)が介在している点において,前述した第1の実施形態と異なる。第2の実施形態のように,シート部材10とメッシュ部材20の間に電極200を挟み込むことも可能である。この場合,電極200は,メッシュ部材20の網目21を通じて患者の皮膚に接触する。
【0061】
また,シート部材10とメッシュ部材20の間に電極200が介在する場合,シート部材10の主開口31のサイズは電極200の本体部210よりも小さく形成される。つまり,電極200の本体部210をシート部材10の主開口31に合わせたときに,シート部材10の粘着層12が部分的にその本体部210に付着することとなる。これにより,電極200の本体部210がシート部材10とメッシュ部材20の間に挟み込まれて固定された状態となる。このようにして,電極200をシート部材10内に埋め込んだ構造とすることも可能である。
【0062】
また,図示は省略するが,第2の実施形態のように,シート部材10とメッシュ部材20の間に電極200が介在する場合,電極200が患者の皮膚に密着しやすくなるように,メッシュ部材20と電極200が重なる部位において,メッシュ部材20に部分的に孔部を形成しておくこととしてもよい。また,メッシュ部材20の孔部と,シート部材10の主開口31は厚み方向に重なるようにすると良い。また,メッシュ部材20に孔部を形成する場合,その孔部のサイズは,シート部材10の主開口31と同じであるか,主開口31よりも小さいことが好ましい。具体的には,平面視において,メッシュ部材20の孔部は,シート部材10の主開口31の範囲内に収まるサイズであることが好ましい。
【0063】
[第3の実施形態]
図9及び図10は,第3の実施形態に係る粘着シート付き物品を示している。第3の実施形態は,主に,電極200(物品)を液体から保護するための遮水シート40が更に備え付けられている点において,前述した第1の実施形態と異なる。また,第3の実施形態は,上面側(シート部材10側)からの液体の侵入を抑制するために,シート部材10の開口30が比較的幅狭の直線状に形成されている点で,第1の実施形態と異なっている。
【0064】
図9に示されるように,電極200の本体部210を覆うように遮水シート40が設けられる。また,図9に示した構造では,遮水シート40は,メッシュ部材20と電極200の間に介在している。つまり,上層から順に,シート部材10,メッシュ部材20,遮水シート40,電極200が積層されている。なお,図9の構造の断面は図10(a)に示されている。遮水シート40としては,公知の液不透過性のシート部材を用いることができる。例えば遮水シート40は,ポリエチレンや,ポリエステル,ポリビニルアルコール,ポリプロピレン,ナイロン,セロファン,ビニロン,塩化ビニル等を主成分とする樹脂製のシートで構成することができる。また,遮水シート40は,電極200の本体部210全体を覆うことのサイズのものを採用すればよい。
【0065】
遮水シート40を配置する位置は前述したものに限定されず,電極200の上方であれば遮水シート40は様々な態様で配置することができる。遮水シート40を含む粘着シート付き物品の層構造の例を図10(a)から図10(e)に示している。図10(a)では,前述したとおり,上層から順に,シート部材10,メッシュ部材20,遮水シート40,電極200が積層されている。図10(b)では,上層から順に,シート部材10,遮水シート40,メッシュ部材20,電極200が積層されており,遮水シート40がシート部材10とメッシュ部材20の間に介在する構造となっている。図10(c)では,上層から順に,シート部材10,遮水シート40,電極200,メッシュ部材20が積層されており,遮水シート40及び電極200がシート部材10とメッシュ部材20の間に介在する構造となっている。図10(d)では,上層から順に,遮水シート40,シート部材10,メッシュ部材20,電極200が積層されており,遮水シート40がシート部材10の上面に貼着された構造となっている。図10(e)では,上層から順に,遮水シート40,シート部材10,電極200,メッシュ部材20が積層されており,電極200がシート部材10及びメッシュ部材20の間に介在し,遮水シート40がシート部材10の上面に貼着された構造となっている。なお,遮水シート40の貼着には公知の接着剤を用いればよい。
【0066】
[第4の実施形態]
図11及び図12は,第4の実施形態に係る粘着シートを示している。第4の実施形態は,主に,シート部材10をメッシュ部材20から剥離しやすくするための離型層50が設けられている点において,前述した第1の実施形態と異なる。
【0067】
図11及び図12に示されるように,粘着シート100は,シート部材10とメッシュ部材20との間にさらに離型層50を備えていてもよい。離型層50は,シート部材10をメッシュ部材20から剥離し易くする目的で設けられている。粘着シート100は,一例として医療用のシートとして使用することを想定したものであるため,離型層50は,例えばベビーパウダーなど,医療用途で使用されているパウダー状のものによって形成されていることが好ましい。ただし,離型層50はこのようなものに限定されず,例えばメッシュ部材20の表面を公知の離型剤(撥水スプレー等)によってコーティングすることによって形成されたものであってもよい。すなわち,離型層50は,ベビーパウダーやタルクのようにメッシュ部材20から脱落する性質のもので形成された層であってもよいし,撥水スプレーなどの表面エネルギーの小さい材料を塗布するコーティングのようにメッシュ部材20からは脱落しない性質のもので形成された層であってもよい。
