(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】熱可塑性プラスチック製角型ボトル
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20220628BHJP
B65D 1/42 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B65D1/02 232
B65D1/42
(21)【出願番号】P 2017044335
(22)【出願日】2017-03-08
【審査請求日】2019-10-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】稲田 行
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108812(JP,A)
【文献】特開2003-191928(JP,A)
【文献】特開2007-297058(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0190927(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105705421(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部と、該胴部の下方に設けられた底部とを有し、前記胴部の高さ方向に直交する断面の形と前記底部の底面の形とが略四角形である熱可塑性プラスチック製の角型ブロー成形ボトルであって、
前記略四角形は、短辺長に対する長辺長の比率が1.0より大きく2.0以下であり、
前記底面は、
中心から窪み部、該窪み部の外側の周辺部分に該窪み部を囲むように全周にわたって設けられた平面部を順に有し、
前記平面部の角部近傍に下方に突出した突出高さ0.30mm以上0.50mm以下の凸部を有し、
ボトルを水平面に正立させた場合に、前記凸部の少なくとも一部が該水平面に接地し、
前記底面における前記凸部の位置が下記条件(a)及び条件(b)のうちの少なくとも一方の条件を満たす、
角型ブロー成形ボトル。
条件(a):前記底面の中央を中心とし前記略四角形の長辺長に対する円直径比が0.70以上1.0以下である1つの円と、前記略四角形の対角線との交点4点を含む。
条件(b):前記底面の中央を中心とし前記略四角形の長辺長に対する円直径比が0.70以上1.0以下である1つの円と、前記略四角形の四辺に平行な直線との交点8点を含む。
【請求項2】
前記凸部が、平面視において幅1~3mmの線状である請求項1に記載の角型ブロー成形ボトル。
【請求項3】
前記凸部における厚みが0.20mm以上0.60mm以下である、
請求項1又は2に記載の角型ブロー成形ボトル。
【請求項4】
前記略四角形の短辺長が65mm以上である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の角型ボトル。
【請求項5】
前記底面における前記凸部の位置が前記条件(b)を満たし、且つ、前記凸部の形状が前記8つの交点のうち前記略四角形の各角部の近傍に位置する短辺側と長辺側の2点を含んで繋がった線状又は面状である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の角型ボトル。
【請求項6】
前記条件(b)において、前記略四角形の四辺に平行な線が、それぞれ、前記四辺から等距離にある、
請求項1~5のいずれか1項に記載の角型ボトル。
【請求項7】
内部に液体が充填されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の角型ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、胴部水平断面が略四角形状の熱可塑性プラスチック製の角型ボトルを開示する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性プラスチック製の角型ボトルは、有底筒形状のパリソン(プレフォーム)を加温し、金型内でブロー延伸して製造される。そのため、胴部水平断面が略四角形であるプラスチック製ブロー成形ボトルの場合、角部は各辺の中央部に比べて延伸度合が小さく厚肉となる。その結果、角部近傍が冷却不十分となり易く、金型から取り出した後に保有熱が残存し、ヒケ変形が発生して角部近傍が収縮して持ち上がり、底部中央部が下方へ突出する、ロッカーボトムの不具合を生じる。
