(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】フィルム体巻取機構
(51)【国際特許分類】
B65H 23/198 20060101AFI20220628BHJP
B65H 18/10 20060101ALI20220628BHJP
C23C 14/56 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B65H23/198
B65H18/10
C23C14/56 B
(21)【出願番号】P 2017241279
(22)【出願日】2017-12-18
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】309024907
【氏名又は名称】マシン・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116861
【氏名又は名称】田邊 義博
(72)【発明者】
【氏名】加瀬部 強
(72)【発明者】
【氏名】錦織 寿裕
(72)【発明者】
【氏名】錦織 栄治
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-338873(JP,A)
【文献】実開昭57-099853(JP,U)
【文献】特開2002-240993(JP,A)
【文献】特開2012-076853(JP,A)
【文献】特開昭55-123836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 18/00-18/28
B65H 23/18-23/198
B65H 26/00-26/08
C23C 14/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から繰り出されてくる所定幅の帯状フィルムを、前記帯幅方向に軸が配された所定径の追従ローラに捲回させてから、巻取軸が同じく前記帯幅方向に配された巻取ローラへフィルムの浮遊距離を短くすべくS字に渡して巻き取る巻取機構であって、
巻取ローラに巻き取られたフィルム最上層の位置を検出する、追従ローラの軸中心からの距離が固定されたセンサと、
追従ローラの軸中心を、前記帯幅方向に配された第1の公転軸を中心として巻取ローラから離す方向に公転させる追従ローラ支持体と、
センサ位置と追従ローラの軸中心とを結ぶ線に対して巻取ローラとは反対側に設け、センサ位置との距離および追従ローラの軸中心との距離がそれぞれ不変な第3点を、前記帯幅方向に配され
固定された第2の公転軸を中心として公転させる
、追従ローラ支持体とは別体の第3点支持体と、
追従ローラ支持体を第1の公転軸に対して回動させるまたは第3点支持体を第2の公転軸に対して回動させる回動手段と、
センサによる検出に基づいて回動手段を制御してセンサ位置をフィルム最上層から一定の位置に保つ制御手段と、
を具備し、
第3点支持体を設けたことによるリンク機構により、第3点支持体を設けず追従ローラ支持体のみにより追従ローラを後退させる場合より、追従ローラ表面とフィルム最上層との間隔のずれが補償されるようにしたことを特徴とする巻取機構。
【請求項2】
第2の公転軸から第3点までの距離を第1の公転軸から追従ローラの軸中心までの距離より短くして、センサが追従ローラの軸中心と巻取ローラの軸中心とを結ぶ線に近づくとともに、追従ローラが後退するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の巻取機構。
【請求項3】
センサの位置、および/または、第3点の位置、および/または、第1の公転軸の位置、および/または、第2の公転軸の位置、および/または、第1の公転軸と追従ローラの軸中心との間隔、および/または、第2の公転軸と第3点との間隔、を変更可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の巻取機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状フィルムの巻取機構に関し、特に、真空チャンバにおいて長尺ものであっても従来より安定的なフィルム体の巻き取りを実現する巻取機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムコンデンサ用の積層フィルムその他の帯状のフィルム体をチャンバ内で巻き取る機構が存在する。