【0068】
また,図12に示されるように,離型層50は,メッシュ部材20を構成する糸状物あるいは繊維状物あるいは格子状に成形したプラスチックとシート部材10の粘着面との間にのみ設けられ,メッシュ部材20の網目21に相当する部位には存在しない。このため,離型層50が両者の間に介在する場合でも,上記第1の実施形態と同様に,シート部材10の粘着面がメッシュ部材20の網目21を通じて皮膚に付着し,そのときに,粘着面と皮膚との間には離型剤は介在しないこととなる。これにより,シート部材10の粘着力を維持しつつ,メッシュ部材20からシート部材10を剥離しやすくなる。例えば,メッシュ部材20をシート部材10の粘着面に付着させる前に,メッシュ部材20自体にベビーパウダーなどを振り掛ける。そして,メッシュ部材20のベビーパウダーが付着した面を,シート部材10の粘着面に取り付ける。これにより,メッシュ部材20を構成する糸状物あるいは繊維状物あるいは格子状に成形したプラスチックとシート部材10の粘着面との間にのみ,離型層50が形成されるようになる。
【0069】
[第5の実施形態]
図13は,第5の実施形態に係る粘着シート付き物品を示している。第5の実施形態は,主に,シート部材10に予め開口30が形成されているのではなく,この開口30を形成するための切離し線33がシート部材10に形成されている点において,前述した第1の実施形態と異なる。
【0070】
図13に示されるように,シート部材10には,開口30の形状に沿って切離し線33が形成されている。このため,切離し線33に沿ってシート部材10の一部を切り取ることで,シート部材10に開口30が形成されることとなる。切離し線33は,例えばミシン目線(不切れ部と切込み部が交互に連続したもの)やスリット線(切込み部のみからなるもの)とすればよい。このように,シート部材10は,初期状態では開口30が形成されている必要はなく,切離し線33が設けられていることで開口30を形成可能なものとなっていればよい。このような場合,使用者は,シート部材10の一部を切離し線33に沿って切り取り,開口30を形成した後に,粘着シート100を利用して電極200を患者の身体に固定してもよい。また,使用者は,開口30を形成する前の状態の粘着シート100を利用して電極を患者の身体に固定しおき,粘着シート100を剥離する際に,シート部材10の一部を切離し線33に沿って切り取り,開口30を形成することとしてもよい。
【0071】
[第6の実施形態]
図14(a)は,第6の実施形態に係る粘着シート付き物品を示している。第6の実施形態は,主に,シート部材10が開口30によって分割されていない点において,前述した第1の実施形態と異なる。第6の実施形態では,シート部材10に主開口31と副開口32が一箇所ずつ形成されている。このように,シート部材10が分割されないように開口30(31,32)を形成しておくことも可能である。
【0072】
[第7の実施形態]
図14(b)は,第7の実施形態に係る粘着シート付き物品を示している。第7の実施形態は,主に,副開口32の代わりにミシン目線34がシート部材10に形成されている点において,前述した第1の実施形態と異なる。すなわち,シート部材10の中央付近に円形の主開口31が形成されており,この主開口31からシート部材10の端縁まで至るように直線状のミシン目線34が形成されている。なお,このミシン目線34は,スリット線に置き換えることも可能である。
【0073】
[第8の実施形態]
図15(a)は,第8の実施形態に係る粘着シート付き物品を示している。第8の実施形態は,主に,シート部材10が渦巻状に成型されている点において,前述した第1の実施形態と異なる。なお,本実施形態では,シート部材10は,メッシュ部材20の形状に合わせて,四角形状の渦巻状に成型されている。また,このような渦巻状のシート部材10の場合には,シート部材10の縁の間にできた隙間を開口30とみなすことができる。
【0074】
[第9の実施形態]
図15(b)は,第9の実施形態に係る粘着シート付き物品を示している。第9の実施形態は,主に,主開口31から離れた位置に第2の開口35が形成されている点において,前述した第1の実施形態と異なる。すなわち,主開口31と第2の開口35は繋がっておらず,両者の間には所定の間隔があいている。また,本実施形態では,主開口31と第2の開口35との間を結ぶようにミシン目線34が形成されている。また,主開口31とシート部材10の端縁の間にもミシン目線34が形成されている。なお,これらのミシン目線34は,スリット線に置き換えることも可能である。このように,シート部材10には,電極200の本体部220を位置決めする主開口31の他に,第2の開口35を設けることも可能である。シート部材10の一部が物品(電極)と繋がっていてもよい。物品はシート部材10に比べて厚かったり凹凸があったりするので,つまみやすい。その結果,シート部材10に比べて,物品はメッシュ部材20からはがしやすい。そして,シート部材10と物品が繋がっていると,物品に引き続いてシート部材10をメッシュからはがすことができるので,シート部材10をメッシュからはがすことが容易になる。
【0075】
[第10の実施形態]