また、内容物を充填する際の被熱などの外的因子により、ボトルが部分的に熱収縮変形してしまう(不正変形)。更に、略四角形が長方形状では、短辺と長辺とでは延伸度合いが異なるため、それらの変形の抑制はより難しいものとなる。
【0003】
特に、底部で変形が生じると、接地が不安定となってボトルの自立安定性が悪く正立できず、ぐらついたり、傾いたりする現象が起き、内容物充填前後のボトルの搬送・梱包・配列などに不具合が発生する。また、外観不良により商品価値を失ってしまう。
中でも、金型から取り出した後に、底部のヒケ変形に由来するロッカーボトムが発生すると、内容物充填前の空ボトルは自重のみで軽いため、ボトルのぐらつきや傾きを起こしやすく自立安定性に欠け、液体等の内容物の充填・注入が正常に行えない虞がある。
【0004】
従来の角型ボトルに関して、例えば特許文献1には、飲料の加温販売などの外部環境からの被熱時の底部の変形防止目的で底部の被熱量を減少させるため、底部に上方に窪んだ凹状中央部(10)とその周囲に線状接地部(11)、両者間に接続部(12)を設けることや、部分的線状接地部と部分的凹部(13)を設けても良いことが開示され、また、自立安定性を向上させるため、接地部を下胴部及びコーナー部に対応する箇所を直線(11A、11B)とし、直線同士の接続を曲線(11C)とすること、更に、賦形性を向上させるため、接地部の縦断面形状を曲率半径0.3mm~5mmの曲面とすることが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、底面の略四角形が面積的に大きくなり各辺が長くなると、角部と各辺の中心部とでは延伸度合の差が大きくなるため、ヒケ変形によって角部が持ち上がり、各辺中央部が下方に突出した円弧状になって辺の中心部のみで接地することになってしまう。すると当然のことながら、ボトルの自立安定性が悪く、ぐらついたり、傾いたりする現象が発生する。
また、特許文献1の技術では、底面中央部を中心に、凹状中央部(10)と接続部(12)と接地部(11)とを同心円状に設けているため、胴部水平断面が略正方形ではなく略長方形の場合は、長辺方向の揺れによって倒れ易い。
更に、接地部(11)以外の底面部は全て凹状に窪んでいるか胴部に向けて上方へ繋がっており、まさに底面の線状部のみで荷重を受けるため、耐荷重性が弱い。
【0006】
上述の底部のヒケ変形、ロッカーボトム変形の発生を抑えるには、金型内でブロー成形させた後にヒートセットを施す方法や冷却を一般条件よりも強める方法が考え得るが、それらのためには、温調・冷却のエネルギー負荷や工程時間の増加の為に、製造コストを増大させてしまう。特に、常温用途のボトルでは、低コストが必須であるため、一般の工程条件のまま、底部の変形抑制、容器の正立安定化を図らねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の背景技術に鑑み、本願では、自立安定性が良好な熱可塑性プラスチック製の角型ボトルを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は、上記課題を解決するための手段の一つとして、
胴部と、該胴部の下方に設けられた底部とを有し、前記胴部の高さ方向に直交する断面の形と前記底部の底面の形とが略四角形であるプラスチック製の角型ブロー成形ボトルであって、前記底面は、その中央部分よりも外側部分に略水平な平面部を有し、前記平面部は、その一部に下方に突出した凸部を有し、ボトルを水平面に正立させた場合に、前記凸部の少なくとも一部が該水平面に接地し、前記底面における前記凸部の位置が下記条件(a)及び条件(b)のうちの少なくとも一方の条件を満たす、角型ブロー成形ボトル
を開示する。
【0010】
条件(a):前記底面の中央を中心とし前記略四角形の長辺長に対する円直径比が0.70以上1.0以下である1つの円と、前記略四角形の対角線との交点4点を含む。
条件(b):前記底面の中央を中心とし前記略四角形の長辺長に対する円直径比が0.70以上1.0以下である1つの円と、前記略四角形の四辺に平行な直線との交点8点を含む。
【0011】
本開示の角型ブロー成形ボトルにおいて、前記底面は、その中央部分に上方に窪んだ窪み部を有し、該窪み部の外側の周辺部分に前記平面部を有することが好ましい。
【0012】
本開示の角型ブロー成形ボトルにおいて、前記凸部における厚みが0.20mm以上0.60mm以下であることが好ましい。※実験結果から下限を修正しました。
【0013】
本開示の角型ブロー成形ボトルにおいて、前記凸部の突出高さが、0.30mm以上0.60mm以下であることが好ましい。