巻取りに際しては、途中にシワが入ると製品品質等に影響が出るため、これを防止すべく、フィルムの解放位置から巻取ローラの表面との距離ができるだけ狭く(たとえば数mm)なるように各種配置がなされる。
具体的には、円柱状の巻取ローラの直近上流にもう一つ円柱状の追従ローラを設け、フィルムが追従ローラから巻取ローラへS字状にわたされる。巻取ローラが実太りすると、適宜追従ローラが後退して、間隙が保たれるようにしている。
一方、真空チャンバ内では、良好かつ効率的な真空引きを実現するために、チャンバ内の体積を極力少なくしたいという要請も存在する。
このため、追従ローラを単純に後退させる機構は限られた空間内では採用しにくい。
そこで、所定の支点に対して追従ローラの軸中心が円弧を描くように後退させる方法が採用さている。
これにより、従来は、安定的に高品質な巻取りを実現していた。
【0003】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
フィルムの巻取り長さや巻取ローラの累計回転数に従って、予め実太りを演算して後退制御に反映させることもできるが、実際の稼働においては、フィルム長が長くなるほど、フィルム自身の厚みの誤差や上流における金属蒸着厚み等によって、実太りに誤差が生じてしまい、ローラ同士の接触や間隔の広がりによるシワの発生など巻取り品質が低下してしまう、という問題点があった。
【0004】
従って、フィルムの幅方向に対向させ、追従ローラとの間で位置を保って固定された透過センサにより巻取ローラの表面位置を遮蔽の有無として検出し、これをフィードバックしてセンサとともに追従ローラを一体的に後退させる機構が採用される。
しかしながらこの場合も、追従ローラの移動距離が大きくなると(円弧の中心角が大きくなると)、センサ位置に対する追従ローラ表面位置が、巻取ローラ最上層に対してずれてきて、ローラ間の接触が発生しやすいという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-163693
【文献】特開2007-302928
【文献】特開2002-367847
【文献】特表2017-506290
【文献】特開2013-44050
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、長尺ものであっても従来より安定的なフィルム体の巻き取りを実現する巻取機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の巻取機構は、上流から繰り出されてくる所定幅の帯状フィルムを、前記帯幅方向に軸が配された所定径の追従ローラに捲回させてから、巻取軸が同じく前記帯幅方向に配された巻取ローラへフィルムの浮遊距離を短くすべくS字に渡して巻き取る巻取機構であって、巻取ローラに巻き取られたフィルム最上層の位置を検出する、追従ローラの軸中心からの距離が固定されたセンサと、追従ローラの軸中心を、前記帯幅方向に配された第1の公転軸を中心として巻取ローラから離す方向に公転させる追従ローラ支持体と、センサ位置と追従ローラの軸中心とを結ぶ線に対して巻取ローラとは反対側に設け、センサ位置との距離および追従ローラの軸中心との距離がそれぞれ不変な第3点を、前記帯幅方向に配され固定された第2の公転軸を中心として公転させる、追従ローラ支持体とは別体の第3点支持体と、追従ローラ支持体を第1の公転軸に対して回動させるまたは第3点支持体を第2の公転軸に対して回動させる回動手段と、センサによる検出に基づいて回動手段を制御してセンサ位置をフィルム最上層から一定の位置に保つ制御手段と、を具備し、第3点支持体を設けたことによるリンク機構により、第3点支持体を設けず追従ローラ支持体のみにより追従ローラを後退させる場合より、追従ローラ表面とフィルム最上層との間隔のずれが補償されるようにしたことを特徴とする。
【0008】
すなわち、請求項1にかかる発明は、センサと追従ローラとの一体的な位置関係と、円弧軌跡に従った後退と、に由来する、特に長尺ものの巻取りにて顕著となっていく間隔のずれを、収容筐体の実質的な増大を招来することのない簡単なリンク機構の付加にて抑制し、これにより、従来より安定的なフィルム体の巻き取りを実現することができる。従来より、より長尺もののフィルム体であっても安定的な巻取りを実現する、と言い換えることもできる。
筐体の増大を招来しないので、フィルムコンデンサの製造装置といった、真空チャンバ内への導入に特に好適である。
【0009】
S字とは、軸方向に見たフィルムの配置をいう。
公転とは、必ずしも自転がともなうものでなく、また、描く軌道も周回軌道でなく円弧を描かせるものであれば足りるものとする。