図16は,第10の実施形態に係る粘着シート付き物品を示している。第10の実施形態は,主に,粘着シート100にシート部材10の一部を切り裂くための切開テープ60が設けられている点において,第1の実施形態と異なる。第10の実施形態は,シート部材10の主開口31に繋がる副開口やミシン目線,スリット線は設けられておらず,これらの代わりに切開テープ60がシート部材10に取り付けられている。
【0076】
切開テープ60は,紐状,糸状,または帯状のものを用いることができる。切開テープ60は,一端がシート部材10の端縁から延出し,他端がシート部材10の主開口31に達するようにシート部材10に取り付けられている。このため,切開テープ60の一端を摘持し,上方に引っ張り上げることで,切開テープ60に沿ってシート部材10の一部を破断させることができる。切開テープ60を設ける位置は特に制限されないが,図16に示すように,シート部材10とメッシュ部材20の間に配置することが好ましい。
【0077】
[第11の実施形態]
図17は,第11の実施形態に係る粘着シート付き物品を示している。第11の実施形態は,主に,メッシュ部材20に,他の部位と比べて変形しにくい難変形部22が局所的に形成されている点で,第1の実施形態と異なる。第11の実施形態では,シート部材10の開口部30,特に副開口部32と重なる位置において,メッシュ部材20に局所的に難変形部22が形成されている。例えば図17に示すように,難変形部22は,部分的にメッシュ部材22の網目21を他の部位と比べて小さくすることによって形成することができる。また,メッシュ部材20を構成する糸材料の太さや材料,あるいは網目21の形状を他の部位と異ならせることにより,メッシュ部材20に難変形部22を形成することもできる。図17に示すような実施形態では,まず電極200のケーブル220を押さえる部分から,シート部材10とメッシュ部材20とが剥離されることが多い。このため,予め剥離することが想定される部分に,メッシュ部材20に難変形部22を設けることで,この難変形部22付近からシート部材10を剥離しやすくなる。このように電気信号や電力を伝達するケーブル,あるいは液体や気体が自らの内部を通過するチューブ,あるいは切開テープを配置すると,メッシュ部材がシート部材から剥離しやすくなる。
【0078】
[第12の実施形態]
図18は,第12の実施形態に係る粘着シート付き物品を示している。第12の実施形態は,主に,シート部材10の開口部30に代えてメッシュ部材20に延出部23が形成されている点で,第1の実施形態と異なる。すなわち,第12の実施形態において,メッシュ部材20は,シート部材10の端縁から延出した延出部23を有している。メッシュ部材20は,基本的にシート部材10の粘着面の全面を覆っていることが好ましく,その上,メッシュ部材20は,シート部材10の粘着面を超えてはみ出した延出部22を持つ。メッシュ部材20の延出部22は,少なくとも部分的にシート部材10の端縁から延出していればよいが,例えばシート部材10の端縁の全周から延出していてもよい。延出部22の延出長さは,1mm以上であることが好ましく,例えば1~20mm又は2~15mmであってもよい。図18に示されるように,メッシュ部材20が少なくとも部分的にシート部材10から延出していれば,その延出部22を指で押さえ付けることで,シート部材10をメッシュ部材20から容易に剥離できる。なお,図示は省略するが,メッシュ部材20に延出部23を設けると共に,シート部材10に前述した開口部30を形成することも可能である。
【0079】
メッシュ部材としてDelstar社のDelnetKX215,シート部材としてSmith and nephew社のオプサイトジェントルロールを利用して,1日皮膚に貼り付けた。すると,メッシュ部材とシート部材が良好に剥離して,皮膚へのメッシュの跡が残らなかった。
メッシュ部材としてDelstar社のDelnetKX215,シート部材として日東電工社のパーミロールを,1日皮膚に貼り付けた。すると,メッシュ部材とシート部材が良好に剥離して,皮膚へのメッシュの跡がほとんど残らなかった。
メッシュ部材としてDelstar社のDelnetKX215,シート部材として3M社のTegaderm-filmを,1日皮膚に貼り付けた。すると,メッシュ部材とシート部材が良好に剥離して,皮膚へのメッシュの跡がほとんど残らなかった。
メッシュ部材としてDelstar社のDelnetKX215,シート部材としてアルケア社のクイックフィックスを,1日皮膚に貼り付けた。すると,メッシュ部材とシート部材が良好に剥離して,皮膚へのメッシュの跡がほとんど残らなかった。
【0080】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は,例えば医療機器などを患者の身体に固定する際に用いられる粘着シートなどに関する。従って,本発明は医療機器産業において好適に利用しうる。
【符号の説明】
【0082】
10…シート部材 10a…第1シート部
10b…第2シート部 11…基材層
12…粘着層 20…メッシュ部材
21…網目 22…難変形部
23…延出部 30…開口
31…主開口 32…副開口
33…切離し線 34…ミシン目線
35…第2の開口 40…遮水シート
50…離型層 60…切開テープ
100…粘着シート 200…物品(電極)
210…本体部 220…ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18