【0014】
本開示の角型ブロー成形ボトルにおいて、前記略四角形の辺長が65mm以上であることが好ましい。
【0015】
本開示の角型ブロー成形ボトルにおいて、前記略四角形の短辺長に対する長辺長の比が1.0より大きく2.0以下であることが好ましい。
【0016】
本開示の角型ブロー成形ボトルにおいて、前記底面における前記凸部の位置が前記条件(b)を満たし、且つ、前記凸部の形状が前記8つの交点のうち前記略四角形の各角部の近傍に位置する短辺側と長辺側の2点を含んで繋がった線状又は面状であることが好ましい。
【0017】
本開示の角型ブロー成形ボトルは、前記条件(b)において、前記略四角形の四辺に平行な線が、それぞれ、前記四辺から等距離にあることが好ましい。
【0018】
本開示の角型ブロー成形ボトルは、内部に液体を充填することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の角型ボトルは、自立安定性が高く、傾いたりぐらつき続けたりすることなく正立でき、空ボトルへの液体の充填・注入時の不具合率が大幅に低減し液体充填製品の製造効率化に貢献する。また、胴部の水平断面形状が大きな略正方形であっても、略長方形であっても、自立安定性が高く、飲料・液体商品のボトルの設計が多様にできる。更には、金型成形時のヒートセット工程の追加や冷却条件の強化を行わずとも、良好な自立安定性が得られるため、常温用ボトルの様な低製造コスト品にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】角型ボトル10の側面及び正面を説明するための概略図である。
【
図2】角型ボトル10の底面を説明するための概略図である。
【
図3】底面における凸部の位置を説明するための概略図である。
【
図4】底面における凸部の位置を説明するための概略図である。
【
図5】底面における凸部の位置を説明するための概略図である。
【
図6】底面における凸部の位置を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.用語の定義
本願においてボトルの「底部」とは、胴部から曲率を有して底面へ繋がる、底面を含む部位全体である。
本願においてボトルの「底面」とは、ボトルを下から視た面である。
本願において「略四角形」とは、完全な四角形である必要はなく、丸みを帯びた四角形であってもよい。
本願において「略水平の平面部」とは、完全に水平である必要はない。平面部は水平面に対して0~15度以下の角度を有していてもよく、好ましくは12度以下、より好ましくは10度以下である。
本願において「角型ブロー成形ボトル」とは、熱可塑性プラスチックをブロー成形して得られる角型ボトルをいう。すなわち、有底筒形状のパリソン(プレフォーム)を加温し、金型内でブロー延伸して製造されるものである。尚、角形ボトルがブロー成形により得られたものであるか否かは、角型ボトルの表面状態や厚みの状態(胴部が1mm未満の薄厚である、角部が肉厚となる、ボトル内壁がブロー成形特有の滑らかなものとなる、等)を観察することで、当業者は容易に判断することができる。すなわち、「角型ブロー成形ボトル」における「ブロー成形」とは、単に角型ボトルの構造や状態を示すものであり、「ボトルの製造方法が記載されている場合」に該当せず、仮に特許請求の範囲において「角型ブロー成形ボトル」と規定したとしても、プロダクトバイプロセスクレームには該当しない。
【0022】
2.角型ボトル10
図1、2に示すように、角型ボトル10は、胴部1と、胴部1の下方に設けられた底部2とを有し、胴部1の高さ方向に直交する断面の形と底部2の底面の形とが略四角形であるプラスチック製の角型ブロー成形ボトルである。角型ボトル10において、底面は、その中央部分(
図1、2においては上方に窪んだ窪み部2aとされている)よりも外側部分に略水平な平面部2bを有する。また、平面部2bは、その一部に下方に突出した凸部2cを有する。角型ボトル10を水平面に正立させた場合、凸部2cの少なくとも一部が該水平面に接地する。角型ボトル10においては、底面における凸部2cの位置が後述の条件(a)及び条件(b)のうちの少なくとも一方の条件を満たすことが重要である。
【0023】
尚、
図1に示すように、角型ボトル10においては、胴部1の上方に肩部3を介して口部4が設けられているが、これら肩部3や口部4の形状や位置については特に限定されるものではない。角型ボトル10において、肩部3や口部4については上記課題を解決するための本質部分ではなく、適宜設計変更が可能な部分である。肩部3や口部4については当業者にとって自明なものであるため、本願では説明を省略する。