追従ローラ支持体と第3点支持体は、棒状体とすることができる。
第3点により、追従ローラの軸中心(第1点)とセンサ位置(第2点)との間で固定的なすなわち移動に対して不変な三角形(トラス)が形成される。
センサ位置を一定の位置に保つ、とは、センサ位置を一定の高さに保つことを意味する。表面から一定の距離に保つということもできる。仕様の態様により、フィルム最上層と同じ高さ、または、フィルム最上層から下(マイナス)の高さとすることもできる。
補償されるような配置として、第1の公転軸と追従ローラの軸中心とを結ぶ線、および、第2の公転軸と第3点とを結ぶ線が、追従ローラの軸中心と巻取ローラの軸中心と概ね90°で交わる例を挙げることができる。
間隔とは場合により間隙と表現しても良い。
【0010】
請求項2に記載の巻取機構は、請求項1に記載の巻取機構において、第2の公転軸から第3点までの距離を第1の公転軸から追従ローラの軸中心までの距離より短くして、センサが追従ローラの軸中心と巻取ローラの軸中心とを結ぶ線に近づくとともに、追従ローラが後退するようにしたことを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項2に記載の発明は、センサを追従ローラの軸中心と巻取ローラの軸中心とを結ぶ線に近づけつつ、間隙部分を当該線に対して概ね平行に後退させることができ、補償精度を上げることができる。
【0012】
請求項3に記載の巻取機構は、請求項1または2に記載の巻取機構において、センサの位置、および/または、第3点の位置、および/または、第1の公転軸の位置、および/または、第2の公転軸の位置、および/または、第1の公転軸と追従ローラの軸中心との間隔、および/または、第2の公転軸と第3点との間隔、を変更可能としたことを特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項3にかかる発明は、フィルム厚や巻取り長さなどが異なっても追従可能となる。位置変更は、収容筐体内で嵌合構造、螺合構造等を採用することにより実現できる。これにより、巻取機構の汎用性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長尺ものであっても従来より安定的なフィルム体の巻き取りを実現する巻取機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
ここでは、本発明の巻取機構を、フィルムコンデンサを製造するための、金属のフィルムへの蒸着をおこなうチャンバ内に設けた例について説明する。
【0017】
図1は、チャンバの断面構成図である。
図2は、巻取機構部分の拡大図であって、(a)巻き取り始めと(b)実太りした状態とを示した説明図である。
図3は、従来の巻取機構部分の拡大図であって実太りした場合の本発明との状態比較図である。なお、図においては必ずしも縮尺を同一としておらず、一部構成を模式的に示している。
【0018】
フィルム蒸着装置1は、クーリングローラ10と、樹脂噴出ノズル20と、電子ビーム照射部30と、プラズマ照射部40と、マージンノズル50と、アルミニウム蒸着部60と、プラズマ照射部70と、フィルム送出部80と、フィルム巻取部100と、を主要な構成とし、これが真空チャンバ90に格納されている。
【0019】
クーリングローラ10は、円筒形であって軸11を水平にして一方向に回転する。また、その表面は低温に保たれ、金属蒸気や樹脂蒸気の凝集・固化を促進する。なお、クーリングローラ10は、回転制御部(図示せず)により回転数の制御がおこなわれる。
【0020】
樹脂噴出ノズル20は、クーリングローラ10に近接対峙し、軸11方向に長手のスリット状ノズルから樹脂蒸気を噴出する。
【0021】
電子ビーム照射部30は、樹脂噴出ノズル20によりクーリングローラ10上に付着させた樹脂を硬化させる。
【0022】
また、プラズマ照射部40は、硬化させた樹脂の表面を改質する。
【0023】
マージンノズル50は、軸11方向に長手であり、クーリングローラ10上の樹脂薄膜層に対してすじ、すなわち、マージンが形成されるように噴出孔からパターニング材料を噴出する。
【0024】
アルミニウム蒸着部60は、クーリングローラ10に近接対峙し、アルミニウム蒸気を噴出する。たとえば、厚み15nmのアルミニウム薄膜が形成される噴出量としている。
【0025】