【0024】
2.1.胴部1
角型ボトル10において、胴部1は、断面形状が略四角形であって角型ボトルを構成可能なものでれば特に限定されるものではない。「略四角形」の具体例については後述する。これ以外の胴部1の形状等については、当業者にとっては自明な事項であるため、ここでは説明を省略する。
【0025】
2.2.底部2
角型ボトル10は底部2の底面の形状に特徴を有する。
図1、2に示すように、底面は、その中央部分に上方に窪んだ窪み部2a(
図2の一点破線部分)を有するとともに、該窪み部2aの周辺部分に略水平な平面部2bを有する。角型ボトル10において、平面部2bの周縁は曲率を持って胴部1へと接続している。また、平面部2bはその一部に下方向に突出した凸部2c(
図2の点線部分)を有している。
【0026】
2.2.1.窪み部2a
角型ボトルにおいて窪み部は必須ではないが、ロッカーボトムをより適切に防止する観点からは、角型ボトル10のように、底面の中央部分に上方に窪んだ窪み部2aを有することが好ましい。窪み部2aの平面視形状は、底面の中央を中心点とし、円形、楕円形、胴部略四角形に相似の略四角形が好ましい。特に、自立安定性の点から、
図2に一点破線にて示すように、略四角形の短辺長/長辺長の比と同等の短径/長径の比を有する楕円形が好ましい。
窪み部2aの垂直断面形状は、滑らかな斜面状であっても良いし、曲率を有する段が1つ以上あっても良い。段数は、賦形性、耐荷重強度の点などから、2段が好ましい。
【0027】
底面に占める窪み部2aの平面視面積の大きさは10%以上50%以下が好ましい。下限は20%以上、上限は40%以下がより好ましい。上述の数値範囲により平面部2bが効果的な面積比を有することができる。また、上述の数値範囲の窪み部2aを有することにより、底面中央部がある程度延伸され、ボトル強度を得易い。
【0028】
窪み部2aの中心の厚みは、ボトルの底面強度の点から1.5mm以上が好ましく、成形時に冷却し易く成形不良を抑制できる点から、3.0mm以下が好ましい。
【0029】
窪み部2a中央の窪み高さ、言い換えると、ボトル接地面からの垂直高さは、略四角形の短辺長に対する比率が0.10以上0.40以下が好ましい。下限は0.20以上、上限は0.30以下がより好ましい。当該比率が0.10以上であると、底中央から周辺部の略水平面までその分の延伸がかかり、延伸薄肉化により上述の保有熱による収縮を抑制できるとともに、ボトル強度が向上する。当該比率が0.40以下であると、窪み部2aのうち、中心に近い箇所と平面部2bに近い箇所とで、延伸状態の均等性が良くなる。
【0030】
2.2.2.平面部2b
図1、2に示すように、角型ボトル10において、平面部2bの底面中央部側は、窪み部2aへと曲率を有して繋がり、また周縁側は、ボトル胴部1へと曲率を有して繋がっている。底面は、平面視において、中心から窪み部2a、平面部2b及び凸部2cの順に周縁部へと繋がっている。
【0031】
角型ボトル10は、平面部2bを有することにより、凸部2cの賦形性、金型忠実性が良好となり、引いては自立安定性が向上する。また、角型ボトル10に液体等を充填した上で正立させた場合に、局所的に凸部2cのみに荷重がかからないので、凸部2cが潰れ難いという効果も生じる。
【0032】
底面に占める平面部2bの平面視面積の大きさは、略四角形の面積に対し20%以上90%以下が好ましい。下限はより好ましくは40%以上、さらに好ましくは60%以上である。一方、上限は80%以下がより好ましい。
底面において平面部2bが50%以上の面積を有することにより、平面部2bが厚肉になり難く、冷却が十分に進み、ロッカーボトム変形が起き難い。平面部2bの面積が90%以下であると、加熱成形の樹脂流動で凸部2cを形成しやすい。
【0033】
平面部2bの厚みは、強度の面から0.25mm以上が好ましく、ヒケ変形を抑制する点から2mm以下が好ましい。下限は0.4mm以上、上限は3.0mm以下がより好ましい。
【0034】
2.2.3.凸部2c
角型ボトル10において、平面部2bは、その一部に下方に突出した凸部2cを有する。角型ボトル10を水平面に正立させた場合、凸部2cの少なくとも一部が該水平面に接地する。
【0035】
角型ボトル10においては、底面における凸部2cの位置が下記条件(a)及び条件(b)のうちの少なくとも一方の条件を満たすことが重要である。
条件(a):底面の中央を中心とし略四角形の長辺長に対する円直径比が0.70以上1.0以下である1つの円と、略四角形の対角線との交点4点を含む。
条件(b):底面の中央を中心とし略四角形の長辺長に対する円直径比が0.70以上1.0以下である1つの円と、略四角形の四辺に平行な直線との交点8点を含む。
【0036】
図3を参照しつつ条件(a)について説明する。
図3において、角型ボトル10の底面の形(略四角形)を太い実線で示し、底面の中央を中心とする円を細い実線で示し、略四角形の対角線を破線で示し、略四角形の対角線と円との交点を黒丸で示す。
図3(A)が円直径比が1.0の場合であり、
図3(B)が円直径比が0.70の場合である。
図3に示すように、条件(a)を満たす場合、底面における凸部2cの位置は、
図3に示される4つの点を含む。底面において、このような4つの交点を含む位置に凸部2cを設けることで、ボトルの自立安定性が良好なものとなる。
長辺長に対する円直径比は、下限0.75以上、上限0.9以下がより好ましい。
【0037】
条件(a)を満たす場合において、凸部2cの形状は特に限定されず、点状、線状、不定形な面状の何れでもよい。点状の場合は直径1mm以上3mm以下程度、線状の場合は幅1mm以上3mm以下程度が好ましい。特に、対角線に沿った線状であることが好ましい。自立安定性がより良好なものとなり、且つ、延伸度合の高い角部近傍の強度を向上させることができるためである。
【0038】
条件(a)を満たす場合において、凸部2cの数も特に限定されるものではなく、
図2に示すように互いに分離した4つの凸部を設け、それぞれが、上記した4つの交点のうちの1つを含むようにしてもよいし、1つの連続する凸部(底面の外縁近傍を1周するように設けられた凸部)が上記4つの交点すべてを含んでいてもよい。自立安定性を一層向上させる観点からは、
図2に示すように、互いに分離した4つの凸部を設けるとよい。或いは、底面において凸部2cは、略四角形の四辺の中央近傍には設けられないこと、すなわち、各辺の中点を通る垂直二等分線上に凸部2cを有さないことが好ましい。
【0039】
また、条件(a)において、上記の円が同心円状に複数あり、上記の対角線との交点が4の倍数個あってもよい。この場合、
図4に示すように、凸部2cを対角線に沿った線状又は面状とすることで、1つの凸部2cに2つ以上の交点を含ませることもできる。尚、この場合も、1つの連続する凸部が、4の倍数個ある交点のすべてを含む形態であってもよいが、自立安定性等を一層向上させる観点からは、
図4に示すように、互いに分離した4つの凸部を設けるとよい。或いは、底面において凸部2cは、略四角形の四辺の中央近傍には設けられないこと、すなわち、各辺の中点を通る垂直二等分線上に凸部2cを有さないことが好ましい。
【0040】
図5を参照しつつ条件(b)について説明する。
図5において、角型ボトル10の底面の形(略四角形)を太い実線で示し、底面の中央を中心とする円を細い実線で示し、略四角形の四辺と平行な直線(4本)を破線で示し、四辺と平行な直線と円との交点を黒丸で示す。
図5に示すように、略四角形の四辺と平行な直線(4本)は、底面の短辺及び長辺から中央側に位置する。
図5(A)、(B)が円直径比が1.0の場合であり、
図5(C)、(D)が円直径比が0.70の場合である。
図5に示すように、条件(b)を満たす場合、底面における凸部2cの位置は、
図5に示される8つの点を含む。底面において、このような8つの交点を含む位置に凸部2cを設けることで、ボトルの自立安定性が良好なものとなる。
長辺長に対する円直径比は、下限0.75以上、上限0.9以下がより好ましい。
【0041】
条件(b)を満たす場合において、凸部2cの形状は特に限定されず、点状、線状、不定形な面状の何れでもよい。特に、
図6に示すように、上記の8つの交点のうち、上記の略四角形の各角部の近傍に位置する短辺側と長辺側の2点を含んで繋がった線状又は面状が好ましい。自立安定性がより良好なものとなり、且つ、延伸度合の高い角部近傍の強度を向上させることができるためである。
凸部2cの大きさは、点状の場合は直径1mm以上3mm以下程度、線状の場合は幅1mm以上3mm以下程度が好ましい。
【0042】
条件(b)を満たす場合において、凸部2cの形状が、上記の8つの交点のうち、上記の略四角形の各角部の近傍に位置する短辺側と長辺側の2点を含んで繋がった線状又は面状(
図6)の場合、当該2点の間の形状は上記条件(a)の交点を含む(すなわち、円の円周に沿って凸部2cを設ける)か、又は円の外側の位置を含むと、自立安定性の点で好ましい。すなわち、