プラズマ照射部70は、アルミニウム薄膜上のオイルを除去する。すなわち、アルミニウム蒸着部60により樹脂薄膜層の上にアルミニウム薄膜層が形成されるが、マージンノズル50によるオイルすじ部分はアルミニウムが蒸着せず、プラズマ照射部40によってオイルおよび浮いたアルミニウム部分が除去される。
【0026】
フィルム送出部80は、所定幅のフィルムFを送り出す。フィルムの例は特に限定されないが、厚み2.3μm、幅30cm、長さ10,000mのPPフィルムとすることができる。
【0027】
真空チャンバ90は、次に説明するフィルム巻取部100を含めて各構成を収容し、図示しない真空ポンプにより真空引きされる。なお、効率的な真空引きを実現するために、室内容積は極力小さくなるように設計されている。
【0028】
次に、フィルム巻取部100について説明する。
フィルム巻取部100は、巻取ローラ部200と、追従ローラ部300とにより構成され、クーリングローラ10の上方にほぼ同じ高さに配されている。
【0029】
巻取ローラ部200は、巻取軸211がクーリングローラ10の軸11と平行になるように水平に配向された巻取ローラ201により構成される。なお、巻取ローラ201は相対的に細身の円筒体であるが、フィルムFの巻取りに従って実太りしていく。
【0030】
追従ローラ部300は、追従ローラ301と、センサ302と、一対の三角ステー303と、一対の第1アーム304と、一対の第2アーム305と、駆動モータ(図示せず)と、制御部(図示せず)により構成される。なお、
図2では軸方向にフィルム巻取部100を描画しているので、三角ステー303,第1アーム304,第2アーム305は一つしか見えないが、ローラを挟んで奥側にも同配置の構成が存在する。
【0031】
追従ローラ301は、巻取軸211と平行になるように水平に配向された軸311を中心に自由回転をおこなう所定径の円筒体である。軸311は巻取軸211と略同じ高さにもうけており、クーリングローラ10から繰り出されてくるフィルムFを下側から一定長さ当て着け(所定の中心角分の巻き付けをおこなってから)、巻取ローラ201に渡す。このとき、フィルムFの巻取直前の空中にある長さ、すなわち浮遊距離を短くすべく、軸方向に見てフィルムFがS字に渡されるようにしている。浮遊距離が長いと巻取ローラ201上でシワが発生する可能性が高まるからである。S字とするのでフィルムFは軸311と巻取軸211とを結ぶ線に近い位置で宙に浮くこととなる(フィルムが浮遊している位置を浮遊位置と称することとする)。
【0032】
なお、本実施の形態では、追従ローラ301の表面と巻取ローラ201の最上層との間隔はおおよそ3mmとなるようにしている(この間隔を表面間隔と称することとする)。そして後述するように、追従ローラ301は、巻取ローラ201の実太りに従ってリンク機構によりこの表面間隔が保たれるように概ね直線的に後退する。追従ローラ301は、ここでは、軸311を中心に回転するが、仕様の態様によっては、回転せずにフィルムFを円滑に滑らすようにしてもよい。
【0033】
センサ302は、巻取ローラ201に巻き取られたフィルムFの最上層、すなわち、フィルム表面の位置を検出する。本実施の形態では、軸方向に投光受光の対にして配置し赤外線の遮蔽を検知することにより表面位置を検出する透過センサを採用している。なお、設計上、フィルムFの浮遊位置近傍にセンサ302を配することが困難であるため、センサ302は、浮遊位置から離れた場所のフィルム表面位置を検出する。ここで、センサ302は三角ステー303に固定され、この三角ステー303は追従ローラ301にも取り付けてあるので、センサ302は追従ローラ301と一体的に移動しても軸311(または追従ローラ)との距離は保たれる。
【0034】
追従ローラ301の後退は、第1アーム304によりおこなわれる。すなわち、第1アーム304は、巻取軸211と軸311とを結ぶ線に60°~120°程度の深い角度で交わる方向に配され、一端を回転中心341としてクーリングローラ10側に固定し、他端が軸311を軸支するように取り付けている。この位置関係により、追従ローラ301(の軸311)は、回転中心341を中心として緩やかな弧を描くように後退させることが可能となる。部分的な軌跡ではあるが、この後退は公転ということもできる。
【0035】
三角ステー303は、実質的に三角形状の固定具であって追従ローラ301の円筒両端に対向させて配し、三角の一点(P1と称することとする。)を追従ローラ301の軸311に位置させ、他の一点(P2と称することとする。)をセンサ302の取付位置とし、第3点(P3と称することとする。)に第2アーム305の一端を摺動可能に取り付けてある。