図6に示すように、凸部2cの平面形状が外側に膨らんだ形状であることが好ましい。
【0043】
また、条件(b)を満たす場合においても、底面において凸部2cは、略四角形の四辺の中央近傍には設けられないこと、すなわち、各辺の中点を通る垂直二等分線上に凸部2cを有さないことが好ましい。
【0044】
条件(b)において、四辺に平行な直線が、各々、四辺から等距離にあることが好ましい。自立安定性等が一層向上するためである。
【0045】
上述の通り、条件(b)において、略四角形の四辺と平行な直線(4本)は、底面の短辺及び長辺から中央側に位置する。ここで、条件(b)において、四辺に平行な直線は、各々、四辺からの距離が、略四角形の短辺長の0.05倍以上0.30倍以下であることが好ましく、下限は0.06倍以上、上限は0.25倍以下がより好ましく、0.20倍以下が更に好ましい。自立安定性等が一層向上するためである。
【0046】
また、条件(b)においても、条件(a)の場合と同様に、円が同心円状に複数あり、四辺に平行な直線との交点が8の倍数個あってもよい。この場合、円の数に応じて、四辺に平行な直線の数を増減させてもよい。
【0047】
凸部2cは、底面の角部や平面部2bとの境が視覚的に認識できる不連続な形状でも良いし、認識できない連続的な形状でもよい。特に、
図2に示すように、凸部2cは、中央側の平面部2bから段差として突出し、周縁側はボトル胴部の垂直面へ曲率を有して接続する形状(中央側段差形状)が好ましい。強度が一層高まるためである。
【0048】
平面部2bからの凸部2cの突出高さは、下限は、自立安定性の点から0.30mm以上が好ましく、0.35mm以上がより好ましく、上限は、ボトル強度や賦形性の点から0.60mm以下が好ましく、0.55mm以下がより好ましい。尚、ボトルが小さい場合でも大きい場合でも、厚みは同等であるため、変形の度合いも同等である。そのため、突出高さは、ボトルの大きさ(辺長)に依存することなく決定可能である。
ここで、凸部2cの「突出高さ」とは、中央部側の平面部2bからの高さであり、中央側段差形状の場合も、同様に中央側の平面部2bからの段差の高さを意味する。
突出高さが0.30mm以上であれば、僅かなヒケ変形が生じても、接地部の接地機能をより適切に維持できる。突出高さが0.60mm以下であれば、金型内での冷却も十分に進みヒケ変形が一層抑制され、また良好な賦形性が得られる。
尚、上述の4つの交点又は8つの交点、或いはそれらの倍数個の交点を含む各凸部2cの突出高さは略均一である。
【0049】
凸部2cの厚みは、0.20mm以上0.60mm以下が好ましい。下限は0.25mm以上、上限は0.50mm以下がより好ましい。凸部2cの厚みを0.20mm以上とすることで十分な強度が得られる。また、凸部2cの厚みを0.60mm以下とすることで、ブロー延伸後の冷却が十分進み、ブロー延伸し金型から取り出した際のヒケ変形が一層抑制される。
【0050】
凸部2cの垂直断面形状は、自立安定性や賦形性の点から、曲率半径0.5mm以上10mm以下の円弧状が好ましく、下限は1.5mm以上、上限は8mm以下がより好ましい。曲率半径0.5mm以上の円弧状とすることにより、ブロー成形での樹脂の金型密着性が良好となり、冷却を効率的に行うことができることからヒケ変形の発生を抑制できる。曲率半径10mmmm以下の円弧状とすることにより、凸部2cに必要な強度を付与することができる。
【0051】
特に、凸部2cが面状の場合は、中央側の平面部2bから段差として突出し、周縁側はボトル胴部の垂直面へ曲率を有して接続する形状(中央側段差形状)が好ましく、その段差の曲率半径は0.5mm以上10mm以下が好ましく、下限は1.5mm以上、上限は8mm以下がより好ましい。曲率半径0.5mm以上の円弧状とすることにより賦形性が十分となり、曲率半径3.5mm以下の円弧状とすることにより良好な耐荷重性・耐圧性を得易い。凸部2cが十分な耐荷重性・耐圧性を有すると、ボトルに液体が充填されその重量によって底面が下方に押されても、凸部2cが変形し難くなる。また、中央平面部からの段差のまま周縁側が胴部へ繋がることにより、凸部の賦形性が良好になりやすい。
【0052】
2.3.その他の好ましい事項
2.3.1.略四角形の辺長
角型ボトル10のように、胴部の断面形状及び底面の形状が略四角形の場合、当該略四角形の辺長が大きくなるほど、ヒケ変形が発生し易い。例えば、略四角形の辺長が65mm以上、更には75mm以上、また更には85mm以上の場合、ヒケ変形が発生し易い。従来技術においては当該ヒケ変形の抑制が困難であったが、角型ボトル10によれば当該ヒケ変形を適切に抑制できる。言い換えれば、角型ボトル10による効果がより顕著となる観点から、略四角形の辺長は好ましくは65mm以上、より好ましくは75mm以上、更に好ましくは85mm以上である。辺長の上限は特に限定されないが、好ましくは150mm以下、より好ましくは120mm以下である。
【0053】
略四角形は略正方形であっても略長方形であってもよいが、略長方形が好ましい。この場合、略四角形の短辺長に対する長辺長の比率は2.0以下が好ましい。言い換えれば、略四角形の短辺長に対する長辺長の比率は1.0より大きく2.0以下が好ましい。振動や揺れに対する安定した正立のためには、上限は1.5以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。有底円筒形のパリソンから延伸されることによって得られる角型ブロー成形ボトルは、底面は中心点からの距離が異なると延伸度が異なり、冷却不十分であると、より厚みの大きい角部近傍は熱収縮が大きくヒケ変形、ロッカーボトム変形が生じるため、上述の範囲が好ましい。特に、従前では、水平断面が略長方形(比率1.0超え)の場合にヒケ変形の解消や抑制の難度が高く、本開示の角型ボトル10とすることが有効である。
例えば、略四角形の各辺の長さは、750mL容量のボトルの場合は、短辺60mm以上70mm以下、長辺70mm以上80mm以下程度、また、2L容量の場合は、短辺80mm以上100mm以下、長辺100mm以上120mm以下程度とすることができる。
【0054】
2.3.2.ボトルの高さ
ボトルの下端(凸部2cの接地部)から上端(口部4の上端)までの高さについては、略四角形の各辺の長さとボトルの容量とに合わせて適宜決定すればよい。例えば、当該高さを好ましくは150mm以上350mm以下、下限はより好ましくは180mm以上、更に好ましくは200mm以上、上限はより好ましくは300mm以下、更に好ましくは250mm以下とすることで、自立安定性を一層高めることができる。
【0055】
2.3.3.材質
角型ボトル10の材質は、熱可塑性プラスチックであればよい。具体的には、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が好適であり、特に、強度、耐熱性、透明性、光沢性の点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。角型ボトル10においては、熱可塑性プラスチックに加えて公知の添加剤を使用できる。
【0056】
3.角型ボトル10の製造方法
角型ボトル10の製造方法は、有底円筒形状のパリソン(プレフォーム)を加温し、金型内でブロー延伸するブロー成形法による。成形後の角型ボトル10の形状が上記したものとなるように、金型の形状を設計すればよい。パリソン形状やその製法、およびブロー延伸条件は、公知の製法および条件である。尚、角型ボトル10は、製造時にヒートセット(熱固定)を施さずとも、また冷却条件(温度、時間)を特に強めなくとも自立安定性に優れたものとなる。具体的な冷却条件としては、例えば表面温度15~75℃の金型に1~4秒間密着させる条件等を挙げることができる。
【0057】
4.用途
角型ボトル10の用途は特に限定されるものではないが、内部に液体が充填されることが好ましい。上述の通り、角型ボトル10は、内部に液体を充填したとしても自立安定性に優れる。液体の種類は特に限定されないが、例えば食用油、工業用油、調味料、ジュース等が挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例に基づいて本開示の角型ボトルによる効果についてより詳細に説明する。以下の実施例においては、種々の条件にて作製した角型ボトルについて、以下の底面外観評価と自立安定性評価とを行った。
【0059】
<底面外観評価>
成形した角型ボトルの底面について、ヒケ変形、ロッカーボトム変形の有無などの観点で外観観察した。
【0060】
<自立安定性評価>
成形した角型ボトルを水平台に正立させ、胴部水平断面の略四角形の短辺側に12度傾け、その後ボトルを離したときに正立して停止するまでの時間を計測した。試験体3個数に対し、各5回計測し、その平均値を用いて自立安定性を評価した。
【0061】
<実施例1>