なお、P3は、P1とP2とを結ぶ線に対して巻取ローラ201または巻取軸211とは反対側に位置させる。
【0036】
第2アーム305は、第1アーム304より短く、そして、第1アーム304と同様に、巻取軸211と軸311とを結ぶ線に60°~120°程度の深い角度で交わる方向に配されている。第2アーム305の一端は上述の様にP3に摺動可能に取り付けてあり、他端はクーリングローラ10側に回転中心351として固定されている。この位置関係により、P3は、回転中心351を中心として弧を描く軌跡をとる(第1アーム304にならって、便宜上、部分的ではあるが公転すると称することもできる)。
【0037】
第1アーム304と第2アーム305と三角ステー303とによりリンク機構が構築される(第1アーム304と第2アーム305がリンク(節)となる)。
【0038】
センサ302は遮蔽の有無によってフィルム表面をモニタリングしており、遮蔽が生じたら遮蔽がなくなるまで、図示しない制御部が図示しない駆動モータを制御して第1アーム304を回動して追従ローラ301を後退させる。このときリンク機構により、センサ302の位置が相対的に巻取ローラ201に近づくように移動していき、表面間隔が長期に保たれる。すなわち、長尺もののフィルムFであって大きく実太りする場合でも表面間隔のずれを許容範囲内に納めることが可能となる(
図3b)。
【0039】
実際のフィルム巻取に際しては、フィルムFが薄手の柔軟素材であるので、その両端は巻取ローラ201上でいわゆるミミ立ちすなわち、わずかながら起き上がる場合がある。したがって、最上層のフィルム位置を径方向から距離として測定するよりも、本実施の形態で説明したように、端部の遮蔽を見て追従ローラ301とともに移動するセンサ302を採用した方が構成も簡単であり、追従ローラ301とフィルム最上層との予期しない接触可能性も排除でき好適である。
【0040】
ただし、フィルムFが長尺もので実太りが大きくなってくると、リンク機構がない場合回転中心341から軸311までの距離と回転中心341からセンサ302までの距離は一般的には異なるため、センサ302の後退距離と軸311の後退距離に差が出て、表面間隔のずれが大きくなってくる(
図3)。
【0041】
フィルム巻取部100では、このずれをリンク機構により補償し、より長尺ものでも安定的な巻取を実現する。
図2aから
図2bへの移行でわかるように、三角ステー303が後退に伴って巻取ローラ201に向かって倒伏していき、間隔のずれが補償され、間隔のずれを長期にわたって許容範囲内に納めることができる。センサ302とフィルム最上層との間隔と、表面間隔との両方が、追従ローラ301が後退しても保たれるようにリンク機構がずれを補償する、と表現しても良い。
【0042】
なお、センサ302の位置、および/または、P3の位置、および/または、回転中心341の位置、および/または、回転中心351の位置は、巻取ローラ201の径、フィルムFの長さ(実太りの予想径)、追従ローラ301の径、表面間隔の設定値、ずれの許容範囲に従って、真空チャンバ90内で変更ないし調整可能とする。また、第1アーム304や第2アーム305は、長さの異なるものを複数用意するようにする。このようにすれば、汎用性の高い巻取機構を提供できる。
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、長尺ものであっても従来より安定的なフィルム体の巻き取りを実現する巻取機構を提供することができる。
また、補償を実現するため、第1アーム304や第2アーム305は、クーリングローラ10側すなわち鉛直下方に位置させることができ、事実上、真空チャンバ90内の容積増を招来させない。また、機構自体が複雑でもなく、補償設計も容易なものとする。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、フィルムコンデンサに限定されず、省スペース性を要求されるフィルムの巻取全般に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 フィルム蒸着装置
10 クーリングローラ
11 軸
80 フィルム送出部
90 真空チャンバ
100 フィルム巻取部
200 巻取ローラ部
201 巻取ローラ
211 巻取軸
300 追従ローラ部
301 追従ローラ
311 軸
302 センサ
303 三角ステー
304 第1アーム
341 回転中心
305 第2アーム
351 回転中心