ポリエチレンテレフタレート樹脂(一般ボトルグレード、極限粘度0.83dl/g、融点240℃、結晶化温度172℃)製の有底円筒状の長さ95mmパリソンを用い、材質SUS製金型に装填し、2ステップブロー成形法(コールドパリソン法)により、設定条件100℃、40秒間の加熱後に、チラー設定温度15℃の金型で、3.0MPa、1.7秒間(即ち、ボトルが金型に密着した冷却時間は約1.7秒間)の設定条件で、ブロー成形し、その後、ブロー成形したボトルを金型から取り出した。
【0062】
金型のボトル設計形状は、口部、肩部、胴部、底部を有し、全高225mm、口部内径27.6mm、胴部水平断面の短辺長66.6mm、長辺長76.3mmの角型ボトルであり、底面は中央部に窪み部を有し、周辺部は略水平の平面部であり、平面部の一部に下方に突出した凸部を有する。
【0063】
底面の凸部は、底面の中央を中心とした直径61.0mmの円弧(長辺長に対する円直径比0.80)と、短辺及び長辺から中央側へそれぞれ8.5mm位置(略四角形の四辺からの距離が、短辺長の約0.13倍の位置)の短辺及び長辺の平行線計4本との交点計8点のうち、各角部の近傍に位置する短辺側と長辺側の2点ずつを繋げた計4つの線状凸部である(
図6参照)。凸部は、平面視において、幅約2mm、長さ約20mmであり、側面視において、突出高さ0.50mmある。
底面の窪み部は、短径40mm、長径45mmの楕円状(底面に対する平面視面積比37%)で、高さ17mm(短辺長に対する比率0.26)である。
【0064】
成形したボトルの底面の窪み中心部の厚みは2.8mm、凸部の厚みは0.35mmであった。
【0065】
底面外観評価は、底面に設けた凸部で接地しており、ヒケ変形、ロッカーボトム変形は無く良好であった。また、自立安定性評価値は、1.7秒であった。
【0066】
<実施例2>
底面の凸部が、実施例1の4つの凸部を含み、中央部側の平面部から段差として突出し、その突出高さのまま周縁部からボトル胴部の垂直面へ曲率を有して繋がった、中央側段差形状の面状凸部である他は、実施例1と同様にしてボトルを成形した。
成形したボトルの底面の窪み中心部の厚みは2.8mm、凸部の厚みは0.35mmであった。
底面外観評価は、底面に設けた凸部で接地しており、ヒケ変形、ロッカーボトム変形は無く良好であった。また、自立安定性評価値は、1.7秒であった。
【0067】
<比較例1>
実施例1において、金型底面の平面部に、下方に突出した凸部を設けない他は、実施例1と同様にしてボトルを成形した。
成型したボトルの底面の窪み中心部の厚みは2.8mmであった。
底面外観評価は、底面の周辺部の略水平面の長辺、短辺の各中心近傍が、ボトル下方向に大きく膨らみ突出し変形しており、不良であった。また、自立安定性評価値は、2.9秒であった。
【0068】
<比較例2>
実施例1において、底面の凸部は、底面の中央を中心とした直径60mmの円弧と、長辺から中央側へ5mm位置の長辺との平行線2本との交点4点(長辺側凸部4点)と、底面の中央を中心とした直径70mmの円弧と、短辺から中央側へ5mm位置の短辺との平行線2本との交点4点(短辺側凸部4点)の計8点の点状凸部である他は、実施例1と同様にしてボトルを成形した。
成形したボトルの底面の窪み中心部の厚みは2.8mm、長辺側凸部4点の厚みは0.35mm、短辺側凸部4点の厚みは0.30mmであった。
底面外観評価は、長辺側凸部4点は賦形性および接地が良好であったが、短辺側凸部4点は賦形性が悪くまた水平台から浮いて接地不良であった。そのため、正立させようとするとぐらつきが長く続き、自立安定性評価値は3.0秒以上であった。
【0069】
<比較例3>
実施例1において、底面の中央部に窪み部を設けず、また平面部に凸部を設けない他は、実施例1と同様にしてボトルを成形した。
成形したボトルの底面の平面部の厚みは2.5mmであった。
底面外観評価は、平面部がボトル下方向に大きく膨出して変形しており(ロッカーボトム変形)、不良であった。また、その膨出により、自立安定性評価は実施できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示の角型ボトルは、自立安定性が極めて良好であり、内容物を充填する前の空ボトルで搬送の揺れを受けても正立が容易である。そのため、製造ラインで空ボトルを搬送して、液体をボトル口部から注入する際に、ボトルが倒れたり傾いたり揺れ続けたりして液体がこぼれることがない。また、ロッカーボトムやヒケ等の変形も生じ難いため、美観が良好に保たれる。従って、飲料品などの製造において、生産歩留まり、衛生性なの向上に、大いに有益である。
【符号の説明】
【0071】
1 胴部
2 底部
2a 窪み部
2b 平面部
2c 凸部
3 肩部
4 口部
10 角型ボトル